2015年10月7日水曜日

不法滞在者数(メモ)

本記事は、2015(平成27)年10月7日にアップし、以降数日間の記事と統合した後、再度、同年10月10日にアップしたメモであり、

  1. どのような統計や調査が不法滞在者数を表すものとして利用されているか、
  2. 不法滞在者数の規模がどの程度であるか、
  3. わが国における原発労働に不法滞在者が主力として用いられているか、
  4. (前項の仮説が成立するとした場合、)彼らが原発労働の結果死亡したとして、死亡者数に係る統計に該当するか、またこれらを左右する程度の人員数となるか、
の四点を確認するために作成したものである。「不法滞在 者 推計」という用語でGoogle検索を実施し、これを端緒としたものである。約29,600 件中の7ページまでの検索結果の見出しから、任意に抽出した。順番はGoogle検索の結果によらない。3点目、4点目については、別の検索語で検索する必要があるが、まず、不法滞在における統計業務上の事実の把握から始めたいと考えていたので、これらについては、後日ということになりそうである。

上掲1の答えについて:不法滞在者数についての統計は、法務省入国管理局の電算システムから求められた数値がもっぱら流通しており、その最大値は、1993年の29万人強である。不法滞在は、不法入国と不法残留の二種の方法によると定義されるが、不法入国の推計数は、実質的には調査できないものの、不法残留に比べ、一桁は低いものであると考えられている。

ある時点の不法滞在者数は、基本的にストックとして把握される性質を有するものの、フローを表す統計によって間接的にのみ推計することが可能であるという点で、注意が必要である。不法滞在者数の推計作業は、この制約の下に、複数の仮説を組み上げる形で幅をもって実施されるべきである。フローとストックという観点から官庁統計を捉えた日本語文献には、平成27年10月7日時点では、行き当たっていない。本メモを引用・転載する場合には、この点に注意されたい。平成27年10月8日時点までの調査では、石川晃・佐々井司(2010)「行政記録に基づく人口統計の検証」『人口問題研究』66(4), 23-40.(リンク)がある。ただし、同論文は、不法滞在者を静的統計であると言及するものの、不法滞在者数がフローから推計されたストックであると明言まではしていない。

仮説の組の一つとして、たとえば、不法入国者の推定値を正しいと仮定した上で、これらの不法入国者が一年間に全員入れ替わるかのように亡くなっていたと仮定する場合を挙げることができる。このように仮定しても、死亡者数に対する影響は、数万人であるから、多めに見積もっても、1割程度の変動しか与えることはない。また、その場合であっても、人口動態統計は、戸籍法等の法令に基づき作成されるのであるから、その過程で日本人と外国人を区別して集計し、その結果、不法入国者は住所不定・身元不明者として計上されるはずである。このため、この仮説のみを採用した場合、上掲の仮説3と4は、論理的に否定されることになる。

ほかの仮説として、いわゆる偽装入国者が原発労働に従事して亡くなった場合を考察する。第5次出入国管理基本計画において言及された偽装滞在の最も端的な事例は、偽装結婚である。結婚した外国人が帰化しない場合、外国人の社会増・外国人の死亡として計上されることになる。このため、日本人のみで死亡に係る分析を行う場合、このケースの偽装入国は、影響を与えない。帰化していた場合には、その分析は、なかなか困難な問題に当たることになる。死亡した帰化者の元の国籍における乳幼児死亡者を除いた平均寿命を考慮に含めなければならないためである。日本への帰化者が帰化によりどのように平均余命を変化させたのかという疑問をある程度解決しておかなければ、帰化者の原発労働による余命への影響を論じることができない。

上掲2の答えについては、分からないというほかないが、直前の仮説は、「闇から闇へ」という可能性が残ることを示すものである。(とりあえず、これで1~4の各項目に対して、部分的にであるが、既存の調査から得られた示唆をまとめることができた。)

なお、本記事は、外国人犯罪という分野にも一部の考察が及ぶものとなっている。というのは、原発労働(や近年の除染作業)は、国内の住所不定者を被雇用者として中間業者として暴力団関係者などを巻き込み、不法就労(と搾取)の構造を内部化しているという指摘が広く見られるためである。管理システムの不備があるために、このような構造が生じている、という点に重点が置かれている点に注意されたい。わが国の企業犯罪は、基本的に、法制度を含めたシステム面に大きな不備があるために諸外国であれば防げるはずの事態を防げないことから生じている、というのが私の見立てである。実際にその制度が悪用されること、悪用する者が生じること自体は、私にとっては自然な成り行きなのである。




森博美 出入国管理統計による「不法」残留外国人数の推計
https://www.hosei.ac.jp/toukei_data/shuppan/g_shoho15-3.pdf
森博美氏は、昭和50年から62年までの「不法」残留者数を129,350人と推計している。この時期においては、入管法は、主たる対象として在日韓国人、次いで中国人を念頭に置いていた形跡が国会の議事録からも認められるが、森氏の推計では、理論的考察の多くがその影響の把握に当てられている。


衆議院会議録情報 第061回国会 法務委員会 第25号
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/061/0080/06107020080025a.html
https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=106105206X02519690702

○猪俣(浩三)委員 (池上努氏の著書『法的地位二〇〇の質問』では、)なお一六七ページにはこういうことを書いてある。「日韓協定に基づく永住権を取れなかった者や取らなかった者の処遇は一体どうなるのか。」こういう設問に対して「国際法上の原則から言うと「煮て食おうと焼いて食おうと自由」なのである。」――一体外国人というやつは、煮て食おうと焼いて食おうと自由なんですか。煮て食おうと焼いて食おうと自由だ、野蛮人みたいな考え方だ。


野呂夏雄氏は、2000年時点で不法にわが国に滞在する外国人員数を独自に推計し、「不法滞在者の「推計外国人員」は、不法残留者232,121人と船舶を利用した不法入国者22,503人の合計、254,624人とする。」としている。
野呂夏雄(2002)「外国人犯罪に関する統計的分析と共生への課題」
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/report/rp0210a.pdf
https://www.dlri.co.jp/report/ld/01-14/rp0210a.html


不法入国・不法滞在に係る諸問題(警察庁)
https://www.npa.go.jp/archive/keibi/syouten/syouten269/sec02/sec02_08.htm
警察庁は、警備警察の専門紙『焦点』269号(現行警察法施行50周年記念特集号)の特集「警備警察50年」において、次のように述べている。

第3章 警備情勢の展望と警察の対応 7 不法入国・不法滞在事犯対策警備情勢のこうした国際化の進展の中、法務省入国管理局の電算統計に基づく推計によれば、我が国の不法残留者数は、統計を取り始めた平成2年には10万6、497人であったのが、4年には20万人を超え、5年の29万8、646人をピークに若干の減少傾向を示しつつも、15年1月1日現在22万552人と、依然として20万人以上の大量の不法残留者が滞留しています(図1参照)。


私は日本を守りたい: 家族、ふるさと、わが祖国 - 稲田朋美 - Google ブックス
https://books.google.co.jp/books?id=DkluqELHPv8C&pg=PT47

稲田朋美氏は、著書において、平成15年12月の犯罪対策閣僚会議による平成15年の不法滞在者数約25万人という数値を引用している。また、同会議において打ち出された「五年間で不法滞在者を半減させる」という目標を引用し、不法滞在者に対する厳正な処分が必要であり、法務大臣は特別在留許可の運用に対して抑制的であるべきと主張している。


不法滞在そんな馬鹿な 簡単な不法滞在を絶滅法 不法滞在でいっぱい
https://huhoutaizai.sonnabakana.com/c01_ippai.html

不法就労者は推計するのですが、
不法滞在者は入国履歴と出国履歴がありますから、はっきり把握できています。
約10万人もいます。

不法就労そんな馬鹿な 簡単な不法就労を絶滅法
https://huhousyurou.sonnabakana.com/

不法就労は不法就労させる雇用主がいるから不法就労できるのです
警察・検察が「不法就労助長罪」を適用するように監視しましょう!
不法就労者を雇用して政治献金している事業者を告発しましょう!
そしてグルになっている政治家も監視しましょう!
日本の仕事は日本人のものです!

以上の匿名のサイトは、姉妹サイトということでひとまとめにして扱う。記の不法滞在者数に対する理解は、明らかに誤りである。ただし、どの地域でどのような不法就労が盛んであるといった定性的な情報については、確認の余地がある。不法就労させる雇用主がいるから不法就労者が不法就労できるという主張は、環境犯罪学や犯罪社会学の考え方からしても、妥当な見方である。不法就労者が弱みを抱えているからこそ、その雇用主が搾取できるのであるし、定性的には、その搾取される状態を不当と感じた不法就労者が各種の犯罪に走ることも多くなる。不法滞在者の凶悪犯の検挙人員が多いのは、このような劣悪な待遇にも問題を求めることができると言える。すると、不法就労の雇用主は、その雇用形態によっては、不法就労者による凶悪犯の片棒を担いだという道義的な非難を免れない。

直前の引用については、最後の一文を除き、妥当な主張だと思うが、「日本の仕事は日本人のものである」という命題は、原理主義的な考えからすると当然のことなのであろうが、この命題の正しさを検証することは、困難である。一番簡単な反例は、外国語教師である。たとえば、ALT(Assistant Language Teacher, 外国語指導助手)については、制度面で改善されるべき点はあると思うものの、その必要性自体を否定することはできず、また、多くの人は、母国語をもっとも上手に話すことができ、その指導法にも習熟しているであろうから、外国語の指導の一部分をその外国語を母語とする者に委託することは、合理的な選択である。ゆえに、上記サイトの最後の一文の主張は、覆された。


不法滞在者5年半減計画の実施結果について
http://www.immi-moj.go.jp/keiziban/happyou/121226_huhoutaizai.html(国会図書館インターネット資料収集保存事業にリダイレクト)

法務省入国管理局は、「不法滞在者5年半減計画の実施結果について」(平成21年2月17日)において、「来させない」、「入らせない」、「居させない」という「三本柱」の政策を実施したことにより「22万人であった不法残留者は11.3万人となり(略)国民が安心して暮らせる社会の実現に貢献した。」と自己評価している。

出入国管理基本計画は、出入国管理及び難民認定法第61条の10に基づき、法務大臣が公正な出入国管理のために定めるものであり、平成22年3月の第4次出入国管理基本計画は、次のように、先ほどの評価を踏襲している。

