はじめに
(2017年)5月22日、マンチェスターのエティハド・スタジアム(Etihad Stadium、旧市営スタジアム、マンチェスター・シティの本拠地)において、アリアナ・グランデ氏のコンサート直後に生じた爆弾テロ事件[1](以下、本事件)について、ブロガーの「ザウルス」氏は、事件そのものが創作であると主張している[2], [3]。ザウルス氏が個々のデータや画像等の出典を明記していないために、彼(女)の主張の出典も省略された虞を拭えないが、本稿では、とりあえず、文章部分に示される解釈がすべてザウルス氏個人に由来するものと考えることにしよう※1。その要旨は、指摘された順に、次のとおりである[2], ※2。
- 〔#APからPAに移譲された唯一の現場〕写真の雰囲気が閑散としている
- 死者・負傷者合計130名以上という情報と不整合である
- 爆発直後ならば煙が立ち込めているはず
- 爆発直後ならば観客たちが逃げ出す様子が映るはず
- 横たわる被害者のほとんどが男性に見える
- うろつく者=アリーナ会場の職員・警察官が男性
- 女性がほとんど見えない
- 60人くらいの男女がフロアに横たわることになるのでは
- 強力な爆弾であれば現場は「血の海」ではないか
- 引きずった血の跡が乾いているのが不可解
- 「負傷者(と遺体?)たち」が長い時間放置されたことになる
- 救護者がいない
- 被害者に連れ添う様子がない
- 搬送待ちであれば「救命士が誰一人いない状況になることはありえない」
- 「あなただったら、負傷した友人や家族を見捨てて逃げるだろうか?」
ザウルス氏は、以上の見解に基づき、
この写真は、事件当日の写真ではない![2]
と指摘した後、続報
[3]において、本事件そのものも偽造されたものと結論している。ザウルス氏は、本事件のタイムライン上に写真撮影時点を位置付けることができず、また、本事件を偽装することにも庶民の恐怖を喚起するという具体的な利益がある以上、写真が偽造され、事件そのものが偽造されることに何ら不都合がないというのである。ザウルス氏の記事のコメントには賛否両論が寄せられている。意見の中には、マンチェスター在住で知己が現実に被害を受けたと述べるもの
[3]、写真の偽造はあり得るかも知れないが事件が偽物というのは飛躍しすぎではと述べるもの
[3]などが含まれるが、これらのコメントに接しても、ザウルス氏は自説を変えていない。
本稿の目的と要旨
本稿は、問題の写真についての注意点を二点述べ、次いで、当日撮られた唯一の写真であったとしても矛盾しない社会的事実を説明し、その一方で、この写真自体には複数の問題点が認められることを指摘し、最後に、この写真の怪しさが本事件の不存在を論駁するほどの証拠とはならないことを述べるものである※3。二点の注意点とは、撮影者の個人名が不明であること、あらかじめ写真にフィルタが掛けられていることである。当日撮られた唯一の写真であることと矛盾しない社会的事実とは、(1)写真撮影時点が重症患者搬送後であるならば状況と矛盾しないこと、(2)煙や音に対する基礎的な知識が状況と整合的であること、(3)英国社会がレディ・ファーストを建前とすること、(4)防犯カメラ(CCTV)映像のメディア利用が1998年データ保護法に違反すること、である。これらは、ザウルス氏の考察への直接の批判の論拠となる。写真における複数の問題点とは、写真撮影という行為そのものと、撮影された状況とに区分される。撮影行為そのものの是非は、撮影者が不明であることと分かち難いものとなっている。撮影された状況のおかしさは、トリアージの態様、最も右側に横たわる人物の症状の安定度、割れたガラスの不存在、チケットブース上の照明の破損が認められないこと、の4点である。最後に、写真がたとえ事前に準備されたものであるとしても、被害の不存在を証明する証拠にはならないという論理を示して、本稿を終える。
本ブログの記事の例に違わず、本記事も非常にひねくれた内容ではある。しかし、陰謀の成功を願う企画者が複数のプランを準備しないはずがないという主張は、十分に論理的であろう。代替的な計画が並行的に実施されると、事件の様相は、複雑なものとなる。それゆえに、一般庶民に示された結果の逐一について、いかなる原因に基づくものであるものかと考察する作業は、遠回りなようであるが、事件の全容を庶民なりに推測する上で有用である※4。ザウルス氏の今回の説は、拙速に過ぎるが、依然として、写真そのものが怪しいという点には、同意すべき内容が含まれると思われる。
注意点1 写真の撮影者を推測すべきである
最初に、問題の写真の出所と、そのキャプションを検討し、撮影者が顕名ではないことに注意すべきであることを指摘する。『Boston Herald』のAP通信名義の記事[4]は、複数の写真を含むが、そのうちの1点が、ザウルス氏も取り上げた唯一の現場写真(とされるもの)である。説明の文章は、次のとおりである。
2017年5月22日月曜日、英国マンチェスター州のマンチェスター運動場内での爆発の後、救助者たちが負傷者に付き添う。月曜夜のアリアナ・グランデのコンサート直後に自爆テロ犯と目される人物が攻撃を加え、若い観衆にパニックをもたらし、12名以上の人々を殺害した。(APよりPA〔#が版権を取得し頒布〕)[4]
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図:事件現場とされる写真の模式図 |
この写真の版権がメディア企業にあるかのような表現を採用しているにもかかわらず、ほかに現場を直接撮影した写真は存在しない。ほかに写真が見られないというザウルス氏の指摘は、現時点においても正しく、熟考すべきことである。ほかのメディアが映り込んでいない理由として考えられるものの一つは、ザウルス氏の指摘5-1にもあるが、非常線の向こうから同一方向を向いて撮影したために、映り込む余地がなかったというものである。もう一つの理由は、撮影者が小遣い目当ての内部犯行者によるものであったというものを考えることができる。さらには、ザウルス氏の指摘どおり、彼らがクライシス・アクターであり、全身の特徴を特定されることを避けるために写真全面にフィルタを掛けられたと考えることもできる。この状況下での個人撮影が、英国内で、肖像権を侵害するという意味での不法行為とされているか否かは、私には断定しかねるが、日本では、被害者からの損害賠償請求の対象となり得る事態であろう。公務員が小遣い目当てで撮影したとすれば、どの先進国でも、懲戒ものの事案であろう。コンサート運営企業の従業員か被害者の一人が状況を撮影したとすれば、これまたややこしい(ので、検討を省略する)。
