2016年8月31日水曜日

日本国民の免責のために安倍晋三氏の「アンダーコントロール」発言は機会あるごとに批判されるべきである

 2020年オリンピック招致に際しての安倍晋三総理大臣の「アンダーコントロール」発言(2013年9月7日)※1に係る真意は、後の国会において、数度、安倍氏自身により説明され(ようとし)たが、この顛末に対する批判は、英語圏ではそれほど高まりを見せていないようである。「アンダーコントロール」発言そのものは、英語圏においてもジャーナリスト※2、※3や反核団体※4などにより、放射性物質の海洋への漏出が続いているという推測と矛盾すると批判されると同時に、批判されたこと自体も報道の対象となっている※5。 しかし過日(平成28年8月26日)、Googleで「Abe Fukushima Diet "under control"」などの検索語を完全一致オプションとともに試してみたものの、「アンダーコントロール」発言に係る安倍氏の国会答弁について、後追いしている英語のページを発見することはできなかった。この作業は、私の調査資源からすれば、悪魔の証明に類するものであり、事実ではない可能性も十分に認められる。ただし、日本語では、安倍氏の国会答弁に対する批判は、ブログなどに見出すことができるから、英語マスメディア等では単にニュースバリューがないものとして片付けられていると結論することは、特に問題を生じる理解とは言えないであろう。

 英語圏では、招致委員会における安倍氏の発言は、単独で、国際公約として成立することが認められているようである。この点は、わが国の政治家一般に対する日本語マスメディアや日本国民(で声を大きく上げている者)の受け止め方とは異なる。この国内外の差は、そのまま、安倍氏による国会発言の検証に対する差にもなっている。国会に代表される日本語圏では、福島第一原発の状態を問うことに加えて、安倍氏の発言同士の矛盾を衝くことが議論の要件となっているかのようである。しかし、この条件が国会発言のみで満たされてもなお、安倍氏は自らの誤りを明確に認めることができないようである。

 海外では、日本国内のような議論は必要とされず、事故後の現実と安倍氏の発言との齟齬を見るだけで十分に責任を問うことが可能であると見る態度が主流であると考えて良いであろう。この差は、わが国の言論状況が日本語だけで完結しており、かつ、独特な形式に発達していることの例証となろう。また、この差は、日本語圏のウェブ言論に対する情報の検閲や統制が一定程度機能しており、あるいは一般人や、一般人に紛れる広告企業の被雇用者の側に迎合主義が見られるために生じたものと見ても差し支えないであろう。

 日本語ブロガーなどのサイトでは、安倍氏が収束していない旨を国会にて発言したことについて、批判する記事を容易に発見できる。たとえば、大沼安史氏は、「2020年に向けて、国際社会の厳しい指弾の的になって行くだろう。」と予測している※8

 安倍氏自身による「アンダーコントロール」発言に対する幾度かの国会での説明は、私のポンコツ知能では理解できない難解さを誇るものであるが、第186回参議院予算委員会議事録第5号(2014年3月3日)※9における発言の解釈を、私の現時点の知識から試みてみると、次のようになる。
  • 政府は、状況を的確に把握している
  • 敷地内での汚染水漏れも把握している
  • 漏れた後には、対策を実施している
政府という主語を明確に示すことができるのは、状況の把握に限定される、という点が重要であろう。これに対して、対策の実行に責任を負うのが東京電力であり、実際の作業に従事する主体は、もっぱら東京電力のn次下請け企業($n \geq 2$)に雇用された従業員たちであろう。この状態は民主党政権時代から踏襲されているため、安倍内閣のみに責任を帰することはできないが、この状態を知りつつも「アンダーコントロール」と海外において発言したことは、安倍氏自身の責任の範囲内に収まることである。

 3.11以後、日本語圏の言論は、明らかに混乱した状況にある。本来ならば明白に優勝劣敗を付けられるはずの議論が、カネに釣られた多数の匿名を 気取る者によって、原発ムラに都合の良いものに歪められている。エア御用学者も複数登場し、公の場で平然と嘘を吐いているが、社会的制裁もなく放置されている(「メルトダウンではないだす」)。この混沌は、言論の正確性に対する話者の感性を摩耗させるとともに、感性の鈍化した話者の表出がゴミ情報を発生させるという悪循環を生み出す。この悪循環は、「人気のある情報をトップに上げる」というベイズ統計を利用した現在の情報検索手法によって、さらに加速される。ゴミをゴミと識別できる読者が多数いなければ、同時的な言論を乗り切ることが難しいが、エアか否かを問わず、御用学者の言動が一般の国民を惑わせる。一般の国民が話者の属性によって話題に対する信頼の程度を上下させることは、責められることではない。専門家の役割は、専門について正確と思われる事柄を述べることにあり、互いに異なる専門を有する専門家同士も、互いの指摘を信頼する関係が成立するからである。

 わが国のトップが嘘を吐いたことを国民が放置し続けることは、わが国の政体・国体・国民のいずれにとっても不幸な結果を招来することになりかねない。国民の沈黙は、わが国では美徳であるが、他国では、消極的な同意とみなされかねない。この状態がよろしくないことは、以前の長い記事(リンク)で、村上春樹氏や小出裕章氏が外国に訴えたことなどに絡めて、十分に説明したつもりである。他国のインテリジェンス機関は、まず間違いなく、私が本記事で示した状態についても十分に把握した上で、静観しており、その利用の機会を狙っているはずである。

 帝国主義的な現今の世界情勢において、安全保障の意味でのセキュリティ、健康的な国民生活という意味でのセキュリティ、両方を維持・向上させるという目的を達成するためには、本記事で示されたような「政体」の詭弁が、勇気ある有名人のみならず、国民の一人一人によっても批判される必要がある。その批判は、何も具体的な言論を提起することによらない。わが国は、間接民主主義社会であり、投票行動によって意思を示すことができる。投票の秘密は、憲法(リンク)により保護されており、本来であれば、日本国民は、独立した個人として迫害を予期することなく投票できるはずである。

 なお、国民が示したはずの意思を内外の人々に誤解させるという点において、「不正選挙」は、外国からの危険を招来するものである。民主主義社会は、「皆で決めたことは(最善ではなく)仕方がないことである」ことを意思決定のベースとする社会である。民主主義社会下における個人は、社会全体として選択されたはずの結果を元に、次なる行動を決定するという(宮台真司氏の表現によるところの)再帰的な存在である。不正選挙は、この点においても問題のある方法である。不正選挙の結果、選択された(と国民に誤解を与えた)一味が何事かの悪事を国際社会において実行した場合、その報いは、この一味のみが引き受けるべきであろう。この点において、不正選挙の存否を追究することは、国際社会に対して国民の責任を減免するという意味を有する作業である。


※1 Presentation by Prime Minister Shinzo Abe at the 125th Session of the International Olympic Committee (IOC) (Speeches and Statements by Prime Minister) | Prime Minister of Japan and His Cabinet
http://japan.kantei.go.jp/96_abe/statement/201309/07ioc_presentation_e.html

※2 Did Japan Lie Its Way Into the Olympics? (Peter Lee, Sep 27, 2013)
http://www.counterpunch.org/2013/09/27/did-japan-lie-its-way-into-the-olympics/

※3 Abe Olympic Speech on Fukushima Contradicts Nuclear Plant Design - Bloomberg (Tsuyoshi Inajima and Yuriy Humber, Nov 1, 2013)
http://www.bloomberg.com/news/articles/2013-11-01/abe-olympic-speech-on-fukushima-contradicts-nuclear-plant-design

※4 Fukushima "under control"? | Wise International
https://www.wiseinternational.org/nuclear-monitor/769/fukushima-under-control

※5 Abe claims Fukushima radioactive water woes are 'under control' | The Japan Times (Kyodo, Oct 16, 2013)
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/10/16/national/politics-diplomacy/abe-claims-fukushima-radioactive-water-woes-are-under-control/

なお、上掲の記事※2や下記ニュースサイト※6に示されている記事の元記事は、AFP通信により配信されたもののようであるが、高円宮妃久子殿下を「天皇の義理の娘」と表現している。元記事が削除されているため、この誤報が修正されることは、期待できない。

※6 Japan PM tells IOC Fukushima situation 'is under control' - Breitbart
http://www.breitbart.com/news/cng-92fe2f080078a69185437929a454fd0b-b11/

※7 皇室の構成図 - 宮内庁
http://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/koseizu.html


※8 机の上の空 大沼安史の個人新聞: 〔フクイチ・グローバル核惨事・史料〕◆ 「収束したとは言っていない」と弁明! / 安倍晋三首相、2020年・東京オリンピック招請ブエノスアイレス演説に関する参議院予算委での答弁 ★ 首相の「アンダーコントロール」演説は、汚染水問題が深刻化する中、こんご2020年に向けて、国際社会の厳しい指弾の的になって行くだろう。なんらかのかたちで責任を追及されるかも知れない。
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2015/04/post-9fbb.html

2015年1月30日の発言についても、以下のブログ主のような批判が日本語では残されている。引用されていたロイターの記事を直接参照すると、2015年1月30日の第189回衆議院予算委員会3号であることが特定できる。


安倍首相「福島第1原発事故、収束という言葉を使う状況にない」 アンダーコントロールは・・・ - 異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!
http://blog.goo.ne.jp/koube-69/e/d9f984f0631e81ee5e64ea4b4c0e0bf5

福島第1原発事故、収束という言葉を使う状況にない=安倍首相 | ロイター
http://jp.reuters.com/article/fukushima-abe-idJPKBN0L30GD20150130


※9 第186回 参議院 予算委員会 平成26年3月3日 第5号|国会会議録検索システム - 18603030014005.pdf
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/186/0014/18603030014005.pdf


議事録は、テキストファイルでもダウンロードできるが、そのテキストファイルの1171行以降
○那谷屋正義君 【...略...】
 さて、ここまでは割と平和に質疑が行われてきたというふうに思いますが、実は先ほど、九・八の総理の演説の話、大変感動させていただいたというふうに申し上げたんですが、一つだけ、やはりこれもマスコミ等で物議を醸し出しましたアンダーコントロールというのがございました。この見解が福島県民にどういうふうに受け止められていると考えていらっしゃいますか。総理大臣、お願いします。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私がプレゼンテーションにおいてアンダーコントロールというふうに申し上げましたのは、福島第一原発では、貯水タンクからの汚染水漏えいなど個々の事象は発生はしていますが、福島近海での放射性物質の影響は発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルに完全にブロックされていると。言わば、事態では、個々の事態は起こっているけれども、それは私は承知をしているし、対応しているよという趣旨のことを言ったわけでございまして、つまり、コントロールできていないということだったら全く何もできていないということになりますが、それは私は事態は掌握をしているし、対応はしているよということを申し上げたつもりであります。

○那谷屋正義君 それはなぜそういうふうに言われたかということであって、そうじゃなくて、それをお聞きになった福島県民がどう受け止められているというふうにお考えか、それについてお聞きをしているところであります。(発言する者あり)

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、後ろの方からふざけんなよという話がございましたが、先般も私は福島県に参りました際、例えば相馬市の市長からは、水産物が大変な風評被害を受けている中においてよく言っていただいたという話もありました。
 ただ、我々は決して収束したとは言っていないわけでございますが、ただ、まだ汚染水の様々な報道がある中において、報道でコントロールできていないではないかという方々もおられたんだろうと、こう思うわけでございますが、要は、英語のプレゼンテーションの中において、大切なことは、あのときは、まさに日本はちゃんと対応できていないのではないか、事態も全く掌握できていないのではないかという中において、そういう国にはオリンピックを任せることはできないねという雰囲気があったのは事実であります。それをいかに私は、日本の総理大臣としてその雰囲気を払拭することができるかどうかが私のスピーチのポイントでございましたから、そのところにおいて、私は責任者としてそれはしっかりと事実を掌握をして対応していますよという意味においてコントロールしていますよということを申し上げたところでございます。

 おしどりケン&マコ氏は、港湾内の0.3平方kmの海水が日に50%程度外洋の海水と交換されている、と東京電力が回答したと報告している※10。おしどり氏の質問する様子は、岩上安身氏のサイトIWJの東電定例会見のページで確認できる※11。担当者は、会見の場では、調べて回答すると述べている。おしどり氏は、5・6号取水放水ラインによる海水の汲み上げと放水が別立てで行われていることについても指摘している。

※10 汚染水は港湾で希釈してから外洋へ。 | 最新記事 | OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト
http://oshidori-makoken.com/?p=748

※11 2015/02/19 福島第一原発2号機海水配管トレンチの立坑Aの水位が上昇、滞留水をタービン建屋に移送~東電定例会見 | IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/233816

平成28(2016)年9月6日訂正

 誤りを発見したので修正した。なぜこのような間違いをしでかしたのか、良く分からない。

2016年8月30日火曜日

古賀茂明氏でさえ大差の勝利を訝しく思わないようである

 元経済産業省のキャリア官僚であった古賀茂明氏が、都知事選立候補に係る民進党内のイザコザを『週刊プレイボーイ』の取材に対して、次のように語っている※1。民進党内の分裂状況を語っているあたり、参考にはなる。が、今回の記事において私が参照したい箇所は、古賀氏の票読み感覚である。おそらく古賀氏の数的感覚は、森永卓郎氏の言を少しだけ拡張すれば※2、経済産業省の官僚の中でも逸材であるとみることができよう。
投票日の前日、世論調査で「鳥越不利」の観測が出ると、岡田氏は9月の民進党代表選への不出馬を表明。都連の間でさらに党本部への批判が高まった。なかには裏で小池氏を支援する議員もいたらしい。

開票日は自宅で過ごした。小池氏の圧勝は「当然だろうな」と思った。なんの哲学もなく、知名度優先で候補者をクルクルと差し替える民進が野党第1党なのだ。たとえ統一候補の擁立に成功したとしても、一体感も戦略もないままでは、したたかに無党派層の支持を集める小池百合子新都知事には勝てるはずもなかった。
私が古賀氏の言を引用してまで指摘したいことは、通常、数字を目の前に出されても、人はあれこれいじくり回して検証してみようとまではしないということである。日本という、まだ今のところはギリギリで経済大国のラインに踏みとどまっている国の行く先を決定するという大仕事を行う大組織において、十年に一人の逸材と評されていた傑物であっても、291万票対179万票対135万票対49万票という大差を当然ととらえて、それ以上の評価を行おうとしないのかな、と読んだだけの話である。私は、古賀氏を批判しようとしている訳ではない。専門外のことであれば、数字を実際に触ることまでしないのは、誰しも当然と言って良い反応であることを指摘したいのである。(もっとも、古賀氏がTPPに賛成していたことを知る陰謀論者ならば、上記の引用部分も一つのアングルじゃねぇの?と疑うこともあろうが、私は、ここでは、そのようには考えなかった。)

 しかし、「この票差は、このような理由でおかしい」という具体的な情報に接したときには、事情は大きく変わるであろう。根っからの文系を自称する人であっても、大部分は、記事の一部なりとも読むくらいまでは行い、内容への理解があいまいであっても、記事の内容におおむね納得がいけば、ほかの人にも自分の言葉で伝えようとするのではないだろうか。人は、自身の仕事や趣味の範疇に入るものでないと、かくも数字に騙されやすい存在である、と一応のところは言えるであろう。(暇があれば、きちんと書籍等に当たり、人の感覚と指数・対数との関係などを示しておいて、大きな数において生じた差は感覚とずれがち、ということなどを指摘したいのであるが、そこら辺は、別の機会に行おう。)

