2017年5月31日水曜日

平壌を起点とする正距方位図法の地図を作成してみた

自身の不明を述べることになるが、5月21日の記事で、

これはマジで冗談であるが、北朝鮮は、今後、毎週末に「ミサイル発射実験」を繰り返すかも知れないのである。
と予測したところ、まさかの毎週ペースで、朝鮮民主主義人民共和国は、「ミサイル発射実験」を繰り返している。21日の発射映像は、29日のNHKの19時のニュースで見ただけであるので、再現性も(私自身の専門性も)ないが、あたかも対艦ミサイルのような弾道を描いていたように見える。本日(2017年5月30日)23時の『News 23』の映像は、人工衛星であるとはとても言えず、中距離弾道ミサイルのものであると言えよう。北朝鮮は、新しくお披露目された5種類のミサイルのうち、3種類までを発射しており、今後、ICBMを発射するものと見られると『News 23』は報じている。

この北朝鮮の「ミサイル発射実験」のペースは、安倍晋三政権にとっても追い風になるという、奇妙な互恵的関係を生じさせている。マスメディアの特オチを恐れる気持ちは、マスメディアが望む・望まずにかかわらず、北朝鮮情勢を報道せざるを得ない状況を作り出している。北朝鮮に係る報道を殊更にカットすることは、今までの報道姿勢を切り替えることになるし、北朝鮮の脅威を無視するのかとの批判を呼ぶことになりかねない。このため、北朝鮮関連の報道は、分量はともかく、森友学園・加計学園疑惑に係る報道よりも冒頭に報道せざるを得ない。それに、安倍政権が北朝鮮との裏のコネクションを有していることは、外部者が信用しても仕方ないほどの報道が従来から見られる。この先行きがいかなるものになるのかは、私にはまだ確信を持って予測することができない。

ところで、本稿の目的は、平壌・金日成広場を中心点とする正距方位図法を描き、そこに北朝鮮の保有するとされるミサイルの推定到達距離等を書き込んだ地図を掲載することである。北朝鮮の「ミサイル発射実験」ニュースに関連して、北朝鮮からのミサイルの到達距離を示す地図が誤りであるという話が、ツイッター界隈で広まっているようである[1]。これらのツイートライン中で得意げに他者が製作したと思しき地図を転載するユーザ[2]や、コメント[3]に指摘されているフジテレビは、論外である(。ユーザは、転載許可を取ったのであろうか)。他方、本稿は、直接はBBCのニュース記事で見かけた地図[4]から、中東情勢との関係性が必ずしも否定できないことが示されることを私が初めて知ったために、作成してみようと思い立ったものである。色々と手抜きをしているので、その方法は注記にて述べる※1が、とりあえず元の制作者であるGeorge C. Marshall Institute[5]は、CSISに吸収合併される際、ミサイル研究だけが残されたという[6]。このように研究者を使い捨てにして、目先のカネをケチるから、戦争屋は、(私は賢明とは言えないが、クビになった方はおそらく優秀であろうから、)賢明な「敵」を余分に造り出すのである。


金日成広場を中心点とする正距方位図法
図:金日成広場を中心点とする正距方位図法(+ミサイル推定到達距離&9000km以降1000km刻み) 

地図を見ると、北朝鮮にとって、到達距離10000kmが一つの目標になっていることがうかがえる。テポドン2は、中東の主要な地域を(BBCの掲載した地図の限りでは、)カバーすることになる(。ツイッターユーザの掲載した地図については、後日掲載のネタに取っておく)。一帯一路が形成され、ミサイル発射実験を成功裏に終えたとき、北朝鮮は、中東情勢にも影響を与えるプレイヤーとして台頭することになる。北朝鮮のミサイル開発・装備の状態は、10000kmの到達距離を達成し、十分な着弾精度を確保したとき、日本が金政権と仲良くせざるを得ない状態にまで至ったと判断されることになろう。


※1 まず、『Google Earth』によって、金日成広場に示されたタグ(緯度 39.0195947、経度 125.7526304)を取得、これを起点とする投影座標系を『ArcGIS Desktop』上で作成した。ただし、「False Easting」及び「False Northing」の設定は、ともにゼロのままにしておいた。(考慮するにしても、この精度では、おそらく、計算が面倒なだけである。)次に、『ArcGIS』のウェブサイトから取得した国境線のレイヤパック[7]のシェープファイル用に座標系ファイル(.prj)を作成した。これらシェープファイルの一揃いを、『R』に「maptool」パッケージを用いて読み込み、「rgdal」パッケージを用いて投影させた。readShapePoly(filename, proj4string = CRS("+init=epsg:4326"))と設定してやれば、『R』のplotコマンドで、上記の形で表示される。周囲の余白などは、地図をpng形式でエクスポートした後、『Gimp』によって削除した。


[1] あるニュース番組が「メルカトル図法の地図に円形のミサイルの到達範囲」を重ねて放送してプチ炎上 - Togetterまとめ
(あるニュース番組が「メルカトル図法の地図に円形のミサイルの到達範囲」を重ねて放送してプチ炎上 - Togetterまとめ、2017年05月30日23時38分)
https://togetter.com/li/1112524

[2] おにぱんださんのツイート: "やっちまったな!RT ただしくはこちらになります https://t.co/jWNc5ZdC6L"
(おにぱんだ(@onipanda0220)2017年5月21日10:18)
https://twitter.com/onipanda0220/status/866100944479567873
#本当に地図や写真や画像の版権は難しい。

[3]

[4] 北朝鮮、ミサイル発射 3週間で3回目 - BBCニュース
(BBC、2017年05月29日)
http://www.bbc.com/japanese/40081306

[5] George C. Marshall Institute - Wikipedia
(George C. Marshall Institute - Wikipedia、2017年05月30日確認)
https://en.wikipedia.org/wiki/George_C._Marshall_Institute

[6] CSIS Announces Marshall Program on Science and National Security
(2015年10月30日13時16分+0000、2017年05月30日確認)
http://marshall.org/missile-defense/csis-announces-marshall-program-on-science-and-national-security/

[7] World Countries
(ESRI, DeLorme、2017年05月16日)
https://www.arcgis.com/home/item.html?id=3864c63872d84aec91933618e3815dd2




2017(平成29)年6月10日追記

本日付『読売新聞』朝刊12面(くらし 教育)「学ぶ 育む/18歳の1票 今月のテーマ 日本の外交/北朝鮮への包囲網」の地図「北朝鮮のミサイルの射程」は、平壌中心の正距方位図法の一部を切り取ったように見える。スカッドERは射程1000km、ノドンは1300km、ムスダンは2500~4000km。テポドン2改良型は10000kmとある。移動式発射台から発射するケースもあると記事は伝えるが、北朝鮮の領土からの射程という点では、さほど話を変える要素ではない。(ので、『読売新聞』の記事も、私の上掲の地図も、さほど問題なく、長い間、使用に耐えられる内容にはなっているはずである。)

2017年5月24日水曜日

(メモ)国連特別報告者のケナタッチ氏の安倍氏宛書簡(2017年5月18日付)

東京新聞政治部(@tokyoseijibu)の2017年05月21日09時26分の公式ツイート[1]は、21日の紙面記事「「共謀罪」に懸念/首相あて国連特別報告者の書簡」を画像として掲載する。記事本文は、下記ツイートの画像リンクにて、ご確認いただきたい。この記事は、国連人権高等弁務官事務所・プライバシーの権利に関する国連特別報告者のジョセフ・ケナタッチ氏(Joseph Cannataci、マルタ大学メディア&ナレッジサイエンス学部教授、2015年7月より3年間、同職としては初代[2])の安倍晋三首相宛書簡[3]の大部分を和訳・掲載するものである。

元の文書は、私が読むところ、主目的が「共謀」罪(テロ等準備罪)に対する批判の正確性を問合せたものであるが、20日付の東京新聞の記事[4]が解釈するように、テロ等準備罪がプライバシー権を侵害する虞を批判するものとしても読めなくはない。ただ、記事のように批判を目的とするために、和訳がねじ曲げられているとすれば、それは大変遺憾なことである。たとえば、東京新聞の和訳が

法改正案に関する情報の正確性や日本におけるプライバシー権への影響の可能性を決めてかかる気はありません。ただ、閣下の政府に対しては、日本が批准した自由権規約(ICCPR)によって課されているプライバシー保護に関する義務について注意したいと思います。〔東京新聞訳〕
のようであるところ、当該の英文をできるだけ忠実に訳すと、
私は、日本のプライバシー権に対する法改正ならびに改正に伴う潜在的影響についての情報の正確性を、予断をもって判定したくはありませんが、閣下の政府に対しては、1978年に日本が批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」により確立されたプライバシーの権利に関する義務に注意を払うよう、お願い申し上げます。〔筆者訳〕
という一文となる。この文書がパラグラフ・ライティングされているものと解釈した場合、この文はトピック・センテンス(主題文)であるから、本来、分かち書きしてはいけない。東京新聞の訳の緩さ(自在さ)をいかに解釈するのかは、読者次第である。

訳が厳密なものではないとはいえ、原文と対比する限りでは、東京新聞の和訳は、文書の意図を問題ない程度に伝えている。国連から事実確認が要求されていると解釈することは、誰にでも許されることであろう。このとき、23日付で東京新聞が報じる[5]ように、政権が無闇に反発しているだけであるとすれば、安倍政権は、ここでの「情報戦」に負けている。官僚組織ともども、問合せには淡々と応じるべきである。

安全を扱う分野の(自称)専門家としては、次の一文が気になる。

また、NGOの仕事、とりわけ国家安全保障のセンシティブな分野におけるものに対する、本法制の潜在的影響への懸念が湧き上がっております。政府は、この〔共謀罪の〕適用がこの分野には影響しないかのように繰り返してきたと言われています。しかし、「組織的犯罪集団」の定義の曖昧さは、依然として、例えば、国益に反して活動するとみなされたNGOの監視を合法化する機会を造り出すものと批判されています。〔筆者訳〕
これは、過日(2017年3月25日2017年4月26日)指摘したように、テロ等準備罪が、諸外国において「カラー革命」を支援してきた「戦争屋」に対する心理的な抑止力として機能するものと読み替えることも可能である。

テロ等準備罪の存在自体により、普遍的な人権保障の実現のために活動する非営利組織が萎縮するという具体的な危険が生じることは事実であるが、他方で、「戦争屋」の手下である活動家の内心に圧力が掛けられることを考慮すれば、テロ等準備罪の是非については、あくまで、これらの二種類の利益を比較考量した上で論じられるべきである。日本国民全員の金銭的利益だけで考慮すれば、ヘリコプターマネーによる財政破綻を避けるため(2017年3月30日記事)、テロ等準備罪が必要であったとされてしまうと、この船橋洋一氏及びジョージ・ソロス氏による巨大な一例ゆえに、多くの人権侵害は、金銭上、相対的に僅少な損害であると片付けられてしまうことになる。他方で、私自身も、正当な言論活動に対する萎縮効果を内心に感じているが、このマイナス効果は、金銭上、限りなくゼロとして算定されてしまうことになる。