メディアが撮影したのではないという理由を仮定してみると、非常線内部の写真が一枚しか存在していないことも説明可能となる。撮影者がメディアではないとすれば、この事件が既遂で、かつ、撮影者が自称イスラム国の手の者であるという場合も現実味のあるものとなる。自称イスラム国に関しては、先進国の特殊部隊(出身者)が訓練を施していたり、参加しているという疑惑がある。この噂は、ソビエト連邦とアフガニスタンとの戦争において形成された、オサマ・ビン=ラディンとCIAとの関係という前例を想起すれば、十分に信憑性の高いものであると考えることができる。このため、作戦の見届人がチンケな非行人物のふりをして、AP通信をプロキシとして利用し、被害の様相を関係者に伝達しようと目論んだということも、理論上、考えておくべきことになる。つまりは、軍事作戦として理解した場合、ミサイル攻撃や空爆を敵地深くで行う場合の、観測手(spotter)の役目を撮影者が果たしていたことになる。自称イスラム国にとっては、このように考えることは、自然である。あるいは、敵味方の位置関係では真逆となるが、居合わせた(英国などの)情報部員が、世界の情報コミュニティと事情を共有するために、サムネイル代わりにAP通信に写真を提供し、連絡の糸口を設定したという可能性も、ゼロではない。撮影者の正体として私が思いつくことができたものは以上であるが、ない知恵を絞って考えてみた割には、我ながら、多く出てきたものである。
ところで、会場周辺は撮影が許可されているであろうし、ロビーでの撮影も許可されているかも知れないが、通常、コンサート会場内は、撮影禁止である。アリアナ・グランデ氏のような人格者系の有名人のファンならば、よほどのことがない限り、この運営側の指示にも従うものと考えられる。この心性は、観客による映像の少なさに影響しているかも知れない。また、違反行為を承知でネットに映像をアップする人物は、悪いことと知りつつ密かに撮影する者よりも、さらに少なくなろう※5。逆に、反抗するのが格好良いというお騒がせキャラのファンならば、好き放題に撮影し、より多くの映像が残されたかも知れない※6。ただ、よほどのことが起きたために、ツイッター上には会場内のアナウンスの動画が残されている[5]ようであり、自称デバンクサイトの『Snopes』[6]がその動画を取り上げていたりもする。
注意点2 写真は公開前に加工されているようである
本題に入る前に、もう一点、指摘しておくべきことは、問題の現場写真が『Photoshop』や『Gimp』に代表される画像修正ソフトウェアを用いて、フィルタを掛けられているという事実である。このため、写真からは相当のディテールが失われている。この事実を抜きに写真の中身を議論することは、危険である。この措置は、爆弾の威力等を自称イスラム国側に悟らせないために執られたものと思われるが、他方で、写真の信憑性と有用性とを著しく低めてもいる。なお、ザウルス氏[2], [3]は、写真全体に対するフィルタ処理には一度も言及していない。
この写真は、頒布されるまでの間にフィルタ処理が実行されたと考えられる。この見立ては、『Google画像検索』を適当に眺めた結果、ゆるく結論したものであるから、方法論上では適切なものではないが、実用上は十分であろう。3000×2250ピクセルの元画像が複数のマスメディア系のサイトで登場しており、この画像の4:3のアスペクト比をほぼ遵守する形で、多数のサイトがこの写真を転載しているようである。それらの写真のいずれもが、画素数はともかく、フィルタ処理後であるように見える。画像の状態の一致は、より厳密な方法論が存在すること自体は承知しているが、人間の視覚性能の高さが私自身にも適用されるものと短絡して、この検証は省略する。この写真は、AP通信が取得したものをPA(英国の通信協会、海外報道におけるロイターのカウンターパート。)が管理・頒布する、という流通経路を経由したものといえる。この経路を勘案すれば、撮影者かAPかPAのいずれかが、または複数が、この写真をあらかじめ加工してから全世界に公開したと考えるのが自然というものである。
画像の全面が加工されたことにより、ディテールが失われるという問題点が生じている。その例は、期せずして床がリノリウム風に見えているというものである。ロビーの床の材質は、現実には人造大理石のタイル敷きのよう[2], [3], [7]であるが、病院やオフィスに見るようなリノリウムに見えるまでに加工されている。このため、人造大理石のテクスチャの大きさに相当する物質は、加工後の写真からはすべて消されていると考えなければならない。それ以上の大きさの物質も、『Photoshop』や『Gimp』などに見る「スタンプ」機能で削除されてしまっているかも知れない。なお、仮に、プロのジャーナリストが撮影し、かつ、現場の凄惨さを考慮して自身がフィルタを掛けたのであれば、その内実は、批判的に検討される余地がある※7。
写真が当日撮影されたものであるとしても矛盾はしない
ザウルス氏の考察への批判は、(1)写真撮影時点が重症患者搬送後であるならば状況と矛盾しないこと、(2)煙や音に対する基礎的な知識が状況と整合的であること、(3)英国社会がレディ・ファーストを建前とすること、(4)防犯カメラ(CCTV)映像のメディア利用が1998年データ保護法に違反すること、という4点にまとめられる。ここに示す批判の根拠は、いずれも、分野横断的ではあるが、大学の教養課程で学習することになる内容であるから、ザウルス氏の勉強不足から生じたものと結論してしまっても良かろう。この批判がザウルス氏のパリ連続テロ事件に対する解釈についても該当するか否かの検討は、私自身が(英語すらも怪しいが)フランス語を習得しておらず、フランスの事情も把握していないがゆえに、さすがに着手しかねることである。