 ということで(なんのことでだ?)、騙される方が悪いと言わ(れ)ないために、以前の記事に示した内容(2016年8月21日)を、もう少しだけ分かりやすく表現し直しておこう。
  1. [7月24日の読売情勢調査における各候補の支持率]
  2. [7月10日の参議院比例代表の政党別得票数]
  3. [手順1]×[手順2]=[投票先を決定済みの支持者数]。ここまでは誰しも頭の中で計算してみるであろう。計算してみれば、それほど差がないこと、とはいえ、明確に小池氏有利ということまでは読めるであろう。(具体的な数値があれば、である。数値が示されていなかったことにも注意すべきであろう。)
  4. 態度未定者の数を求める。計算式は、[手順2]-[手順3の3候補合計]。
  5. [手順4]×[無党派層の各候補支持率]=[態度未定者の見込み投票者数]とする。
  6. [手順3]+[手順5]=[各候補の見込み投票者数]とする。ここまでの仮定は、素直な仮定であり、否定はできないであろう。
  7. [手順2]-[手順6]=[態度未定者のうち動向不明の投票者数]。
  8. [手順6の各候補者]+[手順7]=[各候補者の最大得票数見込み]。

 8までに求めた[各候補者の最大得票数見込み]は、増田氏・鳥越氏の両名とも、289万票であったのである。この、ごく簡単な再帰的な計算を、高校生までの数学で適当に記せば、以下のとおり。
  • (増田氏読売支持率×参院選比例代表投票者数)+{参院選比例代表投票者数-Σ(参院選比例代表投票者数×各候補読売支持率)}×増田氏読売支持率=増田氏見込み票数(289万)
  • (鳥越氏読売支持率×参院選比例代表投票者数)+{参院選比例代表投票者数-Σ(参院選比例代表投票者数×各候補読売支持率)}×鳥越氏読売支持率=鳥越氏見込み票数(289万)

 この289万票という数値は、7日前の時点で予想される最大の票数であった。とすれば、仮に、本件に不正選挙を認めるとするならば、数的感覚が欠如しつつも万全を期すことに抜かりない黒幕や顧客は、この値に達するまでは票数を積み上げようという気になったであろう。1票○万円という単価であるとすれば、発注者・受注者の双方が明朗会計であることを確認できるような仕組みの下に、不正選挙は行われたであろう。500票=500×○万円になるとすれば、俗に言うレンガ0.5○個ということになる。不正に関与する組織同士の間で金銭がやり取りされたとすれば、これらの計算は、必ず確認可能な状況で行われたであろう。束ねるラベルに付されたバーコードが実際には異なる候補へと付け替えられたとすれば、その手続は、発注者・受注者の双方が確認できる形であったろう。

 座布団の下に1万円札なんて時代に比べれば、電子計算機上の不正は確実に見えるのであるから、仮に「座布団の下に現金型」か「開票読み取り機型」かを選べと問われたら、後者を選択する誘惑はさぞかし大きいであろう。ただし、前者の方法は、検票により後から不正がバレるということが少なく、情勢調査や出口調査との整合性も保たれるという点で、後者の方法よりも、ある面では安全性に優れる。近年の不正選挙のスタイルは、巷間指摘されているようなものであるとすれば、後世には、テキントを玩んだ挙げ句に失敗したものと評されよう。別の観点から言い換えると、一人一人に1万円という威力を信頼せず、ヒュミントの力を侮った結果とも言える。

 一人一人に現金を配布するという古典的な不正は、饗応を受けた一人一人が不正に進んで荷担したのであるから、これもまた、一種の民主主義であるということになるかも知れないが、他方で、現代型の不正選挙は、国民に責任を転嫁する余地をほとんど残さないものである。これほど大きな不正が行われているとすれば、内部告発者も現れるのではないか?落選候補が主張するのではないか?警察や検察が動くはずではないか?など、普通の「良識的な大人」なら、穏当に考えるであろう。その反面、多少なりとも陰謀論とされる分野に親しんできた人たちであれば、これらの疑問がいかに扱われてきたのかについては、それなりに理解しているであろう。このために、ドナルド・トランプ氏の選挙システムには気を付けよという主張がいかにアメリカのマスメディアに嘲笑的に扱われようとも※3、※4、マスメディアの論評に対してこそ懐疑的に接することであろう。マスメディアには、批判的に接触することが常に必要となっている。

 本稿において検討した「不正選挙」も、仮定の話であるが、仮に不正を行う側の身になって考えてみるという検討手法は(、例外を聞き及んではいるが)、学術的にはほとんど事例が見られないものの、まだ広く知られてはいない事例に対して役立つこともある。本記事も、その一つであるという程度にご理解いただけると幸いである。もっとも、シンプルな(推測)統計学によって、これだけ説明の付かない現象が、不正が絶無であるべき分野で続くことは、「本当は真っ黒」という結論を得るに十分なほどではある。なお、本澤二郎氏の最近の記事は、アメリカ総選挙(general election 2016)への選挙監視団の派遣要請のように、わが国にも選挙監視団が必要であるなど、話題が満載のようであるが、次回以降に検討を進めることとしたい。


※1 古賀茂明が今だから明かす都知事選の内幕と民進党の情けなさ - 政治・経済 - ニュース|週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト]
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/08/29/70993/

※2 テリー伊藤対談「森永卓郎」(1)古舘さんの楽屋の前で見た光景は… | アサ芸プラス
http://www.asagei.com/excerpt/35404

※3 Donald Trump: 'I'm afraid the election's going to be rigged' - CNNPolitics.com
http://edition.cnn.com/2016/08/01/politics/donald-trump-election-2016-rigged/

※4 For Trump, a new ‘rigged’ system: The election itself - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/politics/for-trump-a-new-rigged-system-the-election-itself/2016/08/02/d9fb33b0-58c4-11e6-9aee-8075993d73a2_story.html


平成28(2016)年9月3日修正

淡赤色の部分を追記して、文意が成立するように修正した。

2016年8月28日日曜日

ダイヤモンド・オンライン(平成28年8月26日)窪田順生氏の記事について(感想)

 ノンフィクションライターの窪田順生氏は、ダイヤモンド・オンラインの8月26日の記事※1において、毎日新聞(7月14日)の記事※2から「4+1」会合の存在を引用し、宮内庁がNHKと協力して天皇陛下のお言葉を放送する段取りを整えたものと推測し、庁外の一部の反発を抑えてお言葉の放送にこぎ着けたことを高く評価している。「4+1」とは、官庁機構トップ2人、侍従職のトップ2人、OB1名から構成される宮内庁内の懇談会であるという※2。官庁機構側のトップ2は旧内務省系の事務次官級である一方、侍従職トップは外務省系である※1。窪田氏によると、今回の成り行きに係る巷の観測には、「オモテ」と「オク」の対立から生じたもの、「オク」の独走によるものなどがあるらしい。

 窪田氏は、今回のお言葉に至る経緯は、宮内庁の首脳陣が一丸となってNHKと協力して企画・実行してきたものと理解している。その証拠として、NHKに対する取材拒否等の報復がないことを挙げる。宮内庁の幹部たちは、官邸と国民を納得させるために、
陛下の「お気持ち」を宮内庁内部の何者かがリークし、事無かれ主義の宮内庁幹部がそれにフタをしようと目論むも、陛下の強い意向を無視することができず結局、押し切られるように「お気持ち」表明をした※1
という筋書きを描き、あえて憎まれ役を買ったのではないか、と窪田氏は推測しているのである。

※1 宮内庁の完全勝利!?天皇陛下「お気持ち」表明の舞台裏|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/99848

※2 生前退位意向:5月から検討加速 宮内庁幹部ら5人 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160714/k00/00e/040/220000c

 窪田氏の論考は、説得力のあるものであるが、私には、窪田氏の論考の根幹を受け入れた上で、末節については、なお異論がある。その第一は、本当に宮内庁の官僚たちが一丸であったのか、という点についてである。第二は、ある意味検閲され、ガチガチに固定化されたことが認められる状態であっても、陛下のお言葉が放送されたという結果には、皆が満足しているのであろうか、という点についてである。

 第一点目、官僚たちが常に一丸であるかであるが、私には到底そのように思えない。個人的体験からいえば、官僚の三分の一は、環境さえ許せば、利己的に振る舞う。仮に、官邸が皇室の政治利用を嫌うとすれば、官邸は、人事権を利用して宮内庁への出向者を子飼いのものにするはずである。「子飼い」という表現は、利己的な振る舞いを利用される余地がある状態にある、と読み替えた方が的確かも知れないが、ともあれ、今回の成果が宮内庁一丸となった結果であるという表現は、どのような組織にも腐ったミカンが出現する、という原則論からみて、素直に飲み込めないのである。もっとも、窪田氏の表現は、何かの符牒や罠であったり、同氏の後の取材を円滑にするための作業の一環であるとも見えるものである。

 第二点目、録画であっても陛下のお言葉が全地上波局(東京都内)で国民全員に伝達されるようにテレビ放送されたという結果は、現状の日本社会の成員の構成状況を前提とすれば、これ以上を望むべくもない程の成功であったといえるが、それでも、よりベターな結果がなかったのであろうか、とも考えてしまうのである。このように考える理由は、もちろん、福島第一原発事故の収束が完了しておらず、日本国民の数割が福島第一原発事故による健康被害リスクに曝露され続けているためである。一部の関心ある人たちを除けば、受忍していることにすらなっている訳ではないし、同時に、一部の関心ある人たちも、東東北地方や北関東地方に居住することのリスクを理解しつつも、やむを得ずリスクを引き受けている状態であろう。時間の経過につれて、リスクは単調増加する※a

 これらの異論の先を見越せば、国を動かす作業は時間のかかることであるという反論も、(本件に関与した)高級官僚の中から聞こえてきそうである。しかし、時間を要したという結果責任は、軽重の程度こそあれど、高級官僚たちのほとんど全員が、本件に関与した人物も含め、各自の振る舞いに応じて引き取るべきであるし、そうせざるを得ないことになろう。何度か指摘しているように、わが国の高級官僚たちは、十分過ぎるほどに政治的に振る舞ってきたからである。どれほどの理由を見込んでも、結果的かつ外形的に、高級官僚という職能集団は、「戦争屋」の意向を忖度し、(生命を保つという意味での)保身に走ってきた。わが国では、当の皇室ご一家を除き、個人がその「職業」を辞めるという選択肢は、憲法第22条によって、基本的には保障されている。このため、現状に至る政策パッケージの形成の場において、日本国民の健康及び生命に悪影響を与えることが見込まれる施策に荷担するよう求められたとき、近い将来、(文字通りに)腹を切ることになるのが嫌だったのであれば、当の高級官僚は、辞めるとともにその経緯を世に問うべきであった、と言えるのである。

 窪田氏の記事は、同氏が今後の動向を報道する上で役に立つことであろうが、お言葉に係る報道を今回のような形で実現させた高級官僚たちを免責する上で役に立つものとはならないであろう。というのも、福島第一原発事故による健康影響は、チェルノブイリ原発事故における推移に倣えば、今しも顕在化しようとしているところであり、その状態は、官庁統計同士の齟齬を注意深く分析する者に把握されている可能性すら認められるほどであるためである。事故の収束作業に従事しない一般の日本国民は、チェルノブイリ原発事故以上に苛酷な条件に置かれているわけであるから、今までの間に影響が出なかったと断言することは、とてもできないであろう。いずれにしても、現役の高級官僚たちはもちろんのこと、過去10年ほどの間に退職したOBの幾人かも、責任を逃れることがすでに適わない状態にある。今後、マスコミや学識経験者を巻き込む形で、高級官僚たちがてんでに責任を逃れようとする試みが繰り広げられるであろうが、おおよそ、全員が総懺悔という顛末を迎えることになろう。第二次世界大戦は悲惨であったが、今後、それ以上の悲惨が顕在化しないとも限らない。その成り行きの次第を恐れるのは、健全な国民であれば、当然のことである。

 なお、面白いことに、窪田氏の2015年1月6日の戦後70周年に係る『サンデー・モーニング』に対する辛辣な批評記事※3は、窪田氏の今回の記事に対しても適用可能である。窪田氏は、同番組がギュスターヴ・ル・ボン[著], 桜井成夫[訳],(1895=1993).『群衆心理』(講談社学術文庫).を引用し、プロパガンダを仕掛ける側が大衆を見下していると指摘し、現政権に対する批判を提示したことに対して、ル・ボンの創始した方法に最も忠実なのが現代のテレビであると批判している。これを、窪田氏は、ブーメランになると表現した。この経歴をふまえると、今回の窪田氏の記事の表現は、国民の生命と健康と財産を保護するための仕事を十分に果たさなかった人物まで擁護することになってしまいかねないものであり、全宮内庁の官僚の仕事を擁護したことになる。リップサービスは、今後の取材のためであろうと、「罪人を庇うつもりで、官僚の予防線として機能するように、記事を用意したのか」という邪推を許すことにもなるのである。報道に関与する人物は、取材対象との一定の距離を保ち、顧客が誰であるのかを常に意識しなければ、1%側の人物として容易に分類されてしまうであろう。もっとも、いくら本稿がカネにならなかろうが、今後の仕事のチャンスを奪うものであろうが、私の記事にも同じ事が当てはまるであろう。解説記事は、それだけの覚悟を必要とするものである。

※3 窪田順生の時事日想:“ヒトラー安倍”にご用心!? 日本の「群衆」を操作してきたのは誰なのか (1/4) - ITmedia ビジネスオンライン
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1501/06/news029.html



※a 国及び国民が動き出すまでの時間が長引けば長引くほど、確率的に発症する国民の人数は、決定論的に単調増加すると考えて良い。LNT仮説は、一応今のところもICRPによって採用されているので、同説に従い、現状を大雑把にモデル化すれば、この結論は、簡単に得られるものとなる。ざっくばらんに考えると、呼吸器系の疾患についてみれば、おおむね、2011年3月中の対策が分水嶺となると予想される一方で、地域の汚染状況と居住期間に比例して、リスクは増加しているであろう。よって、地域集団における発症のリスクは、居住時間の一次式として表される。切片は、航空測量等による空間線量に規定されよう。食品の摂取を通じた内部被曝による、ある時間における被曝線量の増加分は、一人について見れば、徐々に低減する階段関数状(マヤ型ピラミッドのような形状)となるものと予想される。主食となる米の蓄積した放射性物質が効くと思われるためである。人の年齢や性別から来る食習慣によって、この階段の高さは変わるであろうし、人の年齢や性別によって、この階段から受ける影響も変わる。この先については不勉強きわまりないので、年齢や性別が二乗で効くのか、別の指数倍で効くのかは分かりかねるが、最終的には、汚染地域における人口集団における食品を通じた内部被曝に起因する発症・死亡のリスクは、時間の単調増加関数となることだけは、間違いないであろう。

#今般の台風によっても、東京都内における空間線量(周辺線量当量)は、福島第一原発事故由来のものと比較して、半分程度、風向きによって上昇し続けている。



#一応、公務員と外部者の責任の相互作用という点では共通しているので、忘れないうちにメモしておく。

 郷原信郎氏は、甘利事件に着手したことについて「敬意を表したい」と高く評価していたが(リンク)、不起訴という結果に際して、下記のような記事を公表している。検察の動きに対して、マスコミを含む世間一般は、元検察官であり、東京地検特捜部にも所属していた郷原氏の解説に期待しているであろう。郷原氏の一連の記事は、その期待に応える形で執筆されたという側面を有するものであろう。とはいえ、そのような社会一般の期待があるにせよ、記事の内容は、その期待とは切り離した形で評価されることになる。

