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2018年4月1日日曜日

(感想文)TPP11の報道量が少ないとの麻生太郎氏の発言は意味深長である

(平成30年3月)29日財政金融委員会において、TPP11の報道量が少ないと麻生太郎氏が発言したことは、麻生氏が国際秘密力集団による両建て構造を良く理解しており、国民への注意喚起を図るべく「火に油を注いだ」ものと観ることもできる。マスメディアは、発言そのものも、この「炎上」[1]も、森友学園疑惑ほどには取り上げてはいない。日本語メディアは、本件についても、日本国民の側ではなく、国際秘密力集団の側に立っている。麻生氏については、ロスチャイルド傘下のラファルジュと麻生セメントとの提携関係を敷衍して、水道事業において、ロスチャイルド系列である仏ヴォエリアとの利益相反関係を有するとの意見が、懐疑論者(=陰謀論者)から提起されている。事実関係はその通りであろうが、しかしながら、麻生氏は、両建て構造の原則(次段落以降)を良く理解した上で、物議を醸すように放言しているものとも考えられる。この見方をふまえ、麻生氏については、トランプ大統領と同キャラである可能性を見込むべきであろう。女婿のジャレド・クシュナー氏も不動産業であり、彼は、私から見れば、敵方にいる人物であるが、彼は、トランプ氏にとって、一種の保険として機能している。

麻生氏の発言は、いくつかを並べてみると、両建て構造を乗りこなそうとする意志を有しているものと読める。この点、懐疑論者の大勢は、却って(わが国で名が知られており、TPP11に対して注意喚起を図ろうとしている)味方を失っている可能性もある。懐疑論者は、いつも、あらゆる可能性を最初から排除せず、個別の話題に臨むべきである(。もっとも、いつもマスゴミの意見の逆を張るという方法は、思考停止状態ではあるが、大抵の場合に正しいところが難点である)。今回については、麻生氏の指摘こそが正しいと認めるべきである(。現に、TPP11の中身や広範な影響について、大マスコミは、まともな論評を加えた節がない。反論は、生活安全分野に係る本ブログ中の拙稿を確認してから寄せられたい)。

日本社会が両建て構造の下で生存するためには、同キャラ対決を総力戦体制で勝ち抜くことが必要であり、その過程においては、泥を被ることも避けられないかも知れない。総力戦体制下における同キャラ対決とは、次の内容を意味する;個々の産業分野について、国際秘密力集団と資本関係が薄い同種の企業を、「わが方」の企業として用意する;この企業が競争を勝ち抜けるよう、社会に配置されたそれぞれの組織が活動を強化する;戦争は、基本的に国際秘密力集団(とりわけ戦争屋)を富ますことになるので、全力で避ける。競争が激しすぎると庶民に対する搾取の度合いが増すし、「わが方」の企業が国外に不当な利潤を求め出すようになれば、結果的に、われわれも両建て構造に飲み込まれたことになるが、「わが方」の企業の提供する財・サービスが優れており、かつ、各国の庶民の利益を考慮しつつ新たな経済的フロンティアを求めている限りは、両建て構造を許容しながらも、99%に対して誠実であるということもできる。「わが方」の企業は、企業であるがゆえに資本を支配されるという脆弱性を有しているが、かつてのわが国の金融経済政策のように、外国人の資本を制限する各種の手立てを講じていれば、一線を超えられないように防御できる(。正確には、防御できていた時期もあった)。現時点において、国際秘密力集団との資本関係を極小化する形態は、非上場ということになろうが、これは、自らの規模を相対的に小さく留めることになるから、痛し痒しである。現在における公共機関の役割は、国際秘密力集団により考案された経済的慣習が世界的に普及してしまった状況を前提としながらも、国民益を最大化するように、かつ、どの国民も無理なく食っていけるように、能動的に諸制度・諸機能を管理していくことである。両建て構造を否定しながらも、その基本を形成する経済システムを突然死させないためには、相当に高度な知性が必要であり、その過程において、企業人が敵方と結ぶこともやむを得ないのかも知れない。

他方で、堺市の水道事業に係る横領事件を念頭に置くが、地方公務員や国家公務員が怠惰でなく、かつ、日本国民に対して忠誠を誓ってきたのであれば、委託先の外国籍企業に職務上の犯罪を犯した職員が現れたとき、その事実を利用して、地方公共団体がその企業に対する締付けを強化し、よりマシな「わが方」の企業へと今後の委託事業を独占させることは、さほど難しいものではなかったはずである。私自身の少ない経験を根拠に置けば、官僚が主導できる政策については、彼ら官僚の働き次第で、今よりもずっと良い結果を実現できる見込みがある。堺市の水道事業についても、ヴォエリア社が選定される経緯が情報公開請求の対象となるために、私の現時点の検証対象からは外れるが、職員が様々な障壁を設けてよりマシな企業に委託することは、たとえ市長や議員が敵方にあったとしても、十分に可能である(。あるいは、政治力が働いた場合には、政治力が働いたことを全国レベルで知らしめれば良いし、その方法は、いくつかある)。もっとも、堺市の市議会議員選挙について、立候補者による告発・提訴があったように、より上位の環境から仕込みがあったことは、事実である。それに、このような環境下においては、公務員であっても、不自然な「自殺」を遂げない訳でもなかろう。とは言いながらも、大阪府警察(、特に刑事二課)がずば抜けて有能であったならば、この悲劇の連鎖に対して、楔を打込むことができたはずである※1。ただ、選挙の仕込みがあるにせよないにせよ、地方議員の脇が甘く、同時に選挙民の意識も低いことは、近年の富山市議会議員選挙の結果が良く示すところである。人間の弱さを前提にすれば、選挙民の利益を最大化するには、選挙民の多数派自身の意識を変えるという難関が待ち受けている。それでも、ヴォエリア社に委託するという経緯に対して、堺市に関係する地方公務員・国家公務員は、現実の結果以上に大きな役割を果たすことができたはずである。

この点、麻生氏は、山本太郎氏の質問に対して、わが国の水道技術があれば、外国勢=水メジャーに乗っ取られることはないと答弁した(第193回国会 参議院予算委員会 平成29年3月15日 第13号 議事録参照[2])が、この質疑は、両建て構造を乗りこなすためのヒントを公示するために仕組まれたかのようでもある(。山本氏と彼の軍師は、間違いなく、両建て構造に気が付いており、この打破のために活動している)。この質疑に係る議事録は、長らく公開されてこなかったが、昨年末になり、ひっそり公開されたようである。PDFのタイムスタンプは、2017年12月18日11:00:03である。公開までに9ヶ月を要した理由が、仮に官僚のサボタージュによるものであるとするならば、その官僚は、売国的である。淡々と衆院選前に公表するという方法もあり得たからである。もっとも、この事実の公表によって大勢が変化したとは言えない。なぜなら、山本氏のウェブサイト[3]は、公開され続けており、水道に関連する質疑については、議事録も山本氏の記事と基本的に変わりないからである。自分たちの保身のために、官僚がこっそりとグレーなことをやらかすことは、日常茶飯事である。政治家の関与があろうがなかろうが、本件は、民主主義の基本的視座からすれば、グレーな事例である。なお、2017年7月15日の拙稿では、公開時の文言に注目する必要があると述べたが、(字句の異同を確認した訳ではないものの、)基本的な答弁のあり方には、変化が見られない。このことから、水道に係る答弁については、麻生氏と山本氏の両名が、議事録を修正せずに後世に残す決断を下したと考えて良かろう。この事実関係は、間接民主主義の一側面が正常に機能していたことを示す証拠である。水道事業を売国勢力に売り渡すもそうしないも、99%の選挙民がこの事実を知ろうとしたか、良識的に投票行動に移したか、という結果に左右されることになる(。理念上、民主主義は、このような狭隘な内容に収まるものではないが、現時点の99%がこのように考えている以上、その状況を前提に置かないと、なかなか有効な手立てを講じることはできない。山本氏の追求は、この点、政治家の本分を果たしている。社会のほかの部分が、不具合を起こしているのである)。

いわゆる水道民営化について、山本氏が指摘する制度上の問題点に対しては、すべて官僚である北島智子氏(厚生労働省 医薬・生活衛生局 生活衛生・食品安全部長;当時)が回答しており、麻生氏は、本点について責任を負った形とはなっていない。この点、「内閣」対「官僚組織」という、飯山一郎氏と『放知技』の常連諸氏の指摘する構図において、厚生労働省の一部は、官僚組織側に位置付けられることになろう※2。なお、以前の拙稿(2017年4月20日)においては、「日本国官僚集団」と「安倍政権」の仲が良いと表現してしまっているが、この記述は、私の不明によるものである。別稿(2017年6月10日)にて提示した「武官系官僚」と「安倍政権」の仲が良いという見立ては、現時点においても変化していないが、「安倍政権」と「一部の官僚集団」の仲が良い、という内容に、愚見を訂正したい※3(。ただ、この誤りは、必ずしも、謝罪を伴わなければならない程度に深刻なものではない、とも思う)。

私見では、水道事業の運営方法の問題は、高い技術力がありながらも、これを公益のために活用する社会制度に欠如していることにある。住民が少なく、水質が良く、ボトリングして販売可能なブランド名を有する水源に恵まれた水道事業体が、その事業を維持するために、住民を最優先しながらも、水源の一部を商売に利用するなどの工夫を重ねることは、公益の範囲内に留まる種類の経営努力であろう。本来、このような事業制度は、上級公務員が率先して調査・研究・構想して、国際秘密力集団の走狗である学識経験者の我欲に歪曲されることなく、政治家に直言すべき課題である。要約すれば、彼等の実力不足が原因となって、現在の「水の安全」に係る危機が生じている。彼らは、食っていけるしクビにもならんのだから、もっと死ぬ気で頑張る余地がある。なお、彼らに何が最も不足しているかを体験的に述べれば、それは、専門性と勉強不足である※4(。官僚が勉強しないことは、多くの先人によって指摘されたことであるから、本稿で証明せずとも、読者諸賢の経験に照らして、納得いただけることであろう)。

ところで、ある言語・民族集団に根差して形成されている財閥は、国際秘密力集団の方法論に習熟しながらも、その言語・民族集団に貢献するという役割を果たしうる。トルコ・インドネシア・韓国などの小財閥は、それぞれの国民に対して、わが国の財閥と同様の役割を発揮してきていた。無論、例外は存在する;わが国の大財閥として三菱が例外的な位置付けにあることは、明治維新期に創業され、かつ、ロゴが変遷しているという歴史からも首肯できる(。シンボルや言葉の力を舐めてはいけない)。フォードというアメリカの(当時の)新興財閥は、ナチスに献金していた。それに、南米諸国の諸財閥は、現時点でも地域性が強いが、同時に、国際秘密力集団の走狗としての機能を強く有する。また、誰を食わせるのかという点について、財閥という組織が及ぼしうる多方面への影響力は、常に、「学者」の勝手な解釈によって、隠蔽され・曲解されるという危険に晒されている。古典的な事例としては、かつてのNIES(新興工業経済地域;韓国・台湾・香港・シンガポール)というくくり方を挙げることができる。この区分は、当時の香港・シンガポールの企業社会の性格が、韓国・台湾とは別キャラであることを隠蔽する点で、両建て構造を気付かれにくくするという役割を果たす。台湾も中国本土との関係について、両建て構造を捨象されてしまうことになる。グルーピング・分類という思考の技術は、両建て構造を運用するための基礎技術である。

残念ながら、日本国民が独力で両建て構造から脱出可能かと問うてみれば、それは無理である。事実上の米軍の(占領とも読める)影響下にあり、官僚の多くはTPP11を主導する勢力に唯々諾々と従い、マスコミはTPP11が国内の食・水・医療の持続的発展を阻害することを報じようともせず、「学識経験者」の圧倒的多数は沈黙するか誤解を招く発言をなすばかりである。この状態で、TPP11が勝手に止まることを期待することは、到底無理であろう。実際、種苗法の改悪が実現した※5一方で、(農作物の)多様性と持続可能性を保障するための国家的支援は、なおざりにされたままである(。このような押付けを行いながら、ビル・ゲイツ氏を始めとする国際秘密力集団のフロントは、種を保存するプロジェクトを精力的に進めている(スヴァールバル世界種子貯蔵庫)。これは、生物種を独占せんとする意思としても解釈できる)。仮に、国際秘密力集団の走狗によって仕込まれた森友学園疑惑という毒によって、TPP11という毒を呼び込む上で必要な法案が可決されていなかったとすれば、わが国の与野党の政治家たちは、阿吽の呼吸によって、両建て構造を乗りこなしたと評価することができたであろう。しかし現実には、水道法についても、ヴォエリアのような低質な企業の参入を拡大してしまうような改悪がなされようとしている。

このとき、麻生氏の発言は、TPP11を推進しようとするものとも、あるいは一種の褒め殺し的な方法によって、国民の関心を呼び起こそうとするものとも、受け取ることができる。麻生氏の本心が明かされることは、現状の予断を許さない状況をふまえれば、ないものと考えて良かろう。しかし、過去の発言を並べてみると、麻生氏は、奔放に見えながらも、TPP11を頓挫させようとする可能性を秘めた発言を口にしているという点では、一貫しているものと読むこともできる。このような穿った見方も、価値がない訳ではなかろう。麻生氏の「ナチスに学べ」発言は、わが国の状況が状況であるだけに、甚だ不穏当に聞こえたかもしれないが、もしかすると、敵に学べという意味であったのであろうかと考えることもできる。仮に、この発言が、吉田茂氏の口によるものであったとすれば、敵に学べという意味に聞こえた日本人も増えていたことであろう。


希望の党の江田憲司氏は、麻生氏のこの「失言」に対して、31日深夜、連続ツイートで麻生氏に係る逸話を示した[4・5]が、これらのツイートのタイミングは、「改革派」である江田氏が権力を掌握したとき、彼が庶民に不利な政策を推進するであろうことを窺わせる材料となる。国会における主導権を喪失した状態にある希望の党について検証作業を進めることは、有用とは思えないが、万が一もあるから、TPP11に対する同党の隠れた意思を明らかにして、本段落の主張を強化しておこう。まず、希望の党の綱領[6]は、「TPP11」ないし「包括的環太平洋パートナーシップ協定」の語を含まないが、東京都の「国際金融都市・東京」構想を支援する(2.経済に希望を)一方で、食料自給率50%を目指す(7.地方に希望を)といった、TPP11との相性が完全に異なる内容を含む。希望の党は、先の衆院選から一貫して、TPP11そのものに対して洞ヶ峠を決め込んでいるが、この結果、個々の政策が相互に矛盾することについてまでは、配慮できていない(2017年10月1日拙稿も参照)。これらの基礎的事実を踏まえた上で、希望の党所属議員によるTPP11への言及を国会の議事録に求めてみると、5件しか存在しない※6。うち3件は、TPP対策予算が補正予算で組まれていることの適正さを問うものであり、これらの批判は、お役所の手続き論の域を出るものではない。次の1件はアニマルウェルフェアに係る質問において、TPPの語が出たものであるが、TPPの語は、枕詞としての意味しか有していないものと読める。これら4件の発言は、TPPそのものについての賛否を表明するものではない。残る1件は、玉木雄一郎氏による第195回衆議院本会議第5号(平成29年11月20日)の安倍晋三総理の所信表明演説に対する質疑における、以下の批判である。

TPP11ですが、まだ調印もできていないのに、早くも補正予算での対策の話が出ていました。アメリカ入りの十二カ国のTPPで一兆円以上もの対策を打ったはずなのに、アメリカが離脱したら、なぜもっとお金が必要になるんですか。補正予算をぶち上げる前に、国内農家にどういう影響が出るのか、影響試算を出すのが先ではないでしょうか。試算なき対策は、TPP11を口実にした単なるばらまきだと断ぜざるを得ません。

この批判は、TPP11によるわが国農業への影響試算がお手盛りで計算されてきたことを考慮すれば、出てくるはずがない。また、食料安全保障を謳う希望の党がTPPの影響に関する試算を提出せよと求めることは、正当ではある。しかし、従来のTPPに係る試算に対して、同党の見解が提示されていないことは、欺瞞的である。TPP11の内容は、基本的にTPPと大差ないから、TPP11を議論する際、TPPを下敷きとすれば良いだけのところ、にもかかわらず、希望の党は、TPP11について、何ら態度表明していないからである。この玉木氏の発言内容によって、希望の党がTPP11を政争の具としてのみ利用する方向にあることは、図らずも暴露されたことになる。この経緯を考慮したとき、麻生氏に対する江田氏の批判は、TPP11の是非そのものには言及しないという希望の党の方針に対する私の見立てを強化する証拠となる。この推論は、マスコミによって「クリーンなイケメン」というイメージを付与された政治家は、庶民のためにならないから、気を付けよという愚見(2017年8月28日拙稿)とも整合的である。


※1 あるいは、ここまでのグダグダぶりは、散々、売国勢力を油断させておいた上で、一挙に追い込むための布石と観ることも不可能ではない。しかし、その過程における犠牲は、福島第一原発事故による被曝の長期的影響による犠牲者数が津波による犠牲者数を上回ったと考えることのできる現在、結構大きなものがある。年間3000人が上積みされたと概算すれば良い。この人数であれば、統計の改竄も、比較的容易である。原票の分量にして、ロッカー1台?1棹?分程度であるし、1年あたり、全国の1歳(1学年)あたりに換算して、50人程度である。津波による犠牲者だけを3.11の犠牲者と考えるべき時期は、過ぎ去ったと言えよう。

※2 内閣のバックに警察・自衛隊があるという点において、上掲の構図は、核武装への意思(を諸外国に見切られても、なお継続せんとする)という要素を見逃すことになる。切断方法としては、やや問題ありと指摘することができよう。なお、脱線すれば、核武装は、朝鮮半島の非核化が言葉として放たれている現在、わが国の真の独立に対して、逆に作用するものと考えられる。とすれば、原子力産業についても、わが国が次に何をなすべきかは明らかである。原発ゼロを実現し、最終処分について従来よりも長期間(今後10年以上)の検討期間を設けて、福島第一原発事故の影響を顕在化させ(、しかも原発ムラの面々がそれらを隠しきれなくなっ)たときに論じるほかなかろう(。また、つまりは、最終処分を現実化するための作業は、凍結するということになる)。

※3 この「安倍政権・実力系官僚組織」対「そのほかの官僚組織」という構図は、ネーミングとしても微妙に問題がある。というのも、厚生労働省は、その所掌分野については、相当に強力な監督・指導を実施可能なためである。