1番目の指摘であるが、写真が閑散としているという指摘は、無傷の観客が全員退避し、トリアージにより重傷患者が搬送された後、命に別状がないが動けない症状の患者の搬送される前、という時点で写真が撮影されたためであると考えられる。このように考えれば、上掲の1・2・3・4・5・7・8・9番目に係るザウルス氏の論点は、有力な根拠を失う。今回のような自爆テロ事件の発生直後、警備側の関係者が疑うことは、第二波やそれ以上の攻撃の可能性である。この話は、敵側(自称イスラム国や戦争屋)にも味方側(各国の警察・軍隊や一般国民)にも広く知られたものである。そうでなければ、一般人である観客が慌てて逃げることはない。急がず慌てずに整然と現場を離れることは、一般国民に可能な協力方法である※8。これゆえ、公的機関に所属する看護者がいるという前提で、動けない負傷者から連れ添いが離されることは、十分にあり得る。この結果、9番目の指摘も、根拠を失うことになる。なぜなら、連れ添いが自分たちで助けられる限りは、助け合って避難している様子がパパラッチされている[8]からである。受傷したとしても、部位や程度によっては、速く歩ける場合もあろう。脚部の負傷が軽微な負傷者は、パパラッチの撮影開始前に十分遠くに逃げており、比較的足の遅い脚部の負傷者が逃げる場面のみがパパラッチに抑えられた、という訳である。もっとも、秒単位の正確なタイムラインが整備されなければ、この前後関係を検討することは困難であろう。その場面では、ザウルス氏の言うとおり、CCTVが役に立つことは確かである。(が、それゆえに、一般に公開されることは、利敵行為にもなり得るために、望み得ないとも言える。)なお、人体は脚部の方が胴体よりもスマートであるし、地球上には重力が働いているので、人混みにおける被害において、脚部を負傷する人物の人数は、理論的には、胴体や上半身を負傷する人数に比べれば多いはずである。(何らかの仮定を置いた試算は、私でも可能な作業であろうが、今までに試みたこともないし、ここで試みもしない。)
2・6番目の指摘であるが、爆発音や煙は、爆発物の種類に依存するため、必ずしも、ザウルス氏が考えたような結果になる訳ではない。ただし、この点に対するザウルス氏の意見は、消極的に否定することしかできないものでもあり、今後の材料の出揃い方によっては、肯定されるかも知れない(が、今までの材料による限りでは、私の考察の方が妥当であろうとも考える)。音については、相当大きなものであっても、威力がそれほどでもないという場合もありうる。銃声は、通常、イヤーマフラー等を必要とするほどに大きなものである。背景音がなければ、アリーナの反対側にいても必ず気付くことができる大きさである。銃声が0.3m離れた場所※9で132dB[9]として計測されたとすると、150mでは78dBで聞こえる。これは、一般的な銃声よりも相当に厳しい条件で[10], [11]計算した数値であるが、一般人が十分に聞き分けられる大きさである。爆発音は、これよりも大きな音でない方がおかしい。周辺がざわついていたとしても、人間の音声とは異なる周波数であるから、本事件の爆発音は、コンサート後の観客にも、十分に聞き分けられたであろう。他方、煙については、不完全燃焼時に発生するものであり、完全燃焼している場合、大抵の場合に透明である。脱線すると、福島第一原発1号機の「水素爆発」においては、水素自体は完全燃焼して煙が発生することはないが、威力が大きく、破壊されたコンクリートの粉塵等が飛散したり、燃焼時に発生した水蒸気が結露したために、あのような「白煙」が生じたものと考えられる。それに、本事件における爆発物の破壊力が大きければ、窓ガラスが割れ、煙が流されたであろう。煙が生じた場合であっても、火災報知器が作動し、排煙設備が稼働したであろうと考えることもできる※10。また、私はこちらの方が本命だと考えているが、YouTuberによるマッシュアップ映像[12]によれば、近辺のフラット(長屋形式の住戸)前の駐車場を映しているCCTVが事件を偶然撮影しており、天井が光った後、ピストル等の銃声よりも低い音の爆発音が聞こえる様子が映し出されている。この映像の原典は把握していないが、映像自体の真正性は認めて構わないであろう。つまり、天井にはガラスがある。また、爆弾に威力を高めるための金属が封入されていたことは広く報道されているから、これも事実であると認めるとすると、天井のガラスが破損した可能性も十分に認められよう。とすれば、煙は立ち込めることなく、建物外に排出されることになる。なお、英国における防犯カメラの取扱上、録音は問題を引き起こしうることが指摘されている。それゆえ、録音していたのは何故であろうか、という疑惑も湧くには湧く。
レディ・ファーストは、西洋社会の建前になっているから、避難時・搬送時においても考慮される可能性が高い。英国では、子供の安全な送迎は、伝統的には、両親の責任になる。帰りが遅くなるため、子供には、コンサートに親も同伴していたという可能性も十分に認められる。(26日の『Metro.co.uk』の記事[13]では関係性が明確に記されていないが、31日の『The Telegraph』の記事には、養父と娘の組の被害者がいると記されている[14]。)周辺の被害者が直前に気付くだけの特異な動作を犯人がしていたとすれば、男性が女性の連れをかばうという可能性もあろう。実際、英国社会は、現時点の日本と比較しても、遙かに「武士は食わねど高楊枝」の感があり、レディ・ファーストが遵守される。公共空間におけるドアの開け方に接すれば、一目瞭然である。わが国の高齢男性の横柄たる様子からすれば、男性のみが現場に残された状況を訝しむのも無理はないが、多少なりとも英国の状況を体験的に理解した私に言わせれば、オッサンたちが最後に回されることは、おかしくはない。ただし、移民社会の度合いを増した英国について、私が体験的に知るところは、平均的な日本人よりは遙かに多いであろうが、断定するには十分でない。現時点のマンチェスターの労働者階級が集住する地域(スタジアムは一種の迷惑施設でもある)におけるアイドルのコンサートにおいて生じた緊急時にも、レディ・ファーストという原則を適用しうるかは、断言しかねることではある。ただ、事件時の緊急対応において、一種のマッチョ思想(の裏返しである、男性ならば痩せ我慢)が適用されうることについては、体験的にも、私がガキの頃の英国産の英語テキストなどからも、肯定できることである※11。公共機関における監査(audit)制度が日本の現状よりも機能している、という公的機関における背景も指摘できる。反論の論拠としては、それほど強力な材料を用意できた様子はないが、とりあえず、これらの指摘により、ザウルス氏の指摘の4番目も根拠を失う。