 不起訴について、郷原氏は、
検察の屈辱的敗北が、「検察の落日」だけではなく、公正さを亡くした「日本社会の落日」とならないよう、今後の展開を期待したい。
と評して筆を置いているが、この表現は、検察に何の伝手もない私の読みからすれば、かつての職場に対する手心と受け止められてもやむを得ないものである。今後、検察審査会による不起訴不当の議決等を経て、甘利事件が裁かれることがあったとしても、この事件の経緯を知る日本国民の大多数は、将来にわたり、自身の国の検察を公正で法の精神を遵守する組織であるとは考えないであろう。社会環境が大きく変わったとき、たとえば、日本が再占領の憂き目に遭ったとき、郷原氏の解説は、日本のムラ社会における馴れ合いの表出と見なされるかも知れない。

特捜検察にとって”屈辱的敗北”に終わった甘利事件 | 郷原信郎が斬る
https://nobuogohara.wordpress.com/2016/06/01/%E7%89%B9%E6%8D%9C%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E3%81%AB%E3%81%A8%E3%81%A3%E3%81%A6%E5%B1%88%E8%BE%B1%E7%9A%84%E6%95%97%E5%8C%97%E3%81%AB%E7%B5%82%E3%82%8F%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%94%98%E5%88%A9/

2016年8月27日土曜日

リオ五輪の閉会式に係る象徴とそれらに対する陰謀論について(メモ)


 現時点で、私は、2016年リオ五輪の閉会式(現地時間で2016年8月21日)に係る演出を、ごく最近になって後付けする形で用意されたものとみなしている。このため、陰謀論者の一部に見出されるようなマリオ=マリオネット(marionette)説などを深掘りするのは、価値あることとは考えていない。つまり、マリオという造型すら1980年代に「国際秘密力集団」によって最初から用意されたものであるなどという、長期的な視点を織り込む必要はないものと考える。マリオという名は、イタリア語起源でMariusだとされる一方、マリオネットの語の起源は、「小さなマリア(様)」、つまり、教会における講話のための聖母マリアの人形から取られたと解釈するのが良さそうである。ラテン語での語源が異なるところに落ち着きそうなのであるから、マリオとマリオネットの語を端から同一視するのは、少々ハードルが高そうである。もちろん、調べていけば、この私の見立ては、ひっくり返されるかも知れない。しかしそれでも、マリオ=マリオネット説は、牽強付会の感を拭えないものである。呪術として見た場合、悪魔的なシンボルが入念に準備されてきたという事実を知った大衆に与える恐怖感の強度は、低いものになろう。

Mario (given name) - Wikipedia, the free encyclopedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Mario_(given_name)

marionette - definition of marionette in English from the Oxford dictionary
http://www.oxforddictionaries.com/definition/english/marionette

Wordwizard • View topic - marionette
http://www.wordwizard.com/phpbb3/viewtopic.php?t=19540

 今回の演出は、多数の既存のシンボルから、利用しやすいものを利用したと考えるのが妥当であろう。BuzzFeedによるインタビュー記事には、この考えを補強する東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式見解が示されている。同じ集英社『週刊少年ジャンプ』の漫画由来のアニメであっても、『ドラゴンボール』の方が『キャプテン翼』よりも知名度及び人気が高いようには思う。しかし前者は、ハリウッド映画との絡みもあるであろう。こう勝手に思い、納得しているところである。

【リオ五輪・閉会式】「安倍マリオ」が話題 でも、ポケモンが登場しなかったのはなぜ? -リオオリンピック特集 - Yahoo! JAPAN
http://rio.headlines.yahoo.co.jp/rio/hl?a=20160822-00010001-bfj-spo

 『ドラゴンボール』"dragon ball"は、Google検索では、29,000,000件。『キャプテン翼』は、各国で異なる名前で放送されているようであるが、フランス語、スペイン語でも50万件に満たない。『ドラゴンボール』のプレステージは、文字通り、桁違いである。マリオだけでソニックが出てこないのはおかしいという指摘にも、かなりの正統性がある。両者ともが出演するオリンピックを題材にしたゲームがある以上、ソニックが出演することは、当然に期待されたはずである。

Google Trendsによる"dragon ball"と"captain tsubasa"の比較
図1:Google Trendsによる"dragon ball"と"captain tsubasa"の比較

"dragon ball", "captain tsubasa" - 調べる - Google トレンド
https://www.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=%22dragon%20ball%22,%22captain%20tsubasa%22

 好意的に解釈すれば、試行錯誤と決断を通じて、今回の演出が組まれていったものと見ることも可能ではあるが、現実には、もう少し生臭い話も見込んでおいた方が良いであろう。その話とは、企画時、海外調査の費用と手間を惜しんだというものである。販売本数によってマリオを採用したという経緯については、海外における知名度調査のための費用を支弁せず、取得しやすい統計を用いて、推論を省略したというのが、私の率直な見立てである。ゲーム業界では、海賊版が最も大きな課題であり続けてきたはずである。このため、知名度・人気度の代理指標として販売本数を利用すること自体、的を大きく外した話となりうる。販売本数ではマリオシリーズの方が上とはいえ、あくまでいちゲームプレイヤーとして世界に接した経験としては、ポケモンの方がマリオよりも遙かに人気がある。もっとも、マリオが(特に旧作ほど)基本的にシングルプレイヤーゲームであるという事情は、私の経験に影響しているかもしれない。マリオシリーズは、やり込み要素が高いために、e-スポーツ界隈でカルト的な人気を誇るという印象を受ける。この印象は、Google Trendsによっても(私の予想を超えて良く)裏付けられている。ほとんど常に、マリオよりもポケモンの語が検索されているのである。同時に、ポケモンGOは、爆発的なブームと言って良いであろう。

Google Trendsによる"super mario"とpokemonの比較
図2:Google Trendsによる"super mario"とpokemonの比較

"super mario", pokemon - 調べる - Google トレンド
https://www.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=%22super%20mario%22,pokemon


 ただ、多数のキャラクターや役者や音楽家などについて、将来的にシンボルとしての利用価値を見込めそうな若手の目星を付けておくという作業は、広告企業において、日常業務の一環として進められていると考えて良かろう。そのシンボルがどのようなものであるかは、また別の問題である。陰謀論を本件に見出そうとする人物には、具体的な事例に則した判定作業が求められよう。どのような基準でシンボルの操作が行われたのかについては、たとえば、椎名林檎氏の選曲に限れば、下記の両氏のような見解もあることであるし、ほかの人たちの検証を待つことにしたい。ただ、第二次世界大戦後の画壇における戦争協力者の復権状況を見る限り、今後の「戦後処理」につながる批判こそが有用であることを付け加えておきたい。

こわれたおもちゃをだきあげて 攻めている演出(2016年8月22日)
http://takashin110show.blog119.fc2.com/blog-entry-2674.html

リオ閉会式で椎名林檎が五輪批判の舞台音楽を使用! 野田作品は東京五輪を戦争の装置として描いていたのに|LITERA/リテラ(2016年8月23日、水井多賀子)
http://lite-ra.com/2016/08/post-2517.html

 ただ、宮武嶺氏の指摘にもあるように、今回の演出は、紛れもなく、オリンピックの政治利用である。特に、今回の演出は、モスクワ五輪のボイコットなど著名な事例との対比も有用かも知れないが、まずは、1936年ベルリン五輪や1940年東京五輪と同列にみなすべきであろう。今回のケースは、オリンピックの政治利用の中でも、登場する必要のない政治家が華々しく登場したケースに相当するためである。なお、分析者が陰謀論を多少なりとも知っているならば、東西冷戦が一種のアングルであったことをも視野に含めた検討が可能になるはずである。

NHK「オリンピックの第一の目標は国威発揚」⇔オリンピック憲章「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会」 - Everyone says I love you !(宮武嶺氏のサイト、2016年8月24日)
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/dade80dd1b3653332b12ba5e4892a229


 マリオは、『ドンキーコング』(1981年)が初出である。当初予定されていたポパイの代わりに宮本茂氏がデザインしたキャラクターである。スティーブ・ジャクソン・ゲームズの『Illuminati』には、ぱっと見、緑の土管とマリオやドラえもんを暗示させるデザインは見られない。池上通信機が基盤を開発し、プログラムは任天堂によるという。『bit』1997年4月号「ドンキーコング奮闘記」と滝田誠一郎 『ゲーム大国日本 神々の興亡』 青春出版社、2000年.は、(私にとっても)要確認である。

 任天堂も池上通信機も、会社の歴史という観点から見れば、同一の時期に一部上場を果たしている。二部上場以後、両社とも、一部上場までにしばらく時間を要している。ただし、両企業とも、この時期から現在の業態に至るまでの間に必要とした技術は、半導体技術である。両社とも、半導体を応用した産業に属する企業の例として見る必要がある。ほかの種類の偶然を見出すという必要は、ほぼないであろう。陰謀論者が調査することに、無駄はないのかも知れないが、その結果は、単に80年代に半導体技術を応用して成長した企業の興隆史を追うということになろう。

 一部の陰謀論者(リンクは文末)は、マリオの赤・青のカラーリングに対して悪魔教の一類型を「発見」しているが、これは、枯れ尾花に幽霊を見ているようなものであろう。万が一、この種の仕込みが1980年代からのものであり、宮本茂氏がこのようなカラーリングをオカルト業界から仕入れていたとすれば、それはそれで相当に長大な伝説となりうる。たしか、スプライトに利用可能な色が限定されていたという事情もあり、ドット絵でも分かりやすく表現するために、あのデザインになったとの宮本氏の話をどこかで読んだ記憶がある。おそらく、当時の事情は、それ以上でもそれ以下でもないのであるが、他方で、現時点でマリオが主役に抜擢された事情は、異なりうるかも知れない。カラーリングが適していたか否かの話は、私の与り知らぬところである。

 球をパスしていくという構図は、コマーシャルではそれなりに定番の方法であるような気もする。非常にたくさんの人がボールを投げ/画面が切り替わり/受け取るというパターンである。ただ、いざ動画をネットで探そうとしても、なかなか出会わないものである。例としては、ライバル会社である博報堂の制作になるが、ACジャパン(公共広告機構)の2008年7月のCMがある。

 この話の脈絡は、それほどないのであるが、本記事は、メモであるから、この程度で十分であろう。とりあえず、Wikipediaさんを取っ掛かりに始めるのも、それほど悪いものではないという見本にもなろう。オチらしきものがなければ、プロとは言えなさそうなので、オチらしきものを述べておくと、ゾンビもののFPS『Dying Light』(以前の私の記事)には、スーパーマリオへのオマージュがイースターエッグとして用意されている。


ドンキーコング - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%82%B0

宮本茂 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E6%9C%AC%E8%8C%82

会社情報:会社の沿革
https://www.nintendo.co.jp/corporate/history/index.html
1962年 (昭和37年):大阪証券取引所市場第二部および京都証券取引所に株式を上場。
1963年 (昭和38年):任天堂株式会社(現商号)に社名変更。
1970年 (昭和45年):大阪証券取引所市場第一部に指定。
1978年 (昭和53年):業務用テレビゲーム機を開発、販売開始。
1980年 (昭和55年):携帯型ゲーム機「ゲーム&ウオッチ」発売。アメリカ、ニューヨーク州に現地法人Nintendo of America Inc.を設立。
1981年 (昭和56年):業務用テレビゲーム機「ドンキーコング」を開発、販売開始。
1982年 (昭和57年):アメリカ、ワシントン州に新たに現地法人Nintendo of America Inc.を設立し、既存のニューヨーク州法人を吸収合併。
1983年 (昭和58年):東京証券取引所市場第一部に株式を上場。家庭用テレビゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売。
高野雅晴 (2008年10月2日). 「【任天堂「ファミコン」はこうして生まれた】第6回:業務用ゲーム機の挫折をバネにファミコンの実現に挑む」『日経BP(日経トレンディネット)』
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/special/20081001/1019315/?P=2
(※記事は「日経エレクトロニクス」1994年9月12日号の「ファミコン開発物語」を再掲載したもの)
 【...略...】1981年に当時の技術をたっぷり盛り込んだ業務用ゲーム機、「レーダースコープ」が完成する(図1)。スペース・フィーパーの開発から付き合いのあった池上通信機と共同で開発した。要求仕様を任天堂が出して、回路設計を池上通信機が担当した。
 【...略...】
 技術競争に目を奪われていたと上村(#上村雅之氏。)は当時を振り返る。【...略...】

社内公募のゲームが救う

上村は、社長の山内溥から「もう池上通信機には行くな」と釘を刺されてしまう。【...略...】善後策として、残ったメンバでレーダースコープの基板を改造して新しいゲーム機に仕立てることになった。
 社内公募で全社的にゲームのアイデアを募った。四つの案が集まり、その一つを実現することになった。それが初めて「マリオ」というキャラクタが登場した「ドンキーコング」である(図2)。
 アイデアを提供したのは工業デザインを担当していた宮本茂である。後に「スーパーマリオ」を生み出すことになるゲーム・クリエータの処女作だった。


Milestone | Company Profile / IKEGAMI TSUSHINKI CO.,LTD.
http://www.ikegami.co.jp/en/company/history.html

池上通信機 - Wikipedia(日本語版)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%A0%E4%B8%8A%E9%80%9A%E4%BF%A1%E6%A9%9F
1961年(昭和36年)6月:東京証券取引所店頭市場に株式公開
1961年(昭和36年)10月:東京証券取引所市場第二部に株式上場
1981年(昭和36年):エミー賞(HK-312, HK-357A)
1983年(昭和36年):エミー賞(EC-35)
1984年(昭和59年)2月:東京証券取引所市場第一部に株式を指定替え上場
#大株主を調査するには、国会図書館がもっとも簡単そうである。

有価証券報告書 | 調べ方案内 | 国立国会図書館
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-102080.php

エコライバルになろう(第2回日韓共同キャンペーン・日本制作)|広告作品アーカイブ|ACジャパン
https://www.ad-c.or.jp/campaign/search/index.php?id=509

教学!!RIOオリンピック閉会式で安倍首相の演じたマリオの真実!!|しらくもの健康を取り戻そう
http://ameblo.jp/kazukttk/entry-12193406044.html


平成28年8月28日・29日修正

分かりやすさのため、原文の意図を変えずに表現を修正し、淡赤色で示した。

平成28年9月7日追記

#内容は、本文と随分と重複している。

 イタリア語では、マリオとマリアは明らかに男性名詞と女性名詞の対であるかのように見ることができるが、しかしなお、この事実をもって、両者を同一の存在であるとして、オリンピック閉会式が「悪魔の儀式」として悪用されたと主張することは、無理筋であると思われる。イタリア語におけるこれらの語感に対する指摘は、もっともなものではある。ただ、ラテン語を最も良く保存しているという言語がいずれであるかといった研究は、おそらく、分類技術の発展によって、最近の研究成果が従来の研究成果を置き換えつつあるであろうから、専門家でない私があれこれ言うのは、控えるべきであろう。それに、「悪魔の儀式」が完成された場所は、現在の中東地域に求められるはずであって、ラテン語よりは、ヘブライ語が良く情報を保存しているはずである。

 なお、マリオ=マリオネットという語呂合わせが日本語上で企画者側によって用意されたものと仮定することは、二通りの見解を生み出す。一点目の見方は、企画者側もこれらの語の由来を同一のものとして理解していたというものであるが、この見方を取ると、企画者側は、式を通じて、かえって無知をさらけ出すことになる。わが国のサブカルチャーの伝統に則してみれば、このケースは否定できないものである。しかし他方で、情報の受け手である陰謀論者の側で、マリオ=マリオネットという連想に係る誤解が勝手に形成されることを「知っていて狙った」と見ることもできる。この二つ目の見方は、今回の企画が、陰謀論者に対する高度な印象操作であったことを示すものとなる。