平成15年12月の犯罪対策閣僚会議において決定された「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」において,「5年間で不法滞在者を半減する」ことが目標として定められたことを受け,出入国管理行政においては,平成16年から同20年までの間,厳格な入国事前審査の実施,個人識別情報(指紋,顔画像)の活用や偽変造文書鑑識の強化等による厳格な上陸審査の実施,摘発専従部隊である摘発方面隊の設置や警察との合同摘発等による摘発の強化,収容施設の拡充,出国命令制度の創設による不法滞在者の出頭申告の促進など,不法滞在者の減少を図るための各種施策を実施し,その結果,平成16年1月時点で約22万人であった不法残留者は同21年1月には約11.3万人となり,5年間で48.5パーセントの不法残留者を削減するなど,ほぼ半減目標を達成した。
しかしながら,我が国には,依然として相当数の不法滞在者が潜在しており,我が国社会の秩序を維持し,また,外国人の適正な受入れを一層積極的に進めていくためにも,次のとおり,厳格な出入国審査等の水際対策や機動的な摘発等の不法滞在者対策の推進により,これら不法滞在者を更に減少させるとともに,近時,増加が懸念される,偽装婚,偽装留学など身分や活動目的を偽り,正規在留者を装って我が国で不法に就労等する偽装滞在者について,その実態の解明と対策の強化を図っていく。また,法違反者の状況等に配慮した適正な取扱いを行っていく。

第4次出入国管理基本計画
http://www.moj.go.jp/content/000054439.pdf
さらに、平成27年9月に決定された第5次出入国管理基本計画では、第4次計画を次のように評価している。

さらに,不法滞在者対策を強力に推し進め,不法滞在者を更に減少させることができたことなどが挙げられる。

出入国管理統計に関しては、次のような言及が見られる。

さらに,これまで減少を続けてきた不法残留者数は,入国者数の大幅な増加に伴い平成27年には増加に転じたほか,顕在化してきた偽装滞在者の問題や,制度濫用的な難民認定申請に対する施策が必要となるなど,これまでの5年間とは異なる新たな課題が出入国管理行政に課せられることになると考えられる。

不正滞在対策に係る課題の項においても、次のような出入国管理統計についての言及が見られる。

この結果,平成26年1月時点の不法残留者は約5万9,000人にまで減少し,これは最も不法残留者の多かった平成5年(約30万人)と比べると,約80%の大幅な減少である。
ただし,ここ数年,不法残留者は,小口・分散化し,従前よりも摘発が困難となってきたことに加え,入国者数の大幅な増加に伴って,これまで減少を続けていた不法残留者数が,平成27年1月時点で増加に転じたことも踏まえ,これまで推進してきた不法滞在者対策の手を緩めることなく,引き続き強力に実施していく必要がある。

第5次出入国管理基本計画
http://www.moj.go.jp/content/001158420.pdf
第5次出入国管理基本計画における不法滞在に係る出入国管理統計に対する解釈は、法務大臣の私的懇談会である第6次出入国管理政策懇談会が平成26年12月に提出した報告書『今後の出入国管理行政の在り方』と変わりないものである。同報告書は、懇談会名義で提出されているものの、おそらく統計に係る案文の作成者は、法務省の担当者であるものと推測される。もっとも、懇談会が案文を提出しているのであるから、統計の解釈にあたっての専門的な責任は、やはり懇談会に帰せられるものである。

今後の出入国管理行政の在り方(平成26年12月)
http://www.moj.go.jp/content/001130126.pdf
なお、第4次出入国管理基本計画の策定にあたり、パブリックコメントが募集されたが、案文の出入国管理統計の解釈に係る章については、次のような注意書きが示されている。

II 外国人の入国・在留状況
(略)
※ 現在,平成21年の統計を集計中であり,統計数値確定後,作成予定です。
なお,統計に基づき作成する部分であり,意見募集の対象箇所ではありません

統計業務及びその解釈に対して公に意見を求めないという方針は、第5次出入国管理基本計画のパブリックコメント時にも踏襲されている。統計の提示及び解釈に係る章は、参考資料として別途提示されるに留まる。その目次は、以下のとおりで、基本的には、第4次計画の項目に加えて、偽装滞在者に係る項目を追記したものである。

Ⅱ 外国人の入国・在留等をめぐる状況(参考資料として別途添付しています。)
1 我が国に正規に入国・在留する外国人の状況等
(1)全般的な状況
(2)就労を目的とする外国人の状況
(3)学ぶことを目的とする外国人の状況
(4)身分又は地位に基づいて入国・在留する外国人の状況
2 我が国に不法入国・不法滞在等する外国人の状況等
(1)個人識別情報を活用した上陸審査の状況
(2)不法滞在者の状況
(3)偽装滞在者等に係る在留資格取消しの状況
3 難民認定申請等の状況

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ(第4次出入国管理基本計画)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130039
(2021年06月16日; リンク切れであり、かつ、国会図書館インターネット資料収集保存事業でもURL通りでは追跡不可のため、本項については、リンクを外した。)
第4次出入国管理基本計画(案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000061154

パブリックコメント:意見募集中案件詳細|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ(第5次出入国管理基本計画)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130087
第5次出入国管理基本計画(案)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000129960

以上の統計については、推計誤差の扱いが気になる。法務省では不法入国者を推計しているが、その推計結果は、二桁程度の有効数字で公表されている。11.3万人というあたりの表現は、半減計画に基づく要請が認められたために、有効数字三桁で表現された背景が透けている。しかしながら、不法入国者の推計方法とその有効数字の適切さが二桁なのか、と問われると、随分怪しいところがあると思う。おそらく、一桁あるかどうかではないか。とすると、不法残留者が不法入国者より常に多いとしても、不法残留者の有効数字は、二桁しかあり得ないというのが正解だろう。

ほかの公的組織が不法残留者の数値を一の位まで公表しているのは、電算統計により簡単に数値が求められる以上、責任を電算統計に帰すことができるがゆえの慣習といえよう。しかし、不法残留者は、常に不法入国数や偽装滞在者数などと併せて、不法滞在者として考察する必要がある。そうせざるを得ない以上、不法残留者の有効数字を一の位まで常に掲げる姿勢は、数字に対するセンスの欠如を表すと見られてもやむを得ないだろう。


韓国のKBSラジオは、大韓民国内の「2007年の国内滞留外国人は100万人をはるかに上回り、20%ほどが不法滞在者と推計される」と説明している。
国民/韓国について/韓国について/KBS World Radio
http://world.kbs.co.kr/japanese/korea/korea_aboutpeople.htm
(2021年06月16日; リンク切れのためInternet Archive上の同一記述を有するページにリンクを変更。)


一般財団法人アジア・太平洋人権情報センターは、次のように伝えている。見出しにしても、推計結果にしても、法務省入国管理局の推計を引用し、その数値が1人単位まで正確であることを暗黙裏に仮定している。この種の引用は、公的組織の公表した統計値の精度に係る責任を、公表した組織に過重に負わせるもののように思う。

超過滞在などの在日外国人、推計20万人以下となる
法務省入国管理局はこのほど2006年1月1日現在の「本邦における不法残留者数について」[PDF/145KB]を公表しました。それによると、前年同期比で13,554人減少し193,745人となり、過去最多であった1993年5月1日現在より104、901人の減少となっています。
超過滞在などの在日外国人、推計20万人以下となる | ヒューライツ大阪
https://www.hurights.or.jp/news/0604/b03.html


2015年2月3日の日刊ゲンダイは、安倍晋三首相が中東諸国に金銭的支援を約束すると演説したことなどを受け、自称イスラム国によるテロ行為の危険があると指摘した。その記事の中で、日刊ゲンダイの匿名の記者は、不法滞在者がその予備軍であると明記している。

昨年の訪日外国人客は過去最高の1341万人に達した。不法滞在者もまだ推計10万人近くいる。イスラム国のシンパには西洋系の白人も多いし、中国人までいる。テロリストかどうか、見分けるのは至難のワザだ。

記事には黒井文太郎氏と大泉光一氏のコメントも含まれており、大泉氏は、次のように日本人にもシンパが生じうること、セキュリティ対策が脆弱であることを指摘した上で、次のように結んでいる。

観光施設のテロ対策もスキだらけで、国を挙げて“さあ、やってくれ”と言わんばかりの惨状です。
「悪夢が始まる」が現実に 日本は“通り魔テロ”の標的になる(2015年2月3日)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/156900/2


蜂谷隆氏は、自身のウェブサイトで論文(『賃金と社会保障』(1999年12月下旬号))を再掲し、次のように不法滞在者にも言及している。

 外国人労働者は、労働省の推計によれば97年で66万3000人とされている。これは法務省が発表した「外国人登録者統計」、「不法残留者数」などから、労働省が推計したものである。
 内訳は就労ビザを取得して入国したもの(主として専門的・技術的労働者)=12万人、日系ブラジル人、ペルー人など日系人=23万4000人、留学生などのアルバイト=3万2000人、非正規就労者(“不法就労者”)*1=27万6000人である。(表1)全労働人口は97年で678七万人なので、約1%が外国人労働者ということになる。
(略)
 さらに統計では非正規就労者は、滞在期限を超過して滞在(オーバースティ)する超過滞在者(不法残留者)だけしかカウントしていない。
(略)
 さらに密入国もある。短期滞在(最大90日)で、就労して期限内に帰国すケースもある。いずれも当局も捕捉できていないため実数は不明である。
 以上の点から推計すると、外国人労働者は90万人から100万人に達しているのではないか。100万人であれば、全労働人口の約1.5%ということになる。
*1 不法就労者という言葉については、「不法」というのは、あたかも犯罪者であるかのようなニュアンスがあり、適切な表現ではない。「資格外就労者」と表現すると、在留資格以外で就労する場合と混同することになる。そこで本稿では「非正規就労者」という表現にした。不法就労者といわざるを得ない時は“不法就労者”というように“”を付けるようにした。また、不法残留者についても「超過滞在者」と表現した。
不況下でも増え続ける外国人労働者
http://www.asahi-net.or.jp/~HB1T-HCY/thesis4.htm

就労する外国人の推移(推計)
http://www.asahi-net.or.jp/~HB1T-HCY/shuro.htm
 蜂谷氏は、「不法」という表現が適切ではないとするが、いくら当人に違和感が残ろうと、実態としては不法就労は法律に違反した行為であるから、この点についての蜂谷氏の主張は賛同を得ることがないであろう。(不法であることを前提にした上で、現在の不法就労状態の非犯罪化や犯罪化させないための在留要件の緩和に向けて活動するのであれば、理解を得やすいのではないかとは思われる。)