ザウルス氏の続報における主要な根拠は、ほかの映像が公開されないことであるが、この意見は、防犯カメラ(CCTV)映像のメディア利用が1998年データ保護法に違反するという事実によって、否定される。英国におけるデータ保護庁(Information Commissioner's Office)による英国人一般に向けた説明には、CCTVシステムを操作する者は、「人物を特定可能な映像を娯楽目的でメディアに提供してはならず、また、インターネットに掲載してはならない。」[15]とある。また、公開映像は、通常、警察によって開示されたものであるとも指摘する。わが国におけるユルユルのデータ保護とは異なり、英国におけるプライバシーの保護は、一応、制度上の均衡が取れたものである。ただ、今回のような公益目的にもなりうるカメラ映像の公表にあたり、被写体全員の同意を得る必要があるという点に対しては、過去、(実用的ではないという観点からの)批判が見られた(はずであるが、面倒なので、現存するかを含め、出所を確認することはしない)。
以上、ザウルス氏が事件の不存在を主張するために反証すべき4点の要素を挙げた。ここに挙げた知識の大半は、私の従来のキャリアによりもたらされたものでもあり、私の体験的事実も含んではいるが、いずれもが守秘義務等の制限に抵触するものではない。英国の社会制度や音や煙についての基本的な知識は、ザウルス氏に知る気があって、かつ、知る方法をわきまえており、かつ、知る努力を続けていたならば、本記事の公開(4日予定)までに知ることができた事実ばかりである。私の体験的事実とて、一般的なものに過ぎないから、コメント欄の「佐々木達」氏に問い合わせれば、確認可能であったはずである。ただし、マンチェスター在住の「佐々木達」氏は、Google様に分かる形で連絡先を公表していないようである。
ただし写真に示された状況は不可解である
件の写真における複数の問題点は、写真撮影という行為そのものと、撮影された状況とに区分される。撮影という行為そのもののおかしさは、先述したような撮影者の身分と分かち難く結びつけられている。写真に示された状況の不可解さは、一般人と思われる人物によりインターネットに公開された周辺情報や、報道された「事実」との不整合性から示される。いずれにしても、この現場写真は、十分に怪しげであるにもかかわらず、世界的な報道機関を通じて、世界中に公開されてしまっている。
一枚の現場写真だけが世界的に公表されたことは、撮影者が匿名であるという状況も相俟って、余計な憶測を生む原因となっている。撮影者のクレジットが明記されないことは、先述したとおり、撮影行為そのものが禁止されているはずであるという推測を成り立たせる理由ともなっている。誰が・何の目的で、わざわざ加工された「写真」を提供することになったのか。匿名者によって示される状況のそこかしこに不具合が認められるとき、通常、人はその報告を「デマ」と呼ぶ。この場合、発信者はAP通信とPAという、通常人なら一流と認める企業である。
もしかすると、AP通信とPAは、世界中の情報機関をテストしているのであろうか。世界各国の情報機関は、そこまで暇ではないはずである。テロという体裁を取る以上、この「作戦」には、何らかの形で「戦争屋」が関係していることには間違いないとは考えられる。彼らの目的は、世界の情報機関のリソースを浪費させるというものなのであろうか。
自爆テロ事件自体は、残念ながら、世界中でそれなりの件数が生じていることから、本事件も、それらの事件と比較可能である。この点でも、ザウルス氏は正しい。G7開催直前というタイミングで・英国で・イスラム教徒が・アメリカのアイコンのコンサート後に実行した、という特徴を除けば、その態様は、比較可能である。英国で、という表現には、かなり多くの含みがある。植民地を多く有していた歴史を持ち、先進国であり、イラク戦争を主導したカウンターパートであり、島国であるため比較的移民の身元が判明しており、英語という資産のために渡航し生活しやすく、過去にIRAによる多量の肥料を用いた車両爆弾テロの被害を多く経験してきた、という含みである。これらを詳細に解説することは、私の知識の圧倒的多数が公知の情報によるものとはいえ、現在の文脈では不適当極まりないことになるから、この程度に表現を留めておくことにする。とにかく、大事なことは、写真を示されたとき、見る者が見れば、それなりに状況を把握できるということである。
基本的な作法に則った情報の提示は、ここでは、写真の内容に手を加えず、撮影の責任の在処を明示するということになるが、デマを避ける上で重要である。そうであるべきところ、「世界的通信社」が道義に悖る形で情報を流すことには、何の益もないどころか、合理的な疑いを差し挟む余地を生じさせる。実際、私も「平均的日本人」から見れば彼岸の人間と化しつつあるが、私自身は健全な懐疑論者を目指しているつもりである。にもかかわらず、この写真自体の怪しさに触発され、ここまでの論を進めるために、余分な作業にまで手を染めることとなった。健全な精神は、健全な議論に触れることにより形成される。「世界的通信社」こそ、ここでは不健全極まりない情報を無責任にも垂れ流す形となっているのである。筆が滑りすぎたかもしれない。
撮影された状況のおかしさは、トリアージの態様、最も右側に横たわる人物の症状の安定度、割れたガラスの不存在、ブース上の照明の破損が認められないこと、の4点である。トリアージとは、医療関係者による、対応すべき患者の振い分け・優先順位の設定を指す。緊急時におけるトリアージは、救助側のリソースの希少性を鑑みて、症状に応じて、患者の治療を優先順位を決定する手順・方法を指す。
