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2017年4月15日土曜日

(メモ・感想)衆愚が貶めたエフセキュア製品の評判は、いつ回復されるのか

#本稿は、十分な資料の読込みなしに作成したものであるから、題名に示した以上の新規性も、研究としての正当性も持ち得ない。(類似の先行意見が存在した場合、偶然の一致であり、その論者の先取性が尊重されるべきである。車輪を二度発明する愚は、十分に承知している。)また、本稿は、本ブログのいくつかの記事のように、再帰的な内容となっている。読者のご賢察を請う次第である。英語でいう、reader discretion (is) advisedってやつである。

BBSに代表される、21世紀初頭型の日本語のインターネットコミュニティでは、「人の振り見てわが振り直せ」という諺と、その諺を裏打ちするはずの「恥の精神」がなりを潜めてから十年になろうかとしている。ただし、パソコン通信上で繰り広げられてきたコミュニケーションのあり方は、往時の『別冊宝島』などを参照する限りでは、スタイル・手口そのものについては、大きく変化していない。マネタイズの方法が変化したのである。悪名であろうと、人に知られることが、情報爆発下のビジネスにおいては決定的に重要となりつつあると言えよう。

「炎上商法」と呼ばれる新手法の定着は、子ブッシュ政権以降に顕著となった「やったもん勝ち」の新自由主義的・帝国主義的風潮を反映してもいる。炎上商法は、周囲や社会全体への影響よりも、ニッチな顧客に訴える機会を優先するものであり、ロングテールを意識した商売という点に着目すると、テロ要員の募集方法やカルト教団の信者獲得方法とスタイルを共有する。個人のSNSにおける過度の露出や、それに伴い生じる炎上が「カネ」よりも「自己実現・自己肯定感の獲得」を目的としがちであることを合わせみると、テロ要員・カルト信者の獲得という組織犯罪の性質は、両方とも、組織側には組織による炎上商法の目的であるカネを、引き寄せられる個人の側には個人による炎上商法の目的である自己実現を提供するものであり、炎上商法という経済的活動の特徴を包括するものといえる。良くも悪くも、子ブッシュ政権は、カルト集団のテッペンを取った存在であり、リアル社会における炎上商法の集大成であると評することができよう。

インターネット上の言論を監視し、検閲・操作を加える企業は、炎上という行為を取り巻く環境要因であるとみることも可能ではある。なぜなら、これらの企業は、炎上を沈静化させる際にも利用されるとはいえ、子ブッシュ政権のショック・ドクトリンと同様、マッチポンプの噂が常につきまとう存在ともなるからである。ただし、この手のビジネスは、たとえ法整備が進み、なりすましやビジネス目的の誹謗中傷行為が規制されたとしても、依然として実行される可能性が払拭されないものである。沈静化(「火消し」)ビジネスの将来動向は、従来の「紙の爆弾」(#二重カギ括弧でないところに注意)を利用した総会屋ビジネスが、銀行や証券会社のスキャンダル等を経て本格的に規制され、総会屋2.0へと変容した際の経緯を反復する様相を取るであろう。

炎上の沈静化というビジネスは、本来、弁護士や司法書士の利用が基本的な作法として定着している社会における、これら専門的職業家の(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントにいう)「金のなる木」となるべきであろう。これらの専門家には、あまりに阿漕であったり庶民意識から外れた行動を取れば、橋下徹氏がかつて扇動したように、同業者集団による制裁が待ち受けており、この歯止めに期待を寄せることができるからである。(ただし、犯罪組織に加担する法曹への制裁は、わが国ではそうもなっていないが、通常の組織構成員に比較して、一等重いものとされる必要があろう。また、マッチポンプを行うような企業にも、当然、顧問弁護士は存在していようが、その人数が大規模であったり全員が法曹であるという訳でもないであろう。そこが、わが国の「資格社会」の限界でもある。)マッチポンプに手を染める悪徳専門家の発生は、現状に比べれば、一定程度は抑止されることになろう。

なお、ここでは、「忘れられる権利」が意図的な炎上への誘因となり得ることについても、指摘しておくべきであろう。市民派と見做される法曹により、この権利が主張されることは、逆説的な事態である。この権利が公人や法人に対しても認められることになれば、これらの人格が行動するにあたり、評判という要素は、その人格の合理的な判断から抜け落ちることになる。この結果は、公人や法人が好き放題に振舞うというものとなる。歴史に断罪される虞は、安倍晋三氏が祖父について批判されるのと同様、子孫までが対象となるために、一定程度の抑止力を有するものとなりうる。戦争屋の走狗に、子どもを持たない人物が選定されがちであることは、偶然ではない。また、蛇足となるが、賢明な批判者ならば、本人の資質や行動に問題が存在しなければ、先祖についての批判を行うことが、個人主義になじまないことであり、批判者へのブーメランとなることは、理解できていよう。

「自由で単なる人格批判に陥らない、生産的で真実に基づいた言論活動」という、サイバー社会においてかつて語られた理想は、検閲・宣伝・工作を請負う「広告・マーケティング」企業により、匿名・顕名にかかわらず、インターネット上の公開の場においては、求めても得難いものと化した※1。他方で、SNSの普及は、現実社会の関係性に根差すものであるが、現実社会の権力関係をインターネット上にも持ち込むこととなった。この点、某大学の教員がフレンドリーな存在を装い、SNS上での関係を学生に広く求めるという態度は、権力という社会関係の実在に対して鈍感な表出の一例である。ホイチョイ・プロダクションズが広告代理店を舞台に皮肉る「いいね乞食」の、学術機関版である。ついでに、(某大学つながりで)指摘しておくと、かつてインターネットに係る理想を提示・議論した言論人たちも、インターネット上における言論(操作)ビジネスが軌道に乗るにつれ、これらの悪徳企業との相互関係から逃れることが難しくなりつつあるように見える。

荒れた言論状況の背景には、情報環境の最適化という業務におけるベイズ統計の活用という、なかなかの難問が存在する。規範的な観点から正しいと認められるはずの言論が、人気投票というベイズ統計の性格により、批評能力を備えた人間に読まれる機会が大きく減じられ、結果として力を失っているのである。規範的な観点からいえば、情報環境は、局所最適化された状態にあるのであって、決して全体最適化された状態にあるとは言えない。オープンで批判的な態度を有する(真っ当な)読者の目に触れる機会を奪う要因には、動物的に言語生産活動に勤しむ炎上加担者や、同種の表現を大量に複製し続けるボット、中途半端な知識で・あるいは金目で発言する学識経験者※2、などを挙げることができる。この状態を示す上で端的な事例は、後段で取り上げるエフセキュア製品に対するAmazonレビューの悪用であり、「オルタナティブ・メディア」を「偽ニュース(fake news)」と呼ぶCNN.comの公式ツイッターのフォロワーの半数がボットであったというオチ[1]であり、「メルトダウンではないだす」である。なお、CNNの事例であるが、ツイッターにブロックという機能が実装されている以上、今回は、CNN.comの手抜かりであると言えよう。

言論の正否そのものを判定できないという、ベイズ統計を準用した情報整理の欠点は、技術者側には十分に理解されており、その対策も取られてはいる。しかし、その対策は、今のところは、人間の高度な知性を要する、労働集約的な作業とならざるを得ない。にもかかわらず、微妙で困難な状態に置かれた人間の判断に対しては、(トランプ大統領によるシリアへのミサイル攻撃命令のように、)ほとんど常に、他者の批判の余地がある。ベイズ統計の限界を企業側が克服しようとするとき、今のところは、人間の判断を持ち出す必要がある。この結果、ルールは柔軟に運用せざるを得ず、その運用が判断がぶれているとの批判をも引き起こす。企業にとって、ベイズ統計を基本とするアルゴリズムに余分な判定を加えることは、労力、つまりはコストが高くつくにもかかわらず、却って批判を招来しうるという、報われない結果となり得るのである。利潤の追求は、企業に寄せられる社会的期待の中では、第一である。それゆえ、余分なコスト増を招きかねないアルゴリズムの改善は、基本的には見送られがちとなり、また、その改善結果の詳細は、ビジネス上の財産でもあるから、開示に不向きなものとならざるを得ない。

ようやく本題に入ることができる。

情報を判別する際の難しさは、エフセキュア社製品に対して一時期寄せられた悪評の削除に対しても、同様に該当する。Amazon.co.jp[2]は、現在でも、いわゆる「ぱよぱよち~ん事件」(以下、ぱよちん事件と表記)[3]の直後に、同社製品に対して書き込まれた否定的なレビューの一部を残し、製品としての評価を比較的悪い方に留置している。2017年4月14日時点で、7件の星1つの評価があるが、製品をAmazon.co.jpにて購入したアカウントは、2件のみである。残る5件のうち、使用感を具体的に述べたものは1件だけであり、残る4件は、単にぱよちん事件に悪乗りしたものであると認められる。星2つの評価は、1件であり、アンインストール時の不調法を指摘するものであり、ぱよちん事件には言及しない。星3つの評価はない。つまり、同製品に対する低評価レビューの半数は、偽計業務妨害にも相当する内容である※3。私からみれば、製品そのものの性能についての言及がないレビューは、評価の高低にかかわらず、すべて規約違反であるかのように読めるのであるが、これらレビューとしての要件を満たさない否定的レビューが製品の評価を決定付けているのである。

アマゾンジャパン社は、ぱよちん事件の直後、同事件を同社製品の信頼性の低さに理由に挙げた否定的レビューについて、処分し続ける措置を講じるべきであったが、同社は、ぱよちん事件に便乗して「殿堂入りユーザ」を獲得したユーザを放置し続けている形となっている。これらのユーザの中には、確かに、事件前からレビューを投稿している者もいる。しかし、事件以前のレビューの存在は、ぱよちん事件に便乗して行われた不正を肯定する理由にはならない。よって、私が以下のように考えるだけとはいえ、同事件に乗じたレビューの削除と、それに伴う「殿堂入り」などのタイトルの取消し判定こそ、アマゾンジャパン社に求められる作業であると批判することができるのである。この処分に反駁するアカウントユーザは、総会屋と同種であるものと断じられよう。


なお、先月、CIAの漏洩文書が『Wikileaks』において『Vault 7』として公開されたが、これらの文書に見られるエフセキュア社製品に対する評価は、同社がマルウェアに対してガチンコで対応しようとしていたことを(逆説的に)示すものとなっているという[4]。この経緯がレビュアーらの評価に反映されていないという事実(4月14日、目視で確認)は、ぱよちん事件の炎上に便乗したレビュアーらが製品の評価に不誠実であったことを示すものと言えよう。なぜなら、本当にエフセキュア社の製品を低く評価しようと思うのであれば、『Vault 7』の情報を利用しないという手はないからである。(そして、言うまでもないことではあるが、私は、本稿では、ここに記した以上に、セキュリティソフトの評価や『Vault 7』そのものの検討やその是非に立ち入るつもりはない。)世界有数の情報機関による侵入テスト(penetration test)の結果である。TPOや法律をわきまえずに悪乗りして、高評価のレビュアーという称号を狙うという人物が、自身の行動の帰結を予測できるとするならば、自説の正当化のために、この機会に飛びつかない訳がないのである。


※1 炎上商売を良しとする個人や、炎上に加担する個人、検閲・操作に従事する企業ならびに従業員らは、利己的な存在であるとみて間違いなかろう。私は、利己的であることを、RPGの老舗である『D&D』に倣い、邪悪(evil)であると理解している(2017年3月27日)が、この分類に基づけば、炎上の種類が合法性を楯に取るものであれば、その炎上の主はlawful-evilであり、非合法なものであれば、その主はchaotic-evilになろう。邪悪の種類を分類しやすいのである。念のため、現時点までの私には、本記事の指摘に係る利益相反関係は一切存在しない。

※2 御用学者が批判される原因は、社会的身分を有していることに求められる。わが国では、発言者に社会的身分があればこそ、その発言に影響力が生じるという側面があるし、その発言を封じようとする動きも慎重なものになる。逆に、社会的身分がなければ、これを封じようとする側の手段が何でもありになりがちである。広義の暴力を以て言論を封じるという動きが現実に存在する以上、この非対称性は、わが国でも、「有識者」にこそ気付かれるべき側面であろう。つまり、御用学者の力の源泉は、社会的身分である。この事実は、現在の日本語環境と共依存する関係にある。議論が噛み合い有益なものになるためには、論者の双方に、前提となる共通の知識があり、互いの論点を理解した上で、その長短を吟味する、という能力がなければならない。そのような状況は、適当な環境がなければ成立せず、その環境を整備・維持する組織の成員には、自ずから努力が求められる。しかし、本文中で触れたように、「いいね乞食」がアカデミアに跋扈するようでは、そのような環境が用意されるべき場所こそが蚕食されていることになる。なお、状況=環境+環境下の個人、と考えれば良い。このため、状況は環境に影響される。ここまでは間違いないが、環境が状況に影響されることになるのかは、環境犯罪学における残された課題であると私は考える。

