投票日の前日、世論調査で「鳥越不利」の観測が出ると、岡田氏は9月の民進党代表選への不出馬を表明。都連の間でさらに党本部への批判が高まった。なかには裏で小池氏を支援する議員もいたらしい。私が古賀氏の言を引用してまで指摘したいことは、通常、数字を目の前に出されても、人はあれこれいじくり回して検証してみようとまではしないということである。日本という、まだ今のところはギリギリで経済大国のラインに踏みとどまっている国の行く先を決定するという大仕事を行う大組織において、十年に一人の逸材と評されていた傑物であっても、291万票対179万票対135万票対49万票という大差を当然ととらえて、それ以上の評価を行おうとしないのかな、と読んだだけの話である。私は、古賀氏を批判しようとしている訳ではない。専門外のことであれば、数字を実際に触ることまでしないのは、誰しも当然と言って良い反応であることを指摘したいのである。(もっとも、古賀氏がTPPに賛成していたことを知る陰謀論者ならば、上記の引用部分も一つのアングルじゃねぇの?と疑うこともあろうが、私は、ここでは、そのようには考えなかった。)
開票日は自宅で過ごした。小池氏の圧勝は「当然だろうな」と思った。なんの哲学もなく、知名度優先で候補者をクルクルと差し替える民進が野党第1党なのだ。たとえ統一候補の擁立に成功したとしても、一体感も戦略もないままでは、したたかに無党派層の支持を集める小池百合子新都知事には勝てるはずもなかった。
しかし、「この票差は、このような理由でおかしい」という具体的な情報に接したときには、事情は大きく変わるであろう。根っからの文系を自称する人であっても、大部分は、記事の一部なりとも読むくらいまでは行い、内容への理解があいまいであっても、記事の内容におおむね納得がいけば、ほかの人にも自分の言葉で伝えようとするのではないだろうか。人は、自身の仕事や趣味の範疇に入るものでないと、かくも数字に騙されやすい存在である、と一応のところは言えるであろう。(暇があれば、きちんと書籍等に当たり、人の感覚と指数・対数との関係などを示しておいて、大きな数において生じた差は感覚とずれがち、ということなどを指摘したいのであるが、そこら辺は、別の機会に行おう。)
ということで(なんのことでだ?)、騙される方が悪いと言わ(れ)ないために、以前の記事に示した内容(2016年8月21日)を、もう少しだけ分かりやすく表現し直しておこう。
- [7月24日の読売情勢調査における各候補の支持率]
- [7月10日の参議院比例代表の政党別得票数]
- [手順1]×[手順2]=[投票先を決定済みの支持者数]。ここまでは誰しも頭の中で計算してみるであろう。計算してみれば、それほど差がないこと、とはいえ、明確に小池氏有利ということまでは読めるであろう。(具体的な数値があれば、である。数値が示されていなかったことにも注意すべきであろう。)
- 態度未定者の数を求める。計算式は、[手順2]-[手順3の3候補合計]。
- [手順4]×[無党派層の各候補支持率]=[態度未定者の見込み投票者数]とする。
- [手順3]+[手順5]=[各候補の見込み投票者数]とする。ここまでの仮定は、素直な仮定であり、否定はできないであろう。
- [手順2]-[手順6]=[態度未定者のうち動向不明の投票者数]。
- [手順6の各候補者]+[手順7]=[各候補者の最大得票数見込み]。
8までに求めた[各候補者の最大得票数見込み]は、増田氏・鳥越氏の両名とも、289万票であったのである。この、ごく簡単な再帰的な計算を、高校生までの数学で適当に記せば、以下のとおり。
- (増田氏読売支持率×参院選比例代表投票者数)+{参院選比例代表投票者数-Σ(参院選比例代表投票者数×各候補読売支持率)}×増田氏読売支持率=増田氏見込み票数(289万)
- (鳥越氏読売支持率×参院選比例代表投票者数)+{参院選比例代表投票者数-Σ(参院選比例代表投票者数×各候補読売支持率)}×鳥越氏読売支持率=鳥越氏見込み票数(289万)
この289万票という数値は、7日前の時点で予想される最大の票数であった。とすれば、仮に、本件に不正選挙を認めるとするならば、数的感覚が欠如しつつも万全を期すことに抜かりない黒幕や顧客は、この値に達するまでは票数を積み上げようという気になったであろう。1票○万円という単価であるとすれば、発注者・受注者の双方が明朗会計であることを確認できるような仕組みの下に、不正選挙は行われたであろう。500票=500×○万円になるとすれば、俗に言うレンガ0.5○個ということになる。不正に関与する組織同士の間で金銭がやり取りされたとすれば、これらの計算は、必ず確認可能な状況で行われたであろう。束ねるラベルに付されたバーコードが実際には異なる候補へと付け替えられたとすれば、その手続は、発注者・受注者の双方が確認できる形であったろう。