問題の写真中の被撮影者は、観客(負傷者?死者?)・スタッフ(警備員?)・地域警察官・消防隊(1名)のみで構成されているように見える。言い換えると、救急隊・SWAT・爆発物処理班・メディアが、唯一の爆発現場である写真の画角内にいたとしても、決して不自然ではないと思われるが、彼らの姿は見られないのである。三名の緑色のシャツ?を着た人物がいる。彼らは、何の装備も持たないようにも見えるし、照明の関係があるにしても、上着の色がNHS(国民保健サービス)などの医療関係者が着用する深緑色の制服?にも見えない。それゆえ、私は、彼が医療関係者であるとは判定しない。また、本事件そのものへの緊急対応において、軍隊が目に見える形で出動したという報道には接していない。
トリアージ上、写真に見られる状況が問題であるのは、多数の介助者がいるにもかかわらず、死者と生者が混在しているようにも見えることである。さらには、このようなトリアージの状態であるにもかかわらず、数日の後には死亡者の位置関係などが明確にメディアに示されていることである。一人一人に介助者が付き添わないこと自体は、リソース不足ということで片付けられようが、死者と生者が混在した状況で放置されていることは、何とも不可解である。横たわる全員が死者であることはあり得ない。なぜなら、右端に横たわる人物が生存しているからである。この人物は後ほど詳しく検討するが、死者と生者を混在させ続けることは、生者の意志を削ぐことにもなるから、極力避けられるべきことである。担架がないので搬送できないのかも知れないし、両者を分けようとしている最中なのかも知れないが、これだけの人数がいて、白い毛布がかけられておきながら、死者が搬送されていないというのも、混乱させられる話である。なお、白い毛布という存在は、救急・災害対応時を撮影した写真の中には、あまり見ないように思われる。血で染まった毛布を見てショックを受けるという連鎖を避けるためである。それに、本事件では、アルミの災害用毛布にくるまった女性たちが車両に乗りこむ様子も大々的に報道されている(写真の出所は、各自で把握されたい)。アルミの災害用毛布は、通常の毛布に比べてはるかに軽く小さいから、これが配布されていたとすれば、件の現場写真においても準用されていたと考えることには、さほど不自然さがないということになる。
トリアージについて補足しておくと、横たわる人物のいずれにもタグが付されていないことは、随分と不審である。緊急対応時のトリアージには、マンチェスター方式と呼ばれる方法がある。マンチェスター州におけるマンチェスター方式の具体的な実際は、私の知るところではないが、横たわる人のいずれにも、マンチェスター方式のタグ色である彩度の高い赤・橙・黄・緑・青の五色が付されていない。または、わが国もそうであるが、多くの国では、海難事故におけるトリアージを参考にしており、四段階(緑・黄色・赤・黒)のタグが付されることになっている。しかし、ここにも、生存の見込みがない者に付される黒色のタグさえも見られない。そして、この場合であっても、(最期まで看取る者がいるなど)適切な介助が必要であることは、警察官や消防隊が到着している以上、撮影現場に共有されていないはずがなかろう。状態がそうでないとすれば、その状態は、事後の反省材料ということになる。
写真後方に横たわる人たちの様子は、顔に血に塗れたタオルを掛けられたかのようであり、死者であるかのごとき様相であるが、にもかかわらず、介助すべき人物らの様子は、死者・負傷者の双方に対して、さほど深刻なものに見えていない。この点も、ザウルス氏の指摘と意見を一部共有するものである。彼ら介助者は、第二・第三の攻撃にも備えるようには見えない。つまりは、スタジアム内の安全が確保された後、負傷者のごく直近で、プロであるべき警察官もが一安心・一段落してしまっているようにも見えるのである。
最も不審な存在は、最も右手に横たわる人物である。この太めの人物は、写真の左手を頭側にして横たわっているが、明らかにスマホであるかのような白色に光る物体を右手に持っている。その様子は、家族等に連絡を取っているものとも考えられるが、この負傷者にはスマホを操作できるくらいの元気が残されていること、連絡が可能であると認められることの二点を伺わせる材料である。これらの負傷者あるいは死者に目立つ形でタグが付けられていないように見えることには、何らかの理由が求められなければならない。私が奈辺に真実があるのかを吐露する材料であると即断されてしまいかねないが、パリ事件の後に指摘されたような(2016年1月16日)ジャミングが存在していたとすれば、この人物を含めた写真の印象は、大きく変化したかもしれないなどとも考えてしまうのである。
先述したが、ロビーの天井にはガラス(の天)窓があったものと考えられるが、それらの破片が散乱した様子は見られない。Google様が収集していたロビーの写真というものは存在しないが、マンチェスター・シティの本拠地であるから、熱心なファンならば、ロビーの天井に窓ガラスがあったかどうかくらいは覚えているかもしれない。とにかく、ガラスが散乱して光る様子は、床面にまったく見られない。仮に、写真にフィルタが掛けられていなかったとすれば、天井のガラスがいかなる状態になっていたのかは、誰の眼にも明らかであったであろう。逆に、その被害を公開しないために、きつめのフィルタが採用されたのだと考えることもできる。しかしながら、写真中央のしゃがみ込む人物の目鼻立ちくらいは残されている以上、床面に散らばったはずのガラスがチケットブースの上の照明を反射して光る様子がまったく残されていないように見える点は、なんとも不可解である。
チケットブースの上に並んだ照明の一つとして破壊されていないということは、やはり不可解である。本事件直前における現実の照明の様子は、現場を体験的に知っていたり、写真が残されていたりしなければ、把握できないであろうが、いくらフーリガン対策とはいえ、蛍光灯と思しき照明の一つとして破壊されていないという状態は、被害者の人数などに対して、非整合的であるように思われる。この印象は、私が現場を知らないために生じているものではある。まったく考察の材料に不足している。専門家による調査が行われたとして、ここに挙げたすべての疑問に対して、解説がなされて初めて、それらの調査には信憑性が生まれることになろう。