「大事(=戦争屋への抑止)の前の小事(=言論者の萎縮)」をたびたび許してきた結果、現在の日本社会があると言えるが、テロ等準備罪創設の影響がいかなるものになるのかは、その適用・運用状況により、後世の判断を仰ぐほかない。同罪が戦争屋一味にのみ適用されたというストイックさを通じて、わが国は、世界に公正な法の運用をアピールすることができる。しかし、これだけでは、内心の萎縮という現今の批判の核心に十分に応答したものとはならない。後世における運用状況の十分な開示と、裁判所への権限の付与の二点が要点かと思われるが、両方とも、現在のわが国には、実現を望み得ない。大坂正明容疑者の逮捕は、偶然によるものかも知れないために、大きく報道されてしまうことはやむを得ないが、他方で、このニュースを警察による一種の示威行為と受け取る人々もいよう。現今の情報を総合すれば、わが国は、当面の間、人権の保障された民主主義国家とは程遠い姿勢を継続し、後世においても、そのように評価されることを良しとした、ということになろう。

今回も、長々と和訳に仕込まれた悪意の有無を検討してきたが、戦争屋の意に沿う情報を流通させるという情報ブローカー(中間業者)商売が、どれだけわが国の国益を棄損してきたかを考慮すれば、この検討作業も必要であったと言えよう。メディアのアジェンダ(議題)設定能力は、警戒を以て指摘されてきたことであるが、和訳をねじ曲げるという荒技も、最早、常に警戒すべき対象と化している。この状態は、現在の若年者への教育環境を考慮すれば、今後も継続することを考慮しておくべきであろう。正しい知識を追究しても学術活動上の不都合が生じることがなく、また、正確に報道すべき内容を報道しなかったときに適時・適量の制裁が加えられる世の中でなければ、当面、このような状況が続くものと考えて差し支えなかろう。なぜなら、客観的な見地から批判する人物のリソースは限定されたままであろうし、また、メディアも好き放題、金主の言うなりに飛ばし記事を載せまくるであろうからである。


[1]

[2] OHCHR | Special Rapporteur on Privacy
(2017年05月23日確認)
http://www.ohchr.org/EN/Issues/Privacy/SR/Pages/SRPrivacyIndex.aspx

[3] Letter to Japan on the the 'conspiracy' bill
(Joseph Cannataci, Special Rapporteur on the right to privacy、2017年05月18日)
http://www.ohchr.org/Documents/Issues/Privacy/OL_JPN.pdf

[4] 東京新聞:「恣意的運用」国際視点から警告 国連報告者、首相に書簡 「共謀罪」採決強行:社会(TOKYO Web)
(辻渕智之、2017年05月20日付朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201705/CK2017052002000123.html

[5] 東京新聞:「共謀罪」書簡の国連特別報告者 日本政府の抗議に反論:国際(TOKYO Web)
(ロンドン=小嶋麻友美、2017年5月23日朝刊付)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201705/CK2017052302000119.html




2017年5月29日追記

特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウと海渡雄一氏らによる翻訳も似通ったものであることに気が付いたので、(私自身のために)メモしておく。

[1] 国連特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏 共謀罪法案について安倍内閣総理大臣宛の書簡全体の翻訳 | ヒューマンライツ・ナウ
(2017年05月23日)
http://hrn.or.jp/news/11053/




2017年6月7日追記

大坂正明容疑者の逮捕は、本日付『産経新聞』のウェブニュースによれば、長い時間をかけて内偵し、機を逃さず逮捕したものであったという。逮捕がテロ等準備罪に向けたこの時期に偶然に一致したという見方は、成立しないものといえるが、他方で、逮捕・拘留せずに良い訳がないから、本件が不穏分子への威嚇効果を持つとしても、それは一般人には関わりのないことである。また、この逮捕を恣意的であるとして批判することも、容疑が重大である以上、失当であると言えよう。当人がなぜ逃亡し続けたのか、し続けられたのかという話も、幇助した組織も含めて、批判に晒されるべきである。

また、この人物の同定がDNA鑑定でのみ可能であったという報道内容には、いささか驚く。指紋や掌紋が決定打にならなかったということが驚きである。ただ、これ以上の詮索はしない。

[1] 半世紀近く逃亡、完全黙秘 人定作業難航の末に特定 渋谷暴動の大坂容疑者再逮捕 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
(記名なし、2017年06月07日15時02分)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170607-00000098-san-soci

〔...略...〕「中核派」の大坂正明容疑者(67)が7日、殺人容疑などで警視庁に逮捕された。公務執行妨害容疑で大阪府警に逮捕されてからの20日間、「完全黙秘」を貫いた大坂容疑者。〔...略...〕

「百パーセント(本人だと)裏付けるのは、正直不可能。これ以上ないところまで客観的な証拠を積み上げた」。ある府警幹部は、こう明かした。広島市内のマンションで捜索中の捜査員に体当たりしたとして、大坂容疑者が逮捕されたのは5月18日。〔...略...〕

供述が得られない中、大きな支えになったのはDNA型鑑定だった。生前に提出を受けていた大坂容疑者の母親(故人)のDNA型を照合したところ、「血縁関係があるとみて矛盾がない」との結果が出た。父親がすでに亡くなり入手できていなかった父系のDNA型についても、親族男性のものと照合し、「親族関係の可能性を否定しない」との結果が得られた。〔...略...〕

2017年5月21日日曜日

(メモ・感想)新東京オリンピックの中止理由は何になるのであろうか

阿部潔氏は、『反東京オリンピック宣言』(2016.08)※1所収の論考[1]において、『アクション&レガシープラン 二〇一六 中間報告』を、経済負担の大きさを糊塗するものである(p.41)と同時に経済ナショナリズムを推進するものである(p.54)、過去のオリンピックに対して歴史修正主義的である(pp.44-46)、国家に奉仕するセキュリティ体制を拓く(p.50)、などの観点から批判する。阿部氏は、以下のように、中止となった四〇年大会に係る歴史修正主義を批判する。

震災からの「復興」のために計画された四〇年大会は、残念ながら国際情勢に振り回されることで実現しなかった。そのように「幻のオリンピック」の歴史が淡々と語られる。

この阿部氏の批判は、私には、2020年大会の中止の言い訳として現今の北朝鮮情勢の悪化が利用されるという可能性をあぶり出すものとして読めてしまう。もちろん、これは牽強付会である。だがしかし、国勢を軟着陸させるのに、新東京オリンピックをいかにして利用するのかを考えた場合、考え過ぎても損はない。これはマジで冗談であるが、北朝鮮は、今後、毎週末に「ミサイル発射実験」を繰り返すかも知れないのである。新東京オリンピックに先立ち極東情勢が過度に緊張することは、「国際情勢に振り回される」という点で、過去の経験と共通部分を有することになる。「幻の四〇年大会」という過去の出来事は、一種の「預言」※2となるのである。もちろん、北朝鮮を満州国の残置国家であるとする(少数)説を採用する者からすれば、この線も、十分に考えられることである。


[1] 阿部潔, (2016.08).「先取りされた未来の憂鬱 東京二〇二〇年オリンピックとレガシープラン」, 『反東京オリンピック宣言』, 小笠原博毅・山本敦久〔編〕, 航思社.


※1 同書は、それなりに多岐にわたる論点を取り扱いはするが、能力の限界からか、あるいは意図的にか、著者らに先行する陰謀論界隈のブロガーらの議論を無視したものとなっている。たとえば、阿部氏の上掲論考のうち、セキュリティ面に係る議論については、参照すべき政府資料を参照していない、とのみ指摘しておこう。このため、内容の幾分かは、既視感に溢れるものとなっている。これらの、自ら「陰謀論」という名の泥に塗れずに先人の業績を掠取しているかのような、学術上の新規性に係るかの主張は、白井聡氏の『永続敗戦論』にも見て取れる。ここではあえて、同書の先取性について、注意しながら検討すべきであると明言しておこう。

※2 陰謀論に詳しい読者であれば、スティーブ・ジャクソン・ゲームズの『Illuminati: New World Order』だけが新東京オリンピックに係る「預言」を運ぶメディアではないことを、十分ご存じのはずである。『Dying Light』というゾンビ物のFPSゲーム(2015年2月; 4gamer.netより)は、オリンピック会場を建設する途中であった、イスタンブールを想起させる隔離都市であるハランを舞台としている。




2017(平成29)年5月28日追記・訂正

まず最初に、『反東京オリンピック宣言』の表紙に、著者らによる英語の題名『The Anti-Olympic Manifesto: Against 2020 Tokyo Olympic and Paralympic』があったことに、本記事の作成後に気が付いたので、ここに指摘してお詫びする。本ブログの記事の題名は、私の下手な英語で英語話者向けに意図を要約したものになっている。このため、英語の題名が間違っていると、遠い将来、(本ブログが消されなければ、)誰かに不都合を生じるやも知れない。記事のファイル名を変えることはせず、ここで修正しておくに留めることにする。

ところで、塚原東吾氏の「災害資本主義の只中での忘却への圧力――非常事態政治と正常性バイアス」の中に、normalcyという語がウォーレン・G・ハーディング氏により新たに造られた語であるという指摘が見られるが、これは誤りである[1]。ただし、同氏の大統領選挙キャンペーンにおいて、「日常に戻ろう(Return to normalcy)」というキャッチフレーズに用いられて[2]以来、使用されるようになった[3]ことは事実のようである。ここでの私の指摘は、本質的な批判ではない。ただ、「正常性バイアス」の使い方に係る批判の前に先立ち、準備を進める中で気が付いたことなので、まずは報告しておく。

塚原氏の論考に対して指摘しておきたいことは、「正常性バイアス」の用法が間違いとは言えないが、関東以東の居住者の心性を十分に説明し尽くせないという可能性である。正常性バイアスの語は、時間軸上、災害が具体的に生じる直前までの間か、または、発災直後に対して用いられてきた。この概念は、「煙が生じているのに(皆が逃げないから)行動しない状態」や、「その土地で生まれ育ったが一度も大地震を経験していないので自宅の耐震補修・改築を行わない人物」の心性を説明するものである。日常生活を送る中で突如発生した災害に対して気持ちを切り替えることの難しさ、日常時から災害時を想起することの難しさは、「正常性バイアス」の語の対象となるが、この語は、「日常化した、五感では(ほとんど)感知できないが、厳然と存在する具体的な危険の下にある人々の心性」を十分に説明できないのではないか。原子力ムラの(エア)御用学者によって歪められ(再)生産されつつある学術上のエビデンス(のいかがわしさ)や、そのエビデンスを恣意的に選択して報道するマスコミの姿勢といった、福島第一原発事故に対する個人のリスク観の形成に影響を与える主要素を、「正常性バイアス」の語は、十分に汲み取れていないのではなかろうか。もっとも、事故の影響が致命的であるという前提を誰もが共有した世界においてであれば、正常性バイアスの語は、福島第一原発事故に対しても、使用可能であるものと考えられる。とりあえずまで。


[1] The Mavens' Word of the Day
(1999年06月25日)
https://web.archive.org/web/20060618085340/http://randomhouse.com/wotd/index.pperl?date=19990625

A fact brought up at that time was that not only was normalcy around since 1857, or before Harding was even born, but the supposedly proper normality was only a few years older, first recorded in 1849.