なお、蜂谷氏のサイトに掲載された統計値が一の位まで正しいと仮定して、密入国者数を逆算すると、不法滞在者数が最大であったとされる平成5年において、その人数は、1895人である。摘発が重点課題となった平成15年以降では、数万人程度である。不法入国者数が把握できるとすれば、それらは、摘発数や強制送還数といった、いずれもフローである値によってである。ある時点における不法入国者数は、ストック値であるため、別途、推定作業が必要となる。蛇足だが、不法残留者数は、フロー値により集計されているが、現実をおおむね妥当に表すストック値であると考えて差し支えないであろう。

平成5年に発覚した不法入国者数を推定するには、298646(不法入国を含む不法滞在者数、法務省第4次出入国管理基本計画の図13、p.13より)人から296751(蜂谷氏作成の表、リンク)人を減じれば良い。ただし、先に繰り返したように、これらの数値は、下の数桁分は、およその数値に過ぎないと考えて見ておくのが良いだろう。1895人という値は、電算統計の集計時期が異なるために生じた誤差であるとすら見なすことができる。


旧中央三井トラスト・ホールディングスの調査報告では、出入国管理統計を主たる情報源として参照しており、不況時にも外国人登録数が減少していないことを2008年度の時点で報告している。これは、先の蜂谷氏の見解を時期を違えて追認したものと見ることができる。また、不法滞在者に係る統計について、次のように記している。

滞在期間を過ぎても自国に戻らず滞在し続けている不法残留者も、93年の約30万人をピークに減少してはいるものの、2007年約15万人程度いるとみられ、
調査レポート(旧中央三井トラスト・ホールディングス)2008年度
http://www.smtb.jp/others/report/economy/cmtb/2008.html
「調査報告 増加する外国人労働者の現状」(調査レポート2009/春 No.65)
http://www.smtb.jp/others/report/economy/cmtb/pdf/repo0903_3.pdf


一般財団法人自治体国際化協会(略称CLAIR; クレア)シドニー事務所による調査「在留許可のない外国人住民に対する公共サービスの提供について」においても、オーストラリア連邦政府が在留統計から求めた不法滞在者数を参照している。

タイトル在留許可のない外国人住民に対する公共サービスの提供について
資料名海外比較調査 第01号
発行年月日2012年07月25日
主な内容在留許可のない外国人住民に対する公共サービスの提供について

連邦政府の発表によれば、2009年度(2009年7月1日から2010年6月30日)、おおよそ450万人の一時滞在ビザ入国者がオーストラリアに滞在しており、そのうち約15,800人がビザの期限が切れて滞在していると推計されている。不法滞在者は2010年6月30日の時点で約53,900人と言われており、これは、同時期のオーストラリア全体の総人口約2,230万人の約0.24%に当たる。
在留許可のない外国人住民に対する公共サービスの提供について
http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/SYD_20120725.pdf
#トップ>情報ライブラリー>CLAIR刊行物>各国の地方自治シリーズより辿ることができる。


田巻松雄・菊入千賀子, 2007, 日本における非正規滞在外国人問題の一考察―主に非正規タイ人の減少に注目して, 宇都宮大学国際学部研究論集24,47-63.
https://uuair.lib.utsunomiya-u.ac.jp/dspace/bitstream/10241/6892/1/KJ00004824274.pdf

 田巻・菊入(2007)は、出入国管理統計を参照している。入管法違反者の出頭の大半が自発的である理由は、Phannee(1997)を参照しつつ、十分な貯蓄を得た者が確実な帰国方法として出頭を選択するのだと推測している。
#出頭は、確実かつ安価な出国方法だと思われる。漁船やコンテナ船という手段にまた頼ることを思えば、入国が密入国であればなおさら、出頭した方が確実かつ安価だと思うのは、当然だろう。
 非正規滞在者は、日本だけではなく、アジアにおける主要な外国人労働者受入国に共通に存在する。というよりも、アジアにおける外国人労働者の多くは、非正規滞在者なのである。北原は、主にタイにおける現実に着眼しつつもアジア全域を俯瞰し、「アジアにおける外国人労働者の大半は不法外国人労働者」であると指摘している(北原:2007)。田巻は、1980年代以降における東・東南アジアを舞台とする労働力移動が、主としてアジア域内の労働力移動という形態を取りつつ、膨大な数の非正規滞在者を生み出してきた現実を問題にした(田巻:2005)。
 アジア全域に多くの非正規滞在者が存在する事実を前にして、主要な関心は、非正規労働者が多く存在することの背景に向けられてきた。この点に関する基本的な論点は、海外労働力に対する需要と入国管理政策の乖離、つまり、資本が国境を越えて労働力を編成することと国家が国境を越える人々の移動を制限することとの乖離に関連する。国家・地域間の経済格差に規定されて現実に労働力が国際的に移動するなかで、国家が入国管理を強化し労働力の移動の制限を図れば、外国人労働者は非正規化せざるを得ない。非正規滞在者の存在は、一般に、貧しい国々の人々が、法的規制を無視して入国・就労することで外部から持ち込んだ「問題」とみられている。このような状況のなかで、上記の「乖離」に着眼しながら、非正規滞在者が生み出される、いわばアジア的な背景や文脈を多面的に検討することは重要である。
 しかしながら同時に、国別の異同をどのように理解するのかという問題がある。国別の状況は大きく異なる。冒頭に示したように、日本における非正規滞在者は1993年に約30万人でピークを迎え、その後15年近く、ほぼ一貫して緩やかに減少してきた。アジアの中で、このような傾向を示したのは日本だけである。これに対し、日本と対照的なのは、韓国である。韓国では、非正規滞在者は1990年約2万人、95年約5万人、2000年約15万人、2003年約29万人と一貫して増加し続けた。非正規滞在者問題のアジア的な背景や文脈と共に国別の異同を統一的に把握できるような枠組みや理論とはどのようなものか、われわれの大きな関心はそこにある。
Phannee(1997)やSeksin(1998)は、タイ人の非正規滞在の方法について詳説する文献のようだ。これらの研究者も、「日本の仕事」であり「タイの仕事」であるという性質の仕事をなしてくれたのだと考えることができる。(Phanneeは大学院生だが)
 警察庁によれば2004年に入管法違反で検挙された人員は11,069人で、入管単独による摘発の年間件数は公開されておらず不明であるが、入管法違反者全体から警察によって検挙された入管法違反者を差し引くと44,282人となり、入管法違反者全体の約7~8割は自主的な出頭と考えられる。自主的な出頭者の中から、2004年に在留を希望して出頭した者(在留特別許可の申請者)約14,000人を除くと約3万人になる。つまり、入管法違反者全体の半数以上が帰国を希望しての自主的な出頭者であったと推測される。
 自主的に出頭し帰国する人々はどのような理由で帰国を決意したのか。そのような実態はあまり明らかとなっていないが、非正規タイ人については、Seksin(1998)が実態の一部を明らかにしている。(#略)「十分にお金を稼いだから」や「家族と暮らしたい」というのが主であった。また日本に再び働きに来たいかという問いに対して83.5%が「もう働きには来ない」としており、その理由としては、貯金が十分にあることや家族と暮らしたいという理由が主であったが、なかには日本での就労は規則が厳しく自由やゆとりを欠いていて嫌だからという理由が少なくなかった(Seksin: 1997: pp.194-196)。
(#略)
 しかし、そもそも問題視される非正規滞在者とはどのような人たちなのか。非正規滞在者の就労・生活実態に関する調査研究はまだ少ないが、「厳しくて過酷な現実」が報告されている(北原:2007, Graziano Battistella and Maruja M.B. Asis: 2003)。よりよい仕事と生活を求めることが、海外就労の根本的な動機である。様々な条件のなかで、非正規滞在を選択するのはなぜか。非正規滞在者の生活はわれわれにはほとんど不可視である。(#略)非正規滞在者を日本社会への脅威とみなし、国外への追放で問題解決とみる見方は、あまりに一国的観点に立った見方である。(#略)
Phannee Chunjitkaruna, "The Presence of Thai Workers in Japan", 東京大学大学院総合文化研究科修士論文, 1997.
Graziano Battistella and Maruja M.B. Asis, eds, Unauthorized Migration in Southeast Asia, Scalabrini Migration Center, 2003.
北原淳「タイにおける外国人労働者の流入とその制度的条件」佐々木衛編著『越境する移動とコミュニティの再構築』東方書店, 2007.
未確認のままに憶測を述べるが、おそらく、在日不法滞在タイ人コミュニティにおいて、帰国するには出頭するのが安全で密航業者に費用を支払わなくとも良い方法であるという情報が共有されていたのではないか、という気がする。密航業者が積極的に「帰りは勝手に出頭して帰ってこい」と指導していた可能性すら考えられる。(#というか、そのような内容の別冊宝島でも読んだことのある気がするが、本の見た目すら思い出せない)


気になる話 - 外国人の犯罪って増えているの?
http://homepage1.nifty.com/hujitako/saji/kininaru/foreignerscrime.htm

 ソフトウェアエンジニアの"小太郎"氏のウェブサイト。業務外(学業外)で作成された記事としては目配りが利いているが、フローとストックという概念を失念するという、記述統計を扱う上での典型的な誤りを重ねたものである。もっとも、その誤りは、参照した『警察白書』や『犯罪白書』が揃って犯した誤りであるのだが、その誤りを見抜けなかったということである。
小太郎氏は、平成14年版の『警察白書』と平成13年版の『犯罪白書』を参照している。
 で、この「来日外国人」の犯罪発生率がとっても高くなっている、ということらしいので、では、そう主張している「警察白書」の平成14年版を見てみましょう。第九章「国際化社会と警察活動」の中に「来日外国人による犯罪」というセクションが充てられています。それによると、
 外国人入国者数及び来日外国人検挙状況は(中略)13年は,検挙人員が過去最多を記録し,4年と比べ件数で2.3倍,人員で1.6倍となっている。
ようです。例によって基本的な数字を抜き出します。

  1992年と2001年を比べると、入国者数34%増加、それに対して検挙人員は55%増、検挙件数は128%増です。ところが、1997年と2001年 を比べると、この間入国者数は12.8%増えているのに対して検挙人員は5.6%しか増えておらず、検挙件数に至ってはその数自体が13.4%も減っているのですね。
 少なくとも最近数年間を取れば、入ってくる人が増えているほどには「来日外国人」による犯罪発生率が高くなっていないこと、見方によっては減っているということが、増えていると言いたくて仕方がないだろう警察白書の数字からも読みとれる訳です。
  但し、公平を期すためにこの辺の数字のからくりを書いておくと、平成12年のデータと平成13年のデータを比べれば、検挙件数は減っているものの、検挙人員数は増えています。概ね2割増しで、かつ過去最高の数字です。私は数年間の傾向を比率で考えて「さほど変わってない」としているのに対して、警察白書ではこの直近の一年の検挙人員数の増加と絶対数に注目して(ついでに検挙件数減には触れないで)「増えている」と言っている訳です。

 なかなか面白いものです。
   
不法滞在者は増えているか?