※3 カネさえ払えば何をしても良いのかという批判も、成立の余地はある。が、違法性を論じるときには、購入履歴は、大変に重要な要素であると認められる。


[1] CNNのツイッター:フォロワーの半分は偽物|世界の裏側ニュース
(ココヘッド、2017年03月31日03時17分)
https://ameblo.jp/wake-up-japan/entry-12260759855.html

#なお、『弁財天』のMakoto Shibata氏(@bonaponta)は、この話題に先立ち、(当時の)オバマ大統領のフォロワーについて同様の作業を自前で実施しており、他サービスよりも多めの粉飾率を見積もっている。大事なのは、結論がボットの判別方法に依存することである。この事実は、私の公式ツイッターアカウント(@hiroshi_sugata)が現状のようである理由ともなっている。この検証作業の人柱として使えるのではないかと期待しているからでもある。つまり、私のアカウントは、ツイッターボットの判別テストにも利用可能である。

弁財天: ツイッターの巨大なフォロワー数の正体 update14
(Makoto Shibata、2015年04月03日?最終更新?)
http://bonaponta.noip.me/roller/ugya/entry/huge-number-of-followers

弁財天: リツイート数を粉飾して世論を捻じ曲げようとしてもTwitter社のAPIから本当のリツイートユーザのリストを取得されると粉飾がバレるw
(Makoto Shibata、2015年12月03日)
http://bonaponta.noip.me/roller/ugya/entry/twitter-api11-retweeters

[2] Amazon | F-Secure インターネット セキュリティ 2014 (新規用パッケージ/3PC1年版) | エフセキュア | ソフトウェア 通販
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00FXBLR76/
#参考まで、星1つのレビューは次の7アカウントによるもの。リンクは各レビューへのもの。

  • TMA, 2015年11月4日, Amazonで購入
  • ay, 2015年11月4日, Amazonで購入
  • edirol, 2016年1月6日, 購入マークはないが、使用履歴ありと自主申告。
  • ガラクタ, 2015年12月20日, 殿堂入り+ベスト50レビュアーだが購入マークなし
  • どんぐり定食, 2016年1月24日, ベスト500レビュアーだが購入マークなし
  • Customer, 2015年12月26日, 購入マークなし
  • Amazonカスタマー, 2015年12月13日, 購入マークなし

[3] ろくでなし子独占手記「ぱよぱよちーん」騒動の全真相
(ろくでなし子、2015年11月26日)
http://ironna.jp/article/2402
#話の広がりが大きいために、媒体がアレであるが、上記ろくでなし子氏による派生的な記事を挙げた。

[4] Antivirus Vendors React To The CIA 'Vault 7' Leaks
(Lucian Armasu、2017年03月15日05時00分)
http://www.tomshardware.com/news/antivirus-vendors-cia-vault-7-leaks,33893.html

From the unredacted documents that have been released so far, there doesn’t seem to be any evidence that the antivirus companies were working with intelligence agencies to undermine their customers’ security. That may be a sign (and a good one) that at least the antivirus vendors are working in their customers' interests, even if sometimes that's not enough to stop more sophisticated attackers such as the CIA.

2016年2月15日月曜日

「正月に帰ってきた財務官僚」という2ちゃんねるの書込みへの反響は、核心を衝くものである

Abstract

  An anonymous at 2ch.net says that a bureaucrat working at Ministry of Finance has told in this new year holidays: people dying of radioactive pollution are, from an eugenics perspective, not so useful since they are idiots; we bureaucrats are glad to sacrifice those people to keep the nation alive, or to protect national interests, since it is our duty to do so; this time is an emergency, and we have gathered all assistance from politicians, business people, and show business people.

http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/lifeline/1453374888/966

  The post above sounds as if true, though the Japanese government has done almost nothing against countless incidents of leakage of radioactive plume since the explosion of FDNPP. The reason it got retweeted so fast since the message posted, 2011 Feb. 11th, the National Foundation Day of Japan, is the insight that it indicates, which Japanese government would not help its citizens.  Japan has small chance of terminating the accident by its own, and this incompetence can be a trigger of application of the United Nation Charter Article 53-2 to the nation, if the situation continues and international relations stay stable.


本文 (in Japanese)

わが国の建国記念日以来、次の「2ちゃん原発情報」(@2ch_NPP_info)氏のツイートが流通を始めているようである。1日で300ツイート以上リツイートされ、伸びは止まらぬ勢いのようである。おそらく原典であろうスレッド(以下、同スレ)の存在を『2ちゃんねる』本家において確認した※1が、それ以降、随分な勢いで転載されたり※2しているので、「2ちゃん原発情報」氏がどのスレを引用したかまでは確認していない。ほかの人たちにもボチボチ転載され始めている※3ので、この書込みの内容が事実でなければ、一種の流言であるということにはなるのであろう。実際、これに類する真偽不明のツイートには、ある程度の前例が認められる※a

 しかし、この真偽不明の2ちゃんねるの書込みをいったん受け入れて、「件の財務官僚の考える国体・国益・国難とは、いったい何を意味するのか」という考察を巡らせてみると、現在の日本社会の混乱状況とその原因を見通せるような気になってくる。それだけの含蓄のある気配が察せられるからこそ、この書込みは、多くの反響を即座に得たのであろう。実際、この書込みは、事実か創作かの別によらず、思考の幅を広げる有用性を持つ。財務官僚氏の言動は、ツッコミどころ満載なのである。

 本稿では、この書込みにある財務官僚の主張が、なぜ的を外したものであるのかについて、私自身の考察を加えてみたい。ここでの財務官僚の主張に対する批判として考えられるものの多くは、すでに同スレの住人により提出されているので、同スレか、文末の要点を参照されたい。私の加える指摘は、次のとおりである。日本人の1%は、99%の国民を踏み台にしても、結局のところ、日本国の運命と共依存的な存在である。この官僚は、99%の国民と国土こそが「国体」を支える主要素であり、他国に逃げても没落を避けられないことを、理解できていないのである。

 まず、件の財務官僚の考える「国体」の中身が「彼(女)の身の周りの1%」に過ぎないことを指摘しよう。彼(女)の発言からは、「国体」の中身が「政界・財界・芸能界」という「国体」のごく一部の構成要素を指すに過ぎないことが良く分かる。彼(女)の「国体」とは、同スレの997氏や998氏の指摘のとおり、通常の日本人が思い描く国体※bではなく、霞が関官僚ならびにその手足となる第二次安倍晋三内閣という「官」「政」から構成される「政体」である。「国益」とは、現在の「政体」から当の官僚自身に生じることが見込まれる「私益」であり、その「私益」を主張する上で十分に確保しておく必要のある「省益」を指すのであろう。件の官僚にとって、「国益」は、決して「日本国」を構成する「領土」や「99%の国民」に帰属する利益を指すものではないのである。

 直接の知人で利益を提供する財界(の一部)や報道関係者(の一部)くらいまでは、「私益」や「省益」を生じさせるために必要な存在であるために、件の官僚にとっては「国体」に含まれうる存在であるかも知れないが、その境界線は、せいぜいがカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の言う「鉄の四角形(政官財報)」をかろうじて範囲に収めるものである。植草一秀氏の言う「悪徳ペンタゴン(政官財報米)」や本多勝一氏が原発ムラについて言う「鉄の五角形(政官財報学)」を意味するものではないであろう。ここに、ポイントがあるとすれば、件の官僚の言う「国体」は、決して、皇室を含めるものではない、という点である。この「政体」グループに所属すると意識する人物の共通点は、事実を軽視し、情報操作によって国民全体を誘導可能であると信じている点である。

 彼(女)の「国体」及び「国益」を以上のように解釈すると、「国難」の正体は、件の官僚のいう「国体」及び「国益」に決定的な影響を与えるイベントであることになる。「国民全体」に多大な影響を与えている現在進行中の健康被害は、「国難」ではないのである。ここまでの指摘は、2ちゃんねるへの書込主の理解が的確であるという仮定の上に※c、書込みの内容に自然な仮定を置いた上で、引き継いだものであるために、それほど論駁の余地はない。ただ、当の財務官僚が現実に「国難」を明確に定義したり、その帰結を見通していたりするかどうかまでは、他人には関知できないことである。ここで示された「財務官僚」の理解は、霞ヶ関官僚すべてに該当するとまでは言えないであろうが、自分に明白な脅威が差し迫らない限りは、自己保身を第一とし、国益を保持する作業を怠る、典型的な官僚像を描き出していると言えよう。

 99%の国民の利益を含む国益を毀損してまで自身の利益を確保しようとすることは、日本国における選良を自認するならば、やめておいた方が良い。第一に、外国籍を取得しなければ、日本国において選良として生きてきたという実績があったとしても、彼(女)は、外国生活において自身の財産と安全を維持することは叶わないであろうし、第二に、外国籍を取得したとしても、その子孫は、売国奴の子孫というレッテルを貼られてマイナスの立場から生きることを迫られるためである。第二点目は、成るようにしかならないであろうし、どの外国で生きるのか、その国における卑怯者に対する理解がいかなるものであるのか、という二点が問われることになるので、予想が多岐にわたることになる。ここでは、第一点目に絞って考察を進めるが、その準備は、すでに、当の日本人や、利に聡い外国人によって、着々と進められつつある。

 社会に対する発信力があり、反原発派とみなされる人物が、世界に向けて、福島第一原発事故に対する日本人全体の責任を訴えることは、必要ではある。その事例として、村上春樹氏のスペインにおける演説※4、※5や、小出裕章氏の国内における多くの講演※6、※7,※8を挙げることができる。両氏の主張は、国民個人の有する力に対する理解こそ異なるものであるが、日本の原子力ムラに対する不断のチェックを怠った個々の責任を自覚すべきであると日本国民全員に説くものである点においては、共通している。また、作家や原子力の専門家が自ら正しいと考えることを述べることは、彼らの正当な仕事である。これらの主張に対しては、即座に多くの反発が寄せられたが、この行動の中止を働きかけることは、かえって色々な不都合を生じさせることになるであろう。

注:蛍光ペンの部分は、2016年3月23日に文意が通るように修正した。

 しかし、村上春樹氏や小出裕章氏の指摘は、日本国民と日本国政府との関係を動かし、事故直後のような原子力行政に対する国民の厳しい対応反応を再現できるものにはならないであろう。その理由の一つは、原子力ムラに代表されるような利益共同体の力が国民の良識を上回る程度に力を持ってしまった後であることに求められる。運営が回り始めるまでの間であればともかく、数十万人を直接雇用でき、数兆円以上の産業となった原子力ムラは、甘利明氏の取得したとされる賄賂を考慮すれば、政治家一人あたりにそれ以上のキックバックを提供しうる、類例のない規模に達している。この状態に加え、金銭上の利益共同体を基本とする投票行動の原理は、容易に崩せるものではないであろう。加えて、デュープロセスを通じて、開票時に不正な方法が存在し得る余地を注意深く除外するだけの知恵が市民の利益を代表する側で活用されてこなかったことは、件の官僚のような優生学的態度からすると、お人好しで軽蔑に値する、となるのであろう。

注:蛍光ペンの部分は、2016年8月25日に文意が通るように修正した。

 それどころか、日本人全員に原発事故の自覚を促す議論に対しては、本来、責任を取るべき主体に責任を帰することができなくなるという反論が、反原発派の中からも提起されている※9。原発を推進して利益を享受してきた電力企業や政治家こそ、責任を取るべきであるという反論は、尤に聞こえるものである。しかし現実には、五年を迎えようとする時期に、わずかに、避難の遅れた44名の入院患者に対する過失致死障害罪について、強制起訴による裁判が始まろうとするばかりである。この事件は、事故から生じることが見込まれる健康被害の規模からいえば、影響の100万分の1を問うものに過ぎない。日本国内では、このように検察が機能しない状態は、まったくの平常運転である。三権のうちの司法にも期待できないために、世界に正義を訴えるという次善の手段が執られているのであるが、この戦術が、かえって味方からも非難を浴びるという構図を生じさせているのである。この分裂は、もちろん、原子力ムラにとって利用すべき機会でもある。

