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2023年12月11日月曜日

メモ:2020年3月13日のアメリカ合衆国・国家緊急事態宣言の和訳

補足・はじめに

全文を和訳したが、今回、下敷きとしてGoogle翻訳を利用してみた。おそらく他者がどこかクローズドである筈の場所で先行し和訳したものを参照した結果が一部に返されている、と認められはした。が、全文に逐一手を入れてはある。本段落で事情を明かさなければ、看過されてしまった作業過程とも思われる。

機械翻訳が全ての文の構文をほぼ正しく訳出していたことには驚かされた。ただ、機械翻訳は、接続詞のandとorを日本語で正しく配列することが苦手なようであるとも見える。これは、私を含めた日本人による典型的な翻訳上の誤りを反映しているものとも認められる。andとorで括られる塊を正しく配列できるようになれば、大抵の大学の学部卒の日本人や私よりも、機械翻訳の方が、速さは当然のこと、正確さも上回るように訳出できるようになってしまうのではなかろうか。

今回の作業は、人工知能の性能向上に改めて驚かされる体験であり、シンギュラリティの語を改めて実感させられた一幕であった。また、ここで敢えて挑戦的に記しておけば、私の今回の作業もまた、シンギュラリティを加速させてしまう方向に機能している。何故に挑戦的であるかといえば、日本語がおかしいぞ、と言いうることが出来るのは、ここ幾らかの間に限定されるであろうからである。我々に文句を付けようのない名文を人工知能が日本語でも産出し始めれば、また英文は第二言語の話者の能力を超えるようになってはいるが、人類に退避する言語は無くなっていくのではないかとも思えた次第である。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクに係る国家緊急事態宣言の布告

発布:2020年3月13日

2019年12月、SARS-CoV-2(「ウイルス」)として知られる新規(新型)コロナウイルスが中華人民共和国湖北省武漢で初めて検出され、コロナウイルス感染症COVID-19のアウトブレイクを引き起こし、現在、世界的に蔓延している。保健福祉長官(HHS)は、2020年1月31日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として、公衆衛生サービス法(42 USC 247d)第319条に基づき、公衆衛生上の緊急事態を宣言した。私は、米国でのウイルスの蔓延を制御するため、新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクが生じた中華人民共和国・イランイスラム共和国・ヨーロッパのシェンゲン協定加盟国を含む特定地域に過去14日以内に物理的に滞在していた外国人の入国を一時停止することを含め、徹底的な措置を講じた。連邦政府は、州および地方自治体と共同し、外国から避難した個人に対する連邦検疫を導入、公衆衛生サービス法(42 USC 247d‑6d)の第319F‑3条に基づく宣言の発布、個人用保護具の取得を加速し研究室での新しい検査機能の導入を合理化するための政策の発表を含め、ウイルスの蔓延を遅らせ影響を受けた人々を治療するための予防的かつ積極的な措置を講じている。2020年3月11日、世界保健機関は、世界中および米国全土の多くの場所で感染率が上昇し続けているため、新型コロナウイルス感染症の流行はパンデミックとして特徴づけられる可能性があると発表した。

わが国コミュニティ内での新型コロナウイルス感染症が蔓延していることにより、わが国の医療システムは負荷を強いられつつある。2020年3月12日の時点で、47州の1,645人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因となるウイルスに感染している。全国の病院や医療施設は、その準備態勢を評価し、収容能力と能力の急増に備えることが義務付けられている。しかし、米国でウイルスを成功裏に封じ込め戦うには、追加の対策が必要である。

今、これゆえ、アメリカ合衆国大統領である私ドナルド・J・トランプは、国家緊急事態法(50 USC 1601以降)の第201条及び第301条、社会保障法(SSA)第1135条及び同改正法(42 USC 1320b-5)に定められた範囲を含むアメリカ合衆国の憲法及び法律により、私に与えられた権限により、米国における新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクが2020年3月1日を開始日とする国家非常事態に相当することをここに認め、宣言する。この宣言に従い、私は次のように指示する。

第1条 緊急事態当局。HHS長官は、SSAの第1135条に基づく権限を行使し、メディケア、メディケイド、及び州の児童健康保険プログラム、及び医療保険の相互運用性と責任に関する法律のプライバシー規則の特定の要件を、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて宣言された健康上の緊急事態期間の間、一時的に免除または変更できる。

第2条 認証と通知。この権限を行使する際、HHS長官は、SSAのセクション1135(d)の要求に応じ、証明書を提出し、議会に事前に書面による通知を行うものとする(42 USC 1320b-5(d))。

第3条 一般規定。(a)この宣言のいかなる内容も、以下を損なう、または影響を与えるものと解釈されないものとする。

(i)法律により行政部門、行政機関、またはその長に与えられる権限。または

(ii)予算、行政、または立法の提案に関する管理予算局の局長の職務。

(b)この宣言は、適用法に従い、予算が利用可能であることを条件として実施されるものとする。

(c)この宣言は、米国・その省庁・機関・団体、またはこれらの役員・従業員・代理人、またはその他の人格に対し、いかなる当事者によっても、法律または衡平法により執行可能な、実質的なまたは手続上のいかなる権利または利益を生み出すことを意図したものではなく、またそうするものではない。

これを証するため、主の御年2020年・アメリカ合衆国独立244年の3月13日、私はここに署名する。

ドナルド・J・トランプ

2021年4月8日木曜日

米国の「Emergency Alert System(EAS;緊急アラートシステム)」について(メモ)

本稿では、「陰謀論」界隈においていわゆる「緊急放送システム」と呼び習わされてきた米国の緊急事態下の放送が「Emergency Alert System(EAS;緊急アラートシステム)」により担われることを説明し、これが「緊急放送システム」と形容されてもあながち間違いではないことを指摘する。EASの概要を説明するため、FCC(連邦通信委員会)によるEAS(緊急アラートシステム)のポータルページ冒頭文章の全訳を、資料に掲載する。

EASは、緊急事態時、大統領の演説を必要とする国民に対して確実に届けるためのシステムであり、この要件に示された行為は、大統領演説を確実に届けることが求められている点を除けば※1、英語における「broadcast(放送)」に他ならない。ゆえに、EASそのものの機能を「緊急放送システム」と見做すことは、全くの誤りとまでは言えない。混乱の源泉は、EASの直前世代の放送システムが「Emergency Broadcast System(EBS;緊急放送システム)」であり、このEBSが現在でもEASの部分として呼び習わされている節が公の資料においても認められることに求められるやも知れない〔訂正:2021年5月9日;とある画像資料でそう呼べるものを見掛けたつもりが、間隔を空けて再度の調査を行ったが、今回は行き当たることがなかったために訂正する。なお、EBSからEASへの移行措置開始は1994年。終了期限は1997年末;官報へのURL

世界各国に滞在・居住する米国民にまで広く放送する必要が認められた場合には、このEASを通じた情報の流れに含まれつつ並行し、『Voice of America(VoA;米国の公共放送局)』が放送を実施するものと理解できる。EASとVoAの組合せにより、全世界の米国民に対して、緊急事態時、放送がごく短い時間の内に実施されるものと期待することは、誤りではない。わが国で全世界に散らばる自国民への情報の流れを一体的に説明する仕組みの名は見当たらぬが、同等以上の機能は、わが国にも存在する。この体制を担保するシステム全体を「全世界緊急放送システム」と形容することもまた、単語の正確性を損なうことにはなるが、全くの誤りとも言えない。

昨今の「緊急放送システム」に係るSNS上の言説の問題点は、詐欺師達※2がEASのシステムの実在を歪めて伝え、あたかも彼らが口にした期日に放送が行われるかのような情報を合わせて伝えることにより、その誤った情報が被害者の選別に利用されているところにある。詐欺師達は、『Freakonomics』で指摘されている通り、偽情報を故意に流通させ、その情報を真に受けた者を重点的に狙うことで、被害者を物色する手間を省いている。EASは実在しており、現在も稼働可能な状態に管理された状態にある。また、EASが近い将来において使用される確率は、理論的には決してゼロではない。が、詐欺師達は、これらのシステムが利用される期日を「予言」することにより、この見え見えの嘘に引っ掛かる者を狙うのである。

詐欺師達の犯行を抑止するためには、抑止側が提供する情報を正確なものとして、この正確さを以て、詐欺師達の言論に対抗するほかないと思われる。決して、こちら側の情報の正確さを担保する作業に抜かりがあってはならない。それこそが詐欺師達の付け入る隙となるためである。煽動工作に馴れきった日本国民と程度の低い言論工作企業の組合せの下であっても、万が一ではあるが、偽情報同士を煽動工作の作法に基づきぶつけ合うことにより、詐欺師達の犯行を効果的に食い止めることはできるかも知れない。当事者がこの諺を意識しているのかも怪しいが、毒を以て毒を制する類の手法とは言えよう。が、その結果が国民一般の情報リテラシーの低下とその結果として安直な事実相対主義が蔓延することになろうことは、想像力に欠ける二流どころのスピンドクターであっても、相応に予想可能な展開ではあるまいか。

また、2021年現在では、モバイル端末向けの緊急放送システムがWEA(Wireless Emergency Alert)として発足、EASと並行して運用されており、また一部の州等(例:ソルトレイクシティ)では、WEAとEASがIPAWSという新システムに包含される形で運用されている。WEAは、構想時にはPLANと仮称され、開発されたインターフェイスは、システム名とともにCMAS(Commercial Mobile Alert System)と呼称されていたが、2013年3月19日に発効したFCC命令により、名称がWEAに改められた〔官報へのURL〕。ただし、CMASという名称は、先に示したようにインターフェイスとして官民協業において認知されてきたためか、2021年5月9日現在においても、米政府サイト(.gov)の多くで使用されており、通用しているようでもある(ゆえに、『ITUジャーナル』記事〔URLの記述は、2017年のものではあるが、現実を正しく記述したものと認められる)。※4

なお、本稿はまだまだ随時更新するつもりであり、その必要性もある。更新記録は別途設ける予定であるが、初読で状況を理解できる程度に留めるつもりでもある。私には、総務省を中心としたわが国の緊急速報システムを説明できるつもりもなければ、それとの対比を行うつもりもない。専門の研究者が社会的な責務として横出しして行うべきものである。


※1 情報を確実に届けることが求められている点では、郵便事業に準えることもできる。もっとも、その程度は、事実上、わが国の緊急速報システムと変わらないと考えて良さそうである。

※2 この場合の英単語は、通常、scammerになるが、わが国では各種の商品や他国の通貨を販売する形の詐欺が認められるから、それらの者については、swindlerと呼ぶこともできよう。

※4 付言しておくと、この融通の効き具合は、緊急対応を行うがゆえに多数の関係者を巻き込む分野において散見される「(ブレーキなどにいう)遊び」を表すものとも認められるほか、生臭い話まで指摘しておけば、省庁の縄張り意識を反映することもある。これらの事情を含むがゆえに、安全という分野を少しでも齧ったことのある者なら、この呼称の差は、むしろ、目くじらを立ててギャーギャー言うものではないことを弁えているはずである。が。


FCC:緊急アラートシステム(EAS)〔原文へのURL

緊急アラートシステム(EAS)は、天候や〔未成年者等の誘拐事件について速報する〕AMBERアラート※3等の重要な緊急事態情報を〔これら緊急事態の〕影響を受けるコミュニティへと〔責任を持ちつつ確実に〕届けるための、国と地方公共団体により共通利用される国家全体にわたる公共警報システムである。EASの参加者は、ラジオ及びテレビ放送事業者・ケーブル〔テレビ〕システム事業者・衛星ラジオ及び衛星テレビプロバイダ・無線映像プロバイダであり、地域のアラート情報をボランティアベースで届けるものであるが、国家緊急事態の最中において公衆に対し大統領の演説を〔確実に〕提供する能力を要求される。

国家緊急事態(FEMA)・FCC〔連邦通信委員会〕・国家海洋大気局の国家気象サービス(NWS)は、EAS及び無線緊急アラート〔WEA〕を維持管理するため協働するが、これらのシステムは、国家的な公共警報システムの二本柱であり、政府の全部門から緊急事態情報を公衆送信可能とするものである。

FEMAは、国家レベルでのEASの起動・点検・実施に責任を持つ。

FCCの役割は、EAS参加者用の技術標準及びシステム稼働中にEAS参加者が従うべき手続を確立し、EAS参加者による作業手順の点検を含む。

アラート〔警報の中身〕は、許可を得た連邦・州・地方の公共団体が作成する。FCC〔自身〕はEASアラートを作成したり発信したりはしない。

EASアラートの大部分は、深刻な気象イベントへの対応のために国家気象サービス〔NWS〕から発信されるものであるが、州・地方・領域・部族の公共団体がアラートを送信する件数は増加している。加えて、NOAA気象ラジオ全災害ネットワークは、公衆に警報を無線送信する連邦政府の資金による唯一の局であり、EASの一部をなす。


資料

  • EAS及びWEAルールの理解を促進するための助言制度の強化をFCCが発出〔原典へのURL
    〔以下、箇条書きはこの文書の要約〕
    • DA19-758, 2019年8月15日付文書, 施行〔令に規定された〕助言(enforcement advisory)
    • 虚偽や詐欺を目的とした、または許可なしの、EAS・WEA・警報信号の使用を禁止。
    • 現実の緊急事態・許可を受けた点検・公共サービス放送(PSA)を除く使用は、連邦規則により禁止。
    • 偽の警報は「アラート疲れ」を起こし、注意を削ぎ、緊急事態が現に生じた場合の邪魔となる。
  • FCC及びFEMAによる緊急アラート〔についての〕ウェブセミナー
  • スライド発表:EASの紹介
  • スライド発表:WEAシステムの紹介
  • 多言語アラート・ワークショップ
  • 緊急アラート・ラウンドテーブル
  • 緊急アラート・ワークショップ
  • 公共安全組織の職員が緊急アラートを発出するには
  • EASアクセシビリティについてのFAQ
  • FEMAの統合公共アラート及び警報システム
  • EASテスト報告システム(ETRS)及びEASハンドブック
  • 認証取得済EAS機器販売企業
  • 各州EAS計画及び州長官
  • EAS規則(47 C.F.R 第11)
  • FEMAベストプラクティス
  • 全国気象サービス(NWS)