 さて、いわゆるオーバーステイの人たち、「外国人犯罪の温床」であるといわれることもある不法滞在者は増えているのかも見てみましょう。

 これは犯罪白書にデータが載っています。第4篇の「第5章 犯罪の国際化と外国人犯罪」の「第1節 外国人出入国の動向」によると、

        IV-60図は,最近10年間における外国人新規入国者数の推移を見たものである。平成12年における外国人新規入国者数は,前年より29万6,782人(7.5%)増加して425万6,403人となっており,前年に続いて過去最高を更新している。
        (「1 新規入国者数の動向」より)
         我が国に在留する外国人のうち,不法残留者の数(推計値)は,過去最高を記録した平成5年5月1日現在(29万8,646人)以降,減少傾向にあ り,13年1月1日現在で23万2,121人(前年同日現在と比べ1万9,576人,7.8%減)となっている。  IV-61図は,資料のある平成2年以降における不法残留者数(推計値)の推移を見たものである。
        (「2 不法残留者数の動向」より)

  要するに、平成5年(1993年)以降、不法残留者は増えてないということです。多分取締りがきつくなったからだろうと思いますが、むしろ顕著に減ってい るんです。データは検挙者数ではなくて推計値ですから、検挙率の変化(低下)は織り込まれているでしょう。つまり、当局もオーバーステイが増えているとは 見ていないという事です。 


外国人人材の受入れと地域における多文化共生社会構築に向けた取組み - kicho-iguchi04.pdf
http://www.esri.go.jp/jp/workshop/forum/060823/kicho-iguchi04.pdf

 内閣官房や内閣府が、在留管理の見直し及びこれに伴う就労状況の把握などを問題意識として本格的な改革に着手した重要な背景として、
  • (1) 2004年4月に日本経団連が外国人政策に関する提言(外国人の就労管理システムや外国人庁を提案)を出したこと、これに加え、
  • (2) 同年10月には、「外国人集住都市会議」が「豊田宣言」を公表し、日本経団連と連携しつつ、継続的に規制改革要望を提出し、政府に外国人政策の見直しを迫ってきたことが挙げられる。
この外国人集住都市会議は、現在、18都市の連合(次頁の表を参照、座長三重県四日市市)となっており、2006年11月21日に、本年の首長会議を東京で開催する。

#井口先生?の豊田市の調査が後半のスライドに掲載されている。請負業者が中間に入る形で日系ブラジル人が雇用されており、その雇用環境がきわめて不安定なものであることが指摘されている。

早川智津子(2009)「外国人労働をめぐる法政策上の課題」(特集 外国人労働を考える)『日本労働研究雑誌』587, 4-15.
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/06/pdf/004-015.pdf

わが国に滞在する外国人数は,2007年末に約215万人とこれまでの最高を記録した1)。他方,出入国管理及び難民認定法(以下,「入管法」という)に違反して不法滞在している外国人はこの5年間で半減して約13万人2)となっているが,このうち相当多数は不法就労に従事していると推定されている。このようななか,わが国で就労する外国人は概ね90万人台と推計される3)
早川氏は、外国人に対する「選択」と「統合」の理念について説明している。「選択」の理念とは、ある外国人に入国の許可を与えるか否かが各国の自由裁量に属すると考えるものである。「統合」の理念とは、適法に入国・滞在している外国人に自国民と基本的には同等の地位を与え、不当に差別しないというものである。
 入管法上の就労できる在留資格(就労資格)を有しないで就労している外国人を不法就労者という。不法就労者を雇用し,支配下に置き,または業として斡旋した者等は,不法就労助長罪に問われることになる(73条の2第1項)。不法就労者自身も,刑罰(70条)および退去強制(24条)の対象となりうるが,その退去強制手続きのなかで法務大臣が諸般の事情を考慮して在留特別許可11)を与えた場合には,与えられた在留資格での在留が可能となる(50条)。
(#略)
 不法就労者は,入管法上は退去強制の対象であるが,労働法は現実の労働に着目して保護の対象とすることから,不法就労者の法的取扱いをめぐって,両法政策間に衝突が生じる。そこで,不法就労者に対する労働法の適用についてみると,労基法,最低賃金法,労働安全衛生法,労災保険法等の労働保護法は,不法就労者であっても原則適用があると解される。労働組合法も同様に考えられている30)。職業安定法の適用31)はあるとされるが,公共職業安定所では,不法就労につながる職業紹介は行われない。雇用保険法については,明文上,不法就労者の除外規定はないが,不法就労者は労働の能力(4条3項)を適法に有するとはいえず,失業と認定しえないので,原則として同法の失業等給付を受ける資格がないと考える
(#略)
 入管法への配慮を行っているのは損害賠償事件に限られており,解雇事件などを含め,不法就労者の救済において入管法上いかなる考慮をするかは検討が不十分と思われる。
(#略)(#日本国の労働法の課題として、)①労基法3条の禁ずる国籍差別が争われる事件において,裁判所は,雇用形態が異なれば差別と認定しない傾向がある。②また,同条は採用差別を禁じていないと解されている。さらに,③不法就労者にも原則として適用されるが,その入管法上の地位が,一応考慮されている。しかし,具体的に不法就労者に対してはいかなる救済が可能か,就労可能性をどのように判断するかについての検討は不十分である。


鈴木江理子,(2012).「「見えなくされてしまう」非正規滞在者」, 『改定入管法に反対し、ともに生きる宣言集会』.(20120707Suzuki.pdf)
http://www.repacp.org/aacp/report/pdf/20120707Suzuki.pdf

 鈴木江理子氏は、非正規滞在者(#政府のいう不法滞在者に同じだが、不法という語の有する社会構築的側面を批判する意味で用いられる)が「犯罪の温床」ではないことを示そうとして、年次別の凶悪犯の検挙人員数に占める不法滞在者の割合がきわめて小さく、1999年の2.6パーセントに過ぎないことを指摘するが、この解釈には基本的な誤解があり、単純な仮定を置いた場合、事実としても誤りである。鈴木氏の主張を検討するためには、日本人全体に対する検挙人員の割合と、不法滞在者全体に対する検挙人員を割合を比較しなければならない。別の方法として、以下の点推定値が偏りのないものと仮定すれば、不法滞在者の検挙人員数に占める割合が2%であるときには、不法滞在者数を50倍した値が日本人総数を超えなければ、鈴木氏の主張は誤りとなる。不法滞在者数は最大でも30万人程度と見られているから、この30万人という値を受け入れると、不法滞在者が凶悪犯罪に手を染めて検挙される割合は、日本人が凶悪犯罪に手を染めて検挙される割合に比べて、明らかに高いということになる。

 鈴木氏の「非正規滞在者」の人数の理解も、基本的には、法務省入国管理局の公表した数値に基づくが、下記引用の②については、不法滞在者の推計を系統的に実施した森博美氏の論文(リンク)にもない定義であるが、病院外で出産し、社会的支援のないままに養育することの困難さをふまえれば、それほど多数ではないものと考えられる。
超過滞在者(「不法」残留者)
  • ① 合法的に入国し、許可された在留期間(上陸許可期間)を超えて滞在している外国人
  • ② 領土内で出生し、在留資格取得手続きを行うことなく滞在している外国人
 その(#2004年の在留特別許可に係るガイドラインの提示の)一方で、それ以外の多数の非正規滞在者の「不法性」が強調されることにもなる。
 そして、彼/彼女らに対する徹底した排除が続行されている。宗教施設、大使館や支援団体事務所周辺など、非正規滞在者にとって身近であった空間で強行される摘発、外国人登録に基づく摘発-これについては、法務委員会で東京入管局長が認めている。



厚生労働省職業安定局(平成17年5月)外国人労働者問題に関する資料(s0510-5b.pdf)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/05/dl/s0510-5b.pdf


目次
  • (1)  平成15年我が国で就労する外国人
  • (2)  外国人労働者数の推移
  • (3)  留学生数等の推移
  • (4)  就職希望の留学生と就職が困難な理由
  • (5)  各国における外国人の失業率(1998年)
  • (6)  不法残留者数の推移
  • (7)  外国人集住都市における就学の状況
  • (8)  国籍別外国人少年犯罪の状況
  • (9)  21世紀ビジョンインターネット調査の概要
  • (10)  外国人労働者受入れに対する意識
  • (11)  欧米諸国の単純労働分野における外国人労働者の受入れ
  • (12)  諸外国における外国人労働者の受入れを巡る経緯
  • (13)  国別難民入国者数
  • (14)  国別難民認定数
  • (15)  外国人人口及び全人口に占める比率
  • (16)  外国人労働者に関する労使の意見
  • (17)  第9次雇用対策基本計画(抄)
  • (18)  第3次出入国管理基本計画のポイント
  • (19)  FTA/EPA正式交渉の現状・予定と各国からの要望(2005年4月現在)
  • (20)  「外国人雇用問題研究会報告書」の取りまとめについて
(6) 不法残留者数の推移
 我が国に不法に在留する外国人の数は、近年、減少傾向にあるものの、平成15年において約22万人※となっている。なお、政府では、不法滞在者を今後5年間で半減させることとしている。(犯罪対策閣僚会議「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」(平成15年12月))
※ このほか、密航船の使用等により不法に入国している者が約3万人いると推計されている。



