JR東日本への連続不審火事件の容疑者は、世界情勢の「裏側」をレポートしてきた日本人ジャーナリスト、古歩道(フルフォード)ベンジャミン氏のお隣さんであるという(リンク※1)。私は、このことをTwitterまとめサイトのTogetter(リンク※1)で翌16日に知り、色々と考えて執筆した上で、17日に先の記事(リンク※2)をアップした。古歩道氏がインタビューを受けたのは、逮捕直後の9月15日であり、マスメディアがコンビニ帰りの古歩道氏を捕まえた(リンク※3)のだという。18日にアップされたネット番組(リンク※3)と24日の番組(リンク※4)で、古歩道氏は、インタビューに応じた経緯と自身の所見を述べている。この日の前後関係は分からないが、18日、容疑者は、威力業務妨害等の容疑で東京地検に送検されている(リンク※5)。
古歩道氏は、本件放火がイスラエルのモサドの工作活動であると断定し、容疑者が古歩道氏の隣に住み始めたことも怪しいと述べている。古歩道氏は、日本社会の権力構造について、優れた分析を示している※6が、現在、陰謀論業界のスターとみなされている。そのために、今回の主張は、結果として、陰謀論業界以外ではトンデモ扱いされている。今回の古歩道氏の主張は、容疑者の両親の国籍等を理由に、事件をモサドの仕業とするものであり、あたかも、いずれも日本にいるという理由で、在特会と日本政府を確たる理由抜きに同一視するかのごときのものである。古歩道氏の今回の主張は、短絡的に過ぎる。
しかしながら、古歩道氏の主張の真偽自体は、(そもそも私には確かめようもないものであるが、)今後の犯罪を予防する上で、重要な論点ではない。本事件が報道され、「いざとなれば、自分にも事件を起こせる」という印象が広まってしまい、テロ活動に対してJR東日本が脆弱であると思われていることこそが問題なのである。全世界の視聴者は、JR東日本の列車を止めることが簡単だという印象を植え付けられてしまっている。本事件の犯人が誰であるか、なぜやったのかが解明されたとしても、将来の事件を予防するためのハードルは、最早、下がることがないのである。一部マスメディアは、容疑者の逮捕前、プロフェッショナルの仕業ではないかとの観測記事を流したが、放火の手口自体は、それほど難しいものではない。火炎ビンのような装置で、敷地外から届きそうなところにあった可燃物に着火した、というだけである。どの設備が燃えそうかという判断は、多くの国民が下せるものである。「なぜ犯罪が行われたのか」という動機の解明は、専門知識を必要とするかもしれないが、「どこでいつ犯罪が行われるのか」という判定は、小学生にも行えるものである。以前、私は、放火を防ぐためには、公衆の手の届くところに可燃物を放置しないようにすれば良い、とNHKの情報番組『あさイチ』で解説したことがある。事件の多くが私の指摘と整合するものであったため、事件の報道に接して、私は、多くの事件についてアリバイがあることをありがたく思ったほどである。
前記事の繰り返しになるが、テロ対策は、単なる放火対策に比べて、途方もないリソースを必要とする。本事件を単独犯として片付けてしまうと、テロ対策への準備が疎かにされかねない。放火対策だけであれは、オリンピック終了までの期間、各会場周辺を警備することに集中すれば、数十億円程度の費用ですむかもしれないし、対外的な活動も、私程度のカタコトの語学力で十分間に合う。しかし、テロ対策には、二カ国語以上を母語として使いこなせる程度の語学力を有し、母国に変わらぬ忠誠心を捧げることのでき、人間としての魅力にあふれた人材が要求される。資金面についてみると、本年の自称イスラム国による邦人誘拐殺人事件の折、中東の安定のために拠出すると安倍首相が演説した2億ドルでは、とうてい足りない。240億円では、100人が活動できるだけである(100人×4000万円×6年)。事件によって、テロ対策の必要性が満天下に示された以上、事件に備える体制づくりが欠かせない。これは、新国立競技場の建設計画に言及するまでもなく、当然のことである。わが国の指導者層や企業の経営陣が、現状に甘んじていて良いとするのであれば、その理由を積極的に示すべきときが来ている。
落ち穂拾い(1) テロ対策を念頭に置いたリソース配分が必要な理由
蛇足になるが、テロ対策にリソースを十分に割かなければ、本事件が背景のあるテロ活動であったのか、それとも真に単独犯であったのかの区別は付けられないだろう。そして、単なる放火犯として片付けた場合、今後のテロ事件は防ぎ得ない。とすれば、本事件はテロ事件であると考えた上で、対策に十分なリソースを注いだ方が良い。それが無理なら、目的と手段が転倒したものになるが、いっそのこと、現時点でオリンピックを返上し、より有益な方面にリソースを配分するというのも、テロを予防する一つの手ではある。落ち穂拾い(2) 新国立競技場建設計画には防犯環境設計上の確認が必要