[2] Return to normalcy - Wikipedia
(2017年05月28日確認)
https://en.wikipedia.org/wiki/Return_to_normalcy
#ページ内の根拠に係る2つのリンクのうち、リンク切れのものは、『Internet Archive Wayback Machine』に収録済み(上記[1])。

[3] british english - In Britain the word 'normalcy' is ridiculed - English Language & Usage Stack Exchange
(2013年09月27日)
https://english.stackexchange.com/questions/129016/in-britain-the-word-normalcy-is-ridiculed

2017年5月17日水曜日

嘘と過ちとは、事後の訂正の有無によっても弁別される(3)

#本稿は、本日(2017年5月17日)中に後半部分を追記したものである。

ジャーナリストのまさのあつこ氏は、今年(2017年)5月3日の時点で、浪江町の森林火災によりモニタリングポストの計測値が上昇したことを指摘する[1]とともに、降雨との関係を9日の記事[2]中で考察している。拙稿においても、羽田空港のモニタリングポストの計測値を確認した(2017年5月10日)。これらの材料をふまえれば、当該の山火事によって放射性物質の拡散が起こらなかったと断定することは、極めて困難となっている。

また、本ブログでは、『スプートニク日本』の掲載したイメージ写真が何らかの意図を有していたことまでを想定に入れた考察を提示した(2017年5月12日)。3.11当時、公務員ならば、「直ちに影響はない」という枝野幸男氏の言葉から、事の深刻さを十分に理解できたであろうが、この歴史に残るフレーズ以降、わが国では、何事も、考え過ぎるに越したことはない。この見立てが正しければ、福島第一原発事故に言及する表現者は、「情報戦」に参加しているものと心得ておいた方が無難である。とりわけ、マスコミ関係者の動向に対しては、周囲の厳しい目があるものと考えた方が良いであろう。

このような折、元・毎日新聞社従業員の『BuzzFeed Japan』の石戸諭氏は、まだ、下記引用のように報じた内容を訂正していない。『BuzzFeed』は、新興メディアの中では、ヒラリー・クリントン氏を応援する姿勢を鮮明にしており、また、日本語版で森友疑惑を批判的なスタンスで取り上げてきた辺り、ソロス一派と歩調を合わせている。福島第一原発事故についても問題がないかのように示唆する辺りは、ソロス一派と益々同調的であると言うことができよう。『BuzzFeed Japan』の権力批判とは、お金をくれそうな相手に応じて、フラグが立ったり立たなかったりするものと見える。そっとでも良いから、福島第一原発事故の影響がないかのように読める文面は、修正しておいた方が良かろう。

『BuzzFeed Japan』の言論の恣意性は、トランプ大統領に対する批判にも表れている。昨年(2016年)11月の米大統領選挙直後のことになるが、籏智広太氏によるトランプ氏のツイートへの批判[4]は、トランプ氏(陣営)による当該のツイート[5]の真偽そのものを吟味するものではなく、そのツイートに対する他のユーザらの反応に終始するものである。トランプ氏のツイートの和訳は、「プロ市民」となっている。しかし、この語では、トランプ氏が念頭に置いたと認められる「デモ活動の対価として金銭を受領している」という「プロフェッショナル」の意味合いが減じられたものとなってしまう。なぜなら、「プロ市民」という日本語は、手弁当による政治的活動という意味合いを残したものとして、曖昧に利用されているからである。トランプ氏の批判の主たる対象は、ジョージ・ソロス氏らの一派によると目されていた、金銭により動員された「人工芝運動」であった。籏智氏は、金銭的な対価を得て批判するプロであるところ、このニュアンスを意図的に抹消したと認められるのである。この籏智氏の記事がソロス一派の意に適うものであることを考慮すれば、全員が共通の利益を享受する存在であると考察することまでは、ほんの一歩である。無論、偶然の一致というものはあり得ようが、記事が一貫してトランプ氏の政敵であるソロス氏を利するように紡がれることと、そこに金銭的利益の可能性を指摘することとの間には、十分な理由があるものと考えて良い。

『BuzzFeed Japan』の主題の取り上げ方のタイミングは、マスメディアに準ずるものとはいえ、森友学園疑惑についても、恣意的である。同紙の森友学園疑惑の取り上げ方は、本日(2017年5月17日)の『朝日新聞』朝刊1面における「加計学園疑惑」の取り上げ方と同じく、タイムライン上に十分な違和感があるものである(2017年3月30日の記事参照)。森友学園疑惑のマスメディア報道の主要論調に乗る形で、この話題を継続的に取り上げるに至ったということ自体、同紙(BuzzFeed)のリソースまで加味すれば、低い確率で生起する事象であるとみなしても良いであろう。トランプ氏への反対、森友学園疑惑、福島第一原発事故という、3種の事象の大枠に対する賛否だけを問うても、8分の1未満の確率でしか、『BuzzFeed Japan』とソロス一派の態度とは、一致しないのである。『BuzzFeed Japan』がソロス一味と同一視され続けないためには、個別の論点を是々非々で厳しく問い、ソロス一味の金銭上の利益と対立するような、金融寡頭制批判を厳しく展開する必要があろう。


[1] 帰宅困難区域の山火事は何を物語るか(まさのあつこ) - 個人 - Yahoo!ニュース
(まさのあつこ、2017年05月03日13:40)
https://news.yahoo.co.jp/byline/masanoatsuko/20170509-00070783/

[2] 消火活動続行中:帰宅困難区域の山火事を教訓に国が行うべきこと(まさのあつこ) - 個人 - Yahoo!ニュース
(まさのあつこ、2017年05月09日19:53)
https://news.yahoo.co.jp/byline/masanoatsuko/20170503-00070575/

[3] 福島県・浪江町の山火事とデマ 「放射性物質が飛散」と報じた地方紙が謝罪
(2017年05月07日07:01 GMT、石戸諭)
https://www.buzzfeed.com/satoruishido/fukushima-yamakaji

危険論が広がったが、福島県内でも放射線量の数値が上がっていないのが事実だ。全国の状況は原子力規制庁のホームページで確認できる。

[4] トランプ“大統領“「プロ市民がデモをしている」とつぶやき炎上中 (BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース
(BuzzFeed Japan/籏智広太、2016年11月11日14:29)
https://web.archive.org/web/20161219133147/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161111-00010005-bfj-int

"公正に開かれた大統領選挙が、大成功に終わった。いま、プロ市民たちが、メディアに扇動されてデモをしている!アンフェアだ!"
〔トランプ氏の〕発言はさっそく炎上中だ。つぶやきから3時間でリツイートは3万5千回近くにまで伸び、多くの批判が集まっている。
〔...略...〕
ちなみに2012年、前回の大統領選挙のとき、トランプ氏はこうつぶやき、デモを「扇動」した過去がある。

[5]




2017年5月18日修正

文言を分かりやすく改めた。

報道機関は、常に権力を批判していれば、誰にも恣意性を批判されない。このプリンシプルに違背しているために、最近の『BuzzFeed Japan』は批判されるのである。

2017年5月12日金曜日

嘘と過ちとは、事後の訂正の有無によっても弁別される(2)

#先日の記事(2017年05月07日)よりもハイブローで不健全な予想である。このため、本記事は、別立てとした。読者諸賢には、あくまで、小さな可能性であるとして、穏当に検討されることを願う。

『スプートニク日本』に掲載されていたカナダ・アルバータの森林火災[1]の写真[2]は、2017年5月12日現在、リンク用のサムネイルに至るまで削除ないし差替されている[3]が、この写真がわざわざ選択された理由として、もう一段深いものを見込むことも可能である。つまり、チェルノブイリにおける被害の様相をそれとなく日本国民に伝えるべく、この写真がわざわざ選定されたという理由である。(『国際秘密力研究』の菊池氏には批判されそうであるが、)性悪説に立てば、人間は、学習する機会がなければ学習しようとはしない。『スプートニク日本』の企画者は、日本のネトウヨのような分からず屋にも福島第一原発事故の影響を理解させるためには、荒療治が必要だと考えた可能性がある。

今回、ネトウヨの類いは、Googleの画像検索を利用して『スプートニク日本』を批判したものと思われるが、このとき、Google検索結果には、『PinInterest』の災害写真集[4]がリンクの上位に掲載される(閲覧注意)。日本人は、チェルノブイリ原発事故を他山の石として学習する必要があるが、ネトウヨのような学習しようとしない人物らにもわが国の将来像を啓蒙する必要がある。世界の重大事故の中には、当然にチェルノブイリ原発事故が含まれるから、事故に係る写真集に誘導しさえすれば、ネトウヨの目にもチェルノブイリの惨状が映る機会が生じる。このように『スプートニク日本』の担当者が考えたとしても、完全な無理筋とまでは言えないのである。ただし、一般人から見て、この考え方が許容されない程度の疑り深さに到達してしまっていることも、私自身が自覚している。

広島の原爆直後の産婆さんの話などは、3.11後に(再度)広く知られるに至っているから、福島第一原発事故に係る「情報戦争」において、チェルノブイリにおける悲劇を必要以上の形で参照する必要はない、と考えることも可能であろう。しかしながら、一部のネトウヨらは、安全性を主張する余り、事故後の「影響ゼロ」を自身でも信じこんでしまっているようにも見える。また、(エア)御用学者らは、事故の影響がないと主張してしまって、引くに引けなくなり、現在に至るから、今更、自説を修正することなどできないのであろう。これらの矯正困難な犯罪者(絶対安全を主張した御用学者や雇用された書込主は、背任罪や詐欺罪を犯している)こそに教化が必要であるとき、一種の「Scared and Straight」(脅して直す)を試みようとする動きがあっても、おかしくはない。念のため、「Scared and Straight」とは、筋金入りの犯罪者が俺みたいになるなと非行少年を諭すという方法であるが、これは、『キャンベル共同計画』のメタ分析によって、逆効果がある、つまり、失敗政策であることが明確に示されている。それに、被写体がいかなる思いで写真撮影に応じたのかも定かではないから、被写体の人権から見ても問題含みのものである。ただ、日本の現在の映像報道の事情は、世界標準から見ても特殊であるし、この特殊性は戦後長い時間を掛けて形成された洗脳政策の一環である。このため、仮に、チェルノブイリの写真を通じたショック療法が企図され実行されていたとしても、この企図をガラパゴス的見地から全批判することは、なかなかに難しい。それに、ショック療法が必要なほどネトウヨがこじらせてしまっているのも事実ではある。写真を通じた情報戦が実在するとすれば、そのあり方を批判する前に、日本国民であるならば、まず最初に「メルトダウンはないだす」の全否定から始めないといけないであろう。


[1] Engulfed by fire: Tens of thousands evacuating from Alberta blaze in Canada (PHOTOS, VIDEOS) — RT News
(記名なし、2016年05月04日00:35、更新 2016年05月04日14:15)
https://www.rt.com/news/341727-fort-mcmurray-alberta-fire-evacuation/

[2] https://jp.sputniknews.com/images/211/46/2114616.jpg

[3] 経済産業省 核廃棄物の埋めたてが可能な場所を示す「マップ」基準まとめる
(2017年05月02日 17:25)
https://jp.sputniknews.com/japan/201705023594876/