人口移動に関する研究
http://www.jata.or.jp/rit/rj/p6/populationmovt.htm

厚生労働科学エイズ対策研究石川班「アジア太平洋地域における国際人口移動から見た危機管理としてのHIV等感染症対策に関する研究」(平成15-17年度)による研究概要。省庁連携におけるオーダーメイド統計の提供・共有が必要であることを示唆する記述である。
HIV 粗感染者数の推計だけから我が国のHIV感染症の疫学的危険因子として、在日外国人におけるHIV感染者のリスク行動が有意であると結論付けることは難し い。しかし、地域別、国別感染者数の違い、また年齢階級別人口内訳の分析の結果は、外国人国際人口移動の影響を踏まえた感染拡大の防止・対策を実施するこ との重要性を示唆するものと考えられた。より正確で現実的な推計のためには、①出入国統計から年齢階級別に不法滞在者や不詳出国者数を正しく換算した在日 外国人滞在者数、②各国地域別・職業別の在日外国人滞在者数とHIV感染者数、③年齢階級別のHIV有病率などを用いることが望ましいと考えられた。



法務省(平成24年5月)「昨今の外国人入国・在留の状況と出入国管理政策について」
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyousei/dai1/siryou3.pdf

2 外国人登録者数の推移と我が国の総人口に占める割合の推移
(#グラフ本体は省略)
(注1) 「外国人登録者数」は,各年12月末現在の統計である。平成23年は速報値。
(注2) 「我が国の総人口に占める割合」は,総務省統計局「国勢調査」及び「人口推計」による,各年10月1日現在の人口を基に算出した。
グ ラフの横軸が昭和30~55年は5年おき、昭和55~60年は1年ごと、昭和60~平成7年は5年おき、平成7~23年は1年ごとなので、昭和60~平成 7年の間に外国人登録者の総人口に占める割合が急激に伸びたようにも見える。平成20年が最大で、1.74%、2,217,426人。不法滞在者数と負の 相関があるかのように見える推移である。在留特別許可人員数の推移について確認しておくべき必要がある。


中島眞一郎(コムスタカー外国人と共に生きる会)(2009年8月18日)警察庁の「来日外国人(不法滞在者)」犯罪統計分析への批判作業の雑感―99年体制の終焉を前に
http://www.geocities.jp/kumustaka85/2009.8.18keisatutyourainitigaikokuzinnhannzaitoukeibunnsekihenohihannsagyounozaltukann.htm
それでも、1998年版『警察白書』の中で、「『検挙人員全体に占める来日外国人構成比の高さ』の項目の根拠となっている『来日外国人』人口の算定基準が誤っている」という法務委員会での野党議員の質問を受け、陣内法務大臣(当時)は答弁に窮してしまった。そして、翌1999年の『警察白書』から「検挙人員全体に占める来日外国人の構成比の高さ」という項目が消え、現在に到っています。このことは、警察白書において、「来日外国人は、犯罪率が高い」という偏見の根拠をなくすという成果となりました。
(#略)
しかしながら、2000年代以降の国会の法務委員会での入管法改定法案をめぐる野党議員の追及や質問は、「来日外国人」や「不法滞在者」の犯罪の増加を示す警察庁のデータの根拠のなさを鋭く批判し、あばくものとなっていきました。
法案自体は、多数を占める与党の賛成多数で可決、あるいは野党提案の付帯決議をつけて全会一致で可決されていくものの、法務委員会での論戦は1990年代のように一方的に法務省の提案に対して無批判に可決されていくものとは大きく異なってきました。
また、その論議の影響を受け、警察庁も、それまで「来日外国人」や「不法滞在者」についての公表していなかったデータの公表や、私が主張してきた、「来日外国人」や「不法滞在者」の犯罪の増減を見る指標として、「日本全体の刑法犯検挙人員に占める構成比の経年的変化」のデータを、近年では「警察白書」や「来日外国人犯罪の状況」等のデータの中に記載公表するようになってきました。
(#略)
つまり、相手の「土俵」のなかで、「数」そのものを問題として挑むことにしました。世論やマスコミを当てにできない状況下で、それが最少の労力で、最大の効果を挙げていく方法でした。その闘いは、世論的には孤立無援に近いものでしたが、カウンターパート〔対抗者〕である「警察庁来日外国犯罪対策室」のデータ分析批判としては、的確に効果を挙げ、そのデータ分析の限界や誤りを、国会の法務委員会の論戦で暴いていくこととなり、警察庁も、無視できなくなってきました。
そして、近年、警察庁が、ホームページ上公表している「来日外国人犯罪検挙状況」など私が主張してきた、「来日外国人」や「不法滞在者」の犯罪の増減を見る指標として、「日本全体の刑法犯検挙人員に占める構成比の経年的変化」のデータも掲載するようになったことを知った時、正直なところ、この闘いに勝利できたと思いました

 上記下線部①~③は、本ブログ主が引いたものである。引用文中にある国会議員等のやり取りは、次の区切り線以降で紹介する。国会議事録を読んだ後で中島氏の説明を読むと、中島氏の言わんとすることが良く分かる。逆に、この記事だけ読んでも、私には分かりかねる点が多かった。
 中島氏が言いたかったことは、彼の分析が法務委員会で野党議員に取り上げられ、警察白書における計算の欠陥を指摘できたために、来日外国人の検挙人員数、不法滞在者の検挙人員数の経時的なデータが公開されるようになった、ということである。しかし、「来日外国人犯罪増加論・凶悪化論」は、公開されるようになったデータだけで否定できるものなのか、と私は疑問に思う。ここでの書きぶりからすると、中島氏は、可能であると考えているかのようである。この疑問は、いつか別稿で解決を試みたい。また、以下は、私の現時点での仮説である:本件は、野党議員経由で統計の誤りが指摘されたわけだが、その結果、本件に係る統計のみの公表は進んだものの、犯罪予防に必要なデータ共有や省庁連携は、むしろ後退した可能性もあるのではないか。
 以下は、中島氏の文章だけを読んだ直後のメモである。整理していないが、本ブログ主が中島氏の文章だけを読んで随分と混乱したことがよく分かるので、このまま残すことにした。
 これら①~③に係る中島氏の論理展開は、私には理解しかねる。まず、②と③に示された統計は同じ内容であるもののように読めるにもかかわらず、②を批判して③を評価している理由が分からない。ただし、別に紹介する国会議事録を読むと、②と③は異なるものであることが示唆される。第二に、原理的には、②や③だけでは、「来日外国人犯罪は増加していない」「不法滞在者による犯罪は治安悪化の温床でない」という命題は検証できないのに、このデータだけが出てきたことを評価している理由が分からない。第三に、②と③において、外国人と日本人の「犯罪者率」を比較する場合には、本来、(日本人検挙人員÷日本人)と(外国人検挙人員÷外国人)という形に、原因別に割合(発症率に対応)を計算し、それらの割合を比較すべきであるという点に何も触れていない。なお、第三の点は、これらの四種の統計(外国人検挙人員(Z=1|Y=1)、日本人検挙人員(Z=1|Y=2)、未検挙日本人(Z=2|Y=2)、未検挙在留・来日外国人(Z=2|Y=1))からなる2x2分割表は、回顧調査による形であると考えて良いため、先に示した(発症率に対応する)割合(Yを与えられたときのZ)を計算しても、大きく間違えた値を得ることになる。もっとも、検挙人員数及び人口を全数調査したものととらえるなら、発症率に対応する、国籍別の被検挙率を計算可能だと考えても良い。

第145回国会 法務委員会 第10号
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/145/0003/14505130003010c.html

 千葉景子氏と福島瑞穂氏が来日外国人と犯罪との関係について質問し、法務大臣の陣内孝雄氏や警察庁刑事局長の林則清氏がこれに回答する形。福島氏は、前回の委員会で、また円より子氏も質問したと発言している(#第9回)。長いので全部の引用は省略。円氏も発言したとの福島氏の発言については確認できていない。第9回には、橋本敦氏が同種の質問を行い、立法事実がないと指摘している。
  第10回の千葉氏及び福島氏の本件に係る発言の要旨は、次のとおり。警察白書における(外国人検挙人員)÷(全検挙人員)における外国人には短期滞在者や不法滞在者が含まれる一方で、(来日外国人)÷(総人口)における外国人には不法滞在者や短期滞在者が含まれない。短期滞在者は、新規入国者366万人(福島氏)。
 では次に、ほかの委員、この間も円委員、そしてきょうも千葉委員が聞かれたんですが、外国人の犯罪がふえているという立法事実についてです。
 前回、私も聞きました。分母と分子の数が違うんじゃないかということです。
(#略)
分母には数がわからないからということで不法滞在者は入っていないわけです。そして、短期の、例えば三日来るといった新規入国者は入っていないわけです。しかし、分子には5,382人のうちいわゆる入管法違反の人たち951人は入っておりますし、短期滞在412人も入っております。(#福島氏)


排外キャンペーン、外国人犯罪増加の嘘と本当
http://www.jca.apc.org/inochi/tunagaru/002haigai.htm
外国人犯罪が治安悪化を招いているというのはほんとうか?