 福島第一原発事故に対する司法の機能不全と、リベラルな論者が代替策として世界に正義を訴えるという戦術との組合せは、予想外の結末をもたらす可能性もある。日本国の主権が事故の終息に直接乗り出すことなく、東電へと対応を丸投げし、東電は、無策のまま下請け・孫請けへと弥縫策を丸投げするという状態は、五年間継続している。現時点では、事故の長期的な健康影響が広範囲に顕在化したとは言えないが、今冬から二年後にかけて、首都圏、関東平野から岩手県南部に至るまでの広範な地域において、多くの人々が呼吸器に何らかの障害を抱えることになることになるであろう。他方、世界各国の知性ある人々は、現在の状態から、近い将来を的確に予測している。日本の一般庶民からみて五年間も継続した、現在のマンネリズムは、一体どのような構造から生じているのであろうか。

 今後の予想がある程度付くにもかかわらず、長期的には影響を受けるはずの北半球・太平洋の各国が静観しているかに見えるのには、二つの理由がある。理由の一つは、アメリカ合衆国にとって、わが国が占領政策の随一の成功例であるためである。もう一つの理由は、アメリカ合衆国をも搾取の対象と見なす一部利益集団、いわゆる戦争屋(以前の記事)が、日本国における主要な権力構造への影響力を保持し続けているという状態を通じて、未だに、アメリカ合衆国の軍隊を動かしうる力を完全に失っていないことによる。後者の理由は、前者の理由と強固な相補的な関係を構成する。

 わが国は、傍目には、アメリカ合衆国の占領政策が顕著な成功を収めた事例である。アメリカは、わが国においてのみならず、世界中で長らく顕著な影響力を維持してきた。しかし、子ブッシュ政権によるイラクへの侵攻は、アメリカの国際的な評判を決定的に毀損した。現在では、9.11を理由とするアフガニスタン侵攻に対しても、国内からも疑問を呈されている。こうした中、第二次世界大戦後のわが国への占領政策は、占領後のわが国の経済的成功を導いた理由であるとされ、アフガニスタン及びイラクに対するアメリカの占領政策を正当化する理由とされてきた。私自身は、日本の再武装を抑制したことが昭和後期における日本の経済的成功に至る理由の一つであると考えているために、占領政策を正当化する言説にも理由がないわけではないと考える。

 アメリカ合衆国においても、同国の国益ではなく私益を優先する一部の権力集団が存在する。今回は、この権力集団を戦争屋と呼んでもよかろう。彼ら戦争屋は、利益関係で結託し、学閥や閨閥で強化されているという点において、わが国における権力集団と同様の構造を有する。わが国の官僚集団の少なくとも一部は、戦争屋の指示を忖度することを通じて※e、戦争屋と官僚自身とを利益共同体とみなす行動規範を内面化してきた。

 戦後の官僚集団は、売国を厭わない勢力を含みながらも、朝鮮戦争やベトナム戦争を通じて、わが国の企業系列を中心とした産業社会を育成・誘導することに成功してきた。この過程を通じて、戦前の財閥は、「系列」として、産業上の国際的な競争力を有するまで回復した。原子力ムラは、電力事業という国策産業を打ち出の小槌として、主要財閥の重工業企業や建設企業がその分配に与るという構図を通じて、形成された。「系列」は、金融業なら旧大蔵省、重工業企業なら旧通産省、建設企業なら旧建設省や旧運輸省といった監督官庁の行政指導の下、それぞれが護送船団形式と呼ばれる業務分担・利益分配の構造を形成した。

 これら護送船団形式を監督する官僚集団の大勢が、いつ、どのように、変質し、多数の場面において、アメリカを私する一部の権力集団の意向を忖度するだけの集団へと成り下がったのか、という問題の追究は、一大研究となるので、これ以上取り扱うことはしない。ただ、一つ目のターニングポイントは、昭和60(1985)年のプラザ合意であり、二つ目のターニングポイントは、冷戦終了後のアメリカによる対日政策の変化にあると思われる。いずれにしても、慎重な判断を経た上での話ではなく、惰性に基づく対米追従は、今世紀以降のわが国の官僚機構の習い性となっている※f

 惰性に基づく対米追従は、米国の全体を益するのではなく、米国の1%の一部である戦争屋を利している。わが国の原子力発電所の再稼働は、その好例である。わが国の原子力ムラも、東京電力からの分を除けば、このまま現状が推移すれば、再稼働によって、事故以前の水準の利益を得ることが見込まれる。このため、日本語コミュニティでは、国内の原子力ムラが潤うことに多くの注目が集まりがちであるが、再稼働の理由は、国内の事情によるものだけではない。わが国の原子力発電所は、核兵器級の核物質を維持する国際的なサイクルの一部を構成することが指摘されている(リンク)。この説明は、わが国の原発の再稼働が電力事業の効率性や安全性とは関係なく進められる理由を説明するものとして、説得力を有するものである。北朝鮮の「水爆」実験及び「ロケット」=「ミサイル」実験の前に再稼働が進められたことも、北朝鮮の軍事的脅威を増大させる結果を引き起こしたことになる。日本と北朝鮮のいずれの動きも、結果から見れば、軍事的緊張を煽る戦争屋の利益に貢献している。日本側の官僚主導の政策は、結局、アメリカの国外から、アメリカ合衆国を主な牙城としてきた戦争屋勢力に協力してきたものと見て良い訳である※g

 原発の再稼働が国際的な背景を理由に進められたにせよ、福島第一原発事故への対応自体は、現在のところ、国内問題である。しかしながら、福島第一原発事故の影響は、2011年末には、アメリカ西海岸へと波及している。漏出する放射性物質は、2016年の現時点においても、わが国だけでなく、偏西風に乗り、アメリカ中西部にまで到達している。事故への対処が進まない状態は、先進国としての要件を満たしていないと、諸外国に密かに侮られる要因となっている。諸外国は、日本国政府に対して、それとなく警告や忠告を発してきた。しかし、民主党の菅・野田両政権にせよ、安倍第二次政権にせよ、日本国政府は、現在に至るまで、結果的に、それらの忠告やシグナルを無視してきたことになる。平成28年2月13日現在、この結果に対する責めを日本国民全体に負わせることは、そろそろ機が熟してきてはいるものの、諸外国にとっては、依然として、時期尚早である。日本社会、特に首都圏が明らかに機能不全を迎えるときこそが、日本国民に対する「政体」の裏切りを、わが国のマスコミを通じて非難する好機である。その機会が到来する時期を、諸外国は、ほかの国の動向もふまえながら、見計らっているのである。

 北朝鮮の「水爆」実験と「ロケット」=「ミサイル」実験は、他国が日本国を非難すると同時に日本の「国体」から富を収奪するための準備の一つではあるが、これらの実験は、いずれも、北朝鮮単独の動きとして見た場合には、わが国を揺るがす事態にはならない※h。なぜなら、日本国民が(現時点の)他国民から決定的に富を収奪される事態が生じる条件には、複数が必要とされており、そのうちの最も重要な要件である首都圏の機能不全は、現在のところ、国内問題に留まるためである。他方、日本国政府や日本国民にとって、北朝鮮の対応を変更できるだけの現実的な手段は、制裁を緩めるという方向以外に存在しない。そして、制裁を緩めるという選択肢は、現在のわが国では、取ること自体を考えることが売国と見なされかねないことである。今後の数年の間に、北朝鮮の「ミサイル」=「ロケット」がわが国の領土の主要な部分に着弾するという事態の生じる可能性は、ゼロではなく、その事件が何らかのスイッチとして機能することも否定はできない。しかし、その後の影響が大きなものになることが確実であるだけに、ある種の合理性を感じさせる北朝鮮の独裁体制が、この種の愚策を何の理由もなく実行することは、考えにくいことである。それよりも、重要免震棟の建設もせずに再稼働が申請された原子力発電所のいずれかを、直下型の地震が襲うというシナリオの方が、よほど現実味がある。

 他方、福島第一原発事故は、国内問題に留まる間であれば、国内問題として処理や操作が可能な対象である。国を当面の間維持するためには、福島第一原発事故の解決に全力を用いるべく、政策を切り替えることが一番の近道であった。それにもかかわらず、事故後の日本国政府は、民主党にせよ、自由民主党にせよ、事故の解決よりも、事故の影響の隠蔽に力を注いできた。この影響は、放射性物質のプルーム(粉塵、フォールアウト)が降り注いだ地域だけでなく、放射性物質を付着させた瓦礫を焼却した地域など、より広範な地域において立ち現れることになるであろう。放射性物質を封じ込めるのではなく、国内に拡散させた結果、わが国は、国内の対照群だけで疫学的な検討を実施することが極めて困難な状況を作り上げてしまっている。どのような事件や事象がきっかけとなるにせよ、わが国における福島第一原発事故という危機※hは、わが国の政府が時間を浪費したために、今後、影響が誰にでも分かる程度に顕在化したときには、手遅れであることも同時に判明するのである。

 今年から数年後までの間に、誰の目にも分かる程に福島第一原発事故の健康影響が顕在化したとき、現在の双方向情報化社会において、世界の中でもブログやSNSで発信することを好む日本人※iは、一斉に、反省の弁を口にすることになるのであろう。この兆候は、すでに認められるものである。また、そのとき、村上春樹氏や小出裕章氏の言が再度引用され、われわれは反省の好機を失ったという主張が繰り返されることになろう。これらの反省の弁は、日本国に対してそのときに多大な影響力を有する国が利用することになるのであろう。いわば、先の大戦後、日本人は、総反省することになったわけであるが、その繰返しである。これが、先に言及した「予想外の結末」の第一段階である。第二段階こそ、私の考察したかった内容であるので、筆を進めることにしよう。

 ところで、選良である財務官僚が現在の時点で暴言を吐くのは、彼(女)がそうしたとしても、福島第一原発事故の後処理に対する不作為について、責任を問われることがあるまいし、従来通りに天下りできるものと高をくくっていることに、主な理由が存在すると思われる。そのような油断が、高級官僚の生命や健康、財産の方が一般の国民のものに比べて優先される価値があるかのような彼(女)の発言として表れたのであろう。しかし、この考えは、想像力の欠如からくる油断を表すものであり、願望に過ぎない。件の財務官僚氏の考え方の卑怯さは、韓国のフェリー船のセウォル号の沈没事件と関連付けて考察してみると、明瞭に描き出すことができる。この対比は、陰謀論で有名な掲示板『阿修羅』の有名人である「知る大切さ」氏の書込みを参照したものである※10。2014年4月16日のこの沈没事件において、船長のイ・ジュンソク氏は、乗客を装い先に退避した。わが国を含む諸外国からの船長に対する非難は、当然の帰結である。船長の姿勢が世界中で批判されたのは、セウォル号の沈没に際して救命ボートに乗り移ろうとした下着姿の船長という、乗客との関係が実体化されやすい「映像」が存在したためである。他方、乗客である遭難者たちとセウォル号(の運航企業や船長)との間に締結された、当日の運航便という契約関係を考えてみる。すると、乗客にとっては、一度限りの契約関係が重大な結果を生んだわけであるが、船長らにとっては、それまでに多数締結してきた契約のうちの一つに過ぎないわけである。船長にしてみれば、マンネリ気味の日常業務の中、突然生じた危機の責任を取ることは、いざというときに、人柱としての機能を期待されていると言えども、覚悟を決めることができなかったということになるのであろう。しかし、裁判の経過はともかく、通常人の感覚からすれば、このような怯懦を理由に、イ氏を許すということはしないであろう。イ氏と企業が生じさせた結果が重大であることは、誰の目にも明白であるためである。

 ところが、防衛省職員を除くと、福島第一原発事故の責任を取ることになるであろう国家公務員の人数と健康影響を受けうる人数との比は、セウォル号の船長1名に対する「死者295人、行方不明者9人、捜索作業員の死者8人(Wikipediaの孫引き)」という比に匹敵する人数となり得るのである。国家公務員は大体37万人であるが、福島第一原発事故において外部被曝により影響を受けうると見なされるγ線空間線量率地図が作成された地域には、大ざっぱに4000万人が居住する。現在、首都圏への若年層の社会移動は、なお流入傾向にあるものの、これを勘案せず、毎年30万人が首都圏や東日本の太平洋沿岸部で出生すると仮定すれば、5000万人程度が福島第一原発事故によって、影響を被るものと予想できる。この人数は、セシウム137やストロンチウム90の半減期を前提としたものであるので、後世代への影響がここでの予測以上に達する可能性も十分に存在する。また、内部被曝を促進する「食べて応援」も考えると、影響を受ける人数は、最大で3倍程度、つまり全国民と同程度まで達しうる。よって、現在の国家公務員のマンネリズムと政治家の無策は、セウォル号船長とおおむね同じ人数比での責任を彼らに生じさせるのである。