※3 "America's Missing: Broadcast Emergency Response"の略語で、ラジオ・テレビ・高速道路情報板・その他の手段を用いて、子供の誘拐可能性を伝達するもの。現在、連邦レベルでは、合衆国司法省・司法局プログラムが主管。1996年、ダラスとフォートワースの放送事業者が地方警察と連携し早期警報システムを発足。AMBERは、発足の契機となった誘拐事件の被害者Amber Hagerman(Arlington, TX)の名を掛けたものでもある。地元の司法執行機関がAMBER警報基準に該当するか判定し、放送事業者及び州交通部門に伝達。通常のラジオ・テレビ番組・連邦交通省の高速道路情報を中断する形で放送。ロト〔表示板〕・デジタル広告板・インターネット広告・インターネットサービスプロバイダ(ISP)・インターネット検索エンジンのほか、携帯電話のような無線機器にも再送される。2020年には、AMBERにより1029人の子供達が保護。抑止効果もあり、AMBERを聞いた犯人が子供を無傷で解放するケースも(と司法省の見解)。合衆国司法省司法局次官(The Assistant Attorney General for the Office of Justice Programs, U.S. Department of Justice)が国のAMBER警報調整官を務め、放送基準を策定・地方間を調整・地方の計画策定を支援する。50州・DC・プエルトリコ・ヴァージン諸島・ネイティブ自治区・北部及び南部国境に配備。〔以上、司法省司法局FAQより要約〕
〔#『警察政策』にも解説論文があった覚えがあるような。〕




2021(令和3)年4月16日追記・訂正

主にAMBERアラートに係る補足を追記し、一部の文言を訂正した。

2021(令和3)年5月9日(日)追記・訂正

WEAとIPAWSについて一部言及した。これは感想であるが、ウィキペディア日本語版・英語版の機械翻訳では、色々と間違えることになろう。ただ、日本語版ウィキペディア全体を通読した場合には、その限りではないかも知れない。典拠による限りの時点では正しい情報が断片的に掲載されている状態を確認することができるためである。

2017年8月31日木曜日

北朝鮮のミサイルの弾道は、やはりハワイを狙いから外している

2017年8月29日の記事において、北朝鮮のミサイルの弾道は、ハワイに直接向けたのではなく、南米に向けたのだと解説したが、その点を文句が出ないように詰めたので、報告する。政府発表(先の記事を参照せよ)と朝日新聞の記事[1]を参考に、平壌市・順安地区の最北端あたりの地点X(北緯39度16時32分85秒、東経125度42時53分39秒、WGS84)から2700kmの円と、襟裳岬(北緯41度55時29分77秒、東経143度14時55分73秒、WGS84)から1180kmの円を描画して、起点をXとする2本の線を引いてみた。2本の線の終点は、目視で二つの円が離れているとPC上で認識できる交点となるように設定した(。起点は、手作業であっても、スナップ機能があるために精度良く設定できるが、終点は、機械的に作成しなければ、精度良く作成できないのである)。

ハワイからの排他的経済水域(EEZ、200海里)に懸かるよう、故意に線を引いたのは、「2ちゃんねる」のスレ[2]の91番による、知ったかぶりの書込みに対する情けである。この書込みに見られる誤りは、デマと呼ばれる程度に深刻である。銃口を味方に向けることよりも深刻さは落ちるかも知れないが、それでも、関係者がこのような書込みをなした場合、少なくとも大目玉ものである。千葉大学だかの学生が、3.11のとき、皇居から福島第一原発の方向にスカイツリーがあり、龍脈でも断ち切ったかのように大騒ぎしていたのであるが、これも、正距方位図法を用いれば、たちどころにデマと分かるレベルの話であった。なお、北朝鮮の朝鮮中央テレビも同じ種類の間違いをやらかしたということは、finalvent氏が指摘している[3]。いずれも、教訓として、後世に語り継ぐべきレベルの知ったかぶりである。


図 平壌・順安地区から2700kmと襟裳岬から1180kmのバッファによるミサイルの航路の推定
図 平壌・順安地区から2700kmと襟裳岬から
1180kmのバッファによるミサイルの航路の推定

[1] 日本・グアムへの攻撃能力を誇示か 北朝鮮ミサイル発射:朝日新聞デジタル
(ソウル=牧野愛博、2017年8月30日00時51分)
http://www.asahi.com/articles/ASK8Y76MRK8YUHBI02K.html

中距離弾道ミサイル「火星(ファソン)12」〔は、...略...〕約2700キロ飛行し、〔...略...〕北朝鮮は日本列島を通過する最短コースを取った可能性がある。さらに北海道・東北地方は首都圏に比べてミサイル防衛能力が十分ではなく、迎撃を避ける狙いがあったとみられる。

[2] 【悲報】ミサイルが落ちた場所、日本とまったく関係がなかったと判明
(2017年08月29日07:36:50~、同日22時15分確認)
http://tomcat.2ch.sc/test/read.cgi/livejupiter/1503959810/

[3] 北朝鮮が最大級の軍事機密を公開した: 極東ブログ
(finalvent、2013年04月01日)
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2013/04/post-ed9c.html

2017年8月29日火曜日

北朝鮮から襟裳岬の東方1000km辺りの先は南米である

すっかり朝寝坊した私は、北朝鮮がミサイルを発射したというマスコミの騒ぎようを全く知らなかったので、心理的な補償のために、またまた適当に地図を作成してみた(。前回は、2017年8月19日)。軌道自体は、適当に作成したが、どのように作業しても、ハワイとミッドウェーとアラスカから200海里以上離れているという結論は変わらないであろう。作業時、アリューシャン列島からも、200海里以上離れていることが明らかに認められたため、アリューシャン列島に係る200海里領域は作成していない。なお、今回も、平壌・金日成広場からの正距方位図法を利用している。

北朝鮮がわが国の領土・領海の上空を超えるようにミサイルを発射したこと自体は、北朝鮮以外の諸国によって、問題視されるだけの余地がある。しかし、その軌道は、アメリカによって非難される謂われはない、と主張するかのような軌道である。


図 北朝鮮から襟裳岬東方1000km地点を望む
図 北朝鮮から襟裳岬東方1000km地点を望む

なお、ロイター日本語版[1]が、三木証券投資情報部投資情報課長の北澤淳氏の談話として、懸念を報じたようには、トランプ大統領[2]は、本件のミサイル発射について、現時点までの間、ツイートしていない。


[1] 北朝鮮がミサイル発射、日本上空通過:識者はこうみる | ロイター
(記名なし、2017年08月29日12:39JST)
http://jp.reuters.com/article/northkorea-japan-finance-idJPKCN1B907D

[2] Donald J. Trump (@realDonaldTrump) | Twitter
https://twitter.com/realDonaldTrump




2017年8月29日22時30分追記

首相官邸のウェブサイト[3]に掲載された政府発表[4]には、襟裳岬東方1180kmという表記が見られるが、「ひろゆき」氏の運営する方の『2ちゃんねる』の板[5]では、誤った地点を参照点とした地図が複数掲載され、誤解が広がりつつあるように認められる。1番の書込みも、91番の書込みも、参照点が誤っている。1番は明らかに誤りであるが、91番も一知半解であり、「襟裳岬の東方」を確認しておらず、ハワイそのものに向けて発射したものと誤解している。本件は、地球儀さえあれば、小学生の夏休みの宿題レベル(自由研究)の問題であり、答えは、「ミッドウェー・ハワイ・アリューシャン列島の間を抜けるように軌道を設定した」である。日本語環境では、ゴミ情報がゴミ情報を生んでいる。なお、91番が下敷きにした地図は、おそらくソウル中心の正距方位図法であるが、これは、私の作業と同じく、さほど問題とならないであろう。

[3] 北朝鮮によるミサイル発射事案について | 首相官邸ホームページ
(2017年08月29日、同日22時15分確認)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/northkorea201708/

[4] 北朝鮮による弾道ミサイル発射事案に係る政府の初動対応について
(官邸対策室、2017年08月29日09時30分、同日22時15分確認)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/northkorea201708/taisakusitujoho2908290930.pdf

[5] 【悲報】ミサイルが落ちた場所、日本とまったく関係がなかったと判明
(2017年08月29日07:36:50~、同日22時15分確認)
http://tomcat.2ch.sc/test/read.cgi/livejupiter/1503959810/




2017年8月30日追記

順安(スンアン)から発射されたこと、29日から30日にかけての夜に安倍晋三氏が首相官邸に詰めていたこと、の両点を知ったので、メモしておく。

2016年8月18日木曜日

高須克弥氏はポケモンGOを遊ぶ場所を選んだ方が良いのではないか

 高須クリニックの高須克弥氏が、昨日(8月17日 19:18)付で次のツイート※1を発信している。ナイジェリア連邦共和国の五輪サッカー代表への寄付※2に関係してのことであると推測される。これに対する私の意見は、題名のとおり、遊ぶ場所を選んだ方が良い、というものである。ポケモンGOは、大使館の外で遊ぼうね!が基本である(リンク)ためである。


※1 高須克弥さんのツイート: "ナイジェリア大使館でポケモン。病みつきになりそうだぜい https://t.co/9o6QGCr1TO"
https://twitter.com/katsuyatakasu/status/765855221851369476

※2 高須院長、ナイジェリア代表に2000万円寄付へ。現地リオでの直接手渡しを決断【リオ五輪サッカー】 | フットボールチャンネル | サッカー情報満載!
http://www.footballchannel.jp/2016/08/17/post169756/


2016年2月15日月曜日

「正月に帰ってきた財務官僚」という2ちゃんねるの書込みへの反響は、核心を衝くものである

Abstract

  An anonymous at 2ch.net says that a bureaucrat working at Ministry of Finance has told in this new year holidays: people dying of radioactive pollution are, from an eugenics perspective, not so useful since they are idiots; we bureaucrats are glad to sacrifice those people to keep the nation alive, or to protect national interests, since it is our duty to do so; this time is an emergency, and we have gathered all assistance from politicians, business people, and show business people.

http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/lifeline/1453374888/966

  The post above sounds as if true, though the Japanese government has done almost nothing against countless incidents of leakage of radioactive plume since the explosion of FDNPP. The reason it got retweeted so fast since the message posted, 2011 Feb. 11th, the National Foundation Day of Japan, is the insight that it indicates, which Japanese government would not help its citizens.  Japan has small chance of terminating the accident by its own, and this incompetence can be a trigger of application of the United Nation Charter Article 53-2 to the nation, if the situation continues and international relations stay stable.


本文 (in Japanese)

わが国の建国記念日以来、次の「2ちゃん原発情報」(@2ch_NPP_info)氏のツイートが流通を始めているようである。1日で300ツイート以上リツイートされ、伸びは止まらぬ勢いのようである。おそらく原典であろうスレッド(以下、同スレ)の存在を『2ちゃんねる』本家において確認した※1が、それ以降、随分な勢いで転載されたり※2しているので、「2ちゃん原発情報」氏がどのスレを引用したかまでは確認していない。ほかの人たちにもボチボチ転載され始めている※3ので、この書込みの内容が事実でなければ、一種の流言であるということにはなるのであろう。実際、これに類する真偽不明のツイートには、ある程度の前例が認められる※a

 しかし、この真偽不明の2ちゃんねるの書込みをいったん受け入れて、「件の財務官僚の考える国体・国益・国難とは、いったい何を意味するのか」という考察を巡らせてみると、現在の日本社会の混乱状況とその原因を見通せるような気になってくる。それだけの含蓄のある気配が察せられるからこそ、この書込みは、多くの反響を即座に得たのであろう。実際、この書込みは、事実か創作かの別によらず、思考の幅を広げる有用性を持つ。財務官僚氏の言動は、ツッコミどころ満載なのである。

 本稿では、この書込みにある財務官僚の主張が、なぜ的を外したものであるのかについて、私自身の考察を加えてみたい。ここでの財務官僚の主張に対する批判として考えられるものの多くは、すでに同スレの住人により提出されているので、同スレか、文末の要点を参照されたい。私の加える指摘は、次のとおりである。日本人の1%は、99%の国民を踏み台にしても、結局のところ、日本国の運命と共依存的な存在である。この官僚は、99%の国民と国土こそが「国体」を支える主要素であり、他国に逃げても没落を避けられないことを、理解できていないのである。

 まず、件の財務官僚の考える「国体」の中身が「彼(女)の身の周りの1%」に過ぎないことを指摘しよう。彼(女)の発言からは、「国体」の中身が「政界・財界・芸能界」という「国体」のごく一部の構成要素を指すに過ぎないことが良く分かる。彼(女)の「国体」とは、同スレの997氏や998氏の指摘のとおり、通常の日本人が思い描く国体※bではなく、霞が関官僚ならびにその手足となる第二次安倍晋三内閣という「官」「政」から構成される「政体」である。「国益」とは、現在の「政体」から当の官僚自身に生じることが見込まれる「私益」であり、その「私益」を主張する上で十分に確保しておく必要のある「省益」を指すのであろう。件の官僚にとって、「国益」は、決して「日本国」を構成する「領土」や「99%の国民」に帰属する利益を指すものではないのである。

 直接の知人で利益を提供する財界(の一部)や報道関係者(の一部)くらいまでは、「私益」や「省益」を生じさせるために必要な存在であるために、件の官僚にとっては「国体」に含まれうる存在であるかも知れないが、その境界線は、せいぜいがカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の言う「鉄の四角形(政官財報)」をかろうじて範囲に収めるものである。植草一秀氏の言う「悪徳ペンタゴン(政官財報米)」や本多勝一氏が原発ムラについて言う「鉄の五角形(政官財報学)」を意味するものではないであろう。ここに、ポイントがあるとすれば、件の官僚の言う「国体」は、決して、皇室を含めるものではない、という点である。この「政体」グループに所属すると意識する人物の共通点は、事実を軽視し、情報操作によって国民全体を誘導可能であると信じている点である。