※4 本件は、個人的体験に根拠を置くために言及しにくいことであるが、相談に応じるべき水研究のコミュニティでは、ここで指摘したような国際秘密力集団の影響力は、基本的に考慮されていない(。せいぜい、原発ムラへの忖度とおねだりが見られる程度である)。このために、研究業界は、庶民の利益を図ることを目的としようと思うのであれば、各国の市民社会の持続的な発展こそを第一の研究成果として、それを阻害する阿漕な大企業の悪影響についても積極的に検証すべき、という国際的な気風を醸成することから始めなければならない。ここに示した表現の前段部分は、もちろん、持続的な開発目標(SDGs)を念頭に置いている(から、これまた、両建て構造に相乗りすることを意図している)。これに対して、文部科学省のやり方は、事務手続の適正さから見た硬直的なものであり、ただでさえ多忙な研究者の足を引張るドケチなものである。国際交流を実現・維持するためには、その実務に長けた(高度な交渉・事務能力を有するバイリンガルの)大学職員が必要であ(り、このような人物こそを正職員として処遇すべきであるが、現実には、そのような人材は、無国籍大企業では年収1000万オーバーになるであろうところ、正職員でなかったりもす)る(。念のため、私がそのような人物であったことは、一度もない。印鑑もまともに押せたことがない)。名声を博している研究者を招聘するには、どう見ても、デフォルトの経費がおかしい。舛添要一氏がファーストクラスというのは、国際的には、一流の学者については、当然の処遇であるのだが、これを庶民が理解できないのは、その間に適切な通訳がいないからである。もちろん、シカゴ・ボーイズのような存在に対する餌は、このような処遇にもある。両建て構造を乗りこなすには、庶民の許可が必要であるが、この点は、悩ましいところである。

※5 もっとも、優良な品種は、その品種自体の持つ市場価値によって、遺伝子組換技術が適用されないまま、世界的に流通する可能性が認められる。平昌冬季オリンピックの報道に付随して、甘くて美味しく大きく栽培し易い「韓国」の苺が話題となったが、同時に、その品種の元となった一代前の両親に当たる品種とも、日本から流出して保護されていないことも(この場合には真に)保守界隈では話題となった。種苗の窃盗は、知的財産権における海賊版と同様の問題であり、日本の農家にとって大打撃である。農家の努力と創意工夫を保護する仕組みが必要とされている。しかし他方で、二種の作物を交配(F1化)した種子や、ターミネーター遺伝子を組み込んだ種子を独占的に農家に供給することにより、農家からの種苗の流出を防止するという方法は、モンサント社を始めとする無国籍大企業群のやり口そのものである。この長短を見極めながら、韓国の不心得者に対する制裁が必要ということになろう。対策を愚考すると、盗人の提供する製品は粗悪品である(何をして育成しているか分かったものではない)という主張を流布することは、良識的な購買層に対する歯止めになるものと考える。もちろん、「わが方」の農作物の品質が現実に消費者が満足できるものになっているという裏付けがなければ、この方策は機能しない。

※6 『国会会議録検索システム』における検索条件は、次の通り。「詳細検索」において、次の条件を指定した。
開会日付:平成29年9月25日~平成30年03月29日
院名:すべて
所属会派:希望の党 希望の党・無所属クラブ
検索語(|;OR検索):TPP 環太平洋パートナー
結果は、次表となった。

NO国会回次院名会議名号数開会日付
001196予算委員会3号平成30年01月30日
002196本会議4号平成30年01月30日
003196予算委員会2号平成30年01月29日
004195農林水産委員会6号平成29年12月12日
005195本会議5号平成29年11月20日

[1] 森友文書改ざん:麻生氏発言に非難集中 TPP比較で - 毎日新聞
(井出晋平、2018年03月30日21時24分、最終更新03月30日22時12分)
https://mainichi.jp/articles/20180331/k00/00m/010/087000c

麻生氏は29日の参院財政金融委員会で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の新聞報道が少ないと指摘し、「森友の方がTPP11より重大だと考えているのが日本のレベル」と批判した。

[2] 国会会議録検索システム
(2018年3月31日確認)
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/193/0014/main.html
#本リンクから左側のリストより選択すれば良い。直リンクは、以下のとおり。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/193/0014/19303150014013a.html

[3] 「参議院議員 山本太郎」オフィシャルサイト | 2017.3.15 予算委員会「美しいポエムの裏にある、米国で勝手に水道民営化宣言」
(2017年03月22日)
http://www.taro-yamamoto.jp/national-diet/6868

[4][5]

[6] 希望の党
(トップ > 政策について、2018年4月1日確認)
https://kibounotou.jp/policy

[7] 国会会議録検索システム
(2018年4月1日確認)
http://kokkai.ndl.go.jp/cgi-bin/KENSAKU/swk_logout.cgi

2018年3月11日日曜日

(一言・適当)官民パートナーシップ(PPP)の原型は勅許会社にある

TPP11の調印式[1]に対して、私なりの呪術を発するため、題名のとおりに指摘しておきたい。勅許会社(chartered company)とは、特定地域における経済・略奪活動に従事することについて権力者から勅許を得た企業を指す。17世紀ヨーロッパ各国のインド会社は、その端的な成功例である。汚れ仕事は民間に任せて、虐殺の責任はすべて手下や会社のせいであるとして、利益だけを上納させる訳である。構造上、従来のわが国の暴力団と変わるところがない。官民協働(Public-Private Partnership; PPP)のはしりが勅許会社であるとすれば、この仕組みが世界各国において、抑圧のために利用されることは、当然であった。パートナーシップという語の語感には、当初から、後ろ暗いところが存在し得たと言えよう(。拙稿では、事実の起源を探求しているのではなく、むしろ、読者の連想記憶の組替えを意図している。しかし、テストでこのように記すと、余程のことがなければ、罰点を付けられるであろう。学生は、注意して欲しい)。

おまけ1;TPP11は、2018年3月8日付で、仮訳文が政府から公開された(直リンク[2]ようである(。先月22日の拙稿では、和訳すら用意されていないことを指摘した)。

おまけ2;伊藤千尋氏の『反米大陸』[3]は、2007年の時点で、(書籍の帯でも、)日本の将来像を南米諸国に見出せると警告していた。チリ・サンディアゴで調印式が行われたことは、真に示唆的である。


[1] 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の署名 | 外務省
(2018年03月09日、2018年03月11日確認)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_005763.html

[2] TPP協定(訳文) | TPP等政府対策本部
(2018年03月11日確認)
https://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/tpp_text_yakubun.html

[3] 伊藤千尋, (2007.12). 『反米大陸 中南米がアメリカにつきつけるno!』(集英社新書0420D), 東京:集英社.
http://id.ndl.go.jp/bib/000009189440


#引き続き、ブログ更新をサボりがちとする予定。

2018年2月22日木曜日

(一言)TPP11=CPTPPを読みこなせる日本人はどれだけいるのか

TPP11=CPTPPの案文が2018年2月21日に公開されたこと[1]を『スプートニク日本』経由で知った。ニュージーランド政府のウェブサイトを確認したが、確かに公開日が21日である[2]。私は、数週間前に気になり、条文を探しまくってみたことがあるが、徒労だったことになる

CPTPPについては、発効条件自体、長らく秘密にされてきた。発効条件は、従来のマスコミ報道による限りでは、11カ国中6カ国以上の承認を必要とするというもの[3]であった。一応、その条件は、この度公開された英語版[4]の第3条第1項に継承されている。しかしながら、従来の根拠のうち、国民に対して全くのオープンアクセスであったものは、茂木敏充大臣(内閣府特命担当大臣(経済財政政策))の会見資料くらいしか[5]存在しなかった(。国民向け説明会の資料もあるが、やはり、条文そのものを掲載していなかったために、根拠とはいえない)。しかも、茂木氏は、TPP11=CPTPPの条文の「Annex I」の「Article 3」に記されていると明言していた[5]が、今回、ようやく公開された条文と対比する限り、いつの間にか、Annexが一つ消え失せたことになる。およそ、「子供たちのごっこ遊び」と呼べる頻度で、ルールが変更されている。

しかも、CPTPPの英語は、(厳密ではあろうが、)構文上、難読と呼べる程度のものであって、大学入試で出された日には、「ムーミン谷はフィンランドにある」説どころではない阿鼻叫喚状態が生じそうである。しかしながら、一般的な日本人が到達可能な理解がいかなるものになるのかを検証するため、また、個人的な答え合わせを兼ねて、第3条第2項をGoogle翻訳[6]にぶち込んでみたところ、予期せぬ程に内容を理解できるような回答が帰ってきたので、その翻訳結果を引用しておく;

本契約が第1項の下で効力を生じていない本契約の署名者については、本契約は、その署名者が適用される法的手続きの完了を書面で預託者に通知した日の60日後に効力を生ずる。
もっとも、22日08時35分の時点で、なぜ、Google翻訳が正確といえるレベルの答えを返したのかは、謎である。


CPTPPに見る秘密主義・選民主義は、官僚・大企業・学術研究機関に所属する自称エリートたちの平常運転モードであるとはいえ、全くの他人事ながら、心配になるものである。CPTPPの下に展開されるであろう構造的不正は、CPTPPの制定に関与して恩恵を受けてきた人物たちの連帯責任となって、必ずや、応報的に機能するためである。CPTPPは、末代まで祟る(庶民にとっての)不平等条約であり、他民族にも恨まれることにもなる。この時空間上の広がりゆえに、どのようなフィードバックが生じるのかは、誰にも予想できまい。大体、渡されもしないし読めもしない契約書に、誰が判を付くというのであろうか。悪徳商法そのものと同一の構図である。わが国の成人であっても、約款を実際に読むか否かは別として、約款が提示されたこと自体を信頼し、契約を進めていよう。CPTPPに対する国民感情は、お手盛りの世論調査では汲み取れないものであろう(。内容を理解している国民は、CPTPPが一種の「国策」であることをも理解しているであろうから、やんわりと調査拒否するであろう)。その辺をよくよく弁えておかなければ、自称エリートたちは、思わぬ事態を迎えることになるやも知れない。


[1] TPP11の条文が公表される 3月に署名へ - Sputnik 日本
(記名なし、2018年02月21日21:54、更新2018年02月22日00:46)
https://jp.sputniknews.com/business/201802214603609

[2] Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership text | New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade
(2018年02月22日確認)
https://www.mfat.govt.nz/en/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-concluded-but-not-in-force/cptpp/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-text/

[3] TPP11、6か国承認なら発効…大筋合意
(読売新聞・ダナン=田中宏幸、2017年11月12日)
https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%EF%BD%94%EF%BD%90%EF%BD%90%EF%BC%91%EF%BC%91%E3%80%81%EF%BC%96%E3%81%8B%E5%9B%BD%E6%89%BF%E8%AA%8D%E3%81%AA%E3%82%89%E7%99%BA%E5%8A%B9%E2%80%A6%E5%A4%A7%E7%AD%8B%E5%90%88%E6%84%8F/ar-BBER65Y

〔…略…〕新協定の発効条件は、11か国のうち6か国の国内手続きが完了してから60日後と定めた。

[4] COMPREHENSIVE AND PROGRESSIVE AGREEMENT FOR TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP
(2018年02月20日18:48:41作成、21日11:07:39変更、22日閲覧)
https://www.mfat.govt.nz/assets/CPTPP/Comprehensive-and-Progressive-Agreement-for-Trans-Pacific-Partnership-CPTPP-English.pdf

[5] 茂木大臣による記者会見の概要【PDF:85KB】
(2018年01月25日)
https://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/tokyo1801/180123_tpp_tokyo_kaiken.pdf

[6] Google 翻訳
(2018年02月22日確認)
https://translate.google.co.jp


#多忙のため、引き続き、ブログ更新をサボりがちとする予定。世界の動きも速すぎて、追随するので精一杯。




2018年02月25日追記

念のため、21日夕刊と22日朝刊の『読売新聞』『朝日新聞』『日本経済新聞』を確認したが、『読売新聞』22日朝刊のみが、CPTPP条文の公開を2面で報じていた。およそ300字程度の小さな扱いである[1]。『Yahoo!トピックス』[2]を見ても、『日本農業新聞』と『ロイター』くらいしか、本件をタイムリーに報じていないようである。23日、トランプ大統領がターンブル豪首相と会談後の記者会見でTPP復帰を示唆した。ひょっとして、トランプ氏が各国国民に対する情報提供を企図したのではないかと思えてしまう程に、主流マスコミは沈黙している。


[1] 記名なし, 「新TPP 発効条件緩和/7条の協定文を公表」, 『読売新聞』2018年2月22日朝刊14版, 2面総合.

[2] 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の関連情報 - フォロー - Yahoo! JAPAN
(2018年02月25日確認)
https://follow.yahoo.co.jp/themes/0f7c5fc9f157e88c2731/

2018年1月27日土曜日

トランプ氏のダボス発言は本心を隠したものに見える

現在、世界は多極化しつつも全体として良い方向に進みつつあるが、主な理由の一つは、ドナルド・トランプ氏の情報発信スタイルに求められよう。トランプ氏の過激な表現は、現実には「名」を「実」に近付けるように機能している。それだけでなく、その実力行使のスタイルも、戦争屋ならびにマスゴミの常識の斜め上を行くものである。「何をするのか分からない」というスタイルによって、相手を劣位に追いやり、事態をノーマライズする。まるでプロレスの乱戦のような発話方法が、トランプ氏の流儀であると言えよう(。これは、「小沢内閣待望論」=「ポスト米英時代」氏の慧眼を勝手に拝借した表現である)。

マスコミは、トランプ氏の言葉には嘘や物議を醸す表現が多く含まれると批判するが、何なれば、これらの不適切な内容は、意図的に発信されている。自らの真の意図を隠し切り、重要ではない誤りに批判を集中させるための弁法であろう。真実の所在を判定する技術を持たない人々にとっては、「フェイク・ニュース」※1というトランプ氏の批判と、それに対するマスコミの反論は、「オマエは嘘吐きだ」「いや、オマエこそ嘘吐きだ」と言い合う子供の喧嘩と同程度にしか見えないものである。しかし、マスコミの欺瞞を暴くという点では、この論戦には意味があった。この結果、現在、大多数の人々は、大マスコミが金主の核心的な利益を保護するために、重要な話をしなかったり、嘘を吐いたりしてきたことを、当然の事実として受け止めている。ただ同時に、残念なことではあるが、このメディアの欺瞞性は、大多数の人々にとって、一般的な事実としてのみ受け取られている。具体的なマスコミのウソを自分たちで暴こうとする人たちは、まだまだ一部に限られていよう(。これはこれで、世界の流れを決めてしまうことになるだけに、一抹の不安を覚えかねないことではある)。大多数の人々が「メディア・リテラシーの勧め」のような話をまともに実践しないのは、多忙であったり、ウソを見抜くためだけに相当の労力と金銭をかけることを厭うからであろう。このことを考慮すれば、本来であれば、NHKや主要新聞、特に「皆様のNHK」がウソを吐かずに、ダボス会議のスポンサー名ならびに出席者名、彼らと彼らが所属あるいは所有する企業の資産額および関係性を、正確かつ粛々と掲載するのが、最も効率的かつ劇的に、わが国の世界に対する理解を改善する方法である(。カネの集め方は、ノブレス・オブリージュを産む)。

ともあれ、「トランプ氏がマスコミの話さない真実を語ることにより当選した」という認識が普及しきったという現実を直視して、自らを正さないことには、マスコミに勝ち目はない。選挙期間以降のトランプ氏の攻撃によって、彼ら主流マスコミの評判は、不可逆的に低下している。マスコミには、(アメリカの事例に限定するが、)ケネディ大統領暗殺、アポロ有人月面着陸計画、同時多発テロ事件の不可解な点の数々、イラク戦争の開始の端緒とその始末、ワシントン政界の児童虐待疑惑、ウォール街、連邦準備制度理事会といった、数々の正確に説明できない事項、いわばタブーが存在する。これらの疑惑に切り込めないままでは、読者・視聴者からみて、マスコミは、弱味を抱えた存在と見做される。トランプ氏は、これらのタブーに切り込む政策を公然と口にすることによって、マスコミを直接・間接に攻撃してきた。マスコミがこれらのタブーに自ら切り込まなければ、マスコミは、トランプ氏を取り扱おうとする時点で、トランプ氏よりも劣位に置かれることを余儀なくされる。陰謀論が、トランプ氏を有利にするテコの役割を果たしているのである。もちろん、この構図は、マスコミの中でも、多少目端の利く人物には共有されてはいよう。彼ら報道人に勇気がないことは、この状況を打開し、世界の権力構造をもう少し(だけ)マシにする上での、ボトルネックの一つである。裏切る人数が少なければ、マスコミの金主に粛正されることになろうから、イヌの地位から抜け出せないのも、理由がない訳ではないのであろうが。


以上の事情をふまえると、トランプ氏がダボス会議という「蛇の巣」において発言した内容を真に受ける人たちは、以下で述べる二点の理由から、余程、ナイーヴである。理由は、前段までの説明から自然に導けるが、改めて、二つに整理すると分かりやすい。一つは、ダボス会議における暗殺の危険、もう一つは、マスコミ自身がトランプ氏の発言の信憑性を低いものとして扱った結果、トランプ氏自身が、その状況を逆用できるようになってしまっていることである。後者は、「自己言及のパラドクス(嘘吐きのクレタ人、オオカミ少年)」と呼ばれる逆説に係る下地を、トランプ氏が作り出し、マスコミが追認したことによるものである。

まず、アメリカ大統領と言えども、常に暗殺の危険があり、これを避ける必要がある。このことは、子供でも知る話であるが、大事な話であるから、何度でも繰り返しておくべきであろう。死の危険があるとき(、あくまで現実の危険が存在しているときに限られようが)、人が方便としてウソを吐くことは、許されることであろう(2017年9月13日)。トランプ氏の発言や政策の根幹は、従来の権力集団からアメリカ国民に利益を還元しようとするものであるから、確実に、死の危険を伴うものである。ダボス会議は、戦争屋を含む国際秘密力集団の例会である。彼ら主催者と対立する人物が、そのような場で発言したとしても、その内容に対しては、死の危険がある以上、何らの責任も存在しない。なお、ケネディ大統領のときと同様、副大統領がいるではないかという指摘は、野暮であり、発言者の立ち位置を明確にするものである。

