2017年12月22日金曜日

(一言)2017年12月21日日経夕刊の藪中三十二氏のコラムについて

藪中三十二氏による昨日の日経の夕刊コラム[1]は、形式も中身も、学者の記述するエッセイとなってはいない。形式上の問題点は、二点ある。一点目、最初の二つの段落は、段落読みできる内容となっているが、残り二つの段落は、トピック・センテンスが段落の内容とは一致していない。二点目、「「外国人労働者100万人時代」という大見出しの報道」は、グーグル様にこの見出しをお伺いしてみると、複数存在しているために、典拠を特定できない。エッセイの内容は、第三段落で100万人の内訳を「専門技術分野が20万人…40万人が「身分に基づく」とあり、永住者やその家族、ブラジル日系人…技能実習生が21万人、留学生など資格外活動が24万人」と述べた後、最終段落で、フィリピン人による介護には介護福祉士の資格が必要とされており、介護の実態と乖離していると指摘し、単純労働力についても一定の制度設計を行い「ホンネでの受け入れを進めるべきではないか」と主張するものであるが、介護における実態を外国人労働一般へと無条件に拡張している。このコラムは「外国からの留学生も多いクラスで真剣な議論」をしたと言うが、大学で行われたと認められる※1授業に係る報告が学者としての実態遂行能力を欠いたものであることは間違いないから、授業もおろそかであろうと推論することに問題はなかろう。


※1グーグル様に「藪中三十二 site:ac.jp」でお伺いを立ててみたところ、時期はともかく、大阪大学国際公共政策研究科(OSIPP)寄附講座・特任教授と立命館大学国際関係学部の特別招聘教授を務めた経験があることは間違いないようである。


[1]『日本経済新聞』2017年12月21日夕刊1面4版「あすへの話題 外国人労働者」(藪中三十二)




平成30年1月2日訂正

文章を訂正した。が、私自身の文章作法の稚拙さは、私自身の主張の信憑性にこそ影響を与えるものの、藪中氏に対する私の疑問の正しさそのものに対しては、依然として影響を与えないであろう。

2017年12月15日金曜日

(一言)陰謀説を語る上で、どこまで文章を正確に記述すべきか

私の考えでは、表題の答えは、「A氏は「B氏がCをDであると言う」と言う」などと記述すれば、ほぼ十分ではないかというものである。動詞は、もちろん変更可能である。A氏やB氏などの個人は、組織に置換えもできる。十分な知識もないので言語学への深入りは避けるが、ここまで記述しておけば、陰謀論・陰謀説に係るほぼ全ての社会関係を正確に記述することができようし、厄介な再帰性の問題も、必要なだけ記述することができよう。


#この種の短文の発信方法は、ツイッターとすべきかも知れないが、そうすると、著作権の問題も含めて新たな問題が生じるので、本ブログを利用することとした。

2017年12月10日日曜日

(感想文)『John Wick』劇中の金貨について

キアヌ・リーブス(Keanu Reeves)氏主演の『John Wick』(2014年)のケーブルテレビ放送を録画し鑑賞した。

劇中で暗殺者たちにより使用される金貨の価値がどれくらいか、少々興味が湧いたが、流石はインターネット、議論自体は既出のようである(。しかし、納得はできかねる)。アダム・オズィメク(Adam Ozimek)氏は、金貨が独自の地下経済圏を形成しているものと推定されると解説している[1]。『StackExchange』のスレでは、深く考え過ぎるなという回答がトップに見られる[2]。しかしながら、劇中には、非常に多数のサービス要員が登場するが、実体経済との交換可能性が存在していればこそ、これらのサービス業者も存在できよう。このため、先に見たような外野の意見は、問題の本質をはぐらかそうとするものでしかない。現に、劇中においても、ミカエル・ニクヴィスト(Michael Nyqvist)氏演じるロシア・マフィアの頭目ヴィゴ・タラソフ(Viggo Tarasov)が、自宅の金庫・教会の地下金庫の双方において、金貨とドル紙幣の両方を保管していることは、映像として示される。おそらく、劇中では、組織犯罪集団は、両替商の機能をも兼ねており、それゆえに影響力を維持しているものとも解釈できよう。この点は、現実において、ビットコインが『シルクロード』で利用されていたことと類似するものと言えよう。