[4] 196 curated Catastrophies/Disasters ideas by onenfay12 | Oklahoma city, September 11 and Natural disasters
(2017年05月12日確認、閲覧注意
https://www.pinterest.com/onenfay12/catastrophiesdisasters/

トランプ政権内のゴタゴタがまた報じられることには警戒が必要である

韓国における終末高高度防衛ミサイル(THAAD, Terminal High Altitude Area Defense missile)の費用負担を巡り、トランプ米大統領とマクマスター大統領補佐官(国家安全保障)との意見に相違が見られた、トランプ氏がマクマスター氏に立腹しているとの記事が『朝鮮日報 日本語版』[1]に見られるが、この記事の出典は、エリ・レイク(Eli Lake)氏によるブルームバーグのコラム[2]である。『朝鮮日報 日本語版』の11日の記事は、レイク氏の8日のコラムを正確かつ必要十分に要約している。このため、ここで指摘されているトランプ政権内のゴタゴタに係る真偽の正確性は、専ら、レイク氏の記事に依存することになる。レイク氏の業績や同氏に対する批判等は、『Wikipedia』英語版[3]に出典とともに詳しく記されている※1

エリ・レイク氏は、『New York Sun』、『United Press International』[4]、『ワシントン・タイムズ』[5]、『ニューズウィーク』および『デイリー・ビースト』を経て『ブルームバーグ』という経歴を有するジャーナリストであるが、その記事に対しては、誘導的であるとの複数の批判が寄せられている。たとえば、ベンガジ事件に係るレイク氏の報道は米軍の能力を不当に過大視している、とのエミリー・アローウッド氏(Emily Arrowood)の指摘がある[6]。ケン・シルバースタイン(Ken Silverstein)氏は、レイク氏への批判の急先鋒であるが、レイク氏がオサマ・ビン=ラディン殺害事件に係るオバマ政権の公式発表を都合良く利用して政治的アジェンダを流布しようとしたのではないか、と批判している[7]。また、シルバースタイン氏は、レイク氏がジョージア(元のグルジア共和国)の米国ロビイストに食事代を奢られていたことをシルバースタイン氏が指摘[8]して以来、レイク氏との仲が悪化したことを付言している[7]

なお、米国では、権力者とマスコミが食事をともにすることがジャーナリストの理念に反するものとの理解が共通するようであるが、わが国では、少なくとも大マスコミにおいては、この考え方は失われている。『ワシントン・タイムズ』の記者でもあった[9]Takehiko Kambayashi氏は、ビル・コヴァッチ氏とトム・ローゼンスティール氏の共著『ジャーナリズムの原則(The Elements of Journalism)』[10](引用は英文)を挙げて、メディア関係者の安倍晋三氏との会食をメモしている[11]。なお、同書の概要は、NPOのアメリカ報道協会(American Press Institute)のブログにも要約されており[12]、いくつかの賞を受賞しているようであるから、アメリカにおけるジャーナリズムの理念を端的に示すものと解釈して構わないであろう。他方、安倍晋三氏の「寿司友マスコミ」などとの「会食」については、山本太郎氏がかなり詳しく追及した[13]ものの、それに対する政府の答弁書[14]は、ほとんど何も回答していないと解釈して良い内容である。しかし、これを十分に報じることによって自己検証機能を発揮した大マスコミは皆無であるから、米国ジャーナリズムのこの理念は、日本語マスメディアにおいては、実質的に死滅しているとしても良かろう。

このとき、米国水準のジャーナリズムに到達していないと批判されるレイク氏のインサイダー記事は、われわれ日本人には、なおのこと、理解し難いものである。トランプ政権内の人物のうち、トランプ氏とマクマスター氏との対立から、不利益よりも利益を得ることになる者であれば、トランプ政権のゴタゴタを表沙汰にしてでも、レイク氏のような風評のあるジャーナリストを通じて、政権内における不協和を表にすることを望むかも知れない。マクマスター氏自身は、米軍人の一人一人にも責任を負う身であるから、率先してこの種の軋轢を公表する理由を持たないであろう。ただ、現今の米日関係を繋いだと噂されたコネクションまでを含めて考察すれば、答えは自ずから導けそうなものである。

このような「情報戦」にインサイダーの情報提供者が勝利したとしても、よほどのことがない限り、マクマスター氏の後任も、米国(民)に対して真に忠実な人物が推挙されることになろう。もはや、アメリカの安全を担う人物や組織は、末端レベルに至るまで、両建て戦術を弄する国際秘密力集団の手口に気が付いてしまっている。よほど後ろ暗いところがある人物が抜擢されない限り、後任の米軍関係者も、同胞を国際秘密力集団に売り渡すことはできないであろう。ただ、米軍が動かない代わりに、日本人が海外派遣され、そこで(シリアの「白ヘルメット」らによるもののような)偽旗作戦が仕組まれ、日本人が巻き込まれるというシナリオは、ますます現実味を増しているということになる。日本人は、このゴタゴタを他山の石として警戒すべきではあろう。


※1 現存する人物に係る『Wikipedia』のルールや、このルールがかなり厳格かつ政治的に利用されている日本語版の情況からすれば、奇異に映るかも知れないが、事実として、本記事で参考にした内容への出典が記されている。


[1] THAAD:「トランプ大統領、韓国費用負担発言覆したマクマスター氏に激怒」-Chosun online 朝鮮日報
(ナム・ジョンミ、2017年05月11日08時10分)
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/05/11/2017051100516.html

[2] Washington Loves General McMaster, But Trump Doesn't - Bloomberg
(Eli Lake、2017年05月08日14:44:34.337Z)
https://www.bloomberg.com/view/articles/2017-05-08/washington-loves-general-mcmaster-but-trump-doesn-t

[3] Eli Lake - Wikipedia
(2017年05月12日閲覧)
https://en.wikipedia.org/wiki/Eli_Lake

Eli Lake - Wikipedia

[4] United Press International - Wikipedia
(2017年05月12日閲覧)
https://en.wikipedia.org/wiki/United_Press_International

[5] The Washington Times - Wikipedia
(2017年05月12日閲覧)
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Washington_Times

[6] How Eli Lake Blundered His Daily Beast Benghazi Report
(Emily Arrowood、2013年11月07日10:16 EST)
https://www.mediamatters.org/blog/2013/11/07/how-eli-lake-blundered-his-daily-beast-benghazi/196778

デイリー・ビーストの寄稿者であるエリ・レイクは、オバマ政権がベンガジにおけるテロリスト達の攻撃への対応において、十分な軍の支援を送らなかったという「深刻な失態」をしでかしたのではないかと主張した。しかし、レイクの主張は、共和党に主導され確定された事件のタイムラインに基づくものであるが、事件当日の夜の実施状況よりも早期に、または、より多数の兵力を差し向けることが不可能であった、と軍のリーダーたちが語っていることを、まったく考慮しないものである。
#本文の意を損なわないように和訳したつもりであるが、逐語訳ではない。

[7] [Controversy] | Anatomy of an Al Qaeda “Conference Call,” by Ken Silverstein | Harper's Magazine
(Ken Silverstein、2013年08月15日15:58)
https://harpers.org/blog/2013/08/anatomy-of-an-al-qaeda-conference-call/

多くのレポーターが政府の説明を出版しようと急いだ。だがしかし、レイクにとって、この政府説明は、強力な政治的アジェンダに満ちた情報源からの疑わしい話を、誤解を招きかねないように埋め込むという職業キャリア上のパターンに合致するものであった。

[8] Neoconservatives hype a new Cold War - Salon.com
(Oct 5, 2011 12:30 PM EDT)
http://www.salon.com/2011/10/05/neoconservatives_hype_a_new_cold_war/

[9] Japan's ex-leader calls for changes home, abroad - Washington Times
(The Washington Times、2006年06月15日)
http://www.washingtontimes.com/news/2006/jun/15/20060615-095702-8777r/

[10] NDL-OPAC - 書誌情報
(ビル・コヴァッチ、トム・ローゼンスティール〔著〕, 加藤岳文・斎藤邦泰〔訳〕, (2002年12月)『ジャーナリズムの原則』, 東京: 日本経済評論社.)
http://id.ndl.go.jp/bib/000004008352

[11] PM Abe’s Wining & Dining with journalists – Takehiko Kambayashi
(Takehiko Kambayashi、2016年10月23日11:45+00:00、更新2017年05月07日19:56+00:00)
https://takehikok.com/dining-wining/

[12] The elements of journalism - American Press Institute
(American Press Institute、2013年10月09日)
https://www.americanpressinstitute.org/journalism-essentials/what-is-journalism/elements-journalism/

[13] 質問主意書:参議院
(第188回参議院質問主意書質問第12号、山本太郎、2014年12月24日)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/188/syuh/s188012.htm

新聞報道によれば、安倍首相は第二次安倍内閣発足以降、全国紙やテレビキー局といった報道各社の社長等の経営幹部や解説委員、論説委員あるいは政治関連担当記者らとの「会食」を頻回に行っていることが明らかにされており、この二年間で安倍首相とこのような報道関係者らとの会食は、実に四十回以上にも及び、歴代首相の中でも突出した頻度であると指摘されている。メディア戦略を重要視しているとされる安倍首相であるが、政権のトップとメディア関係者の親密な関係、政治家とメディアの癒着が、報道の中立公正公平、不偏不党の観点から批判の対象となることは、今や欧米などの先進諸国においては常識であり、安倍首相のこれらの行動は、国際的な常識から見ても極めて奇異であると言わざるを得ない。また、報道関係者以外にも、安倍政権の推進する政策と利益相反関係にあると国民から疑われかねない企業、団体幹部と安倍首相との「会食」が行われている事実も報じられており、これら一般常識から逸脱した安倍首相の行いについて、安倍政権は国民に対して真摯かつ誠実な説明をすべきであると考える。以上を踏まえて、安倍首相が行っているこれらの報道関係者さらには利益相反関係にあると国民から疑われかねない企業、団体幹部らとの「会食」に関して、政府としてはいかなる現状認識を持っているのか、その見解を明らかにされたく、以下質問する。

一 特定秘密の保護に関する法律(以下「特定秘密保護法」という。)が成立した平成二十五年十二月六日の十日後に当たる平成二十五年十二月十六日、安倍首相は報道関係者らと東京・赤坂の中国料理店で会食を行ったとの報道があるが、これは事実か。事実であるならば、その会食を企画し呼び掛けた者の氏名とその所属、参加した全ての出席者の氏名とその所属及び会食に要した全金額を具体的に明示されたい。加えて、その費用を自己の飲食した割合以上に支出した者、あるいは自己の飲食した割合以下しか負担しなかった者がある場合には、その当該者の氏名及びその所属を全て明らかにされたい。特に、安倍首相が飲食したものに関する費用については、それを負担した者の氏名及びその所属、安倍首相自身が負担したのであれば、その費用の出処について具体的に明らかにされたい。また、これらの質問に対して答弁できない場合は、その理由を具体的根拠を示して国民の納得できる形で明らかにされたい。