次に、マスコミは、A:トランプ大統領を常々嘘を吐くと批判しながら、B:ダボス会議におけるTPP発言を大々的に報道したことになるが、このマスコミの言論AとBは、マスコミ自身によって、支離滅裂なものとなってしまっている。というのも、マスコミがトランプ氏を普段からウソ吐き呼ばわりしてきた以上、ダボス会議における発言は、マスコミによれば、守られるか否か分からないことになる。こうなると、このダボス発言は、マスコミの解釈を加えた場合には、人々の役に立つ内容を伝えたことにならないことになる(。守られる・守られないという二値的な確率に従うと考えてみると、マスコミのお墨付きが、かえって、エントロピーを高めることになる)。しかも、主流マスコミは(、たとえば、田中宇氏のように、隠れ多極主義であるといった)、トランプ氏の内心がどこにあるのかを聞き手が落着できるような、役に立つ洞察を加えた実績もない。今更、マスコミ自身が形成した「ウソ吐きトランプ氏」というイメージを撤回するにしても、放置するにしても、「フェイク・ニュース」であるマスコミ自身が、「トランプ氏のダボス発言は、真実である」と言う訳にはいかないのである。少なくとも、読者なり視聴者にとっては、マスコミの言うことの真偽を判定することは、今では不可能である。

「トランプ氏がウソ吐き」「TPPというマスゴミの金主にとって有利な条約への加盟を示唆」という矛盾する関係にある情報を、同一の法人格が発出することだけでも、随分と不審なことであるが、このような自己矛盾的な報道をマスコミ各社が一斉に取ることは、マスコミ全員こそがウソ吐きでありそうだという印象を高める結果となっている。この印象を高める材料として、建前としての報道の独立性がある。つまり、マスコミ各社が、各自の自由な心証に基づいて、この決断を個別に下したことになっている。この建前によって、マスコミは、期せずして、「「ウソ吐きがTPP再交渉詐欺を言い出しました」というニュースを、ウソ吐き集団が揃って報じた」という、「陰謀論なる内容を説いているがためにウソ吐きと呼ばれているであろう私」でもビックリしてしまうような状況を作り出したのである。成員一人一人の内心は知らない(し、「こんな人たち」の人格を慮る必要もないように思える)が、外形的に見れば、複数のマスコミが、集団的かつ一斉に、かつ、独自の判断に基づいて、このような愚行に至る論調を用意したことになる※2。マスコミの言うことを真に受けてみると、以上の理由から、ダボス会議の結果は、マスコミの意図にかかわらず、またもや、マスコミがトランプ氏をディスったという実績だけが積み上がったことになる。

強いて付け加えるならば、一般人にとっては、トランプ氏の権力がダボス会議にも完全に及ぶほどに正常化されてはいないというのが、唯一の、そして残念な情報であろう。ただ、その力関係は、ほかの材料から、十分に窺い知ることのできるものである。たとえば、1月22日のアメリカ連邦政府の一部閉鎖は、これと同内容の勢力分布を示唆するニュースである。われわれ一般人ができることは、世界情勢が良くなることを念じつつ、気長に待つことであろう。

それに、トランプ氏の発言に再交渉という条件が付された以上、非常に面白い展開が予想できる。旧TPPこそは、ISDSを含め、無国籍大企業群の意向が十全に反映された、各国の国民を裏切る契約であった。しかし、再交渉ということになれば、交渉に関与した全員のリストを渡せ、誰が何を策定したのか、誰が何を主張したのかを知らせよ、といったトランプ大統領の要望に、応える必要も出てこよう。その際、米国の連邦議会議員でさえも交渉過程を知ることができなかった、という基本的な事実を思い出す必要がある。「再交渉」という「毒素条項」によって、当事者各国の裏切り者のリストは、世界最高クラスの暴力を指揮できる権力者の手に一挙に渡ることになりうる(。NSAやCIAの良心ある職員の出番である)。わが国であっても、夜も眠れない売国奴たちを高見の見物としゃれ込める機会は、ゼロではない。このような毒素条項ありきでは、再交渉は、潰れる運命にあろう。『WikiLeaks』を通じたタックス・ヘイブンに係る漏洩事件は、この前準備でもあったのであろう。英国のメイ首相がトランプ氏を直接ディスったという日本語報道が目立って見られないことは、ここでの私の推測の補強材料である。日本人のTPP条文作成者の確定的リストが出てくるようなことがあれば、それはそれで、今回、トランプ大統領の仕掛けた罠に、戦争屋(の一部)がまんまと引っ掛かったということを意味しよう。


※1 「フェイク・ニュース」という表現の流行は、マスコミの信用が実際にはどの程度であったのかを良く示している。さらには、「フェイク・ニュース」という誹謗を通じて、口にすることも憚られた種類の「タブー」も、公然と語られることが許されるようになっている。実績を考慮すれば、「フェイク・ニュース」という表現は、現在のマスコミの「真の名」として、世界流行語大賞に相応しいものである。なお、本注記における形容は、私なりのアーシュラ・K・ル=グウィン氏への追悼のつもりである(2018年1月22日没)。とはいえ、本稿で取り扱った話は、大変に捻れたものであるから、ご当人がいかにトランプ氏の治世を評価していたかは、また別に調べる必要がある。

※2 一部のテレビ報道には、この発言を疑問視していたものがあるようにも思うが、半分寝ていたので、どのチャンネルであったのかを含めて、詳細は分からない。昨日の夕刊三紙(読売・朝日・日経)については、トランプ氏に対する不信を前面に押し出した見出しの記憶はないが、本日では、この種の疑問を含む論調が見られるようになっている。たとえば、『日本経済新聞』の河浪武史氏の本日朝刊3面記事の見出し[1]は、「変心か乱心か」である。これは、河浪武史氏の主流マスコミの論調に対する忠誠ぶりを良く表していると言えよう。「乱心」という文言は、およそ、日常生活において、上司や勤務先のトップを茶化すときくらいにしか見られるものではなく、他者を褒めるものではない。もちろん、トランプ氏の「再交渉」という文言は、トランプ氏の主張が後世において正しかったことを担保する役割を果たしており、現時点でマスコミがトランプ氏を誹謗したことは、将来において、マスコミがゲス野郎であったことを示すまたとない証拠として機能するのである。マスコミの連中は、どうやら、当人たちがダブルバインドを仕掛けられたことに、気が付いていないようである。田原総一朗氏に(2017年10月24日記事)弟子入りしなおしたらどうか。


[1] ダボス(スイス東部)=河浪武史, 「変心か乱心か/トランプ氏、突如「TPP再検討」/産業界から見直し圧力/日本、再交渉に否定的」, 『日本経済新聞』, 2018年1月27日朝刊3面14版(総合2).




補論:情報を扱う職業に課せられた情報発信のルール

一般的に、機微に触れる情報を取り扱う人物には、嘘を吐かないという第一のルールと、都合の悪いことは言わなくて良いという第二のルールが、暗黙裏に課せられている(2016年10月20日)。もっとも、このルールは、情報機関ならびにジャーナリズムの実務についてのみ厳密に該当する、と考えるべきであろう。そうしないと、研究者・教育者は、(個人情報などの)いくら機微に触れる情報を扱うことがあるとはいえ、真実を過不足なく伝達するという社会的機能を果たせなくなるし、政治家は、先に見たように、ウソを吐くことを通じて、国益・国民益を守ることができなくなる。本段落の話は、本ブログの過去の記事と重複するし、読者にとっては釈迦に説法であろう(。なお、臨床研究における患者の個人情報や質問紙調査の回答者名などは例外的に秘匿できるが、それでも、研究の再現に必要な条件などは、他の研究者が後追いできる程度に公表する必要がある。あまり細かい話をしても、本稿の論旨に影響せず、意味がない)。

二元配置を利用して、以上のルールについて、要素を{本当のこと, ウソ}と{話す, 話さない}という二軸にまとめてみると、もう少し、情報のルールというものが分かりやすくなる。2×2=4通りについて、{許されている、許されていない}という二値が成立する。二元配置は、コンサルタントや広告商売などで、良く使われる方法である。無論、これが「二軸の両建て」という「セット思考」が仕組まれがちな理由の最たるものであろう、と私は見立てている(2017年10月24日)。

研究者は、公に向けて、専門分野について{本当のことを話す}{ウソは話さない}というルールを課せられている。{本当のことを話さない}という態度は許されていない。池上彰氏が学者としてダメなのは、この点である(2018年1月25日記事・26日追記)。もちろん、{ウソを話す}ということは、許されていない(。福島第一原発事故については、大変に多くの「学者」がこのルールを逸脱したが、社会的制裁は、ごく小さなものであった)。特殊な場合に、「分からないことは、分からないと話す」というものがある。専門分野について、彼(女)に分からないことがあってはならない(←これは言い過ぎかもしれないが、大体、本人も恥ずかしいであろう)が、専門外の事柄については、「その道の専門家は知っているのかも知れないが、私には分からない」ということも、まあ、許されることであろう。私は、このような事態に度々遭遇するが、その度に仮定を重ねて、手抜きをしている。私の態度は、怠惰きわまりないが、それでも、知ったかぶりだけは、ここに挙げたルールに違背する可能性が高いために、本ブログでは、一応、避けている。

なお、「分かりやすい嘘」(2016年1月16日)という手段を有効に利用すると(2016年7月26日)、一部の権力集団に問題視される種類の情報を一般に流通させることが可能となる※3。本稿に見たトランプ大統領の発言スタイルは、この方法を、意識的に使いこなした結果であるとも言える。他方、わが国の政界については、何とも言えない。というのは、トランプ氏ほどに、安倍晋三氏のうつけぶりが上手であるとは、私には思えない(、つまり、素で読み間違いしていたりすると見える)からである。しかし他面で、結果として、現時点の安倍政権が戦争屋との情報戦争に勝つために、うつけ者のふりを許容しているという可能性自体は、否定できるものではない(。ただし、繰り返しで残念なことになるが、強調しておけば、その情報戦争の結果、現政体が勝利したとしても、日本国民の貧困層を救うことになるとは思えない。2017年06月10日記事)。


※3 この方法は、「マジ卍」という流行語が『気まぐれコンセプト』でも(1月6日発売号かで)取り上げられ意図的な操作の対象となっていることからも窺えるように、最近のわが国の広告業界においても、意識されているものと認められる。ただ、「マジ卍」自体に係る意図は、私には明確ではない。昨年末、『5ちゃんねる』に、鏡に映すと逆さ卍となることが投稿されている[2]。これは、『ダ・ヴィンチ・コード』の冒頭で、卍を反転させる様子を見逃した者によるものであろうが、ナチス礼賛だという誤解に基づく批判が生じたことを想起すれば、前例のない話ではない。「マジ卍」の流行の目的は、若年者を誤解させ、卍を誤用させた上で、仏教者と地図作成者による反駁を惹起させるという教育的な回路を作動させるというものであろうが、その原動力が「連合国vs枢軸国」という第二次世界大戦型の両建て構造を狙ってのものなのか、これを戯画化して脱構築するという反・両建て勢力によるものか、あるいは双方の勢力が相乗りしているのか、が読みにくいのである。ホイチョイ・プロダクション(ズ)は、今年に入り、朝日新聞のインタビューを受けている(1月4日あたり?要確認)くらいであるから、まあ、国際系走狗であると判定して構わない。しかし、たとえば、和久井健氏の『東京卍リベンジャーズ』の題名にも見るように、卍という用語の流行が、暴走族文化辺りからも発しているように見える点、なかなかその根を追いにくいように思うのである。和久井氏は『新宿スワン』のリアルさで名を上げた訳であるから、どちらかといえば、半グレに造詣が深いものと考えて良いであろう。半(はん)グレ=六本木=ヒルズ族~麻布署~テレビ朝日~米大使館とか、箱コネでいえば、やはり国際系であろうか。これは、定性的に連想できるものを並べただけであり、確定する必要がある。私がその種のヒュミントを使用しない(し、元から不得手である)と宣言していることは、繰り返すまでもなかろう。そうそう、溝口敦氏がわが国最高レベルのジャーナリストであることは、半グレという名に掛詞を入れたことにも表れている。掛詞が氏自身による公的な説明だけに留まらないのでは?というのは、私の偏見である。話が脱線しそうになったが、以上の材料に加え、本件『5ちゃんねる』なり『おーぷん2ちゃんねる』なりの投稿は、投稿日(2017年12月)、元のツイート主の開始日(2017年5月)とプロフの「闇属性」と撮影日(2017年9月)、広告代理店系漫画家(であるホイチョイ自身)に係る提灯記事、「マジ卍」がよく分からないと辞典編集者が解説する毎日新聞記事[3]との関係から判断すれば、本件は、炎上覚悟のアイドル商売であると同時に、その商売自体が政治的な意図を含んでいると結論できよう。また、このような穿ち読みは、余人にとっては、間違いではあるまい。


[2] JK「まじ卐Tシャツ着てみたよ~」自撮りパシャッ
(2017年12月24日・元ツイートの表示時刻は2017年09月04日か)
http://hawk.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1514122104/

[3] ネットウオッチ:女子高生御用達「マジ卍」 起源不明の新語、意味は 頭抱える辞書編集者/「すごく」の強調? - 毎日新聞
(大村健一、2018年1月10日 毎日新聞東京朝刊)
https://mainichi.jp/articles/20180110/ddm/012/040/045000c

2017年4月23日日曜日

(メモ・感想)日米豪印戦略対話とTPP11の非整合性

#TPP11と日米豪印戦略対話との関係性を考察するのに必要な材料をメモするが、材料なしの推測が多く含まれる。海洋政策(というより安全保障)自体は、私の直接の興味から外れるから、事実の調査を推測・予想で補うという手抜きをする(◆マークで示す)。これらは、大メディアから供給される日本語情報だけでは、理解を組み立てられない。Google様のご神託なら一発のことが多いが、手抜きするのが私のクオリティというものでもある。手習いでもあるので、本記事の構成がバランスの取れたものだとは考えない方が良い。

今月の首相動静からすれば、日米豪印戦略対話(QSD; Quadrilateral Security Dialogue、セキュリティ・ダイヤモンド構想)が現在も潜在的に機能していることは事実であろう。QSDは、対中軍事同盟という側面を有するものでもある。◆この点、田中氏の所論である日豪亜同盟は、部分的に正しいが、この動き(QSD)を認知したものではないか、あるいは、あえて自説にこだわる理由があるということか。

TPP11は、QSDの同盟格上げ(または日豪亜同盟)を成立させる助けとはならない。対話が同盟に格上げされたとしても、TPP11が鬼っ子として同盟を阻害する虞が高い。防衛装備を対象には取らないとは言うが、TPP11があると、むしろ、(域内の自由貿易を促進するという建前のTPP11が)同盟における軍事物資の調達の妨げになる。何より米国製の軍事製品を阻害する。加えて、国際的無国籍企業の非制御性が戦乱の火種となる。TPP11の非対称国であるインドの地勢は、インドにとって同盟成立の際の良い交渉材料となる。この非整合性は、TPP11とQSDとを両立させない。インドは、中国にとっても海路の要衝に位置するが、一帯一路構想は、インドを南北側から迂回するルートも含む。インドを直接縦貫するものも含む。◆中国にとって、ルート選定は今後も柔軟に、ということだろう。

◆TPP11にマレーシア・ブルネイが後ろ向きな理由は、中国の海洋政策ともリンクしているだろう。◆というのも、両国は、中国の海洋進出(正確には、シーレーンの安全確保であろう)の影響をフィリピンの次に受けることになるから。◆中国は、フィリピンとの交渉を大方完了させたのだろう。◆中国からすれば、ベトナム・タイ・ミャンマーと仲良くしておけば、海路の確保は十分なようにも思える。が、クラ運河構想は、まだ構想のままということだろうか。マラッカ海峡の利用(と安全)は、シンガポールにとっての死活問題。クラ運河(中文Wikipediaは、繁体字)構想は、構想を示されるだけでも脅威として機能。全関係国が使用可能という話は、シンガポールの核心的利益を侵害する。ブルネイは、クラ運河によってさほど影響を受けない(スリランカ南部まで4000km台)。ベトナムは同じくらいのノード数だと、900kmくらい短縮か(Google Earthでホーチミン港あたりから適当に計測、3000kmくらいに短縮)。

◆TPP11が各国民に支持される余地があるとすれば、先進国としての生活を充足させる見込みが確実な場合にのみ。中国の富裕層は、名目所得でも?実質所得でも?日本国民全員より人数が多いかもという状態にある。中国経済は、自転車操業と言われる土地本位制経済を始めてかなり経過しているが、日本国内の対中強硬派の見込みに比べれば、今のところ遙かに安定的に推移。◆他国への中華系移民は、基本的に日本人の生活を支える3K階層ではないが、日本人の先入観は従来通り。◆国民の割合では何とも言えないが、人数だけでいえば、中国経済は日豪に代表されるアジア先進国に比較して遙かに成功したと主張されても仕方ない。◆TPP11はこの生活水準を逆転させるか、させないだろう。




2017(平成29)年4月23日13時追記

田中宇氏は、有料記事の中で、以下のように述べている[1]。加盟国だけで言えば、TPP11[2]よりもRCEP[3]の方が、日豪亜同盟体制に整合的である。しかし、安全保障体制構築の必要条件とは、依然として矛盾する。この矛盾はいかにして「止揚」されるのであろうか。やはりいずれも無理、というオチで終わりそうではある。

[1] トランプの東アジア新秩序と日本
(田中宇、2017年04月18日)
http://tanakanews.com/170418china.php

米中協調体制は、アジアの多極化を加速する。日本や豪州が何もしなければ、中国は、日豪亜の予定海域をすべて併呑し、米国圏と中国圏が隣接する世界構造にする。その場合、日本や豪州は国際的に窒息させられ、今よりさらに影響力が低下し、今よりもっと台頭する中国に、好き勝手にしてやられるようになる。対米従属一本槍は、日本や豪州にとって、自滅的、売国奴的な戦略になっている。中国と敵対するのでなく、こちら側も海洋アジア諸国で結束したうえで、中国と仲良くするのがよい。

[2] TPP政府対策本部
(2017年04月20日)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/index.html
#どんどんリンクを変えるのはいかがなものか。行き当たりばったり感満載であるし、(前例を踏襲するが)過去の教訓を学習することのないわが国の行政のあり方を良く反映している。

[3] 東アジア地域包括的経済連携(RCEP) | 外務省
(2017年02月24日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/j-eacepia/

2017年4月20日木曜日

TPP11による日本人受益者層は情報戦争を生き残ることができるか

前稿(2016年4月20日)の脱稿直後に、読売新聞でTPP11へと転換する政府方針が決定されたと報道された[1]が、閣議を経たものではないという。つまり、TPP11への転換方針は、内閣の意思表明の方法としては、一段、劣位のものになる。安倍晋三首相・麻生太郎副総理兼財務相・岸田文雄外相・石原伸晃経済再生相、世耕弘成経済産業相が13日の閣僚会議で確認したという。この決定に至る相互作用の検証は、私の現在のブログ執筆スタイルから外れる材料を要求するため、行わない。ただ、TPP11への固執は、大勢が決した後に逐次的にリソースを投入し続けるものである。喩えるならば、ガダルカナル島の戦闘以後の大本営である。