 閉会式の企画・実施という作業工程全体から見て、マリオ=マリオネットを検討するという作業は、最上流に位置し、リードタイムにそのまま効いたものと思われる。この作業の遅れは、工程全体に直接影響する。ポケモン>マリオという世界の人々の認知度(と読み替えた検索回数)は、「販売本数を統計として利用する」という事実と併せれば、「使いやすいキャラクターを利用した」という本記事の推測を強化する証拠となる。マリオ=マリオネットという連想を用意する作業は、たかが陰謀論者の推理を喚起する材料に過ぎないとはいえ、検討にかける時間の分だけ、プロジェクト全体を遅らせる要因となるのである。

2016年8月25日木曜日

テロ対策担当者が外国のカウンターパートから信頼されるためには福島第一原発事故の収束にまず注力せねばならない

  • 読売新聞(署名なし), 平成28年8月24日(水)朝刊1面東京14版. 「テロ情報収集 要員倍増/東京五輪控え 国内外80人体制」.
  • 読売新聞(政治部 深谷浩隆), 平成28年8月24日(水)朝刊1面東京14版. 「専門家の育成が急務」.
  • 朝日新聞(赤田康和), 平成28年8月24日(水)夕刊3面東京3版.「『逆植民地』が日本を救う?/社会学者の橋爪大三郎さん提言/途上国に過疎地提供、地域再生「新しい発想を」」.
2016年8月24日(水)の『読売新聞』1面の記事に対して、二点を指摘する。題名で論点に係る内容がおおよそ示されているので、引用は省略する※1。一点は、40人を80人に倍増したというのは、焼け石に水のようなものであって、数に対するセンスがないということである。もう一点は、たとえわが国がこのような組織を整えたからといって、福島第一原発事故を放置しているような政体に使われる組織のままでは、相手国のカウンターパートに内心では馬鹿にされ続けるであろうということである。

 先の二点の指摘のうち、後者が決定的に重要である。所属する成員は、所属先の組織の目的が政体の維持ではなく、主権者たる国民の保護にあることを相手に示す必要があろう。そうしない限り、相手国から真に重要な情報を引き出せることは、期待できないであろう。福島第一原発事故の健康影響は、テロ事件の犠牲者に対して、2桁以上の桁違いになりうる。他方、わが国における「テロの季節」は、福島第一原発事故の影響を隠蔽するためのスピンとして、わが国の政体にも一部の役回りを演じさせる形で、企図されるであろう。物事の主従関係を取り違えたままでは、いくらテロ対策において国際協力が必要であると力んでみても、相手国のカウンターパートには、常に適当にあしらわれることになろう。それに、主従関係を取り違えたままでは、相手国のNテロ対策にとって、わが国は、常に危険視される存在となり続けることになろう。

 福島第一原発事故を実質的に放置して、国際テロ対策のみを推進しようとすることは、あたかも、橋爪大三郎氏が、福島第一原発事故による影響を(朝日新聞の文芸欄では)伏せつつ※2、国民の減少分を「逆植民地」によって取り戻せるかのように議論しているように、主従を転倒させた話である。なお、橋爪氏の話は、すでに中国残留孤児・日系ブラジル人・ペルー人についての政策として、一部(のみ、なし崩し的に)実現したことがあるので、その検証から始めるべきであって、提言が先行する話ではない。橋爪氏の話は、影響力が大きな割に、大事なことを隠して自身の意見を社会に強制するものである上、穴の多いものである。橋爪氏の意見に対しては、以前にも、テロ対策で批判した(リンク)ことがあるので、あえて晒しておく次第である。

※1 たとえば、組織上は外務省に設置されている、といった縦割りの話は、ここでの話に影響しない程度に小さな話である。

※2 記事によると、「『日本は崩壊に向かって走っており、新しい発想が必要』という。」から、わが国が単に人口減によるソフトランディングを迎えることはない、と橋爪氏が考えていることを言外に読み取ることは、不可能ではなかろう。学者の役割は、物事を正確に伝えることにある。



 環境省が8000Bq/kg未満の汚染土を利用可能という方針を決定しようとしているが、この方針は、橋爪氏の提言とは、本来ならば、相容れないものである。汚染物質が埋設されている否かを逐一調査しなければならないような地域に、あるいは、地域に流通する食物を逐一検査する必要が生じるような地域に、国民を「輸出」する国は、よほど(指導者層が)追い詰められており、自国民の長期的な健康を犠牲にして、短期的な利得の獲得を目指す国ということになろう。または、敵対的な少数民族の虐待を目論む外国政権ならば、喜んで敵対的な自国民を移民させ、搾取の対象とするであろう。このような政策が実現される前に、日本国民が劇的な人口減少を迎えることになり、その人口減少が福島第一原発事故によるものという蓋然性が認められることにになれば、諸外国は、さすがにわが国への「棄民」政策を見送ることになるかも知れない。

 このように書き出してみると、橋爪氏は、人口削減を是とする悪の秘密結社のスポークスパーソンであるかのようにも読めてしまう。これは、私としては、一種のオチのつもりである。

2016年8月21日日曜日

Yomiuri-Shimbun 24th July 2016 can be used to estimate maximum numbers for two defeated candidates

  Yomiuri Shimbun published an article on 24th July 2016 about a pre-election poll survey for the Tokyo Metropolitan Governor in 31th July 2016.  The article did not present exact values for supports for three major candidates. However, using the graph on supports stratified by LDP supporters, DP supporters, and others in the newspaper, it was still possible to estimate maximum numbers of votes for two defeated candidates, Mr. Hiroya MASUDA and Mr. Shuntaro TORIGOE.  The analyst also could use actual total number of voters, and votes for LDP, DP, and others in the election for Sangiin (proportional representation) of the National Diet in 10th July 2016.  Maximum votes for Mr. MASUDA and Mr. TORIGOE was estimated to be 2894879 and 2899155, by applying the actual data in Sangiin to the Yomiuri survey.  The coincidence in those numbers and to the actual votes to the winner, Ms. Yuriko KOIKE, which reached to 2912628 votes, can be meaningful for the coming elections in all countries in the world.

Here is the link to the xls file estimated by local municipalities.


Japanese translation by the author below:
著者による日本語訳は以下のとおり。

読売新聞2016年7月24日の情勢調査は、敗北した2候補の最大得票見込み数を推定するのに利用可能であった

読売新聞は、先月24日に都知事選の事前情勢調査に係る記事を公表した。主要三候補に係る正確な値は公表されなかった。しかし、新聞に掲載された自民党・民進党・その他の支持についての層別グラフを用いると、落選した増田寛也議員と鳥越俊太郎議員について、最大に見込まれる得票数を推定することが可能であった。分析者は、また、2016年7月10日の国会の参議院選挙の投票者数、自民党・民進党・その他への投票数の実値を利用できた。参議院(比例代表)の実値を読売新聞の調査に適用すると、増田氏と鳥越氏の最大得票数は、2894879、2899155と推定された。これらの数値の一致、また勝者である小池百合子氏の実際の得票数、2912628票への一致は、世界中の万国の来るべき選挙に対して何らかの意味を有するものであるかも知れない。

2016年8月20日土曜日

都知事選の主要三候補の得票率が斉一的であるという指摘は前提が怪しい(3・終)

 本記事では、小池氏の得票結果が291万票となったこと自体に対して、大半の「比例説」が疑問を抱いていないことを指摘するとともに、陰謀論を提起する場合には、「なぜ291万票という大量得票が必要となったのか」との問いの方が適切であることを主張する。「比例説」とは、おおむね、「○○氏の地域別の得票率は、前回(今回)の□□候補の得票率に一定の係数を乗じたものだ」とする陰謀説を指す。投票者の特性に二項分布を仮定した場合、つまり、字義通りに「比例説」の主張を最も単純なモデルに落とし込んだ場合、今回の選挙の結果があり得ないくらいに斉一的であるとする「比例説」は、否定される。この点は、前回までの記事(12)で検討した。

 プラスアルファの動的な因子がなければ、比例説は、その主張の鋭さによって、否定されてしまうことになる。なお、前回までの記事において示唆したことを誤解無きように言い換えるが、私は、比例説を修正した陰謀説※aであれば、今回の選挙を整合的に説明できるとも予想している※b。ただし、その疑いを提起し、具体的な追究を進める前に、検討すべきことがいくつか残されている。その検討すべきことを、本記事と次回において、説明するつもりである。

 なお、開票結果は、小池氏291万票、増田氏179万票、鳥越氏135万票、上杉隆氏18万票である。上杉氏を含む4位以下の合計は、49万票である。具体的な数値は、ファイルに用意した(リンク)ので、必要に応じて参照されたい。ファイルには、本稿に引用・掲載した票読みに係る比率も示している。

 「比例説」を信じる者の多くは、「なぜ、小池氏が291万票も獲得できたのか」という、政治関係者や一般人が辿るはずの基本的な思考手順を踏むことを怠っている。陰謀論と見なされることに言及した論者の中での例外は、「れんだいこ」氏で、党派別の得票数を議論している。鳥越氏の得票数についての記載に誤りが見られるものの、些細な誤りである。れんだいこ氏の議論については、党派から見込まれる票数を積み上げても今回の結果に届かない、という点を指摘していることが重要である。喩えとしては不適切かもしれないが、分かりやすさのためにパラフレーズすると、「比例説」は、現状では、株価を(稚拙に)テクニカル分析しただけでおかしいと騒いでいるだけであって、ファンダメンタルズ分析を怠っているのである。



 陰謀論者たる者には、「比例説」を信じるよりも前に、「大量得票に係る理由」を考えることが求められよう。というのも、いわゆる表舞台では、基本に則った票読みが行われてきたようであるが、小池氏の大量得票を正確に予測し公言した人がほとんどいなかったからである。陰謀論者は、例外なく、小池氏が大きく予想を超える票数を得たという結果を、不正選挙の証拠と考えるであろう。しかし、この結果の理由を問うこと(why)は、「比例説」という指摘(how)に先立つ前提条件となる一方で、「比例説」は、この結果が生じた理由の説明には必ずしもならない。「比例説」は、どのように選挙の不正が行われたのかを説明し得るものの、なぜ大量の得票差※cが生じたのかを説明できないからである。「比例説」は、「大量得票」を説明する上で、5W1Hにいう「How」に当たるが、「大量得票に係る理由」は、「Why」に当たる。「大量得票」について、通りの良い説明を求めるためには、物事が生じた順序に応じて、「How」と「Why」をバランス良くみていかなければならない。

 多くの「比例説」論者の指摘通り、集計行為を完全に操作可能であるならば、接戦を演出することは、何ら問題がないどころか、むしろ積極的に狙われたはずである。今回に限れば、接戦は、疑いを逸らすための煙幕として機能したはずである。今回の都知事選については、多くの陰謀論者が鳥越氏の得票数の伸び悩みを指摘しており、疑惑を深める理由となっているからである。半面、接戦が問題視された選挙には、2000年のアメリカ大統領選挙本戦時のフロリダ州を挙げることができるが、同選挙は、投票行動の実際や電子集計制度の有無が大きく異なるために、今回の都知事選の直接の参考にはならない。



 「比例説」と「大量得票の理由」は、切り分け可能な命題であるが、仮に陰謀があったとすれば、「大量得票の理由」は、「表向きの理由」および「真の理由」へと細分することができよう。陰謀など存在しないという世間一般風の理解によるならば、「表向きの理由」と「真の理由」は一致しよう。いずれの場合であっても、「比例説」は、大量得票の理由を説明するものではなく、大量得票という結果を前提として、その結果のみに注目するものである。「比例説」を検討するほどに疑い深いのであれば、「表向きの理由」と「真の理由」についても、注意が払われても良いであろう。

 「真の理由」は、大量得票の結果を説明する「表向きの理由」によって、注意深くその存在を隠されなければならない。選挙の開票結果に係る「真の理由」のうち、最も受容されているものは、今回の都知事選については、孫崎享氏が発した難ツイート(に対する誤読)である(同ツイートに係る私の解釈)。「表向きの理由」は、インターネットが発達して、ほとんどすべての想像力が解き放たれている現時点では、およそあらゆる「真の理由」に対置されて吟味されることになる。この状態下では、「表向きの理由」がナンセンスであるほど、また、開票結果が通常予想されるものから外れるほど、ネット上などで提示されている「真の理由」を受け入れる者が増えることになる。

 「表向きの理由」は、複数の経路によって互いに補強し合う形で提供される必要がある。さもなければ、リテラシーの高い受け手には受容されない。それどころか、作り込みの下手な「表向きの理由」は、かえって懐疑論者に疑いの目を向けられる契機ともなり得る。カバーストーリーは、たとえそれが大衆向けであったとしても、せめて、一つのメディア企業によるもの同士では自己矛盾を来さないようにするという程度に作り込む必要がある。

 特定候補の当選という、分かりやすい目的の下に進められる陰謀でさえ、より具体的で細分化された目標を提示することが必要となりがちな理由は、(1)組織を統率して事に当たることの困難さと、(2)外部の厳しい監視に晒されがちという陰謀の性質、の二点に求めることができよう。愚鈍な、または不実な成員を含みながらも、組織が陰謀上の目的を達成するためには、個々の成員に割り当てる業務を簡明で疑問の余地なく実行できるものとすると同時に、知るべきことを最小限に留めるという策が取られるであろう。この組織運営のあり方は、分割統治の応用であり、危機を前提とする組織における基本であろう。

 加えて、陰謀を企む側に属する任意の二名が、互いに整合性の取れたストーリーを即興で発信するためには、それら二名が容易に連携できるだけの目的を共有しているか、または、彼らが互いにコミュニケーションを取ることを通じて意思統一を図ることができている、という状態を必要とする。前者を実現するためには、任意の二名の少なくとも一名以上が相当の知性と機転を有しているべきであろう。後者は、安倍晋三氏の「寿司友」が食事会を持つことの理由でもある。

 外部に向けて整合的な説明を果たしながら、内部では背徳的・犯罪的な行為を推進するという両面作戦を完璧にやりおおせるためには、黒幕(mastermind)には、通常以上の経営能力が求められることであろう。なお、黒幕とは、不正を実行した者たちの中で、不正の全体を見通している者を指すが、このような人物は、いたとしても、ごくごく一部の人間になろう。不正行為は、もとよりハードルが高い作業であるから、どこかに抜け・落ちがあっても不思議ではない。黒幕が真のリーダーであり、最終目的に向けて邁進する天才であれば、われわれ一般人には刃向かう余地はないであろう。しかし現実には、リチャード・アーミテージ氏について見たように(リンク)、黒幕の実力は、多くの人々を左右する結果を生み出してきた割には、疑問を呈さざるを得ないものである。