二 安倍晋三氏が首相に就任して初めて靖国神社を参拝した平成二十五年十二月二十六日、安倍首相は報道関係者らと東京・赤坂の日本料理店で会食を行ったとの報道があるが、これは事実か。〔...略...〕

三 消費税増税が施行された平成二十六年四月一日及び翌四月二日、安倍首相は報道関係者らと東京で二日続けて会食を行ったとの報道があるが、これらは事実か。〔...略...〕

四 安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が集団的自衛権行使を容認するよう求めた報告書を提出したのを受けて、安倍首相自ら臨時記者会見において集団的自衛権に関する検討を公式に表明した平成二十六年五月十五日、安倍首相は報道関係者らと東京・西新橋のすし店で会食を行ったとの報道があるが、これは事実か。〔...略...〕

五 平成二十六年十二月十四日に行われた衆議院議員総選挙の二日後に当たる十二月十六日にも、安倍首相は報道関係者らと東京・西新橋のすし店で会食を行ったとの報道があるが、これは事実か。〔...略...〕

[14] 質問主意書:参議院
(安倍晋三、内閣参質188第12号、平成27(2015)年01月09日)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/188/touh/t188012.htm

一から五まで及び九について

御指摘の「会食」については、政府として企画等を行っておらず、その費用も支出していないことから、お尋ねについてお答えすることは困難である。




2017(平成29)年05月12日18時追記

レイク氏の記事がバランスに欠けたものであるか、あるいは国際安全保障を担当するプロとしては能力不足であることを示す兆候は、前FBI長官のジェイムズ・コミー氏(James Comey)に係る論評記事の中にも見出すことができる。サイバー攻撃の「犯人」をロシアとして名指しするにもかかわらず、当時から話題になっていた『Vault 7』を念頭に置いた言及が見られないのである。『Vault 7』の公開により、IPアドレスの詐称が可能という攻撃方法が存在することが(より)広く知られるようになった。攻撃の発信元のIPアドレスが特定国に割り振られたものであるからといって、攻撃者をその国の人物であると断定できなくなっているのである。この技術的な特徴を踏まえないサイバー攻撃の解説は、もはや、容認されない。

[15] Comey Is Now the Most Powerful Person in Washington - Bloomberg
(Eli Lake、2017年03月22日14:38:48.598Z)
https://www.bloomberg.com/view/articles/2017-03-22/comey-is-now-the-most-powerful-person-in-washington

2017年5月10日水曜日

羽田空港モニタリングポスト計測値を降雨量とともに図示してみた

原子力規制委員会が公表している都内のモニタリングポスト(MP)計測値のうち、羽田空港※1の分(上段)を、降雨量10分値(下段)とともにグラフ化してみた。詳しくは、画像ファイル(png形式、11,476,901バイト、Googleドライブ、「w20170510_MP_羽田空港.png」)を参照されたい。水色の垂直線は、参考のため、降雨があるときに限り引いてみたものである。情報の種類としては、下段のアメダス10分値と被ることになる上、1ピクセル分ずれることがあり、正確さにも欠けるが、学術研究でもないから、その辺は見逃して欲しい。ファイルサイズが大きすぎるし、サムネイルを載せても意味がないような絵になるので、サムネイルは掲載しない。作成時のスクリプトは無理矢理なものなので、これも掲載しない。ただし、同じグラフを再現すること自体は、可能なはずである。なお、作成には『R』と『ggplot2』『XML』『RCurl』パッケージを利用した。

ガイガーカウンターの類い※2を所持している都民なら、降雨と関係なく、北風等※3によって(空間線量等の)計測値が上昇するという経験は、かなり馴染みの深いものであろうが、羽田空港のMPの計測値は、上昇の際、ほぼすべてが降雨を伴い、数時間程度で元に戻るというパターンを繰り返している。MPと手元の計測値は、明らかに連動していない。そもそも、MPの計測値からは、バックグラウンドとされる0.055マイクロシーベルト/時(新宿の場合か)ほどが減じられているが、この点は、ダウンロードサイトにおいても、適切に解説されていない。この点だけでも、原子力規制委員会の公表のあり方は、改善されるに値する。

しかも、降雨に伴い、Rn-222(ラドン)ならびにその娘・孫核種により空間線量が上昇するという指摘がある[1], [2]とはいえ、MPの変動は、ラドンだけでは、説明が難しそうである。ラドンによるとの説明は、御用学者らが好んで採用するものであるが、正確を期せば、MPの計測値の変動は、別種の機器を利用しなければ、ラドンによるものと確定することはできない。羽田空港周辺を移動する大気中のラドンの濃度に係る時空間統計が存在すれば、ラドンの濃度分布の時空間上の変化だけでMPの計測値の変動を説明することが可能かとは思われるが、これは、もちろん、ないものねだりというものである。原因がラドンであってフクイチ由来の放射性物質ではないことを断定するためには、ラドンの発生・上昇・蓄積の過程、MPの上空を通過する大気中のラドンの濃度分布、雨による降下のメカニズム、降雨量との対応、のそれぞれについての説明が必要であり、MPの計測値の変動の100%がカバーされる必要がある。簡単な事例を挙げれば、グラフにおける変動のうち、2015年11月以降について、説明のしにくそうな変動を、下記リストに示してみたが、このうち、2017年5月1日の変動と4月11日・18日の変動は、降雨量と以前の雨の日からの間隔だけでは説明できないほどの差がある。この変動の差を十分に説明できるだけのモデルなりを提示して、東京都区部において、実際にそれだけの変動がラドンによって生じることを、ある程度の説得力を以て示す必要が、(エア)御用学者には求められているのである。

  • 2015年11月18~19日
  • 2015年11月25~26日
  • 2016年1月18日
  • 2016年3月7日
  • 2016年3月17日
  • 2016年10月28日
  • 2016年12月27日
  • 2017年2月10日
  • 2017年3月28日
  • 2017年4月11日
  • 2017年4月18日
  • 2017年5月1日

私から見れば、帰還困難区域の山林が燃焼した以上、樹木に固着された放射性物質が大気中に拡散するため、その煤煙が関東地方まで流れてくるとき、当該地域で空間線量が上昇するのは、当然の帰結である。なぜ、そこまで事故の影響を「なかったこと」にしたいのか。放射能汚染の問題は、そもそもが、程度問題である。事故やその後の影響を、まるで「なかったこと」にするという態度は、あまりにも科学的とは言い難い。(私よりも、余程、)科学的であることに拘泥し、そのように表明する者が取る態度としては、相応しくないものである。私が「原発ムラと仲間たち」の中で、声の大きな学術関係者らを軽蔑するのは、科学に対して、時々の都合に応じて彼らが態度を変えるからでもある。


※1 羽田空港は、私の自宅からみて南西方面の最寄りのMPである。距離を計測していないが、新宿が最近隣とは思われる。ただし、新宿のMPの場合、気象台などとの対応関係を考察するのが面倒であったので、同一地点とみなすことを主張しやすい羽田空港を選択した次第である。MPとAMeDAS観測所の双方の所在地を確認しておらず、羽田空港も広いから、案外問題になるほどの距離が生じているかもしれないが、その追究は、本文中で後ほど述べるラドンの問題を解決できる見込みが立ってからである。

※2 説明やその後の表現が面倒になるので、表現を丸めた適当なものとしておく。

※3 北半球では、台風による風の向きも同一の形状を取るが、全球規模のスケールでの「巻いた風」も、『Meteocentrale スイス』の風向き予測[3]では、それなりに良く見るものである。


[1] 坑内の放射線 (04-03-02-01) - ATOMICA -
(一般財団法人高度情報科学技術研究機構(RIST)、1998年05月)
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=04-03-02-01

[2] ラドン-222 (222Rn) | 原子力資料情報室(CNIC)
(原子力資料情報室、作成日不明)
http://www.cnic.jp/knowledge/2601

[3] Weather-Extra Japan zoom
http://www.meteocentrale.ch/index.php?id=2379&L=10




2021(令和3)年7月28日修正

グーグル・ドライブのファイルにセキュリティアップデートとやらが適用され、リンクにアクセス不能となる可能性があるとの通知を受け、当該リンクを修正した。内容は変更していない。

2017年5月9日火曜日

(メモ・感想)ジャパン・ハンドラーズなき後の日本はそれでもアメリカを選ぶのか

2017年3月25日の記事中に示した、リチャード・ターガート・マーフィー氏の『日本 呪縛の構図』[1]の出典を(一部)確認したので、本日、当該の記事を修正した。また、本記事の末尾に引用部分を掲載して、感想を示す。なお、題名への私の答えは、分からないというものである。

マーフィー氏の筆致は、日本における米国(人)の戦争屋、すなわち、(ニュー・)ジャパン・ハンドラーズ※1の役割を明記している。また、ハンドラーズのカウンターパートである(高級)官僚の役割についても、同書の中に十分な量の記述がある。マーフィー氏の示した日本の権力構造は、反発する向きもあろうが、世界的に発信されてしまったものである。社会科学分野における事実の解釈において、絶対的に覆すことのできない解釈というものはないが、限りなく優勢である有力説があるとは言うことができよう。今後の日本研究において、ジャパン・ハンドラーズとカウンターパートである高級官僚とが結託して鳩山政権を転覆させたという過去の実績は、周知の事実に対する解釈として、現在の政治情況理解の出発点に据えるべきであろう※2

ジャパン・ハンドラーズとそのカウンターパートたちの交友関係自体を陰謀説と片付けることは、最早、学術上は困難なことである。引用部分の末尾にある中国(の漁船)・北朝鮮(のミサイル発射実験)・太平洋プレート(による3.11)という三点の現象の要因に、ジャパン・ハンドラーズたちの積極的な関与を認めることはヒュミントの領域であり、その疎明も困難であろう。しかし、これらの重大な出来事を受けて、ジャパン・ハンドラーズたちがいかに活動したのかの検証作業は、LIHOP(Let It Happen On Purposeの略、未必の故意に相当)の観点からも必要な、陰謀論とは呼べない学術的探究となろう。たとえば、長島昭久氏の民進党の離党(2017年4月10日)も、この観点から批判的な検証の対象となって良いであろう。

ただ、マーフィー氏の日中関係に係る持論は、中国史における冊封体制を考慮しないものであるように見えるという疑問がある。マーフィー氏が下記の引用部分で「日本にとってアメリカを同盟国に選ぶのは合理的な選択」と結論する裏には、中国が若者たちの不満を処理しきれていないように見えていたという2000年代以降の傾向と、日本人の若年・中年層が中国のような暴動に走らなかったという現状との非対称性が隠されているのではないか。中国の若年世代にあまねく経済的な恩恵が及び、家族が持てる程度の暮らしを誰もが送れるようになったとき、日本の大多数の若年層の生活状況は、果たして、中国人の嫉妬を買うものであり続けているであろうか。近い未来に、中国人の若年世代は、自国の状況と日本人の同世代の生活状況とを、どのように比較するのであろうか。この対比を経ないことには、マーフィー氏の結論に即乗りする訳にはいかない。

