2016年8月25日木曜日

テロ対策担当者が外国のカウンターパートから信頼されるためには福島第一原発事故の収束にまず注力せねばならない

  • 読売新聞(署名なし), 平成28年8月24日(水)朝刊1面東京14版. 「テロ情報収集 要員倍増/東京五輪控え 国内外80人体制」.
  • 読売新聞(政治部 深谷浩隆), 平成28年8月24日(水)朝刊1面東京14版. 「専門家の育成が急務」.
  • 朝日新聞(赤田康和), 平成28年8月24日(水)夕刊3面東京3版.「『逆植民地』が日本を救う?/社会学者の橋爪大三郎さん提言/途上国に過疎地提供、地域再生「新しい発想を」」.
2016年8月24日(水)の『読売新聞』1面の記事に対して、二点を指摘する。題名で論点に係る内容がおおよそ示されているので、引用は省略する※1。一点は、40人を80人に倍増したというのは、焼け石に水のようなものであって、数に対するセンスがないということである。もう一点は、たとえわが国がこのような組織を整えたからといって、福島第一原発事故を放置しているような政体に使われる組織のままでは、相手国のカウンターパートに内心では馬鹿にされ続けるであろうということである。

 先の二点の指摘のうち、後者が決定的に重要である。所属する成員は、所属先の組織の目的が政体の維持ではなく、主権者たる国民の保護にあることを相手に示す必要があろう。そうしない限り、相手国から真に重要な情報を引き出せることは、期待できないであろう。福島第一原発事故の健康影響は、テロ事件の犠牲者に対して、2桁以上の桁違いになりうる。他方、わが国における「テロの季節」は、福島第一原発事故の影響を隠蔽するためのスピンとして、わが国の政体にも一部の役回りを演じさせる形で、企図されるであろう。物事の主従関係を取り違えたままでは、いくらテロ対策において国際協力が必要であると力んでみても、相手国のカウンターパートには、常に適当にあしらわれることになろう。それに、主従関係を取り違えたままでは、相手国のNテロ対策にとって、わが国は、常に危険視される存在となり続けることになろう。

 福島第一原発事故を実質的に放置して、国際テロ対策のみを推進しようとすることは、あたかも、橋爪大三郎氏が、福島第一原発事故による影響を(朝日新聞の文芸欄では)伏せつつ※2、国民の減少分を「逆植民地」によって取り戻せるかのように議論しているように、主従を転倒させた話である。なお、橋爪氏の話は、すでに中国残留孤児・日系ブラジル人・ペルー人についての政策として、一部(のみ、なし崩し的に)実現したことがあるので、その検証から始めるべきであって、提言が先行する話ではない。橋爪氏の話は、影響力が大きな割に、大事なことを隠して自身の意見を社会に強制するものである上、穴の多いものである。橋爪氏の意見に対しては、以前にも、テロ対策で批判した(リンク)ことがあるので、あえて晒しておく次第である。

※1 たとえば、組織上は外務省に設置されている、といった縦割りの話は、ここでの話に影響しない程度に小さな話である。

※2 記事によると、「『日本は崩壊に向かって走っており、新しい発想が必要』という。」から、わが国が単に人口減によるソフトランディングを迎えることはない、と橋爪氏が考えていることを言外に読み取ることは、不可能ではなかろう。学者の役割は、物事を正確に伝えることにある。



 環境省が8000Bq/kg未満の汚染土を利用可能という方針を決定しようとしているが、この方針は、橋爪氏の提言とは、本来ならば、相容れないものである。汚染物質が埋設されている否かを逐一調査しなければならないような地域に、あるいは、地域に流通する食物を逐一検査する必要が生じるような地域に、国民を「輸出」する国は、よほど(指導者層が)追い詰められており、自国民の長期的な健康を犠牲にして、短期的な利得の獲得を目指す国ということになろう。または、敵対的な少数民族の虐待を目論む外国政権ならば、喜んで敵対的な自国民を移民させ、搾取の対象とするであろう。このような政策が実現される前に、日本国民が劇的な人口減少を迎えることになり、その人口減少が福島第一原発事故によるものという蓋然性が認められることにになれば、諸外国は、さすがにわが国への「棄民」政策を見送ることになるかも知れない。

 このように書き出してみると、橋爪氏は、人口削減を是とする悪の秘密結社のスポークスパーソンであるかのようにも読めてしまう。これは、私としては、一種のオチのつもりである。

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