さらに蛇足。精査していないので想像で記すけれども、おそらく、新国立競技場の建設計画は、犯罪やテロ、混雑からの安全性という観点から検討されてはいないだろう。何せ、周辺部の歩行者デッキは、費用分担からして都と国の言い分が異なるほどである。官公庁は、予算がなければ動かない。民間企業に企画を丸投げなんてことも、あってはならないのに、まま聞くことである。ということは、予算で揉める前には、ほとんど検討がなされていないと見るべきである。周辺施設と連携した混雑対策・警備計画は、一顧だにされていない虞がある。実際、ザハ案は、周辺の混雑なんぞは知りませんといった具合に、デザイン重視、曲線を多用した形状である。スタジアムにおけるテロ対策は、かなり歴史がある分野である(。私も、ということを心得ているだけではある)。しかし、わが国のトップの頭の中には、総合的な安全面を検証できるだけのプロフェッショナルを招待しようというアイデア自体がない。でなければ、Jリーグやスターのコンサート後、新横浜駅や浦和美園駅が大混雑し、事故が懸念される状況を毎度経験するなどという事態は、ないはずである。落ち穂拾い(3) 事件の発生地と古歩道ベンジャミンメルマガ発刊地はまあまあ近い
山手線南西部に事件が集中していたことは、古歩道氏のメルマガ発刊地が品川区内にあることもあり、古歩道氏にとっても警戒材料になったように思われる。渋谷や恵比寿など、ライブハウスの集中する?地域にも自転車であれば通える範囲である。なぜ知っているかって?これは偶然であろうが、発刊地が私の近所だから。ついでだが、古歩道氏は、『江戸前・あ・めーりかん』の作者の藤波俊彦氏によって、ママチャリに乗る人として描かれていた。落ち穂拾い(4) 掲示板『阿修羅』に見られた怪しい書込み
具体的には示さないが、本事件とは別の手段によって業務妨害できるのではないかと指摘する記述が、陰謀論者や過激派やカルト宗教信者の集まる掲示板『阿修羅』に書き込まれたことがある。また、JR東日本に対しては、過激派による業務妨害が生じたことがある。わが国の安全は、何かと危うい均衡の上に成立しているのである。注記・出典
※1 JR不審火インタビュー ご近所さんとして登場したのがベンジャミン・フルフォードではないかと朝から混乱するTL - Togetterまとめhttp://togetter.com/li/874341
※2 JR東日本における本年8月の連続不審火事件の容疑者逮捕について
http://hiroshisugata.blogspot.jp/2015/09/suspect-arrested-serial-arsons-on-East-Japan-Railway-premises.html
※3 JR放火事件の犯人は工作員?【NET TV ニュース.報道】国家非常事態対策委員会 2015/09/18 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Ip9dn0SoJIA
※4 【NET TV ニュース.報道】国家非常事態対策委員会 2015/09/24 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=IXxGhp09rCU
※5 JR不審火、容疑者「まだやるつもりだった」 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150917-OYT1T50045.html
※6 彼の著書『日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日』(2002年, 光文社)などによると、古歩道氏が世の中の「裏側」に深く関与するに至った契機は、経済誌『フォーブス』の太平洋支局長時代、不動産等の不良債権に暴力団 が深く関与していたことを知り、外国人としての強みを生かした取材を進めたことに始まる。古歩道氏が陰謀論者扱いされるようになったのは、いわゆる911 がインサイドジョブであったという点を、当時から著名な陰謀論者であった中丸薫に指摘され、その調査を進めて以来のことであると思う。
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