 ただし、不正選挙というコンセプトを考察するときに注意すべきことは、仮に、不正選挙が行われたとしても、候補者たちでさえ、不正に荷担していなければ、不正の一端すら知る必要がない、ということである。不正に従事する者たちは、おおよそ、彼ら自身の職階や動機に基づいて配置されているようであるが、その立ち位置に必要十分な予備知識を与えられれば、それ以上のことを知る必要はないことも理解しているようである。現在、ウェブ上などで公知となっている情報を総合すれば、選挙管理委員会に悪意を有する一味を送り込むという予備作業すら、必要のない状況であるかも知れない。たとえば、投票用紙計数装置を製造・販売する企業が複数あったとしても、健全な競争状態が実現されていない状態の下では、選挙管理委員会の入札担当者は、指名競争入札を実施しても、社会全体からみれば、選択肢がないも同然である。彼(女)は、いわば、心理学にいう「フレーム効果」(framing effect)に落とし込まれているのである。この状態下では、彼(女)は、選挙の公正が保てないという理由から人の手による開票へと逆戻りすることを、社会の側が許さないとみなすであろう。黒幕は、念押しのために、自動開票機を導入しない自治体に対して、開票が他県よりも遅いというクレームを赤の他人(で分別のない者)に入れさせるであろう。



 ともあれ、「真の理由」が「表向きの理由」とは異なるものであったとすれば、その「真の理由」は、「表向きの理由」に先立つ、いわば前提条件となるはずである。「表向きの理由」が「真の理由」の親に位置するということは、因果関係上、あり得ないことである。オモテにできない「真の理由」があるからこそ、「表向きの理由」が必要になるのである。また、このとき、「真の理由」が要請する目標は、何らかの手段によって、「表向きの理由」との整合性に留意しつつ、達成が図られることになる。繰り返しになるが、「比例説」は、このときに取られた手段から生じた結果である。

 今回の都知事選に不正があったことを仮定して、その制約条件・因果関係をゆるくまとめると、[真の理由]→[(大量得票に係る)表向きの理由]、[真の理由]→[不正の手段]→[比例するように見える得票率という結果]という2つの系統にまとめられよう。[表向きの理由]と[比例的な様相という結果]という子孫(派生的な条件)同士の関係に、ある程度の整合性を確保することができれば、あとは色々な工夫の余地があることになる。ただし、その整合性は、先述したように、組織として陰謀を進めるという制約のために、あらかじめ、強固で具体的な目的を設定した上で、陰謀論に関与する成員への業務を割り振るといった形で確保されることになろう。

 これまでの議論から、大がかりな不正が都知事選にあったとしても、その仕込みが事前に余裕をもって行われる必要があったということは、自然に推測できることである。不正選挙では、少なくとも、東京都選挙管理委員会における大量のデータ処理に割り込むことが必要となる。同時に、その不正アクセスが容易に発覚しないよう、開票・集計作業に従事する基礎的自治体の側に置かれる機器のうち、不正を行う予定のあるものについては、あらかじめ、監督者を張り付けておく必要があろう。出口調査の情報をテレビなどから得て、何らかの手段でクラッカーや現場監督者などに指令を出す役割の人物も複数必要となろう。



 「なぜ、ここまでの大量得票を必要としたのか」という陰謀論者の問いは、「なぜ、ここまで大量得票できたのか」という世間一般の問いからみて、論理の飛躍を必要とするものであるが、ここまでの説明を経れば、「余裕を持った目標値を、時間的な余裕のある時期までに、陰謀に荷担する人物のうち、知るべき者の間で、共有する必要があったためである」という答えへと、自然に辿り着けるものとなる。何らかの陰謀論を加味しなければ、世間一般の興味から「大量得票を必要とする理由」に至るような疑問は生じないであろう。しかし、陰謀が行われたという仮定を置き、これだけの陰謀を行うにはどのような条件が必要であろうかという基礎的な検討から、つまりはフェルミ推定から出発すれば、不正選挙が一人では到底不足するような時空間上のリソースを必要とするという確定的な事実へと、容易に到達できるのである。

 陰謀とは、複数の人物が社会に知られないように一定の目的を達成すべく進められる活動である。この定義から今回の選挙に不正を見出そうとするならば、得票数や開票結果が目的と連動していると思いつくことは、さほど難しい話ではない。分かりやすい目的がなければ、不正を行う人物たちと言えども、思うように動くことが難しいのである。

 大量得票という結果を、当選という目的に起因すると見立てる推理は、不正選挙を企業犯罪や組織活動と見る理解から派生するものでもある。不正に関与する人物が多くなれば、不正を行うにしても、事前の了解や、目的の共有、人員の管理が必要となる。このとき、大目的である特定候補の当選という目的すら、隠蔽されたとしても、うまく分割統治されている限り、被使用者に物事の全体を掴むことは、なかなか困難であろう。



#ようやく、陰謀論者から見た場合の、大量得票となった理由を説明できる論理の筋道を形成できたと思う。

 今回の都知事選において、不正選挙が行われたという意見を有する者から見た場合、なぜこのような大量得票となったのか、という理由は、事前に目標値を設定する必要があったため、となる。この事前の目標値の必要性は、不正選挙をビジネスと見た場合、まったく不自然なものではなくなる。請負契約書に、業務項目を書き入れるタイミングは、業界によってさまざまであろう。しかし、不正選挙が『シャンティ・フーラ』という宗教色の強い陰謀論を扱うサイトに寄せられたグレーな情報※1のとおり、一票○万円というビジネスであった場合、口頭であれ、事前に「何票分を実現する」という形での契約がなされないことは、まったく考えにくいことである。

 関東の同業者から聞いた話を元にしたとして※2、RAM氏は、得票比率を「小池6:増田4:鳥越2:その他全部の合計1以下」※3と予測している。小池氏の得票数を6とすると、実際の開票結果は、3.7対2.8対1.0である。「小池氏の大勝」を表現するという点において、非常に良い予測である。平成28年7月参議院比例区は、6413952票であるので、この値を利用すると、296万票、197万票、99万票、49万票となる。小池氏の大勝を予測するという観点からすれば、驚くべき正確度である。増田氏と鳥越氏の票読み結果を合算すれば、開票結果と同程度ともなる。RAM氏の話に出てくる同業者は、畏るべき票読み能力を有しているようである。(前稿参照。)

 この正体を自ら明かしてはいない(たしか)兵庫の選挙参謀のRAM氏に対して、衆議院議員で民主党所属の木内孝胤氏のツイートには、名指しこそしないものの、200万票、150万票、110万票、40万票を示唆するものがある※4。6対4.5対3.3対1.2である。関西にいるRAM氏の予測に対して、東京を地盤とする現職の木内氏の予測は、かなり外したものとなっている。木内氏の得た情報は、民主党経由であり、一定の偏りを見込むものである。しかし、東京都を地盤とする与党の国会議員や与党の都議会議員に確執の生じた選挙において、野党の現職が自党候補に対する票読みを大きく外すということは、なかなか考えにくいことであろう。木内氏も偏りがあることをふまえた推測を行ったであろうからである。

 木内氏の予測の合計が500万票であり、実際の投票者数が参議院選挙を上回る6620407票であることは、木内氏が不明票を読まなかったにせよ、説明の難しい票差である。これに対して、「比例説」を論ずるサイトの管理人とコメント投稿者とのやり取り※5は、木内氏の票読みに一定の係数を乗じれば、現実の予測に近い結果が得られると議論し、お互いに納得している。



 ようやく、本稿によって、「比例説」の前提がおかしいという指摘を締めくくることができそうであるため、最後にまとめておきたい。

  1. 「比例説」は、最もシンプルな形の統計モデルで検討すると、投票結果がばらつき過ぎることになる。このため、「比例する」という表現自体が尖り過ぎていて、誤りとなる。
  2. 「比例説」が可能となるような不正は、完全な不正であり過ぎる。今回のような大勝によって怪しまれるような結果とはしないであろう。
  3. 「比例説」は、陰謀を大前提とするが、今回の都知事選挙のような活動における陰謀は、事前の時間的余裕や当日までの人員配置を必須のものとする。ならば、「比例説」を検討する前に、今回の大勝を詳しく検討すべきである。
  4. 「比例説」は、結果から陰謀の存在を推定する主張であり、市場分析における「結果から原因を見る」テクニカル分析のようなものである。「原因から結果を見る」ファンダメンタルズ分析が必要である。「原因」に着目すると、今回の大勝は、不正選挙がビジネスであるという告発と整合的である。




※1 自民党関係者からの超ド級の爆弾情報① 〜1票⚪︎万円で票の差し替え…「ドン」に完全支配された不正選挙〜 - シャンティ・フーラの時事ブログ
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=115059

※2 RAM氏のツイート(2016年8月1日 11:25)https://twitter.com/PLAPAPA/status/759937972313559041

※3 同上(2016年7月30日 21:59)
https://twitter.com/PLAPAPA/status/759372740167999489

※4 木内孝胤氏のツイート(2016年7月30日 19:58)
https://twitter.com/takatanekiuchi/status/759342445507190784?lang=ja

※5 すでに決まっている東京都知事「次はユリコね」米国情報関係者 - 逝きし世の面影
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/886895f91087227f40423e740521f072

※a 陰謀説を前提とした場合、開票作業における集計ソフトウェアへの不正アクセスまたは集計ソフトウェアの不正によるものと考えるのが適当であろう。ただし、計上作業が完全な管理下にあった訳ではなく、ある程度の状況の見込みが立つまで、基礎的自治体によって異なる程度に制御されていたと考えるべきでもあろう。

※b それでも、この説明は、アブダクションである。この結果を成り立たせることができる説明のひとつであって、ほかにも同様の結果を成り立たせることができる説明は、存在しうる。

※c 得票率の差でも良いし、得票数の比でも良いし、得票率の比でも良い。



平成28(2016)年9月3日追記

都知事選についての論評等を主にツイッターで見ていると、小池氏のトップ当選を予想する声が見つかることは見つかる。以下に紹介する2名のツイート主が291万対179万(増田氏)といった大差による勝利を予想していたか否かは分からない。「常に初陣」氏は、本職が政治関係者ではなさそうな印象を受けるが、「うしくん」氏の政治関係へのツイート数の偏り方は半端ないものがある。その割には、同氏のツイートのうち、最初に示したものに見られるように、事情を知る者から見て背景事情をそれほど把握していない印象を受けるところがアンバランスさを感じさせる。「うしくん」氏の本業は、政治関係に近い何かということであろうと推測する。




2016年8月19日金曜日

「伝説的な予測」は、もしかすると、単なるインサイダー情報かもしれない

 政治の世界に言う「毒饅頭」の種類は、何も金銭だけではない。名誉と異性も、毒饅頭の一種である。人文科学・社会科学上の予測が正鵠を射た事例を検討する際に、カネと異性と名誉の存在は、いつでも、留意すべき要素である。経済や政治の世界において、番狂わせが生じ、同時に、「この動向を正確に見抜いていた」者が華々しく登場したとき、その者がインサイダーであった可能性を検討しない懐疑論者など、いようはずもなかろう。

 私は、「人文・社会科学の世界に係る予測において、伝説的な成功を収めたとされる人物」の言動には、とりわけ注意を払うようにしている。観察対象に介入可能な人文・社会科学においては、この介入可能性を見逃した議論は、大きく的を外すという危険を孕むものである。加えて、この経験則によって暴かれる構造は、次段で選挙を例に検討するが、『国際秘密力研究』の菊池氏の「両建て」戦術によって説明できるものである。「作られた伝説」という構図は、様々な「陰謀論」(というより懐疑論)における論理的な思考手順によって、アブダクション可能なものである。

 選挙において、「予想を超える大差」が生じたとき、この差を説明できる(かのように見える)だけの「予測の専門家」が用意されていれば、大衆は、その専門家への信頼を増すと同時に、結果に対する合理的な説明を得たと信ずることができる。悪事を企図する者にとっては、一挙両得である。悪事は、専門家の説明によって隠蔽され、専門家は、次なる悪事にも利用できるようになる。このように、[大衆の信頼]を[予測の専門家]が[大差への説明]へと架橋することで、「支配の構造」は強化されるのである。

 このような構図があるがゆえに、プロプライエタリなソフトウェアが実装された電子投票機器が使用される選挙の予測は、まず最初に、ソフトウェアのバックドアが悪用(あるいは準用)された場合を検討の範囲に含めなければなるまい。さもなければ、コネのない外部者は、大きく予測を外すことになるであろうし、合理的に思考する者であっても、大差の理由を説明するのに苦労することになろう。

#大変、研究者らしからぬ姿勢であるが、前段落は、先行研究の事例を調査していない。が、ジョージ・ソロス氏についての同様の説明を、どちらかでは読んだことがあるので、少なくとも、先取権の栄誉は、その懐疑論者が浴すべきであることだけは、指摘しておく。もちろん、「両建て」思考は、菊池氏に帰せられるものである。




小池百合子氏が都知事選でアッサリ大勝した理由|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/97440

松井雅博氏は、冒頭で、平成28年7月10日執行参議院選挙の東京都の比例代表の開票結果に触れながら、小池氏が290万票超という大差で当選したことについて、次のように考察している。

この3週間で東京都民の顔ぶれが大きく変わったわけでもなく、参院選と都知事選に行った人たちはほとんど同一人物と考えてよい。この数字からまず気づくのは、増田氏は与党を支持した人たちの半分程度しか票を集めることができていないということである。公明党・こころは比較的「熱心な支持者」が多いと思うから、やはり自民党支持層が綺麗に分裂していることが見てとれる。
松井氏の考察は、読売新聞の公表した出口調査(8月1日7時39分付、リンク)とは、やや矛盾した内容となっている。7月31日から8月1日までの間に執筆された速報のような内容であろうから、やむを得ないと好意的に解釈することも可能ではある。読売新聞の出口調査は、共産党や公明党といった「熱心な」政党の支持者までもが小池氏に投票したことを伝えている。現在では、出口調査も端末を投票者に渡してネット調査する形式となっている。生データを扱えない状態は、一種のプロプライエタリであると言えよう。



 #私は、書きたいことを書くし、書きたくないことは書かないが、書くからには自身が責任を取れる程度の正確さを期する作業は行っている。読む人が読めば、私が奈辺に不正の構図が存在しているかを正確に予測できるはずである。


平成28(2016)年8月19日22時追記

日本でも、17日の時点で日本語で流通していたようであるが※1、ジョージ・ソロス氏のオープン・ソサエティ・イニシアティブ財団が不正アクセスされ、今月13日、2500以上の流出ファイルがDC leaksによって公開されたことを、RTが報じている※2。何ともはや、絶妙なタイミングで私は記事を書いていることになるが、本件は、遅まきながら今夜知ったことである。本件流出は、アメリカ人によるものとされている一方で、ロシアの関与を指摘する声もあるというが、本記事では、流出に係る経緯を論じることはしない。

 オープンデータは、悪用される余地もあるということである。真に、市民の利益に立つ統計分析というものは、なかなか、わが国では成立しない。統計がいざというときに隠されるたり改竄されたりするためである。このために、オープンデータの推進が貫徹されるようになることは、わが国では、国民益を確保する上での狭き道となる。しかし同時に、オープンデータは、国際秘密力集団に悪用される余地を持つものともなる。国際秘密力集団は、より洗練された形で、充実した人数でデータを扱うであろう。

 悪意を有する者も統計を利用するという現実をふまえると、国民益を担保するものは、悪意を持つ側に比べて質量ともに上回る分析活動しかない。このための「王道」は、圧倒的多数である国民一人一人が正当な分析方法を学習し、オープンデータの扱いにより多く参画し、間違いである分析に対して的確に批判を加え、誤った分析を提示した学識経験者を論壇から追い落とす、というサイクルを充実させることとなろう。ただし、現状の統計を用いた各種の社会的活動を見る限り、大量の良貨が用意されたとしても、悪貨を駆逐することは、望み薄である。