 繰り返しになるが、現代の国際社会においては、国内の問題は、国が主権をもって対応することになっている。よって、問題が国内に留まる限り、この日本国政府の拙劣な対応は、放置されることになる。しかし、日本国が、国内における多病と多死を、国民と諸外国の目から隠しおおせなくなった頃には、影響を受けた外国においても、原発事故による後発性の健康障害が明らかになり始めるであろう。そのとき、日本国は、各国からも福島第一原発への対応を非難され、各国で生じた健康被害の賠償を求められることになる。そのとき、日本国として有効な手を打つことができなければ、その責任は、国際的な組織や国家連合による、内政干渉という形で償われることになるであろう。この事態は、独裁国家と同様に、また隣国における最大級の海難事故と同程度の責任を国家公務員が負うことが予測されているにもかかわらず、わが国が人命を軽視してきたことの当然の帰結ではある。

 福島第一原発事故に対して、諸外国がその国民に生じた健康被害をもって日本国への内政干渉の口実とするとき、原発の再稼働は、再武装の意志ありとする諸外国の理由付けに用いられかねない動きとなる。兵器級の核物質の生成のネットワークに組み込まれているという事情があるためである。原発の再稼働をもって再武装の意志とみなすことは、日本国民の大多数にとって、無理筋も良いところであるが、ここで私が示した理屈が屁理屈であるかのようにみなされるのは、わが国がアメリカの占領政策の随一の成功例であるがゆえ、親ブッシュ・子ブッシュ政権時に中東諸国に引き起こした混乱と占領政策の正当性を、アメリカが国際社会に対して訴える際に役立つうちのことである。

 中東諸国の混乱が収められたとき、アメリカが従来主張してきた形の民主化に対しては、「日本や韓国という極東諸国であったからこそ成功したのではないか」という、疑問が付されることになる。中東諸国には、現在、大きなパワーシフトが生じている。変化の兆候は、一つには、石油取引の元決済に表れている。もう一つの兆候は、原油価格の安値である。原油価格の抑制は、ロシアにも影響を与えつつも、シェールガス産業により深刻な打撃を与えている。シリア情勢の行く末は、中東地域におけるサウジアラビアやイランの地位に、不可逆の変化をもたらす可能性が高い。

 中東諸国の混乱が収められたとき、日本の国情に何もなければ、アメリカの占領政策の成功は、単に「極東アジア特殊論」という話で終わることになり、わが国は、依然としてアメリカを第一とする政策を継続することになるであろう。この場合は、空母ロナルド・レーガン乗組員のトモダチ作戦における被曝被害への損害賠償請求裁判の行方が、日本国に対する米国民の輿論を決定付けるであろう。この裁判の行方は、国際情勢がある程度現状に即して進んだ場合、わが国に最も影響を与えうる裁判となるはずである。にもかかわらず、日本語マスコミは、この問題を最大のニュースとして取り上げるところがないように見える。

 しかし、日本の国情に何も変化がないということはあり得ない。東日本で出生数が大きく落ち込もうとも、しばらくの間であれば、かつ、死者数が徐々に増加するに留まり、病人が捌ききれる程度に増加する間であれば、わが国は、何とか持ちこたえているように見せかけることができるであろう。この「現状維持」の状態は、件の財務官僚の言う「国益」の具体的イメージでもあろう。しかし、日本国内でも病人が激増しているというニュースが海外で報道されたり、(統計ではなく)個人の生活において、知人に多数の死者が認められるようになったとき、特に労働年齢人口から死者が多発するようになったとき、日本国の1%は、いかに否定しようとも、また統計を操作しようとも、これらの現象を隠しおおせなくなるであろう※k。もちろん、そうなったときに、天下りなどという制度が維持できる保証など、どこにもない。

 国際情勢に決定的な変化の見られない場合、今年のアメリカ大統領選挙は、アメリカがわが国に福島第一原発事故の収束を命令する契機として作用するであろう。今年中に選出されるアメリカの新大統領は、現在までの投票行動を見るにつけ、いずれの政党の候補者であるにせよ、また、従来型のワシントンの政治家が選出されるにせよ、99%の国民の意向を踏まえた舵取りを迫られることになろう。この見立てが正しいならば、「日本人が米国人を被曝させている」という意見が既に存在している以上※j、この意見が「旧敵国人が無為を装い米国人をダーティボムで攻撃している」という解釈へと変質する可能性は、見込まれる事態である。この推移は、あり得るシナリオのうち、覚悟しておくべきものの一つである。このシナリオが現実のものとなったとき、死文化したと専門家にはみなされている、国連憲章の敵国条項が適用されることになるであろう。

 無能力ゆえに国民と諸外国を放射性物質の危険に晒す日本国政府は、悪役の存在を欲する外国政府にとって、またとない悪のイメージとなる。そのイメージを具現化するためには、日本国民の健康被害についての具体的な「絵」が必要である。もちろん、このイメージだけでは、日本国から利益を搾取することはできない。このとき、わが国が、すでに多くの利益を海外の戦争屋に提供し続けてきたという事実が、外国の別の勢力にとって、利用価値を帯びるものとなる。ここ2週間の日経平均株価の大下げは、戦争屋への利益供与の最終段階と見ることのできるものでもある。これらの事実を組み合わせれば、日本国政府の売国的勢力と戦争屋がタッグを組んで、悪巧みをしてきており、日本国民がその犠牲になったという図柄が出来上がるのである。

 後は、一国民にとっては、なるようにしかならないのであるが、要は、時が至れば、多くの現象の組合せが日本国政府の無為の責任を問うためにあえて放置されていたということが明確な輪郭を伴い、誰にも見えるようになるのである。わが国が、この状態から脱出するためには、今までの無作為を反省し、その対応を世界に宣言することから始めなければならないであろう。福島第一原発事故への対応について、公に誤りを認めた上で、国際的な救援を真摯に求めたときに、初めて、守勢からの一手を打つことができたことになるのである。もちろん、このような変革は、現政権に期待すべくもないことではある。蛇足になるが、日本国政府のような、非競争的な環境に置かれた日本文化の悪しき点は、マンネリズムであり、前例踏襲ゆえに改善という概念を有さないことである。このようなとき、前例のない、未曾有の大事故に対して、財務官僚氏が国民切り捨てを平然と言ってのけることは、公害問題にせよ、敗戦にせよ、十分に予測されることであった。

 日本国民は、国際社会またはアメリカの介入の後、従来の生活に大きな変更を余儀なくされるであろう。そのとき、競争力の源泉たるノウハウを有する製造業は、ノウハウを有する人材とともに、海外に雄飛することになるかもしれない。または、西日本や北海道など、比較的汚染の少ない地域に集住することになるかも知れない。アメリカの介入後、日本人が日本に多数残るということになれば、件の財務官僚も、吸血者としての余生を全うできるかも知れない。しかし、物事はより深刻に推移し、おそらく、多くの企業が従業員に多くの病人を抱えることになり、日本の全産業が重大な打撃を受けることになろう。金の卵を産まなくなった鵞鳥を、飼主がいかに扱うのかは、当の飼主に聞いてみなければ分からない。しかし、新しい飼主が、戦争屋を排除したアメリカであるならば、以前から人権外交を掲げ、健康被害を生じた自国民を抱え、懲罰的制裁金を司法制度に有しているアメリカであるならば、責任者である官僚組織全体を連座させて落とし前を付けさせない訳がないことは、自明過ぎる話である。

 官僚組織にとっての悲劇的な結末を避けるためには、1%の何%かが事故直後にそうしたように、海外に逃亡することが唯一の選択肢になる。その際は、後世の日本人による資産返還請求を避けるために、外国籍を取得する必要が認められよう。そうしたとき、一世代前以上に外国に移住した日系の当国人は、元高級官僚の売国奴とは一緒にはされたくないであろうから、「元高級官僚の売国奴」に対し、相続税の強化なり国籍取得要件なりを事後立法であっても政府に要求するであろう。無論のこと、金持ちの日本人を無償で優遇する理由はないので、当国の政府は、「元高級官僚の売国奴」からは、気兼ねなく、事後法によって、あるいは日本国政府から売国奴当人への賠償請求を通じて、可能な限りの金銭を徴収するであろう。日本国に残された国民が売国奴当人からの賠償金を取得することは、まったく期待できないが、その代わり、売国奴当人に現地における健康で文化的な最低限度の生活を保障しつつ、それを上回る資産を当国の政府に没収させるという取引は、必ずや成功するであろう。その国が拝金主義的ならば、なおさら、この目論見が成功する確率は高まるであろう。このような取引を成立させる知恵こそは、「優生学的」に強者である証なのである。

 ここまで読み進める者がいるとは思えないが、(いたとすれば、大変申し訳なく思う。)ここまでの説明によって、件の財務官僚氏がダークサイドに堕ち、手足をもがれる前に打てる手は、かなり限定されていることが明白である。第一に、福島第一原発事故の影響を、現状可能な限り、完全に封じ込めることである。第二に、従来の不作為が不作為ではないと主張できるだけのアリバイを作ることである。ここに至り、ようやく、村上春樹氏や小出裕章氏の指摘が巻き起こす第二段階の予想外の結末を示すことができる。

 件の財務官僚がいかに自身の責任を否定しようとも、海外の識者は、ノーベル文学賞候補の常連と化している村上春樹氏の言葉に耳を傾けるであろう。中東情勢の変化も、その傾向に拍車をかけることになるであろう。小出裕章氏による原子力産業についての証言もまた、海外識者の包囲網を強化するであろう。産官学財報が一体となって原子力産業を推進してきたという理解が海外で共有されたとき、件の財務官僚に言い訳は許されなくなる。現在の時点で財務官僚を務めていては、すでに責任を免れることが叶わないのであるが、先に述べたように、逃げてもどん詰まりであることにも変わりがない。

 海外の識者、司法関係者が「日本国民全員の、応分の責任」に共感したとき、日本国民の間で、責任の押し付け合いが始まるであろう。そうしたとき、一体、日本国民のどれだけが、「政治家の指揮命令に唯々諾々と従う官僚」という説明に納得するであろうか。わが国の官僚組織は、良くも悪くも政治家のように振る舞ってきたのである。官僚の分を過ぎた振舞いは、マックス・ヴェーバー氏が政治家について喝破したように、結果責任という形をとって跳ね返ることになるであろう。ましてや、天下りなぞしていた日には、到底、責任を逃れることなど叶わないであろう。それに何より、すでにウェブで多く指摘されたように、官僚であるからといって健康被害を受けない謂われは、どこにもないのである。



※1 著名人の病気や体調不良・訃報報告★63©2ch.net
http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/lifeline/1453374888/966
#966番の書込みである。一応、系統的な方法により確認済みである。
批判は、おおむね次のようにまとめられる。
  • (#放射能は)肩書きで相手を選ばない(967氏)
  • 放射能に強いやつ以外はいらんってか(968氏)
  • 自分が倒れる直前まで俺は大丈夫と根拠なく信じている(971氏)
  • 生物 地学で東大入学の場合 放射能とか(#分からない)(972氏)
  • 財務官僚では、事態の深刻さが分かってない(992氏)
  • 官僚も使い捨てされるだろうが、国体の護持を言うのならまず陛下も(#防護が必要)(997氏)
  • 国体の護持って言い換えると利権の維持(998氏)

※2 一般人の病気や体調不良など★44 [無断転載禁止]©2ch.net
http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/lifeline/1455192487/

※3 被曝回避しない人、できない人は優生学的に劣っている!!: ずくなしの冷や水
http://inventsolitude.sblo.jp/article/173895967.html
役人の本音がちらほらと聞こえてくるようになった。上のツイートは、信憑性ありだと思う。

※4 村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(上) - 毎日jp(毎日新聞)
(Internet Archive: Wayback Machineによる2011年6月23日のキャッシュ)
https://web.archive.org/web/20110623223036/http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040017000c.html

※5 村上春樹さん:カタルーニャ国際賞スピーチ原稿全文(下) - 毎日jp(毎日新聞)
(Internet Archive: Wayback Machineによる2011年6月22日のキャッシュ)
https://web.archive.org/web/20110622131106/http://mainichi.jp/enta/art/news/20110611k0000m040019000c.html

※6 長野)「原発事故、一人ひとりに責任」小出裕章さん講演:朝日新聞デジタル
(関口佳代子 2015年11月30日03時00分)
http://digital.asahi.com/articles/ASHCY5T8PHCYUOOB008.html
 「事故を起こさせた責任を一人ひとりが問われている。だまされた(側にも)責任がある」

