2016年8月20日土曜日

都知事選の主要三候補の得票率が斉一的であるという指摘は前提が怪しい(3・終)

 本記事では、小池氏の得票結果が291万票となったこと自体に対して、大半の「比例説」が疑問を抱いていないことを指摘するとともに、陰謀論を提起する場合には、「なぜ291万票という大量得票が必要となったのか」との問いの方が適切であることを主張する。「比例説」とは、おおむね、「○○氏の地域別の得票率は、前回(今回)の□□候補の得票率に一定の係数を乗じたものだ」とする陰謀説を指す。投票者の特性に二項分布を仮定した場合、つまり、字義通りに「比例説」の主張を最も単純なモデルに落とし込んだ場合、今回の選挙の結果があり得ないくらいに斉一的であるとする「比例説」は、否定される。この点は、前回までの記事(12)で検討した。

 プラスアルファの動的な因子がなければ、比例説は、その主張の鋭さによって、否定されてしまうことになる。なお、前回までの記事において示唆したことを誤解無きように言い換えるが、私は、比例説を修正した陰謀説※aであれば、今回の選挙を整合的に説明できるとも予想している※b。ただし、その疑いを提起し、具体的な追究を進める前に、検討すべきことがいくつか残されている。その検討すべきことを、本記事と次回において、説明するつもりである。

 なお、開票結果は、小池氏291万票、増田氏179万票、鳥越氏135万票、上杉隆氏18万票である。上杉氏を含む4位以下の合計は、49万票である。具体的な数値は、ファイルに用意した(リンク)ので、必要に応じて参照されたい。ファイルには、本稿に引用・掲載した票読みに係る比率も示している。

 「比例説」を信じる者の多くは、「なぜ、小池氏が291万票も獲得できたのか」という、政治関係者や一般人が辿るはずの基本的な思考手順を踏むことを怠っている。陰謀論と見なされることに言及した論者の中での例外は、「れんだいこ」氏で、党派別の得票数を議論している。鳥越氏の得票数についての記載に誤りが見られるものの、些細な誤りである。れんだいこ氏の議論については、党派から見込まれる票数を積み上げても今回の結果に届かない、という点を指摘していることが重要である。喩えとしては不適切かもしれないが、分かりやすさのためにパラフレーズすると、「比例説」は、現状では、株価を(稚拙に)テクニカル分析しただけでおかしいと騒いでいるだけであって、ファンダメンタルズ分析を怠っているのである。



 陰謀論者たる者には、「比例説」を信じるよりも前に、「大量得票に係る理由」を考えることが求められよう。というのも、いわゆる表舞台では、基本に則った票読みが行われてきたようであるが、小池氏の大量得票を正確に予測し公言した人がほとんどいなかったからである。陰謀論者は、例外なく、小池氏が大きく予想を超える票数を得たという結果を、不正選挙の証拠と考えるであろう。しかし、この結果の理由を問うこと(why)は、「比例説」という指摘(how)に先立つ前提条件となる一方で、「比例説」は、この結果が生じた理由の説明には必ずしもならない。「比例説」は、どのように選挙の不正が行われたのかを説明し得るものの、なぜ大量の得票差※cが生じたのかを説明できないからである。「比例説」は、「大量得票」を説明する上で、5W1Hにいう「How」に当たるが、「大量得票に係る理由」は、「Why」に当たる。「大量得票」について、通りの良い説明を求めるためには、物事が生じた順序に応じて、「How」と「Why」をバランス良くみていかなければならない。

 多くの「比例説」論者の指摘通り、集計行為を完全に操作可能であるならば、接戦を演出することは、何ら問題がないどころか、むしろ積極的に狙われたはずである。今回に限れば、接戦は、疑いを逸らすための煙幕として機能したはずである。今回の都知事選については、多くの陰謀論者が鳥越氏の得票数の伸び悩みを指摘しており、疑惑を深める理由となっているからである。半面、接戦が問題視された選挙には、2000年のアメリカ大統領選挙本戦時のフロリダ州を挙げることができるが、同選挙は、投票行動の実際や電子集計制度の有無が大きく異なるために、今回の都知事選の直接の参考にはならない。



 「比例説」と「大量得票の理由」は、切り分け可能な命題であるが、仮に陰謀があったとすれば、「大量得票の理由」は、「表向きの理由」および「真の理由」へと細分することができよう。陰謀など存在しないという世間一般風の理解によるならば、「表向きの理由」と「真の理由」は一致しよう。いずれの場合であっても、「比例説」は、大量得票の理由を説明するものではなく、大量得票という結果を前提として、その結果のみに注目するものである。「比例説」を検討するほどに疑い深いのであれば、「表向きの理由」と「真の理由」についても、注意が払われても良いであろう。