 彼(女)の「国体」及び「国益」を以上のように解釈すると、「国難」の正体は、件の官僚のいう「国体」及び「国益」に決定的な影響を与えるイベントであることになる。「国民全体」に多大な影響を与えている現在進行中の健康被害は、「国難」ではないのである。ここまでの指摘は、2ちゃんねるへの書込主の理解が的確であるという仮定の上に※c、書込みの内容に自然な仮定を置いた上で、引き継いだものであるために、それほど論駁の余地はない。ただ、当の財務官僚が現実に「国難」を明確に定義したり、その帰結を見通していたりするかどうかまでは、他人には関知できないことである。ここで示された「財務官僚」の理解は、霞ヶ関官僚すべてに該当するとまでは言えないであろうが、自分に明白な脅威が差し迫らない限りは、自己保身を第一とし、国益を保持する作業を怠る、典型的な官僚像を描き出していると言えよう。

 99%の国民の利益を含む国益を毀損してまで自身の利益を確保しようとすることは、日本国における選良を自認するならば、やめておいた方が良い。第一に、外国籍を取得しなければ、日本国において選良として生きてきたという実績があったとしても、彼(女)は、外国生活において自身の財産と安全を維持することは叶わないであろうし、第二に、外国籍を取得したとしても、その子孫は、売国奴の子孫というレッテルを貼られてマイナスの立場から生きることを迫られるためである。第二点目は、成るようにしかならないであろうし、どの外国で生きるのか、その国における卑怯者に対する理解がいかなるものであるのか、という二点が問われることになるので、予想が多岐にわたることになる。ここでは、第一点目に絞って考察を進めるが、その準備は、すでに、当の日本人や、利に聡い外国人によって、着々と進められつつある。

 社会に対する発信力があり、反原発派とみなされる人物が、世界に向けて、福島第一原発事故に対する日本人全体の責任を訴えることは、必要ではある。その事例として、村上春樹氏のスペインにおける演説※4、※5や、小出裕章氏の国内における多くの講演※6、※7,※8を挙げることができる。両氏の主張は、国民個人の有する力に対する理解こそ異なるものであるが、日本の原子力ムラに対する不断のチェックを怠った個々の責任を自覚すべきであると日本国民全員に説くものである点においては、共通している。また、作家や原子力の専門家が自ら正しいと考えることを述べることは、彼らの正当な仕事である。これらの主張に対しては、即座に多くの反発が寄せられたが、この行動の中止を働きかけることは、かえって色々な不都合を生じさせることになるであろう。

注:蛍光ペンの部分は、2016年3月23日に文意が通るように修正した。

 しかし、村上春樹氏や小出裕章氏の指摘は、日本国民と日本国政府との関係を動かし、事故直後のような原子力行政に対する国民の厳しい対応反応を再現できるものにはならないであろう。その理由の一つは、原子力ムラに代表されるような利益共同体の力が国民の良識を上回る程度に力を持ってしまった後であることに求められる。運営が回り始めるまでの間であればともかく、数十万人を直接雇用でき、数兆円以上の産業となった原子力ムラは、甘利明氏の取得したとされる賄賂を考慮すれば、政治家一人あたりにそれ以上のキックバックを提供しうる、類例のない規模に達している。この状態に加え、金銭上の利益共同体を基本とする投票行動の原理は、容易に崩せるものではないであろう。加えて、デュープロセスを通じて、開票時に不正な方法が存在し得る余地を注意深く除外するだけの知恵が市民の利益を代表する側で活用されてこなかったことは、件の官僚のような優生学的態度からすると、お人好しで軽蔑に値する、となるのであろう。

注:蛍光ペンの部分は、2016年8月25日に文意が通るように修正した。

 それどころか、日本人全員に原発事故の自覚を促す議論に対しては、本来、責任を取るべき主体に責任を帰することができなくなるという反論が、反原発派の中からも提起されている※9。原発を推進して利益を享受してきた電力企業や政治家こそ、責任を取るべきであるという反論は、尤に聞こえるものである。しかし現実には、五年を迎えようとする時期に、わずかに、避難の遅れた44名の入院患者に対する過失致死障害罪について、強制起訴による裁判が始まろうとするばかりである。この事件は、事故から生じることが見込まれる健康被害の規模からいえば、影響の100万分の1を問うものに過ぎない。日本国内では、このように検察が機能しない状態は、まったくの平常運転である。三権のうちの司法にも期待できないために、世界に正義を訴えるという次善の手段が執られているのであるが、この戦術が、かえって味方からも非難を浴びるという構図を生じさせているのである。この分裂は、もちろん、原子力ムラにとって利用すべき機会でもある。

 福島第一原発事故に対する司法の機能不全と、リベラルな論者が代替策として世界に正義を訴えるという戦術との組合せは、予想外の結末をもたらす可能性もある。日本国の主権が事故の終息に直接乗り出すことなく、東電へと対応を丸投げし、東電は、無策のまま下請け・孫請けへと弥縫策を丸投げするという状態は、五年間継続している。現時点では、事故の長期的な健康影響が広範囲に顕在化したとは言えないが、今冬から二年後にかけて、首都圏、関東平野から岩手県南部に至るまでの広範な地域において、多くの人々が呼吸器に何らかの障害を抱えることになることになるであろう。他方、世界各国の知性ある人々は、現在の状態から、近い将来を的確に予測している。日本の一般庶民からみて五年間も継続した、現在のマンネリズムは、一体どのような構造から生じているのであろうか。

 今後の予想がある程度付くにもかかわらず、長期的には影響を受けるはずの北半球・太平洋の各国が静観しているかに見えるのには、二つの理由がある。理由の一つは、アメリカ合衆国にとって、わが国が占領政策の随一の成功例であるためである。もう一つの理由は、アメリカ合衆国をも搾取の対象と見なす一部利益集団、いわゆる戦争屋(以前の記事)が、日本国における主要な権力構造への影響力を保持し続けているという状態を通じて、未だに、アメリカ合衆国の軍隊を動かしうる力を完全に失っていないことによる。後者の理由は、前者の理由と強固な相補的な関係を構成する。

 わが国は、傍目には、アメリカ合衆国の占領政策が顕著な成功を収めた事例である。アメリカは、わが国においてのみならず、世界中で長らく顕著な影響力を維持してきた。しかし、子ブッシュ政権によるイラクへの侵攻は、アメリカの国際的な評判を決定的に毀損した。現在では、9.11を理由とするアフガニスタン侵攻に対しても、国内からも疑問を呈されている。こうした中、第二次世界大戦後のわが国への占領政策は、占領後のわが国の経済的成功を導いた理由であるとされ、アフガニスタン及びイラクに対するアメリカの占領政策を正当化する理由とされてきた。私自身は、日本の再武装を抑制したことが昭和後期における日本の経済的成功に至る理由の一つであると考えているために、占領政策を正当化する言説にも理由がないわけではないと考える。

 アメリカ合衆国においても、同国の国益ではなく私益を優先する一部の権力集団が存在する。今回は、この権力集団を戦争屋と呼んでもよかろう。彼ら戦争屋は、利益関係で結託し、学閥や閨閥で強化されているという点において、わが国における権力集団と同様の構造を有する。わが国の官僚集団の少なくとも一部は、戦争屋の指示を忖度することを通じて※e、戦争屋と官僚自身とを利益共同体とみなす行動規範を内面化してきた。

 戦後の官僚集団は、売国を厭わない勢力を含みながらも、朝鮮戦争やベトナム戦争を通じて、わが国の企業系列を中心とした産業社会を育成・誘導することに成功してきた。この過程を通じて、戦前の財閥は、「系列」として、産業上の国際的な競争力を有するまで回復した。原子力ムラは、電力事業という国策産業を打ち出の小槌として、主要財閥の重工業企業や建設企業がその分配に与るという構図を通じて、形成された。「系列」は、金融業なら旧大蔵省、重工業企業なら旧通産省、建設企業なら旧建設省や旧運輸省といった監督官庁の行政指導の下、それぞれが護送船団形式と呼ばれる業務分担・利益分配の構造を形成した。

 これら護送船団形式を監督する官僚集団の大勢が、いつ、どのように、変質し、多数の場面において、アメリカを私する一部の権力集団の意向を忖度するだけの集団へと成り下がったのか、という問題の追究は、一大研究となるので、これ以上取り扱うことはしない。ただ、一つ目のターニングポイントは、昭和60(1985)年のプラザ合意であり、二つ目のターニングポイントは、冷戦終了後のアメリカによる対日政策の変化にあると思われる。いずれにしても、慎重な判断を経た上での話ではなく、惰性に基づく対米追従は、今世紀以降のわが国の官僚機構の習い性となっている※f

 惰性に基づく対米追従は、米国の全体を益するのではなく、米国の1%の一部である戦争屋を利している。わが国の原子力発電所の再稼働は、その好例である。わが国の原子力ムラも、東京電力からの分を除けば、このまま現状が推移すれば、再稼働によって、事故以前の水準の利益を得ることが見込まれる。このため、日本語コミュニティでは、国内の原子力ムラが潤うことに多くの注目が集まりがちであるが、再稼働の理由は、国内の事情によるものだけではない。わが国の原子力発電所は、核兵器級の核物質を維持する国際的なサイクルの一部を構成することが指摘されている(リンク)。この説明は、わが国の原発の再稼働が電力事業の効率性や安全性とは関係なく進められる理由を説明するものとして、説得力を有するものである。北朝鮮の「水爆」実験及び「ロケット」=「ミサイル」実験の前に再稼働が進められたことも、北朝鮮の軍事的脅威を増大させる結果を引き起こしたことになる。日本と北朝鮮のいずれの動きも、結果から見れば、軍事的緊張を煽る戦争屋の利益に貢献している。日本側の官僚主導の政策は、結局、アメリカの国外から、アメリカ合衆国を主な牙城としてきた戦争屋勢力に協力してきたものと見て良い訳である※g

 原発の再稼働が国際的な背景を理由に進められたにせよ、福島第一原発事故への対応自体は、現在のところ、国内問題である。しかしながら、福島第一原発事故の影響は、2011年末には、アメリカ西海岸へと波及している。漏出する放射性物質は、2016年の現時点においても、わが国だけでなく、偏西風に乗り、アメリカ中西部にまで到達している。事故への対処が進まない状態は、先進国としての要件を満たしていないと、諸外国に密かに侮られる要因となっている。諸外国は、日本国政府に対して、それとなく警告や忠告を発してきた。しかし、民主党の菅・野田両政権にせよ、安倍第二次政権にせよ、日本国政府は、現在に至るまで、結果的に、それらの忠告やシグナルを無視してきたことになる。平成28年2月13日現在、この結果に対する責めを日本国民全体に負わせることは、そろそろ機が熟してきてはいるものの、諸外国にとっては、依然として、時期尚早である。日本社会、特に首都圏が明らかに機能不全を迎えるときこそが、日本国民に対する「政体」の裏切りを、わが国のマスコミを通じて非難する好機である。その機会が到来する時期を、諸外国は、ほかの国の動向もふまえながら、見計らっているのである。

 北朝鮮の「水爆」実験と「ロケット」=「ミサイル」実験は、他国が日本国を非難すると同時に日本の「国体」から富を収奪するための準備の一つではあるが、これらの実験は、いずれも、北朝鮮単独の動きとして見た場合には、わが国を揺るがす事態にはならない※h。なぜなら、日本国民が(現時点の)他国民から決定的に富を収奪される事態が生じる条件には、複数が必要とされており、そのうちの最も重要な要件である首都圏の機能不全は、現在のところ、国内問題に留まるためである。他方、日本国政府や日本国民にとって、北朝鮮の対応を変更できるだけの現実的な手段は、制裁を緩めるという方向以外に存在しない。そして、制裁を緩めるという選択肢は、現在のわが国では、取ること自体を考えることが売国と見なされかねないことである。今後の数年の間に、北朝鮮の「ミサイル」=「ロケット」がわが国の領土の主要な部分に着弾するという事態の生じる可能性は、ゼロではなく、その事件が何らかのスイッチとして機能することも否定はできない。しかし、その後の影響が大きなものになることが確実であるだけに、ある種の合理性を感じさせる北朝鮮の独裁体制が、この種の愚策を何の理由もなく実行することは、考えにくいことである。それよりも、重要免震棟の建設もせずに再稼働が申請された原子力発電所のいずれかを、直下型の地震が襲うというシナリオの方が、よほど現実味がある。

 他方、福島第一原発事故は、国内問題に留まる間であれば、国内問題として処理や操作が可能な対象である。国を当面の間維持するためには、福島第一原発事故の解決に全力を用いるべく、政策を切り替えることが一番の近道であった。それにもかかわらず、事故後の日本国政府は、民主党にせよ、自由民主党にせよ、事故の解決よりも、事故の影響の隠蔽に力を注いできた。この影響は、放射性物質のプルーム(粉塵、フォールアウト)が降り注いだ地域だけでなく、放射性物質を付着させた瓦礫を焼却した地域など、より広範な地域において立ち現れることになるであろう。放射性物質を封じ込めるのではなく、国内に拡散させた結果、わが国は、国内の対照群だけで疫学的な検討を実施することが極めて困難な状況を作り上げてしまっている。どのような事件や事象がきっかけとなるにせよ、わが国における福島第一原発事故という危機※hは、わが国の政府が時間を浪費したために、今後、影響が誰にでも分かる程度に顕在化したときには、手遅れであることも同時に判明するのである。

 今年から数年後までの間に、誰の目にも分かる程に福島第一原発事故の健康影響が顕在化したとき、現在の双方向情報化社会において、世界の中でもブログやSNSで発信することを好む日本人※iは、一斉に、反省の弁を口にすることになるのであろう。この兆候は、すでに認められるものである。また、そのとき、村上春樹氏や小出裕章氏の言が再度引用され、われわれは反省の好機を失ったという主張が繰り返されることになろう。これらの反省の弁は、日本国に対してそのときに多大な影響力を有する国が利用することになるのであろう。いわば、先の大戦後、日本人は、総反省することになったわけであるが、その繰返しである。これが、先に言及した「予想外の結末」の第一段階である。第二段階こそ、私の考察したかった内容であるので、筆を進めることにしよう。