 このような外国人犯罪者増加による治安悪化のキャンペーンの根拠となる犯罪統計が存在しないことを指摘しておきます。過去10年にわたる警察統計を見ても「来日外国人」の犯罪が全体の犯罪に占める率は、長期的に見ても安定して2%前後で、97%の犯罪は日本人によるもので、とても「治安悪化」の原因を外国人に押しつけることはできません。
 そもそも日本人ならお巡りさんのお説教で終わってしまうような小さな事件も、相手が外国人となると、警察では「全件起訴」が建前となっています。したがって身体拘束、取り調べ、起訴の段階から「犯罪者」とされてしまう可能性は日本人より大きいといえます。つまり最初のカウントの段階から不公平なのです。
 奈良大学社会学部助教授の間淵領吾さんはWebサイト上で「新聞犯罪報道における容疑者の国籍-国籍別「犯罪者率」との比較-」という論文を発表し、次のような結論を報告しています。

http://www.k3.dion.ne.jp/%7Emabuchi/lectures_nara/nwsppr_ntnlty.htm
 第1に「1998年度前半の朝日新聞に関して、新聞の犯罪報道における容疑者・犯人の国籍は、外国人による事件の場合、日本人よりも多く報道されている。」第2に「1998年度の外国人の『犯罪者率』は、日本人と同じか、それ以下である。日本に住んでいる外国人は、日本人と同様に、あるいはそれ以上に、法律を守って暮らしている。」第3に「来日外国人の犯罪者率を罪種別に見ても、凶悪犯については日本人並み、その他の罪種に関しては明らかに日本人より低く、来日外国人が日本人より特に凶暴であるとは言えない。」第4に、「『その他の外国人』の犯罪者率を罪種別に見ると、近年は、概ね日本人の4割程度に過ぎない。」第5に、「『来日外国人が増加すると犯罪が多発するようになる』と考える日本人は少なくないのは、犯罪報道のあり方が多少なりとも影響を及ぼしているのではないかと推測できる。我々は、客観的データに基づいて冷静に判断するべきである。」

 「コムスタカー外国人と共に生きる会」の中島真一郎さんは一連の外国人犯罪者増加キャンペーンに対し当局の犯罪統計をもとにWebサイト上で批判的分析を発信しています。

http://www.geocities.jp/kumustaka85/intro.html

次のサイトも参考になります。

http://www.dear.or.jp/world/culture/index_com01.html
http://www.janjan.jp/government/0404/0404092966/1.php
http://www.janjan.jp/government/0404/0404092960/1.php
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20050207.html

また、警察統計の分析については、次の書籍を参考にしてください。
 「外国人包囲網~『治安悪化』のスケープゴート」(現代人文社、外国人差別ウオッチネットワーク編、2004年)
 「ブエノス・ディアス、ニッポン~外国人が生きる『もう一つの日本』~」(ラティーナ、ななころびやおき著、2005年)


石川晃・佐々井司(2010)「行政記録に基づく人口統計の検証」『人口問題研究』66(4), 23-40.
http://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19419603.pdf

 行政記録は、ストック型の情報ではなく、基本的にフロー型の情報である。ただし、フローが確実に捕捉されている限りは、最新の行政記録をストック型の情報として扱うことが可能である。石川・佐々井(2010)の「人口動態の件数をフローとすれば、本籍人口はストックという関係にあり」という記述は、行政記録や業務統計にはフロー型とストック型が含まれるという理解が一般的であることを示す。また、同論文では、『不法残留者数』が静態統計すなわちストックであるという考え方が明示されている。他方、不法残留者数の計上作業が各種の許可・届出された記録に基づくことは、明らかに周知を得たことであるから、これらの点を鑑みて、『不法残留者数』がフロー型の行政記録から作成されたストック型の情報であると理解しても、問題は生じないであろう。
  一方,日本に在住する外国人については,外国人登録法15)に基づいて作成される原票の情報から,『外国人登録者統計』(法務省)が公表されている16).その原票に記載されている事項には,性,生年月日(年齢),国籍,出生地,在留資格,在留期間などの情報が含まれる.
 その他,人口情報が得られる行政記録として,日本における不法滞在外国人人口に関する『不法残留者数』17)(法務省),『海外在留邦人子女数統計(長期滞在者)』(外務省)や100歳以上の日本人人口を全数把握するための資料として『全国高齢者名簿』18)(厚生労働省)などがある.
 以上は人口に関する静態統計であるが,動態統計としては,戸籍法19)を根拠とした届出に基づく出生,死亡,婚姻,離婚に関する情報が『人口動態統計』(厚生労働省)により公表されている20)
(#略)
出生,死亡など人口動態の件数をフローとすれば,本籍人口はストックという関係にあり,本籍人口の増加は,出生と死亡の差分と国籍異動等28)の人口動態数の増加分に等しいことになる
(#略)
 さらに,本籍人口の変化とその変動要因についてみると,実際には当該期間に事象が発生していない場合でも,法改正や通達によって突然戸籍人口が変化することがある.例えば,1957年度における戸籍統計の種類別届出事件数に記載されている死亡数はその前後の年に比べ著しく多い.これは同年に法務省から出された「戸籍改製事務処理要項」の通達31)に基づき,高齢者で消息不明であることが確実な戸籍が死亡として処理されたことに起因している.
(#略)
住民基本台帳ではさらに人口移動に関連する特有の問題が加わる.住民基本台帳による人口と国勢調査の日本人人口(および,それに基づく推計人口)とを比較すると,常に住民基本台帳の人口の方が多くなっているが,その原因について井上(1970)は,1967年までの住民登録法とその後改正された住民基本台帳法とで転出入の手続きに大きな変更があったことを指摘している.
(#略)
不法残留者には,正規の入国手続きによらないで入国した者と滞在期限の切れた者が含まれ,また行旅死亡人が含まれている可能性がある.滞在期限が切れた者は,外国人登録をした者と登録の必要がない観光等一時滞在者(90日以内の滞在者)からなる.したがって,日本に91日以上在住することを条件として集計されている国勢調査や推計人口の外国人人口と登録外国人人口とは同数にならない.また,登録外国人人口に不法残留者を加えると,不法残留者には登録外国人の一部も含まれるため重複が生じる.

 不法滞在者数という統計は、不法滞在者数が不法入国者数を含んでいること、不法入国者数の規模の推定が出口側の情報の一部に過ぎない入管法違反の人数のみによることの二点で、問題含みのものである。その推計方法により、不法入国者数の有効数字は、著しく小さなものとなる。

 不法残留者数のみに係る詳細な統計は、不法残留の問題を理解し解決する上での複雑さを低減することにつながる。不法残留者は、一般的には、いわゆる日和見型の犯罪者であると考えられる。わが国の厳格に過ぎる制度にも不法残留の一端がある可能性が認められる以上、不法残留者についての詳細な統計は、制度上の不備や不公正さを検討する際の良い材料となる。不法入国と不法残留とを切り分けて考察することは、マイノリティ間に分断を生じさせるという批判もあり得るものの、密航の比較的困難なわが国において、不法滞在者の的確な処遇を図る上で、必要な一歩である。

 他方、不法入国者や偽装入国者についての理解と対応は、不法残留の問題に比較して、一段と困難なものになる。なぜなら、第一に、不法入国者は、入国の時点で把握されることがないためである。従来、不法入国者数の規模は、最大でも数万人であり、かつ、不法残留者数に比べて一桁程度小さいと言われてきたが、これらの値は、あくまで入管や警察などの公的活動を反映した値であり、実態に即しているかの確証はない。現在、日本国籍取得者を主軸としたエスニックコミュニティ及びインフラが整備されてしまっている。また、わが国で多くの公的活動のチェックポイントとなる住居の多くが空家となりつつある。ゆえに、日本国内の外国語コミュニティは、理論的には相応の規模に達することが可能な状態となっている。おそらく、ここに示した可能性は、杞憂であるように感じられるが、外国語コミュニティの積極的な解明がなされない限り、その広がり、つまり規模は、分からないと考えるのが適当である。また、偽装入国と呼ばれる制度上の不備や正規滞在者にも資する外国語コミュニティの存在は、わが国に多様な経路で影響を与えると予想される。ゆえに、不法入国や偽装入国の問題は、不法残留の問題よりも一段複雑であると理解し、また、問題の性質を悪質なものであり得るものとして把握すべきである。なお、先月のペルー人による連続殺傷事件は、容疑者が日系の戸籍を取得して入国した疑いがインターネット上で指摘されている。



仮放免者の会(PRAJ): 仮放免者問題と強制送還について――この10年の入管行政をふりかえって
http://praj-praj.blogspot.jp/2013/03/10.html

 このデモは、昨年12月19日付けで『毎日新聞』に報じられた法務省方針を受け、これに反対するものです。「不法滞在者:チャーター機で一気に強制送還へ 法務省方針」と題された『毎日新聞』記事によると、「法務省幹部」が、以下の内容を記者に語ったとのことです(記事全文は、上記リンク先の末尾に転載しております)。
  1. 退去強制令書を出されたものの送還を拒否し、収容を解かれている仮放免者はこの5年間で約3倍に増え、2500人にのぼる。
  2. 一般客も乗り合わせる航空機で対象者を1人ずつ送り出す従来の方法だと、送還対象者とこれに付き添う入国警備官2~5人の航空券代(#略)
  3. (#略)航空会社から搭乗を拒否され送還が中止となることもある。
  4. (#略)専用チャーター機の活用(#略)来年度予算の概算要求で関連費用約3000万円を計上しようと考えている。
要するに、この5年間で急増した、送還未執行の送還対象者を、コストが割安なあらたな方法でいっきに送還してしまおう、というプランです。しかも、(#略)人目につかないかたちで、いやがる送還対象者の抵抗を暴力的に制圧できる(#略)
 そこを考えていく際には、80年代から90年代なかばにかけて急増した超過滞在者数(ピーク時で30万人近くと言われる)が、現在およそ5分の1にまで激減した過程で、入管政策がどのように関わっているのか、みていかなければなりません。
 日本における超過滞在者数(法務省が言うところの「不法残留者」の数)がピークをむかえるのは、1990年代の前半です。法務省『出入国管理白書』(以下、『白書』)によると、1995年5月1日の29万8,646人が過去最高として記録されています(注1)。『白書』によると、この数はその後一貫して減り続け、10年後の2005年には20万7,299人に、最新のデータである2012年の推計では6万7,065人までに減少しています。
 1995年にピークをむかえた超過滞在者数が'00年代前半まで減少し続けた大きな要因としては、バブル崩壊後長くつづく景気低迷が影響していたと考えられます。しかし、2003年、2004年以降の減少については、これにくわえて法務省の入管行政の方針転換、「非正規滞在外国人狩り」とも呼べる摘発の激化の影響を考えなければなりません。
2012年12月19日付の毎日新聞記事を引用し、チャーター便の利用を抑圧的なものと非難する。コストの増加は、入管政策の不当な変更に起因するのであり、コストの増加を理由に政策を変更すべきでないと批判する。「不法滞在」ではなく「非正規滞在」と表現する。

#素朴な疑問だが、数値そのものは行政組織の公表に依拠しながら、「不法」を「非正規」と呼ばなければならない経緯と、それに対する批判の有無をきちんと知りたい。「神々の戦い」風の表現に覚えはあるが、思い出せない。もちろん、社会構築的な意味合いがあるので「非正規」だということも分かるし、積極的な不法の意思を意味しないので非正規だという意味付けもあるのだろうが、誰がどうやってこのような命名を行い、それによって何を得たのか、という点が分からない。防犯カメラと監視カメラ、の表現でもそうなのだが、漸進的な改善、piecemeal engineeringという作業さえもアカ扱いされるという現今、このような「非正規」という表現自体が新たな線引きになってしまっていて、この線引きによっていろいろとややこしいことが起こっているのではないか、と見ている。この種の表現は、「陰謀論に言うところの」弁証法の一例ではないかとも勘ぐってしまうのである。