『John Wick』中の金貨は、1オンスのウィーン金貨[3]の実勢価格[4]よりも高価に取引される存在であるように見受けられる。劇中では、死体処理に一体一枚、暗殺者の監禁に一枚、安全が維持されたバーへの出入に一枚といった形式で使用されていた。ウィーン金貨は、1オンスが最大の重量(価格)であり、その直径(37mm)は、デイヴィッド・パトリック・ケリー(David Patrick Kelly)氏演じる死体処理業者のチャーリー(Charlie)への支払場面による限りでは、劇中の金貨と概ね同一であるから、比較対象として適切であろう。他方、真鍋昌平氏の『闇金ウシジマくん』では、死体処理が一体50万円という話があったものと記憶している。よって、『John Wick』中の金貨は、1オンスのウィーン金貨よりも、数倍の価値を有する(場合がある)と言えよう。チャーリー一座のサービス内容は、原状回復まで含めたものであり、荷物を持込む必要がある『ウシジマくん』の業者よりも上等である。円に換算すれば、チャーリー一座のサービスは、桁としては数百万円と観て良かろう。わが国の高級ホテルも、一泊百万円近くのサービスが存在することを思えば、安全な食事だけでなく、貴重な情報が提供されるバーへの出入りに対して、金貨一枚という価格は、あながち外れたものでもなかろう。百ドル単位の支出というものは、ニューヨーク市でも、東京でも、中流階級であると自認する人々にとっては、豪勢な一晩を意味するであろう。劇中の金貨は、この一桁上のサービスを提供するというイメージで良かろう。なお、賢明な読者にはお見通しであろうが、これ以上の具体的な価格の追究は、私には無理というものである。

そのほかの感想は、以下のとおり。

  • ロシア・マフィアの無軌道振りは、2014年のハリウッド映画界の戦争屋振りと呼応している。
  • 殺し屋という設定にしては、アクションが大ぶりである。良く体が動くなあとは感心するが、もっと省力的で良いのではないか。
  • 『PayDay 2』というゲームに導入されたJohn Wickは、武器にしても人体モデルにしても、良く再現されている。
  • たかが一匹のビーグルのために?という感想が見られる。しかし、わが国では、類似した言い訳の事件が存在し、少なくとも大マスコミがこの点を追及しなかったことは、忘れてはならない。
  • 交換可能性を追究しすぎると、アドルノがマルクスを援用して言うところの物象化(=何でもカネで換算し、固有の価値を理解できなくなること)を強化することになりかねない。しかしながら、「砂金を蓄積して信用供与の手段として利用するという方法は、国際秘密力集団の資産形成術の本丸である」というのが、落合莞爾氏の近年の主張である。金貨が使用されるという設定そのものについては、同意できる。

[1] Understanding The John Wick Economy
(Adam Ozimek(Contributor, Modeled Behavior)、2017年04月09日12:55)
https://www.forbes.com/sites/modeledbehavior/2017/04/09/understanding-the-john-wick-economy

[2] What's the value of the John Wick gold coins? - Movies & TV Stack Exchange
(2017年10月03日)
https://movies.stackexchange.com/questions/81029/whats-the-value-of-the-john-wick-gold-coins

[3] 田中貴金属工業株式会社|ウィーン金貨ハーモニー
(2017年12月09日確認)
http://gold.tanaka.co.jp/commodity/shohin/wien.html

[4] 田中貴金属工業株式会社|貴金属価格情報
(2017年12月09日確認)
http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/index.php


#しばらく執筆が滞っていた上、毒にも薬にもならない内容であるが、勉強不足・作業不足のため、まだまだ滞る予定である。