There are four criminological issues in Japan that would change the society when Trans-Pacific Partnership was in effect.
- 賭博 Gambling
- 麻薬(特に大麻) Drugs (especially cannabis)
- わいせつ物 Pornography
- 銃火器 Firearms
これら四分野のビジネスの現況から推測すると、TPPは、暴力団の資金源の主要部分に不可逆の影響を及ぼしうる。酒類・たばこ類や証券取引についても、もちろん影響が生じることは間違いないし、各種の興行に対する規制も、加盟国で最も緩いところのものに合わせることになるであろう。この予想の根拠は、ISD条項の存在である。TPPにおいては、各国の規制が尊重されるとはいうものの、その規制には合理性がなければならない。上記四分野については、現に各国における規制の足並みはそろっておらず、わが国においてさえ、これら分野についての規制の合理性は、議論の対象になっているのである。
TPPが成立したときに犯罪学の分野で何が生じるのか、私は常々気になっていたのだが、調べてみても、研究として公にされたものとしては、一番近いところでは、ジェーン・ケルシーほか, (2011).『異常な契約―TPPの仮面を剥ぐ』, 農山漁村文化協会.の、ポール・G・ブキャナン(Paul G. Buchanan)氏の第5章「TPPと安全保障」が見られるだけである。ブキャナン氏の論文も、基本的には、各国の犯罪事情にいかなる影響が生じうるのか、という疑問に回答を与えてくれるものではない。交渉国が拡大する以前においても、治安に対していかなる影響がありうるかという検討が追究された様子はない。防犯設備産業に関連する規格が各国で異なる上、警備業も相当程度異なりうるにもかかわらず、である。もっとも、セキュリティ産業と規格に対するTPPの影響については、自分が不勉強であるだけという場合も、強く疑われる。万が一にではあるが、中立的な観点から詳しい検討が加えられたことがあるやもしれない。
なお、TPPに対する私の現在の考えは、一般の研究者に対して案文が公開されておらず、また契約締結までに十分な時間がない以上、検証しようがないものであるため、(法に代表される社会環境も環境だとみなして、)予防措置原則に基づき、締結すべきでない、というものである。政府の公式のウェブサイト等において、上掲の四分野に対する影響が十分に検討された形跡は、まったく見られない。また、リークされた案文にもとづき批判がなされるという現状は、健全な状態からはほど遠い。
#私の学問上の信条からすると、予防措置原則は、万能ではない研究者(科学者)が一つきりしかない地球環境に手を加える以上、守っておいた方が無難であるという点で、すぐれた方針である。学問上の信条という語法は、矛盾するかのようであるが、私の中では、現在の科学が時間を逆行できるだけの技術をもたらしていない以上、一応納得済みの語法である。
2015年10月16日10時45分追記
ISDS条項が正確な表記であるとする日本語文献はいくつか見られるが、実は、わざとISD条項と表記してあることに注意されたい。私の検索が不徹底なのかもしれないが(棒)、正確な用語を確認しようがないからである。条約であるならば、下記リンクから1リンク以内に条約の案文(の経過)を掲載して欲しかった。TPP政府対策本部
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/
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