このように見れば、確かに、ザウルス氏の指摘通り、この写真そのものには、不審点が多く見られる。この写真の不自然さは、事件に先立ち撮影されたと疑うだけの合理性を十分に喚起するものである。本ブログにおいても、新聞社・通信社の「嘘」を多く指摘してきたところである。私からすれば、AP通信の方が、ザウルス氏よりも、悪意を以て「嘘」を広めているのではないかとの疑いを抱くに十分なだけの「前科」を有している。ザウルス氏の事件不存在という指摘自体は、受け入れることができないものの、その指摘は、誤誘導を第一の目的として提起されたものではないであろう。AP通信には、写真の撮影者・真正性と加工に対する的確な説明とが求められる。これらについての説明なくして、ここで私が提起した批判の撤回は、到底あり得ない。
おわりに 写真が捏造されていたとすれば、それはバックアップ計画の一環としてとらえれば良い
最後に、写真がたとえ事前に準備されたものであるとしても、被害の不存在を証明する証拠にはならないという論理を示して、本稿を終える。フィルタの態様からすれば、問題の写真がスタジアムのロビーで撮影したものとは限らない。自称イスラム国は、少なくとも映像スタジオを有していると目されている。写真自体は、何らかの理由で公開されるに至ったものであるが、写真が真正なものであった場合の影響の方が深刻である。自称イスラム国が巷間指摘されているような情報機関の手先でもある場合には、専門家としてのノウハウを有しており、そのノウハウを悪事に活用していることを示す証拠になるからである。
ここで、アポロ陰謀論について、少しだけ寄り道をしておいた方が、陰謀論に親しんだ読者には、理解が進むかも知れない。この陰謀論は、「スタンリー・キューブリック氏がアポロ月面着陸の映像を地球上で監督・製作し、これが世界中に報道された」というものである。この理解は、陰謀論としての多数説であるが、私は、このような一面的な見方を取らない。キューブリック氏による撮影プロジェクトと、月面着陸プロジェクトの、それぞれの真偽を別個に検討すべきと考えるのである。つまり、(A)スタンリー・キューブリック氏(かほかの誰か)がアポロ月面着陸の映像を地球上で監督・製作したという噂と、(B)アポロ月面着陸は、別々の主題として論じることが可能である。各人の意見は、(A)(B)に加え、(C)放映された映像は真正であるか、を考慮すると、(A)(B)(C)の順に、T-T-F、T-T-T、T-F-F、F-T-Fといった4種の組のみが理論的に成立することが分かる。このとき、従来の議論において、T-T-TとT-T-Fが無視されてきたことは、明らかである。ここで、TはTRUE(真)、FはFALSE(偽)の略語である。
このように、要素還元型の思考が可能になることが、私が勝手に命名した「セット思考」の有用性である。なお、遅まきながら、ごくごく最近、「セット思考」は、ラカトシュ・イムレ氏が科学理論について考察した際の「リサーチ・プログラム論」により上書き可能でありそうなことに気が付いたところである。本稿の取扱うような、陰謀論の個別の主題についても、「リサーチ・プログラム論」は、適用可能である。また、仮に、今回の事件が事実不存在であろうがなかろうが、恐怖により人を支配しようとするという一部(組織・人間)の活動の存在までは否定できないであろう。このような組織の存在を訴える点については、ザウルス氏の主張は正しいと私も考える。
かえって読者の理解が混乱したかも知れないという虞は無視して、結論を急ごう。ロンドンで再度車両テロが生じたとのニュースが、家人の点けっぱなしのテレビから聞こえてきたところである。このニュースは、写真の真正性を増し、その写真の状況から読み取ることの可能な英国社会の対応力の脆弱さをますます露わにしている危険が認められる。つまり、先に言及した写真のチクハグさは、テロ対策に対する組織人の意識が私が考えてきたほどに高くはないという虞を表したものである。英国の総選挙に対して、テロへの恐怖をテコ入れすることの有用性を、戦争屋筋も認めたということになる。英保守党・労働党の二大政党と、第三極のいずれかに対して、戦争屋が浸透しようと躍起になっている可能性は、極めて高い。英国にとって、正念場ということになる。
件の写真の真偽は、本事件が真に存在するものであった場合、事件とは関係なく成立する。本事件の存在自体が偽装であった場合にのみ、写真の真正性は、偽作ということになる。この関係性に気が付いていたからこそ、ザウルス氏の記事に対するコメント主の一人は、この点を問うていたのであろう。あえて付記しておくと、そのコメント主は、決して私ではない。
繰り返しになるが、戦争屋に代表される犯罪者が陰謀の成功を企図する場合、代替案を用意しないということは考えられない。今時のゲーマーにとっては、『PayDay』シリーズなどで、プランA(隠密策)プランB(露見した後の強攻策)があることは、常識の部類に入るかも知れない。知らぬは日本人高齢者ばかりなり、ということかも知れない。惜しむらくは、このような要素還元法が、陰謀論者とされる人々の間でさえも、無視されがちなことである。以上の反論に接して、ザウルス氏の意見が修正されないとすれば(、その見込みは、彼のサイトのコメント欄を読む限りでは、極めて濃厚であるが)、彼自身にとっても残念なことである。
※1 それに、記事中のコメント欄におけるザウルス氏の記述が議論のルールを重視すると指摘している以上、私が同氏のブログを議論のルールに則ったものであるとみなしても、差し支えはなかろう。
※2 。ザウルス氏の主張は、リストにより提示されているが、複数の論点がひとつの項目に含まれているため、適宜分割し、番号付きリストとして再編した。