 戦後から現在までのわが国では、社会科学系の知識が政策に反映されるか否かは、その知識の正確さとは関連してこなかった。権力にとって都合の良い知識であるか否かが、ほぼ唯一の判断条件であり続けてきたからである。しかしなお、現時点であっても、政策に採用されるか否かはともかく、正確な知識が産出されていることは、今後のわが国の道行きを変える可能性が残る。ゆえに、いずれにしても、正確さを期して知識を産出することは、国民益を確保する上で大事な作業である。


※1 ソロス財団がハッキングされNWO戦略が世界中に公開・パナマ文書はプーチンを陥れる罠|世界の裏側ニュース
http://ameblo.jp/wake-up-japan/entry-12191211052.html

※2 Soros hacked, thousands of Open Society Foundations files released online — RT America
https://www.rt.com/usa/355919-soros-hacked-files-released/



平成28(2016)年10月24日追記

Smartmatic社は、選挙投開票システムを提供する民間営利企業[1]であり、ロンドンに本拠を置くSGOグループは、Smartmatic社の成功を基に設立された[2]。Smartmatic社の会長のマーク・マロック=ブラウン卿(男爵)[3, 4は、Wikipediaの英語版[5]と、そこに挙げられた資料を適宜参照すると、『エコノミスト』誌の記者から職業的なキャリアを開始し、Sawyer-Miller(現ウェーバー・シャンドウィック、NYを本拠とするPR企業[6]で2020年東京オリンピックの国際招致活動を担当した[7])の在籍時には、ピノチェト政権時のチリにおける反対派のためのCM制作を手がけた[8]。フェルディナンド・マルコス政権に対するコラソン・アキノ氏に対しても助言を与えた[9]。1990年のペルーでは、マリオ・ヴァルガス・ロサ氏の大統領選挙を支援し、コロンビア政府に対しては、メデジン・カルテルの政治的影響下を脱したというイメージ形成を図る上で支援した[10]。ベネズエラやボリビアでもコンサルティングを行い、ロシアや東ヨーロッパにおいても経済改革及び民営化問題について業務に従事したという。

 その後、マロック=ブラウン氏は、世銀と国連においてキャリアを積み、国連開発計画の副議長を勤め、2007年から2009年にかけ、ブラウン政権において外務および英連邦省大臣(アフリカ・アジア・国連担当)の座にあった。2006年の石油食料交換プログラムへの批判に対しては、コフィ・アナン事務総長を弁護する発言をおこなった。(これに対しては、マロック=ブラウン氏の公言には矛盾があるという指摘[11]もある。)

 大臣就任前、マロック=ブラウン氏は、ジョージ・ソロス氏の投資ファンドであるクォンタム・ファンドの副社長(vice president)とソロス氏のオープン・ソサエティ・イニシアティブ財団の副理事長(vice chairman)に就任予定であることを『The New York Sun』紙により報じられた[12]。ただ、ファンド名については、Soros Fund Management という記述もある[13]。SGOグループ[3]とSmartmatic社[4]の両ウェブサイトとも、これらの記述を裏付けるものであるが、ファンドについて名称を記載している訳ではない。他方、「Smartmaticに係る事実」という同社のプレス・リリースからは、ソロス氏のファンドにおいて経営陣を務めたという記述が完全に省略されている[14]

 先の『The New York Sun』紙は、マロック=ブラウン氏がニューヨークでソロス氏の所有する5ベッドルームのアパートを、月12500ドルで借りていたことを併せて報じている[12]。この指摘は、マロック=ブラウン氏とソロス氏の深い関係を示すものとして考えて良いであろう。

 以上の情報を総合すると、Smartmatic社の記事が不正選挙に悪用される虞が全くないとするデイヴィッド・ミケルソン氏[15]やシーラ・フランケル氏[16]の記事は、企業を単独の存在として見た場合には嘘とまでは言えないが、マロック=ブラウン氏とソロス氏との具体的な利益をも共有する交友関係が存在するという事実を欠落させており、読者に対して不誠実である。批判されている当の企業により用意されたプレス・リリースだけを事実として伝えることは、ジャーナリストのプリンシプル(の表向きの部分)に反する姿勢である。まして、フランケル氏のように、相手を罵詈雑言の隠語で表現することは、到底、正当な態度であるとは言えない。


[1] About - Smartmatic
http://www.smartmatic.com/about/

[2] About - SGO
http://www.sgo.com/about/

[3] Lord Mark Malloch-Brown - SGO
http://www.sgo.com/about/board/lord-mark-malloch-brown/

[4] Lord Mark Malloch-Brown(detail)
http://www.smartmatic.com/about/our-team/detail/lord-mark-malloch-brown/

[5] Mark Malloch Brown, Baron Malloch-Brown - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Malloch_Brown,_Baron_Malloch-Brown

[6] Weber Shandwick - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Sawyer-Miller_Group

[7] ウェーバー・シャンドウィック - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF

[8] Alpha Dogs: How Political Spin Became a Global Business - James Harding - Google ブックス
https://books.google.co.jp/books?id=ZAsDSbBEMDMC&pg=PT142#v=onepage&q&f=false

[9] Profile: Mark Malloch Brown, the minister for Africa, Asia and the UN | UK news | The Guardian
https://www.theguardian.com/uk/2007/jun/28/politics.labour1

[10] Mark Malloch-Brown | Open Society Foundations (OSF)
https://www.opensocietyfoundations.org/people/mark-malloch-brown

[11] George Soros and Sir Mark Malloch Brown | TribLIVE
(David Rhodes、2007年05月20日)
http://triblive.com/x/pittsburghtrib/opinion/columnists/guests/s_508490.html

[12] Ex-Deputy U.N. Chief Joins With Soros - The New York Sun
(BENNY AVNI、2007年05月07日)
http://www.nysun.com/foreign/ex-deputy-un-chief-joins-with-soros/53955/

[13] Mark Malloch Brown appointed Vice-Chairman of Soros Fund Management, Open Society Institute: GPPi - Global Public Policy institute
(2007年5月21日)
http://old.gppi.net/news/news_item/article/mark-malloch-brown-appointed-vice-chairman-of-soros-fund-management-open-society-institute/

[14] Facts about Smartmatic(Article)
http://www.smartmatic.com/case-studies/article/facts-about-smartmatic/
  • It is no secret that our Chairman Lord Mark Malloch-Brown is a member of a number of non-profit boards addressing global issues from poverty reduction to conflict resolution, including the Global Board of the Open Society Foundation. This is stated clearly in his official biography. Lord Malloch-Brown is a highly respected global figure whose credentials include former Deputy Secretary-General of the United Nations and former Vice-Chairman of the World Economic Forum. He also served in the British Cabinet, as Minister of State in the Foreign Office.
[15] George Soros Controls Smartmatic Voting Machines in 16 States : snopes.com
(David Mikkelson、2016年10月20日)
http://www.snopes.com/george-soros-controls-smartmatic-voting-machines-in-16-states/
Smartmatic has no ties to political parties or groups in any country and abide by a stringent code of ethics that forbids the company to ever donate to any political campaigns of any kind.
[16] Fears Of Soros-Owned Voting Machines Rigging The Election Are Unfounded - BuzzFeed News
(Sheera Frenkel、2016年10月20日23時07分 GMT)
https://www.buzzfeed.com/sheerafrenkel/soros-election-machines
Smartmatic had not returned a request for comment from BuzzFeed News at the time of this publication, though a secretary who answered the phone in their Florida-based offices said it was “BS.”

2016年8月18日木曜日

高須克弥氏はポケモンGOを遊ぶ場所を選んだ方が良いのではないか

 高須クリニックの高須克弥氏が、昨日(8月17日 19:18)付で次のツイート※1を発信している。ナイジェリア連邦共和国の五輪サッカー代表への寄付※2に関係してのことであると推測される。これに対する私の意見は、題名のとおり、遊ぶ場所を選んだ方が良い、というものである。ポケモンGOは、大使館の外で遊ぼうね!が基本である(リンク)ためである。


※1 高須克弥さんのツイート: "ナイジェリア大使館でポケモン。病みつきになりそうだぜい https://t.co/9o6QGCr1TO"
https://twitter.com/katsuyatakasu/status/765855221851369476

※2 高須院長、ナイジェリア代表に2000万円寄付へ。現地リオでの直接手渡しを決断【リオ五輪サッカー】 | フットボールチャンネル | サッカー情報満載!
http://www.footballchannel.jp/2016/08/17/post169756/


2016年8月17日水曜日

平成28年7月執行の参議院選挙と都知事選挙の当日有権者数の差は、不可解である

 平成28年7月執行の参議院選挙の東京都下の投票率と都知事選挙の投票率との差は、選挙人名簿への登載の要件となる3ヶ月以上の居住という条件が年度をまたいだことによって生じた可能性が認められる。選挙人名簿への被登録資格は、当該の市区町村に住所を持つ年齢満20歳以上の日本国民で、かつ、住民票が作られた日(他の市区町村からの転入者は転入届をした日)から引き続き3力月以上、住民基本台帳に記録されている、というものである※1。参議院選挙の公示日が6月22日であり、都知事選挙の告示日が7月14日である※2ことから、数日のスケジュールのブレがあろうとも、両方の選挙における選挙人名簿の作成日は、平成27年度の末日を挟むことになる。わが国における年度の始まりは、4月1日であり、これに合わせて公的組織や多くの企業がスケジュールを組んでおり、人々は、この年度始まりに合わせて行動する。今回の都知事選挙は、4月1日までに転居してきた都民が投票できる初めての選挙である。他方、3月下旬に転居を届け出た元都民は、元の住所地での投票権があるとはいえ、投票だけのために元の住所地に立ち寄ることまでは、なかなかしないであろう。

 この点を考慮すると、参議院選挙の選挙人名簿登録者数と都知事選挙の選挙人名簿登録者数との間に生じた差は、本年4月1日および5月1日時点の住民基本台帳登録人口を元にして、考察すべきであろう。4月1日および5月1日の2時点の住基人口を参照する理由は、各月1日時点のファイルには、先月中の人口移動が掲載されているためである。

 本稿では、本年4月1日と5月1日時点の東京都の住民基本台帳登録人口の日本人人口と人口移動に係る統計から、両選挙に生じる当日有権者数の差を推定した。住民基本台帳から選挙人名簿が作成されるのであるから、本来、前者を逐一追跡できれば、後者の再現が可能なはずである。また、集計データのみが公表されるとしても、自治体別・年齢階級別の住基人口があれば、その動向は、両選挙の選挙人名簿登載人数の検討にも役立つはずである。しかし実際には、東京都総務局統計部の住基人口※3は、それなりに多くのデータが掲載されているものの、選挙人名簿の推定に直ちに転用可能な状態には整備されていない※4

 当日有権者数であれば、誰にも把握しやすい状態で公開されているものの、両選挙に係る基礎的自治体別の選挙人名簿登録者数は、私には入手できていない。この「データに行き当たっていない」状態は、私の不手際によるものかも知れないが、ナビゲーションの状態が悪いこともあろう。東京都選挙管理委員会ウェブサイトの「選挙人名簿登録者数」(リンク)は、過去の状況を把握できるだけの過去のデータを掲載していないし、わが国の公的な唯一のアーカイブである国会図書館のアーカイブは、(永田町の)本館なり(学研都市の)新館に行かないと閲覧できないようになっている。

 しかし、いくつかの仮定を措けば、3ヶ月前からの住基人口と当日有権者数との関係を把握し、冒頭に示した可能性を検討する作業は、無茶というほどのものにはならないであろう。そこで、エクセル形式ファイル(.xlsx, リンク)に、東京都総務局統計部の住基人口※3や平成28年7月の両選挙の当日有権者数との比較作業をまとめ、アップロードした。

 結果だけを転記すると、下表のとおりである。「当日有権者数の差」は、東京都選挙管理委員会の公表を引用したものであり、3週間の差である。「有権者の変化」は、3月23日から4月13日までの期間について、次の仮定を措いたものである。死亡者数と転入者数は、日数に比例する形(小数切上げ)で生じたものとした。転出者数は、すべて影響期間内に生じたものと仮定した。いずれの仮定も、保守的なものであって、かつ、負の方向にのみ作用する。このため、「有権者の変化」は、できる限り、実際に公表された値である「当日有権者数の差」に近づくよう、データに係る仮定を歪めたものと見ることができる。なお、ここでは、3週間内に18歳を迎える人口を計上していない。この人口は、データに対して正の影響を与えるためである※5

 両者の値には、3週間という比較的短い期間に係るものであるにもかかわらず、16000人という差が生じている。この差は、何らかの説明を必要とするほどに乖離したものである。論理上、最も差を生じ得る社会移動(転入・転出)が考慮され、自然増減(出生・死亡)にも保守的な仮定を措いている。計算方法上、あり得ることとして、6月半ばから7月初旬の死者数も算入するとしても、せいぜい倍程度であり、74000人には届かない。この差は、仮に事務手続の実質的な誤りに起因するものであって、投票所入場券が未発送であったなどの実害が生じていたとすれば、選挙のやり直しの声が出てもおかしくない程に、大きなものである。この埋められない差は、大半の基礎的自治体にわたるものであるためである。今回は、転出入、出生・死亡について、確率モデルを導入することが不要と思われる程度に保守的な仮定を措いた。


表:平成28年7月10日執行参議院選挙東京都比例代表当日
有権者数及び同月31日執行都知事選挙当日有権者数の差、
ならびに平成28年4月1日及び5月1日現在住民基本台帳登録
日本人人口から推定した3ヶ月前時点の都内有権者の減少数
自治体当日有権者数の差
(人;知事-参院)
有権者の変化
(人;概ね最大)
都全体-74685-57356
千代田区-602-441
中央区-1122-644
港区-2269-884
新宿区-2010-1631
文京区581-1171
台東区-1046-836
墨田区-1180-950
江東区-2816-2077
品川区-2457-1675
目黒区-2485-1502
大田区-4065-3844
世田谷区-6767-3940
渋谷区-1451-697
中野区-1829-1293
杉並区-3635-2154
豊島区-1908-1155
北区-1784-1814
荒川区-1205-873
板橋区-2439-2450
練馬区-4169-3719
足立区-5657-2717
葛飾区-2035-1787
江戸川区-3212-3391
八王子市-1895-2244
立川市-517-658
武蔵野市-2130-583
三鷹市-505-599
青梅市-515-465
府中市-993-835
昭島市-339-290
調布市-788-733
町田市-2674-1739
小金井市-695-588
小平市-821-794
日野市-859-641
東村山市-626-589
国分寺市-462-399
国立市-257-276
福生市-249-209
狛江市-425-310
東大和市-336-298
清瀬市-399-338
東久留米市-711-510
武蔵村山市-219-232
多摩市-658-567
稲城市-130-209
羽村市-257-145
あきる野市-254-219
西東京市-924-816
瑞穂町-143-90
日の出町-32-49
檜原村-9-18
奥多摩町-25-26
大島町-47-82
利島村-2-9
新島村-26-19
神津島村47-8
三宅村-5-21
御蔵島村-8-4
八丈町-63-46
青ヶ島村6-2
小笠原村-178-51

平成28年7月参議院選挙(東京都)と都知事選の当日有権者数
図:平成28年7月10日執行参議院選挙東京都比例代表当日
有権者数及び同月31日執行都知事選挙当日有権者数の差、
ならびに平成28年4月1日及び5月1日現在住民基本台帳登録
日本人人口から推定した3ヶ月前時点の都内有権者の減少数
に係る分布図

