2016年8月31日水曜日

日本国民の免責のために安倍晋三氏の「アンダーコントロール」発言は機会あるごとに批判されるべきである

 2020年オリンピック招致に際しての安倍晋三総理大臣の「アンダーコントロール」発言(2013年9月7日)※1に係る真意は、後の国会において、数度、安倍氏自身により説明され(ようとし)たが、この顛末に対する批判は、英語圏ではそれほど高まりを見せていないようである。「アンダーコントロール」発言そのものは、英語圏においてもジャーナリスト※2、※3や反核団体※4などにより、放射性物質の海洋への漏出が続いているという推測と矛盾すると批判されると同時に、批判されたこと自体も報道の対象となっている※5。 しかし過日(平成28年8月26日)、Googleで「Abe Fukushima Diet "under control"」などの検索語を完全一致オプションとともに試してみたものの、「アンダーコントロール」発言に係る安倍氏の国会答弁について、後追いしている英語のページを発見することはできなかった。この作業は、私の調査資源からすれば、悪魔の証明に類するものであり、事実ではない可能性も十分に認められる。ただし、日本語では、安倍氏の国会答弁に対する批判は、ブログなどに見出すことができるから、英語マスメディア等では単にニュースバリューがないものとして片付けられていると結論することは、特に問題を生じる理解とは言えないであろう。

 英語圏では、招致委員会における安倍氏の発言は、単独で、国際公約として成立することが認められているようである。この点は、わが国の政治家一般に対する日本語マスメディアや日本国民(で声を大きく上げている者)の受け止め方とは異なる。この国内外の差は、そのまま、安倍氏による国会発言の検証に対する差にもなっている。国会に代表される日本語圏では、福島第一原発の状態を問うことに加えて、安倍氏の発言同士の矛盾を衝くことが議論の要件となっているかのようである。しかし、この条件が国会発言のみで満たされてもなお、安倍氏は自らの誤りを明確に認めることができないようである。

 海外では、日本国内のような議論は必要とされず、事故後の現実と安倍氏の発言との齟齬を見るだけで十分に責任を問うことが可能であると見る態度が主流であると考えて良いであろう。この差は、わが国の言論状況が日本語だけで完結しており、かつ、独特な形式に発達していることの例証となろう。また、この差は、日本語圏のウェブ言論に対する情報の検閲や統制が一定程度機能しており、あるいは一般人や、一般人に紛れる広告企業の被雇用者の側に迎合主義が見られるために生じたものと見ても差し支えないであろう。

 日本語ブロガーなどのサイトでは、安倍氏が収束していない旨を国会にて発言したことについて、批判する記事を容易に発見できる。たとえば、大沼安史氏は、「2020年に向けて、国際社会の厳しい指弾の的になって行くだろう。」と予測している※8

 安倍氏自身による「アンダーコントロール」発言に対する幾度かの国会での説明は、私のポンコツ知能では理解できない難解さを誇るものであるが、第186回参議院予算委員会議事録第5号(2014年3月3日)※9における発言の解釈を、私の現時点の知識から試みてみると、次のようになる。
  • 政府は、状況を的確に把握している
  • 敷地内での汚染水漏れも把握している
  • 漏れた後には、対策を実施している
政府という主語を明確に示すことができるのは、状況の把握に限定される、という点が重要であろう。これに対して、対策の実行に責任を負うのが東京電力であり、実際の作業に従事する主体は、もっぱら東京電力のn次下請け企業($n \geq 2$)に雇用された従業員たちであろう。この状態は民主党政権時代から踏襲されているため、安倍内閣のみに責任を帰することはできないが、この状態を知りつつも「アンダーコントロール」と海外において発言したことは、安倍氏自身の責任の範囲内に収まることである。

 3.11以後、日本語圏の言論は、明らかに混乱した状況にある。本来ならば明白に優勝劣敗を付けられるはずの議論が、カネに釣られた多数の匿名を 気取る者によって、原発ムラに都合の良いものに歪められている。エア御用学者も複数登場し、公の場で平然と嘘を吐いているが、社会的制裁もなく放置されている(「メルトダウンではないだす」)。この混沌は、言論の正確性に対する話者の感性を摩耗させるとともに、感性の鈍化した話者の表出がゴミ情報を発生させるという悪循環を生み出す。この悪循環は、「人気のある情報をトップに上げる」というベイズ統計を利用した現在の情報検索手法によって、さらに加速される。ゴミをゴミと識別できる読者が多数いなければ、同時的な言論を乗り切ることが難しいが、エアか否かを問わず、御用学者の言動が一般の国民を惑わせる。一般の国民が話者の属性によって話題に対する信頼の程度を上下させることは、責められることではない。専門家の役割は、専門について正確と思われる事柄を述べることにあり、互いに異なる専門を有する専門家同士も、互いの指摘を信頼する関係が成立するからである。

