2015年10月15日木曜日

『レイルウェイ 運命の旅路』を観て(感想文)

 泰面鉄道建設に従事させられた英国兵捕虜のエリック・ロマックス氏を描いた※1『レイルウェイ 運命の旅路』を観ていて、日本は、基本的に国民しか資源がないにもかかわらず、個人を代替可能な存在とみる伝統があるのかな、と思った。無常観が底流にある限り、百姓には逃散という最終手段があり※2、キリシタン大名は女性を海外に売り、江戸は梅毒で若い働き手を減らしまくるも常に次男坊以下が送り込まれ、というように伝統は続く。第二次世界大戦時に大多数の日本人が(そして相手方も)国際法を無視し捕虜を虐待したのは、捕虜になることを潔しとせずという戦陣訓を過度に重視したことの裏返しであろう。資源が国民しかないわが国では、戦陣訓のような馬鹿げた心得を部下に説き、国民に自決を強制する一方で、本国の上司はのうのうと私腹を肥やす。これが、わが国の平常運転の姿なのだ。デービッド・アトキンソン氏自身が解説する小西美術工藝社の経営手法(『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』)は、その整然さが、ほんの少しだけ、会田雄次氏の『アーロン収容所』を連想させる。日本人による捕虜虐待は、まさに※3今現在の日本企業のスタンダードである使い捨て労働と、正社員に対する不当な優遇を彷彿とさせるために、目的を達成する上で必要な限りの合理性を追求する英国式経営が、対比として連想されてしまうのだ。
 憲兵で通訳の永瀬隆氏の青年期は、ロンドンをベースとされているという石田淡朗氏が演じており、壮年期は真田広之氏が演じているが、それぞれ、役に要求される繊細な感じが画面に出ている感じがとても良かった。(←月並みな表現で申し訳ありません。)ロンドンには3.11後、9千人以上が移住している。その中には、3.11の戦犯も含まれるのであろう。それらの戦犯が、自身らの子供たちと同様に、現地で、ほかの若者たちが飛躍できるよう支援するのであれば、後の世代が彼らを赦すことも、やがては可能になるのかもしれない。先の大戦についての書物を読めば読むほど、それは期待できないことのようであるけれど。

※1 これ以上書くと、ネタバレなので書きません。
※2 逃散した百姓がどのように扱われたのかについては、多少承知しているが、逃亡奴隷が容赦ない扱いを受けた他国・他の事例と比較すると、マシなのかもしれない。
※3 昨今の流行を真似てみた。本当に、現在のわが国の政府は、国民の虐殺が目的であるならば、まさに素晴らしい戦果を発揮している。

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