 もちろん、この差を説明する上で最も効いているはずの要因を私が見逃した、という説明は、本命であるべきものである。しかし、これ以上の真っ当な理由は、私には思いつけない。ここから先、考えられる理由は、いずれにしても、今回の東京都知事選挙に係る本格的な疑惑を提起するものとなる。一つは、先に示唆したように、選挙人名簿の作成段階で、重大なミスがあったというもの。これは、単に数字が間違っていました、ごめんなさいで済む種類のものではない。次は、もちろん、不正選挙のために、色々な数値に無理が生じたというもの。第三は、予想されない勢いで、公民権が停止される事態が生じているというもの。いずれの理由も、私に何らかの落ち度があってデータを分析し間違えたという原因の方が、私にとってさえ、胸をなで下ろすことのできるレベルのものである。


※1 総務省|選挙人名簿
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo07.html

※2 平成28年 選挙執行一覧 | 東京都選挙管理委員会
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/election/schedule/senkyo2016/

※3 住民基本台帳による世帯と人口 平成28年
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukim/2016/jm16010000.htm

※4 選挙人名簿登録者数の推移(PDF形式:113KB)(東京都選挙管理委員会)
https://web.archive.org/web/*/http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/2806meibo_suii.pdf
#題名部分のリンクは本体へのリンク、URL自体は、念のため、Internet Archiveのものを示す。

※5 新成人の名簿登録者数(PDF形式:95KB)(東京都選挙管理委員会)
https://web.archive.org/web/20160816143137/http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/2806meibo_shinseijin.pdf
#※4に同じ。



 東京都内の市区町村は、どこであれ、金太郎飴のようなものである。貧乏人もたくさん住んでいれば、その隣に豪邸もある。支持政党も似たりよったりである。どの地域も似ているか、似ていないかの二択でいえば、似ている、という方が皆の賛同を受けられるであろう。蒲田も田園調布(の一部)も、大田区内にある。わが国の首都は、かなりのモザイク状である(という話は、教科書的なので、調べが面倒なので省略したい)。とはいえ、都心4区を除く東京都区部に着目すれば、住宅価格ならびに家賃が西高東低気味であることは、それなりに知られたことである。結局、モデルによって説明してみないことには、どこまでが普通にあり得ることで、それを超えるとおかしい、といった分別が付かないのである。今回は、実値を利用しているが、一種のモデルを念頭に置いていることには変わりない。

2016年8月16日火曜日

都知事選の主要三候補の得票率が斉一的であるという指摘は前提が怪しい(2)

 前稿(リンク)では、先月都知事選の主要三候補の得票率が斉一的に過ぎるという指摘が三種類の点、(1)記述統計的手法の誤り、(2)統計モデルの不在、(3)地域統計、を見落としていると指摘した。前稿では、(1)つまりグラフの書き方がおかしいという点を指摘したが、これは、形式的な誤りでしかなく、指摘そのものの正しさを否定する材料とはならない。ただ、誤ったグラフから正しい仮説や正しい結論が導かれることがあるとすれば、そのことは、むしろ僥倖というべきであろう。

 本稿では、不正選挙を指摘する複数の論者による、「小池氏の得票率を鳥越氏の得票率へと近付けるための係数を乗じた結果、小池氏の基礎的自治体ごとの得票率は、鳥越氏の得票率に一致する」(以下、「比例説」)という主張が、個人の投票モデルのうち、最もシンプルなものとなる二項分布によって否定されることを確認する。本稿の指摘は、先の三点の指摘のうち、第二点目に係るものである。個人の投票モデルが二項分布に従う(のみである)という仮定は、先の三点の指摘のうち、第三点目に起因する特徴を無視したものとなっているが、第三点目の地域統計であるという特徴を乗り越える作業は、生半可にはいかないので、本稿以後も扱わない方針であることをあらかじめお断りしておく。

 また、本稿では、「宇都宮健児氏の得票率が鳥越氏の得票率へと流用されている」という趣旨の主張もまた、個人の得票行動に二項分布を仮定した場合、誤りとなることを示す。ただし、この主張は、小池氏の得票率に一定の係数を乗じた場合よりも成立しそうなものでもある。宇都宮氏への投票者の支持政党、鳥越氏への投票者の支持政党は、いずれも野党側のものである一方、前回都知事選における与党候補とは異なり、今回の都知事選は、与党系の候補が2名となったものであるためである。

 計算方法は、次のとおりである。各時点の各基礎的自治体の全有権者に対する、今回の小池氏への投票率$P_1$と、前回の宇都宮氏への投票率$P_2$を、いずれも二項分布における真値とみなした。それらの投票率を鳥越氏への投票率へと変換するための係数$(k_1, k_2)$を、作成した。係数$(k_1, k_2)$を、$P_1$及び$P_2$のそれぞれに乗じ、修正後の投票率を得た。今回の全有権者数を試行回数として、修正後の投票率、たとえば$k_1P_1$を成功確率とする二項分布の実現値は、仮に、現時点の不正選挙を糾弾する論者の主張が正しければ、今回の鳥越氏の得票数にきわめて近い数値となるはずである。そこで、それぞれの得票率と実際の鳥越氏の得票数を利用して、各自治体について、二項検定を実施した。各自治体について二項検定を実施することは、多重比較となるので、判定の有意水準は、0.01を基礎的自治体数62で除した(ボンフェローニ修正)。

 結果、小池氏の得票率を利用した場合には46の基礎的自治体において、前回の宇都宮氏の得票率を利用した場合には43の基礎的自治体において、鳥越氏の得票数は、これらの得票率から生まれたとは認められないという結果を得た。つまり、鳥越氏の得票率がほかの候補の得票率に比例するように見えたとしても、その比例関係は、大半の場合、厳密には成立していないのである。グラフ上で線が重なるほどに近い差であっても、二項モデルを仮定した場合には、その差は、何らかの違いを示すほどに大きなものと言えるのである。

 地域別得票率の「比例説」は、二項分布から大量に生起する現象についての数的感覚が欠如していることから生じたものと認められる。20世紀中葉までに成立した現代的な統計学の学習や訓練がなければ、誰でも、同様の誤りに陥ることになる。「大量(マス、mass)現象」に二項分布を仮定したときのばらつき方は、統計学が専門ではなくとも、社会現象を分析する人物であれば、抑えておくべき基本であろう。この素養は、何が異常で何が正常でないかの判定能力に直結するためである。

 実際の分析作業は、すべて『R』上で実施したので、計算結果は.Rファイルにすべて譲る。ファイルをアップロードした(リンク)ので、そちらをご覧いただきたい。

 「比例説」自体は、その主張が含む厳密さによって否定された訳であるが、しかし、「比例説」が否定されたことは、今回の得票結果を説明する説の中から、不正選挙の可能性という説を除外する理由にはならない。 むしろ、「比例説」に何らかの副次的要因を追加することによって、今回の状況をうまく説明できるとする、不正選挙を支持する説が提起されたとき、おそらく、われわれは、その説を否定するだけの材料を持たないであろう。多数がお互いを監視するというオムニプティコン社会に生きるわれわれは、その説の出現を予期できるだけのリアルな材料を、すでに手中に収めているのである。それに、異常と正常の境目の判定能力の欠如は、何も、(私を含む)陰謀論者だけに見られる現象ではないのである。

平成28(2016)年8月16日12時追記・修正

今回の検定におけるファミリーワイズの第一種過誤を5%から1%に変更した。

 また、「2012年猪瀬氏→2014年桝添氏」と「2014年桝添氏→2016年小池氏」に係る比例説も検討した。「2012年猪瀬氏→2014年桝添氏」については53の基礎的自治体が、また「2014年桝添氏→2016年小池氏」については48の基礎的自治体が二項分布から外れる形であるという結果を得た。アップロードしたファイル(リンク)は、この結果に係る作業も含む。

 本文のパラフレーズとなるが、各候補の得票の形状は、二項分布というシンプルなモデルでは説明できないものの、追加の仮定を措くことによって、うまく説明できる可能性が残るものである。現時点で考えられる要素のうち、不正とは一応切り離すことのできるものを挙げれば、自動票読取機が梱包する票数(500票)、地元議員の応援、公務員や宗教団体など、斉一的な投票行動をとる居住者が集住する宿舎の所在、などが考えられる。


2016年8月14日日曜日

都知事選の主要三候補の得票率が斉一的であるという指摘は前提が怪しい(1)

#本記事も、先月の東京都知事選挙に係る分析の一部である。いずれはリンクページを作成したいが、下調べすべき要素が多く、なかなか形にならない。

 先月末(平成28年7月31日執行)の東京都知事選挙については、支持政党や候補者が異なるにもかかわらず、自治体ごとの得票率が斉一的過ぎる、という指摘がなされている。この主張は、Ghost Ripon氏(筆名)のブログ(リンク)で精力的に示されてきたものである。これ以上、厳密な起源を追うことはしないものの、この主張は、陰謀論者というラベルを貼られている人たちの中でも、とりわけ理性的と見なされている人たちにも広く受け入れられている。たとえば、「れんだいこ」氏は、ウェブサイト(リンク)に記された内容による限り、決して盲目的に陰謀論と呼ばれる分野の諸説を受け入れているものとは読めず、多くの論考は批判的に執筆されているように見えるのであるが、本件に限れば、同氏の5日までのツイートは、この説をほとんど直感で受け入れているように見える。

 今回の都知事選挙に対する疑いは、過去の都知事選挙に対する疑いの延長上にある。つまり、従来の都知事選挙についても、支持政党や候補者が異なるにもかかわらず、自治体ごとの得票率が斉一的過ぎる、という指摘がなされてきた。別の一例として、孫崎享氏のツイートライン(後段で紹介)を挙げることができる。孫崎氏は、今回の都知事選については不正を断定できないとしながらも、過去の都知事選に対しては、同様の方法によって、不正が示されていると考えているようである。

 他方、統計学を高校三年以降の課程で学習し(て、二項分布を知っ)た人にとって、この指摘は、かなり怪しげに響くものである。なぜなら、各区における特定候補の得票率が同一であると仮定し、その投票率を成功確率とする二項分布を想定した場合、各区の結果は、この二項分布から生成されたものにならないことの方がむしろ多いことを予測できるからである。このとき、不正選挙を指弾する側の人々は、自らの前提に裏切られる格好となるのである。各自治体における得票率は、同一確率の当選者への投票率(候補者にとっては得票率)からは、およそあり得ない形で期待される票数から外れるためである。

 従来の都知事選に対する不正選挙疑惑を論じた人々の陥穽は、いわゆる記述統計的手法を適切に利用せず、また、何らの統計モデルを念頭に置かないまま、地域別の集計データを分析可能であると考えたことにある。(1)記述統計的手法の誤り、(2)統計モデルの不在、(3)地域統計、という三点それぞれに検討の必要がある。本稿では、最初の誤りを検討しよう。最初の誤りは、グラフの書き方が誤り、というものである。

 グラフの書き方は、分析の方向性を歪めることがある。その実例として、下記OMP氏のツイートのグラフを挙げる。OMP氏は、このグラフを通じて、おそらく、東京都内の特別区が多様な特性を有しており、住民の特性も異なり、よって支持政党や候補者も異なるにもかかわらず、結果が斉一的過ぎる、と主張したいのであろう。しかし、このグラフは、3D棒グラフとして描かれており、各候補を表す円柱の底面同士の高さが同じような高さのものに見えてしまうという問題を含むものである。グラフは、自身の仮説に逆らうように作成するのが基本である。そうしておかないと、自身の仮説に対して批判的に接することができなくなるという副作用にやられてしまうこと、請け合いである。

https://twitter.com/ompfarm/status/759949306983964673


 他方、たか@地球氏のグラフは、的確である。たか@地球氏は、OMP氏へのリプライとしてグラフを提示しているので、読者は、これらを通して読んでいたとすれば、正確な理解にたどり着くことができよう。それ(こそ)がSNSの長所というものであろう。(ただ、本記事は、いろいろと差し障りもあろうから、このブログのみで留めておく。また、このブログは、あえて訴求力低めで運営しているつもりである。何かご意見のある場合には、分かりやすくご指摘いただけると幸いである。)

https://twitter.com/taka_telluria/status/760351648149450752

 言いっ放しでは不公平というものであろうから、私も、グラフを下に提示した。『Excel』で作成したものであるが、「カラー画面で自分が見るだけ」なら、この程度で十分であるということを示すためである。細かいことであるが、x軸の目盛りを付けなかったのは、位置が各項目(市区町村等)の真ん中に来るよう調整するのが面倒だったからである。x軸の目盛りの位置は、『Excel』が表計算ソフトウェアのデファクト・スタンダードとなって以来、それほどとやかく言われることがなくなったようにも思う。長いものには巻かれろ、ということなのであろうか。なお、『Excel』なら4色以上のグラフについて、また『R』ライブラリの『ggplot2』なら3色以上のグラフについて、デフォルト状態から配色を変えるという工夫が必要そうである。今更ながら、このことに気が付いた次第である。本ブログにおいて、多くのグラフを公開しておいて手遅れ感があるのだが、本来、系統的な作業が必要ということである。


平成28年7月31日執行東京都知事選挙 主要三候補の得票率
図:平成28年7月31日執行東京都知事選挙 主要三候補の得票率


 なお、本グラフでは、折れ線グラフを使うべきではない。なぜなら、本グラフは、地方公共団体コードで基礎的自治体等を並べており、隣り合う項目同士が連続するものではないためである。各候補の得票率に係る時系列の推移であれば、横軸に時間をとる限りは、折れ線グラフで良いであろう。この点、Ghost Ripon氏の努力は、このような(小学生で学習するはずの)グラフの書き方だけ取っても、十分に突っ込む余地のあるものとして、斥けられてしまうのである。分析そのものの誤りについては、本人が理解した上で相関係数等(#実は、単回帰直線の決定係数であって、相関係数ではない)を利用していないという可能性が多分に認められるために、本ブログでは次稿以降で、私自身の見立てを検討する中で、ゆる~く触れる程度にしておきたい。

【不正選挙】都知事選 投票者数にも人為的な操作|Ghost Riponの屋形(やかた)
http://ameblo.jp/ghostripon/entry-12187553452.html



平成28年8月13日追記

孫崎享氏による今回都議選に係るツイートは、以下の2種に要約される。孫崎氏が2番目のツイートでいう「相関性」は、おそらく、下記ブログの引用部分等にあるようなグラフを指すのであろう。この「相関性」は、先に挙げた要素のうち、(2)統計モデル(の不在)、(3)地域統計、の二点を考慮しないものであり、「各区の当選候補の得票率が共通する」という二項モデルを仮定して確認することによって、否定されることになる。次回以降の記事のいずれかで紹介する。



不正選挙!衆議院選挙は操作されていた!!「日刊ゲンダイ」がとんでもないことを暴き出している - 愛詩tel by shig
http://blog.goo.ne.jp/1shig/e/6f9515ba174f5dff1e7f84c7e613f916
◎2011年都知事選、12年都知事選、14年都知事選。
そこで当選した、石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏、舛添要一氏の
全51選挙区の区毎の得票分布が、同じであることが判明した。

 上掲の51選挙区とは、特別区及び市、西多摩郡、島部である。また、このブログの出典は、『週刊事実報道』という出版物のサイトの記事である(ように読める)。最も上流のソースは、Ghost Ripon氏のブログ(リンク)であると思われるが、いずれにしても、何を仮定して斉一的であると判定しているのか、という点が不明瞭であるために、信憑性に疑問を持たれても仕方のない状況にある。

週刊事実報道 『東京都知事選でまさかの不正疑惑』
http://www.jhoudou.com/#!news11/csv8


2016年8月11日木曜日

千葉大学の公表した大学生の投票率に係る調査について(メモ)