 わが国のトップが嘘を吐いたことを国民が放置し続けることは、わが国の政体・国体・国民のいずれにとっても不幸な結果を招来することになりかねない。国民の沈黙は、わが国では美徳であるが、他国では、消極的な同意とみなされかねない。この状態がよろしくないことは、以前の長い記事(リンク)で、村上春樹氏や小出裕章氏が外国に訴えたことなどに絡めて、十分に説明したつもりである。他国のインテリジェンス機関は、まず間違いなく、私が本記事で示した状態についても十分に把握した上で、静観しており、その利用の機会を狙っているはずである。

 帝国主義的な現今の世界情勢において、安全保障の意味でのセキュリティ、健康的な国民生活という意味でのセキュリティ、両方を維持・向上させるという目的を達成するためには、本記事で示されたような「政体」の詭弁が、勇気ある有名人のみならず、国民の一人一人によっても批判される必要がある。その批判は、何も具体的な言論を提起することによらない。わが国は、間接民主主義社会であり、投票行動によって意思を示すことができる。投票の秘密は、憲法(リンク)により保護されており、本来であれば、日本国民は、独立した個人として迫害を予期することなく投票できるはずである。

 なお、国民が示したはずの意思を内外の人々に誤解させるという点において、「不正選挙」は、外国からの危険を招来するものである。民主主義社会は、「皆で決めたことは(最善ではなく)仕方がないことである」ことを意思決定のベースとする社会である。民主主義社会下における個人は、社会全体として選択されたはずの結果を元に、次なる行動を決定するという(宮台真司氏の表現によるところの)再帰的な存在である。不正選挙は、この点においても問題のある方法である。不正選挙の結果、選択された(と国民に誤解を与えた)一味が何事かの悪事を国際社会において実行した場合、その報いは、この一味のみが引き受けるべきであろう。この点において、不正選挙の存否を追究することは、国際社会に対して国民の責任を減免するという意味を有する作業である。


※1 Presentation by Prime Minister Shinzo Abe at the 125th Session of the International Olympic Committee (IOC) (Speeches and Statements by Prime Minister) | Prime Minister of Japan and His Cabinet
http://japan.kantei.go.jp/96_abe/statement/201309/07ioc_presentation_e.html

※2 Did Japan Lie Its Way Into the Olympics? (Peter Lee, Sep 27, 2013)
http://www.counterpunch.org/2013/09/27/did-japan-lie-its-way-into-the-olympics/

※3 Abe Olympic Speech on Fukushima Contradicts Nuclear Plant Design - Bloomberg (Tsuyoshi Inajima and Yuriy Humber, Nov 1, 2013)
http://www.bloomberg.com/news/articles/2013-11-01/abe-olympic-speech-on-fukushima-contradicts-nuclear-plant-design

※4 Fukushima "under control"? | Wise International
https://www.wiseinternational.org/nuclear-monitor/769/fukushima-under-control

※5 Abe claims Fukushima radioactive water woes are 'under control' | The Japan Times (Kyodo, Oct 16, 2013)
http://www.japantimes.co.jp/news/2013/10/16/national/politics-diplomacy/abe-claims-fukushima-radioactive-water-woes-are-under-control/

なお、上掲の記事※2や下記ニュースサイト※6に示されている記事の元記事は、AFP通信により配信されたもののようであるが、高円宮妃久子殿下を「天皇の義理の娘」と表現している。元記事が削除されているため、この誤報が修正されることは、期待できない。

※6 Japan PM tells IOC Fukushima situation 'is under control' - Breitbart
http://www.breitbart.com/news/cng-92fe2f080078a69185437929a454fd0b-b11/

※7 皇室の構成図 - 宮内庁
http://www.kunaicho.go.jp/about/kosei/koseizu.html


※8 机の上の空 大沼安史の個人新聞: 〔フクイチ・グローバル核惨事・史料〕◆ 「収束したとは言っていない」と弁明! / 安倍晋三首相、2020年・東京オリンピック招請ブエノスアイレス演説に関する参議院予算委での答弁 ★ 首相の「アンダーコントロール」演説は、汚染水問題が深刻化する中、こんご2020年に向けて、国際社会の厳しい指弾の的になって行くだろう。なんらかのかたちで責任を追及されるかも知れない。
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2015/04/post-9fbb.html