※7 特集ワイド:続報真相 大人は福島原発事故の責任を取れ 京大原子炉実験所助教・小出裕章さん最終講義 - 毎日新聞
(毎日新聞 2015年3月6日 東京夕刊)
http://mainichi.jp/articles/20150306/dde/012/040/002000c
 「子どもは、細胞分裂を繰り返してどんどん成長するので、放射線被ばくに大変敏感です。子どもには全く責任がない。大人は自分が被ばくしてでも子どもを守らなければならない。放射能汚染はなくならないので除染ではなく、実際は“移染”ですが、人が住んでいる現状では移染もしなければなりません」
 そして、大人の責任に関連して、70年前までの軍国主義の時代と今との共通点を指摘した。「国民は戦争に協力し、神の国だから負けないと信じ込まされ、戦争を止めなかった。ごく普通の人々が、戦争に反対する人を非国民と責めた。戦後、多くの人は政府にだまされたと言い訳した。原発では、推進派が決して事故なんて起こさないと言った。いま、国民が推進派にだまされたとも言う。今後、原子力に対してどう向き合うか、私たちは未来の子どもたちから必ず問われる」

※8 ぼちぼちいこか。。。 : 9月13日 【文字起こしUP】小出裕章氏と語る、続・原発『安全神話』溶融【その⑤】
http://bochibochi-ikoka.doorblog.jp/archives/3034125.html
#これは、
小出裕章氏と語る、続・原発『安全神話』溶融 - 2011/09/13 18:30Start - Niconico Live
http://live.nicovideo.jp/watch/lv62917682
の書き起こしという。

※9 阿修羅で小出裕章批判圧勝 : 脱原発運動に敵対する小出裕章氏を批判する
http://blog.livedoor.jp/pph2tm-ikenobu/archives/54722238.html
各人の責任は、他の人から指摘されるべきではなく、推進派との闘争の過程で各人が自問すべきである。

※10 「財務官僚曰く、「優生学的に被曝被害で死ぬ奴はたいした役にたたんでしょ」 魑魅魍魎男」中のコメント

http://www.asyura2.com/15/genpatu44/msg/832.html#c17
でもさー、それってセオール号の船長や船員に近い発想だね。
同胞の他人様の高校生見殺しだったね。
その考えだと何処まで進んでも(焼肉定食)弱肉強食なんだな。

※a たとえば、次のツイートは、「PM」の表記が「PN」であったり、3回の伝言ゲーム(元政府関係者→妻→友人→私)を経ていたり、PM2.5の計測手法の発展を踏まえていなかったりする。しかし、PM2.5の生成メカニズムが判明していること、また中国の地上核実験による汚染物質が黄砂とともに飛来していることと勘違いしている可能性も認められる。そのために、このツイートを無批判にリツイートすることは問題であるが、同時に、赤の他人が「うるま」氏のツイートのどこが誤りであるのかを同定することは困難である。このツイートを事情を知らない他人が全否定するということは、追加の情報がない限り、困難である。このツイートを肯定してリツイートすることは誤りであろうが、むきになって否定することもまた誤りである。この機微を理解することなしに、物事の真偽を正確に判定するという作業は、行えないものと考える。

うるまさんはTwitterを使っています: "@devenir21 私の友達がNZで出会った元政府関係者の妻が言っていたそうですが日本は深刻な汚染状況でこれを国民に知らせたらパニックになるので情報操作を決断したそうです。 PN2.5も数十年前から到来していましたが放射能問題を打ち消す為にあえて今になって煽っているそうです。"
https://twitter.com/wiz676/status/459638074125742080

※b 「国体」の定義を過不足なく取扱うことは、私の手に余ることである。ただし、それでも一応は、ここに出てくる財務官僚を批判する上では、定義めいたものを記しておく必要があるようにも思われる。一般的にイメージされる「国体」とは、複数の構成要素からなるが、その一つは、天皇陛下と皇室ご一家の存在、ならびに皇統の継続であろう。また、国家の三要件が維持される結果、国民の生命・健康と財産が保護されることがあり、さらには、その結果として、日本語及び(西洋文化に対置される、東洋文化の一系統としての)日本文化が維持されることであるといえよう。ここに挙げた要素の順位や軽重には、人によって変動があり得よう。ただし、本稿では、皇室と日本国民の大多数が財務官僚氏のいうところの「国体」から事実上欠落していることが重要である。この点さえ正しければ、私の議論における「国体」を定義することは、実際のところ、不要である。

※c 書込み主の相手の主張を理解する能力は、文面から察する限り、相当に高度なもののように思われる。

※d 北朝鮮の実験が、裏で通じている日本の存在によって実現できたものである、という見方(陰謀論)が存在することは、承知している。

※e 日米合同委員会によって、直接の指示を受けているかの主張が一部の論者から提起されている。矢部宏治, (2014). 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』, 集英社インターナショナル.が端的な事例である。私は、日本国の官僚の対米隷従的な行動が外形的に米国の指示に従うものとなっていることについては、その通りであると認める一方、直接の指示を受けているとする矢部氏の主張については、証拠不充分であると考える。対米隷従官僚の行動は、追従する場合としない場合とを比較衡量することから生じる合理的な判断に基づくものであり、酷い場合にあっても、官僚自身の忖度によるものであろう。仮に、日米合同委員会という場において、米国側の出席者が明確な指示を与え、指示への服従を要求し、日本側の出席者がその命令に服したという事実があったとしても、その事実は、日本側の出席者に証拠として残されることはないであろう。この点、日米合同委員会において共同謀議が行われているとする矢部氏の主張は、筆を滑らせたものであり、誤解を与えるものであると考える。ただし、日米合同委員会において、政策上の打合せが政治家よりも早いタイミングで行われている可能性は、極めて高い。その端的な事例として、第189回参議院, 平成27年9月2日, 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会, 15号, pp.27-28.において取り上げられた河野克俊統合幕僚長の平成26年中の訪米に係る日本共産党の仁比聡平氏の質問が挙げられる。平成27年9月10日、河野氏自身により、文書の存在そのものは認められたが、それ以上の政府からの説明は、公に対しては示されていない。仮に、この見通しがまったくの個人的なものとして発せられたのであれば、問題とはならなかったであろう。問題がある箇所を指摘するとすれば、それは、米国側担当者による質問を公的な回答への圧力があるものとしてとらえ、同時に、回答自体をいわば米国への組織としての公約として内面化した過程にあるものと思われる。

米軍幹部との会談資料、「同じ題名の文書は存在」=自衛隊統幕長 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2015/09/156683.php

※f 少なくとも、バブル期から20年程度が経過した鳩山由紀夫内閣時には、政治上の決断を実現しようと尽力しないばかりか、真逆の方向に活躍した官僚が複数存在した。この事実は、アメリカ側の資料が図らずも公知のものとなったために、判明したものである。鳩山政権に対する反逆行為に及んだ官僚の一人は、第二次安倍政権において、順当な異動を果たし、わが国の紛争解決に係る意思決定を左右する地位を占めている。この事実は、日本国における主要な権力構造が国外の戦争屋の影響下にある、という先の私の主張を十分に裏付ける材料である。また、3.11後の菅政権における「脱原発」路線を民主党政権のうちになし崩しにしたこと、安保法案の高級官僚の少なくとも一部が、わが国の政治を軽視し、わが国の民意以外の何かと共同歩調を取ることを習性としていることを示す証拠である。

※g ほかにも例証は色々あるようであるが、タイミング良くまとめる作業が私の手に余るので、またの機会とする。

※h 原子力緊急事態宣言は、福島第一原発(事故)については、平成28(2016)年2月14日現在も、『原子力災害対策マニュアル』にある通りの「原子力緊急事態解除宣言」が発令されていないために、継続中である。福島第二原発に係る原子力緊急事態解除宣言は、平成23(2011)年12月26日に内閣総理大臣の野田佳彦氏によって発令されている。

原子力災害対策マニュアル(taisaku_manual.pdf)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/genshiryoku_bousai/pdf/taisaku_manual.pdf

国立国会図書館デジタルコレクション - 東京電力株式会社福島第二原子力発電所に係る原子力緊急事態解除宣言について
http://www.dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6011739?tocOpened=1
 
※i Usage Statistics of Content Languages for Websites, February 2016
http://w3techs.com/technologies/overview/content_language/all

 この統計は、 Alexaにより評価されたトップ1000万サイトにおいて利用されている「技術」の言語から言語を判別したという。2016年2月15日の閲覧時には、次のとおり。フランス語やスペイン語に比べれば、日本語ドメインが多く存在することが分かる。なお、この方法論では、実際に用いられている言語の割合をうまく調査できないとの有力な批判が存在しているようであるが、日記好きの国民性は、まだまだ有力であると考えておいても、それほど問題ではないであろう。

languageshare
English53.7%
Russian6.3%
German5.7%
Japanese5.0%
Spanish4.9%
French4.1%

 なお、Ethan Zuckerman氏の報告によれば、アラビア語圏においては、従来ブロガーが英語で世界に向けて発信してきたところ、アラビア語で発信する動きが始まっているという。主に日本語で記述している私が書くことではないのであるが、母国語での発信は、国民の閉鎖的な情報環境へと囲い込むことにつながりうる一方で、輿論を形成することにもなりうる。アラビア語による情報発信・交換がどのようにアラビア語圏諸国の対米外交へと影響するのか、興味が持たれるところである。実際、日本語の閉鎖的環境はかなりのものであり、圧倒的に裕福であり英語教育を受けた者が多いはずであるのに、私がアラビア語圏のことを知りたいときに、英語ブログを参照できる一方で、おそらく、アラビア語話者が日本のことを知りたいとき、英語ブログを参照したとしても、それほど有用な情報が日本人によって英語で発信されているとは思えない。福島第一原発事故のことを参照すればするほど、そのように思ってしまう。主に、日本語に堪能な日本語以外を母国語とする人物によって、福島第一原発事故は海外に発信されているのである。

※ English is no longer the language of the web - Quartz (Ethan Zuckerman, June 20, 2013)
http://qz.com/96054/english-is-no-longer-the-language-of-the-web/

 なお、Miniwatts Marketing Group(リンク)は、2015年11月のNielsen Onlineなどのユーザデータから、先のザッカーマン氏の指摘に適う言語別のユーザ数を推計している。

languagesInternet Users % of World Total (Participation)
English25.9%
Chinese20.9%
Spanish7.6%
Arabic5.0%
Portuguese 3.9%
Japanese3.4%
Russian3.1%

※ Top Ten Internet Languages - World Internet Statistics
http://www.internetworldstats.com/stats7.htm

※j 探してみたら辛い気持ちになること請け合いなので、その作業はお任せしたい。私は、放射性物質の漏出が継続しているというニュースに際して、アメリカの若者が検閲語を繰り返す映像を見て、そりゃそうなるよな、と暗澹たる気持ちになって探すことを止めた経緯がある。日本の官僚や電通を始めとする広告代理店は、日本国民を騙すことができても、全世界に影響力を及ぼすことなどできない、非力な存在なのである。

※k 第一、オープンソースにおける統計やデータベースの使用状況に係る報道によって、不正選挙の尻尾を掴まれる程度の官僚しかいないのであれば、現在の情報化社会においては、戦う前から戦に負けていると言える。ヒューミントを駆使されれば、ひとたまりもないと言える。(使いこなせているとは言えないかも知れないが、)オシントしか使わない私でさえ、それなりに世界が見えている(かのように錯覚している)のに、優秀で忠実な職員が複数がかりで情報を収集する組織が私より的確に状況を把握していない訳がないのである。

2016年2月10日水曜日

高鳥修一内閣府副大臣のブルーチーズ発言について(+平成28年2月8日衆議院予算委員会の部分書き起こし)

まとめ

  • 産経新聞は、衆議院TVと比較してみれば、高鳥氏ブログのブルーチーズの一件について、卑怯な書き方をしている
  • TPPによってブルーチーズの流通量が変わるのか、国内酪農家のブルーチーズ生産に影響するのかは、何とも言えない
    • プロセスチーズや加工チーズ、ナチュラルチーズでも淡泊な味のものについては、TPPにより、国内生産に対して多大な負の影響が生じるであろうと考える
    • 夕食会の場では、あるいは衆議院予算委員会の答弁においては、国内チーズ産業を擁護したり、日本産の米や米酢や海苔や山葵や生姜や醤油を支援するという発言が必要だったのではないか
  • (甘い物が苦手な)右翼男性は、バレンタインデーにブルーチーズを要望せよ
    • 私は10年ほど、甘い物が苦手だからと言う訳ではなく、チーズ好きであるがゆえに、そうしてきた。