 「真の理由」は、大量得票の結果を説明する「表向きの理由」によって、注意深くその存在を隠されなければならない。選挙の開票結果に係る「真の理由」のうち、最も受容されているものは、今回の都知事選については、孫崎享氏が発した難ツイート(に対する誤読)である(同ツイートに係る私の解釈)。「表向きの理由」は、インターネットが発達して、ほとんどすべての想像力が解き放たれている現時点では、およそあらゆる「真の理由」に対置されて吟味されることになる。この状態下では、「表向きの理由」がナンセンスであるほど、また、開票結果が通常予想されるものから外れるほど、ネット上などで提示されている「真の理由」を受け入れる者が増えることになる。

 「表向きの理由」は、複数の経路によって互いに補強し合う形で提供される必要がある。さもなければ、リテラシーの高い受け手には受容されない。それどころか、作り込みの下手な「表向きの理由」は、かえって懐疑論者に疑いの目を向けられる契機ともなり得る。カバーストーリーは、たとえそれが大衆向けであったとしても、せめて、一つのメディア企業によるもの同士では自己矛盾を来さないようにするという程度に作り込む必要がある。

 特定候補の当選という、分かりやすい目的の下に進められる陰謀でさえ、より具体的で細分化された目標を提示することが必要となりがちな理由は、(1)組織を統率して事に当たることの困難さと、(2)外部の厳しい監視に晒されがちという陰謀の性質、の二点に求めることができよう。愚鈍な、または不実な成員を含みながらも、組織が陰謀上の目的を達成するためには、個々の成員に割り当てる業務を簡明で疑問の余地なく実行できるものとすると同時に、知るべきことを最小限に留めるという策が取られるであろう。この組織運営のあり方は、分割統治の応用であり、危機を前提とする組織における基本であろう。

 加えて、陰謀を企む側に属する任意の二名が、互いに整合性の取れたストーリーを即興で発信するためには、それら二名が容易に連携できるだけの目的を共有しているか、または、彼らが互いにコミュニケーションを取ることを通じて意思統一を図ることができている、という状態を必要とする。前者を実現するためには、任意の二名の少なくとも一名以上が相当の知性と機転を有しているべきであろう。後者は、安倍晋三氏の「寿司友」が食事会を持つことの理由でもある。

 外部に向けて整合的な説明を果たしながら、内部では背徳的・犯罪的な行為を推進するという両面作戦を完璧にやりおおせるためには、黒幕(mastermind)には、通常以上の経営能力が求められることであろう。なお、黒幕とは、不正を実行した者たちの中で、不正の全体を見通している者を指すが、このような人物は、いたとしても、ごくごく一部の人間になろう。不正行為は、もとよりハードルが高い作業であるから、どこかに抜け・落ちがあっても不思議ではない。黒幕が真のリーダーであり、最終目的に向けて邁進する天才であれば、われわれ一般人には刃向かう余地はないであろう。しかし現実には、リチャード・アーミテージ氏について見たように(リンク)、黒幕の実力は、多くの人々を左右する結果を生み出してきた割には、疑問を呈さざるを得ないものである。

 ただし、不正選挙というコンセプトを考察するときに注意すべきことは、仮に、不正選挙が行われたとしても、候補者たちでさえ、不正に荷担していなければ、不正の一端すら知る必要がない、ということである。不正に従事する者たちは、おおよそ、彼ら自身の職階や動機に基づいて配置されているようであるが、その立ち位置に必要十分な予備知識を与えられれば、それ以上のことを知る必要はないことも理解しているようである。現在、ウェブ上などで公知となっている情報を総合すれば、選挙管理委員会に悪意を有する一味を送り込むという予備作業すら、必要のない状況であるかも知れない。たとえば、投票用紙計数装置を製造・販売する企業が複数あったとしても、健全な競争状態が実現されていない状態の下では、選挙管理委員会の入札担当者は、指名競争入札を実施しても、社会全体からみれば、選択肢がないも同然である。彼(女)は、いわば、心理学にいう「フレーム効果」(framing effect)に落とし込まれているのである。この状態下では、彼(女)は、選挙の公正が保てないという理由から人の手による開票へと逆戻りすることを、社会の側が許さないとみなすであろう。黒幕は、念押しのために、自動開票機を導入しない自治体に対して、開票が他県よりも遅いというクレームを赤の他人(で分別のない者)に入れさせるであろう。