 ところで、選良である財務官僚が現在の時点で暴言を吐くのは、彼(女)がそうしたとしても、福島第一原発事故の後処理に対する不作為について、責任を問われることがあるまいし、従来通りに天下りできるものと高をくくっていることに、主な理由が存在すると思われる。そのような油断が、高級官僚の生命や健康、財産の方が一般の国民のものに比べて優先される価値があるかのような彼(女)の発言として表れたのであろう。しかし、この考えは、想像力の欠如からくる油断を表すものであり、願望に過ぎない。件の財務官僚氏の考え方の卑怯さは、韓国のフェリー船のセウォル号の沈没事件と関連付けて考察してみると、明瞭に描き出すことができる。この対比は、陰謀論で有名な掲示板『阿修羅』の有名人である「知る大切さ」氏の書込みを参照したものである※10。2014年4月16日のこの沈没事件において、船長のイ・ジュンソク氏は、乗客を装い先に退避した。わが国を含む諸外国からの船長に対する非難は、当然の帰結である。船長の姿勢が世界中で批判されたのは、セウォル号の沈没に際して救命ボートに乗り移ろうとした下着姿の船長という、乗客との関係が実体化されやすい「映像」が存在したためである。他方、乗客である遭難者たちとセウォル号(の運航企業や船長)との間に締結された、当日の運航便という契約関係を考えてみる。すると、乗客にとっては、一度限りの契約関係が重大な結果を生んだわけであるが、船長らにとっては、それまでに多数締結してきた契約のうちの一つに過ぎないわけである。船長にしてみれば、マンネリ気味の日常業務の中、突然生じた危機の責任を取ることは、いざというときに、人柱としての機能を期待されていると言えども、覚悟を決めることができなかったということになるのであろう。しかし、裁判の経過はともかく、通常人の感覚からすれば、このような怯懦を理由に、イ氏を許すということはしないであろう。イ氏と企業が生じさせた結果が重大であることは、誰の目にも明白であるためである。

 ところが、防衛省職員を除くと、福島第一原発事故の責任を取ることになるであろう国家公務員の人数と健康影響を受けうる人数との比は、セウォル号の船長1名に対する「死者295人、行方不明者9人、捜索作業員の死者8人(Wikipediaの孫引き)」という比に匹敵する人数となり得るのである。国家公務員は大体37万人であるが、福島第一原発事故において外部被曝により影響を受けうると見なされるγ線空間線量率地図が作成された地域には、大ざっぱに4000万人が居住する。現在、首都圏への若年層の社会移動は、なお流入傾向にあるものの、これを勘案せず、毎年30万人が首都圏や東日本の太平洋沿岸部で出生すると仮定すれば、5000万人程度が福島第一原発事故によって、影響を被るものと予想できる。この人数は、セシウム137やストロンチウム90の半減期を前提としたものであるので、後世代への影響がここでの予測以上に達する可能性も十分に存在する。また、内部被曝を促進する「食べて応援」も考えると、影響を受ける人数は、最大で3倍程度、つまり全国民と同程度まで達しうる。よって、現在の国家公務員のマンネリズムと政治家の無策は、セウォル号船長とおおむね同じ人数比での責任を彼らに生じさせるのである。

 繰り返しになるが、現代の国際社会においては、国内の問題は、国が主権をもって対応することになっている。よって、問題が国内に留まる限り、この日本国政府の拙劣な対応は、放置されることになる。しかし、日本国が、国内における多病と多死を、国民と諸外国の目から隠しおおせなくなった頃には、影響を受けた外国においても、原発事故による後発性の健康障害が明らかになり始めるであろう。そのとき、日本国は、各国からも福島第一原発への対応を非難され、各国で生じた健康被害の賠償を求められることになる。そのとき、日本国として有効な手を打つことができなければ、その責任は、国際的な組織や国家連合による、内政干渉という形で償われることになるであろう。この事態は、独裁国家と同様に、また隣国における最大級の海難事故と同程度の責任を国家公務員が負うことが予測されているにもかかわらず、わが国が人命を軽視してきたことの当然の帰結ではある。

 福島第一原発事故に対して、諸外国がその国民に生じた健康被害をもって日本国への内政干渉の口実とするとき、原発の再稼働は、再武装の意志ありとする諸外国の理由付けに用いられかねない動きとなる。兵器級の核物質の生成のネットワークに組み込まれているという事情があるためである。原発の再稼働をもって再武装の意志とみなすことは、日本国民の大多数にとって、無理筋も良いところであるが、ここで私が示した理屈が屁理屈であるかのようにみなされるのは、わが国がアメリカの占領政策の随一の成功例であるがゆえ、親ブッシュ・子ブッシュ政権時に中東諸国に引き起こした混乱と占領政策の正当性を、アメリカが国際社会に対して訴える際に役立つうちのことである。

 中東諸国の混乱が収められたとき、アメリカが従来主張してきた形の民主化に対しては、「日本や韓国という極東諸国であったからこそ成功したのではないか」という、疑問が付されることになる。中東諸国には、現在、大きなパワーシフトが生じている。変化の兆候は、一つには、石油取引の元決済に表れている。もう一つの兆候は、原油価格の安値である。原油価格の抑制は、ロシアにも影響を与えつつも、シェールガス産業により深刻な打撃を与えている。シリア情勢の行く末は、中東地域におけるサウジアラビアやイランの地位に、不可逆の変化をもたらす可能性が高い。

 中東諸国の混乱が収められたとき、日本の国情に何もなければ、アメリカの占領政策の成功は、単に「極東アジア特殊論」という話で終わることになり、わが国は、依然としてアメリカを第一とする政策を継続することになるであろう。この場合は、空母ロナルド・レーガン乗組員のトモダチ作戦における被曝被害への損害賠償請求裁判の行方が、日本国に対する米国民の輿論を決定付けるであろう。この裁判の行方は、国際情勢がある程度現状に即して進んだ場合、わが国に最も影響を与えうる裁判となるはずである。にもかかわらず、日本語マスコミは、この問題を最大のニュースとして取り上げるところがないように見える。

 しかし、日本の国情に何も変化がないということはあり得ない。東日本で出生数が大きく落ち込もうとも、しばらくの間であれば、かつ、死者数が徐々に増加するに留まり、病人が捌ききれる程度に増加する間であれば、わが国は、何とか持ちこたえているように見せかけることができるであろう。この「現状維持」の状態は、件の財務官僚の言う「国益」の具体的イメージでもあろう。しかし、日本国内でも病人が激増しているというニュースが海外で報道されたり、(統計ではなく)個人の生活において、知人に多数の死者が認められるようになったとき、特に労働年齢人口から死者が多発するようになったとき、日本国の1%は、いかに否定しようとも、また統計を操作しようとも、これらの現象を隠しおおせなくなるであろう※k。もちろん、そうなったときに、天下りなどという制度が維持できる保証など、どこにもない。

 国際情勢に決定的な変化の見られない場合、今年のアメリカ大統領選挙は、アメリカがわが国に福島第一原発事故の収束を命令する契機として作用するであろう。今年中に選出されるアメリカの新大統領は、現在までの投票行動を見るにつけ、いずれの政党の候補者であるにせよ、また、従来型のワシントンの政治家が選出されるにせよ、99%の国民の意向を踏まえた舵取りを迫られることになろう。この見立てが正しいならば、「日本人が米国人を被曝させている」という意見が既に存在している以上※j、この意見が「旧敵国人が無為を装い米国人をダーティボムで攻撃している」という解釈へと変質する可能性は、見込まれる事態である。この推移は、あり得るシナリオのうち、覚悟しておくべきものの一つである。このシナリオが現実のものとなったとき、死文化したと専門家にはみなされている、国連憲章の敵国条項が適用されることになるであろう。

 無能力ゆえに国民と諸外国を放射性物質の危険に晒す日本国政府は、悪役の存在を欲する外国政府にとって、またとない悪のイメージとなる。そのイメージを具現化するためには、日本国民の健康被害についての具体的な「絵」が必要である。もちろん、このイメージだけでは、日本国から利益を搾取することはできない。このとき、わが国が、すでに多くの利益を海外の戦争屋に提供し続けてきたという事実が、外国の別の勢力にとって、利用価値を帯びるものとなる。ここ2週間の日経平均株価の大下げは、戦争屋への利益供与の最終段階と見ることのできるものでもある。これらの事実を組み合わせれば、日本国政府の売国的勢力と戦争屋がタッグを組んで、悪巧みをしてきており、日本国民がその犠牲になったという図柄が出来上がるのである。

 後は、一国民にとっては、なるようにしかならないのであるが、要は、時が至れば、多くの現象の組合せが日本国政府の無為の責任を問うためにあえて放置されていたということが明確な輪郭を伴い、誰にも見えるようになるのである。わが国が、この状態から脱出するためには、今までの無作為を反省し、その対応を世界に宣言することから始めなければならないであろう。福島第一原発事故への対応について、公に誤りを認めた上で、国際的な救援を真摯に求めたときに、初めて、守勢からの一手を打つことができたことになるのである。もちろん、このような変革は、現政権に期待すべくもないことではある。蛇足になるが、日本国政府のような、非競争的な環境に置かれた日本文化の悪しき点は、マンネリズムであり、前例踏襲ゆえに改善という概念を有さないことである。このようなとき、前例のない、未曾有の大事故に対して、財務官僚氏が国民切り捨てを平然と言ってのけることは、公害問題にせよ、敗戦にせよ、十分に予測されることであった。

 日本国民は、国際社会またはアメリカの介入の後、従来の生活に大きな変更を余儀なくされるであろう。そのとき、競争力の源泉たるノウハウを有する製造業は、ノウハウを有する人材とともに、海外に雄飛することになるかもしれない。または、西日本や北海道など、比較的汚染の少ない地域に集住することになるかも知れない。アメリカの介入後、日本人が日本に多数残るということになれば、件の財務官僚も、吸血者としての余生を全うできるかも知れない。しかし、物事はより深刻に推移し、おそらく、多くの企業が従業員に多くの病人を抱えることになり、日本の全産業が重大な打撃を受けることになろう。金の卵を産まなくなった鵞鳥を、飼主がいかに扱うのかは、当の飼主に聞いてみなければ分からない。しかし、新しい飼主が、戦争屋を排除したアメリカであるならば、以前から人権外交を掲げ、健康被害を生じた自国民を抱え、懲罰的制裁金を司法制度に有しているアメリカであるならば、責任者である官僚組織全体を連座させて落とし前を付けさせない訳がないことは、自明過ぎる話である。

 官僚組織にとっての悲劇的な結末を避けるためには、1%の何%かが事故直後にそうしたように、海外に逃亡することが唯一の選択肢になる。その際は、後世の日本人による資産返還請求を避けるために、外国籍を取得する必要が認められよう。そうしたとき、一世代前以上に外国に移住した日系の当国人は、元高級官僚の売国奴とは一緒にはされたくないであろうから、「元高級官僚の売国奴」に対し、相続税の強化なり国籍取得要件なりを事後立法であっても政府に要求するであろう。無論のこと、金持ちの日本人を無償で優遇する理由はないので、当国の政府は、「元高級官僚の売国奴」からは、気兼ねなく、事後法によって、あるいは日本国政府から売国奴当人への賠償請求を通じて、可能な限りの金銭を徴収するであろう。日本国に残された国民が売国奴当人からの賠償金を取得することは、まったく期待できないが、その代わり、売国奴当人に現地における健康で文化的な最低限度の生活を保障しつつ、それを上回る資産を当国の政府に没収させるという取引は、必ずや成功するであろう。その国が拝金主義的ならば、なおさら、この目論見が成功する確率は高まるであろう。このような取引を成立させる知恵こそは、「優生学的」に強者である証なのである。

 ここまで読み進める者がいるとは思えないが、(いたとすれば、大変申し訳なく思う。)ここまでの説明によって、件の財務官僚氏がダークサイドに堕ち、手足をもがれる前に打てる手は、かなり限定されていることが明白である。第一に、福島第一原発事故の影響を、現状可能な限り、完全に封じ込めることである。第二に、従来の不作為が不作為ではないと主張できるだけのアリバイを作ることである。ここに至り、ようやく、村上春樹氏や小出裕章氏の指摘が巻き起こす第二段階の予想外の結末を示すことができる。

 件の財務官僚がいかに自身の責任を否定しようとも、海外の識者は、ノーベル文学賞候補の常連と化している村上春樹氏の言葉に耳を傾けるであろう。中東情勢の変化も、その傾向に拍車をかけることになるであろう。小出裕章氏による原子力産業についての証言もまた、海外識者の包囲網を強化するであろう。産官学財報が一体となって原子力産業を推進してきたという理解が海外で共有されたとき、件の財務官僚に言い訳は許されなくなる。現在の時点で財務官僚を務めていては、すでに責任を免れることが叶わないのであるが、先に述べたように、逃げてもどん詰まりであることにも変わりがない。

 海外の識者、司法関係者が「日本国民全員の、応分の責任」に共感したとき、日本国民の間で、責任の押し付け合いが始まるであろう。そうしたとき、一体、日本国民のどれだけが、「政治家の指揮命令に唯々諾々と従う官僚」という説明に納得するであろうか。わが国の官僚組織は、良くも悪くも政治家のように振る舞ってきたのである。官僚の分を過ぎた振舞いは、マックス・ヴェーバー氏が政治家について喝破したように、結果責任という形をとって跳ね返ることになるであろう。ましてや、天下りなぞしていた日には、到底、責任を逃れることなど叶わないであろう。それに何より、すでにウェブで多く指摘されたように、官僚であるからといって健康被害を受けない謂われは、どこにもないのである。



※1 著名人の病気や体調不良・訃報報告★63©2ch.net
http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/lifeline/1453374888/966
#966番の書込みである。一応、系統的な方法により確認済みである。
批判は、おおむね次のようにまとめられる。
  • (#放射能は)肩書きで相手を選ばない(967氏)
  • 放射能に強いやつ以外はいらんってか(968氏)
  • 自分が倒れる直前まで俺は大丈夫と根拠なく信じている(971氏)
  • 生物 地学で東大入学の場合 放射能とか(#分からない)(972氏)
  • 財務官僚では、事態の深刻さが分かってない(992氏)
  • 官僚も使い捨てされるだろうが、国体の護持を言うのならまず陛下も(#防護が必要)(997氏)
  • 国体の護持って言い換えると利権の維持(998氏)

※2 一般人の病気や体調不良など★44 [無断転載禁止]©2ch.net
http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/lifeline/1455192487/

※3 被曝回避しない人、できない人は優生学的に劣っている!!: ずくなしの冷や水
http://inventsolitude.sblo.jp/article/173895967.html
役人の本音がちらほらと聞こえてくるようになった。上のツイートは、信憑性ありだと思う。