本文

高鳥修一内閣府副大臣が「ブルーチーズは美味しかった」とブログに記した※1ことに対して、平成28年2月8日の衆議院予算委員会において、福島伸享氏が批判したとの報道が複数存在する※2、※3。この批判は、長くなるが、以下のようなやり取りの中で行われている※4、※5。このやり取りは、衆議院TVの福島氏の質疑※3から私が書き起こしたものであるため、議事録に搭載される内容とは一致しないであろうし、一言一句の正確性を保証するものでもない。以下に引用する部分は、議事録と内容が大きく異なるということは、おそらくないであろう。それでも、そのやり取りを引用した産経新聞の記事の一部に気になる点があったために、衆議院TVのストリーミングを書き起こししたところである。

福島:ま、今回ちなみに、ブルーチーズも交渉の対象になってますけども、ブルーチーズの関税ってどうなるんでしたっけ、どうぞ。

ガヤ:(「聞いてないことでしょう」「質問は出てないよ」「時計止めてください」「答えられないなら答えられないと...」などを含む)

高鳥:あの、ブルーチーズの関税がどれだけか、ということはですね、今通告をいただいておりませんので、即座にお答えできなくて大変恐縮でございますが、確認させていただきます。

福島:だと思います。通告していないんで答えられないと思いますけども、私が言いたいのはそういうことじゃないんです。ブルーチーズは、ちなみにですね、これも私が調べたから分かってるんですよ、あの、始めから知っているって偉そうにするつもりはありません。11年目までに29.8%が14.9%まで半減するんですよね、森山大臣。ほかにもクリームチーズとか、おそらくチェダーとかゴーダもその場にあったかもしれません、これは16年目で関税撤廃。要はね、私、昨日も酪農家と話(はなし)してますけども、生産量が減らないって言ってるけども、今もうかつかつなんですよ、酪農農家。特に家族でやっている人は、休みもなく毎日乳搾りやったり牛が病気になったりね、出産があったりとか、本当に大変なんですよ。みんなこれ気にしていて、チーズの一部の関税が撤廃ですよ、重要五品目が。そう心配している酪農家の多くが、皆さんがいる中で、「ブルーチーズ美味しかったです」、一番乳製品を要求していた国はどこですか、ニュージーランドですよ。甘利大臣はニュージーランドとの酪農の交渉に戦っていたんじゃないんですか。そのニュージーランドに行って「ブルーチーズが美味しかったです」ということを仰る感覚が私は理解できない。保守政治家だと思うんだったら、その酪農家の思いを受けるのが保守政治家じゃないですか。「ブルーチーズ食べて美味しかった」って呟いている場合じゃないですよ。なんかご感想があれば仰ってください。

高鳥:お答えをさせていただきます。あのまずですね、ブログでございますが、これは、政府の公式見解ではございませんで、私が、まあ主にですね、自分の支持者に向けて、発信をしているものでございます。そして、大変ですね、タイトなスケジュールの中で、署名式が終わるまでですね、自分の携帯に触る時間も一切ないような状況で、空港へ移動する車の中で初めてそれを開きまして、自分が何とか元気にやっているということを、短い時間の中でお伝えをしたいということで書きましたので、誤解を招いていることについてはお詫びを申し上げたいと思います。その上でですね、政府代行ということでございますが、夕食会のときにですね、私の席が、どういうことでお決めになったのか分かりませんけれども、閣僚テーブルのですね、真ん中のところで、ニュージーランドのですね、マクベイ大臣の真向かいでございました。で、まあ、夕食会でございますから、やはり他の国々と友好的な雰囲気を作るという中で、雑談の中でですね、デザートにチーズが出てきたことは事実でございます。で私は実はチーズは好きではないのです。でも、そのチーズを食べたら美味しかったものですから、「チーズはですね、ブルーチーズは私は好きではありませんでした。昨日まで。だけど、今日からニュージーランドのチーズがですね、美味しいということは良く分かった。」とこういうことを申し上げたら、相手の大臣も非常に喜ばれまして、そして、「ニュージーランドでは新鮮な魚が取れるので、日本食もとっても人気がありますよ。」こういうですね、国と国は、最後は人と人ですから、友好的な関係を作っていこうと、そういうことの表れでございます。しかしご指摘を受けましてですね、誤解を受けるようなですね、表現については、今後気を付けたいと思います。

福島:はい、あの、話を聞いていて何か悲しくなってきましてね。本当に涙が出そうになって。国を売ろうと思って売ろうとする政治家はいないと思いますよ。私は一番問題なのは、国を売る意志もないんだけれども、愚かさゆえに国を傾かせてしまうと言うことが私は一番問題だと思います。あの、残念ながら今の答弁を見ていて、本当に、その、酪農家の思いを背負って交渉するような人だとは思えない。このような副大臣で、これからずっとですね、TPPの批准に向けて、場合によっては特別委員会も設置するかもしれませんけども、審議していかなければならない訳ですけども、石原大臣大丈夫ですか、こういう副大臣でいかがですか。
このブルーチーズに係るやり取りについて、産経新聞の記事※2は、次のように伝えている。私の興味は、この産経新聞による切り取り方にある。まずは引用してから批判することにしよう。【1】や【2】などは、後段での批判のために、私が挿入した目印である。
 【1】福島氏はさらに、高鳥氏がニュージーランドでの出来事を記した4日付のブログで「ブルーチーズはおいしかったです」としたことも批判。【2】甘利明前経済再生担当相はブルーチーズを含む酪農分野でニュージーランドと厳しい交渉をしてきたとして【3】「心配している酪農家の思いを受けるのが保守政治家だ」と述べた。

 【4】高鳥氏は、4日の夕食会でニュージーランドの閣僚と同席した際に「昨日まで私はブルーチーズは好きではなかったが、今日、ニュージーランドのチーズがおいしいことが分かった」と伝え、【5】友好的な雰囲気となったというエピソードを紹介した。【6】そのうえで「(外交は)最後は人と人だ。友好的な関係をつくろうという現れだ。誤解を招いていることについてはおわびを申し上げたい」と陳謝した。
産経新聞は、上掲のやり取りをそれなりには伝えているが、以下の3点において、現政権つまり高鳥氏に好意的な表現へと実際のやり取りを「翻訳」している。
  1. 【2】の前に福島氏が意地悪なクイズを出し、それに高鳥氏が答えることができなかったことを省略している。
  2. 同じく【2】の前に、国内の酪農家が大変な状況で仕事をしている状況を説明していることを省略している。
  3. 【4】において、高鳥氏は、「チーズ」が好きではなかったと表現しているところ、「ブルーチーズは好きではなかった」と記している。
第一点目であるが、数値自体を質問にすることは、行き過ぎであるものの、チーズの関税が安くなること自体は、ナチュラルチーズを日常的に好んで購入する人物なら知っているであろうことである。ネットを見ないで記憶だけで記すが、EUとのEPAにおいても、チーズが議題として取り上げられていたはずである。この一文を記した直後、答え合わせのためにGoogle検索で「EU EPA チーズ」と検索したところ、平成27(2015)年9月15日付の日本農業新聞の記事※6がトップとして返された。いずれにしても、ナチュラルチーズが重要五品目の「牛乳・乳製品」として位置付けられてきたことは、閣僚であれば心得ているはずのことであろう。影響を受ける当の酪農家からすれば、自身の仕事を十分把握していない高鳥氏ら現政権が、自分たち酪農家の仕事を軽視していると受け止めても、無理からぬことである。

 第二点目の「翻訳」の欠如は、三点の「自主検閲」のうちでは、最も罪深いものであろう。酪農という仕事は、危険で、相当の体力を要する仕事であり、夜間も気が抜けないものであり、さらに、高額の初期投資を必要とする設備産業である。このことは、ガキの頃に2泊だけ英国の酪農家にホームステイしかしていない私にも分かる話である。危険であるのは、乳牛に蹴られる可能性があるためである。注意していないと死ねるヘビー級の衝撃である。排泄物の処理にしても飼い葉の運搬にしても、尋常でない背筋力が必要である。夜間は夜間で、出産や病気の世話がある※a。飼料のためにも(ロール制作に代表される)専用の大型の農業機械は欠かせないし、広大な牧草地も必要である。牛舎も必要である。このため、酪農業は、自然と設備投資型の産業となる。酪農家の方々には、本当に頭が下がる。

 第三点目に挙げた「チーズ」を「ブルーチーズ」と記した矮小化は、産経新聞記者が十分な裏取りをしたので「ブルーチーズは好きではなかった」と限定して記したのかもしれないとは思う。しかし、結果として、産経新聞の記述は、チーズ嫌いと受け取れる高鳥氏の発言の影響の範囲を小さくする効果を有するものである。なぜなら、TPPは、ナチュラルチーズよりもプロセスチーズに、個人向けよりも業務向けのチーズに、より大きな影響を与えることになると思われるためである。ナチュラルチーズのままにせざるを得ない「ブルーチーズ」とすれば、発言の影響の範囲は、流通量という観点から、きわめて小さなものに限定化することができるのである。この厳密さを欠く記述は、当該記事のデスクか記者かの姑息さを感じさせる材料である。

 本記事で話題に上っているチーズは、少なくとも、高鳥氏や福島氏の発言の文脈を見る限りでは、個人消費向けに流通するナチュラルチーズであるとみなして良いであろう。福島氏は、TPPの酪農家への影響全般を問題にしているので、戦線を拡大しようとしていると見ても良いが、ここでの「チーズ」の種類そのものは、TPPにおける分類を見ても、ナチュラルチーズに限定した話と見て良いであろう。ナチュラルチーズの種類別の販売統計などは存在しないように思うので、大半の日本人よりナチュラルチーズの消費量が多いであろう私※bの独断で、流通量の予想を記しておくことにしよう。国産のナチュラルチーズの過半は、クリームチーズやフレッシュタイプであるように思う。(家庭での)お菓子作りの材料としても利用されるためである。次いでハード系、白カビ系、ウォッシュ系の順であり、ブルー系の流通量はほとんどないように思う。系統的に食べるようには心がけていないので、私の食べている内容にはきわめて偏りがあるのだが、チーズ工房における品揃えから受ける印象としては、このような感じであろう。ともあれ、国産のブルーチーズというものは、扱う工房も少なく、流通量も少ないのではないかと思う。

 また、上掲の産経新聞の引用において、【5】に記された「友好的雰囲気」は、「ニュージーランド国内における近海漁業による日本食」という片務的な関係の元に構築されたものであることも指摘しておきたい。TPPについてのいわば全権委任大使である者は、少なくとも、「魚は近海ものが美味しいかもしれませんが、日本産の米と酢と山葵で作るのがお勧めです。醤油と生姜と緑茶も日本産で!」といった切り返しを試みる必要があった。この種のビジネス的発言は、自己弁護として有用なものであるので、仮に高鳥氏本人がこのように発言したのであれば、そのエピソードを紹介しなかった訳がないものと考えられる。少なくとも、国産の食品の輸出増を試みる発言なしに、ニュージーランドが主力輸出品目に据えたナチュラルチーズを美味しいと評価するだけでは、日本国代表としての仕事を尽くしたとは言えないであろう。この点も、うかつであったとは言えないであろうか。要は、高鳥氏のブログに「ブルーチーズ美味しかったです!日本のブルーチーズもね!」とか「米、米酢、山葵、醤油、生姜、緑茶は日本産をオススメしておきました!」という文言が入っていれば、これほどまでの問題にはならなかったのであろう、と私は推測するのである。特に、日本のブルーチーズが持ち上げられていることが大事だったのではないだろうか。

 高鳥氏のブルーチーズに係る書き込みは、週明けに問題視される可能性が予測されたのであるから、仮に、週末中に国内産のブルーチーズを買う算段を整えて、「国産も買いました!美味しいですね!」などと切り返せたのであれば、産経新聞の忖度に頼ることなく、高鳥氏本人が問題を小さいものに留めることができたであろう。それに、国産の流通量がもとより少ないと思われるブルーチーズについて言及したことは、国内の工房に対しても目を向ける契機となり得るので、先のように国産を勧める発言と根拠を示せていたとすれば、今回の高鳥氏のブログ上での言葉は、国内産業にとって良い方に影響したかも知れないのである。この点を農水省の担当者を使役して十分に理論化・実証化した上で、切り返せていたのであれば、福島氏の発言に対して、高鳥氏が横綱相撲を取れたことになり、ネット右翼の工作に頼らずとも、高鳥氏に対して賛辞が寄せられていたということになっていたかも知れないのである。