現在、中国は、一帯一路を新たなフロンティアに見立てた土地本位経済・途上国開発経済に依存しようとしている[2]。しかし、少なくとも、(嫌中派の星とも言うべき存在であった)岡崎久彦氏[3]が2008年に予測したような大崩壊を起こしてはいない。今や経済規模で世界第一位となった中国は、周辺国の尊敬を得ることをも目的として、AIIBを通じて、一帯一路の経由国を対象に、新「マーシャル・プラン」を実施するであろう。アフガニスタン・パキスタン・イラン・イラク・シリアは、「戦後」直後である。この一帯一路における「対口支援」が、中国によるアフリカ開発について岡崎氏が揶揄していたような失敗に陥らなければ、その成功は、中国国民に自国に対する新たな誇りを与えることになろう。一帯一路的手法は、中東の産油地帯を越えても適用されるかも知れない。北アフリカは、カラー革命とリビア侵略の煽りを受け、やはり戦後状態にある。一帯一路は、大西洋を目指す円弧(great arc)を形成することを目的としているかも知れない、などと考えもできる。つまり、ハートランド理論に対する万里の長城としても機能しうることが目的とされているかも知れないのである※3

日本人が中国による一帯一路の成功を目の当たりにし、また、ジャパン・ハンドラーズの歴史的な搾取の構造を理解したとき、日本人は、米国との関係を再考するのではないか。過去、中国の朝貢外交がその時々の朝貢国の経済に対してどれだけの負荷を掛けていたものかは分かりかねるが、その支出が日本の大衆にとって合理的に見えるとき、中国への鞍替えは、容易に生じうるであろう。90年代以降、日本企業が中国に大々的に進出した一方で、その主力となった戦後のベビーブーマー(とその子世代)は、そのときの軋轢から、ネトウヨの主要論調を用意し、これに同調した同世代が広範なネトウヨ群を形成するに至った。この経緯に見るように、場当たり的かつ受動的に活動し、その都度、周囲の環境に対して感情的に反応する状態は、日本人の「膏薬」ぶりを示している。つまり、プリンシプルなく、どこにでも屁理屈とともにくっつけられる存在である。米国と中国との外交に係る日本の判断は、合理的で、先進国に生きる(真っ当な)市民からみて真っ当なものであれば、今後、いかなる見かけ上の事態が生じても、(福島第一原発事故を超えて目に見えるほどの)大きな問題には至らないであろう。しかし、現実には、エリートであるべき人物の判断と日本人の衆愚の意見とは、相似したものとなっている。


※1 誤解なきように特記しておくが、マーフィー氏による「ニュー・ジャパン・ハンズ」の定義(p.208)は、あくまで、(当時の)鳩山由紀夫氏を敵と見做した米国側の知日派という意味しか有さない。しかし、これらの「知日派」は、偶然によるものか、本ブログによるところの「戦争屋」と人物ならびに集団が一致する。よって、日本の国民益を重視する考察者ならば、これらの語を互換的に使用可能である。本ブログでは、「戦争屋」の語を逐一定義し、名指ししたリチャード・アーミテージ氏とマイケル・グリーン氏については、根拠を添えた指摘をなしている。彼らの日本語マスメディアにおける取扱いは、公人と呼んで何ら問題のない程度にヘビーローテーションであり、重要人物扱いである。

※2 この理解が周知されれば、鳩山友紀夫氏と小沢一郎氏の名誉回復、彼らの名誉を失墜させた司法および行政活動に対する原因の究明、ならびに関係者の処罰は、今後の日本の政治活動を正常化する上で、望ましい正義と化すであろう。

※3 東の果てに魔界への入口が開いているだなんて、まるでスーパーファミコンの『ロマンシング サ・ガ3』(1995年, スクウェア)の世界であるが、まさか、ね。


[1] R・ターガート・マーフィー著, 仲達志訳, (2015年12月).『日本呪縛の構図 この国の過去、現在、そして未来』下巻, 東京: 早川書房, pp.222-223.(リンクはNDL-OPAC)

[2] 西村豪太, (2015年12月).『米中経済戦争 AIIB対TPP』, 東洋経済新報社, 第5章.(リンクはNDL-OPAC)

[3] 岡崎久彦・渡辺利夫, (2008年11月). 『中国は歴史に復讐される 繁栄か、崩壊か―赤い資本主義の全シナリオ』, 東京: 育鵬社.(リンクはNDL-OPAC)


〔#p.222〕沖縄県民が立ち上がったことで新たな現実に直面した日本にも二つの選択肢があった。一つ目は、日本政府が日米「同盟」が実際には真の同盟関係とは似て非なるものであることを公然と認めることだった。今の日本はアメリカの同盟国ではないし、過去に一度も同盟国だったことはない。それよりむしろ、日本はアメリカの保護国に近い存在と言っていい。国内統治に関してはある程度の裁量権を与えられているが、すべての重要な外交政策や安全保障上の問題、そして既存システムの改変につながるような経済政策の問題の扱いについては、必ずアメリカ政府の意思に委ねなくてはならないからだ。この事実を公然と認めれば様々な対応が必要になることは言うまでもないが、その一つとして沖縄の米軍基地の大半を本土に移転させ、米軍による「占領」の負担(そこには大規模な基地がもたらす騒音被害や混乱はもちろん、傷ついた国家の威信、主権の侵害、占領軍が必ずもたらす腐敗などが含まれる)を狭小な沖縄本島だけでなく、日本全土で公平に引き受ける必要が生じるだろう。

もう一つの選択肢は、日本が自らの運命を支配し、自らの手で国家を運営する能力を取り戻すことである。言い換えれば、それは一九三〇年代に日本が放棄した主権を回復することを意味する。当時の日本は根本的な政治問題に正面から向き合い、どんな政治体制においても最大の危険分子となりうる勢力(物理的な強制手段を自由に使える立場にある野心的で過激な若者たち)を抑えつけることを怠った結果、主権を手離してしまったのだ。だが、その回復に見事成功し、日本が真の意味で完全な主権国家に戻れるようなことがあれば、結果的にアメリカの本当の同盟国になったとしても〔#以下p.223〕おかしくない。実際に、そうなる可能性はかなり高いと言っていい。日本が新たに世界的な大国として台頭した中国とこれほど近い距離にあること、そして中国自体が自国の過激な若者たちを抑えつけるのに苦労していることを考えれば、現実主義の政治理論からして(単に常識で考えてもそうだが)、日本にとってアメリカを同盟国に選ぶのは合理的な選択と言えるからだ。だが、日本がアメリカ(あるいはそれ以外のどんな国でもいいが)の同盟国になるには、その前に真の主権国家になる必要がある。

これこそが民主党、とりわけ小沢〔#一郎〕という一人の政治家が把握していた日本の現状だった。鳩山が日米同盟の再交渉を持ち掛けた背景にはこうした現状認識があったのである。だが米国防総省とニュー・ジャパン・ハンズはまったく開く耳を持たず、凄まじい剣幕で怒りを爆発させただけだった。その一方で、日本では五五年体制の守護者であり、その主要な受益者でもある層、つまり自民党と官僚は「沖縄の乱」が意味する現実を頑として受け入れようとしなかった。彼らは塀から落ちたバンプティ・ダンプティを元に戻せるという幻想をいまだに抱いていたのだ。そこで彼らは暗黙裡に力を合わせて新政権を崩壊させる手筈を整えた。だが、その過程でまったく予想外の三つの方角から援護射撃を受けることになる。北京、平壌、そして太平洋の真下にある海洋プレートであった。




2017(平成29)年05月14日追記

本文中に「社会科学分野における事実の解釈において、絶対的に覆すことのできない解釈というものはないが、限りなく優勢である有力説があるとは言うことができよう。」と記したが、念のため記しておくと、私は、この文の中で、社会科学分野における事実そのものの当否については問うていない。表現をより限定すれば、ある出来事に係る真相は、その真相が誰にでも観察可能・後追い可能なものであるか否かはともかく、一通りしか存在しない。ある出来事と、その出来事を観察(しようと)する人物の解釈とを峻別することは、現代的な社会科学の基本である。

2017年5月7日日曜日

嘘と過ちとは、事後の訂正の有無によっても弁別される(1)

浪江の山火事にまつわる話は、方々に「飛び火」し、ロシアのメディアである『スプートニク日本』にも影響が及んでいる。同紙は、カナダのアルバータ州における2016年5月1日以降の森林火災[1]と思しき写真を、浪江の山火事を報じる記事[2]の冒頭に掲載していたようである。これを「taka.iwata(@taka_x_taka)」氏がスクショして咎め立てたところ[3], [4]を、ニセ科学分野に係る著書のある左巻健男(@samakikaku)氏が「taka.iwata」氏に同意するものと認定できる形でリツイートしている。変更の詳しい経緯については、原本を参照できないために言及しかねるが、『スプートニク日本』は、この記事の冒頭の写真を、後に、福島第一原発事故のものであると明確に認められるものに差し替え、当該のツイートを削除している※1

『スプートニク』は、ごく最近になって突然、わが国の主流メディアにより、オルト・メディア※2扱いされるようになっている。福島第一原発事故から現時点までの間、「西側」メディアの一員である日本語主流メディアは、『スプートニク』自体にほとんど言及してこなかったが、仏大統領選を契機として、日本語メディアによる同紙への否定的な言及がメインストリーム上に掲載されるようになった※3。一例として、2017年5月5日のTBS『Nスタ』は、フランス大統領選に関係して、『Sputnik』のフランス語版がマクロン氏のゲイ疑惑を報じたことを指摘するとともに、マクロン陣営へのロシアからのクラッキングを警告するトレンドマイクロ担当者のインタビューを報じている※4

『スプートニク』に対する日本語主流メディアの劇的な態度の変化は、およそ、プロの同業者に対して向けられるべきものではない。『スプートニク』がロシア政府の意向を宣伝するプロパガンダ用のメディアであるという認識は、日本経済新聞の秋田浩之氏が、欧米主流メディアの名を借りる形で、創設時に示している[5]。しかし、その後、第二次安倍政権下の日本語主流メディアが、軒並み、安倍政権の圧力に負けて、福島第一原発事故についての重要情報を日本語で提供しようとしてこなかったことを鑑みれば、日本語メディアによってプロパガンダ機関とのレッテルを貼られた『スプートニク』の方が、よほど、日本国民の利益に合致する形の報道を続けてきたことになる。無論、『スプートニク』の側にも深謀遠慮があり、日本語マスメディアの不作為に付け入り、日本国民をまんまと洗脳した、と考えることも可能ではあり、冒頭に紹介したようなネット雀の一部の吹き上がりの中にも、一種のカウンター工作が含まれているのかも知れない。しかし、今回のフランス大統領選報道に悪乗りする形で、日本語主流メディアが『スプートニク』を攻撃することは、かえって、忖度のし過ぎでジャーナリスト魂を失った日本語マスコミ関係者が『スプートニク』に対して嫉妬するあまりに仕組んだことではないか、との邪推を招くことになろう。

この『スプートニク』を巡る報道の構図は、いじめっ子の一群が、首謀者の方針転換によって、それまで完全にシカトしていた外国人の同級生を突然に囃し立て始めるという、学校内で見るようないじめと、完全に同形である。宣伝戦という条件を考慮しなければ、この構図が健全であると主張することは、いくら何でも不可能であろう。しかも、宣伝戦という条件を考慮したからとて、日本語市場において先行する日本語主流メディアが日本国民の味方ではないし、現時点の日本国政府にとっても頼もしい味方ではない。現時点の日本のマスコミは、政府にとって、単に、稼働中であるから使われているに過ぎない、使い捨て(expendables)の存在である。