私は、TPP11を大穴(2016年1月9日の記事も参照)であると説明し、前稿でも「立ち上げようとした時期からしても、準備の拙劣さ・非公開性から見ても、また国際環境の複雑さを乗りこなせないという見込みからしても、一人の日本国民から見た場合には、失敗が待ち受けているものとしか思えない」と表現したが、政府方針が決定されたことを知ろうが、この結論を変えない。わが国の企業系列には、官僚に(は最早存在し)ない集合知が残存するとはいえ、現在の情報環境における主導権の所在は、わが国にはない。正確に表現すれば、米軍三沢基地のように、物理的には日本と見做せる地域に装置が所在するかもしれないが、その情報へのアクセス権がない、つまりファイブ・アイズの一員ではない。途中の因果関係を詳述することをあえて避けておくが、この結果は、日本を本拠とする国際的大企業がTPP11を新たな植民地主義のツールとして利用しようとしても、いずれは、東芝やシャープやソニーや旧長銀のような憂き目に遭うというものとなる。これらの日本発祥の国際的無国籍企業のうち、特に東芝のように政府に依存したビジネスを抱える企業は、日本国民を収奪の対象とするであろうが、日本国民に利益を還元しようにも果たせないであろう。このため、日本国の官僚集団が採用したTPP11という悪手は、内容の大変更がなければ、日本国民にとって、遺恨を残すものとなろう。


本稿の趣旨は、ここまでで十分に果たされたはずであるが、もう少しだけ考察を進めてみる。


日本国民にとって、TPP11も永久に先送りするのが最善な契約であるが、日本国の1%にのみ利益増が見込める方法は存在する。それには、TPP11の第一公用言語を日本語として、ISD条項(この表現は嫌味である。)に係る司法機能を、日本人による、日本式の司法制度・慣行に準じたものとすることである。経済規模が第一位なのであるから、この主張には根拠がある。人口についても、お得意の改竄により対応すれば良い。漢字圏人口なる概念を創出して持ち出しても良い。ここまでごり押しができるのであれば、日本国自体の利益は確保できよう。しかし、これでも、日本国民全体にとっての利益は減少することになる。たとえば、TPPに生物多様性を尊重する機能を埋込むことに失敗すれば、わが国の農林水産業は従来以上に決定的な打撃を受けることになろう。仮に、本段落に示した施策を日本国政府が実現できたとすれば、その事実は、福島第一原発事故により窮地に落とし込まれている「政体」の延命を意味することになるが、そうでなければ、わが国の官僚集団全体が戦争屋(に近しい勢力)に屈したという事実を示すことになる。ここで、私は、わが国のエリート層に悪知恵を授けている訳ではない。わが国のエリート層の実力から言って、日本語を第一とするような無茶を実現できる見込みは、限りなくゼロに近い。帝国主義と呼べる国際環境下において、省庁縦割りに固執し、在野の知恵を十全に活用していないことは、自ら分割統治を招いているようなものである(2017年4月18日)。日本語第一公用語化というハードルを明示して、現状、官僚集団が国民を裏切っていると指摘することは、国民益すなわち公益に適うことである。

TPP11における情報格差が厳然と存在するという事実は、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドという英語圏の各国との関連情報の蓄積状態を対比することにより、逆説的に示すことができる。ニュージーランドがTPP反対の理論的根拠を提供してきたことは、過去の記事で非明示的にではあるが、「分かる人には分かる」ように触れた(2015年9月25日)。カナダは、『Centre for Research on Globalization』を通じて、TPPに係る情報を発信してきた。オーストラリアは、資源国ゆえにTPPに積極的な側面を有していたが、銃器については、シドニー大学が『GunPolicy.org』[1]を運営していたりと、無視できない蓄積を有しているものと認められる。反捕鯨国としても、彼我の力量を探る上で有用な存在である。わが国は、科学をベースにして国益を争う場面において、官僚集団の不勉強という主要因があり、日本人研究者集団という資源を十全に利用しないという派生的要因があり、結局敗北するという事例を多く有する。ここでいう不勉強とは、国家公務員試験合格を期に、各国のエリートに比較して相対的に学習が停滞するという状況を指す。海外留学した利己的な官僚が国家に利益を還元せずに退職し、相対的に国力が減じられているという側面もある。

最後に。トランプ氏の当確後にカナダへと多数の米国人が移住したことは、一部において有名であるが、それでも、戦争屋がカナダを席巻するという事態は、アジア系カナダ人の動向次第ではあるが、長期的には考えにくいことである。何より、国富が流出したと考えるアメリカ国民の良識派が黙って見逃すことはないであろうし、日本人の売国者層に係る私のシナリオ(2016年2月15日)は、現在でも有効であるが、米国籍の戦争屋にも等しく適用される。ここに挙げた英語圏のTPP11の三ヵ国には、多くの移民がいる。これらの移民は、中華系ならば、本国と異なる環境に一族を派遣してリスクヘッジするという伝統的な華僑の知恵に基づくという動機を有していよう。また、いざというときに、これらの渡航先において、本国とのウィン・ウィンの関係を推進するための先兵として定住するという動機もあろう。いずれの動機も、世代を超えた、国家百年の計と互恵的な関係にある。わが国は、あるいは日本国民は、果たして、それだけの先見の明を有するのであろうか。


[1] Compare Japan – Right to Possess Firearms
(2017年04月20日確認)
http://www.gunpolicy.org/firearms/compare/91/right_to_possess_firearms/10,27,31,39,110,113,128,145,162,200

2016年11月18日金曜日

(感想文)TPPはトランプ・安倍会談でいかに話し合われているのであろうか

ドナルド・トランプ氏が米大統領選挙を制したという事実は、それ自体、世界が「ノーマライズ」する方向に大きく舵を切りつつある事実を示すものであるが、その流れをますます加速しそうである。バラク・オバマ氏の下での「チェンジ」は、シリアにおける消極策のように、分かりやすく提示される形の変革ではなかった。それに、ヒラリー・クリントン氏を始めとする、君側の奸と呼べる一派を重用せざるを得なかったために、低質なマスメディアに囲まれてきた※1日本人の大半には、随分と理解しにくいものであった。トランプ氏の下での変化は、随分と分かりやすくなってはいるが、そのルールの変化を、日本のマスコミは未だに正確に伝えようとはしない。悪事に荷担してきた当事者であるためである。なお、読売新聞がクリントン氏の当選を見込んでいたことは、『simatyan2のブログ』に紹介されている[1]

安倍晋三氏も、大メディアによれば、トランプ氏向けのシフトに急いで切り替えているとされる。日本時間7時現在、トランプ氏と会談を開始しているはずである[2]が、読売新聞によれば、TPPに言及しない方針で訪米したという。トランプ氏の面前で、TPPにいかに言及するかは、安倍氏の今後の立ち位置を宣言することになろう。安倍氏は、米大統領選挙戦中の9月20日にクリントン氏とだけ会談したが、この方面を推進してきた読売新聞にさえ、この事実は「異例」と評されていた[3]。日本国政府の代表は、同盟国であるとはいえ、不公平に処遇した相手に、今まさに、歓待を受けていることになる。日本の政策判断の基本が官僚集団に拠るものであることは、米国人には良く理解されている社会的事実であるから、トランプ氏は「米国第一(America First)」を前面に押し出して、日本国官僚の思惑を存分に否定しているであろう。クリントン氏とだけ安倍氏が会談していたという事実は、私自身が決して歓迎することではないが、安倍氏自身にも利用可能な事実である。日本国民の大多数にとって過剰に不公正なディールにより、権力の維持を安倍氏が願い出るというケースを、日本国民は覚悟しておかなくてはならない。

ところで、ニュージーランドもTPP法案を11月15日に採決したと報じられて[4]いるが、TPPを面と向かって米国に推進するということはしないであろう。同国は、条約の成立に尽力したという体裁を取っただけであろう。無論、採決自体に影響しないことをふまえての決断であろう。日本が採決した後の動きであり、日本の動きは、理由の一つとして挙げられる材料となっている。日本は、率先してTPP法案を採決したというだけでも、後世において関係国民から非難の的となろう。この点を理解していて、わが国の官僚や政治家たちは、率先してTPP法案を採決したのであろうか。

なお、陰謀論者としての蛇足をひとつ。カイコウラ(Kaikoura)で生じたM7.8の地震(2016年11月14日12:02:56(NZDT, UTC+13:00))[5]をTPPを推進してきた勢力によるものと疑う者もいるが、私は、その是非を判断する材料を有していない。ただ、この疑いを追求することは、戦争屋勢力の衰退具合を診断する上での良い材料となるものである。また、この追求作業は、わが国が戦争屋の軛を脱していないとはいえ、他国においては安全保障上の調査事項の優先順位のトップレベルのものであると予測される。近い将来、それらの真剣なインテリジェンス活動の成果に、われわれも触れることができるかもしれない。

※1 『ダイヤモンド・オンライン』に瀧口範子氏の「トランプを「ノーマライズ」してはならない」という記事[6]があるが、「政治的に正しい(politically correct)」言説を吐きながら自国民の若年層を戦地に送ることで利益を貪ってきた経済が正常であるとは、決して言えない。以前の状態をノーマルだと勘違いしてきた日本人が多くいるのは、マスコミ人の主流派が瀧口氏のような論調を容認してきたためである。

[1] 安倍晋三生みの親「読売グループ」の大誤算|simatyan2のブログ
(2016年11月11日10時04分)
http://ameblo.jp/usinawaretatoki/entry-12218371731.html

[2] 『読売新聞』2016年11月18日東京朝刊14版1面「日米同盟 重要性訴え/首相 トランプ氏と会談へ」(記名なし)

[3] 首相、国連総会でNYに…クリントン氏と会談へ : 北朝鮮 : 読売詳報_緊急特集グループ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
(ニューヨーク=今井隆、2016年09月19日)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000301/20160919-OYT1T50045.html

日本の首相が投開票日まで2か月を切った米大統領選の候補と面会するのは異例。クリントン氏が日米同盟を重視していることを踏まえた対応とみられる。

[4] TPP bill signed by Parliament as US signals its end | Radio New Zealand News
(Radio New Zealand、2016年11月15日20時19分)
http://www.radionz.co.nz/news/political/318141/tpp-bill-signed-by-parliament-as-us-signals-its-end

The government's Trans Pacific Partnership (TPP) legislation has passed its third reading at Parliament this afternoon, despite the likelihood the trade deal won't proceed.

[5] GeoNet - Quakes
(GeoNet - Quakes、2016年11月18日07時31分)
http://www.geonet.org.nz/quakes/2016p858000

[6] トランプを「ノーマライズ」してはならない (ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
(2016年11月16日06時00分)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161116-00108207-diamond-int&p=2


2016(平成28)年11月18日18時追記

日経[7]・朝日[8]・読売[9]の三紙夕刊の論調についてメモする:日経と読売は、TPPを推進したいと安倍氏からトランプ氏に向けて話したと見られると報じているが、朝日はTPPに係る安倍首相の言動には立ち入って解説していない。この状況は、日本側の出席者が(守秘義務が当然に発生しているであろう)通訳を除けば、安倍首相だけであったという条件によって、制限された状態にある。安倍氏だけで話の内容を過不足なく受け止めることができたのであろうか、という一抹の不安がある。

本日の安倍氏とトランプ氏の会談の形式は、日本国の主権者である日本国民にとって、真相が「藪の中」になる方向性が決定されていたものと評することができよう。後世において、この会談に至る調整の過程は、大平洋戦争に至る上で外務省が果たした(あるいは果たし得なかった)役割に近い位置付けを与えられることになろう。通訳が外務官僚であったとすれば、要点に係る記録は取られているとはいえ、メモ扱いになろう。わが国政府の組織としての実力は、関与した成員個人の力量が他国のカウンターパートに見劣りするものではないにもかかわらず、期待される水準に到達しないことがしばしばある。内閣官房か外務事務次官か米国大使の責任と認められると評しておく。見届人が見届人の役割をしばしば逸脱しつつも歴史の転換点において責任を全うしないというオチは、日本の官僚機構の伝統芸であると結論付けられよう。

本ブログの隠れた目標のひとつに懸かるので、忘れないうちに脱線気味にメモしておくと、丸山眞男氏が評したドイツ人戦犯のニュルンベルグ裁判観は、ハンナ・アレント氏の見たアイヒマン氏のエルサレムにおける裁判とは、随分と印象が異なるようである。アレント氏のアイヒマン氏への評価は、丸山氏の東京裁判戦犯への評価と共通するものがあり、丸山氏のドイツ人戦犯への評価とは対立する関係にある。何か(勇気やプリンシプルや哲学や思考)の欠如こそが巨悪の原因と見做されうるという仮説は、本件会談を取り巻く日本側官僚制にも適用可能であるといえよう。

本件会談は、朝日新聞には「異例」[8]と評されたが、この記述は、瀧口範子氏の紹介する「ノーマライズ」という表現に同調的であると断定できる。つまり、『朝日新聞』は、TPPについてこそ日本的な動きに与していないものの、既存のマスメディアの路線を固守していると評することができる。トランプ氏の大統領就任に反対するデモには、ジョージ・ソロス氏に関連する組織が雇用するものが含まれるという[10]が、朝日新聞の本件記事は、この役回りを果たすものと言えよう。バスでデモ隊が到着したことなどを、まとめて報じるブロガーもいる[11]から、信憑性のあるものと考えて良かろう。なお、紹介したリンク先に設置された別サイトを参照するウィジェットには、不快な画像が含まれる可能性があるため、JavaScriptを無効にして閲覧することを強く推奨するが、この設定自体、記事を掲載したサイトに対する嫌がらせの一環である可能性も認められる。これらのデモは、通俗的にいえば、やらせであり、学術風には「人工芝運動(Astroturfing)」である。アメリカ国民は、各人が、ウクライナにおいて「正体不明」のスナイパーが警官にもデモ隊にも発砲していた事実を想起し、あくまで平和を志しつつも警戒する必要がある。

[7] 日本経済新聞2016年11月18日夕刊東京4版1面「首相「信頼築けると確信」/トランプ氏と初会談」
(記名なし)

 会談は〔...略...〕自宅部分で、通訳を交えて1時間半近くに及んだ。トランプ氏の長女のイバンカ〔Ivanka Trump〕さんと夫のジャレッド・クシュナー〔Jared Kushner〕氏に加え、大統領補佐官(国家安全保障担当)への起用が有力視されるマイケル・フリン〔Michael Flynn〕前国防情報局長が同席した。日本側は通訳を除いて首相のみだった。  〔...略...〕
 〔...略...〕トランプ氏が脱退を主張する環太平洋経済連携協定(TPP)を巡っては自由貿易を推進する観点から意義を説明した可能性がある。首相はTPPはアジア・太平洋地域の繁栄につながり米国の国益にかなうとみている。
 〔...略...〕

[8] 朝日新聞2016年11月18日夕刊東京4版1面「首相「信頼築けると確信」/トランプ氏と初会談/大統領就任前、異例」
(記名なし)

[9] 読売新聞2016年11月18日夕刊東京4版1面「首相「信頼築けると確信」/トランプ氏と初会談」
(記名なし)

〔...略...〕首相は日米同盟や環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめとした自由貿易体制の重要性を訴えたとみられる。

[10]Soros-Funded Orgs Behind Violent Anti-Trump Protests Across America
(Helicondelta、2016年11月12日13時43分41秒)
http://www.freerepublic.com/focus/f-news/3493111/posts

[11]Billionaire Globalist Soros Exposed as Hidden Hand Behind Trump Protests -- Provoking US 'Color Revolution'
(Jay Syrmopoulos、2016年11月10日)
http://thefreethoughtproject.com/soros-trump-protests-revolution/
〔注:ウィジェットには不快な画像が含まれる可能性があるため、JavaScriptを無効にして閲覧することを強く推奨する。〕



2016年11月19日09時追記

トランプ氏と安倍氏との会談に同席し得た日本側の人物は、通訳と内閣広報室の写真撮影担当者の二名であることが、今朝の朝刊三紙の内容を統合する※2ことにより、確定できそうであるが、しかし、会談の内容について責任を持って言及できる日本側の人物が安倍氏を除けば存在しないことは、依然として変わらない。本件会談を日本人が理解する上で重要なことは、一国の宰相が後世の日本人に対して説明責任を果たす上で必要な措置を講じなかったことにある。忘れてはならないのは、トランプ氏の政権移行チームの位置付けは、日本側会談関係者の側が見做す内容(すなわち私人であるかのように広報する)とは異なる点である。いち日本人としては、日米会談と表現したいところであるが、米国側関係者は、国の制度に則り粛々と進めているところ、日本側関係者が一国の政府として十分に機能しているかを問うたとき、日本は、今回の会談が公務であるにもかかわらず、国としての体裁を成した形で作業を実施しておらず、否と答えざるを得ない。このように、形式(日:公務、米:公務だが日本側は私用であるかの扱い)と実質(日:私的、米:歓待の形式こそ「ホーム」であるが実質公的)における公私の逆転が生じているところは、何とも皮肉である。

本日も憶測に満ちた記事で新聞の1面が埋め尽くされているが、トランプ氏のチームの側は、能動的にメディア・コントロールしているであろうところ、安倍氏は、単にトランプ氏の側から口止めされているか、会談の内容を理解できていないだけであろう。もっとも、安倍氏のメディア・チームの力量は、日本人読者の大半を相手にする分には十分なものである。とはいえ、通常の批判的精神を有する視聴者を相手にするには、かなりの能力不足であるから、会談の内容を咀嚼して公表する上で、多くの時間を要しているとも見ることができる。この遅れが事実であるとすれば、状況に対する主導権は、安倍政権下における「インテリジェンス機能の拡充」云々の題目にもかかわらず、失われていると読むことができる。日本のマスメディアこそ、政体によってアンコン(under control)されているといえようが、米国支配者層の変化という状況そのものには、何ら対応できていない。

傍目から見れば破綻しているこの状態は、本件会談に係る日本側関係者の中では、R・ターガート・マーフィー氏も指摘する「二重思考(double-think)」によって、統合された状態にあると推認できる。マーフィー氏は『日本・呪縛の構図』(2015, 仲達志[訳], 早川書房)において、日本の支配階級層の目的が「誰もが安全で人並みの生活を送れるようにすること」から「国民を全面的に統制」することへと変容していること、国民の利益という建前と支配者の私益という本音との乖離状態が、支配者層の精神状態の中では、オーウェルの『1984年』にいう「二重思考(double-think)」によって統合されていると解説する〔第5章、初出はpp.31-34〕。マーフィー氏の分析は、近世以前の歴史解釈のいくつかには(教科書的な理解からすれば)違和感が残るものの、正統的な日本研究の延長にあると理解できるものである。