※3 一面的に自説の正しさを頑迷かつ拙速に主張し続けた方がアクセスが伸び易いところは、現在の情報環境の最大の問題点である。また、この手の話題を好む読者には、一般人とプロとが含まれようが、本稿は、プロにとっては雑音にしかならないであろうし、かといって、一般人にとってはどっちつかずで役立たないように思われるであろう。著者にとっても、労多くして益少なしの作業であるが、頑迷な書き散らし屋に対して、本稿が一段上の思考を強いるものとなることを期待するばかりである。
※4 本文中で後述するが、複数の計画が並行して実行されていることは、テロが現実に行われた場合であっても、テロが偽装された場合であっても、同様に該当するであろう。いずれも、成功を企図して実行される計画である以上、バックアッププラン(代替的計画)の存在を否定するデバンキングなどは、論理的から程遠いものである。
※5 この知的財産法の下でのジレンマは、コンサート会場におけるオムニプティコン(衆人による衆人の相互監視)が成立しにくい理由の一つであろう。撮影禁止という状況は、観衆のスマホ等のカメラ機能が常時作動していると思われないがゆえに、偽旗テロのターゲットにされやすいという特徴があるやも知れない。この点は、私自身、本稿を執筆する中で、初めて気が付いたことである。公式映像の解像度に比べて段違いに悪い品質であれば映像の公開を許可したり、重大事件の際の撮影行為については、違法性を阻却するというのも一つの方法論であろう。AKB48は、撮影OKのハシリみたいな話があったようななかったような。うろ覚えなので、これは期限なしの宿題としたい。
※6 漫画の例であり、不謹慎かつ失当かも知れないが、『デトロイト・メタル・シティ』のクラウザーさんが東京タワーにマウンティングするところを、ファンが撮影していた覚えがある。
※7 東日本大震災直後、日本の報道機関と海外の報道機関との遺体に係る映像処理の落差が問題視されたことがある(リンクや細かい検討は省略する)。その是非を問うためには、当時、英国の報道機関がいかなる基準に拠りながら、わが国で報道されなかった何を報道したのか、などが検証されなければならないであろう。メキシコの麻薬戦争が一部に殊更取り上げられるのは、実際に同国における麻薬流通が問題であることもさることながら、事件が勢力を誇示するために実行されているという側面と、それを報道がそのまま取り上げるという側面とを考慮する必要がある。
※8 どうやって急がず慌てず逃げればええねん?というツイート主の言葉[5]は、まっとうな感想ではある。
※9 距離$r_1$において計測された騒音が$L_{r_1}$である場合、距離$r_2$で計測される騒音は、$L_{r_2} = L_{r_1} - 20 \times log_{10}\dfrac{r_2}{r_1}$で求められる。計算は、次のサイト[16]で簡単にできる。(私は『R』を利用した。)なお、132dBという出所の資料[9]の本文は、無料では見られないようであるので確認しておらず、よって、0.3mという距離を勝手に設定した。が、通常、1mで計算されている(であろう)から、短めに距離を設定したことによって、問題は生じていないものと考える。
※10 火災探知機は、電離式・光学(光電子)式・熱式・複合式の4種が英国内では流通している[17]が、このうちの熱式以外のものであれば、排煙設備が稼働したであろう。ただし、スタジアム内で火災が発生したかのアラームが鳴り響き続けた様子はないから[1]、排煙設備が稼働していたか否かは、続報や後の調査研究を待たねばならないであろう。
※11 とはいえ、『泰緬鉄道からの生還 ある英国兵が命をかけて綴った捕虜日記1942〜1945』(アルバート・モートン〔著〕, デイビッド・モートン〔監修〕, チームPOW〔訳〕, 2009年8月, 雄山閣)には、たびたび、英国人の下士官や兵士に対する無情さへの不満が記されている。同書は、極限状況下における(立派な)英国人の感情や行動を知る上での好著であるが、同書に示される英国人気質が現在にも通じるものであるとするならば、問題の写真に見られる状況は、一面的に評価し難いものとなる。現状がたるんでいるから軍紀粛正が謳われるのであって、これと同様、レディ・ファーストが主張されるのは、現状がそうではないことの裏返しとみることも可能となるからである。なお、脱線しておくと、日本語話者の外国人がときに一般の日本人よりも日本の文化に詳しいのは、日本語学習テキストが優れているからという可能性も含んでおかなくてはなるまい。
[1] Manchester attack: 22 dead and 59 hurt in suicide bombing - BBC News
(BBC News Manchester、2017年05月23日09時48分GMT)
http://www.bbc.com/news/uk-england-manchester-40010124
[2] 「マンチェスターコンサート爆破事件」 1.“被害演出作戦” のトリック - ザウルスでござる
(ザウルス、2017年05月24日15:04:40)
http://blog.goo.ne.jp/zaurus13/e/922bb4737a5eb6e1be9472107d3538f0
[3] 大衆操作のテクニック 「マンチェスターコンサート爆破事件」 2. - ザウルスでござる
(ザウルス、2017年05月27日01:21:40)
http://blog.goo.ne.jp/zaurus13/e/55b08255e410b282888da8795cc07d33
[4] The Latest: Investigators hunt for accomplices of bomber | Boston Herald
(Associated Press、2017年05月24日)
http://www.bostonherald.com/news/international/2017/05/the_latest_investigators_hunt_for_accomplices_of_bomber
[5]
[6] FACT CHECK: Was the Manchester Terror Attack a 'False Flag'?