岩崎邦宏・浄弘修平(関西学院大学 井口泰研究会)(2007). 「不法移民対策とその効果」『ISFJ政策フォーラム2007』(Thesis Template - 0703.pdf)
http://www.isfj.net/ronbun_backup/2007/0703.pdf

「日本政府の現在の対策だけでは不法残留者数を減らすことはできず、むしろアジア諸国の創出圧力を下げる国際協力のほうが効果がある」これが、分析結果から得た答えだ。
 現在、日本には約17万人の不法残留者がいるといわれている。不法残留者の多くは不法就労者として日本経済に関わっている。彼(彼女)らは日本人就労者と比較して、長時間単純労働に従事したり、「労災隠し」の被害を受けることも少なくない。
(#略)実際に政府の対策だけが不法滞在者数を減らしたのだろうか。不法滞在者数は政府が「不法滞在者半減計画」を実施する前から年々減少しており、政府の対策だけが減少の要因になったとは考えにくい。そこには、政府が行う国内要因だけではなく、国際経済環境の変化といった海外要因が大きく寄与しているのではないだろうか。そこで、不法滞在者数の減少要因として以下4つの要因を挙げた。
①集中摘発を中心とした政府の対策
②在留特別許可(日本型アムネスティ)
③アジア各国の経済成長による送出圧力の低下
④アジア各国の通貨に対する日本為替レートの低下
(#略)ここで「日本型アムネスティ」と記したのは、一定条件を満たす非正規滞在者を短期間に大量に合法化する一般アムネスティと区別するためである。次回のアムネスティを期待する非正規滞在者の流入・長期化を誘発するとして、一般アムネスティに否定的な意見が多い日本では在留特別許可が行われている。また、法務大臣が一人ひとり個別に判断するものであり、誤ってテロリストや犯罪者を合法化してしまうということはあり得ない。
③はアジア各国から日本に出稼ぎに来る外国人が減ったということである。例えば、アジア各国の完全失業率や一人当たりGDPといった経済指標が改善すれば、日本への移動費を払ってまで出稼ぎに来る経済的合理性が低下し、出稼ぎに来る外国人が減少し、不法滞在者も減少するだろう。
④はアジア各国の通貨が日本円に対して強くなり、円の魅力がなくなったということである。こうなると、当然日本に出稼ぎに来る外国人が減少し、不法滞在者も減少するだろう。
(#略)
①不法残留者数の計量分析
②不法残留者数の要因分解
①は不法残留者の送出国における経済発展、雇用創出・失業の緩和、一人当たりGDPの改善、為替レートの変化、受け入れ国における失業情勢の悪化などの決定要因の影響力を計測するために行った。また、2つのケースに分けて行い1つのケースでは政府が平成16年から行っている「不法滞在者半減計画」を「半減計画ダミー」として投入した。
②(#略)
①摘発者数や在留特別許可といった国内要因よりも、入国者数に表れている、国際経済環境の変化という海外要因のほうが不法残留者の変化率に与える影響が大きいということがわかった。これは、日本政府の力だけでは不法残留者を減らすことができないということを示している。
②各国一人当たりGDPや各国対円為替レート、各国失業率といった不法残留者送出国の経済状態を表す指標の改善が不法残留者数を減少させるということがわかった。これにより経済発展、開発を促進するような国際協力が必要であるといえる。
(#略)
  • 金昇謙・依光正哲(2003)「在留特別許可」に関する事例研究 Study on "Special Permission for Residence"16ページ
  • 井口泰(2001)「外国人労働者新時代」筑摩書房
  • 野呂夏彦(2002)「外国人犯罪に関する統計分析と共存への課題」ライフデザインレポート・ライフデザイン研究本部
  • 井口泰・曙光(2003)「高度人材の国際移動の決定要因―日中韓の留学生移動を中心に―」関西学院大学経済学部研究会
  • 渡戸一郎・鈴木江理子(2007)「在留特別許可と日本の移民政策」明石書店
  • 法務省入国管理局編「出入国管理」
  • ABD(2007)「Key Indicators 2007: Inequality in Asia」
  • 経済協力開発機構(OECD)編 日本労働研究機構 SOPEMI 研究会 訳(1995)「国際的な人の移動と動向」
  • 法務省「在留外国人統計」
  • 法務省「在留特別許可に係わるガイドライン」
  • 法務省入国管理局「出入国管理統計」
  • 総務省統計局「労働力調査」
#「半減計画」ダミーを投入する形の回帰分析(経済学における回帰分析の慣用的表現では、OLSか)を行い、ダミーが5%有意水準で有意だったので、効果があったと結論している。ダミーなしモデルは不要であるように思うが、一応実施されている。


津崎克彦(2014)「在留外国人統計に見る外国人労働力の性質と変容」『四天王寺大学紀要』58
http://www.shitennoji.ac.jp/ibu/docs/toshokan/kiyou/58/kiyo58-7.pdf

1.問題の所在(依光他2003)

第二次世界大戦後~1980年代:日本の労働力は国内の労働者の地域移動で賄う

1980年代後半:不法就労が実体化
1990年代:出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正を中心とした入国管理政策の転換、「1990年体制」(明石2009)
  1. 在留資格の整備・再編による主に専門・技術的な入国管理資格の明確化(1989)
  2. 在留資格における「定住者」の創設と日系人に対する在留許可の発行(1989)
  3. 在留資格「研修」における団体管理型受入制度の確立(1990)技能実習制度の創設(1993)
  4. 在日韓国・朝鮮人の人々を中心とした在留資格である「特別永住者」の創設(1991)
  5. 在留資格「興業」の上陸許可要件の整備(1996)
3つの外国籍労働者クラスタ
  1. 研修・技能実習制度を媒介にした中国国籍者
  2. 定住者ビザを媒介にしたブラジル国籍者
  3. 興業ビザを媒介にしたフィリピン国籍者
外国人労働者の労働市場への組込みにおける特徴(津崎氏による既往研究のレビュー、必見)
  • 二重労働市場における周辺的労働市場への外国人の参入
  • 外国人供給ネットワークの存在と労働市場における労働者の拘束性
  • 外国人労働者の導入による古い産業の維持
2.外国人労働者と在留外国人統計

在留外国人統計、国勢調査、外国人雇用状況(表1)
なお、外国人の状態を推測する際に利用できる公的統計としては、上記の他に出入国のフローを示す出入国管理統計調査(法務省)と不法残留者数を示す法務省「不法残留者数」がある。
(#略)
図45 外国人の階層性をめぐる仮説的図式
  地方 都市
基幹層 III 地方基幹層
正社員、事業系サービス
就労規制なしか、一部の技能実習生
I 都市基幹層
正社員、事業系サービス
就労規制なしか、職種規制のある在留資格
周辺層 IV 地方周辺層
周辺業務に就くブルーカラー等
就労規制なしか、一部の技能実習生
II 都市周辺層
非正規、対消費者サービス
就労規制なしか、労働時間規制のある在留資格
#高度成長期は日本人の人口ボーナスによるというトッド?の議論に、どのような種類のものがあったか、出稼ぎ・集団就職の効果について言及した研究に目配りしておく必要あり。依光他(2003)など、津崎(2014)の参照した文献に多く記されているような気配が濃厚。


経済産業省(2005)外国人労働者問題―課題の分析と望ましい受入制度の在り方について(外国人労働者問題 - bbl051006.pdf)
http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/bbl051006.pdf

分類 高度人材(専門的・技術的分野) 研修・技能実習生 日系人 留学生、就学生 不法滞在
(人数) 19万人 9万人 23万人 10万人 22万人
入国資格 専門的・技術的分野(大学教授、芸術家、企業経営者、研究者など)14カテゴリー。 電子機器組立、機械加工、繊維・衣服製造など62職種113作業。 日系ブラジル人など日系人2世、3世及びその配偶者。 ・大学等で学ぶ外国人(留学生)・日本語学校や高校等で学ぶ外国人(就学生) ・観光目的等で入国後不法に残留。・研修・就学・留学目的で入国後失踪。
就労の可否 在留資格の範囲内で就労が可能 研修終了後、受け入れ企業内で実習生として就労が可能。 就労可能(業種制限なし) 勉学に支障のない範囲でアルバイト可。(原則業種制限なし)
問題点 ・興行が6万人を占め、増加傾向(新規入国の8割)・技術、技能等の新規入国者は、横ばいないし減少。 ・研修等の終了後、能力活用の場や更なる能力向上の機会が不十分。・失踪、賃金未払い等の問題も発生。 ・不十分な日本語能力に起因する地域社会との摩擦。・子弟の教育環境が未整備。 ・急激な受入の拡大に伴い、不法就労目的での入国も増加。・一部に犯罪にまで手を染めるケースも存在。
必要な対応 我が国に必要な人材の受け入れ制度として見直しが必要。 我が国に必要な人材の受け入れ制度として見直しが必要。 生活/教育環境の整備を行うと共に、受け入れに当たって日本語等日本社会への適応能力を求めるべき。 留学ビザの発給要件の厳格化を行うと共に、アルバイトなしで学業に専念できる支援体制が必要。 厳格な取り締まり及び生活実態を踏まえた対応が必要。



日本弁護士連合会(2005)法務省入国管理局ウェブサイトの情報提供制度に対する意見書(untitled - 2005_25.pdf)
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2005_25.pdf

意見の趣旨
法 務省入国管理局が、不法滞在者が深刻化する外国人犯罪の温床になっているとの見解を前提として、2004年2月16日から、そのウェブサイト上において不法滞在と思われる外国人に関する情報を電子メールで提供させるシステムを開始し、匿名によることも可能であるとして積極的に情報提供を求めていることは、一般市民をして、外国人一般及び外国人と思われる外見を有する民族的少数者に対し、不法滞在者ではないかという注意を向けさせ、社会の監視を強める効果を有するのみならず、これらの者に対する偏見や差別を助長するものであり、多民族・多文化の共生する社会への流れを逆行させるものと言わざるを得ない。よって、当連合会は、このシステムを中止するよう求める。
次の5点がおおよその論拠として挙げられている。1~3は、それぞれ意味合いが違うが、法の理念に違背するという観点から、一本化して理解しても支障はないように思う。4は社会技術の側面、5は法技術論の側面であるとも理解できる。
  1. 本件システムが国内法との関係からみて差別や偏見を助長する(第1(2))
  2. 人種差別撤廃条約にも違反する(第2)
  3. 多民族社会に逆行するシステム(第3)
  4. システムの有効性が乏しく摘発につながらない(第4)
  5. 入管法62条1項は「告発」であって匿名を許す本「通報」制度は告発の意思を構成させないものである(第5)