会談の内容が日本側から積極的に公表できるような内容であるはずがないことは、注意深い日本人の読者には、最初から了解されていることであろう。会談内容を公表するか否かに係る主導権は、トランプ氏の政権移行チームの側にある。加えて、日本側関係者にもっぱら係る要因として、米日両国の力関係に対する日本側関係者の能力と解釈、安倍氏の能力、外務省関係者のここ数ヶ月の業務に係る責任に対する肚の決め方、マスメディア自身の取材能力など、何重ものハードルがある。これらの要因がすべて情報を公開するという方向に作用しなければ、日本語話者から情報が日本語として提供されることは、あり得ない。

なお、佐藤優氏が、本件会談の答え合わせともいうべき解説を、TBSラジオ『くにまるジャパン』(2016年11月18日)で加えている。佐藤氏は、ペルーのリマでオバマ氏に会談した後、NYで会談すべきであった、と指摘する。また、国と国の関係を優先し、オバマ氏の8年の業績を賞賛した後に、次期に国を担うトランプ氏のチームを訪問すべきであった、と解説する。今回の安倍氏の訪米は、本末転倒であり、失敗であったが、失敗であるという事実を糊塗するために大本営発表を続けるであろうとも予測している。ロシア会談も控えているところ、オバマ氏の米国を軽んじることは得策ではない、今後の外交は混乱すると予測している。

※2 日経は、読売・朝日の二紙を差し置いて、参照するだけの材料に乏しい。朝日は、1面で下記引用のように伝える[12]。読売は、「外務省関係者」の弁として下記引用のように伝える[13]。解釈すれば、日本側関係者である「外務省幹部」たちの想定は、完全に機先を制されたことになる。蛇足であるが、トランプ氏の政権について、読売2面でリチャード・アーミテージ氏が解説している[14]が、自身がトランプ氏に反対し続けてきており、党内での反対が3分の2に上るなどと解説してきた(2016年7月25日)ことは、触れられていない。

[12] 
『朝日新聞』2016年11月19日東京朝刊14版1面「首相、トランプ氏と初会談/信頼協調 内容は非公表/異例の就任前 予定超す90分」(記名なし)

〔...略...〕
 会談には、日本側は安倍首相と通訳だけでメディアは入れず、撮影も内閣広報室の写真担当者だけに許された。〔...略...〕

[13] 『読売新聞』2016年11月19日東京朝刊13版6面国際「親族重用 会談に同席/長女の夫 政権入り憶測」(ワシントン=小川聡)

〔...略...〕自宅応接間は豪華絢爛だ。外務省幹部によると、日本側は首相とトランプ氏の1対1の会談のつもりだったが、首相がトランプ氏の自宅に到着したところ、応接間にはトランプ氏とともに、クシュナー夫妻、トランプ氏の外交・安全保障問題の側近マイケル・フリン氏がおり、自然な流れで同席したという。
〔...略...〕

[14] 『読売新聞』2016年11月19日東京朝刊14版2面総合「トランプUSA 識者に聞く/リチャード・アーミテージ 元米国務副長官/早期の安倍会談 大きな意味」(聞き手・ニューヨーク支局長 吉池亮)
#要旨は大略次のとおり。トランプ氏が当選したのは国内問題への公約が支持された、アジア・欧州・中東諸国との関係を「考え直す際には、これまでの歴史を十分に理解した上で慎重に判断すべきだ」。同盟国との関係が大きく変わることは考えにくい。米軍駐留費経費負担の問題を軽視している。トランプ氏は「直感」に頼りがちであるから早期会談の実現は意味があった。安倍氏が直接面会した初のリーダーであることは「私も誇らしく思っている」。

2016年11月2日水曜日

TPP締結のため戦争屋は日本国政府の購入した米国債を利用するかもしれない

 米国大統領選におけるドナルド・トランプ氏の勝利後を予測すると、日本国の購入した米国債の扱いが焦点になることが、TPPとの絡みで浮かび上がる。現時点の日本における陰謀論者の知的リソースの何割かは、TPP自体に向けられている。大マスコミは4日成立の方向と報じているが、報じられないことがある。それは、TPP法案を他国に成立させることの難しさである。

 米大統領選こそは、世界大戦を通じた世界政府への道と、国民国家を基調とする多極的世界への道との分岐点である。ただ、現状を憂う日本人がルールを逸脱せずに実効的に99%側の米国人を支援できることは、多くないように思われる。わが国において、わが国に対するTPPの悪影響を暴き出すことは、数少ない貢献策のひとつではある。ただ、それだけでなく、日本側の切り札として、日本が購入した米国債が利用されるという危険性を指摘しておくことは、世界平和のために貢献している組織や個人等に対して、対策を立てる余地を与えるための警告になり得る。その支援は、巡り巡って日本の将来に役に立つと信じるからこそ、本記事では、この危険を指摘する。

 TPPは、相手国がなければ旨味の少ない、未成立の条約である。TPPを確実に成立させるための力がなければ、TPPにより利益を得るであろうわが国の1%は、急いでも仕方がないことになる。しかし、現在のわが国には、国内の実力に応じた外交力と呼べるものが存在しない。この矛盾する状況は、経済的ツールとしての米国債と、軍事的ツールとしての「核」爆弾(級の何か)の存在によって架橋されうる。後者の存在を追究する作業は、もう少しだけ後回しにしておきたいが、ネット上では、この可能性を指摘する声がいくつも見られる。

 恐慌等を生じさせるだけの経済力が、他国からの侵略に対する抑止力として機能するとすれば、この経済力は、TPP締結を他加盟国に強制するだけのツールとなり得る。この仮説は、TPPの成立を現政権が急ぐ理由を正確に説明するものとなる。以下の展開を見込むことができる。
  1. トランプ氏が勝利する=戦争屋が敗北する
  2. 戦争屋が日本に逃走する
  3. 受入先はミネルヴァのフクロウのあるところかな?
  4. 過去の戦争犯罪の追求を逃れるための取引材料として、フクロウ経由で米国債の売却を仄めかす(=脅す) 

 米国債の売却というキーワードを出した政権は、従来であれば、短命に終わるのが常であった。トランプ氏の勝利により、今度はいかなる展開を迎えるのか。わが国の陰謀論者は、TPPの危険性を訴えることのほかに、今後の道行きを考察するという作業も行う必要がある。

2016年11月3日18時30分修正

タイトルが許容できないくらいに意味不明であったために修正した。
  • 前:TPP締結のため戦争屋は日本国政府の米国債を利用するかもしれない
  • 後:TPP締結のため戦争屋は日本国政府の購入した米国債を利用するかもしれない


 TPPを米国抜きで日本国政府が主導するという事態は超大穴である、と以前に予想したが(2016年1月9日)、この嘘のような話が現実化する危険が認められる現在、生活安全警察行政の四大分野、銃器・風俗・薬物(特に大麻)・賭博に係る私の考察も、変更する必要があるかも知れない。これらの分野について、私は、TPPにより不可逆の影響を与えられる、つまり解禁されるものと指摘した(2015年9月25日)。しかし、日本国政府が米国抜きでTPPを主導する程の、何らかの実力の裏付けを有している場合には、条文を逐条的に掲載しておらずとも(2015年11月7日※1)、10章の附属書II分野11「法の執行及び矯正に係るサービス並びに社会事業サービス」に記載した文面により、自国の都合を押し通すことができると考えていたかも知れないのである。

 2012年3月のメルボルン・ラウンド後※2、生活安全行政に係る附属書II分野11の影響が、企業関係者らによって検討され、政府機関内においても決裁されていることまでは断定できようが、その経緯が開示されないという状態は、わが国の「第二の敗戦」時には、興味深い結果を引き起こすことになろう。というのも、これらの経緯は間違いなく秘密保護法の指定対象となっているであろうし、隠蔽の必要を感じ取るくらいの実力は、わが国のどの高級官僚にも備わっているであろうからである。しかし他方で、その結果が連帯責任になるということまで、個々人が理解した上で各自の「保険」をかけているのであろうか。2012年の時点で、TPPは、少なくとも一部の官僚には、「農林水産業以外についても、最小・最低の状態にまで、わが国を含めた各国政府の規制を撤廃する」という内容として、理解されていたことであろう※3から、TPPが国益を棄損することは、十分に理解されていたはずである。

 ところが、2012年3月の時点で、何らかの実力公使の含みを日本国政府がTPP加盟国に対して臭わせることを知っていた人物が、TPP第10章の附属書II分野11を検討していた場合、見えていた景色は随分と異なるものになっていた可能性が認められる。あからさまに危険が予想される内容に対して、包括的な法執行云々の留保という、およそ稚拙な条文が用意された形になっていた訳であるが、この条文は、日本が相手国に対して強く出られる場合に限れば、規制の強化までを含めて、強気に出る上での根拠に利用できるものとなる。強気に出ることができるという見通しがあればこそ、包括的な文面でOKという形になっていたとも読める訳である。この解釈が成り立つという事実は、2012年の時点で、福島第一原発事故の四号機にまつわる色々な話が、この附属書の案文を決裁した関係者に共有されていたという解釈をも牽連して成立させるものとなる。

 しかしながら、各国の外交・防衛関係者を出し抜いて、わが国がふたたび大日本帝国を超えるような伸張振りを経済的外交において達成し得るかと問われると、私の答えは断じて否である。米国の主導した形でのTPPが米国民の意思により否定されようとしているのであるから(←これには感謝)、各国の外交関係者は、今こそTPPから足抜けするための方策を探っているであろう。ブルネイ・シンガポールの両国は、あまりに領土が狭小であるため、単独では、わが国の新規の軍事的影響力を無視して足抜けすることが難しいかも知れない。しかし、オーストラリアが抜け、カナダが抜け、チリ・マレーシア・ペルー・ニュージーランドと(面積順かどうかは怪しいが、)抜けていったとすれば、結局TPPは成立せず、各国の司法の安定性は、確保されるということになろう。


※1 2016年10月追記分を参照

※2 インターネット・アーカイブス収録のファイルの題名を参照。

Microsoft Word - TPP NCMs - Consolidated formatting note - Annex II - Post Melbourne Round (clean).docx - Annex II. Japan.pdf
https://web.archive.org/web/20151117165019/http://www.mfat.govt.nz/downloads/trade-agreement/transpacific/TPP-text/Annex%20II.%20Japan.pdf

※3 これは、一種の後出しジャンケンにもなりかねないが、私の2012年当時の予想を敷衍したものでもある。

2016年10月26日水曜日

(メモ)TPPには大麻取締法の明記がないが大麻製品の関税は撤廃される

 本日(2016年10月25日)の厚生労働省麻薬取締部による有名人らの現行犯逮捕に係る報道は、TPP成立後であれば、生じるものではなかったかも知れない。この種の事件は、わが国における大麻の大幅な規制緩和を仕掛ける目的にも、規制を訴える目的にも、両方の目的に利用されるものとなり得る。日本国に係るTPP10章の附属書[1a, 2a, 1b, 2b]に、大麻取締法の名が具体的に挙げられている訳ではない。TPP成立を睨み、いわゆるISDS条項を盾に、大麻の栽培・製造・販売に係る規制緩和を実現するために、不当逮捕であるという主張が提起される可能性がある。

 なお、続報では、使用者の一人が使用を認めたと報じられているが、逮捕された有名人は認めていないともいう。現時点でマスメディアが競い合い、報道の洪水を起こすことは、有罪であるかのような印象を視聴者に与え、後戻りのできない風評被害を容疑者に対してもたらすことになる。即断は慎まなければならない。この点を考慮して、現時点ではマスメディアへのリンクを張らない。また、現時点の本ブログの影響力は極小化されているので、本記事の公開が被疑者への現時点における中傷に荷担するということもないと判断する。本記事における私の批判の矛先は、もっぱら、TPPに係る重要論点を報道しない、マスメディア報道のみに対して向けられている。

 この事件がロドリゴ・デゥテルテ比大統領の訪問日に報道されたことは、逮捕日がいつであるのか明確に示されていないという点から見ても、示唆的である。わが国においては大麻も許さない、という厳罰姿勢を示して友好性を強調するという側面も、否定しきることはできないであろう。我ながら、いつもの考え過ぎであるようにも思えるが。

 容疑者が無罪であると判明した場合、本件報道は、大麻の大幅な規制緩和の論拠のひとつに利用されるであろう。安全性に対して取締りが過重であり過ぎたために、今回の誤認逮捕が生じた、というロジックが利用される可能性が認められるのである。大麻の危険性または安全性については、今回も立ち入らないが、メディア上のイメージ操作が本件報道を通じて行われるという点については、指摘しておく。

 なお、TPPの「譲許表」[4a, 4b]つまり関税撤廃リストには、大麻草自身や大麻由来の製品がいくつか含まれるが、吸引用と認められる物も含め、全製品の関税が撤廃される。従来から「無税」の枠に含まれるものもリストに含まれている。このリスト入りの理由は、私には調べ切れていない。つまり、輸入が禁止されていたためであるのか、元々関税がないためであるのかの区別は、まだ付いていない。

[1a] Annex I Japan (英文、Chapter 10, Annex I Cross-Border Trade in Services and Investment Non-Conforming Measures, Party-specific Annexes)
 (作成2016年01月20日10:35:42)
http://www.mfat.govt.nz/downloads/trade-agreement/transpacific/TPP-text/Annex%20I.%20Japan.pdf

[1b] Ⅰ.附属書Ⅰ 投資・サービスに関する留保(現在留保)(日本国の表)【PDF:559KB】
(作成2016年03月08日19:43:51、変更2016年03月09日00:34:34)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_annex01-2.pdf

[2a] Annex-II.-Japan.pdf(英文、Chapter 10, Annex II Cross-Border Trade in Services and Investment Non-Conforming Measures)
(作成2016年01月20日10:35:42)
https://www.mfat.govt.nz/assets/_securedfiles/Trans-Pacific-Partnership/Annexes/Annex-II.-Japan.pdf

[2b] Ⅱ.附属書Ⅱ 投資・サービスに関する留保(包括的留保)(日本国の表)【PDF:388KB】
(作成2016年03月08日19:45、変更2016年03月09日00:43)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_annex02-2.pdf


[3] 大麻取締法
(昭和23年7月10日法律第124号、最終改正:平成11年12月22日法律第160号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO124.html

[4a] 2-D: Japan Tariff Elimination Schedule (英文、Chapter 2, Annex 2-D: Tariff Elimination, Party-specific Annexes)
(2016年01月27日18:58:43)
http://www.mfat.govt.nz/downloads/trade-agreement/transpacific/TPP-text/2-D.%20Japan%20Tariff%20Elimination%20Schedule.pdf

[4b] ・附属書2-D(日本国の関税率表:譲許表)【PDF:10,188KB】(和文)
(作成2016年03月08日19:00:25、変更2016年03月08日23:39:30)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_02-3.pdf

2016年10月1日土曜日

日本経済新聞によるTPP和訳報道とアメリカ大統領選テレビ討論会との交通整理

[1] 情報をフルオープンにすると、ドル詐欺が悪さもできず、階層も不要になり、ネット時代はそれが簡単にできる時代です。 小沢内閣待望論
(小沢内閣待望論、日時2016年9月30日18:32)
http://www.asyura2.com/16/cult16/msg/787.html
TPP詐欺がいい例で、秘密交渉で交渉結果も数年後まで秘密とか怖いのもそうですが馬鹿っぽく映る訳で、案の定日本以外では猛反発で本家本元の米国で大統領候補が競って反対を主張するというお粗末さで、部下が上司に報告連絡相談せずに手柄を立てようとしてドツボに嵌まって上司に泣きつく図と一緒ですが、これなども情報がフルオープンであればこんな馬鹿げた話にはならず、現状のWTOの問題点を改善する普通によい貿易協定に仕上がる訳ですが、ドル詐欺のくそじじいが総取りするためのふざけた内容になり、それがバレて総すかんを食らっている所ですが、これもインナーサークルの馬鹿が内緒話で決めるからこうなる訳で、ミステリーサークルかー、あれもお前らがNASA詐欺辺りにやらせてるだけだろー、もうそういうのは疲れるんだよー、
というわけで、小沢内閣待望論氏にあらかた批判し尽くされてしまっている感のあるTPPであるが、従来TPPを推進する側であった日本経済新聞は、9月27日、和訳の誤りについて、次のように伝えていた[2]。27日の同じ紙面で、アメリカ大統領候補のテレビ討論会について大きく報じる[3, 4]傍らで、明らかにひっそりとである。テレビ討論会に係る3面の記事[3]では、TPPには一つも触れられていない。

※ 文字数や段数で定量的に比較可能とはいえ、この手の趣味に走るには、いささか時機を逸しすぎている。

 ワシントン・ポストによる討論会の書き起こし[5]を読むと、TPPについて両氏に対立がなかったとすることは、誤りか誤りでないかの二択を問うならば、誤りであることが分かる。応酬がなかったとすることは、明らかに誤りである。トランプ氏は、テレビ討論会において、クリントン氏がNAFTAと同様にTPPをゴールド・スタンダードであると述べたと攻撃し、対立点とするよう試みている。ただし、TPPに係る応酬を同じページに掲載することこそ避けているものの、日経は、同日夕刊の1面[4]で、TPPに係る応酬を一応のところは伝えている。TPPの語を同じ紙面に掲載しないことは、日経にとって、ギリギリの選択であったということであろう。この日経の編集方針は、佐藤優氏のいう「官僚の氏名を大人のおもちゃの広告の横に並べる」技と同種の原理によるものと認められよう(出典は追々改めて確認したい)。ただし、この1面記事は、和訳から「once」の語を欠落させている。この事実が認められる以上は、擁護できたものではない。大学入試の文法問題になりそうな内容であり、馬脚を表すのも何なので、指摘するだけに止めておく。

 書き起こし原文[5]を改めて読むにつけ、クリントン氏の官僚答弁感は、じわじわ来るものがある。下記の引用部分だけで、官僚答弁であると評する証拠は十分である。理由は簡単である。引用部分に表れる時制は、順に、現在形、過去形、過去形である。いずれも、その時点についての事実を語る形式である。過去の事実は、すべて自身の言動に係るものであるにもかかわらず、この突き放し感は、大したものである。最初から練習していたとみなすべきであろう。それとも、台詞を覚えるのが本業である人の本領発揮ということなのであろうか。

 オチ。翌28日朝刊の続報のリード文において、吉野直也氏は、「環太平洋経済連携協定(TPP)にはクリントン氏も反対した。〔...略...〕どちらが勝手も米国は内向き志向を強め、グローバリズムの後退を招きかねない。」と報じている。グローバリズムは、大いに後退してくれて結構である[6]

[2] TPP承認案で和訳不備 民進、審議やり直し要求  :日本経済新聞
(ウェブは2016年09月27日12時15分、2016年09月27日夕刊4版3面総合)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS27H0M_X20C16A9EAF000/
 岸田文雄外相は27日〔...略...〕、協定文書の和訳の一部に重複と欠落があったと明らかにした。〔...略...〕外務省は27日午前の自民党外交部会で協定文書の和訳ミスを説明。他国の企業を自国と同等に扱う「内国民待遇」の部分で米国の例外措置を巡る条文に欠落があったほか、貿易商品がどの国でできたのかを判定する「原産地規則」でも条文の一部が抜け落ちているなど3カ所のミスがあった。

[3] 記名なし, 「攻撃するクリントン氏/トランプ氏 必死に反論/TV討論 冒頭から激論/2016米大統領選」, 『日本経済新聞』, 2016年09月27日夕刊4版3面総合.