※4 村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上) - 毎日jp(毎日新聞)
(Internet Archive: Wayback Machineによる2011年6月23日のキャッシュ)
https://web.archive.org/web/20110623223036/http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040017000c.html

※5 村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(下) - 毎日jp(毎日新聞)
(Internet Archive: Wayback Machineによる2011年6月22日のキャッシュ)
https://web.archive.org/web/20110622131106/http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040019000c.html

※6 長野)「原発事故、一人ひとりに責任」小出裕章さん講演:朝日新聞デジタル
(関口佳代子 2015年11月30日03時00分)
http://digital.asahi.com/articles/ASHCY5T8PHCYUOOB008.html
 「事故を起こさせた責任を一人ひとりが問われている。だまされた(側にも)責任がある」

※7 特集ワイド:続報真相 大人は福島原発事故の責任を取れ 京大原子炉実験所助教・小出裕章さん最終講義 - 毎日新聞
(毎日新聞 2015年3月6日 東京夕刊)
http://mainichi.jp/articles/20150306/dde/012/040/002000c
 「子どもは、細胞分裂を繰り返してどんどん成長するので、放射線被ばくに大変敏感です。子どもには全く責任がない。大人は自分が被ばくしてでも子どもを守らなければならない。放射能汚染はなくならないので除染ではなく、実際は“移染”ですが、人が住んでいる現状では移染もしなければなりません」
 そして、大人の責任に関連して、70年前までの軍国主義の時代と今との共通点を指摘した。「国民は戦争に協力し、神の国だから負けないと信じ込まされ、戦争を止めなかった。ごく普通の人々が、戦争に反対する人を非国民と責めた。戦後、多くの人は政府にだまされたと言い訳した。原発では、推進派が決して事故なんて起こさないと言った。いま、国民が推進派にだまされたとも言う。今後、原子力に対してどう向き合うか、私たちは未来の子どもたちから必ず問われる」

※8 ぼちぼちいこか。。。 : 9月13日 【文字起こしUP】小出裕章氏と語る、続・原発『安全神話』溶融【その⑤】
http://bochibochi-ikoka.doorblog.jp/archives/3034125.html
#これは、
小出裕章氏と語る、続・原発『安全神話』溶融 - 2011/09/13 18:30Start - Niconico Live
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62917682
の書き起こしという。

※9 阿修羅で小出裕章批判圧勝 : 脱原発運動に敵対する小出裕章氏を批判する
http://blog.livedoor.jp/pph2tm-ikenobu/archives/54722238.html
各人の責任は、他の人から指摘されるべきではなく、推進派との闘争の過程で各人が自問すべきである。

※10 「財務官僚曰く、「優生学的に被曝被害で死ぬ奴はたいした役にたたんでしょ」 魑魅魍魎男」中のコメント

http://www.asyura2.com/15/genpatu44/msg/832.html#c17
でもさー、それってセオール号の船長や船員に近い発想だね。
同胞の他人様の高校生見殺しだったね。
その考えだと何処まで進んでも(焼肉定食)弱肉強食なんだな。

※a たとえば、次のツイートは、「PM」の表記が「PN」であったり、3回の伝言ゲーム(元政府関係者→妻→友人→私)を経ていたり、PM2.5の計測手法の発展を踏まえていなかったりする。しかし、PM2.5の生成メカニズムが判明していること、また中国の地上核実験による汚染物質が黄砂とともに飛来していることと勘違いしている可能性も認められる。そのために、このツイートを無批判にリツイートすることは問題であるが、同時に、赤の他人が「うるま」氏のツイートのどこが誤りであるのかを同定することは困難である。このツイートを事情を知らない他人が全否定するということは、追加の情報がない限り、困難である。このツイートを肯定してリツイートすることは誤りであろうが、むきになって否定することもまた誤りである。この機微を理解することなしに、物事の真偽を正確に判定するという作業は、行えないものと考える。

うるまさんはTwitterを使っています: "@devenir21 私の友達がNZで出会った元政府関係者の妻が言っていたそうですが日本は深刻な汚染状況でこれを国民に知らせたらパニックになるので情報操作を決断したそうです。 PN2.5も数十年前から到来していましたが放射能問題を打ち消す為にあえて今になって煽っているそうです。"
https://twitter.com/wiz676/status/459638074125742080

※b 「国体」の定義を過不足なく取扱うことは、私の手に余ることである。ただし、それでも一応は、ここに出てくる財務官僚を批判する上では、定義めいたものを記しておく必要があるようにも思われる。一般的にイメージされる「国体」とは、複数の構成要素からなるが、その一つは、天皇陛下と皇室ご一家の存在、ならびに皇統の継続であろう。また、国家の三要件が維持される結果、国民の生命・健康と財産が保護されることがあり、さらには、その結果として、日本語及び(西洋文化に対置される、東洋文化の一系統としての)日本文化が維持されることであるといえよう。ここに挙げた要素の順位や軽重には、人によって変動があり得よう。ただし、本稿では、皇室と日本国民の大多数が財務官僚氏のいうところの「国体」から事実上欠落していることが重要である。この点さえ正しければ、私の議論における「国体」を定義することは、実際のところ、不要である。

※c 書込み主の相手の主張を理解する能力は、文面から察する限り、相当に高度なもののように思われる。

※d 北朝鮮の実験が、裏で通じている日本の存在によって実現できたものである、という見方(陰謀論)が存在することは、承知している。

※e 日米合同委員会によって、直接の指示を受けているかの主張が一部の論者から提起されている。矢部宏治, (2014). 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』, 集英社インターナショナル.が端的な事例である。私は、日本国の官僚の対米隷従的な行動が外形的に米国の指示に従うものとなっていることについては、その通りであると認める一方、直接の指示を受けているとする矢部氏の主張については、証拠不充分であると考える。対米隷従官僚の行動は、追従する場合としない場合とを比較衡量することから生じる合理的な判断に基づくものであり、酷い場合にあっても、官僚自身の忖度によるものであろう。仮に、日米合同委員会という場において、米国側の出席者が明確な指示を与え、指示への服従を要求し、日本側の出席者がその命令に服したという事実があったとしても、その事実は、日本側の出席者に証拠として残されることはないであろう。この点、日米合同委員会において共同謀議が行われているとする矢部氏の主張は、筆を滑らせたものであり、誤解を与えるものであると考える。ただし、日米合同委員会において、政策上の打合せが政治家よりも早いタイミングで行われている可能性は、極めて高い。その端的な事例として、第189回参議院, 平成27年9月2日, 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会, 15号, pp.27-28.において取り上げられた河野克俊統合幕僚長の平成26年中の訪米に係る日本共産党の仁比聡平氏の質問が挙げられる。平成27年9月10日、河野氏自身により、文書の存在そのものは認められたが、それ以上の政府からの説明は、公に対しては示されていない。仮に、この見通しがまったくの個人的なものとして発せられたのであれば、問題とはならなかったであろう。問題がある箇所を指摘するとすれば、それは、米国側担当者による質問を公的な回答への圧力があるものとしてとらえ、同時に、回答自体をいわば米国への組織としての公約として内面化した過程にあるものと思われる。

米軍幹部との会談資料、「同じ題名の文書は存在」=自衛隊統幕長 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2015/09/156683.php

※f 少なくとも、バブル期から20年程度が経過した鳩山由紀夫内閣時には、政治上の決断を実現しようと尽力しないばかりか、真逆の方向に活躍した官僚が複数存在した。この事実は、アメリカ側の資料が図らずも公知のものとなったために、判明したものである。鳩山政権に対する反逆行為に及んだ官僚の一人は、第二次安倍政権において、順当な異動を果たし、わが国の紛争解決に係る意思決定を左右する地位を占めている。この事実は、日本国における主要な権力構造が国外の戦争屋の影響下にある、という先の私の主張を十分に裏付ける材料である。また、3.11後の菅政権における「脱原発」路線を民主党政権のうちになし崩しにしたこと、安保法案の高級官僚の少なくとも一部が、わが国の政治を軽視し、わが国の民意以外の何かと共同歩調を取ることを習性としていることを示す証拠である。

※g ほかにも例証は色々あるようであるが、タイミング良くまとめる作業が私の手に余るので、またの機会とする。

※h 原子力緊急事態宣言は、福島第一原発(事故)については、平成28(2016)年2月14日現在も、『原子力災害対策マニュアル』にある通りの「原子力緊急事態解除宣言」が発令されていないために、継続中である。福島第二原発に係る原子力緊急事態解除宣言は、平成23(2011)年12月26日に内閣総理大臣の野田佳彦氏によって発令されている。

原子力災害対策マニュアル(taisaku_manual.pdf)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/pdf/taisaku_manual.pdf

国立国会図書館デジタルコレクション - 東京電力株式会社福島第二原子力発電所に係る原子力緊急事態解除宣言について
http://www.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6011739?tocOpened=1
 
※i Usage Statistics of Content Languages for Websites, February 2016
http://w3techs.com/technologies/overview/content_language/all

 この統計は、 Alexaにより評価されたトップ1000万サイトにおいて利用されている「技術」の言語から言語を判別したという。2016年2月15日の閲覧時には、次のとおり。フランス語やスペイン語に比べれば、日本語ドメインが多く存在することが分かる。なお、この方法論では、実際に用いられている言語の割合をうまく調査できないとの有力な批判が存在しているようであるが、日記好きの国民性は、まだまだ有力であると考えておいても、それほど問題ではないであろう。

languageshare
English53.7%
Russian6.3%
German5.7%
Japanese5.0%
Spanish4.9%
French4.1%

 なお、Ethan Zuckerman氏の報告によれば、アラビア語圏においては、従来ブロガーが英語で世界に向けて発信してきたところ、アラビア語で発信する動きが始まっているという。主に日本語で記述している私が書くことではないのであるが、母国語での発信は、国民の閉鎖的な情報環境へと囲い込むことにつながりうる一方で、輿論を形成することにもなりうる。アラビア語による情報発信・交換がどのようにアラビア語圏諸国の対米外交へと影響するのか、興味が持たれるところである。実際、日本語の閉鎖的環境はかなりのものであり、圧倒的に裕福であり英語教育を受けた者が多いはずであるのに、私がアラビア語圏のことを知りたいときに、英語ブログを参照できる一方で、おそらく、アラビア語話者が日本のことを知りたいとき、英語ブログを参照したとしても、それほど有用な情報が日本人によって英語で発信されているとは思えない。福島第一原発事故のことを参照すればするほど、そのように思ってしまう。主に、日本語に堪能な日本語以外を母国語とする人物によって、福島第一原発事故は海外に発信されているのである。

※ English is no longer the language of the web - Quartz (Ethan Zuckerman, June 20, 2013)
http://qz.com/96054/english-is-no-longer-the-language-of-the-web/

 なお、Miniwatts Marketing Group(リンク)は、2015年11月のNielsen Onlineなどのユーザデータから、先のザッカーマン氏の指摘に適う言語別のユーザ数を推計している。

languagesInternet Users % of World Total (Participation)
English25.9%
Chinese20.9%
Spanish7.6%
Arabic5.0%
Portuguese 3.9%
Japanese3.4%
Russian3.1%

※ Top Ten Internet Languages - World Internet Statistics
http://www.internetworldstats.com/stats7.htm

※j 探してみたら辛い気持ちになること請け合いなので、その作業はお任せしたい。私は、放射性物質の漏出が継続しているというニュースに際して、アメリカの若者が検閲語を繰り返す映像を見て、そりゃそうなるよな、と暗澹たる気持ちになって探すことを止めた経緯がある。日本の官僚や電通を始めとする広告代理店は、日本国民を騙すことができても、全世界に影響力を及ぼすことなどできない、非力な存在なのである。

※k 第一、オープンソースにおける統計やデータベースの使用状況に係る報道によって、不正選挙の尻尾を掴まれる程度の官僚しかいないのであれば、現在の情報化社会においては、戦う前から戦に負けていると言える。ヒューミントを駆使されれば、ひとたまりもないと言える。(使いこなせているとは言えないかも知れないが、)オシントしか使わない私でさえ、それなりに世界が見えている(かのように錯覚している)のに、優秀で忠実な職員が複数がかりで情報を収集する組織が私より的確に状況を把握していない訳がないのである。

2016年2月1日月曜日

地理空間情報は分析しないとジオイントにはならない

 Google+1において、地理情報システムに係る前日の読売新聞記事(2016年1月31日朝刊1面)を紹介した(私は、デジタルでなく紙面で読んだ)が、地理情報システム(GIS)ソフトウェアの選定において、ヒューマンウェアの重要性、プロプライエタリ/オープンソースという二つの観点が抜け落ちている可能性があることを、追加して指摘しておきたい。この欠落は、記者の理解に起因することも十分に考えられる。

 現在、消費者市場に流通する主要な地理情報システムは、ほとんどが海外発祥のものである。米陸軍の『GRASS』のように、きわめて充実した機能で先行する実例が見られるとき、前例主義のわが国の行政人が同様に地理情報システムを整備する道を辿ろうとするのは、理解できないことではない。

 最初に、関係者を責めるつもりは決してないことを断っておくが、客観的にみて、わが国が単独で邦人救出を行えるようになるとは、私にはとても思えない。アメリカやロシアのような外交・軍事大国であれば、単独で情報を保全・整備して、外国の領土において秘密裏に作戦を実施することも可能であろうが、わが国はそのような能力を有さないし、有する方向に向かうべきではないであろう。この方向性は、非効率の極みである。それよりも現在のソフトパワーを有効に生かすことがわが国には求められよう。わが国は「長い耳の兎」で行くほかないという伊藤寛氏の指摘(『サイバー・インテリジェンス』, 2015, 祥伝社新書.)には、同意する。