 ともあれ、「真の理由」が「表向きの理由」とは異なるものであったとすれば、その「真の理由」は、「表向きの理由」に先立つ、いわば前提条件となるはずである。「表向きの理由」が「真の理由」の親に位置するということは、因果関係上、あり得ないことである。オモテにできない「真の理由」があるからこそ、「表向きの理由」が必要になるのである。また、このとき、「真の理由」が要請する目標は、何らかの手段によって、「表向きの理由」との整合性に留意しつつ、達成が図られることになる。繰り返しになるが、「比例説」は、このときに取られた手段から生じた結果である。

 今回の都知事選に不正があったことを仮定して、その制約条件・因果関係をゆるくまとめると、[真の理由]→[(大量得票に係る)表向きの理由]、[真の理由]→[不正の手段]→[比例するように見える得票率という結果]という2つの系統にまとめられよう。[表向きの理由]と[比例的な様相という結果]という子孫(派生的な条件)同士の関係に、ある程度の整合性を確保することができれば、あとは色々な工夫の余地があることになる。ただし、その整合性は、先述したように、組織として陰謀を進めるという制約のために、あらかじめ、強固で具体的な目的を設定した上で、陰謀論に関与する成員への業務を割り振るといった形で確保されることになろう。

 これまでの議論から、大がかりな不正が都知事選にあったとしても、その仕込みが事前に余裕をもって行われる必要があったということは、自然に推測できることである。不正選挙では、少なくとも、東京都選挙管理委員会における大量のデータ処理に割り込むことが必要となる。同時に、その不正アクセスが容易に発覚しないよう、開票・集計作業に従事する基礎的自治体の側に置かれる機器のうち、不正を行う予定のあるものについては、あらかじめ、監督者を張り付けておく必要があろう。出口調査の情報をテレビなどから得て、何らかの手段でクラッカーや現場監督者などに指令を出す役割の人物も複数必要となろう。



 「なぜ、ここまでの大量得票を必要としたのか」という陰謀論者の問いは、「なぜ、ここまで大量得票できたのか」という世間一般の問いからみて、論理の飛躍を必要とするものであるが、ここまでの説明を経れば、「余裕を持った目標値を、時間的な余裕のある時期までに、陰謀に荷担する人物のうち、知るべき者の間で、共有する必要があったためである」という答えへと、自然に辿り着けるものとなる。何らかの陰謀論を加味しなければ、世間一般の興味から「大量得票を必要とする理由」に至るような疑問は生じないであろう。しかし、陰謀が行われたという仮定を置き、これだけの陰謀を行うにはどのような条件が必要であろうかという基礎的な検討から、つまりはフェルミ推定から出発すれば、不正選挙が一人では到底不足するような時空間上のリソースを必要とするという確定的な事実へと、容易に到達できるのである。

 陰謀とは、複数の人物が社会に知られないように一定の目的を達成すべく進められる活動である。この定義から今回の選挙に不正を見出そうとするならば、得票数や開票結果が目的と連動していると思いつくことは、さほど難しい話ではない。分かりやすい目的がなければ、不正を行う人物たちと言えども、思うように動くことが難しいのである。

 大量得票という結果を、当選という目的に起因すると見立てる推理は、不正選挙を企業犯罪や組織活動と見る理解から派生するものでもある。不正に関与する人物が多くなれば、不正を行うにしても、事前の了解や、目的の共有、人員の管理が必要となる。このとき、大目的である特定候補の当選という目的すら、隠蔽されたとしても、うまく分割統治されている限り、被使用者に物事の全体を掴むことは、なかなか困難であろう。



#ようやく、陰謀論者から見た場合の、大量得票となった理由を説明できる論理の筋道を形成できたと思う。

 今回の都知事選において、不正選挙が行われたという意見を有する者から見た場合、なぜこのような大量得票となったのか、という理由は、事前に目標値を設定する必要があったため、となる。この事前の目標値の必要性は、不正選挙をビジネスと見た場合、まったく不自然なものではなくなる。請負契約書に、業務項目を書き入れるタイミングは、業界によってさまざまであろう。しかし、不正選挙が『シャンティ・フーラ』という宗教色の強い陰謀論を扱うサイトに寄せられたグレーな情報※1のとおり、一票○万円というビジネスであった場合、口頭であれ、事前に「何票分を実現する」という形での契約がなされないことは、まったく考えにくいことである。

 関東の同業者から聞いた話を元にしたとして※2、RAM氏は、得票比率を「小池6:増田4:鳥越2:その他全部の合計1以下」※3と予測している。小池氏の得票数を6とすると、実際の開票結果は、3.7対2.8対1.0である。「小池氏の大勝」を表現するという点において、非常に良い予測である。平成28年7月参議院比例区は、6413952票であるので、この値を利用すると、296万票、197万票、99万票、49万票となる。小池氏の大勝を予測するという観点からすれば、驚くべき正確度である。増田氏と鳥越氏の票読み結果を合算すれば、開票結果と同程度ともなる。RAM氏の話に出てくる同業者は、畏るべき票読み能力を有しているようである。(前稿参照。)