[4] ヘンプステッド=吉野直也, 「大統領選 初のTV討論/米国の進路巡り応酬/トランプ氏「盗まれた雇用を奪回」/クリントン氏「大企業の抜け穴封鎖」」, 『日本経済新聞』, 2016年09月27日夕刊4版1面.
トランプ氏が環太平洋経済連携協定(TPP)を巡り「クリントン氏は賛成から反対に立場を大きく変えた」と同氏の豹変(ひょうへん)ぶりを追及した。クリントン氏は「それは事実ではない。私は反対していた」と答えた。

[5] The first Trump-Clinton presidential debate transcript, annotated - The Washington Post
(Aaron Blake、2016年09月26日11:59 EDT(-500))
https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/09/26/the-first-trump-clinton-presidential-debate-transcript-annotated/
TRUMP: 〔...略...〕NAFTA is the worst trade deal maybe ever signed anywhere, but certainly ever signed in this country.

And now you want to approve Trans-Pacific Partnership. You were totally in favor of it. Then you heard what I was saying, how bad it is, and you said, I can't win that debate. But you know that if you did win, you would approve that, and that will be almost as bad as NAFTA. Nothing will ever top NAFTA.

CLINTON: Well, that is just not accurate. I was against it once it was finally negotiated and the terms were laid out. I wrote about that in...

TRUMP: You called it the gold standard.

(CROSSTALK)
[6] ヘンプステッド=吉野直也, 「米「反グローバル」の影.TPPともに反対/同盟巡り対立/大統領選 直接対決スタート」, 『日本経済新聞』, 2016年09月28日朝刊14版1面.

2016年7月24日日曜日

ドナルド・トランプ氏の大統領候補指名受諾演説はわが国のTPP推進勢力の梯子を外した

#本記事も、一種の「あらたにす」である。また、本記事の内容は、本日(平成28(2016)年7月24日日曜日)の朝刊各紙を確認する前に記されたものである(文章の調整は、本文を含め、本日中に行われているが、内容そのものの変更は加えていない)。このため、本記事は、図らずも、本日の朝刊に対する前振りとなっている。

 昨日(平成28(2016)年7月23日土曜日)の読売新聞朝刊は、1面の「トランプ氏 TPP反対明言/共和指名受諾 クリントン氏を批判」という記事※1により、ドナルド・トランプ氏の1時間を超える共和党大会演説の概要を示している。読売新聞の1面記事は、トランプ氏がTPPへの反対を明言したことを事実として記載するのみである。1面記事では、事実についての切り取り方はともかく、読売新聞社としての明確な評価を下していない。6面の概要※2も、7面の解説※3にも、社としての評価は提示されておらず、アメリカ総局長の小川聡氏による記事※4が挙党態勢とは言えない旨を指摘するのみである。ただし、小川氏は、TPPには言及していない。

 他方、日本経済新聞の1面記事※5は、リード文の末尾で、
【...略...】各国で批准の過程に入った環太平洋経済連携協定(TPP)に反対した。同氏の内向きな政策に産業界や投資家は不安を強めている。
というトランプ氏への批判を明記し、本文では、
【...略...】TPPに反対するトランプ氏は共和党の従来の政策と一線を画する。18日に採択した党の政策綱領はTPPの早期批准に余地を残していた。

とTPPが共和党による主要政策であったと主張している。朝日新聞は、1面ではトランプ氏の演説を報道していないが、2面にメインとなる記事※6を載せ、別立ての「日本政府懸念」という見出しを掲げた記事などで、周辺の受け止め方を提示している※7、※8。朝日新聞は、日本政府の意向について、次のように伝えている※8
 日本政府はトランプ氏が反対する政策について、早めに道筋をつけることで、方針転換が図れないようにしたい考えだ。TPPは、秋の臨時国会で協定の発効に必要な国会承認に優先的に取り組む方針だ。首相官邸幹部は「トランプ氏は本当に強くTPPに反対しているのだろう」と語る。

 トランプ氏が在日米軍駐留経費の負担増を求めていることにも危機感を募らせる【...略...】
※1 読売新聞(2016年7月23日)「トランプ氏 TPP反対明言/共和指名受諾 クリントン氏を批判」朝刊1面14版.
※2 読売新聞(2016年7月23日)「貿易協定 強い不信/クリントン氏 操り人形/テロ関係国の移民 拒絶/受諾演説要旨」朝刊6面14版.
※3 読売新聞(2016年7月23日)「治安・同盟「米国第一」/トランプ氏受諾演説/民主の政策も盛り込む/米大統領選2016」朝刊7面14版.
※4 読売新聞 小川聡(アメリカ総局長)(2016年7月23日)「「トランプ党」の代表」朝刊7面14版.
※5 日本経済新聞(2016年7月23日)「トランプ氏、反TPP明言/共和党大会「米産業を壊滅」/大統領候補受諾 国益を優先」朝刊1面14版.
※6 朝日新聞(2016年7月23日)「トランプ氏「米国第一」/指名受諾 移民・貿易 不満を代弁」朝刊2面14版.
※7 朝日新聞(2016年7月23日)「クリントン氏へ「既得権益」矛先」朝刊2面14版.
※8 朝日新聞(2016年7月23日)「米軍駐留・TPP 日本政府懸念」朝刊2面14版.

 ドナルド・トランプ氏は、大統領候補指名受諾演説※9において、TPP、環太平洋パートナーシップ協定をヒラリー・クリントン氏が支持したことを批判している。その前振りとして、ビル・クリントン氏が最悪の経済協定であるNAFTAを締結し、WTOへの中国の加盟を支持したこと、ヒラリー氏がこれらの中産階級を破壊する通商協定を事実上すべて支持してきたこと、韓国との通商協定(FTA)を支持したことを批判している。具体的には、以下のように述べてTPPを批判している。
 TPPは、われわれの製造業を破壊するだけではなく、アメリカを外国政府の支配の対象とする。私は、われわれ(アメリカ人)労働者を傷付け、またはわれわれの自由と独立を縮小するような、いかなる通商条約にも署名しないことを誓う。その代わり、私は、個々の国とは、個別の取引を行う。

 われわれは、われわれの国からの(代表の)誰もが読んだり理解することすらできないような数千ページにも及ぶ、多数の国との、大量の交渉に入ることはしない。われわれは、不正を行ういかなる国に対しても、税金や関税の利用によるものを含め、すべての通商違反を取り締るであろう。

 これには、中国による、憤激を覚えるような知財窃盗、それに伴う違法な製品の不当廉売、破壊的な通貨操作を止めさせることが含まれる。われわれは、中国や多数の他の国との酷い通商協定を、根底から再交渉する。これには、NAFTAについて再交渉し、アメリカにとってはるかに良い成果を得ることが含まれる。そして、われわれが望む結果が得られなかったときには、われわれは立ち去れば良い。われわれは、(われわれの望むように)物事を作り上げる作業を再び始めるであろう。

【以上は私訳である。原文リンク※9
※9 Full text: Donald Trump 2016 RNC draft speech transcript - POLITICO
http://www.politico.com/story/2016/07/full-transcript-donald-trump-nomination-acceptance-speech-at-rnc-225974

 トランプ氏からみて、TPPは、締結の経緯にかかわらず、他国により強いられようとした不正な協定である、とわれわれは理解することができる。正確には、TPPは不公正な交渉であって、法に違反した不正な交渉であるとまでは指摘していないが、引用部分を全体として読めば、この解釈については、何ら問題はないであろう。また、以上に引用したトランプ氏の演説に摘示された事実は、TPPについては真であると言える(反論があるなら、証拠とともに提示すべきである)。この事実から導かれるTPPに対する意見は、関係各国の国民の立場により異なりうるかもしれないが、少なくとも、共和党の大統領候補となったトランプ氏にとって、他国によるTPPの押しつけは、不正なものと認識される可能性がきわめて高いものであると見ることができる。

 すると、朝日新聞によるとTPPの早期推進を働きかけるとするわが国は、名指しされずとも、「不正を行ういかなる国」の候補に自ら含まれようとしていることになる。トランプ氏が相手国との個別の交渉には応じると明言しているにもかかわらず、わざわざ、TPPを締結しようと推してくる国は、「不正な条約」を推す国である。わが国にとっての得策は、TPPを通じてではなく、従来型の国家同士の通商協定の枠組みの中で、国益の保全・向上を図るアメリカとの交渉に臨むこととなる。つまるところ、トランプ氏が大統領となった場合には、ネオコン台頭以前の規準が適用されると理解し、その状態に向けて覚悟を決めれば良いだけである。

 TPPやNAFTAに対する批判に続いての中国への強硬策に係る部分も引用したが、私がこの部分を引用したのは、トランプ氏の強圧的な対外政策が日本に対して適用された場合の成り行きを想像するための材料に用いるためである。決して、中美関係または米中関係そのものについて言及したい訳ではない(し、私には、その分析能力もない)。ただ、「戦争屋」の影響を脱した米国は、再度、自身についての「正しさ」や「公平さ」を棚上げせざるを得ない場合であっても、「正しさ」や「公平さ」を外交の場で規準とする(利用する)であろうし、この語は、中国に対しても、日本に対しても、相手国を見ながら相手国の行為に使用されることになるであろう。中国と米国という、太平洋を巡る二大国の狭間でわが国が生き残りを図る際、国際的に見た場合の「正義」「公正」に悖ることは、米国からの批判の材料となる。「トランプ大統領」の米国との交渉の場では、社会科学分野にいう「実証的な証拠」が活用されることになるであろうし、たとえば調査捕鯨分野において展開されているような、自然科学の範疇に収まらないプラスアルファの動きも重要なものとなるということであろう。

 TPPが立ち消えとなった後の日米交渉においては、「不正」という語だけではなく、「不公正」という表現が今後用いられる可能性がきわめて高い。この論拠を詰めることはしないが、共和党の予備選を通じたトランプ氏に対する、「考え方が旧来のものである」という趣旨の批判がグローバリストの側から多数提起されたことをふまえれば、この予想が的外れということはないであろう。わが国は、日米繊維交渉や、自動車や半導体分野における貿易摩擦の再現のような、タフな二国間交渉を米国から強いられる可能性が十分に認められるという訳である。(農業については、当時とは異なる条件がいくつか存在するため、その考察は、別の機会に取っておこう。)TPPに係る交渉において、わが国の国益を代弁するはずの人物は、誰も必要十分に把握していなかったに違いないが、TPP関係国の諸制度の中には、アメリカの現時点・近い将来の諸制度からみて、卑怯であると見なされる制度が多く存在しているであろう。この種の制度は、たとえ日米以外の第三国のものであったとしても、今後の二国間交渉の場において、TPP交渉時に日本側が黙認していたことを示すカードとして利用されるであろう。

 TPPに係る交渉経緯は、今後、何らかの形でインターネット上に公開(あるいは放流)される可能性がそれなりに高いものと認められる。トランプ氏が大統領になった場合、公権力によるTPPに係る情報公開が進められる可能性も認められる。もちろん、「トランプ政権下」の開示作業は、直ちに公開されるにせよ、後世の公開となるにせよ、アメリカの国益に沿うように資料を精査してからのものとなるであろう。「トランプ大統領後」に、TPPに係る交渉の経緯が全く公開されないことを期待することは、とても不可能である。TPPの交渉経緯が暴露されることによって利益を得る存在には、大多数の国々と、米国を含む関係国のいわゆる99%が含まれるためである。また、いくつかの交渉資料は、実際、TPPに反対してきた組織等に流出している。流出の事実と、TPPの締結が困難となり締結に伴う秘密保持が期待できなくなったという事実の組合せは、流出させた人物が「国民国家側のアンダーカバー」であるのか「グローバリスト内の裏切り者」であるのか「愛国者」であるのか等の内実はともかくとして、TPP交渉に従事し、当該国の国益を代弁する上で含まれる必要のなかった人物に対するプレッシャーとして、現に機能しているはずである。「反トランプ」の動きに与する人物の中には、自らが国を売る作業に従事したことに自覚的である者が含まれる、と見なしても、さほど間違いではなかろう。その反面、国益(第一)という、奉仕に足るだけの使命を与えられたアメリカの(国家)公務員の士気は、ここ十数年の零落ぶりから立ち直るものと見て間違いない。同じ人物でも、パフォーマンスには大きな差が出ることとなろう。

 TPPの締結自体がアメリカにおける状況の変化によって望み薄となりつつある現在、TPP交渉に関与した個々人は、保身の余り、『蜘蛛の糸』状態にあってもおかしくはないのであるが、土曜の朝刊における三紙の論調は、その混乱を反映したものとなっている。読売新聞は、
 経団連の夏季フォーラムでは、多くの経営者から、欧米で自国産業の保護を過度に優先する「内向き志向の広がり」(飯島彰己・三井物産会長)が、世界的な自由貿易の推進を危うくするとの懸念が相次いだ。

 【...略...】背景には、TPPが「日本の成長戦略の柱」(榊原定征・経団連会長)であるとの期待がある。【...略...】
 とも報じている※10が、ここに示された経団連の意見は、わが国においても、「自国民の保護を優先して何が悪いのか」との反駁を受けて、「ぐぬぬ...」となる性質のものである。同記事は、編集委員の山崎貴史氏による署名記事であり、山崎氏と、TPPに係る直接の評価を顕名の記事に負わせた読売新聞社との間に隙間風が吹いていることを見せつけるものである。タイミングの悪さを露呈しているのは、法政大学教授の森聡氏に対するインタビュー記事※11である。森氏は、安倍内閣に対する外交・安全保障政策の評価について問われ、
 対米関係を良好に保っていることも、外交上の重要な成果だ。TPP(環太平洋経済連携協定)交渉を通じ、安全保障分野だけでなく、経済面でも共通の目標を追求する国だということを米国に見せてきた。【...略...】
と解説している。森氏のいう「共通の目標」とは、まるで、日米の1%だけのものであるかのように読める可能性がある紙面構成となってしまっている。トランプ氏は、TPPが米国民の利益を代表しない条約であるとして、従来のワシントン既得権益層の梯子を外したことになるが、米国の1%からは、誰が率先して飛び降りることになる(飛び降りたことが明らかになる)のであろうか。また、わが国側では、誰がトランプ氏にいち早く靡くことになるのであろうか。なお、日本経済新聞の「にっけいは なかまを よんだ!」ぶりは面白過ぎるので、これは、後々のサブマリンネタとして取っておきたい。なお、日経の面白ぶりは、過去の記事(リンク)において言及した、週刊新潮の論調に近いものがある。

 三紙の読み比べで私に分かったことは、わが国の関係者がいつまでもTPPにしがみついていると、大火傷となる危険が具体化したということである。ただ、日本の国益にならないことであっても、アメリカの国益になり、日本における市場の創出が見込めるTPP交渉分野は、今後のアメリカ側によって大いにプッシュされることになろう。ただ、そのあり方は、TPPのような一括パッケージから離れて構想されなければならないし、アメリカの勤労者層の利益を大いに考慮したものにならなければ、見向きもされない。日本側の利益も見込める産業分野が果たして存在するのか否か。何度か言及している(初出234)が、生活安全警察行政関連パッケージ(薬物、銃器、風俗、賭博)については、日米二か国以外を売込先として、的確な制度設計と厳格な実装を行えば、日本側にも利益が出る可能性が拓けるようにも思われるのであるが、私の考えは、所詮、「畳の上の水練」である。危険性は指摘したので、本稿の記事の意義を果たした、として本稿を締めくくることとしたい。


※10 読売新聞 山崎貴史(編集委員)(2016年7月23日)「広がる「内向き志向」懸念」朝刊8面13版.
※11 読売新聞 比嘉清太(2016年7月23日)「海洋安保 主導的役割を/語る 1強継続(3) 法政大教授 森聡氏」朝刊4面13S版.