 とすれば、邦人事件への対応に利用される地理情報システムでは、種々雑多な情報を効率的に収集して整理できる性能を重視すべきであろう。ベースとなる衛星情報にしても、わが国は、稼働中の人工衛星数で見れば、米499、中165、露147に次いで69基を擁する(CelesTrak、2016年1月31日)が、これらが世界各国で生じうる邦人誘拐事件等に利用できるだけ十分に密に配置されたものであるとまでは言えない。アジア各国の事情を観察する上で使える衛星は多いかも知れないが、南米までを単独でカバーすることは、とてもではないが非効率的である。すると、この種の場面で利用されるGISソフトウェアは、外国政府や民間から提供される情報をいかに簡便に加工し整理できるか、という性能を基本に選定されることになろう。10分で(あるいは逐次的に)あらゆるデータを取り込めなくてはならないのである。2016年2月3日追記:海外の情報提供者が簡単に情報を追加できるという条件を想定すると、現状で普及しているGUIは、かなり有力な選択肢となることであろう。

 規範的な価値、実証的な価値からの是非は置いておくが、アメリカの情報機関の優れたところは、戦略的かつ系統的にSNS情報を入手する手立てを総合的な観点から構築しており、その整備に官民挙げて取り組んできたことである。データやソフトウェア、それを動かすためのハードだけでなく、分析する人材も重要である。分析者・意志決定者が情報の波に溺れたという批判が一部にあるものの、情報を統合的に入手する手段がなければ、情報に溺れることすら適わないのである。実際、前年1月の自称イスラム国による邦人人質事件では、わが国の情報担当者が情報を得られない様子がありありと映像に反映されていた。幸い、GISデータを自前運用できるだけの基礎的な要件には、ビッグデータの取扱に係る技術が自前で用意できる、というものがあるが、この点については、わが国の研究業界は、対応できている。しかし、そのほかの工程において、どのような情報を入手していかなる情報を産出するのか、に係るヒューマンウェアについての構想は、決定的に不足しているように見受けられる。

 雑多な情報を的確に解釈するには、高校教育課程まで、つまり中等教育を通じて学力を完全に身に付けた、エンリッチメント教育の申し子が分析担当機関に数百名規模で必要である。大学教養課程までの学力をバランス良く身に付けたという人は、わが国では、個人に対する報酬が望める業界(や海外)に進んでしまうので、むしろ、海外からの情報提供者として有用かもしれないが、今後のわが国において、情報を分析するという黒子的な役割とはミスマッチを生じる可能性があろう。このような人的体制を構築するには、早くとも四半世紀を要する。日本国の資源を無駄に利用してしまってきている不惑の私が偉そうに言うことではないが、読者が本ブログを読み、学術的と呼べる考え方の一つでも知らなかったと認めることがあれば、20代前半までの間に、これらを含むより広範な知識体系を効率よく吸収でき、かつ、愛国心を涵養できるだけの教育システムというものの実現の困難さを、読者は認めざるを得ない状況に直面したことになる。私のブログの内容の正否(間違いが含まれうることは、まったく否定しない)を根拠をもって判定できるだけの学識を備えた者、何なら私の誤りを手を動かして実証的に指摘できる能力を有する者こそが、責任をもって国民の生命と安全と財産を保護できるだけのジオインテリジェンスを産出することができよう。(たとえば)他者の日本語ブログを眺める限りでは、素晴らしい見識を有する日本語話者は多く存在するが、そういう人材が散在しているだけでは、インテリジェンスが日本語コミュニティに蓄積されているとは言えない。少なくとも、彼らの知恵を自由かつ随時かつ迅速に拝借できる態勢が整えられていることが重要なのである。また、優秀な分析者を若年層から調達できるか、その人材を適切に処遇できるか、その状況を維持し続けられるか、というところに、ヒューマンウェア養成システムなるものを作り上げ維持することの困難さが認められるのである。

 ジオイントの産出に携わる人材には、技術上の勘所を押さえているという能力が求められるかもしれないが、超高度な専門技術というものが彼らに求められる場面は、さほどないであろう。むしろ、事情に応じて、あるデータを加工できるだけの企業等に超特急で業務を発注できるといった意味合いでの指揮能力、即応性が求められるであろう。日本社会がそのような企業を多数内包する状態を維持できることは、日本社会の安全性を担保する上で、重要な側面である。この点、行政担当者の発注能力のお粗末さの原因と構造の分析は、(責任追及のためではなく、)今後の改善のために、より真摯に追究されるべきことである。(たとえば、昨年10月に逮捕された、厚生労働省の課長補佐の収賄事件は、官僚の専門的能力の不足が悪い方に表れた事例と見ることができる。)

 ところで、「インテリジェンスに友人なし」と、この方面の識者が異口同音に指摘しているとき、GISソフトウェアを導入する担当者は、情報の保全という要件をどのように解決するのであろうか。ここまでに指摘してきた、「情報は単独調達できない」、「他国との協力が不可欠である」という要件は、プロプライエタリソフトウェアとは非整合的なものとなりうる。一朝事あるときに、内密に機能を拡充するというサンドボックス的な作業を阻害するからである。ただし、プロプライエタリソフトウェアを提供する企業に弱みを握られながらも国民の安全と財産とを保護可能であるというのであれば、それはそれでひとつの政治的判断であろう。私の知る限り、プロプライエタリソフトウェアを提供する企業に全面的に依拠しながら、国民の生命一人分とて失わしめなかったという実績を有する主権国家は、一つもないようではあるが。官民の協働は、前提条件である。しかし、この協働という前提条件と、利潤の獲得をレーゾンデートルとするプロプライエタリソフトウェアの提供企業に全てを委ねるという決定との間には、大きな途絶がある。金銭的な有限責任だけを負うことにより発展を可能とした現代の企業は、組織の成員の無限責任から成立するはずの国家とは、役割により、明確に分かたれる(べき)存在なのである。

 しかし他方で、柔軟性を求めるためにオープンソースソフトウェア(OSS)を採用するという選択肢を取るとしても、その場合には、考慮すべき特有の事情があることも事実である。OSS-GISの大半は、経験的に、わが国で流通してきた文字コードであるshift-jis形式と相性の悪い状況を引き起こしがちである。このために、仮にOSSを採用するのであれば、ソースコードを見ながら、スクラッチでソフトウェアを構築するという作業が必要になるかも知れない。系統的かつ統一的な作業が行える環境においては、文字コード変換に伴う問題は生じにくいが、多数の情報提供者が多数のソースからゴミ情報を含めて情報を寄せるとき、それらの情報を整備して理解しやすくするためには、なかなかややこしい工程を経る必要が生じる。自称イスラム国がエッチな映像に命令を潜ませて流通させているとされるというニュースは、ほぼすべての情報機関や「悪の組織」に認知されたものとなっているが、このように非言語情報から文字や音声等の言語情報を取り出すという作業においても、文字コードの問題は、些末であるが、うんざりするような問題を引き起こす。ユーザから見て、「地理情報」取扱上の問題は、大抵、「地理」にあるのではなく、「情報」の部分にあるのである。もちろん、座標系の問題は、地理情報につきものであるが、座標系を付されていない地理情報であっても、たとえば、人質の所在地をある国の奥地から探るという具体的な問題に即して考えるとき、問題の深刻さはそれほど大きなものではなくなる。平面座標系で原点がずれているとかいう困りもののパターンも生じそうではあるが、可能な組合せ数は少なく、問題となることは少ない。

 今回はここまで。参考になりそうな以前の記事を、いずれリンクする予定である。

2016年1月9日土曜日

木村隆志氏のベッキー氏への助言は中川淳一郎氏の記事にも当てはまる

ベッキーの釈明はいったい何がマズかったか (東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160109-00099929-toyo-soci

 恋愛・結婚コンサルタント/ライターである木村隆志氏は、クライシス・コミュニケーション(危機的状況=手持ちの資源だけでは捌ききれない状況下における、被害最小化のための対人活動)の要点として、「迅速かつ適切な情報開示」が求められ、「経緯、事実関係、今後の対応などを誠実に話す」のが後の「V字回復に向けた再スタート」のための基本姿勢であると述べる。その上で、木村氏は、ベッキー氏の記者会見における謝罪と対話がスポンサー企業や広告代理店、レギュラー番組のスタッフ等にのみ向けられていたと指摘する。また、聴衆の知りたいことを開示しなかったために、かえってイメージを損ねたとも指摘する。

 上掲記事の文末で、木村氏は、次のように本件について言及する人に対しても助言を加えている。
 最後にもう1つ、クライシス・コミュニケーションにおける“二次災害”についても書いておきましょう。今回の騒動をワイドショーの各番組が取り上げる中で、多くのコメンテーターが、「ブログやFAXではなく会見を開いて頑張った」「ベッキーも普通の女の子だった」などとフォローしていました。これは「ベッキーの人柄を知っているからフォローしてあげたい」という温情かもしれませんが、クライシス・コミュニケーションにおけるコメントとしては間違っています。

 問題はベッキーさんの人柄ではなく、ベッキーさんの採った行動。もし行動が悪かったのなら、それをフォローした人も、当事者のイメージダウンに巻き込まれてしまいかねません。みなさんが公私において責任のある立場にいるのなら、公の場はもちろんSNSなどにも、温情に任せたコメントを発信しないことがリスク管理になるのです。
本件では言及する話題が既婚者との不倫となるため、ベッキー氏を擁護する人は、「あなたも不倫する人を擁護するのか?」という巻き添え被害に遭う可能性がある、と木村氏は述べていると理解できる。木村氏の指摘は、コンパクトにまとまっていて、私にとって勉強になった。

 ところで、ほかでもない、この記事を参照したのは、前の記事(リンク)で中川淳一郎氏がCM企業を擁護するかのように発言したことにも応用できるためである。「頑張っているんだ」という表現から、地獄のミサワ氏の有名な漫画の台詞「寝てないっスよ~」に連想をつなげれば、この点は一層明らかになるだろう。マスコミによって「私だって寝ていないんだ」との社長の言が大きく報道された雪印乳業株式会社による集団食中毒事件である(平成14年、2002年)。事件直後に社長に就任した西紘平氏の講演を、山本敏晴氏がブログにまとめている。山本氏は、西氏の出身高校の同窓の後輩である。当時の経緯を当事者に近い地位から見たものとして、読み応えのある内容である。

山本敏晴のブログ : 雪印集団食中毒事件、その対処をした男の物語 6742字
http://blog.livedoor.jp/toshiharuyamamoto128/archives/65450486.html

 これ以上は、私のくどい説明は不要だろうが、まとめておこう。中川氏は、不要な発言により、CM企業が「痛くもない腹を探られる」危険を生じさせてしまったのである。これに対して、木村氏の記事は、そのような予断を生じさせない、隙のないものである。危機においては、中川氏の失敗を他山の石として、木村氏の記事を参考にすると良い、と思う。

中川淳一郎氏のベッキー・川谷不倫騒動解説は失敗とみなされるだろう

要約

私は、ベッキー氏や「ゲスさん」の川谷氏に格別の好悪の感情を抱いているわけでなく、CM打切りを検討中の企業については大変だなあと思うところだが、中川淳一郎氏の「解説」に対しては、失敗だったと思う。



本文


不倫疑惑のベッキー CM契約打ち切りに関し広告業界の「鉄の掟」 (NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース(2016年1月8日(金)16時0分配信)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160108-00000017-pseven-ent&p=1

 博報堂出身のネットニュース編集者・中川淳一郎氏は、ベッキー氏と音楽グループ「ゲスの極み乙女。」ボーカルの川谷絵音氏との不倫がベッキー氏のCM出演契約打切りの原因となると指摘し、次のように解説している。引用部分の番号は私が付した。「氏」を必ず付すことを、ブログ執筆のルールとしているので、「ベッキーさん」とかの表記にしろよ、というツッコミを自分で覚えているが、ルールに従うこととした。なお、私は、ベッキー氏や「ゲスさん」に好悪の感情を抱いているわけではない。この点は、誤解のないようにお願いしたい。

(1)好感度の高い彼女との契約を切ると自社のイメージがむしろ悪くなる、といった判断もできるでしょう。今は各社、世間の空気を読みながら契約をどうするか、というチキンレースの状況にあると思います。

(2)私が言いたいのは、これからベッキーとの契約を切る企業が出たとしても決して叩かないで欲しい、ということです。真剣な商売を彼らもしているのです。ビジネス上の判断として契約を切ることまで批判するのはお門違いです。
記事は、(2)の段落で終わっている。ベッキー氏の不倫により、CM企業の担当者は、余分な仕事が増えたことであろうし、大変なことであると思う。

 私が分からないと思ったことは、(1)からどうして(2)の結論が出るのだろう、ということである。中川氏は、(1)において、ベッキー氏との契約を打ち切ることをリスクであると述べておきながら、(2)において、そのリスクを取った企業を批判するなと読者を諭している。私は、企業がCM契約を打切る決定を下すことを当然の権利だと考えるが、しかし、打ち切るという決定は、ファンから批判されるリスクを必然的に伴うものであるとも考える。CMにタレントを起用するということは、ファン層を必然的に巻き込む商売だからである。

 ベッキー氏のファンがCM契約を打ち切った企業を批判することも、企業がCM契約を打ち切ることと同様に、自由であるので、ファンにだけ自制を求めるような、広告業界人である中川氏の発言は、むしろ、企業側に対する批判を呼び起こす危険性を増すものである。企業に対する炎上だけを食い止めようとする中川氏の言説の理由は、かつての広告企業の同僚を庇うなどの善意から出ているのか、あるいはCM契約中の当の企業から露払いとしての発言を依頼されたのか、私には知る由もないが、むしろ、ベッキー氏の幸せだけを願う熱烈なファンならば、先に挙げた理由のいずれかのうちでは、後者を理由として選択する可能性一択だろう。

 今回の中川氏の解説は、時期尚早であり、同時に、誤解を招く表現を含む。物事には順序があるため、炎上した後に、CM企業とは利益関係のない立場から、CM企業に同情を示すと言う方法もあったはずである。批判の殺到した企業が家庭用品の製造企業であるならば、川谷氏の行いが糟糠の妻を足蹴にするものであるから主婦の購買層に対する深刻なダメージがある、と述べれば良かったのである。そのような事態に至る前に、「真剣な商売を彼らもして」おり批判は「お門違い」であるという表現は、あらかじめ批判を封じ込めようとした当初の意図とは異なり、かえって火を点けることになるだろう。前年の東京オリンピックのロゴ問題も、併せて再燃することになるだろう。この点、本記事を掲載した女性セブンまで影響を受ける可能性もある。