座布団の下に1万円札なんて時代に比べれば、電子計算機上の不正は確実に見えるのであるから、仮に「座布団の下に現金型」か「開票読み取り機型」かを選べと問われたら、後者を選択する誘惑はさぞかし大きいであろう。ただし、前者の方法は、検票により後から不正がバレるということが少なく、情勢調査や出口調査との整合性も保たれるという点で、後者の方法よりも、ある面では安全性に優れる。近年の不正選挙のスタイルは、巷間指摘されているようなものであるとすれば、後世には、テキントを玩んだ挙げ句に失敗したものと評されよう。別の観点から言い換えると、一人一人に1万円という威力を信頼せず、ヒュミントの力を侮った結果とも言える。
一人一人に現金を配布するという古典的な不正は、饗応を受けた一人一人が不正に進んで荷担したのであるから、これもまた、一種の民主主義であるということになるかも知れないが、他方で、現代型の不正選挙は、国民に責任を転嫁する余地をほとんど残さないものである。これほど大きな不正が行われているとすれば、内部告発者も現れるのではないか?落選候補が主張するのではないか?警察や検察が動くはずではないか?など、普通の「良識的な大人」なら、穏当に考えるであろう。その反面、多少なりとも陰謀論とされる分野に親しんできた人たちであれば、これらの疑問がいかに扱われてきたのかについては、それなりに理解しているであろう。このために、ドナルド・トランプ氏の選挙システムには気を付けよという主張がいかにアメリカのマスメディアに嘲笑的に扱われようとも※3、※4、マスメディアの論評に対してこそ懐疑的に接することであろう。マスメディアには、批判的に接触することが常に必要となっている。
本稿において検討した「不正選挙」も、仮定の話であるが、仮に不正を行う側の身になって考えてみるという検討手法は(、例外を聞き及んではいるが)、学術的にはほとんど事例が見られないものの、まだ広く知られてはいない事例に対して役立つこともある。本記事も、その一つであるという程度にご理解いただけると幸いである。もっとも、シンプルな(推測)統計学によって、これだけ説明の付かない現象が、不正が絶無であるべき分野で続くことは、「本当は真っ黒」という結論を得るに十分なほどではある。なお、本澤二郎氏の最近の記事は、アメリカ総選挙(general election 2016)への選挙監視団の派遣要請のように、わが国にも選挙監視団が必要であるなど、話題が満載のようであるが、次回以降に検討を進めることとしたい。
※1 古賀茂明が今だから明かす都知事選の内幕と民進党の情けなさ - 政治・経済 - ニュース|週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト]
http://wpb.shueisha.co.jp/2016/08/29/70993/
※2 テリー伊藤対談「森永卓郎」(1)古舘さんの楽屋の前で見た光景は… | アサ芸プラス
http://www.asagei.com/excerpt/35404
※3 Donald Trump: 'I'm afraid the election's going to be rigged' - CNNPolitics.com
http://edition.cnn.com/2016/08/01/politics/donald-trump-election-2016-rigged/
※4 For Trump, a new ‘rigged’ system: The election itself - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/politics/for-trump-a-new-rigged-system-the-election-itself/2016/08/02/d9fb33b0-58c4-11e6-9aee-8075993d73a2_story.html
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