 ただ、国内産のブルーチーズを率先して推奨するにあたっては、国内産のブルーチーズがすでに海外産のブルーチーズと棲み分けられているという点に注意する必要がある。私が食べた記憶のある国内産のブルーチーズ(と呼べる可能性の残るチーズ)は、『クレイル』※7の「おいこみブルー」くらいしかない※c。美味しかったことはもちろんではあるのだが、あまりにも淡泊で、イタリア風に言うとピカンテ好きの私にとって、もっと来いや~!という気持ちを起こさせるものであったことも確かである。この状況が、関税撤廃が進んだときに、どのように変化するのか、私には予想が付かない。EUとのEPAにしても、TPPにしても、成立した暁に、青カビの強いブルーチーズの流通量にどのように影響するのか、読めない。日本人の味の好みが変化しないとも限らない。好みが変化せずとも、全体として増加した流通量が国産のブルーチーズを圧迫するかも知れないし、チーズを嗜む人口が増加することによって、結果として市場が広がるかも知れない。

 ところで、国産ナチュラルチーズの振興は、本来、1%層に所属する(職業)人の義務である。嗜好品であり、高級食品であるためである。しかし、実際のところ、高級スーパーに置かれているナチュラルチーズであっても、可哀想な状態になっていることは結構多く、チーズ文化を支える裾野の貧弱さを感じさせる。とはいえ、私は、発酵が進んだ状態の方が好きなので、それほど意に介さないのであるが、品質にこだわる人は、専門店を選ぶしかないであろう。丹精込めて送り出された商品が手荒に扱われているという観点から見れば、やはり改善が試みられるべきことでもある。専門店のチーズは、さすがにいつも食べ頃のタイミングであるが、ホリエモン氏くらいに金回りが良くないと、常用するわけにはいかないであろう。いずれにしても、ナチュラルチーズそのものは、バターのように必須の食品という訳ではないのであろう。こうしたとき、大半の日本人が1年に1度食べるかどうかであろうブルーチーズに高鳥氏が言及したことは、やはり不用意に過ぎたことであったと言わざるを得ないであろう。

 ちなみに私は、バレンタインデーに、チョコレートの代わりに、ナチュラルチーズを贈ってもらうという手を取っている。この手に頼るようになり、10年近くになる。一年を通じてというわけにはいかないが、チョコが苦手という男性を取り込むための一案として紹介しておきたい。「バレンタインデーにワインとチーズ」が本来のキャッチフレーズなのかも知れないが、ワインは、独断で見れば、チーズよりも高度に職業化された趣味であるし、独力で探求するのも限界があるし、何より費用が青天井になりがちである。身代を潰す程になるであろうし、悪事に手を染めることにもなり得る。佐藤優氏の著書に、接待用のワインを私消した外務官僚の話があったような記憶がある。その点、ナチュラルチーズであれば、自ずと価格に上限がある。ワインという趣味は、1回5000円以上になるであろうが、自宅でチーズならば、取り合わせたとしても、5回味わうのに、10000円(5種類×2000円)というところであろう。それに、アルコールに弱くとも、単独で楽しむことができる。紅茶と取り合わせるという方法もある。

 チーズの流通量が増えることには、ほかの懸念材料もある。かぶら寿司や大根寿司のような伝統的な麹系の発酵食品と競合しうる可能性が認められることである。 少なくとも、私の中では、両者は競合的な存在である。どちらも美味しく、優劣つけ難いものの、人間の食事の量には上限があるためである。発酵食品の摂取がチェルノブイリ原発事故による健康影響を軽減したという研究は、広く知られている。(ので、EM菌等の話も流行した。)いずれにしても、今回の失言?騒動は、政府に味方する側も、反対する側も、国産の(ブルー)チーズをヴァレンタインデーに要求する契機になったということである。


※1 TPP署名式 | 高鳥修一 たかとり修一 (衆議院議員 自民党 新潟六区) 公式ブログ
https://takatori55jim.wordpress.com/2016/02/04/tpp%e7%bd%b2%e5%90%8d%e5%bc%8f-2/
私一人に空港まで6台の白バイとパトカー、上空からヘリコプターが警護に付く厚遇でした。ブルーチーズは美味しかったです!

※2 TPP署名の高鳥副大臣を民主党・福島氏が「売国の政治家」と批判 「ブルーチーズおいしい」も攻撃 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160208-00000528-san-pol

※3 TPP署名式後、ブログに「チーズおいしい」 (読売新聞) - Yahoo!ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160208-00050113-yom-pol

※4 2016年2月8日 (月) 予算委員会 (7時間18分)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=45492

※5 福島伸享(民主・維新・無所属クラブ)
http://www.shugiintv.go.jp/jp/wmpdyna.asx?deli_id=45492&media_type=wn&lang=j&spkid=24452&time=02:14:29.2

※6 日本農業新聞 e農ネット - チーズ関税撤廃迫る TPP交渉影響も 対日EPAでEU
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=34659

※7 カマンベールの老舗・クレイル
http://www.creyl.com/naturalcheese.html

※a 病気には立ち会わなかったが出産には立ち会った。

※b 年1回ペースで工房の店まで行って購入していたりする。マニアであるとは到底言えないが、普通の人よりは、ナチュラルチーズ好きと言って良いであろう。

※c なので、「隗より始めよ」、実は、この記事の前後にGoogle様にお伺いを立て、系統的に調べた上で、注文済みである。蛇足であるが、Google様に敬称を付けるのは、Googleの検索サービスが、人間の手によるものの、人間を超越した、さりとて一神教の神様には至らない水準の能力を備えているためである。私としては畏れを抱いているのである。

2016年1月26日火曜日

甘利明氏に対するスキャンダルについての『ぱよぱよ日記』の推測は明らかに誤りである

 『余命三年時事日記』というブログの周辺には、驚くほど杜撰な推論が見られることがある。ゆえに、ネット右翼ヴァージョンの陰謀論として読めば面白い。その周辺を自認する『ぱよぱよ日記』なる匿名ブログが、甘利明氏のスキャンダルについての『週刊文春』記事は日本共産党の仕掛けた罠である、という見解を示している※1。日本共産党とCIAとの間に関係があるという根拠のない噂が存在することをふまえれば、噂としてであれば、この見解が成立する余地はゼロではない。しかしながら、この手の謀略が現実のものとして暴露された場合、謀略を仕掛けた側の評判は、著しく傷付けられることになる。ゆえに、謀略の存在を指摘する場合には、相当の確たる根拠が求められよう。しかしながら、『ぱよぱよ日記』のブログ主の論理立ては、共産党に対する批判ならともかく、民主党までを巻き込んで、これらの二政党(2016年10月24日追記)を根拠なしに批判するわりには、以下に示すとおり、あまりに稚拙なものである。

 『ぱよぱよ日記』は、(甘利氏スキャンダルの)告発者の一色武氏については何も情報が得られないと述べた後※1、献金者の薩摩興業株式会社(千葉県白井市)代表者の寺床博好氏が千葉県中小企業家同友会の北総支部副支部長を務めており※2、同会が共産党と懇談したことをもって※3
この件については、共産党が自民党潰しで仕込んだと考えていいと思います(笑)
と述べている。これは明らかに牽強付会というものである。なぜなら、たとえば、同会において講演している星野順一郎我孫子市長※2は、2007年の選挙で自由民主党我孫子市支部の支援を受け当選している※4。2011年※5、2015年の選挙でも自民・公明両党の推薦を受け再選を果たしている※6。仮に、同会との関係だけをもって謀略を指摘するならば、同会に対する不当な根拠に基づく不当な非難となるだけでなく、「甘利氏に対する謀略は、自党によるものとなる」という論理を認めることとなる。

 『ぱよぱよ日記』の推理は、あまりにも酷いデマであり、この水準の主張を放置しておくことは、諸方面にとって迷惑になるであろう。『ぱよぱよ日記』は、日本共産党だけでなく、民主党も、千葉県中小企業家同友会も、自由民主党までも誹謗していることになるからである。

 企業経営者の結社・団体は、『ぱよぱよ日記』のような一方的な見方をすることなく、政党とは「大人の付き合い」、つまり合理的な関係を構築するものであろう。私の知る狭い範囲でも、業界のカラーがあり、支持政党が明確であることもあるが、たとえば与党寄りであるからと言って、野党と付き合いがないということはない。会の構成員の支持政党も、必ずしも会の支持政党とは一致しない。

 ところが、ネット社会の言論には、一転して、現実の結社・団体の穏健な性格が見られない。日本人の個人は、総じて無頓着に政治的発言を現実社会においてなしているが(講演者は、個人として集団を前に発言していると考えれば良いであろう)、組織になると、政党関係者を除けば、その性格は著しく薄まるのが通常のように見える。この極端なブレは、福島第一原発事故に対しても、該当するものと思われる。個人と組織、匿名と顕名とのギャップは、わが国の社会益を大きく損なうものであるように思われるのである。こうしたとき、いくら表現の自由があるからとはいえ、この程度に行き過ぎた誹謗中傷に対しては、厳正な対処が司法執行機関によってなされて然るべきであろう。わが国の安全や国益は、平成28年1月の時点では、右翼と自称する者によっても損なわれているのである。

※1 ぱよぱよ日記:薩摩興業と共産党
http://payoku.requiem.jp/3463

※2 2015年度支部総会特集(千葉県中小企業家同友会)
http://chiba.doyu.jp/04jisseki/1506_shibusoukai.html

※3 千葉・中小企業家同友会と共産党懇談(日本共産党千葉県委員会)
http://jcp-chiba.web5.jp/nissi1207/dekigoto1401/dekigoto140403.html

※4 我孫子市長・市議補選挙(2007年1月21日)(自由民主党 我孫子市支部)
http://jimin-abiko.com/abiko.html

※5 11.01.24(月) 北千葉道路促進期成同盟・特別講演会 : たきた敏幸日記
http://takinowa.exblog.jp/15391441/

※6 【速報】我孫子市長選、星野氏が3選 | ちばとぴ ちばの耳より情報満載 千葉日報ウェブ
http://www.chibanippo.co.jp/news/politics/235807

2016年1月7日木曜日

シャルリ・エブド1224号の風刺画は何かが変わった兆しなのだろう

 題名のとおり、シャルリ・エブドの風刺画(No1224、2016年1月6日)は、中東問題ならびにそこから派生したEU内のシリア難民問題に係る「何か」が変わったことの兆候に見える。ただし、私に分かりそうなことは、第三次世界大戦が避けられそうであること、やがてシリア難民は帰国の途につくことになろうこと、だけである。しかし現に、日本のマスメディアは、第三次世界大戦という扇情的な表現を用いて、ロシアのシリア政府に対する支援の開始を報じたものの、米軍やNATO軍の(実態としての)静観もあり、多国間の戦争には発展していない。ただし、2ちゃんねる(sc)民※1は、その変化の兆しに全く気付いていないようであるどころか、原因に係る誤解をいよいよ深めているようである。それら大勢に反対するような、本質を示す書込みが削除された跡も見られない。

 風刺画は、「(事件から)一年後だが、暗殺者はまだ広範に存在する」という意味のフランス語とともに、「プロビデンスの目」と呼ばれるシンボルを後光として配された老人が血にまみれつつ逃走する様子を描くものである。プロビデンスの目は、ピラミッドを横から見たところに目をあしらったものであり、その意味や起源については、諸説紛々である。すべてを見通す目の意味を持ち、エジプトに起源があり、ホルス神を表す片目から転じたという説明は、形状から読み取れるために、信憑性があるように思われる。このシンボルに関連付けて論じられる(秘密)結社には、大別して、フリーメーソンとイルミナティの二つがある。これらの結社についての説明も、百家争鳴の状態にあるが、イルミナティには(、外部から見れば)、複数の分派が存在するようであることは、ここで指摘しておいて良いだろう。これらの組織は、歴史を経て信仰等が変質しているとの指摘もある。論者の立ち位置などにより、かなりバラエティに富んだ指摘が好き勝手に取捨選択されている状態にある。これらの組織についての信憑性のある説明は、自分の手に余るので省略するが、少なくとも、次の点だけは指摘できる。

 現在、日本語環境下で(、かつ陰謀論者によらないもので)、NHKを経由して流通しつつある情報においては、風刺画作者のリス氏の口を借りる形で、老人は「神」であるとする※2ものの、リス氏のこの発言は正確ではない。なぜなら、先の秘密組織についての説明の中には、これらの秘密組織が悪魔を信仰しているとする批判も広く認められるためである。また、これらの組織に対する非難の中には、これらの組織がほかの宗教を乗っ取るべく活動していると指摘するものも含まれるためである。いずれにしても、今回のシャルリ・エブドの風刺画は、従来のイスラム教過激派とされる犯人たちの枠に収まらない、別の存在の関与を指し示すものであるようにも読み取れる。なお、イスラム教過激派は、イスラム教を憎悪の対象とするための工作の一環として立ち上げられた、カバー用の組織であるという(陰謀論)者の指摘もあり、私から見れば、この指摘は、本質を突いているように思われる。