日本国内における政府・国民・マスコミの三者が互いに味方ではないという現状を考慮したとき、『スプートニク日本』は、ロシアの国(民)益を確保するという姿勢が鮮明なメディアとして、日本のマスコミに比べ、一貫した方針を有している分、日本国民一般にとって、理解し易いメディアである。日本のマスコミが方針転換し、あくまで戦争屋に使嗾される存在として、森友学園疑惑を大きく喧伝したとき、『スプートニク日本』は、ロシアの国益にも適うことから、第二次安倍政権の味方となる論陣を張った。森友学園疑惑に係るメディアの敵・味方の関係は、飯山一郎氏が従来から解説してきたとおりであり、この点については、飯山氏の解釈は正しい。『スプートニク日本』の論調は、もちろん、ロシアの国(民)益が第一であるが、私が目にした福島第一原発事故に関連する記事は、日本国民にとっても、決して益がない訳ではない内容となっている※5。以前にも指摘した既視感があるが、『スプートニク日本』は、日本語話者がメディア・リテラシーを涵養する上で、またとない教師の役割を果たしてくれているのである。(#この流れは、次回以降で左巻氏を批判するための前振りである。)


※1 「taka.iwata」氏の言を借りれば、訂正はしたが謝罪はしていないことになるのであろうか。それにしても、「taka.iwata」氏は、口を極めて福島県は安全であるという主旨を繰り返しツイートしているが、彼(女)は、これらのツイートの誤りについて、すべて、5年後なり10年後なり、結果が誰の目にも見えるようになった時点において、訂正・謝罪する段取りを付けているのであろうか。彼(女)の謝罪に向けて、ひとつ、材料を付け加えておこう。冒頭の写真の著作権等は、閲覧者側の閲覧環境のために隠れてしまうことがある。全環境に対応したレイアウトを強制することは、デザイン者の自由度を損なうことになる。私個人は、そのようなレイアウトになるようなデザインを行わないように留意しているが、依然として、作業側の裁量の範囲内であるとする考え方も成立するのではないかとも考える。HTMLには著作権の所在が明記されているのであるから、目くじらを立てるべき必然性はない。

誤りを訂正するという点について、公平を期して記しておけば、私は、自身の公開・関与した文書の内容について、自ら修正できる分については修正したいと考えている。しかし、撤回する労力も余地も持たないものも多く、残された誤りについては、批判に甘んじるのみである。他方で、文章力の拙さから生じた意味不明に受け取られかねない文については、これらに接する度、黒歴史感で一杯になる。何とか改訂できないかと考えているが、孤児著作が多いので、完全に書き換えるのでない限り、いかんともし難いという事情もある。

※2 オルタナティブ・メディア。(alternative media)インターネットを通信手段とする新興の報道機関ならびにブロガー。

※3 毎日新聞と産経新聞は、ネットでググれる範囲では、『スプートニク』そのものに言及していない。産経新聞は、写真を融通されたり記事を参照したりはしているようである(が、ここで参照するに及ばないであろう)。例外は、日本経済新聞であり、本文中にも触れるとおり、創刊時にも言及している。小林恭子氏は、読売新聞の記事[6]の中で『スプートニク』に言及するが、それに先立ち、日本経済新聞社による『Financial Times』買収の効果を『東洋経済オンライン』の記事[7]で解説している。小林氏は、これらの記事の対比から、新聞という媒体の有する威信(prestiege)を重視しているものと解される。朝日新聞も、2月の時点において、ロシア系列のメディアに対するマクロン氏陣営の警告を伝えている[8]

※4 このほか、2017年5月7日0時の『BBCワールドニュース』は、マクロン氏陣営がクラックされ、大統領選挙戦管理委員会がその情報に接しないよう注意喚起したと伝えている一方、先述したNスタにも紹介されたトレンドマイクロの警告をも報じている。本件については、『スプートニク日本』[9]自身も、クラックならびに『Wikileaks』における公開を伝えている。

※5 袴田茂樹氏が解説者として呼び出されている記事は、例外であり、内容を解釈しかねるものばかりであるが、本ブログでは、基本的に、メモ程度にしか取り扱わない。


[1] 2016 Fort McMurray Wildfire - Wikipedia
(2017年05月06日確認)
https://en.wikipedia.org/wiki/2016_Fort_McMurray_Wildfire

[2] 7日めも燃え盛る福島山林火災 放射能拡散の危険性はありうる
(スプートニク日本、2017年05月05日17:12(更新 2017年05月06日02:19))
https://jp.sputniknews.com/japan/201705053607641/

[3]

[4]

[5] ロシアが再び「スプートニク」 米との宣伝戦に  編集委員 秋田浩之 :日本経済新聞
(秋田浩之、2014年11月28日07:00)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80088930V21C14A1000000/

米欧メディアの反応はちがう。
「ロシア、西側とのプロパガンダ戦へ。新メディアを立ち上げ」(ロイター通信)。こんな具合に、ロシアが米欧にプロパガンダ戦争を“布告“したかのように伝えているのだ。
大きな理由は、スプートニク事業を推進しているロシア人の素性にある。

[6] フェイクニュース汚染、欧州の危機感 : 深読みチャンネル : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2/3
(小林恭子、2017年03月09日16時21分)
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170308-OYT8T50101.html

真偽不明のニュースは、世界の複数の言語で情報を発信するロシアのテレビ局「RT」や国際ラジオ放送・ニュースサイトの「スプートニク」などを通じて広がっている。

[7] FTを買った日経の「目指す方向」が見えてきた | メディア業界 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
(小林恭子、2016年01月23日)
http://toyokeizai.net/articles/-/101811?page=4

[8] ロシアは「大統領選に干渉するな」 仏外相が警告 〈AFPBB News〉|dot.ドット 朝日新聞出版
(AFPBB News、2017年02月16日10時17分)
https://dot.asahi.com/afp/2017021600018.html

親欧州派のエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)前経済相(39)の報道担当者は14日、〔...略...〕ロシア国営の国際通信社「今日のロシア(Russia Today)」とスプートニク(Sputnik)について、誤った情報を流してマクロン氏の評判を傷つけようとしているとも非難していた。

[9] ウィキリークスがマクロン選挙事務所の電子メールを大量に暴露 仏はマスコミに漏洩内容を無視せよと呼びかけ
(スプートニク日本、2017年05月06日15:38(更新 2017年05月06日16:13)
https://jp.sputniknews.com/politics/201705063611404/

2017年5月6日土曜日

都内の202cpmという計測結果は機器の不調による

『阿修羅』の「原発板47」では、福島県浪江町の帰還困難区域内の十万山近辺における山火事と、それに伴う放射性物質の飛散が、話題の中心となっている。たとえば、駒沢公園近くの私人による計測結果が202cpmとなったという「@N0NUKES」氏のツイート[1]が大きく取り上げられている[2]。202cpmという計測値は、セシウム換算でおよそ2マイクロシーベルト/時に相当し、特別区南西部の通常よりも一桁高い外れ値である。しかし、後段で示すように、本件は、計測機器の不調を誤解したものと認められる。火災により、樹木に吸着されていた放射性物質の一部なりとも飛散することは確実であり、北風が吹くと東京における空間線量が上昇することも事実ではある。今回の山火事によって放射性物質が飛散することを否定するのであれば、黄砂やpm2.5が風によって飛散するという事実をも否定しなければならない。それゆえ、福島県がモニタリングポストの結果を引用しながら周辺での目立った上昇が見られないと断定したことは、一部の聞き手に誤解を生み、彼らの不安を殊更に喚起する一つの要因となったものと認められる。

今回の「202cpm」騒ぎは、「@N0NUKES」氏が参照していた地図を誤読したために生じたものである。今回のように、一つのモニタリングポストだけで飛び外れて高い値が検出された場合、技術者マインドを有する通常人であれば、まず最初に、計器の故障を疑うものである。「@N0NUKES」氏が参照する2種類のサーバ[3], [4]は、いずれも、マッシュアップ(種々のソースを統合して表示する形式の)サーバである。このため、これらの地図に表示された、ある地点の計測結果は、そこでの計測(機器の性能ならびに運用)に依存する。しかし、今回、近辺のサーバのいずれも異常値を検出していないことを、このツイート主は無視したのである。実際、計測地点のサーバ運営者は、5月3日時点でサーバを交換している[5]

しかし他方で、わが国では、真に中立的な立場からモニタリングを継続する組織や個人が十分な密度で存在することを期待することが困難であり、それゆえに、この種の誤解が流布することを避けられない。中学生でも利用可能なクラッキングツールを公的機関が開発して他国に提供する現在、善管注意義務を果たして個人がサーバを運営することは、相当の難事である。(自分が行っていないことを他人に求めるのも難があることも承知している。)わが国において、この手のツールを利用しうる組織が原発推進から天下り上の利益を享受してきたことは、広く知られている。たとえ、わが国の官僚組織が、全体として、この種のクラッキングツールを国民に対して悪用することを建前として禁じていたとしても、たとえば「sengoku38」のような「身内」の人物の「犯罪」を抑止できなかったという実績が官僚組織の側に見られる以上、心ある人物がサーバ運営に踏み切ることは、まともな先進国における以上に、ハードルがあることになる。このとき、「@N0NUKES」氏のような誤解しやすい人物が「モニタリングポストは改竄されていて信用ならない」と主張するとき、誰がこの誤解を真っ向から否定できようか。本来は、このような個人の計測値の異常を比較対照できるような、同等の材料がなければならなかったのである。

モニタリングポストは、現今の官僚組織が一般人に無用な威嚇を行っていると受け止められている状況をも勘案すれば、より事実に即した形で(東京都内においては、道路上・地上1mで)運用されるべきであった。原発ムラに与しようがしまいが、官僚たちは、数値自体は正しく計測し、適時に公開し、その上で、解釈についての論争に耐えられるだけの理論構築を行うべきであった。もちろん、私個人は、そのような理論構築など無理であるものと考える。ただ、その理論構築を恐れるあまり、数字を改竄し出すようになると、悪を企図する官僚自身が、参照点を失うのである。


[1] #2017年05月05日確認

[2] ど、どうしちまったんだ? 渋谷で今!  赤かぶ
(赤かぶ、2017年05月03日14:46:15)
http://www.asyura2.com/16/genpatu47/msg/855.html

[3] Black Cat Systems Online Geiger Counter Nuclear Radiation Detector Map
(Black Cat Systems、2017年05月05日確認)
http://www.blackcatsystems.com/RadMap/map.html

Readings are in uR/hr (microRem per Hour) for Cs137/Co60 (Cesium-137 / Cobalt-60)
Note that these are generally run by individuals, and not all readings may be accurate. Do not panic because you see a high reading. Someone could be getting invalid readings.

