昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く特定財産管理令
勅令第二百八十六號
朕は、昭和二十年勅令第五百四十二號ポツダム宣言の受諾に伴ひ發する命令に關する件に基く特定財産管理令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。
裕仁 〔天皇御璽〕
昭和二十一年五月二十四日
内閣總理大臣 吉田茂
大蔵大臣 石橋湛山
勅令第二百八十六號
特定財産管理令
第一條 この勅令において特定人とは、聨合國最高司令官から逮捕、拘禁又は抑留されるべき者として指定された者をいふ。
第二條 この勅令において特定財産とは、特定人が有するすべての財産及び特定人が支配する財産であつて大蔵大臣の定めるものをいふ。但し、特定人及びその家族の日常生活の用に供する家具、什器、衣服その他大蔵大臣の定めるものを除く。
昭和二十年七月一日以後において、特定人が有してゐた財産をその家族その他大蔵大臣の定める者に譲渡した場合には、大蔵大臣の定めるところにより、その財産を特定財産とみなす。
第三條 特定財産は、大蔵大臣が、その定めるところにより、これを管理する。
國税徴収法第十一條、第十三條、第十五條、第十八條、第二十條乃至第二十二條、第二十三條ノ一第一項及び第二十三條ノ二乃至第二十三條ノ四の規定は、前項の規定による管理についてこれを準用する。
第四條 特定人の指定があつた後大蔵大臣の管理前においては、特定人の有する財産については、大蔵大臣の定めるところにより、その許可を受けなければ、その形質若しくは現状を變更し又はこれを移動することが、できない。しその他管理を害する行爲をしてはならない。
大蔵大臣の管理に關する特定財産について特定人及びその家族その他の利害關係人の申請があつたときは、大蔵大臣は、その定めるところにより、管理の解除をすることができる。
第五條 特定人その他特定財産に關する利害關係人は、大蔵大臣の定めるところにより、特定財産に關する報告書を提出しなければならない。
第六條 大蔵大臣は、特定財産の管理のため必要があるときは、當該官吏をして特定人又は特定財産に關する利害關係人に質問し又は必要な場所に臨検して特定財産又はこれに關する帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
第七條 この勅令による管理に關する事務は、大蔵大臣の定めるところにより、財務局及び税務署においてこれを行はしめることができる。
第八條 第四條第一項の規定に違反した者は、これを三年以下の懲役若しくは禁錮又は一萬圓以下の罰金に處する。
第五條の規定に違反して報告書をなさ提出せず若しくは虚偽の事項を記載した報告書を提出なし、又は第六條の規定による當該官吏の質問に對して答辯をなさず若しくは虚偽の陳述をなし又は檢査を拒み、妨げ若しくは忌避した者も前項に同じ。
第九條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務又は財産に關して、前條の違反行爲をなしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に對して前條の罰金刑を科する。
附則
この勅令は、公布の日から、これを施行する。
2024年11月10日の作業。正確に旧字を反映し切れて居るかは怪しいが、とりあえずひっそり公開しておく。原本はCC0であるから、これでも問題ないものと考える。11日に誤植の訂正等。
[1] 昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く特定財産管理令・御署名原本・昭和二十一年・勅令第二八六号
(2024年11月10日閲覧)
https://www.digital.archives.go.jp/file/142149
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