2018年2月22日木曜日

(一言)TPP11=CPTPPを読みこなせる日本人はどれだけいるのか

TPP11=CPTPPの案文が2018年2月21日に公開されたこと[1]を『スプートニク日本』経由で知った。ニュージーランド政府のウェブサイトを確認したが、確かに公開日が21日である[2]。私は、数週間前に気になり、条文を探しまくってみたことがあるが、徒労だったことになる

CPTPPについては、発効条件自体、長らく秘密にされてきた。発効条件は、従来のマスコミ報道による限りでは、11カ国中6カ国以上の承認を必要とするというもの[3]であった。一応、その条件は、この度公開された英語版[4]の第3条第1項に継承されている。しかしながら、従来の根拠のうち、国民に対して全くのオープンアクセスであったものは、茂木敏充大臣(内閣府特命担当大臣(経済財政政策))の会見資料くらいしか[5]存在しなかった(。国民向け説明会の資料もあるが、やはり、条文そのものを掲載していなかったために、根拠とはいえない)。しかも、茂木氏は、TPP11=CPTPPの条文の「Annex I」の「Article 3」に記されていると明言していた[5]が、今回、ようやく公開された条文と対比する限り、いつの間にか、Annexが一つ消え失せたことになる。およそ、「子供たちのごっこ遊び」と呼べる頻度で、ルールが変更されている。

しかも、CPTPPの英語は、(厳密ではあろうが、)構文上、難読と呼べる程度のものであって、大学入試で出された日には、「ムーミン谷はフィンランドにある」説どころではない阿鼻叫喚状態が生じそうである。しかしながら、一般的な日本人が到達可能な理解がいかなるものになるのかを検証するため、また、個人的な答え合わせを兼ねて、第3条第2項をGoogle翻訳[6]にぶち込んでみたところ、予期せぬ程に内容を理解できるような回答が帰ってきたので、その翻訳結果を引用しておく;

本契約が第1項の下で効力を生じていない本契約の署名者については、本契約は、その署名者が適用される法的手続きの完了を書面で預託者に通知した日の60日後に効力を生ずる。
もっとも、22日08時35分の時点で、なぜ、Google翻訳が正確といえるレベルの答えを返したのかは、謎である。


CPTPPに見る秘密主義・選民主義は、官僚・大企業・学術研究機関に所属する自称エリートたちの平常運転モードであるとはいえ、全くの他人事ながら、心配になるものである。CPTPPの下に展開されるであろう構造的不正は、CPTPPの制定に関与して恩恵を受けてきた人物たちの連帯責任となって、必ずや、応報的に機能するためである。CPTPPは、末代まで祟る(庶民にとっての)不平等条約であり、他民族にも恨まれることにもなる。この時空間上の広がりゆえに、どのようなフィードバックが生じるのかは、誰にも予想できまい。大体、渡されもしないし読めもしない契約書に、誰が判を付くというのであろうか。悪徳商法そのものと同一の構図である。わが国の成人であっても、約款を実際に読むか否かは別として、約款が提示されたこと自体を信頼し、契約を進めていよう。CPTPPに対する国民感情は、お手盛りの世論調査では汲み取れないものであろう(。内容を理解している国民は、CPTPPが一種の「国策」であることをも理解しているであろうから、やんわりと調査拒否するであろう)。その辺をよくよく弁えておかなければ、自称エリートたちは、思わぬ事態を迎えることになるやも知れない。


[1] TPP11の条文が公表される 3月に署名へ - Sputnik 日本
(記名なし、2018年02月21日21:54、更新2018年02月22日00:46)
https://jp.sputniknews.com/business/201802214603609

[2] Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership text | New Zealand Ministry of Foreign Affairs and Trade
(2018年02月22日確認)
https://www.mfat.govt.nz/en/trade/free-trade-agreements/free-trade-agreements-concluded-but-not-in-force/cptpp/comprehensive-and-progressive-agreement-for-trans-pacific-partnership-text/

[3] TPP11、6か国承認なら発効…大筋合意
(読売新聞・ダナン=田中宏幸、2017年11月12日)
https://www.msn.com/ja-jp/news/money/%EF%BD%94%EF%BD%90%EF%BD%90%EF%BC%91%EF%BC%91%E3%80%81%EF%BC%96%E3%81%8B%E5%9B%BD%E6%89%BF%E8%AA%8D%E3%81%AA%E3%82%89%E7%99%BA%E5%8A%B9%E2%80%A6%E5%A4%A7%E7%AD%8B%E5%90%88%E6%84%8F/ar-BBER65Y

〔…略…〕新協定の発効条件は、11か国のうち6か国の国内手続きが完了してから60日後と定めた。

[4] COMPREHENSIVE AND PROGRESSIVE AGREEMENT FOR TRANS-PACIFIC PARTNERSHIP
(2018年02月20日18:48:41作成、21日11:07:39変更、22日閲覧)
https://www.mfat.govt.nz/assets/CPTPP/Comprehensive-and-Progressive-Agreement-for-Trans-Pacific-Partnership-CPTPP-English.pdf

[5] 茂木大臣による記者会見の概要【PDF:85KB】
(2018年01月25日)
https://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/tokyo1801/180123_tpp_tokyo_kaiken.pdf

[6] Google 翻訳
(2018年02月22日確認)
https://translate.google.co.jp


#多忙のため、引き続き、ブログ更新をサボりがちとする予定。世界の動きも速すぎて、追随するので精一杯。




2018年02月25日追記

念のため、21日夕刊と22日朝刊の『読売新聞』『朝日新聞』『日本経済新聞』を確認したが、『読売新聞』22日朝刊のみが、CPTPP条文の公開を2面で報じていた。およそ300字程度の小さな扱いである[1]。『Yahoo!トピックス』[2]を見ても、『日本農業新聞』と『ロイター』くらいしか、本件をタイムリーに報じていないようである。23日、トランプ大統領がターンブル豪首相と会談後の記者会見でTPP復帰を示唆した。ひょっとして、トランプ氏が各国国民に対する情報提供を企図したのではないかと思えてしまう程に、主流マスコミは沈黙している。


[1] 記名なし, 「新TPP 発効条件緩和/7条の協定文を公表」, 『読売新聞』2018年2月22日朝刊14版, 2面総合.

[2] 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の関連情報 - フォロー - Yahoo! JAPAN
(2018年02月25日確認)
https://follow.yahoo.co.jp/themes/0f7c5fc9f157e88c2731/

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