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2015年10月7日水曜日

JR東日本連続不審火の容疑者の再逮捕について(感想文)

 本事件は、インスタグラムが容疑者への助言に使われていた可能性を残すものとなっている。本記事は、その理由をメモしたものである。

 容疑者は、6日、威力業務妨害罪及び器物損壊罪で再逮捕されたとのことだが、朝日新聞は、記事を次のように結び、放火罪は適用されないと判断されたことを伝えている。(読売新聞と日本経済新聞には、同様の説明は見られない。)
JR不審火 容疑者再逮捕 「山手線を廃線にしたかった」 渋谷事件で(朝日新聞夕刊2015年10月6日(火) 11面)
(略)
警視庁は一連の不審火は火災の規模が小さく、住居などの建造物以外への放火罪を問う要件となる「公共の危険」を生じさせたとはいえないと判断している。(記事終わり)
本事件では、往来危険罪は検討されなかったのか?と思い、調べてみた。すると、信号系統を停止させたとしても、往来に対する危険にまでは至らないから、往来危険罪には問えないとした裁判例があるという。

参考:往来危険罪
http://park.geocities.jp/funotch/keiho/kakuron/shakaihoueki1/koukyounoheion/ouraibougai/ouraikiken.html

以下は、裁判所ウェブサイトの裁判例の検索結果の転載である。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51256


事件番号 昭和27(あ)43
事件名 建造物侵入、業務妨害、往来危険
裁判年月日 昭和35年2月18日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
原審裁判所名 福岡高等裁判所
原審裁判年月日 昭和26年10月29日
判示事項 一 汽車電車の往来危険罪の成立要件
二 電車の往来の危険を生ぜしめた場合にあたらないとされた事例
裁判要旨 一 汽車電車の往来危険罪は、鉄道またはその標識を損壊し、またはその他の方法を以つて、汽車または電車の脱線、顛覆、衝突、破壊等、これら交通機関の往来に危険な結果を生ずる虞のある状態を発生させることにより成立する。
二 本件の場合(判文参照)、駅の信号操作を放置しても、直ちに電車の往来に危険な結果を生ずる虞ある状態を発生させたものということはできない。
参照法条 刑法125条1項
本文 リンク

 容疑者の用意周到さからすれば、容疑者が責任能力を備えていることは明らかである。通常人の判断能力によれば、線路脇のケーブルや架線を燃やせば、少なくとも、走行中の車両を停止させることになると予想できるはずである。ただし、線路脇のケーブルや架線を燃やしたことにより、列車が転覆したり衝突したりするなどという展開は、通常人では予想できないように思われる。

 ところで、私に引っかかるのは、以下にあるインスタグラムで、容疑者は、架線を支える絶縁体(ガイシ)の上に液体の入ったペットボトルを置いた写真を載せ、「150本おじゃん」と記しているが、この形で架線に被害を出していないことである。「150本おじゃん」という表現は、運休させてやるという趣旨で記しているものと思われ、「脱線、顛覆、衝突、破壊」を起こそうとしているのではないものと思われる。緊急停止時のブレーキにはモーターブレーキが使われるかも知れないが、モーターブレーキの仕組み上、電源は必要とされないように思われる。本段落における鉄道の仕組みについての推測は、調査していないものであるので、容疑者が専門的な調査を進めていないのであれば、容疑者の理解も、おおむね類似したものになったと思われる。

zonegeriyangnodaさんはInstagramを利用しています:「シリーズ【電化バリア戦争】 これ焼き切ると下品盗賊150本おじゃん。。。ゆうか、そんなカヨワイカヨワイ電化バリアやで。TT」
https://instagram.com/p/6AVzQRPplU/

 しかしながら、結果としてではあるが、容疑者は、上記のような写真などを撮りながらも、この種の犯行に着手しなかった。その上で、線路脇ケーブルに執着したのである。そこで考えられる最悪の想定が、冒頭に記したように、インスタグラムが刑法に詳しい専門家への相談の手段として用いられたという可能性である。私個人としては、ペットボトルに点火してから架線にまでペットボトルを下ろすという方法がなかった、長い針金の持ち合わせがなかったのではないかと思う。しかし他方で、線路上に火炎ビン(火炎ペットボトル)を投げつけた形になり、往来危険罪を問われる危険を避けたという可能性を完全に否定しきることもできないと思うのである。

 本事件の態様が公開情報により明らかにされるほど、本事件は高度な手口であるということが垣間見えてくる。本事件は、「よい子の皆さんは、真似を絶対にしてはいけません」というメッセージを与えるかのごときものである。本事件が組織的なものであるとすれば、攻撃は高度で洗練されているし、個人的なものであったとするならば、素人の恐ろしさを思い知らされるものである。対策は、本当に急務である。事件直後から、JR東日本及び警備受託企業がどのような対策を取ったのかは、今後、本格的に問われることになると思われる。

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