(Bethania Palma、(Featured Image: Peter Byrne / AP)、2017年05月24日)
http://www.snopes.com/manchester-attack-false-flag/
[7] Manchester terrorist attacker used '£20 backpack bomb' as shock crime scene photos emerge | Daily Star
(Henry Holloway、2017年05月25日)
http://www.dailystar.co.uk/news/latest-news/617083/Manchester-Terrorist-Attack-ISIS-Salam-Abedi-Backpack-Bomb-Suicide-Ariana-Grande-Photos
[8]https://ichef-1.bbci.co.uk/news/768/cpsprodpb/6C45/production/_96171772_shutterstock_editorial_8828037c_large.jpg
#上掲[1]中のページに掲載されている画像の拡大用のリンク。
[9] Physical characteristics of gunfire impulse noise and its attenuation by hearing protectors. - PubMed - NCBI
(Ylikoski M, Pekkarinen JO, Starck JP, Pääkkönen RJ, Ylikoski JS., 1995. Physical characteristics of gunfire impulse noise and its attenuation by hearing protectors, Scand Audiol. 24(1):3-11.)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7761796
[10] 銃声 - Wikipedia
(2017年06月04日確認)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8A%83%E5%A3%B0
[11] How much damage is caused by hearing gun fire? - Quora
(2017年06月04日確認)
https://www.quora.com/How-much-damage-is-caused-by-hearing-gun-fire
#真偽を確認できないが、Barry Melton氏の2017年01月16日更新の回答は、150dB以上の具体的な数値を載せている。
[12] Manchester Terrorist Attack! Ariana Grande concert! Updated! - YouTube
(Monrael、2017年05月27日)
https://www.youtube.com/watch?v=A06eBy6-3RQ
#出典確認が必要であるが、コンサート会場内で撮影されたと思しき複数の映像もまとめられている。
[13] Faces of the innocent: Victims of cowardly attack at Manchester Arena | Metro News
(Richard Hartley-Parkinson for Metro.co.uk、2017年05月26日07時22分GMT)
http://metro.co.uk/2017/05/26/faces-of-the-innocent-victims-of-cowardly-attack-at-manchester-arena-6657611/
[14] Who are the victims of the Manchester terror attack?
(Helena Horton and Joe Shute、2017年05月31日08時09分GMT)
http://www.telegraph.co.uk/news/2017/05/23/victims-manchester-terror-attack/
[15] CCTV | ICO
(Information Commissioner's Office、2016年08月19日、2017年06月02日確認)
https://ico.org.uk/for-the-public/cctv/
どのような場合にCCTV映像を開示できるのか?(When can CCTV images be disclosed?)
〔#被写体は誰でも〕、CCTV映像を閲覧し、その〔#画像の〕複製を求める権利がある。〔#CCTVの管理〕組織は、40暦日以内に要求に応えなければならず〔#注:営業日ではないことが強調されている〕、10英ポンドを上限とする費用を請求しうる(これは、英国議会によって定められた最高額である)。開示要求者は、作業者が映像中の人物を確認し、〔#録画〕システム中で映像を発見できるように補助するため、〔#日時等の〕詳細を提供する必要がある。
- CCTV作業者は、人物を特定可能な映像を娯楽目的でメディアに提供してはならず、また、インターネットに掲載してはならない。人物特定のためにメディアに公開された映像は、通常、警察によって開示されたものである。
- 管理組織は、犯罪捜査などの法律上の理由から、CCTV映像を開示することができる。映像を提供された組織は、受領した映像について、1998年データ保護法に定められた映像の取扱いに従わねばならない。
- 公共機関は、2000年情報自由法、または2000年スコットランド情報自由法の対象となる。この法律は、公衆が公共機関に書面で公式情報の請求を許可し、公共機関が20営業日内に回答する義務を負わせるものである。請求人が写された映像が請求された場合、その請求は、〔#情報自由法の〕対象アクセス要求〔#Subject Access Request〕であるとともにデータ保護法の対象として処理される。しかしながら、CCTV画像において他人が特定可能である場合、それらの映像は、個人情報であるとみなされ、情報自由法の例外に当たるものとされうる〔#注:この状態への対応はケースバイケースか〕。
[16] 騒音減衰計算
(2017年06月04日確認)
http://tomari.org/main/java/db_souon.html
[17] Smoke Alarms – UK Fire Service Resources
(2016年12月か?)
http://www.fireservice.co.uk/safety/smoke-alarms/
2017(平成29)年6月5日修正
文言の一部を、文意を変えない程度に修正した。検索向け説明の単語を訂正した。
2017(平成29)年6月7日修正・追記
文言の一部を、文意を変えない程度に修正した。
Google MapによるEtihad Stadium周辺の「写真」は、参考として、提供されたままを(as isとして)見るほかないが、事件の実在を補強する材料としては有用である。建物ファサード及び天井面に係る画像は、3Dモデル作成のために加工されている。その上、ワイヤー等の表現が難しい場所や、その影に隠れる部分については、第三者がその加工方法を(知っても仕方ないが)後追いしにくい形で画像が補間・加工されているものと認められる。著作権表記は「画像 (c) 2017 Google」とあるが、いつ撮影されたのかは不明である。ただし、3.11における同社の福島第一原発事故についての情報提供を踏まえれば、比較的最近の(事件後の)写真であるものと類推しても、間違いなかろう。
工事は、かなり大掛かりなようにも見える。元写真から3Dモデルに貼り付けたときの歪みが適切に補正されていないようであるので、北側を12時にして上空から見たとき、7時方向のファサードにもまるでダメージがあるかのように見えてしまう。他方で、5時方向のファサードには工事が入っているようにも見受けられる。いずれにしても、この事件を大掛かりな不存在であると結論するには、無理があるように思う。近日中であれば、地図(写真)が変更されることもないと思われるので、スクリーンショットは公開しない。
2017(平成29)年6月14日訂正
冒頭のリストタグや文章に誤りが見られたために修正したが、文意は変化していないはずである。