 どうすれば良かったのかを、演習のつもりで私なりに考えると、上掲の(2)を削除すれば良かったのだろうと考える。CM契約の打切りがチキンレースの状況にあることは、中川氏の指摘のとおりであり、間違いないことだろう。ここまでであれば、中川氏は、中立性を保てた(あるいは装えた)かもしれない。しかし今回、最後の段落は、どう見ても余計であった。真剣にベッキー氏のファンを続けてきた人もきっといたであろうが、そういう人には、今回の騒動は、経緯を知れば、なかなか本人を批判しにくいところが残る。最初に既婚であることを偽っていた川谷氏と抜き差しならない関係に陥った後、ベッキー氏が別れるという選択肢を取りにくく、むしろ奥さんと別れてくれと言う側に回ることは、熱烈なファンにも理解できる(、あるいはファンならば、ファンであるがゆえにそのように解することもあろうという)ことである。とすれば、溜められたベッキーファン諸氏の怒りは、ベッキー氏を裏切ったと見えるCM企業なり、その決定を擁護する中川氏なりに向けられるであろう。

 今回、CM企業を擁護する姿勢を炎上に先立ち見せたことにより、中川氏がCM企業の側に立つ人物だとみなされることは、解決の難しい一番の問題である。中川氏だけが矢面に立つのであれば、中川氏がどうなろうと、中川氏は役目を果たせたということになるのかもしれない。しかし、今回の場合、中川氏とCM企業は、一蓮托生となったと見なす方が良いだろう。エア御用として位置付けられるに至った中川氏をどのように位置付け直せば余計な批判を浴びないかというアイデアは、私にもない。

 踏み込んだ表現となるが、CM企業にとっては、ベッキー氏の行動を継続的なものとしてとらえ、川谷氏が既婚であることを知った後も関係解消しなかったことを、契約解消の理由として、ほのめかすことが一番無難な説明であるように、私には思われる。もちろん、このようなニュアンスを公衆に伝えることに対しても、一定のリスクが伴うのは確かなことである。どの方法を取るか、という制限された選択肢の下での話であることに留意されたい。沈黙を保つことも一種の方策ではある。

2015年10月28日水曜日

木村盛世, (2012). 『厚労省が国民を危険にさらす 放射能汚染を広げた罪と責任』, ダイヤモンド社.

木村盛世, (2012). 『厚労省が国民を危険にさらす 放射能汚染を広げた罪と責任』, ダイヤモンド社.

 福島第一原発事故後の厚生労働省所管の食品安全行政を巡る混乱を、必要かつ十分に、また平易に説明した良著である。本分野の初心者なら目を通しておいて損はないし、ある程度原発事故の影響を分かったつもりになっている者も、知識をおさらいするために便利。図書館で借りるということが前提であれば、一読して損はない。全体としては、評価は★★★★☆、星4つ。

 本書の欠点は、危機管理についての理解の枠組(以下で引用する。)こそ痛快(?)だが、「公衆衛生専攻の大学院の設置」、「国際的に認められた標準的手法の採用」、「マイナンバーの活用」、「公衆衛生専門家の招聘」、「医療技官改革」という提言が上滑りしているように見えることである。ここで指摘される標準的手法とは、追跡研究(longitudinal study, あるいは前向き研究, prospective study)の実施であり、それを支えるプロコトルの策定、仕組みの実装である。犯罪予防分野において、ほぼ同じ問題意識を有する私にとって、これらの提言は、省庁横断的な課題を浮き彫りにするものであり、非常に興味深いものである。

 星1つ減じる理由に、マイナンバーへの安易な言及がある。マイナンバーは、転居者や改名者の把握に役立つであろうが、それでも、調査にそのままマイナンバーを転用させるわけにはいかない。マイナンバーを転用する方がシステム設計上も運用上も簡単であるが、紐付けされる個人情報の秘匿すべき性質をふまえれば、そうはいかないはずである。マイナンバーとの紐付けは便利であろうが、技術上の課題を解決する必要があるという留保についての言及が見られない以上、これは先走り過ぎた提言であると認めざるを得ない。(#神は細部に宿るので、私も不勉強がバレないうちに、筆を止めることとしよう。)

 以下は、要約と引用。



官僚と学識経験者の関係

 食品安全委員会に限らず、審議会は、官僚が専門家や学識経験者の意見を押し立てて自分たちの意見を正当化する場である(p.88)、官僚たちが自分たちの意見を述べないのは、発言に対して責任を取りたくないためである(p.89)、複数の省庁が関わる委員会では、省益が優先され、決定に時間を要したり、統一が図れなかったりする(pp.91-92)、と指摘している。

疫学におけるランダム化比較試験(RCT)

 主催者の意図が漏れ、研究上の不正が行われることがある(pp.137-139)が、倫理的問題などを監視するIRB(Institutional Review Board)や試験実施方法を監督するRCTセンターなども欠如している。

危機管理の欠如
 これらの「危機」に対して、政府がどのように対応してきたか、あるいは、対応しているかを考えると、なにも原発事故に限ったことではなく、今まで起きた事象について同じことを繰り返しているように見えます。そして、日本政府の行動パターンには、ある意味、ぶれない芯の通った普遍的な真理が存在するように思うのです(念のため申し上げますが、決してほめているわけではありません)。
 具体的にその枠組みを書けば、わが国の危機管理の基本形は、①危機が何だかわからない(危機認知能力の著しい欠如)、②有事の対応は水際作戦と特攻隊(軍事的に無効)、③うまくいかないときは、カミカゼを待つ(かつて吹いたといわれている)の3つに集約されるといえましょう。(pp.142-143)

2015年10月18日日曜日

小熊英二・赤坂憲雄[編著], (2015). 『ゴーストタウンから死者は出ない 東北復興の経路依存』 , 人文書院.

#まとまっていないけれども、とりあえずアップすることにしました。

小熊英二・赤坂憲雄[編著], (2015). 『ゴーストタウンから死者は出ない 東北復興の経路依存』 , 人文書院.
 巻末の編著者らの対談で、「大きな変化のなかで、危機と前進が一緒に進んでいる」という小熊氏の理解が示されるが、本書は、この理解に立脚し、それまでの政策や社会の動きが東日本大震災からの復興を規定・制限する要因となっていると指摘するものである。この見立てを、俄仕立ての文献調査によりつつ提示できていることは、小熊氏の地頭の良さと経験を反映するものだと思う。ただ、小熊氏の「復興の経路依存性」という概念の弱点は、その概念の形成過程が、彼の研究スタイルである「(主流の商業)出版業界の経路依存性」に規定されていることである。特に残念なことは、阪神・淡路大震災以後の比較的小規模な震災における復興政策の成功体験が、端的には、2004年10月の新潟県中越地震からの復興政策が比較的成功したものと見なされてきたという経路を見逃していることである。この見逃しは、小熊氏が「防災対策」を概観する上で、永松伸吾, (2008).『減災政策論入門』, 弘文堂.を参照したと述べていることにおそらく起因する。小熊氏は、新潟県中越地震に対する復興政策について、産業構造の歪みをもたらしたものとして批判するに留まる(pp.44-45)。
 また、福島原発事故が国を滅ぼす程度に深刻であるという危機管理上の認識は、良くとも編著者らの焦点から外れたものである。編著者らの物の見方は、東北復興に係る論壇の経路依存性に規定されて形成されたものである。編著者らの思索は、現在の主流の商業出版の上に構築された堅実なものであり、この点、本書は、彼らの研究者や当事者としての誠実な努力を反映するものである。しかしながら、同書は、あえて思索の幅を最大限に拡張する努力を行わずに執筆されたものであり、より大きな変化を見逃している可能性を捨てきれない。それは、福島原発事故により、わが国が現代の西側諸国で急激に没落する初の事例となるという可能性、ハードランディングシナリオである。著者の多くは、40代前半以下であり、現在進行中である事故の多様な側面に翻弄され、多数のステークホルダーの多様な意志に配意できていない。この目配りの範囲の狭さは、本書の題名から予想される内容の幅を抱え込めていないという弱点に至る経路となっている。小熊氏らの主張は、結果として、誤解を与える中間的評価を、東日本大震災に対して下してしまっている危険性がある。小熊氏は、2007年の柏崎刈谷原発の被害についても、単に教訓が意識化されなかったとだけ理解する(p.45)。「陰謀論」に詳しい面々なら、島津洋一氏の福島第一原発についての英語論文※1をご存じかも知れない。原子力発電業界には、業界として原発を推進せざるを得ない都合がある。しかしながら、日本の知性を代表するかのようにみなされている論者の議論の幅がこの程度であると、やはり、研究者の言説も経路依存であると判定せざるを得ない。また、このような「小さくまとまった」議論は、結果として、経路を強く規定する権力と化してしまう。

※1 Secret Weapons Program Inside Fukushima Nuclear Plant? | Global Research - Centre for Research on Globalization
http://www.globalresearch.ca/secret-weapons-program-inside-fukushima-nuclear-plant/24275

Conflicting Reports
    TEPCO, Japan’s nuclear power operator, initially reported three reactors were operating at the time of the March 11 Tohoku earthquake and tsunami. ...
    A fire ignited inside the damaged housing of the Unit 4 reactor, reportedly due to overheating of spent uranium fuel rods in a dry cooling pool. But the size of the fire indicates that this reactor was running hot for some purpose other than electricity generation. Its omission from the list of electricity-generating operations raises the question of whether Unit 4 was being used to enrich uranium, the first step of the process leading to extraction of weapons-grade fissionable material.


 除本理史氏の第六章「福島原発事故の賠償をどう進めるか」では、原賠法に基づき東京電力が最低限の目安に基づく賠償額を提示するというスタイルが、加害者の立場を被害者に押しつけるものであり、容認できないとする意見が示される。この理解は、「消費者主義」を彷彿とさせるものである。(私自身がこの思想についての十分な目配りができていないこともあり、的確な理解とならないかもしれない。どうしても題名を思い出せないのだが、当時、併せて読んでいた書籍のいずれかでも、利用者目線、被害者重視を主張する議論が展開されていたはずである。)
 なお、除本氏の議論にも欠点がないわけではなく、前述した危機への査定が甘いことは、同書に共通した弱点となっている。避難指示区域外では賠償がほとんどなく、生業訴訟が提起されていることが説明されるが、この点への着目は、「食べて応援」キャンペーンへの結果についての定性的な理解が不足しているためか、被害者が加害者となりうる現在の第一次産業政策の危険性には配意できたものとはなっていない。

2015年10月14日水曜日

テロ対策特殊装備展2015について(感想文)


ビッグサイト遠景

 差し障りのないと思われるレベルで、雑感を記すこととする。つまり、以下二つのリンクから閲覧可能な情報に限り、事実を記すこととする。それ以外は、私の感想に過ぎないので、その点を含まれたい。

セミナー・プレゼンテーション | テロ対策特殊装備展(SEECAT) <国内唯一のテロ対策専門展>
http://www.seecat.biz/seminar/

出展者検索・一覧 | テロ対策特殊装備展(SEECAT) <国内唯一のテロ対策専門展>
http://www.seecat.biz/search/

 外国の公的機関が主導するブースとしては、英国、イスラエル、米国のものが設けられていた。以前にも(数度)見学したことがあるのだが、各国ブースの雰囲気や熱心さは、前回から様子が変わるところはなかった。その活動のスタイルには、各国の特徴が表れているように思った。英国とイスラエルは、チームを組んで来ている一方で、米国企業は、日本にそれなりの規模の支社等を有することもあり、民間主導であった。ご説明いただいた企業の社員の方々の専門性には、バラツキがあるやも知れないという印象を受けた。各社のソリューションに向上の余地があることを示す傍証かも知れない。

 SEECAT内の参加企業は、カメラソリューションや各種装備を主軸とする中堅メーカーが多いように見受けられたが、通信インフラを基礎とするソリューションを提供する企業も見られた。SEECAT内には、危機管理産業展に競合他社のブースがある企業もいくつか見られた。両展示会は、研究者にとって、敷居の高さが格段に異なるので、各社の出展戦術が吉と出るか凶と出るかは、もしかすると、研究者の公正な評価がカギとなるかもしれない!そうなるべく、自身の専門性も向上させていきたいが、「研究者の...しれない!」というくだりは、冗談のつもりである。

 もったいないことがあるとすれば、それは、オリンピック開催に際しての心構え(スキーマ)や、幅広い視点の養成法こそ、上記の三か国から吸収できることであり、そのためにこそ、国や企業は多くの費用を支払っても良いにもかかわらず、その種の情報を交換する場として本展示会が使われていないように見えたことである。本展示会は、もちろん、民間同士の交流や官庁の公共調達のために欠かせない機会ではあるものの、それにプラスして、オリンピックに関与する民間の担当者が、意識を一段向上させるまたとない機会であるべきであろう。私は、会場を一巡してみて、安全の確保は官公庁の役割であり犯すべきでない縄張りであり、物資やサービスの調達だけが民間の役割であるかのような雰囲気を感じた。この印象が本当だとすれば、大変にもったいないことである。開催者と各国関係者がバックヤードで情報交換していることは、十分に予測されることではあるが、バックヤードに関与できる人材だけで十分な安全を担保することは、およそ不可能である。オリンピック待ったなしとなった2015年の時点において、ここ半年だけでも、至るところで公的機関あるいは、災害対策基本法に指定された指定公共機関において、多数のお粗末な事例が見られることは、本ブログにも記してきたとおりである。


 その点が端的に表れた事例が、イスラエル大使館によるセミナー「ドローンの探知と対策」であると、私は思う。同セミナーでは、民間人を含めた誰もが操縦可能なドローンという脅威が的確に分類され、対策が提示されたが、その内容は、公式の場における日本語の既出のものとは、比べようのないほど洗練され、簡潔で、分かりやすいものであった。その背後には、おそらく、わが国におけるドローン対策にかけられた労力の数十倍以上の労力がかけられ、(わが国の関係者よりも数段)高度な知性が関与したであろうと思われる。そして、現地情勢についての評価を含めるつもりは毛頭ないが、ドローンが(パレスチナ自治区との)壁や(他国との)国境を越える攻撃の手段として用いられはしまいかという切迫感と、そこから生じた覚悟こそが、イスラエルにおけるドローンの探知と対策に係る理解の枠組を飛躍させた原動力であろうと推測される。日本国内におけるドローンに係る議論が偏っており、足下にも及ばないということは、私にも明らかに分かることであった。

