2017年6月11日日曜日

(書評・感想文)西部・佐伯〔編著〕『危機の思想』(2011, NTT出版)

西部邁・佐伯啓思〔編著〕, (2011.8.4). 『危機の思想』(The Critical Thought in the Critical Situation), 東京: NTT出版.について、(万が一ではあるが、再度)読んだときの陸軍風のメモを晒す。後輩に勧められて読んだが、冒頭から西部ワールド全開に嫌気が指して「こんなオレオレエッセイが罷り通るのが危機の始まりなんじゃコラァ」と思い、目次までの間にさようならとなったような覚えがあるようなないような。デジタルメモが「危機管理」なる分野の話を調査し始めた途端に完全に飛んだという時期に係る可能性もある(飛んだこと自体は事実である)。

氏名最終階級学歴摘要
×西部邁教授東大卒?造語多し・視野偏狭
○佐伯啓思教授東大卒?カント@リスボン
◎柴山桂太准教授京大修?段落書き・シュペングラー
△中島岳志准教授京大博トポス論・散文
×東谷暁(編集長)早大卒「想定外」で論理破綻
○藤井聡教授京大博葉隠の覚悟・ミサイル攻撃
△富岡幸一郎(評論家)中大卒文章冗漫
○中野剛志准教授エディンバラ大博ショック・ドクトリン
×原洋之介教授東大卒?「想定外」を大誤解

こうして評価を眺めると、見た目、知識とおもしろさと文体とは、階級と無相関とは言えなさそうである。西部氏の外れ値ぶりが際立つことになる。最近読んだ本の中で、最も段落読みできるのが金哲, 渡辺直紀〔訳〕, (2008=2017). 『植民地の腹話術師たち 朝鮮の近代小説を読む』, 東京: 平凡社.であったことを思うと、大学教育という構造により生じた落差の感があり過ぎる。(この本は、訳者のあとがきまで段落読みできていたら、最高だったのに。)原子力産業の内輪ネタ化は悪であるが、その批評すらガラパゴスになるのだという、わが国の論壇の恐ろしさを改めて覚えた次第である。

なお、表の列名(表頭)は、ある書籍のある史料を参考に作成したものである。「摘要」の語が現在の意味と異なるのは、まあ仕方ないということで。

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