[4] Nuclear Emergency Tracking Center
(Nuclear Emergency Tracking Center、2017年05月05日確認)
http://netc.com/

[5] Result of Geiger-Muller counter. by Illuminum
(記名なし、2017年05月05日確認)
http://www.illuminum-led.com/GM10/geiger-gm10.html

お知らせ:2017.5.3(水)--この3ケ月ほど、放射線量が異常表示したりPCフリーズによるカウンター停止などが続いたため、接続しているPCを自作PC(CUP=Core2 Quad Q6600)から市販のDELLディスクトップPC(CUP=Core i5-7400)に交換しました。
#適宜半角スペースを削除済み。

2017年5月3日水曜日

(メモ)安倍晋三氏の電撃訪朝説は良い線行っていたかも知れない

結果としては外れたが、巷間には、安倍晋三氏の(2017年)4月末のロシア・イギリス訪問の帰途、安倍氏が電撃訪朝を予定していたという噂があった。私自身は、この真偽を計りかねていたものの、内心なるほどとも思っていた。実際に、(1)帰国後の30日は丸一日休養日であった、(2)ツイッターの首相官邸公式アカウントに従来以上のタイムラグが見られる、という状況証拠がある。しかも、昨日(5月2日)、ドナルド・トランプ氏が金正恩氏との会談に含みを持たせたという報道が見られる[1]。トランプ氏の「会談」発言と、1日の日米首脳電話会談は、戦争屋御用達の中間情報ブローカーを切り捨てるための布石と見ることもできる。安倍氏の英国訪問も、同国の北朝鮮との外交関係を頼りにしたものかも知れない。

安倍氏の英国訪問の日程は、おおよそ、以下のとおりである。日本時間の29日午前に、ドーチェスターホテルで内外記者会見、午後に英ヒースローを政府専用機で出発[2]。30日は、09時25分に羽田着、私邸へ直行、1日中、来客なし[3]という状態であった。北朝鮮の弾道ミサイルは、日本時間29日5時半ころに発射されたといわれ[4]、安倍氏は、29日の内外記者会見において、これを非難している[5]

下表は、官邸公式ツイッターアカウントのうち、「現地」「時間」の語を含む計18ツイートの公表までのタイムラグを示したものであるが、今回の訪英のみ、大きくずれていることが分かる。基準時刻は、ツイートに示された日付の正午時点からとした。今回はゴールデンウィークにかかったからというオチもありうるが、今年の2月11日・12日の安倍氏の訪米に係るツイートは、盛りだくさんの内容を土日出勤までして発出したものと見ることができるから、休日は発信しないという慣習があるとまでも言えない。なお、本作業には『R』+『TwitteR』を用い、Twitter APIによった。具体的な方法は、Rファイル(w20170503_kanteiツイート現地and時間.R)に記載した。表は、私の作業に係る部分だけを切り出したタブ区切りテキストファイル(w20170503_kanteiツイート現地and時間.txt)も用意した。


[1] 読売新聞2017年5月2日夕刊東京4版1面「米大統領 北揺さぶり/「条件整えば直接会談」/報道官は否定的/日米首脳が電話会談」
(ワシントン=大木聖馬、2017月05月02日)

[2] 首相動静(4月29日):時事ドットコム
(記名なし、2017月04月29日21:53 JST)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017042900632&g=pol

[3] 首相動静(4月30日):時事ドットコム
(記名なし、2017年05月01日00:07 JST)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017043000368&g=pol

[4] 新型の対艦ミサイルか 北朝鮮、米空母を牽制した可能性 (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
(記名なし、2017年04月29日21:08 JST)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170429-00000061-asahi-int

北朝鮮が29日午前5時半ごろ、西部の平安南道北倉(ピョンアンナムドプクチャン)付近から北東方向に弾道ミサイル1発を発射したものの、失敗したとみられると韓国軍合同参謀本部が発表した。

[5] 平成29年4月29日 内外記者会見 | 平成29年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
(2017年04月29日(更新 2017年04月30日14:42:58))
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0429kaiken.html

国際社会の強い警告にもかかわらず、北朝鮮が本日またも弾道ミサイルの発射を強行しました。我が国に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。更なる挑発の可能性も十分に考えられることから、引き続き、同盟国である米国とも緊密に連携しながら、高度の警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期してまいります。我が国として、毅然として対応してまいります。北朝鮮は国際社会の制止を無視して、この1年間で20発以上もの弾道ミサイルの発射を強行し、核兵器の開発を続けています。国連安保理決議への明確な違反であり、国際社会に対する明白な挑戦であります。




2017(平成29)年5月6日追記

『リテラ』編集部[6]は、安倍晋三氏が軍事的対立を煽った挙げ句、「北朝鮮との対話」という世界の潮流から取り残されたという見立てを提示しているが、この意見も、電撃訪朝説とは大いに対立するものの、一理あるものに見える。この解釈は、従来の大きな流れをふまえれば、自然なものに見えるためである。日本版NSCの設置、特定秘密保護法の制定、安保関連法の改定、TPPに関係した一連の法制度の改定、テロ等準備罪の創設、憲法改定に向けての論議など、第二次安倍内閣において実現した法・政治システム上の成果は、すべて、軍事産業への梃子入れとして作用するものである。『リテラ』が常々批判してきたように、熟議を経ずにこれらの政策が実現したことは、事実である。他方で、わが国の広義のセキュリティには、これらの大きな改定を経てもなお、大きな欠陥が残されていることも事実である(。具体的な話は、本ブログの過去記事を参照されたいが、内政面について要約すれば、協力を求めるべき社会集団の支持をますます失ったことが最大の課題である)。この得失について、私自身は、国民への弊害の方が国民への利益を上回る形で生じ(ており、私自身のキャリア形成をも損壊するように機能してい)るものと考えるが、それでもなお、個々の局面での利益が皆無であるとは考えない。ただ、広義のセキュリティに対するわが国のリベラルにおける「セット思考」からすれば、『リテラ』の提示するような解釈は、もっとも素直なものとして受け容れられることになるであろう。

ただ、『リテラ』の見立ては、安倍晋三氏の北朝鮮との従来からの関わりを無視したものでもある。第一次小泉内閣においても「電撃訪朝」とも呼べる発表が存在し、2002(平成14)年9月17日の日朝首脳会談、2002年10月15日の拉致被害者5名帰国となったが、この当時、安倍氏が内閣官房副長官に在任していたことを想起すべきである。パフォーマンス外交好きの安倍氏ならば、軍事的対立もやむを得ないと言いつつ、自身の得点につながる電撃訪朝を探ることも選択するであろう。安倍氏は、統一協会ルートという、北朝鮮へのコネクションも有する。日本が北朝鮮を使嗾するという見方は、『弁財天』のMakoto Shibata氏(@bonaponta)が常々指摘するところではある。私は、この見方を全面的には採用しないが、「北朝鮮が日本にとって都合の良い動きを行うのは、日本に恩を売れると考えたか、日本とバーターしたとき」という見方を取る。

今回の安倍氏への評価は、結果だけ見れば、『リテラ』の解釈で正しいのであろうが、米日北の三者関係を導入したとき、果たしてそれだけであったのか、という疑問が残るものでもある。安倍氏の訪朝が絶望的となった直後に、ドナルド・トランプ氏が対話の可能性を口にするという運びは、偶然とは呼べないものである。安倍氏がスタンドプレーに走ったのか、トランプ氏との協調関係を経て今回の損な役回りを引き受けたのかは、衆人には分かりかねるところであるが、仮に、前者であるならば、『リテラ』の批判はより痛烈なものになるし、後者であるならば、『リテラ』の批判はむしろ外れたものになる。先月29日の官房長官記者会見[7]は、同日の英国ドーチェスターホテルにおける首相の内外記者会見に先立ち、北朝鮮に対する態度を表明しており、官邸の意志が統一されていることを示している。

最後になるが、『リテラ』の解釈は、対話しかあり得ないと指摘する点では全面的に正しい。問題は、北朝鮮を巡る一連の情勢の変化によって、日本の戦争屋一派と米国の戦争屋一派の両方がどれほど勢力を減じられたのか、また、安倍氏と日本国内の戦争屋との関係がいかなるものとなっているのかである。現時点までの結果を見れば、本件の対立は、人的被害ゼロ、北朝鮮が大規模火力演習を実施したために軍人の労働力と兵器を予定以上に消費した程度で済んでいる。韓国は多少の影響を受けていようが、米中露日の消耗は、予期されていた最悪に比べれば、通常業務に毛が生えた程度と評して良かろう。日米においてメディアリソースは盛大に浪費されたが、両国民の役に立たない両国のメディアであるし、彼らは自力更生しないであろうから、素より考慮せずとも良い。

現時点では、これ以上、私の考察が進んでいない。現在、日本の首相は、米国の戦争屋の軛がトランプ政権誕生によって外されたために、戦後において、最も自由に振る舞える。ただ、このフリーハンドが国民のために生かされているか否かは、依然として定かではない。日本国民にとって残念なケースだけを改めて示しておくと、電撃訪朝説が全くのガセであって、かつ、『リテラ』の見込みどおり、安倍政権が国際社会から孤立して軍事的対立を煽っただけというものである。安倍氏が日本(由来の財閥系)の戦争屋を上手くいなしているという証拠は、無料のネットリソース上には見られない。ただ、米国の戦争屋であるマイケル・グリーン氏に3月末に招聘された橋下徹氏さえもが安倍氏を批判[8]し、それを『リテラ』[9]や『ダイヤモンド・オンライン』[10]が参照するという状態は、トランプ氏のシリアへの先制攻撃と同様の効果を持つものと見做すこともできる。このとき、橋下氏が米ロ関係のキーパーソンでもある国務長官のレックス・ティラーソン氏を名指しして批判する[11]ことは、平和を愛好する振りをしながら米国内の戦争屋を利することができるために、大変に意味深な事態と指摘しておかざるを得ないであろう。

[6] 6カ国協議再開に反対なのは、安倍首相だけ?|LITERA/リテラ
(リテラ編集部、2017年05月04日)
http://lite-ra.com/2017/05/post-3132_3.html

安保法制の実績づくりや改憲世論の形成のために、安倍首相はどうしても“北朝鮮との対話”という世界の潮流を隠し、北朝鮮を“仮想敵”として煽り続ける必要があるのだ。

[7] 平成29年4月29日(土)午前 | 平成29年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
(更新 平成29年4月29日11:37:52)
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201704/29_a.html

[8] #たとえば以下のツイート。

[9] 「北朝鮮危機を煽っているのは世界中で日本の総理大臣だけ」 橋下徹や森本敏までが安倍政権の扇動を批判|LITERA/リテラ
(リテラ編集部、2017年05月01日)
http://lite-ra.com/2017/05/post-3124.html

この滑稽な事態にあの橋下徹でさえ自制を促すツイートを連投した。

[10] 橋下徹ソウル報告「米日の政治家、何よりも日本国民は、ソウルの普通の市民生活を想像しろ!」 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online
(編集者の記名なし、2017年05月02日)
http://president.jp/articles/-/22012

[11]




2021(令和3)年7月28日修正

グーグル・ドライブのファイルにセキュリティアップデートとやらが適用され、リンクにアクセス不能となる可能性があるとの通知を受け、当該リンクを修正した。内容は変更していない。