2015年10月12日月曜日

ホールボディカウンタに係る報道に接して(感想文)

子どもの内部被ばくなしと発表 福島など2700人 - 47NEWS(よんななニュース)
http://www.47news.jp/CN/201510/CN2015100801001587.html

 南相馬市立総合病院、ひらた中央病院、いわき泌尿器科の実施した検査という。内部被ばくがないというのは、にわかに信じがたいものがあった。関与した病院名から、おそらく、その筋で有名な坪倉正治氏が関与した調査ではないかと考え、Google様にお伺いを立ててみたらば、2ちゃんねる経由で次の記事が見つかった。この記事で、ようやく疑問がいろいろ解けたので、次にまとめておきたい。

子供2700人の内部被爆なし 福島など、病院グループ調査
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08HCL_Y5A001C1CR8000/

 記事には、次のようなくだりが含まれる。
 装置の検出限界値は50ベクレル。不検出だったことで、1年間の被曝量は16マイクロシーベルト以下と推計できる
検出限界が50ベクレルという低い値で抑えられていても、計測時間が短かったり、バックグラウンド値を高く設定したり、あるいは機器と被計測者との間に遮蔽物を置いたりすることにより、放射線が検出されにくいように調整することは可能である。これらのイカサマに近い手口を初めて指摘した者を調べることは大変であり、ここでは行う余裕がない。しかし、多くの人たちによって指摘されてきたことであるから、取り立てて私が初出を調べる手間を冒す必要はないだろう。
 私が指摘したいことは、ただ一点、わが国で統計を偽るようになったときは、すでに破局が見えているときである、ということである。昭和史に詳しい作家の保阪正康氏は、大本営発表について、「官僚の嘘」の典型例であり、次の段階を踏む展開を経たと述べている。(2009年の『官僚亡国』pp.23-24、初出は『文藝春秋』2008年11月号)
  1. 事実を伝える(戦果の上がっているときは頻繁に)
  2. 事実の表現を歪める
  3. 事実とは異なる表現に変わる(「撤退」を「転進」)
  4. まったくの虚偽のを情報を伝える
  5. 沈黙する
この保阪氏の図式を受け容れると、みなし公務員である東京大学教授を筆頭とする一部の研究グループがより多くの研究費を得るために、再現性のないデータに係る話題を報道機関に提供していくという行動が見られる現在は、虚偽の情報を伝えるという4段階目に至っていると推測しても支障ないだろう。(当該研究グループは、事故直後から問題含みの調査を進め続けてきている。しかし、結論ありきで計測を続けることにどのような目的があるのだろうか、裏帳簿のようなものがあるとして、それはどのようなところで共有されているのだろうか、ということを不思議に思う。)空間線量率が一年で数ミリシーベルトに達するとき、どうして埃も吸い込まず、許容範囲内で汚染された食品を摂取せずに済むのか。摂取してしまった放射性物質は、すべて体内から排出されたとでもいうのか。現在は、何らかの理由で少しでも問題のある数値が公表されると、今後の責任問題に発展する可能性が見込まれている時期である、というものが、最も通りの良い説明である。

 保阪氏は、佐藤優氏との対話もふまえ、「官僚は間違える」「(#公益や省益ではなく)個益を追及する」という前提に立ち、個別の事例について担当者の無能力や無責任を問うていくという、「冷めた官僚論」を築く必要がある、と指摘している(pp.38-40)。
 統計の操作が破局を目の前にした官僚の弥縫策の表れであるという主張も、すでに多くの人が指摘したことである。なので、ここには私のオリジナリティはほとんどない。私は、私なりに「枯れたアイデア」の変奏曲を演奏しているに過ぎない。しかしながら、なぜ、われわれは、この種の愚行を十分に防いでこれなかったのか、と考えることは、失敗の本質を突き止めるためにも必要なことである。また、その考察と、考察から得られた教訓の実践は、福島第一原発事故という新たな破局を経験し、かつ、その破局に責任を有する世代の責務でもある。

0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントありがとうございます。お返事にはお時間いただくかもしれません。気長にお待ちいただけると幸いです。