2019年10月23日水曜日

気象操作に係る言論に対する私見(メモ)

以下の各項目に示したような基礎的な認識を徹底できている読者は、それ以上、本稿を読み進める必要がない。

  • 気象データは一般人でも観察可能
  • 気象操作の実行状況は一般人には観察不可能
  • 人々のSNS上の発言は一般人でも観察可能だし感情は類推可能

気象操作が現在の技術体系で実現可能なことは事実であるが、特定の時期における局地的な気象変化を特定主体の気象操作の結果であると主張するためには、二段階ほど上等な証拠が必要とされる。局地的な気象操作技術が原理的に完成していて、実用化できるだけの資源が人類には備わっていることまでは、事実と考えて良い。その上で、まず、特定の時期・地域の気象変化が気象操作により実現されるかどうかをシミュレーションを通じて再現する作業が求められる。この上に、特定主体が気象操作を実施したという一次証拠が求められるのである。

ここで対象とするマイクロウェーブ式の気象操作技術の原理は、電子レンジのものと同一であるが、遙かに強力なマイクロ波を、大がかりな設備により、地球の裏側にまで到達しうる範囲に照射するというものである。なお、気象操作技術の現在については、自分で納得できる一次資料に当たることができていない。が、本稿では、原理そのものの正しさには重きを置いていないので、省略しても構わなかろう。(気象操作技術は実現可能であると主段落の首文で述べたばかりであるし、今般の気象操作の「犯人」は一般人には分からない、という私の主張を(論理・感情の双方の面で)理解することを拒絶する〈陰謀論者〉も多かろうから、これで十分である。)

言い換えれば、気象操作は、どのように行うか(how)までは広く知られており、操作の対象となる気象データ(what)も十分な時空間上の解像度(きめの細かさ)で整備されているが、誰が(who)・いつ(when)・どの地域に対して(where)影響を及ぼしたのかを特定するのは、通常の権力しか持たない個人には無理である。特定の時期、局地的な天候に対して気象操作が行われたとする主張の正しさは、場合によっては、データだけで説明できるかも知れない。気象操作技術でなければ生じないであろう水蒸気量・温度の変化を示せれば、それで十分だからである。しかしながら、後述するが、その「犯人」までを動かぬ証拠とともに挙げることは、非常に困難である。

特定主体の気象操作を気象変化の原因であるとするためには、その主体の活動が明らかにされ、その活動が時間軸上で気象変化に先立つものであり、その活動と気象変化とのメカニズムが提示された上で、気象データの変化に対してメカニズムが矛盾しないことが示されなければならない。ここでの私の主張は、因果関係に係る1990年前半辺りまでの定説を利用したものだが、現代的な因果推論を用いずとも十分である。誰が・何をしたのかが分からない限り、誰か(特定人物)に因果関係を帰属させることなどできない、と指摘したいだけだからである。

気象操作技術を運用可能な主体は、国家レベルの強力な組織に限定されるが、この技術の射程が全球にわたるために、その実施主体を特定することは困難である。前述したが、気象操作におけるマイクロ波の照射距離は地球と同スケールであり、消費されるエネルギーは大きい。これら両点を踏まえれば、気象操作技術を運用可能な主体は、原子力発電所を必要に応じて使用できる程度に大きな、国家規模の組織あるいは企業体に限定される。それゆえに、気象操作に係るエネルギー消費は、国家レベルの機密となっていると考えて差し支えなかろう。つまり、気象操作技術は、使用する大量のエネルギーゆえに「容疑者」の数こそ限定されてはいるものの、その射程の長さゆえに使用されたとしても「犯人」の特定が困難な「兵器」である。世界各国にわたり気象操作に用いられたエネルギーの消費データを常時監視でき、かつ、世界各国の偽装工作を見抜けるほどの組織でもなければ、気象操作の「犯人」を特定することは不可能であろう。

国家レベルの強力な組織が行う活動である以上、気象操作の運用実態を確認することは、一般人には困難である。誰が・いつ・どの現象を操作したのか、明らかにできないからである。アメリカ政府の運用する衛星から定期的に送信されているデータを解析した米国の大学のサーバの公開情報を引き合いに出されても、奇妙なデータが存在することを確認できるだけである。現代に生きる個人の多くは、データ上の奇妙な値(の変化)が、どのように現実の気象に影響したのかをタイムリーに分析することも、不可能であろう。オイラー方程式やナビエ=ストークス方程式、学習した...記憶がある...くらいの私では、今から気象学を勉強し直しても、シミュレーションを実装するまでに何年後になるやら...である。気象学の知識を有する専門家などによる徹底的な分析の成果を待つほかない。今秋発表された911におけるWTC7の崩壊シミュレーション程度に、徹底的な検証が必要となるのである。

世上、HAARP悪玉論(そのほとんどがHAARPを利用した意図的な攻撃)が跋扈しているが、この主張を証明するには、同施設において実施されている作戦の実態を一次情報により暴くほかない。具体的には、施設管理者を拘束・尋問し、真実性があると認められる形で自白あるいは証言を引き出すほかない。これ以外の方法では、当該主体の過失・無知による(意図的な操作ではない)副作用や、運営主体が異なる同等の施設による(故意・過失による)活動や、これら複数の施設による操作の相互作用など、主張のスコープに含まれない要因で気象が変化してしまっているという可能性を除外できないのである。HAARPが制圧・適正な管理主体の下に置かれるようになったとの主張も見るが、一般人の誰にも後追いできない種類のものである(から、私はそうだと良いねと思いはするものの、話題としてはスルーする)。

なお、誰が気象操作を実施したのかは、一般人の圧倒的大多数に分からぬとしても、気象操作技術が実現されていることを知る者・知らぬ者、気象操作技術が現地時間令和元年10月22日の関東地方の気象に対して適用されたと考える者・そうでない者、という二種の二値区分を設ければ、それぞれの区分に属する者の心情に対する影響を定性的に分析することは可能となるし、昨日の天気ならびに当日の天気についての言説が人々の知識・感情に対して与える効果こそ、心理兵器の一種であると考えることも可能である。この「心理兵器」の結果は、SNSにおける言説に表れており、天候のデータと同程度に観察可能であるが、「心理兵器」の発動の有無そのものは、HAARP(に類する施設)の操作と同様、観察可能な事実とまでは言えない。

(リテラシー高めの読者向けに)本稿周辺の事項の理解を増進するための補助線として、三河地震(1945年1月13日)後に米軍が地震兵器の実在を想起させるビラを投下したという事実を挙げたい。当時から地震兵器が実用化されていたという話を(私は)聞かないが、地震兵器の実在を当時の敵国民に信じさせんとする試みは、紛れもなく心理作戦の一つであろう。もっとも、このビラが結果として大日本帝国の降伏を早めたという分析を(私は)知らない。しかししかし、後世において、リテラシーの低い(ふりをする)者により、このビラは、地震兵器が当時から実在する証拠として挙げられてしまう程である。ゆえに、当時の心理作戦は、効果が何らなかった訳ではない、と結論しても良いものであり、その時間的なリーチは長い。