今泉誠也(東京大学公共政策学教育部経済政策コース)(2014?)移民による人口の変動が労働市場に与える影響の分析:飲食店・宿泊業パートタイム労働者賃金の変動予測(cs2014laborf.pdf)
http://www.iss.u-tokyo.ac.jp/~matsumur/cs2014laborf.pdf

被説明変数:賃金
説明変数(内生):労働投入、消費
説明変数(外生):人口動態
ラグ:12
など4種のVAR(ベクトル自己回帰)モデルを立てた。ラグが12なのは、このときAIC最小で、14あたりで増加するから。4種のモデルは、上記のモデルとフルモデル、15~64歳人口と15~24歳人口の組合せからなる。
飲食サービス業パートタイム時給は弾力性にして-1前後の負の関係にあり、若年層の社会的人口増加がこの分野の時給を下げることが予想されると同時に、移民を受け入れなかった場合に長期的に時給が上がっていくという予測が結論づけられた。
(すごく適当に読んだ限りでは、)宿泊業に対して、おもしろそうな結果が示されているわけではなかったようだ。今時の宿泊業は、中国語が話せた方が良いように思うし、(北海道など)地域を絞れば、地元紙では当然のように語られる観光特需などが現れるはずだと思うが、どうやらそこまでは手をつけなかったらしい。
 「不法滞在」の検索ワードは、次の注から拾ったものらしい。不法滞在者数そのものにはかすっておらず、その点では参照しなくとも良い。
不法滞在者も存在するが、その非合法という在留状況から、政府統計の賃金データに直接的に反映されていることはあまり考えにくい。この論文では政府統計の賃金データを用いるので、不法滞在者の影響を直接統計的に考慮することは困難であった。


村瀬洋一(立教大学)(2009)ネットワークと社会意識に関する韓日比較調査報告書―国際間、地域間比較データの計量社会学的研究―
http://www2.rikkyo.ac.jp/web/murase/09hokoku/

橋本みゆき(立教大学社会学部)(2009)第8章 外国人増加に対する春川市住民の社会意識(Microsoft Word - 0907橋本NECO報告書修正.doc - 8hashi.pdf)
http://www2.rikkyo.ac.jp/web/murase/09hokoku/8hashi.pdf

#大韓民国江原道春川市における住民アンケートから、(推計約22万人とされる不法滞在者を含めた)外国人住民(労働者)に対する寛容さなどの意識を分析。「とされる」という留保を置いている。


生活情報(新宿区ウェブサイト)
http://www.city.shinjuku.lg.jp/foreign/japanese/guide/komatta/komatta_6.html

■不法滞在・不法就労
 日本国内に不法に残留する外国人は、約6万人(推計)に上り、その多くが首都東京にとどまっていると推測されます。
 許可された在留期間を超えて日本国内に滞在することは、法律違反となり、国外への退去強制の対象となります。
 不法就労活動は、不法滞在者(不法入国者、不法残留者など)が働いてお金を稼いだり、働くことが認められていない在留資格(短期滞在、留学など)を許可されている人が、違法に働いてお金を稼ぐことです。ただし、資格外活動の許可を受けている場合は合法活動となります。
なお、働くことを認められていない外国人を雇った事業主や不法入国を援助した人等にも罰則の適用があります。
 不法就労する外国人の存在は、労働面だけでなく、風俗治安等いろいろな分野にわたって、様々な問題を引き起こしつつあります。また、不法就労している外国人自身も、搾取されたり、労働災害に遭っても十分な救済を受けられないなど人権上不幸なことになることがあります。
 これらは日本社会における重要な課題であり、今、適切な対応をとることが必要とされています。
#自治体のウェブサイトにしては、表現が全方位的に強い調子になっている。歌舞伎町という一大歓楽街を抱える新宿区としては、当然の帰結であるとは思うが、この表現が許容される経緯が興味深い。


大和総研経済調査部(児玉卓、齋藤尚登、山崎加津子、井出和貴子、矢澤朋子、新田尭之)(2014年11月25日)移民問題グローバルレポート:受け入れ国、送り出し国、そして日本(移民問題グローバルレポート - 20141125_009186.pdf)
http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/world/20141125_009186.pdf
移民問題は局地的にはともかく、全国レベルで注目される社会問題には発展していない。一方、人口の2%弱にすぎないとはいえ、既に外国人は日本社会・経済の中に組み込まれており、一部には外国人の存在が前提となっている業種や職種、或いは地域が存在する。こうした中、現在の段階で、日本が「移民政策」を確立すべきか否か、或いは外国人受け入れを大幅に増やすべきかといった問いに対する答えを急ぐことは適当ではない。(#略)急ぐべきは、客観的事実に基づく、あるべき政策に向けた議論を始めることであろう。
建設分野等の外国人労働者受入の拡大は、以下の2点で問題を生じうる(pp.9-10)
  1. たとえば治安にも影響するという経路を通じて、国内の反対論を先鋭化させる
  2. 日本の外国人労働者受入政策の未熟さと労働条件の劣悪さが、受入拡大の結果としてより広く諸外国に知れ渡る
上記問題の一点目については、次のような説明がある。文章上の論理展開には穴がないと思われるが、いくつか修正しなければ、従来の議論を踏襲した政策研究とはならず、良質のフィードバックを期待できないのではないかと思う。一つ目は、前記事に示したような、参議院法務委員会における入管法違反を計上しているという議論(間淵氏の分析では、リンクのように罪種別である)、二つ目は、一点目から派生するが、カテゴリーの別である。今回は特にまずいだろう。というのは、不法滞在者は、入管法違反で一罪としてカウントされている可能性が高いからである。三つ目は、これまた一点目から派生するが、人数により率を計算すると、不法就労という行為については、経営者少数名、多数の外国人労働者という形でカウントされてしまうので、自然と外国人が凶悪であるかのような表現となってしまうことである。弱みにつけ込んで搾取する方が悪である。四つ目は、犯罪「発生」率という表記である。犯罪学を修めた者なら、これは容認しがたい種類のミスと捉えるであろう。(#というか、私は、常々、学問の正統性を確保するためにも、研究者たる者には、そう表現してほしいと思っている。)平成の時期に限れば、平成5年に計上された不法滞在者数は最大を数えるのであるから、ここまでさかのぼってみた場合にどうなるか、は確認に値するかもしれない。

#問題の難しさは、いったん、外国人労働者に対する不当な待遇が一般化すると、それを奇貨とする犯罪性向を有する外国人がその搾取的な状況を利用することであるように思う。馳星周氏の小説で『不夜城』?は綾瀬市に主人公の親戚?が住んでいたような気がするので、記憶に(おそらく誤って)引っかかっているが、確か、外国人同士で食い合う構図があったような。大沢在昌氏の『新宿鮫』シリーズでも、たびたび外国人グループが互いを食い合う構図が出てくるような。台湾グループの抗争を追って台湾の特殊部隊出身の人が来たような?まあとにかく、実録系でもフィクションでも、外国人が同国人を食い物にするという構図は、かなり普遍的であるので、これをどうにか止める手立てがないといけないということは間違いないように思う。留学生も、なおさら日本人の苦学生に比べて、犯罪に荷担するという機会が増えるわけだし。この種類の話が、本報告書の記載にないように見えるので、その点はまあ気にした方が良い。いずれにしても、国際犯罪学のような専門分化した学問分野では、越境労働における脆弱性が犯罪組織等に悪用されるわけで、そこら辺を加味した方が、生産的な分析・提言につながるようにも思う。そもそも、どの国の人であろうと、外国では犯罪に巻き込まれやすいと考えるところから出発すべきではないかと思う。ホームじゃないということで。暴力団はどうだか分からないが、暴力団でない日本人は海外ではもっぱら被害者になることが多いように思うが、そこで良くあるパターンは、日本人だからとか日本語をうまくしゃべれるからとかで、相手に気を許してしまった場合であると思う。それとは別に、中国南部でドロボウ御殿を建てたようなグループが入国できないように対策を進めることはもちろんだし、落ち度のない家庭に侵入強盗というケースが起こることのないように全力を尽くすべきだけれども、搾取していた企業経営者が不法就労者に刺されたと言われても同情しにくいなあ、というのは私の偽らざる気持ちである。こうして無駄な文を記していくうち、どうやら、不法滞在をめぐっては、野党議員からのツッコミと、行政幹部の目的が随分と乖離しているのではないか、そして、それらアクターの目的が相当異なっているにもかかわらず、手段としての法律と統計が重なってしまっているところに不毛な議論が生じているのではないか、という構造があるように思えてきた。もっとも、これはほかからも聞いたか読んだかの覚えがある話なので、誰からなのか思い出さなければいけない。

外国人の「刑法犯検挙人員/外国人人口」比率は、日本全体よりもわずかであるが恒常的に高い。しかし、このことは必ずしも「外国人だから」罪を犯しやすいことを意味するわけではない。例えば、外国人のうち、不法滞在者の同比率は正規滞在者のそれを上回り続けているが、これが示唆しているのは、正常な所得稼得手段を持たないことが、犯罪の誘因を強めていることである。同様に、技能実習制度などの下で劣悪な労働条件を強いられる労働者が、外国人の犯罪発生率を高める可能性がある。治安(犯罪発生率)は制度の在り方にも依存するということである。そして、制度の不備を温存したまま事実上の単純労働者の受け入れを拡大させれば、外国人による犯罪が増加し、それが制度の不備ゆえであるにもかかわらず「外国人の増加→治安の悪化」という通念をより固定させ、外国人受け入れに対するより強固な反発を帰結する可能性は高い。外国人労働者受け入れの拙速な積極策が、抜本的な積極策への転換を阻害するということにもなろう。 (p.9)
図表 1-3 犯罪発生率
(出所)警察庁「犯罪統計」(各年版)より大和総研作成

#全体、外国人、不法滞在者の各カテゴリーについて、2005~2013年の「刑法犯検挙人員/人口」、単位は%。

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