2016年10月26日水曜日

(メモ)TPPには大麻取締法の明記がないが大麻製品の関税は撤廃される

 本日(2016年10月25日)の厚生労働省麻薬取締部による有名人らの現行犯逮捕に係る報道は、TPP成立後であれば、生じるものではなかったかも知れない。この種の事件は、わが国における大麻の大幅な規制緩和を仕掛ける目的にも、規制を訴える目的にも、両方の目的に利用されるものとなり得る。日本国に係るTPP10章の附属書[1a, 2a, 1b, 2b]に、大麻取締法の名が具体的に挙げられている訳ではない。TPP成立を睨み、いわゆるISDS条項を盾に、大麻の栽培・製造・販売に係る規制緩和を実現するために、不当逮捕であるという主張が提起される可能性がある。

 なお、続報では、使用者の一人が使用を認めたと報じられているが、逮捕された有名人は認めていないともいう。現時点でマスメディアが競い合い、報道の洪水を起こすことは、有罪であるかのような印象を視聴者に与え、後戻りのできない風評被害を容疑者に対してもたらすことになる。即断は慎まなければならない。この点を考慮して、現時点ではマスメディアへのリンクを張らない。また、現時点の本ブログの影響力は極小化されているので、本記事の公開が被疑者への現時点における中傷に荷担するということもないと判断する。本記事における私の批判の矛先は、もっぱら、TPPに係る重要論点を報道しない、マスメディア報道のみに対して向けられている。

 この事件がロドリゴ・デゥテルテ比大統領の訪問日に報道されたことは、逮捕日がいつであるのか明確に示されていないという点から見ても、示唆的である。わが国においては大麻も許さない、という厳罰姿勢を示して友好性を強調するという側面も、否定しきることはできないであろう。我ながら、いつもの考え過ぎであるようにも思えるが。

 容疑者が無罪であると判明した場合、本件報道は、大麻の大幅な規制緩和の論拠のひとつに利用されるであろう。安全性に対して取締りが過重であり過ぎたために、今回の誤認逮捕が生じた、というロジックが利用される可能性が認められるのである。大麻の危険性または安全性については、今回も立ち入らないが、メディア上のイメージ操作が本件報道を通じて行われるという点については、指摘しておく。

 なお、TPPの「譲許表」[4a, 4b]つまり関税撤廃リストには、大麻草自身や大麻由来の製品がいくつか含まれるが、吸引用と認められる物も含め、全製品の関税が撤廃される。従来から「無税」の枠に含まれるものもリストに含まれている。このリスト入りの理由は、私には調べ切れていない。つまり、輸入が禁止されていたためであるのか、元々関税がないためであるのかの区別は、まだ付いていない。

[1a] Annex I Japan (英文、Chapter 10, Annex I Cross-Border Trade in Services and Investment Non-Conforming Measures, Party-specific Annexes)
 (作成2016年01月20日10:35:42)
http://www.mfat.govt.nz/downloads/trade-agreement/transpacific/TPP-text/Annex%20I.%20Japan.pdf

[1b] Ⅰ.附属書Ⅰ 投資・サービスに関する留保(現在留保)(日本国の表)【PDF:559KB】
(作成2016年03月08日19:43:51、変更2016年03月09日00:34:34)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_annex01-2.pdf

[2a] Annex-II.-Japan.pdf(英文、Chapter 10, Annex II Cross-Border Trade in Services and Investment Non-Conforming Measures)
(作成2016年01月20日10:35:42)
https://www.mfat.govt.nz/assets/_securedfiles/Trans-Pacific-Partnership/Annexes/Annex-II.-Japan.pdf

[2b] Ⅱ.附属書Ⅱ 投資・サービスに関する留保(包括的留保)(日本国の表)【PDF:388KB】
(作成2016年03月08日19:45、変更2016年03月09日00:43)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_annex02-2.pdf


[3] 大麻取締法
(昭和23年7月10日法律第124号、最終改正:平成11年12月22日法律第160号)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO124.html

[4a] 2-D: Japan Tariff Elimination Schedule (英文、Chapter 2, Annex 2-D: Tariff Elimination, Party-specific Annexes)
(2016年01月27日18:58:43)
http://www.mfat.govt.nz/downloads/trade-agreement/transpacific/TPP-text/2-D.%20Japan%20Tariff%20Elimination%20Schedule.pdf

[4b] ・附属書2-D(日本国の関税率表:譲許表)【PDF:10,188KB】(和文)
(作成2016年03月08日19:00:25、変更2016年03月08日23:39:30)
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/naiyou/pdf/text_yakubun/160308_yakubun_02-3.pdf

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