2018年5月4日金曜日

(メモ)鹿児島相互信用金庫における事件について

以前(2015年10月23日)、振り込め詐欺が詐欺システムの一環であるという意見に反論したことがあるが、この記事に対し、昨夜、匿名のコメント主のお叱り・励ましを受けたことから、鹿児島相互信用金庫において、金融機関に対する人々の見方を変えるレベルの事件が生じていたことを、新たに記事を立てて指摘しておきたい。今年4月の『朝日新聞』も小さめに報道している[1]が、多数の職員がグルになって、多数の顧客の預金を横領したり、あるいは就業規則に違反する行為に及んでいたという事件である。昨年12月、同信金は、この不祥事(の一部)を報道発表しており[2]、同年8月、告発を受けた金融当局からの問合せによって知ったとしている。4月20日の朝日の記事は、弁護士2名・公認会計士1名からなる第三者委員会が報告書を提出したことを受けて、同信金が報告書(の概要)を公表したことを受けたものである。第三者委員会は、38事案を調査したと報告している(要約版)[3]

勤め人を経験した人なら、少なくとも一例以上は、犯罪となり得る行為を見聞きしたことがあろうが、鹿児島相互信用金庫の(業務本体に係る)事件の多さは、670名という正規職員の人数からすれば、群を抜いている。経営陣の責任の取り方も公表された[4]が、この企業を立ち直らせることは、この処分結果を見る限り、至難であろう。無能な経営陣による甘い自己評価は、ますます顧客を離れさせるであろう。企業犯罪や権力犯罪が研究主題となりにくいことは、一応、指摘した(2017年9月22日拙稿の最終段落)ことがあるが、ここまでとなると、犯罪学者のいずれかが手を付けてみたくなるほどに、深刻な組織風土であろう。行員、ほとんど全員悪人、ってノリである(。個人的には、臆病や無知も、利己的に作用するという観点から見て、悪である。これと同じく、組織犯罪を分析すると角が立つと思う犯罪学者も、忖度が効き過ぎていて、悪である)。

同僚や部下や上司の悪事を知った職員の沈黙は、組織を壊滅に追いやる。悪事(の方法)に対して無知であることも、場合によっては、組織の衰亡につながる。ここでの記述は、一部、体験的事実に係るものでもある(。心当たりのある者は、私にコンタクトを取った方が良いかも知れない)。このために、私の主張は、一応のところ、ケーススタディの域ではあるものの、十分に事実を下敷きとしている。鹿児島相互信用金庫も、他山の石を活用すべきである(が、経営陣の責任の取り方を公表した時点で、自ら詰んだと評価して良かろう。経営陣の全報酬を、初任給(の19万円)まで下げれば、何とかなったかも知れない)。


なお、先述のコメント主に対して;念のため、私も、現在の先進諸国における金融システムの基本的な仕組みが庶民にとって詐欺的であるという意見を共有している。CSRについて調べなさいということであれば、長い道程になるであろうが、いずれは着手したいとは思う。ただ、どの金融機関についても、その犯罪性・不公平性は、システムに起因する以上、程度の差こそあれども類似したものである(から、ここで鹿児島相互信用金庫の事例を紹介したことによって、当面の時間稼ぎを行ったつもりである)。それに、金融商品の利率(の理論値・実績値)は、経済成長率よりも高い。このため、金融システムが現在の形で回り続ける限り、このシステムの創生期からひと財産を保有してきた連中は、一般人に比べて極めて有利な立ち位置を確保し続けることができる。彼らは、ルールを逸脱して儲けた金を混ぜ込んで、資産全体をわざわざ危険に晒す真似をする必要もなかろう(から、振り込め詐欺まで利用するという必要もなかろう)。


[1] 鹿児島の信金、17年間で不正1600件 計5億円超:朝日新聞デジタル
(2018年04月20日、加藤美帆)
https://www.asahi.com/articles/ASL4P3D03L4PTLTB006.html

[2] 不祥事件の発覚について
(鹿児島相互信用金庫理事長 稲葉直寿、2017年12月15日)
http://www.kasosin.com/news/news20171215-1.pdf

[3] 不祥事件に関する第三者委員会調査報告書(要約版)
(2018年03月14日)
https://www.kasosin.com/news/news20180420-5.pdf

[4] 健全かつ適切な業務運営を確保するための業務改善命令について
(鹿児島相互信用金庫理事長 稲葉直寿、2018年04月20日)
http://www.kasosin.com/news/news20180420-1.pdf