 最後に2点、落ち穂拾いと苦言を追記しておきたい。登録時に「学術研究機関」がない!というところにびっくりした。私の身分は、みなし公務員(の端くれ)なので、「国・自治体」を選択して登録したところ、あっさり認可された。この対応には、警察官僚たちの「研究者は皆サヨクか友達の友達は何とやらか」くらいの認識が透けて見える。いくら秘匿性が高くなる種類の産業であろうとも、的確な方法で透明性を確保できなければ、セキュリティ産業は、自らの基盤である社会からの信頼を蚕食することになる。何人かは研究者のファン?を確保できなければ、そしてその研究者も社会から信認を受け続けなければ、セキュリティ産業は、暴力団と社会的機能における境目を失いかねないのである。もう一点、危機管理産業展の登録作業では、「学生」というカテゴリがあったが、そのためか、なぜかテロ対策特殊装備展の職業欄でも「学生」というカテゴリが選択できるようになっていた。私には、このような作り込み状況を少々心配なものとして見てしまった。これらの社会的分類に係る理解の枠組の貧弱さは、「社会を構造化して理解する」能力を反映した結果である。そして、イスラエル国民の知性は、先に見たように、結果として、不確定要素の多い事象を相手とするセキュリティ産業の強さにも反映されているのだが、翻ってわが国はどうであろうか。問題を的確に把握しているのか。最高度の知性を結集したのか。全力を尽くしたのか。

2015年10月12日月曜日

NHKクローズアップ現代(10月1日放送分)について

“世界一の鉄道”に何が ~多発する事件・トラブル~ - NHK クローズアップ現代
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3710_all.html

 上記リンクは、聞き書き(トランスクリプト)のサイトにつながります。
 番組に対して、ツイッターでは、そのような対策は現実的ではない、実務を知らない者の主張だという趣旨の反論が多く見られましたが、自殺等に対して、「列車を止めれば数千万円」のような記述が多く見られる一方で、数千万円に及ばない対策を怠ってきたことは、どのように解釈すれば良いのでしょうか。
 手の届くところに燃える物を置かない、というのは、放火対策の基本です。一坪数百万円以上の土地に多くの物体を置けないことはわかりますが、より目の細かな金網を使うですとか、とりあえず二重に金網を張り、手を出すことを難しくするということは可能だったはずです。30kmくらいだったかとアタリをつけて調べてみると、34.5kmということですから、全周に金網を張っても、数億円で済むわけです。実際のところ、ケーブルのつなぎ目など、手の届きそうなところだけでも被覆すれば、数百万円単位で済んだはずです。

山手線一周の時間と距離はコレ!実際に測ってきました!! | ALL You NeeD is InformaTion Blog
http://bibibits-of-knowledge.com/archives/2048.html

 すると、今回のJR東日本連続不審火事件が生じる前までに、JR東日本の防犯・テロ対策担当者は、その者に課せられた責任や与えられた報酬に対して、結果的にも、道義的にも、基本的な業務としても、十分な仕事をなしてきたとは評価できないことになります。反論があれば、どうぞお願いしたいところです。
 結果的、道義的、基本的、という表現の並びは、この順に業務内容の難易度が低くなるように並べたものです。結果責任は、背負うものが重大な役職に伴うものであって、通常は、政治家や大企業の経営陣など、多くの人々に対して責任を負うべき者しか負わなくとも良いものです。道義的な責任は、役職に付随する理想から生じるもので、倫理上こうすべきものです。道義的な責任を果たせなかったとしても、必ずしも非難の対象となるわけではありません。今回の事件は、責任者が当然なすべき業務を果たしていなかったために生じたもので、言い換えれば基本的な業務を果たしていなかったために生じたものですので、事件に対して、担当者は、責任を免れません。
 今回の事件にあたり、仮に、事件前に何らかの対策が施されていたとするならば、その対策が却って事件の深刻化を招いた可能性は、それなりに存在します。本事件は、慎重な捜査が必要とされる種類のテロ事件である疑いが未だにぬぐえないためです。架線に対する攻撃は、より深刻な被害と相当深刻な別の罪名とを招いた虞があります。しかしながら、JR東日本の防犯・テロ対策担当者は、無策ゆえに、安全というボールを容疑者の手に委ねるほかなかった訳でして、今回の被害が小さかった理由は、容疑者がより破壊的な行動に出なかったことのみに起因するのです。
 鉄道機関の安全性は、主として、運輸安全委員会以下の組織に委ねられています。主として、旧運輸省、現国土交通省の縄張りです。私は、鉄道行政からはまったくお声のかからない小物ですが、これだけは言えます。犯罪をいかに行おうかなどと物騒なことを常々考えることは、持続性・継続性はもちろん、悪い方面への才能を必要とする営みです。私は、悪い方面への才能はそれほどなさそうですが、それでも、まだ、一般の優秀な鉄道運輸関係の研究者に比べて、悪業へのセンスはあるように自負しています。鉄道研究者の誰か一人でも、現時点までの間に、ここで私の指摘したような、容疑者が罪名を考慮して手口を選択していた可能性を考慮したことがあったでしょうか。世の中は広いので、それこそ対外情報機関に採用されるような優秀な人材ならば、本事件に接して、このような可能性を検討したこととは思いますが、こと研究者に限定すれば、鉄道運輸関係の研究者として、ここまで思考を到達させた人はいないものと思います。悪行の研究は、それなりに専門性があるものなのです。

 さて、危機管理という観点からは、セキュリティ産業界の「手の者」が焼け太りを狙ってわざと事件を起こさせたというシナリオを考慮しておかなければなりません。しかし、今回に限って言えば、仮に、このシナリオが正しく、セキュリティ産業界により多くの経費を割かなければいけないとしても、それは、正当な経費です。経営陣の給与を削減した上で、セキュリティに費用をかけても良いくらいの話です。経営陣は、本当に東京オリンピックを実現したいと考えているのであれば、もっと費用をかけるべきことが山積しています。本件の責任を経営陣に負わせた上で、10円程度の運賃の値上げも、やむを得ないかもしれません。
 これ以上の専門的な知識は、本来、正当な対価や報酬(=私にとっては研究者としての身分を獲得できる程度の研究予算と研究上の成果)を得る確約を得た上であれば、提供したいと思います。とにかく、わが国は、防衛産業に対しても、セキュリティ産業に対しても、基礎的な研究・報道の予算が欠如しています。効率的な使用も課題ではありますが、問題としては副次的なものに過ぎません。この方面の実務レベルや流通する情報のレベルが低いのは、産業界が十分な研究等のコストをかけてこなかったことに原因がある、と私は考えています。防衛産業は、私の守備範囲外ではありますが、問題は、非核三原則や武器輸出三原則が問題になるとしても、防衛研究の目利きができる情報産業関係者(日本人の研究者や日本人のジャーナリスト)に乏しいこと、それらの関係者に社会が適切な報酬を用意してこなかったことなどにあります。「外国に売ることができないのなら、防衛装備品の価格が高くなるのは当然である。にもかかわらず、専守防衛のためにも、より高いレベルの防衛装備品が必要である」という、経済学上の基本に逆らうジレンマがある、という事実に対して、日本国民は、長らく無視してきたのだと思います。戦争をしないためには、戦争という(悪)手を取りうる諸外国に比べて、相当高度なレベルで、外交と戦争についての思考を深めなければならない、というジレンマも無視されてきたと思います。言葉に出さなければ問題が存在しないという言霊論の世界に、私たちは生きてきたのです。

2015年9月18日金曜日

Googleの鬼怒川水害における衛星写真提供に対する識者等のコメント等について

Abstract: There is a news wire by Nikkei Business Online (link below) that tells Google map satellite image beats the map provided by Japanese Government Crisis Management Team.  However, it seems to be desirable for Google to refrain from putting the article to the top of search results when searching words "Kinugawa flood" and "timeline", to make good relation with public sectors in Japan.  Japanese crisis management system may require update as the U.S. military services evolved on the concept 4CI.

#Googleサービス傘下のBloggerのブログ内で本件に言及するのは、中立性が保たれていないのではないかという懸念を読者に持たれる可能性があるのですが、本件について、ここに記された以上の含みを有するわけではないことを、あらかじめお断りしておきます。

下記、日経ビジネスオンラインの記事が人気のようです。

情報収集衛星、鬼怒川水害でグーグルにKO負け:日経ビジネスオンライン http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/217467/091400001/

下記ニュースコメントサイトでは、堀江貴文氏が民間委託は世の流れだとか、オックスフォード大学で仕込まれた立命館の准教授の琴坂将広氏が似たようなことを述べていたりします。

情報収集衛星、鬼怒川水害でグーグルにKO負け
https://newspicks.com/news/1157364/

琴坂氏のコメントは次のとおりです。
これは良記事。
時代が変わり、情報通信衛星の意味や価値も大きく変わった。年間一千億円を投じるとしたら、未来に向けて違うカタチがありそうなのは間違いない。

しかし、彼らは危機管理の基本である一国自前主義(これは私の造語ですが、たとえば佐藤優氏のいう「インテリジェンスに友人なし」を指します。)という原則を知らないか、忘れているか、わざと無視しているかのいずれかです。宇宙産業に投資している商売人である堀江氏が民間委託を推奨するのは当然だし、どんどん主張してもらってかまわないのですが、琴坂氏がこのような発言になるのは、日本国民全体の利益を考慮すべき日本人(でないかもしれませんが)の有識者の本分から外れることであり、残念です。立命館大学は、政府の危機管理分野にも一部関与していますが、その人たちの努力に水を差す形になっていると思います。誰のために仕事をしているのか、社会に深く関わる学識経験者と呼ばれる者は、それなりに注意しつつ、発言することが求められるはずです。以上は、有識者等の意見に対する私の意見です。


私自身のGoogleのサービスと政府の公開状況に対する意見を以下に示します。大きく二点あります。まず、一つ目に、単に、高精度の衛星写真上に大量の情報を掲載し、それらの情報を快適な速度でユーザに配信できるGoogleのサービス水準は凄いなあ、と思います。この点こそが、Googleの強みであると思いますので、後ほど触れることにします。

二つ目の私の意見は、衛星写真の解像度は現場の指揮者にとってはそれほど問題ではなく、高解像度の映像と地理関係との対応関係を瞬時に確定できれば、むしろその方がどれだけありがたいことかと感じられるのではないかというものです。この二つ目の意見は、実用化に向けて研究開発が進められている技術のはずですから、今後に期待しているところです。

今現在(2015年9月)、Google(および提携先の情報ハード系企業)を危機管理上のソリューションとして採用することの強みは、Googleの伸長の原動力である検索サービスの優秀さよりも、安定して高速に大量の情報を取得・配信できるインフラにあると思います。本件に即して繰り返すと、衛星写真の解像度そのものではなく、高解像度の衛星写真を載せて数千万人が同時にアクセスしていても快適に大量の情報を送受信できているサーバ性能を確保できていることにこそあるのではないかと考えます。しかし、目下の危機管理における課題は、わが国では大量にスマホ経由で日本語情報が産出されることを期待できたとしても、それを集約し、情報の内容に優先順位を付け、消防・警察・自衛隊・自治体等のリソースを配分する段階にこそあります。軍事研究の本場のアメリカ合衆国で育まれたGoogleに対して指摘することは、大変おこがましいのですが、かつて米国の軍事ドクトリンは、4CIという語に示されるように、情報流通過程の再編(ネットワーク化)を視野に入れてグレードアップされたことを聞きます。わが国の災害対策における情報管理は、この経緯と同形のグレードアップが必要な状態にあると理解するのが適切です。もちろん、Googleのプラットフォームは、その実現を可能とする能力を備えてはいるものの、一般に開放されたGUI群を使う限りでは、具体的なAPIを構想・開発した上で提供していく必要があるように見受けます。


公共機関向けシステム開発では、開発側によるUIの押しつけが常態化していますが、危機管理を担当する消防・警察・自衛隊では、自身の業務に無限責任を負うという覚悟で仕事をする意識が十分に徹底されているように感じられます。そうしたところに、現在のソリューションよりもこちらの方が良いですよ...と押しつける形になることは、少なくともわが国における建前論上は、金と命が等価ではないので、金で攻めると(現場の職員の)命を理由に断られることにつながります。現在のソリューションで腹を切る覚悟ができている(はずの)担当者には、おいそれとGoogleマップを使えば良いと言うわけには参りません。外野がどう思おうとも、今のところ、現場を指揮する者の判断に任せるほかない、と思います。Googleジャパン社の官公庁担当としては、衛星写真解像度については、(私が調べようと思ったのは、「鬼怒川水害 タイムライン」ですが、この検索ワードでトップに日経のニュースが来てしまうような調整は行わず、)控えめな宣伝に留めておいた方が、将来、担当者側からの好意的なコンタクトを期待できるはずだと思います。

また、なおのこと、そうしたときに、日本国政府が自前で危機管理上のソリューションを用意することに対して、有識者たる者が、金額の大きさだけで批判を加えることは、行政の危機管理担当者の業務の難易度を高めることになり、ひいては、国民の生命および財産を危険に晒しかねないものとなると同時に、どこの営利企業と裏で結託しているのやら、という疑いを抱かせることになるものと考えます。

まとまりがないのですが、ブログにおける自分のポリシーを遵守した範囲内での私の意見は、とりあえず以上です。

2015年9月19日 08:12JST 追記

上記時点で「鬼怒川水害 タイムライン」で検索したところ、トップ3は以下のとおりでした。
順番からしても、今後の水害対策を考察する上で、有益な順に情報が並んでいると考えます。
(私は、下記3件の並びには、本エントリーの執筆を除けば、関与していません。)
検索結果が改善されていく、というところも、Googleの、ひいてはアメリカのエンジニアリング上の哲学の強靱さだと思いました。
  1. 今回の鬼怒川大水害の被害を大きくした原因を考える!※9/13 ...
    sciencecity.tsukuba.ch/e280377.html
  2. 鬼怒川大水害 これは偏った治水政策が招いた「人災」だ!
    https://newspicks.com/news/1157433/
  3. 情報収集衛星、鬼怒川水害でグーグルにKO負け - NewsPicks
    https://newspicks.com/news/1157364/