 この正体を自ら明かしてはいない(たしか)兵庫の選挙参謀のRAM氏に対して、衆議院議員で民主党所属の木内孝胤氏のツイートには、名指しこそしないものの、200万票、150万票、110万票、40万票を示唆するものがある※4。6対4.5対3.3対1.2である。関西にいるRAM氏の予測に対して、東京を地盤とする現職の木内氏の予測は、かなり外したものとなっている。木内氏の得た情報は、民主党経由であり、一定の偏りを見込むものである。しかし、東京都を地盤とする与党の国会議員や与党の都議会議員に確執の生じた選挙において、野党の現職が自党候補に対する票読みを大きく外すということは、なかなか考えにくいことであろう。木内氏も偏りがあることをふまえた推測を行ったであろうからである。

 木内氏の予測の合計が500万票であり、実際の投票者数が参議院選挙を上回る6620407票であることは、木内氏が不明票を読まなかったにせよ、説明の難しい票差である。これに対して、「比例説」を論ずるサイトの管理人とコメント投稿者とのやり取り※5は、木内氏の票読みに一定の係数を乗じれば、現実の予測に近い結果が得られると議論し、お互いに納得している。



 ようやく、本稿によって、「比例説」の前提がおかしいという指摘を締めくくることができそうであるため、最後にまとめておきたい。

  1. 「比例説」は、最もシンプルな形の統計モデルで検討すると、投票結果がばらつき過ぎることになる。このため、「比例する」という表現自体が尖り過ぎていて、誤りとなる。
  2. 「比例説」が可能となるような不正は、完全な不正であり過ぎる。今回のような大勝によって怪しまれるような結果とはしないであろう。
  3. 「比例説」は、陰謀を大前提とするが、今回の都知事選挙のような活動における陰謀は、事前の時間的余裕や当日までの人員配置を必須のものとする。ならば、「比例説」を検討する前に、今回の大勝を詳しく検討すべきである。
  4. 「比例説」は、結果から陰謀の存在を推定する主張であり、市場分析における「結果から原因を見る」テクニカル分析のようなものである。「原因から結果を見る」ファンダメンタルズ分析が必要である。「原因」に着目すると、今回の大勝は、不正選挙がビジネスであるという告発と整合的である。




※1 自民党関係者からの超ド級の爆弾情報① 〜1票⚪︎万円で票の差し替え…「ドン」に完全支配された不正選挙〜 - シャンティ・フーラの時事ブログ
https://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=115059

※2 RAM氏のツイート(2016年8月1日 11:25)https://twitter.com/PLAPAPA/status/759937972313559041

※3 同上(2016年7月30日 21:59)
https://twitter.com/PLAPAPA/status/759372740167999489

※4 木内孝胤氏のツイート(2016年7月30日 19:58)
https://twitter.com/takatanekiuchi/status/759342445507190784?lang=ja

※5 すでに決まっている東京都知事「次はユリコね」米国情報関係者 - 逝きし世の面影
http://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/886895f91087227f40423e740521f072

※a 陰謀説を前提とした場合、開票作業における集計ソフトウェアへの不正アクセスまたは集計ソフトウェアの不正によるものと考えるのが適当であろう。ただし、計上作業が完全な管理下にあった訳ではなく、ある程度の状況の見込みが立つまで、基礎的自治体によって異なる程度に制御されていたと考えるべきでもあろう。

※b それでも、この説明は、アブダクションである。この結果を成り立たせることができる説明のひとつであって、ほかにも同様の結果を成り立たせることができる説明は、存在しうる。

※c 得票率の差でも良いし、得票数の比でも良いし、得票率の比でも良い。



平成28(2016)年9月3日追記

都知事選についての論評等を主にツイッターで見ていると、小池氏のトップ当選を予想する声が見つかることは見つかる。以下に紹介する2名のツイート主が291万対179万(増田氏)といった大差による勝利を予想していたか否かは分からない。「常に初陣」氏は、本職が政治関係者ではなさそうな印象を受けるが、「うしくん」氏の政治関係へのツイート数の偏り方は半端ないものがある。その割には、同氏のツイートのうち、最初に示したものに見られるように、事情を知る者から見て背景事情をそれほど把握していない印象を受けるところがアンバランスさを感じさせる。「うしくん」氏の本業は、政治関係に近い何かということであろうと推測する。




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