蛇足:過去記事の訂正

なお、以前、私は、「読売新聞の本日1面は、TPP推しの読売新聞らしく、」と表現したことがある(リンク)が、本日(平成28(2016)年7月23日)の読売新聞の構成による限りでは、読売新聞が方針を転換したわけではなく、当時の私の理解と記述を訂正しなければならない。当時の私は、読売新聞について、「どこまでもTPPを推す訳ではなく、とある社外の組織の意向に基づきTPPへの賛否を表明する新聞である」と理解しつつも、「読売新聞がTPPを推す」ことの理由をピンポイントで読者に伝達できるように記述するための検討を怠っていた。「読売新聞社を影響下に置く組織の転身」は、今回の私の記述の誤りを生じた原因であろう。私自身は、読売新聞社のプリンシプルを決して読み誤っていた訳ではない、と主張したいのであるが、今回の実績からすると、この弁明は、通用しないであろう。ここに記して、読者に誤解を与える表現を用いたことをお詫びする。

 読売新聞社の論調は、上記のプリンシプルを踏まえた上では参考になるものであり、今回、特に、日経の論調とのズレ(社を挙げて経団連に与しないかのような紙面構成)が見られたことは、わが国の国民益にとっても、米国民の利益にとっても、喜ばしいことであると見える。私の頭の中では、陰謀論的な観点からの利益集団は、日米両国について/1%対99%/1%については「戦争屋」と「その他の利益集団」という大雑把な括りの6種類から構成されている。現在の日米両国の権力構造を考察する上で、この6種類という見方は、それほど現実を捉える上で誤ることのないものであると考えている。以前に言及しようとしてみたカレル・ヴァン=ウォルフレン氏の「鉄の四角形」との違いは何かとか、細かいことは気にし始めないで欲しいが、階級史観と何が異なるのか、という疑問は尤もであろう。私の御用学者としてのレーゾンデートルにも関わる部分であるため、今のところの回答を提示しておきたい。旧来の共産主義における理解との違いは、一つには、分配されているものが資本ではなく権力であるという理解である。経済力は、権力の源泉とはなるが、権力のすべてではない。ここまで定義することが私に求められているとは、私自身が考えていないので、適当という印象を与えるかも知れないが、念のため。それに、社会をモデルとして見る場合、モデルによって現象を8割説明できれば優れて上等であるという諦念に基づき、モデル自体を突き放してみることこそが重要である。この機微は、科学と信念との区別にもつながる。

2016年2月16日火曜日

隗より始めよ:バレンタインデーにブルーチーズを購入するの巻

写真1:アトリエ・ド・フロマージュのチーズ
(左:フロマージュ・ブルー、右:カマンブルー)

写真2:フロマージュ・ブルー(熟成1~2週間か)

 前記事で匂わせておいたとおり、アトリエ・ド・フロマージュのブルーチーズを、バレンタイン・デーのために、自分で購入し、自分で食した。わが家では良くあるコミュニケーション・エラーによって、2つの経路から、同じ2種類のチーズを入手することになったのだが、それはそれで嬉しい誤算である。私自身は、(ゴルゴンゾーラなら)ピカンテ、(スティルトンなら)マチュア(ード)の方が好きなので、熟成が進んだ方を先に食べることにした。

 間違いなく美味しい、本格的なブルーチーズである。ではあるものの、日本国内の製造ということもあり、食べる側の嗜好に合わせて、あっさり仕上げなのだろうなと思ったのも、同時に抱いた第一印象ではある。本体のきめの細かさは、ロックフォールの上等なものに匹敵し、誠に滑らかである。味は牛乳のようであるから、食感の重さは牛乳のものであるが、その対比がまた新鮮な印象を与える。内部の熟成がある程度進んでいるのに、外延のウェルシュ菌系の侵食がほとんどないので、外側まで普通にいただける。品質管理にも気を遣った、丁寧な製品である。

 以上は、ネット上で同意見を探さずに、自分の印象だけを記したものなので、一人分の感想という程度に留めておいて欲しい。私の中では、間違いなく五つ星、★★★★★である。東洋人相手なら、接待にも使える可能性のある、良質のチーズではないかと思う。ただ、繰り返しになるが、ヨーロッパ産のブルーチーズに慣れている相手にとっては、あっさり感に疑問を抱くかも知れない。こればかりは、個人の好みによる。

2016年2月10日水曜日

高鳥修一内閣府副大臣のブルーチーズ発言について(+平成28年2月8日衆議院予算委員会の部分書き起こし)

まとめ

  • 産経新聞は、衆議院TVと比較してみれば、高鳥氏ブログのブルーチーズの一件について、卑怯な書き方をしている
  • TPPによってブルーチーズの流通量が変わるのか、国内酪農家のブルーチーズ生産に影響するのかは、何とも言えない
    • プロセスチーズや加工チーズ、ナチュラルチーズでも淡泊な味のものについては、TPPにより、国内生産に対して多大な負の影響が生じるであろうと考える
    • 夕食会の場では、あるいは衆議院予算委員会の答弁においては、国内チーズ産業を擁護したり、日本産の米や米酢や海苔や山葵や生姜や醤油を支援するという発言が必要だったのではないか
  • (甘い物が苦手な)右翼男性は、バレンタインデーにブルーチーズを要望せよ
    • 私は10年ほど、甘い物が苦手だからと言う訳ではなく、チーズ好きであるがゆえに、そうしてきた。

本文

高鳥修一内閣府副大臣が「ブルーチーズは美味しかった」とブログに記した※1ことに対して、平成28年2月8日の衆議院予算委員会において、福島伸享氏が批判したとの報道が複数存在する※2、※3。この批判は、長くなるが、以下のようなやり取りの中で行われている※4、※5。このやり取りは、衆議院TVの福島氏の質疑※3から私が書き起こしたものであるため、議事録に搭載される内容とは一致しないであろうし、一言一句の正確性を保証するものでもない。以下に引用する部分は、議事録と内容が大きく異なるということは、おそらくないであろう。それでも、そのやり取りを引用した産経新聞の記事の一部に気になる点があったために、衆議院TVのストリーミングを書き起こししたところである。

福島:ま、今回ちなみに、ブルーチーズも交渉の対象になってますけども、ブルーチーズの関税ってどうなるんでしたっけ、どうぞ。

ガヤ:(「聞いてないことでしょう」「質問は出てないよ」「時計止めてください」「答えられないなら答えられないと...」などを含む)

高鳥:あの、ブルーチーズの関税がどれだけか、ということはですね、今通告をいただいておりませんので、即座にお答えできなくて大変恐縮でございますが、確認させていただきます。

福島:だと思います。通告していないんで答えられないと思いますけども、私が言いたいのはそういうことじゃないんです。ブルーチーズは、ちなみにですね、これも私が調べたから分かってるんですよ、あの、始めから知っているって偉そうにするつもりはありません。11年目までに29.8%が14.9%まで半減するんですよね、森山大臣。ほかにもクリームチーズとか、おそらくチェダーとかゴーダもその場にあったかもしれません、これは16年目で関税撤廃。要はね、私、昨日も酪農家と話(はなし)してますけども、生産量が減らないって言ってるけども、今もうかつかつなんですよ、酪農農家。特に家族でやっている人は、休みもなく毎日乳搾りやったり牛が病気になったりね、出産があったりとか、本当に大変なんですよ。みんなこれ気にしていて、チーズの一部の関税が撤廃ですよ、重要五品目が。そう心配している酪農家の多くが、皆さんがいる中で、「ブルーチーズ美味しかったです」、一番乳製品を要求していた国はどこですか、ニュージーランドですよ。甘利大臣はニュージーランドとの酪農の交渉に戦っていたんじゃないんですか。そのニュージーランドに行って「ブルーチーズが美味しかったです」ということを仰る感覚が私は理解できない。保守政治家だと思うんだったら、その酪農家の思いを受けるのが保守政治家じゃないですか。「ブルーチーズ食べて美味しかった」って呟いている場合じゃないですよ。なんかご感想があれば仰ってください。

高鳥:お答えをさせていただきます。あのまずですね、ブログでございますが、これは、政府の公式見解ではございませんで、私が、まあ主にですね、自分の支持者に向けて、発信をしているものでございます。そして、大変ですね、タイトなスケジュールの中で、署名式が終わるまでですね、自分の携帯に触る時間も一切ないような状況で、空港へ移動する車の中で初めてそれを開きまして、自分が何とか元気にやっているということを、短い時間の中でお伝えをしたいということで書きましたので、誤解を招いていることについてはお詫びを申し上げたいと思います。その上でですね、政府代行ということでございますが、夕食会のときにですね、私の席が、どういうことでお決めになったのか分かりませんけれども、閣僚テーブルのですね、真ん中のところで、ニュージーランドのですね、マクベイ大臣の真向かいでございました。で、まあ、夕食会でございますから、やはり他の国々と友好的な雰囲気を作るという中で、雑談の中でですね、デザートにチーズが出てきたことは事実でございます。で私は実はチーズは好きではないのです。でも、そのチーズを食べたら美味しかったものですから、「チーズはですね、ブルーチーズは私は好きではありませんでした。昨日まで。だけど、今日からニュージーランドのチーズがですね、美味しいということは良く分かった。」とこういうことを申し上げたら、相手の大臣も非常に喜ばれまして、そして、「ニュージーランドでは新鮮な魚が取れるので、日本食もとっても人気がありますよ。」こういうですね、国と国は、最後は人と人ですから、友好的な関係を作っていこうと、そういうことの表れでございます。しかしご指摘を受けましてですね、誤解を受けるようなですね、表現については、今後気を付けたいと思います。

福島:はい、あの、話を聞いていて何か悲しくなってきましてね。本当に涙が出そうになって。国を売ろうと思って売ろうとする政治家はいないと思いますよ。私は一番問題なのは、国を売る意志もないんだけれども、愚かさゆえに国を傾かせてしまうと言うことが私は一番問題だと思います。あの、残念ながら今の答弁を見ていて、本当に、その、酪農家の思いを背負って交渉するような人だとは思えない。このような副大臣で、これからずっとですね、TPPの批准に向けて、場合によっては特別委員会も設置するかもしれませんけども、審議していかなければならない訳ですけども、石原大臣大丈夫ですか、こういう副大臣でいかがですか。
このブルーチーズに係るやり取りについて、産経新聞の記事※2は、次のように伝えている。私の興味は、この産経新聞による切り取り方にある。まずは引用してから批判することにしよう。【1】や【2】などは、後段での批判のために、私が挿入した目印である。
 【1】福島氏はさらに、高鳥氏がニュージーランドでの出来事を記した4日付のブログで「ブルーチーズはおいしかったです」としたことも批判。【2】甘利明前経済再生担当相はブルーチーズを含む酪農分野でニュージーランドと厳しい交渉をしてきたとして【3】「心配している酪農家の思いを受けるのが保守政治家だ」と述べた。

 【4】高鳥氏は、4日の夕食会でニュージーランドの閣僚と同席した際に「昨日まで私はブルーチーズは好きではなかったが、今日、ニュージーランドのチーズがおいしいことが分かった」と伝え、【5】友好的な雰囲気となったというエピソードを紹介した。【6】そのうえで「(外交は)最後は人と人だ。友好的な関係をつくろうという現れだ。誤解を招いていることについてはおわびを申し上げたい」と陳謝した。
産経新聞は、上掲のやり取りをそれなりには伝えているが、以下の3点において、現政権つまり高鳥氏に好意的な表現へと実際のやり取りを「翻訳」している。
  1. 【2】の前に福島氏が意地悪なクイズを出し、それに高鳥氏が答えることができなかったことを省略している。
  2. 同じく【2】の前に、国内の酪農家が大変な状況で仕事をしている状況を説明していることを省略している。
  3. 【4】において、高鳥氏は、「チーズ」が好きではなかったと表現しているところ、「ブルーチーズは好きではなかった」と記している。
第一点目であるが、数値自体を質問にすることは、行き過ぎであるものの、チーズの関税が安くなること自体は、ナチュラルチーズを日常的に好んで購入する人物なら知っているであろうことである。ネットを見ないで記憶だけで記すが、EUとのEPAにおいても、チーズが議題として取り上げられていたはずである。この一文を記した直後、答え合わせのためにGoogle検索で「EU EPA チーズ」と検索したところ、平成27(2015)年9月15日付の日本農業新聞の記事※6がトップとして返された。いずれにしても、ナチュラルチーズが重要五品目の「牛乳・乳製品」として位置付けられてきたことは、閣僚であれば心得ているはずのことであろう。影響を受ける当の酪農家からすれば、自身の仕事を十分把握していない高鳥氏ら現政権が、自分たち酪農家の仕事を軽視していると受け止めても、無理からぬことである。

 第二点目の「翻訳」の欠如は、三点の「自主検閲」のうちでは、最も罪深いものであろう。酪農という仕事は、危険で、相当の体力を要する仕事であり、夜間も気が抜けないものであり、さらに、高額の初期投資を必要とする設備産業である。このことは、ガキの頃に2泊だけ英国の酪農家にホームステイしかしていない私にも分かる話である。危険であるのは、乳牛に蹴られる可能性があるためである。注意していないと死ねるヘビー級の衝撃である。排泄物の処理にしても飼い葉の運搬にしても、尋常でない背筋力が必要である。夜間は夜間で、出産や病気の世話がある※a。飼料のためにも(ロール制作に代表される)専用の大型の農業機械は欠かせないし、広大な牧草地も必要である。牛舎も必要である。このため、酪農業は、自然と設備投資型の産業となる。酪農家の方々には、本当に頭が下がる。

 第三点目に挙げた「チーズ」を「ブルーチーズ」と記した矮小化は、産経新聞記者が十分な裏取りをしたので「ブルーチーズは好きではなかった」と限定して記したのかもしれないとは思う。しかし、結果として、産経新聞の記述は、チーズ嫌いと受け取れる高鳥氏の発言の影響の範囲を小さくする効果を有するものである。なぜなら、TPPは、ナチュラルチーズよりもプロセスチーズに、個人向けよりも業務向けのチーズに、より大きな影響を与えることになると思われるためである。ナチュラルチーズのままにせざるを得ない「ブルーチーズ」とすれば、発言の影響の範囲は、流通量という観点から、きわめて小さなものに限定化することができるのである。この厳密さを欠く記述は、当該記事のデスクか記者かの姑息さを感じさせる材料である。

 本記事で話題に上っているチーズは、少なくとも、高鳥氏や福島氏の発言の文脈を見る限りでは、個人消費向けに流通するナチュラルチーズであるとみなして良いであろう。福島氏は、TPPの酪農家への影響全般を問題にしているので、戦線を拡大しようとしていると見ても良いが、ここでの「チーズ」の種類そのものは、TPPにおける分類を見ても、ナチュラルチーズに限定した話と見て良いであろう。ナチュラルチーズの種類別の販売統計などは存在しないように思うので、大半の日本人よりナチュラルチーズの消費量が多いであろう私※bの独断で、流通量の予想を記しておくことにしよう。国産のナチュラルチーズの過半は、クリームチーズやフレッシュタイプであるように思う。(家庭での)お菓子作りの材料としても利用されるためである。次いでハード系、白カビ系、ウォッシュ系の順であり、ブルー系の流通量はほとんどないように思う。系統的に食べるようには心がけていないので、私の食べている内容にはきわめて偏りがあるのだが、チーズ工房における品揃えから受ける印象としては、このような感じであろう。ともあれ、国産のブルーチーズというものは、扱う工房も少なく、流通量も少ないのではないかと思う。

 また、上掲の産経新聞の引用において、【5】に記された「友好的雰囲気」は、「ニュージーランド国内における近海漁業による日本食」という片務的な関係の元に構築されたものであることも指摘しておきたい。TPPについてのいわば全権委任大使である者は、少なくとも、「魚は近海ものが美味しいかもしれませんが、日本産の米と酢と山葵で作るのがお勧めです。醤油と生姜と緑茶も日本産で!」といった切り返しを試みる必要があった。この種のビジネス的発言は、自己弁護として有用なものであるので、仮に高鳥氏本人がこのように発言したのであれば、そのエピソードを紹介しなかった訳がないものと考えられる。少なくとも、国産の食品の輸出増を試みる発言なしに、ニュージーランドが主力輸出品目に据えたナチュラルチーズを美味しいと評価するだけでは、日本国代表としての仕事を尽くしたとは言えないであろう。この点も、うかつであったとは言えないであろうか。要は、高鳥氏のブログに「ブルーチーズ美味しかったです!日本のブルーチーズもね!」とか「米、米酢、山葵、醤油、生姜、緑茶は日本産をオススメしておきました!」という文言が入っていれば、これほどまでの問題にはならなかったのであろう、と私は推測するのである。特に、日本のブルーチーズが持ち上げられていることが大事だったのではないだろうか。

 高鳥氏のブルーチーズに係る書き込みは、週明けに問題視される可能性が予測されたのであるから、仮に、週末中に国内産のブルーチーズを買う算段を整えて、「国産も買いました!美味しいですね!」などと切り返せたのであれば、産経新聞の忖度に頼ることなく、高鳥氏本人が問題を小さいものに留めることができたであろう。それに、国産の流通量がもとより少ないと思われるブルーチーズについて言及したことは、国内の工房に対しても目を向ける契機となり得るので、先のように国産を勧める発言と根拠を示せていたとすれば、今回の高鳥氏のブログ上での言葉は、国内産業にとって良い方に影響したかも知れないのである。この点を農水省の担当者を使役して十分に理論化・実証化した上で、切り返せていたのであれば、福島氏の発言に対して、高鳥氏が横綱相撲を取れたことになり、ネット右翼の工作に頼らずとも、高鳥氏に対して賛辞が寄せられていたということになっていたかも知れないのである。

 ただ、国内産のブルーチーズを率先して推奨するにあたっては、国内産のブルーチーズがすでに海外産のブルーチーズと棲み分けられているという点に注意する必要がある。私が食べた記憶のある国内産のブルーチーズ(と呼べる可能性の残るチーズ)は、『クレイル』※7の「おいこみブルー」くらいしかない※c。美味しかったことはもちろんではあるのだが、あまりにも淡泊で、イタリア風に言うとピカンテ好きの私にとって、もっと来いや~!という気持ちを起こさせるものであったことも確かである。この状況が、関税撤廃が進んだときに、どのように変化するのか、私には予想が付かない。EUとのEPAにしても、TPPにしても、成立した暁に、青カビの強いブルーチーズの流通量にどのように影響するのか、読めない。日本人の味の好みが変化しないとも限らない。好みが変化せずとも、全体として増加した流通量が国産のブルーチーズを圧迫するかも知れないし、チーズを嗜む人口が増加することによって、結果として市場が広がるかも知れない。

 ところで、国産ナチュラルチーズの振興は、本来、1%層に所属する(職業)人の義務である。嗜好品であり、高級食品であるためである。しかし、実際のところ、高級スーパーに置かれているナチュラルチーズであっても、可哀想な状態になっていることは結構多く、チーズ文化を支える裾野の貧弱さを感じさせる。とはいえ、私は、発酵が進んだ状態の方が好きなので、それほど意に介さないのであるが、品質にこだわる人は、専門店を選ぶしかないであろう。丹精込めて送り出された商品が手荒に扱われているという観点から見れば、やはり改善が試みられるべきことでもある。専門店のチーズは、さすがにいつも食べ頃のタイミングであるが、ホリエモン氏くらいに金回りが良くないと、常用するわけにはいかないであろう。いずれにしても、ナチュラルチーズそのものは、バターのように必須の食品という訳ではないのであろう。こうしたとき、大半の日本人が1年に1度食べるかどうかであろうブルーチーズに高鳥氏が言及したことは、やはり不用意に過ぎたことであったと言わざるを得ないであろう。

 ちなみに私は、バレンタインデーに、チョコレートの代わりに、ナチュラルチーズを贈ってもらうという手を取っている。この手に頼るようになり、10年近くになる。一年を通じてというわけにはいかないが、チョコが苦手という男性を取り込むための一案として紹介しておきたい。「バレンタインデーにワインとチーズ」が本来のキャッチフレーズなのかも知れないが、ワインは、独断で見れば、チーズよりも高度に職業化された趣味であるし、独力で探求するのも限界があるし、何より費用が青天井になりがちである。身代を潰す程になるであろうし、悪事に手を染めることにもなり得る。佐藤優氏の著書に、接待用のワインを私消した外務官僚の話があったような記憶がある。その点、ナチュラルチーズであれば、自ずと価格に上限がある。ワインという趣味は、1回5000円以上になるであろうが、自宅でチーズならば、取り合わせたとしても、5回味わうのに、10000円(5種類×2000円)というところであろう。それに、アルコールに弱くとも、単独で楽しむことができる。紅茶と取り合わせるという方法もある。

 チーズの流通量が増えることには、ほかの懸念材料もある。かぶら寿司や大根寿司のような伝統的な麹系の発酵食品と競合しうる可能性が認められることである。 少なくとも、私の中では、両者は競合的な存在である。どちらも美味しく、優劣つけ難いものの、人間の食事の量には上限があるためである。発酵食品の摂取がチェルノブイリ原発事故による健康影響を軽減したという研究は、広く知られている。(ので、EM菌等の話も流行した。)いずれにしても、今回の失言?騒動は、政府に味方する側も、反対する側も、国産の(ブルー)チーズをヴァレンタインデーに要求する契機になったということである。


※1 TPP署名式 | 高鳥修一 たかとり修一 (衆議院議員 自民党 新潟六区) 公式ブログ
https://takatori55jim.wordpress.com/2016/02/04/tpp%e7%bd%b2%e5%90%8d%e5%bc%8f-2/
私一人に空港まで6台の白バイとパトカー、上空からヘリコプターが警護に付く厚遇でした。ブルーチーズは美味しかったです!