2015年1月30日の発言についても、以下のブログ主のような批判が日本語では残されている。引用されていたロイターの記事を直接参照すると、2015年1月30日の第189回衆議院予算委員会3号であることが特定できる。


安倍首相「福島第1原発事故、収束という言葉を使う状況にない」 アンダーコントロールは・・・ - 異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!
http://blog.goo.ne.jp/koube-69/e/d9f984f0631e81ee5e64ea4b4c0e0bf5

福島第1原発事故、収束という言葉を使う状況にない=安倍首相 | ロイター
http://jp.reuters.com/article/fukushima-abe-idJPKBN0L30GD20150130


※9 第186回 参議院 予算委員会 平成26年3月3日 第5号|国会会議録検索システム - 18603030014005.pdf
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/186/0014/18603030014005.pdf


議事録は、テキストファイルでもダウンロードできるが、そのテキストファイルの1171行以降
○那谷屋正義君 【...略...】
 さて、ここまでは割と平和に質疑が行われてきたというふうに思いますが、実は先ほど、九・八の総理の演説の話、大変感動させていただいたというふうに申し上げたんですが、一つだけ、やはりこれもマスコミ等で物議を醸し出しましたアンダーコントロールというのがございました。この見解が福島県民にどういうふうに受け止められていると考えていらっしゃいますか。総理大臣、お願いします。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 私がプレゼンテーションにおいてアンダーコントロールというふうに申し上げましたのは、福島第一原発では、貯水タンクからの汚染水漏えいなど個々の事象は発生はしていますが、福島近海での放射性物質の影響は発電所の港湾内の〇・三平方キロメートルに完全にブロックされていると。言わば、事態では、個々の事態は起こっているけれども、それは私は承知をしているし、対応しているよという趣旨のことを言ったわけでございまして、つまり、コントロールできていないということだったら全く何もできていないということになりますが、それは私は事態は掌握をしているし、対応はしているよということを申し上げたつもりであります。

○那谷屋正義君 それはなぜそういうふうに言われたかということであって、そうじゃなくて、それをお聞きになった福島県民がどう受け止められているというふうにお考えか、それについてお聞きをしているところであります。(発言する者あり)

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今、後ろの方からふざけんなよという話がございましたが、先般も私は福島県に参りました際、例えば相馬市の市長からは、水産物が大変な風評被害を受けている中においてよく言っていただいたという話もありました。
 ただ、我々は決して収束したとは言っていないわけでございますが、ただ、まだ汚染水の様々な報道がある中において、報道でコントロールできていないではないかという方々もおられたんだろうと、こう思うわけでございますが、要は、英語のプレゼンテーションの中において、大切なことは、あのときは、まさに日本はちゃんと対応できていないのではないか、事態も全く掌握できていないのではないかという中において、そういう国にはオリンピックを任せることはできないねという雰囲気があったのは事実であります。それをいかに私は、日本の総理大臣としてその雰囲気を払拭することができるかどうかが私のスピーチのポイントでございましたから、そのところにおいて、私は責任者としてそれはしっかりと事実を掌握をして対応していますよという意味においてコントロールしていますよということを申し上げたところでございます。

 おしどりケン&マコ氏は、港湾内の0.3平方kmの海水が日に50%程度外洋の海水と交換されている、と東京電力が回答したと報告している※10。おしどり氏の質問する様子は、岩上安身氏のサイトIWJの東電定例会見のページで確認できる※11。担当者は、会見の場では、調べて回答すると述べている。おしどり氏は、5・6号取水放水ラインによる海水の汲み上げと放水が別立てで行われていることについても指摘している。

※10 汚染水は港湾で希釈してから外洋へ。 | 最新記事 | OSHIDORI Mako&Ken Portal / おしどりポータルサイト
http://oshidori-makoken.com/?p=748

※11 2015/02/19 福島第一原発2号機海水配管トレンチの立坑Aの水位が上昇、滞留水をタービン建屋に移送~東電定例会見 | IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/233816

平成28(2016)年9月6日訂正

 誤りを発見したので修正した。なぜこのような間違いをしでかしたのか、良く分からない。

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