平成28年3月29日 国立大学法人千葉大学 ニュースリリース
住民票を移さない大学生の投票率、たったの21%!
(PowerPoint プレゼンテーション - 20160329_2.pdf)
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2015/20160329_2.pdf

投票参加についてのアンケート - Google フォーム
https://docs.google.com/forms/d/1Y1Sb_P60K2_AprmXmDU49hF2kPwNy3GjdceSk2zfilI/viewanalytics

 千葉大学法政経学部倉阪秀史ゼミの学生は、同学生に対して、住民票を移していないことが低投票率につながっているのではないかという推測を示している。全252名中、実家を離れて暮らしている者が118名、そのうちの80名が住民票を移しておらず、さらにその21%(#17名であろう)のみが投票している。回答者全体では97名(38%)が投票しているので、住民票を移した者・実家暮らしの者の合計172名中、80名が投票した(47%)ことと比べると、大きな差であると言いうる。他方、この選挙(平成26年12月14日執行衆議院選挙)の20歳の投票率は、東京都選挙管理委員会によれば42.17%※1である※a。住民票を移さない割合は、明るい選挙推進協会によるアンケートの結果※2と、同程度と見て良いであろう※bから、東京都においても、おおよそ同じ話は通用するであろう。

 ところで、20歳未満であったという回答が全回答者の中に45名いる。この45名を、実家暮らしの回答者・実家を離れて暮らす回答者のそれぞれに等しい割合となるように分配する※cと、45*(80/252)=14.28名。14名が住民票を移していない実家から離れて暮らす千葉大学の学生の回答者であると仮定すると、実家を離れて暮らす千葉大学の学生は、80-14=66名中、17名のみが投票したということになる。17/66=0.257なので、約4分の1が投票するという計算になる。この値は、20代全体の投票率から見ても低いものである。(従来なら20歳の)初めての選挙では、投票率が高くなる。

 大学生の暮らし方について、東京都と千葉県との間で大きく変わるという仮定は、否定することができない程度に有力なものである。実家が埼玉県内なら、武蔵野線沿線を除けば、千葉県は遠くなる。神奈川県なら反対側、2時間を要する。千葉大学に通うとき、実家暮らしするのか、近くで下宿等するかという判断は、山手線周辺に大学がある場合と比べて、判断が分かれるであろう。

 おおよそ、実家から離れて暮らす大学生は、住民票のある実家に帰宅している最中であれば、1割程度、投票に行くようになる、と仮定することは、無理筋とまでは言えない。2014年12月の衆院選は、12月14日投開票であったから、ちょうど、今夏の参院選と同様、大学3年生にとって休暇前であったという点では共通する。今回のように、休暇の有無だけにより、投票率の増減を説明できるだけの選挙結果を見出すことができれば、何らかの結論を得られるかもしれない※d



※1 東京都選挙管理委員会>年代別投票行動調査結果>概要>年代別・選挙別推定投票率一覧表(エクセル形式:49KB)
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/senkyobetsu_suitei_ichiran.xls

20歳:42.17%、21~24歳:32.98%、25~29歳:34.85%

※2 18歳選挙権認知度調査(公益財団法人 明るい選挙推進協会、平成27年6月実施)18sai_bunseki.pdf
http://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2010/07/18sai_bunseki.pdf

(12)「あなたは、現在あなたが住んでいる所に住民票を移していますか」
まず「 親御さんと一緒に住んでいますか」と尋ね、一緒に住んでいないと回答した人に「移している」、「移していない」、「わからない」の中から1つ選んでもらった。調査結果を身分別で見てみると、高校卒業後、親元を離れて進学した短大生や大学生、大学院生等は26.4%しか住民票を移していない。しかし、社会人になると71.8%が住民票を移している。高校生・高専生は7.1%しか移していると回答していないが、その多くは親御さんと同居しているため、サンプル数が少ないことを考慮する必要がある。

 移している移していないわからない
高校生・高専生(56)7.1%41.1%51.8%
大学・大学院生(予備校生含む)(390)26.4%63.3%10.3%
社会人(主婦等含む)(433)71.8%16.4%11.8%

上記の選択肢の中で「大学・大学院生(予備校生含む)」と「国や地方の政治への関心度合」とをクロス集計してみる。「非常に関心がある」人の28.3%、「ある程度関心がある」人の33.3%が住民票を移しており、以降、「あまり関心がない」、「全く関心がない」、「わからない」と段階的に減少していく。「関心がある」人でも3割前後しか住民票を移していない。
※a 東京と千葉大学周辺を同質の地域と見なすと、千葉大学の公表した調査が偏りのないものであるとは言えないであろう。都選管の年代別投票率は、選挙人名簿から再現しているはずであり、いわば全数調査であると認めることができるためである。他方、千葉大学の公表した調査をバイアスのないものと認め、千葉大学周辺と東京が異なる居住環境にあること(一般的にはマイナスであろう)、また、大学生と20歳全体とは違いがある(一般的にはプラスであろう)ものと考えると、今回の調査の差、5%という数値は、居住環境と大学生という複合的な要因により生じる投票率の差であると捉えることもできる。適当きわまりないが。なお、ここで、私が追究しているような選挙上の不正は、まず間違いなく、影響していない。第一に、選挙人名簿自体に係る不正は、現時点までに不正を行ってきた側にとって、手段もなければ、着手する利益もない作業であるからである。第二に、選挙人名簿の人数を操作するという手法が可能であれば、今までに私のような一般人でも把握することができたような、ある種類の不正が行われることがなかったであろうと考えられるためである。

※b 選挙に行ったか行かないかよりも、センシティブな話である、ということくらいは、どのような大学生であっても理解しているであろう。

※c なお、生まれ月は、年少児童の成績及び体育能力と交絡することが知られているので、地方学生 (実家から離れて暮らす層)における学業成績と生まれ月との関係も、交絡しうる可能性は存在する。しかし、今回の調査は、千葉大学全学に対するものであり、学部ごとに受験の難易度が異なるであろうから、この交絡要因は実質的には見られないものと仮定しても、実際的な問題は生じないであろう。

※d なお、この作業において、非集計型の統計モデルを仮定することは、「牛刀を以て鶏を割く」類いの話になるので、必要ないものと考える。それに、千葉大学の公表した調査は、「住民票を移した回答者がどれだけ投票したのか」というデータを提供していない。この提供されていないデータは、「住民票を移した東京都内在住の大学生等で、夏休みで地方に帰省したために都知事選に投票しなかった者」の割合を推定するために役に立つのであるが、私の知りたいことに対しては、むしろ、このデータの方が「効く」ために重要である。東京から地方の大学に進学する学生も多いことと思うが(しかも、両親や本人の関心が高い層であると思うが)、今でも、地方から東京に進学する学生の方が多いであろうからである。

2016年8月10日水曜日

福島第一原発事故についての英語ブログ(メモ)

#外国語で福島第一原発事故後の日本の状況を発信するブロガーはどれくらいいるのか、のメモである。それぞれ、アップデートの頻度も停滞しがちなように見える。


The Hiroshima Syndromeは、外国向け英語情報をソースとする。外形的には、被害の限定化を目的に執筆されているブログであると判定できる。3件をアップデートしているが、うち1件の甲状腺癌検査については、『Science』のDennis Normile氏の記事を引用する形で「福島の子どもたちの報告された甲状腺癌は、原発事故と何ら関係がないことを記録が示している」と述べるに留まる。Normile氏の記事は、東京大学の渋谷健司氏の見解を基本に置くものである。Normile氏の記事からは、現地取材の跡を文面から読み取ることができない。

英語とフランス語に記事を翻訳して発信しているのは、『Fukushima Diary | Fukushima accident to go-on 40 more years』の氏である。ブログ主が日本語を読めるので、記事を選定する基準は比較的柔軟である。現在、ルーマニアから発信しているとのこと。基本的には二次情報。

Anne Kaneko's Fukushima Blogは、郡山に在住されていたKaneko氏によるブログであるが、2014年の3周年を機に、郡山から離れることもあり、閉鎖された(が、それまでの記事は閲覧できる)。一次情報も元にしている。

平成28年7月31日執行東京都知事選挙の期日前投票数の増加について

要約

本稿では、先月(2016年7月)の都知事選に係る期日前投票結果を考察するために必要な材料を提示する。最初に、制度の開始時期とおおよその規模について確認する。次いで、先月の参議院選挙と都知事選の期日前投票の割合が異なることを確認する。最後に、この差が生じた要因として検討すべき内容を思いつくままに挙げてみる。本稿では、あくまで謙抑的に考察を進める予定であり、一部の向きが私に対して予期するような「ちゃぶ台返し」は、別稿にて行う予定である。

#つまり、本稿に示す内容は、あくまで客観的に検証することの可能な内容であり、肯定も反論も、的確に行うことが可能なはずのものである。

本文

期日前投票制度は、従来の不在者投票制度の一部を代替する形で、2003年12月1日から施行された制度※1である。平成28年の時点では、地域や選挙の種類にもよるが、有権者数の1割から3割程度に相当する票がこの制度を利用して投じられたものとなっている。平成28年7月31日の都知事選挙において、期日前投票数は、都全体の全選挙人名簿登録者数に対して15%を、町村部に限定すれば19%を占めている※2。期日前投票数は、現時点では、選挙結果を大きく逆転させうるほどの規模に達していると言うことができよう。

 これに対して、従来の不在者投票は、期日前投票制度の導入直前には、多くとも、当日有権者数全体の1割程度を占める程度であった。たとえば、期日前投票制度の施行直前の2003年11月の衆議院選挙については、東京都の不在者投票数は、63万票近く、全投票数の約6%であった※3。全島避難となっていた三宅村については、有権者数の3割に達している※3が、これは、例外であろう。不在者投票では封書して署名する必要があるため、この作業の不要な期日前投票が気軽さから投票へのハードルを下げたという側面があることは、否定できないであろう。

 東京都における期日前投票の動向は、選挙日が一年のどの時点にあるかによって、多少の変動を受けるであろう。人間が習慣や季節に影響される社会的生物であり、わが国の四季がかなりの変化を有するものである以上、選挙日に対して何らかの仮説を措くことは、無駄ではなかろう。ただし、仮定を措かないことも、否定されるべきことではない。投票者をモデル化するにあたり季節や社会的属性(特に出稼ぎ者や学生等)を考慮することは、推定の確度を向上させる上で必要なことと考えられる一方で、現時点の私のように、当局の公表する集計データだけを利用する分析者が個人的属性に影響されるであろう内容までを考慮することは、作業として過大となりうるためである。

 しかしながら、先月の参議院選挙よりも東京都都知事選挙における期日前投票数が147718票も増加しているという統計上の事実は、この票数が都知事選挙の当日有権者数から見れば1.33%あまりに過ぎないものである一方、誤差と言い切るには微妙さの残るものでもある。この1.33%という差は、いわゆる非集計モデルを仮定した場合に、何かの要因を取り込み損ねたのでなければ生じない程度に大きな誤差である。モデル適用先となる東京都内の有権者数が1108万人にも達するからである。この事実を、最もシンプルな形のシミュレーションを通じて確認しよう。

 各選挙における当日有権者数を試行回数とする、各選挙における期日前投票数を当日有権者数で割った値を確率とみなす二項分布を想定し、これらに従う実現値を10000回分得る。その分布を下図に示す。実現値を真値とみなせば、期日前投票率がふたつの投票間で異なる、という命題は、成立するのである。本来、シミュレーションの手続としては、ふたつの投票に係る期日前投票率に何らかの分布を仮定して、その分布を個人に当てはめるという手順が正統である。しかし、ここでの主張は、単に、ふたつの投票における期日前投票率が基本的に異なるものである、というものに過ぎないから、下図で十分に示すことができようし、また、そのような知的負荷の高い作業手順を遵守することは、私のような行き当たりばったりな思考形態の生物には無理である。

図:平成28年7月執行参議院選挙と都知事選挙における期日前投票率について
二項分布を仮定した場合のシミュレーション結果(10000回、赤:参議院選挙、青:都知事選挙)

 ともあれ、どのような方法であっても、おおよそ、非集計モデルによる限り、都知事選の期日前投票率が高い、という結果になりそうであることは、上図によって示せたものと思う。なお、上図では、x軸方向を300個に分割し、ヒストグラムを描画させている。具体的な方法は、このRファイルに示した。シミュレーションには、『R』を利用し、描画には『ggplot2』ライブラリを利用した。

 都知事選と参院選に係る東京都全体の当日有権者数と期日前投票数については、このRファイルに示したとおりであるので、再度の掲示は省略するが、わずか3週間で、当日有権者数が74685名減少するというのは、社会移動があると仮定しなければ、理解に苦しむ人口差である。当日有権者数であるから、まず、東京都民全員ではない。17歳以下の人口や、選挙権を停止されている都民が除外された人口である。夏場は、通常、死者が少ない。このため、52/3を乗じた、-1294540という数値は、年間に換算した東京都民の人口減少数と見ることも可能となってしまう。人口減社会であるにしても、にわかに受け入れがたい、驚くべき数値である。社会移動が生じた理由は、今後、追究の対象となって良いことであろう。

 ところで、ふたつの選挙における期日前投票率にこれだけの差が生じた理由には、ほかにどのような理由が考えられるのであろうか。私にはそれほど見えていないのであるが、天候や気温、祝日や休日の配置といったものは、説明として受け入れやすいものであるので、とりあえず、大まかなところを確認しよう。本年7月10日は夏休み前の日曜日であり、7月31日は夏休み真っ盛りであるが、10日の東京都(本島)では降水がなく(羽田八王子、7月10日)比較的過ごしやすい気温であった一方で、31日は天候が大荒れであると予報されており、区部の一部では、昼に大雨が降り(羽田八王子、7月31日)、その後、大変に暑くなった。

 小中学生以下の子どもや孫を持つ成人が、夏休みや22日配信(『モバイルナビゲーター』、リンク)の『ポケモンGO』に振り回され、期日前投票したと仮定することは、それほど無理筋ではない。ただし、この仮定は、普段から投票してきた成人に適用されるものと考えなければならない。でなければ、なぜわざわざ、当日投票ではなく、期日前投票することになったのか?というさらなる疑問を呼び起こすからである。当日であっても、投票所の前にポケモンが現れることが確認できていたとすれば、期日前投票する必然性も薄れるからである。夫婦の片方だけがポケモンを探しがてら、期日前投票したことになるというケースも想定はできる。このような夫婦や家族の存在は否定できないが、実証が必要そうである。三世代家族であれば、祖父母のいずれかが期日前投票に孫を連れて行く、というケースが十分ありそうにも思われる。10万世帯(程度)がこのような行動を強いられた、というわけである。


※1 総務省|期日前投票制度の創設について
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/kijitsumae/
期日前投票制度の創設等を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律が第156回国会で成立し、平成15年6月11日に公布、平成15年12月1日から施行されました。

※2 衆議院議員選挙(小選挙区選出)不在者投票の最終結果について(確定)(Internet Archive Wayback Machine)
(平成15年11月11日 東京都選挙管理委員会)
https://web.archive.org/web/20040603053848/http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/data/h15shu_fuzai.html

※3 平成15年11月9日執行衆議院議員選挙(小選挙区選出)不在者投票の中間状況について(選挙期日7日前まで)
(ファイル名:43 衆院選・不在者投票中間状況報告(1回目)資料.xls - fuzai_jokyo.pdf、平成15年11月3日 東京都選挙管理委員会)
https://web.archive.org/web/20061229134748/http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/shugiin/fuzai_jokyo.pdf