※2 TPP署名の高鳥副大臣を民主党・福島氏が「売国の政治家」と批判 「ブルーチーズおいしい」も攻撃 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160208-00000528-san-pol

※3 TPP署名式後、ブログに「チーズおいしい」 (読売新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160208-00050113-yom-pol

※4 2016年2月8日 (月) 予算委員会 (7時間18分)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45492

※5 福島伸享(民主・維新・無所属クラブ)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=45492&media_type=wn&lang=j&spkid=24452&time=02:14:29.2

※6 日本農業新聞 e農ネット - チーズ関税撤廃迫る TPP交渉影響も 対日EPAでEU
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=34659

※7 カマンベールの老舗・クレイル
http://www.creyl.com/naturalcheese.html

※a 病気には立ち会わなかったが出産には立ち会った。

※b 年1回ペースで工房の店まで行って購入していたりする。マニアであるとは到底言えないが、普通の人よりは、ナチュラルチーズ好きと言って良いであろう。

※c なので、「隗より始めよ」、実は、この記事の前後にGoogle様にお伺いを立て、系統的に調べた上で、注文済みである。蛇足であるが、Google様に敬称を付けるのは、Googleの検索サービスが、人間の手によるものの、人間を超越した、さりとて一神教の神様には至らない水準の能力を備えているためである。私としては畏れを抱いているのである。

2016年2月8日月曜日

TPP署名式における高鳥修一内閣府副大臣の着物の重色目(かさねいろめ)についての疑問

 日本人のウェブ集合知は、ニュースに即応することにかけては、相当の能力を発揮するものである。先週(2016年2月)4日のTPP署名式に、高鳥修一内閣府副大臣は、着物で臨んだ。最も大写しの写真は、The Japan Timesのウェブサイトで閲覧できる※1。着物は、高鳥氏本人が意図してのことであり※2、夏用の着物を南半球の季節に合わせて用意した※3という。これに対して、ほぼリアルタイムで、肯定的に見る側※4にも、批判的に見る側※5にも、着物についての専門的なブログ※6でも、なぜ黒紋付、(または極端なものとして、)裃や(烏帽子)大紋を着用しなかったのかという感想がツイッター上で共有されている。2ちゃんねるにおいても、本件に準ずるコミュニケーションが見られる※7

 The Japan Timesに見るように※1、ニュージーランド首相のジョン・キイ氏をはじめ、TPP署名式に臨んだほかの首脳が背広であるから、結果から見れば、高鳥氏の服装は、略装で正解であったと見るべきである。しかし、そうであったとするならば、次の疑問が浮かんでくる。なぜ、TPPに加盟しようとする各国の首脳陣は、国際条約の中でも史上稀に見るレベルの大変革を各国にもたらすはずの条約の署名式に、礼装や正装で臨まなかったのであろうか。各国の首脳は、一般庶民には分からない何かを理解しているのであろうか。そのヒントを探るべく、もう少しだけ、ここで生じた(つまらない)疑問を深掘りしてみよう。高鳥氏の着物の重ね色目を確認することは、ここでの疑問を解決する上で役に立つ可能性が認められるのである。あらかじめ断っておくと、疑問を解決しようとする私の試みは、本稿では失敗する。

 高鳥氏の着物の重色目は、先述したとおり、署名式が実施された場所がニュージーランドであることをふまえて、夏のものとしたという※3。しかし、署名式の実施された2016年2月4日は、二十四節気を記した今年のカレンダーを見ると、ちょうど立春である。立春であることの(他者に責任を押しつけられるだけの)証拠を示す作業は省略するが、今年の2月4日が暦の上では春であると考えることは、誰にも文句の付けようのない事実である。とすれば、真逆の季節であるニュージーランドにおいては、立秋、秋が始まったばかりとなる。季節は先取りするのが粋というものであるから、秋の重色目である方が望ましいと言えば望ましいが、そこまでの展開を予測することは難しかったものと言えるであろうから、色目が夏でも構わないであろう。事実、色目が秋のものであるべきと指摘するGoogle検索結果は、日刊ゲンダイの先の記事※3を含めても、まだ存在しないようである。

 高鳥氏の着物の色目は、写真や映像でのみ確認することができるのであるが、ここで、その色目を手作業で確認した結果を掲載する。範囲の平均を取るカラーピッカーは、『Gimp』のものを利用した。類似色であると判定するためには、HSV空間に変換した上で、HSV空間上で判定を行う必要があるものと目されるため、これ以上の追究は行わない。ここでは、(私の)眼で見て、似ている色目を漁ってみることにする。大体、ここでの原始的な方法によらずに、類似色を判定しようとするのであれば、写真機の機種やら会場の照明やらを検討する必要が生じる。そのような作業は、私の手には余る。おそらく、色目の同定作業は、写真分析のプロにより進められているであろう。私の主張・疑問を検証する上では、そこまでの厳密な作業は必要とされない。


ソース色味等カラーピッカーRGB16進数表記URL等出典
高鳥副大臣羽織(袖口)半径5ピクセル平均747370#4A4946※1
高鳥副大臣羽織(胸元)半径5ピクセル平均545349#363531※1
高鳥副大臣長着(左腹辺り)204175135#CCAF87※1
高鳥副大臣長着(左腹辺り)半径5ピクセル平均201172132#C9AC84※1
高鳥副大臣襦袢(左胸元)197207213#C5CFD5※1
高鳥副大臣襦袢(左胸元)190204210#BECCD2※1
高鳥副大臣襦袢(左胸元)212210207#D4D2CF※1
禁色黄櫨染226207138#E2CF8A※8
忌色萱草色23218692#E8BA5C※8
忌色柑子色226207138#E2CF8A※8
忌色黒橡色不要847471#544A47※9
そのほか黄橡色不要18614550#BA9132※10
そのほか黄櫨染不要21410653#D66A35※11
そのほか不要239205154#EFCD9A※12


 高鳥氏の着物の色目は、古くからの伝統的なもの※13のうち、夏・秋のものに見出すことができなかった。それどころか、オールシーズンにも見られるものではなさそうである。むしろ、忌色の組合せによるものであるようにも見えてしまう。高鳥氏の色目は、Getty Images※14の映像なども援用すると、現代的な色の表現によれば、暗緑色+黄土色であるように見える。本記事を執筆しているPCは、ソフトウェア上の色調整のみ行った状態であるので、PC性能や私の眼がおかしいという問題も十分に考えられるのであるが、ともかく、夏・秋の色目に高鳥氏の着物を見出すことができていない。この点は、気にかかるものである。羽織の色は、忌色である黒橡色に近いと言いうるであろう。とはいえ、高鳥氏の長着の色は、忌色の萱草色や柑子色とは明確に色味が異なる。

 なお、本記事を執筆するに至った動機は、昨日の京都市長選で門川大作氏が当選確実というNHKのニュース(2016年2月7日20時45分~21時のニュース)をテレビで見たとき、門川氏の着物の色目が伝統的な官職の合わせ色目の若草である※13ことに、私でも気付けたことによる(下記画像参照)。門川氏の着物の色目がほぼ素人の私にも分かりやすいものであったために、かえって高鳥氏の色目についての興味が湧いたのである。

#蛇足になるが、前日の京都市長選挙は、保革相乗りという構図のようであるし、ムサシの法則が発動された雰囲気もないし、京都の政界には疎いということにしておいた方が良いというくらいの嗅覚はあるので、同選挙について、私がシミュレーションを行う予定はゼロである。
図:平成28(2016)年2月7日NHKニュース20時50分36秒時点の
門川大作氏の映像による門川氏の着物の重ね色目
(上から順に羽織、長着、襦袢、『Gimp 2』で半径5ピクセルの平均を利用)

 今回、高鳥氏の着物の色目に込められた「意味」についての疑問が私には解けなかったのは、単に、私の見識が著しく不足しているゆえであろう。しかしながら、TPPはおしまい、という事実を暗示するために忌色が用いられたとすれば、それはそれで高度なメッセージである。あるいは、この色の組合せが呪術の一種として仕掛けられたものであるとすれば、それは、面黒くも私には賛同できる話である。TPPは、明らかに、日本国民の99%から搾取を目論むものであり、高鳥氏の地盤の選挙民の恨みを買うものであろう。地盤への配慮ゆえに、高鳥氏は、稲穂を想起させる色の長着を選択した※2と推測することができる。

 売国を強いるTPP集団に対して、色(目)の呪術返しで対抗したという事実が存在したとすれば、その反抗を企図した社会集団は、高度なメッセージ操作の使い手であるということになる。この種のシンボル操作は、TPPから撤退するときの理由付けに、やがては使える材料ともなろう。「Tea Party(茶会)」がアメリカ独立戦争の端緒となったボストン茶会事件に起源を有する名称であることは、アメリカ国民の常識である。同様の常識は、もちろん、わが国にも存在するのであり、仮に、アメリカ人に今回の色目に込められたメッセージに気付くような文化への造詣が深い識者がいたとしても(、そして、私は、アメリカにはそれだけの戦術を立案し実行できるだけの人材が多数いるものと推測するが)、現状では、TPPはアメリカ国民益とは相容れないものであるから、沈黙を保ち、日本からの条約破棄の申出を待つという戦術を取るであろう。なぜなら、日本文化に造詣の深い他国の識者を署名団に加えた各国にとって、高鳥氏に対する「とりあえずの褒め殺し」は、日本を踏み台にして自国の利益を確保する上での有効な一手となりうるためである。

 TPP署名式における高鳥氏の着物(の重色目)の問題があろうとなかろうと、日本国民は、自らが自国の色文化の奥深さに試される存在である。われわれ中年世代は、小学生の歴史の授業で、聖徳太子による「冠位十二階」を学び、色にも位階があることを知ったはずである。とすれば、色(の組合せ)というシンボル(操作)が隠された意図を有することがあるという理解は、日本国民にとって、常識の範囲であると考えてそれほど問題はないであろう。少なくともわれわれは、この命題の正しさが発揮された証拠を、官邸ウェブサイトと外務省ウェブサイトとの差異に見出すことができる。このことは、わが国の政府機関のページが他国のウェブアーカイブにも収録された今となっては、最早、(いわゆる右翼を含め、)日本人の誰にも否定することができなくなっている。

 平成26(2014)年11月10日(現地時間)に中国で開催されたAPEC首脳会議の歓迎式典において、日本の安倍晋三首相は、妻の昭恵氏とともに、緑の「新中装」と呼ばれる中国服※15を着用し、習近平夫妻との4ショットを撮影した※16。同様の写真は、官邸ウェブサイトには掲載されている※17が、外務省のAPEC 2014についてのページ※18と、そこから直接たどれるAPEC 2014関連のページにおいては、スーツや西洋式のドレスでの写真のみが掲載されている。官邸サイトに掲載された位階を想起させる色味の写真は、外務省のウェブサイトからは入念に除外されているのである。

 しかし、2013年のインドネシアにおけるAPECについては、同様の位階を想起することが可能な色の服での集合写真が掲載されている※19。ただし、APEC 2013についてまで、色に対する考え方を適用しようとすることは、華僑社会がインドネシアに定着しているからとは言え、あまりにも無理のある連想を強いるものであると見ることも可能ではある。ほかに考えられる場合としては、APEC 2013に参加した政治家の側で複数の色の中から特定の色を選択する余地が存在したがゆえに、服の色を個人の好みに帰することができたという事情が存在し得たのかも知れない。(APEC 2013についての諸事情は、公的に確認可能な資料による追究を今後も進めたい。地球に中性子星が接近するくらいのあり得ない確率であるが、ここでの指摘によって、APEC 2013についての写真が外務省サイトにおいて差替えられたとすれば、それはそれで面黒いことである。)

 中国におけるAPEC 2014において、習近平国家主席は当然のことであるが、オバマ大統領、プーチン大統領、ジョコ・ウィドド大統領が紫色の「新中装」で中央前列に並んだことが興味を引いた。同時に、このことは、アジア太平洋地域におけるパワーバランス?のようなもの?の変動が各国首脳レベルにおいて受容されていることを強く印象づけるものであった。各国首脳は、華夷秩序を理解した上で、服の色を認容したのであろう。わが国はいかがであったのか、気になるところである。

 他方で、わが国の首相が身に付けることのできる色には、自ずと上限が存在すると考えることも、もちろん可能である。私自身は、それが日本の伝統であるという理由から、この考え方が現実に存在している可能性を強く信じている。

 陰謀論と社会との関わりにおいて、シンボルという概念を利用する場合、シンボルを創出・構造化する側の理由ももちろん重要ではあるのだが、むしろ、シンボルを解釈し受容する側に(反)作用が生じるという事実に十分な注意が払われるべきである。シンボルが送り手の発信、受け手の受信という段階からなるという考え方は、十分に学際的に通用する概念であるから、私の拙い説明を加えるよりも、たくさん専門書を読んで欲しい、とお茶を濁しておく方が読者のためにもなるであろう。

2016年2月9日追記

自身の備忘のために記しておくが、3.11直後に渋谷の繁華街に多く見られたタギングの主は、おそらくウェブサイト『281_Anti Nuke』(リンク)のアーティストであろう。むろん、シンボルの持つ「力」を信じている人物でなければ、これほどの熱心さで作品を送り続けることは難しいであろう。

また、本文の一部について、意味の取りにくい部分に変更を加えたが、文意を変えないように注意したつもりであるので、アップ時の文章を変更したつもりはない。

なお、決して自慢するつもりはないが、APEC 2014の服装については、当時の時点で気付いていたことを述べておく。当時は、ブログを執筆するという動機にも機会にも恵まれていなかった。


※1 The predators behind the TPP | The Japan Times
http://www.japantimes.co.jp/news/2016/02/06/business/economy-business/predators-behind-tpp/
#本件については、ニュートラルに当初臨んだつもりであるが、大写しの写真が掲載されているのが、『The Japan Times』であったために、この記事を引用した次第である。本稿においては、写真そのもののソースとして上掲記事を利用しただけであり、他意はない。

※2 着物について | 高鳥修一 たかとり修一 (衆議院議員 自民党 新潟六区) 公式ブログ
https://takatori55jim.wordpress.com/2016/02/05/%e7%9d%80%e7%89%a9%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/

※3 TPP署名式で赤っ恥 “坊ちゃん議員”高鳥修一副大臣の評判 | 日刊ゲンダイDIGITAL
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/174891
#本件については、端から現政権を批判したい訳ではないので、あからさまに現政権に対して批判的である『日刊ゲンダイ』を引用したくはないのであるが、夏用の着物を取り寄せたという準備に言及するメディアの記事が『日刊ゲンダイ』のほかにGoogleニュース検索で見つからなかったため、今回、引用した次第である。ほかにも引用源とできるだけの材料があるにもかかわらず、『日刊ゲンダイ』を引用することによって、現政権批判を行うという意図はない。

※4 maru on Twitter: "@simalis1 @koutarzz 次は和装でも正装の 裃か大紋でお願いします^ ^" https://twitter.com/marujpn/status/695059643890929665

※5 寮美千子 on Twitter: "国際会議に「和装」で出席することは歓迎です。皇族にも、そうしてもほしいくらいです。ただ、であれば、きちんと正礼装してほしい。チャラチャラした遊び着スタイルで出てほしくないです。日本文化を誤解されないためにも。 https://t.co/dOwRF34eX4"
https://twitter.com/ryomichico/status/696206919040520193

※6 TPP高鳥さんの和服見て/似合ってないというわけじゃないんですが | プロ野球2016 キモノの国のエクソダス
http://chidori.kimonomichi.com/?p=7964

※7 【国際】TPP署名式、日本政府代表は“和服姿”で登場★3©2ch.net
http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1454599471/

※8 色彩と色目(有職装束【綺陽装束研究所】
http://www.kariginu.jp/kikata/5-1.htm

※9 黒橡 くろつるばみ #544a47(原色大辞典)
http://www.colordic.org/colorsample/2272.html

※10 NIPPON COLORS - 日本の伝統色
http://nipponcolors.com/

※11 黄櫨染 こうろぜん #d66a35(原色大辞典)
http://www.colordic.org/colorsample/2235.html

※12 香色 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%99%E8%89%B2

※13 かさね色目(有職装束【綺陽装束研究所】
http://www.kariginu.jp/kikata/kasane-irome.htm

※14 Shuichi Takatori, wearing kimono and representing Japan, signs the... ストック動画・映像 | Getty Images
http://www.gettyimages.co.jp/detail/%E5%8B%95%E7%94%BB/shuichi-takatori-wearing-kimono-and-representing-japan-signs-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E5%8B%95%E7%94%BB/508645634

※15  <APEC>首脳らが中国の民族衣装で夕食会に出席 - 中国国際放送局
http://japanese.cri.cn/881/2014/11/11/162s228825.htm

※16 昭恵夫人がAPEC夕食会でチャイナドレス、「中国女性的でステキ!」「両国友好のためにありがとう!」―中国ネット|中国情報の日本語メディア―FOCUS-ASIA.COM - 中国の経済情報を中心としたニュースサイト。分析レポートや特集、調査、インタビュー記事なども豊富に配信。
http://www.focus-asia.com/socioeconomy/photonews/401140/

※17 平成26年11月10日 北京APEC首脳会議出席等 -2日目- | 平成26年 | 総理の一日 | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201411/10apec.html
#ページ内の写真をクリックして「歓迎式典1(代表撮影)」を参照。

※18 APEC 2014 | 外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/apec/page22_001646.html

※19 APECのあゆみ(開催会議・日本からの参加者一覧) | 外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/apec/ayumi.html
(2013年 開催国:インドネシア)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000016428.jpg
(2014年 開催国:中国)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000059338.jpg
(2015年 開催国:フィリピン)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000112665.jpg