 どのような背景がシャルリ・エブド襲撃事件にあるにせよ、今回の風刺画は、イスラム教徒よりはるかに少数の特殊な集団を、悪魔化すべく描かれていると判断した方が良いものである。その集団は、何らかの信仰を有しているかもしれないが、少なくとも、その信仰は、イスラム教やキリスト教などの標準的な考え方からはひどく外れたものである。この少数者の「宗教」は、日本人が漠然と思い描く「一神教」とは、全くの別物である。この区別を付けられるだけのシンボル、プロビデンスの目が示されている以上、今回の風刺画は、かつてのイスラムに対する差別的な風刺画から変化したと判定すべきものである。かつての差別的な風刺画の一例としては、「ちくしょう、コーランは銃弾を防げない」(私訳)と揶揄していた1099号の風刺画(2013年7月10日)を挙げることができる。この風刺画は、エジプトにおけるムルシー政権に反対する2013年6月末のデモの激化※3を受けて描かれ、イスラム教に悪意を抱いていると判定できるものであった。なぜなら、コーランが明確に描かれており、かつ、損壊されていたからである。コーランの損壊事件は、わが国においても前例が見られたことである。なお、多数の悪意ある風刺画からこの絵を選択したのは、この表紙自体を利用した風刺画を描いた人物が逮捕されたことを思い起こすべきであるためである。ただし、フランス政府は、このような差別的な扱いを国内で進めたとはいえ、シリア内戦を利用した報復活動をエスカレートさせるということはしていない。国内外における区別は、フランス政府の外交の節度も意味するのだろうが(、わが国とは異なり)、事件の「黒幕」が影響力を行使しうる範囲の限界や、あるいは「黒幕」の影響力の減退をも意味するものと思われる。この影響力は、1ヶ月程度を経過した現在、フランス国内においても減退したと見ることが可能である。今回の風刺画の変化から、「黒幕」の影響力の減退を読み取ることは、さほど困難なことではない。

 今回の風刺画作者のリス氏が嘘を吐いたにせよ※4、NHKの担当者が誤訳したにせよ、NHKが海外ニュースを大幅に取捨選択して報道する限り、日本語メディアという、全世界からみれば狭く閉じた世界において、一神教の神を悪魔化しようという試みが進行しつつあると警戒することは、疑い深すぎるという見方にはならない。「ふつう」という表現は、あいまいではあるが、ふつうのキリスト教徒やイスラム教徒は、プロビデンスの目をシンボルとする集団と自分たちとを区別している。私もプロビデンスの目を信奉する人物の知り合いなどいない。日本人の大半もそうであろう。全世界の大抵の人々もそうであろう。

 しかし、日本語界隈では、マスメディアを経由する際に「一神教」という情報がいつの間にか混入した結果、このような常識的な庶民感覚は大きく損なわれ、誤解はネットを通じて拡大しつつある。誤解が蔓延しつつある状況は、日本が悪人たちの最後の楽園※5であり続ける上で、好都合である。同時に、然るべき地位にある者が誤解していたり拱手していたりする状態は、大多数の日本国民にとって、(国民)益にならないものである。浅薄な理解(誤解)と安易なラベリング(悪魔化)は、ときに、大がかりな事件を予防し得ない経過を生み出すのである。



※1 2ちゃんねる(sc)でも話題となったことは、まとめサイト経由で知ったので、そのまとめサイトのURLとともに示しておく。

【悲報】フランス人、また風刺画でイスラム教徒挑発・・・ : 【2ch】ニュー速クオリティ
http://news4vip.livedoor.biz/archives/52135166.html


【悲報】フランス人、また風刺画でイスラム教徒挑発
http://tomcat.2ch.sc/test/read.cgi/livejupiter/1451956617/


※2 仏 新聞社テロ事件から1年 特別号の風刺画で議論 NHKニュース(2015年1月5日 10時05分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160105/k10010361211000.html
風刺画を描いたのは、みずからも襲撃を受けたリス編集長で、フランスのメディアに対し、風刺画は「神」を題材にしたものの、特定の宗派ではなく宗教を巡りテロが頻発する状況を表現したと説明しています。
※3 エジプト | 国際テロリズム要覧(Web版) | 公安調査庁
http://www.moj.go.jp/psia/ITH/area/ME_N-africa/egypt.html

※4 日本の風刺画家の中には、軽率にシンボルを扱う者がいるかもしれないが、オーナーの素性や経緯などを考慮すれば、『シャルリ・エブド』という媒体の表紙において、意味もなく風刺画に特定のシンボルを利用することはあり得ない。むしろ、リス氏の説明に疑問を抱かずに、鵜呑みした報道を流すこと自体、ジャーナリズムとしては軽率であろう。

※5 last resortという名称は、本来、退避地とでも訳すべきかもしれない。

2016年1月2日土曜日

死亡者数が実は260万人という風説は相当に胡散臭い

#一部、平成28年1月5日追記を含む。

年頭の初PC、掲示板『放知技』のある板(リンク)中に、胡散臭い書込みを見つけたので、検証して(、おそらく嘘であることを確認して)みた。 以下の引用では、改行記号を適宜削除してある。

103:黒策: 2015/12/31 (Thu) 16:32:19 host:*.ocn.ne.jp

今年もあとわずか 私の元にもたらされた最新情報です

① 今年の死亡者数は実は260万人
 毎年100万人程度は死亡するのが常態ですが今年はその2.6倍 しかし 高齢化社会で身寄りのない年寄りが多く、しかも火葬場では従来使われてなかった高オクタンの航空ガソリンが使用され始め 処理能力が向上しているのでサクサク処理できている つまり 死人が多くて痞えるという事が無いのでそれが目立たないのです

② 米国戦争屋勢力が勝利か?!
 どうもトランプ候補はこのまま勢いを増して大統領選に勝利するという可能性が高いとか 奥の院は彼を使って中国との核戦争 そして第三次世界大戦を始める決定をしたそうです もちろん 来年にも起こる関東総滅→属国化から日本各地に核ミサイル基地が完成 戦争開始と同時に日本の国土は雲散霧消です 海外へ逃げ延びた日本人にも 慰安婦南京を口実にしたボクロム攻撃の嵐が待っていますから 生き残れるのはせいぜい500人程度でしょう 皇室ご一家も虐殺されているかも知れませんね(というか必ずそうなるでしょう)

③ 遂に現れるブラザーズとファティマの聖母
 これは第三予言にあった通りで 長年地球と秘密裡に連絡を保ってきたあのお方たちが姿を顕わし最終判決を下されるとの事です 人類一万年の歴史が清算され 全ては光のうちに神秘の結合と証が果たされるのです これに先立つ審判に適い救済される日本人は恐らく一人もいないでしょう

なんとも希望のない寒々とする年の瀬ですが 神の御顕現を目にして消滅できる我々はかつてない幸福な最後を迎えられるのではないでしょうか
では 左様なら

統計を扱う身から見れば、特に①の死者数:実は260万人という風説は、看過していてはいけないものであるので、メモ代わりにインターネット上で調査した結果を公開し、その根拠として挙げられている内容がガセと断定できることを示す。いつも、陰謀論ど真ん中の意見を採用する私があえてこの風説を否定するのは、統計に何らかの誤差があるとしても、その主張が桁違いなためである。また、公開するのは、本件の調査にあたっては、いくつか問題のある検索語を含めざるを得ないために、身の潔白(のようなもの)を示すためである。航空技術についてのインターネット検索は、利用するPCに対してややこしい状態を生じさせがちである。燃料の規格なんてのは、百科事典的項目を調査するだけであるにもかかわらず、PCに問題を生じさせかねない、どストライクの内容であることが直感的に認められる※1。ここでは、健全な疑問に基づき、上掲の陰謀論者の書き込みの正否を確認することだけだという意図を強調するため、公開する次第である。公開しなくとも、読める人物は読めるのでは?という素朴な疑問も提起しうるが、公開という行為に伴うさまざまな効能・副作用を期待してのことである。

まず、利用されているとされる燃料に着目する。
Chevron Products Company, (2007). Aviation Fuels Technical Review
https://www.cgabusinessdesk.com/document/aviation_tech_review.pdf
の、Fig. 2.1, Fuel Energy Content vs. Density (p.3)によると、

Typical Density at 15 celsius degree: 0.715[g/ml]
Typical Energy Content, Gravimetric: 43.71[MJ/kg]
Typical Energy Content, Volumetric: 31.00[MJ/l]
Typical Energy Content, Volumetric: 112,500[BTU/gal]
である。同じ体積についての熱量を、英語版Wikipedia(リンク)から引用すると、
Gasoline (conventional, winter) 112,500[BTU/gal]
Jet fuel (kerosene) 128,100[BTU/gal]
である。投入したときの温度や燃焼効率(時間あたりの熱量)は、異なるかもしれない※2が、それなりの時間(、瞬間ではなく、炉が十分に暖められた後の分~時間という単位で)の幅を取れば、灯油や自動車用のガソリンは、航空機用のガソリンに比べて燃焼の効率が劇的に変わるものとは言えないだろう。現実には、燃料の違いよりも、季節や遺体中の水分量が燃焼時間を大きく左右するであろう。レンジバーナーが斎場の一部に(再度)導入されつつある※3ことを、この推測の傍証として挙げることができる。(2017年5月17日修正:リンク先の著者は、レンジバーナーなる設備?を「電子レンジ」と表現するが、この方式が人間の遺体に対して使用されていると実例を挙げて報告する例は、英語においても見つけることができない。電気式火葬炉(電気ストーブ方式)が実用されていることは、複数の報告により確認できている。ペットやバイオハザードを起こしうる生体組織に対しては、電子レンジ方式が使用されているとの明確な記述をオープンウェブ上に見出すことができる。以上、ここに修正してお詫びする。もっとも、人間の遺体を生態系に負荷をかけずにコンパクト化等する方式の中では、電子レンジ方式(microwave cremation)も、フリーズドライ方式・溶解方式などと並んで、選択肢のひとつとして(特許などにおいて)考慮された跡がない訳ではないものと認められる。)

多くの火葬場では、現在でも、燃料に灯油が(、次いでガスが※3-1、3-2利用されていると考えて良い※4が、その一方で、灯油を燃料とする石油ストーブにガソリンを投入すると大変なことになることは、多少でも火を利用する者なら、良く知るところである※5。石油ストーブにはガソリン厳禁!は大事なことなので二度繰り返しておく。すると、いくら炉を専門に扱う職能の手に預けられているとはいえ、灯油を燃料とする火葬炉で航空機用ガソリンを使用することは、相当に危険なことである。労災のリスクを考慮すれば、普通の企業が行うことではないし、事故から経緯が発覚するという、不要な危険を招くことでもある。

さらに、航空機(用)ガソリンは、ジェット燃料と異なり、経済産業省の産業動態統計に別項目として計上されない分類である※6リンク)ほどに、流通量を別立てして検証しなければならないものではない、と見て良い。需要の少ない航空機用ガソリンをわざわざ導入すれば、余計に経費を要することになるだろう。航空業界という業界を新たに巻き込むだけに、大仕掛けともなる愚策である。

以上で、冒頭の書込主が火葬の際に航空機(用)ガソリンを利用していると主張したことは、十分に否定されると考えて良い。航空機(用)ガソリンを火葬炉にわざわざ導入する必要は薄い。そうするくらいなら、灯油を大量に用いた方がよほど穏当である。火葬場における灯油の使用量は、それなりに大きなものであるためだ※7

以上の私の指摘は、必ずしも冒頭引用部分①の、260万人が亡くなったという主張を否定する材料ではない。ただし、その主張の信憑性に大いに疑問を抱かせるものとして、利用できる。インターネット上に限定した調査でバレる嘘は、比較的わかりやすい嘘であるといえる。ここまでの嘘は、ウォームアップというところなのだろうか。

蛇足であるが、1970年代生まれの陰謀論者であれば、かろうじて同時代的に聞いた可能性のある「(ファティマの)第三予言」が語られるあたり、書込主周りの年齢層に偏りがあることがよく分かる、ような気がする。

最後になりますが、基本的に誰も継続的に読んでいないであろうこのサイトの、このように年初からどっぷりキチガイワールドに漬かった記事をお読みになった皆様へ、明けましておめでとうございます。

※1 蛇足だが、シギント(sig-int, 傍受等による信号分析。ライアン(2007)の定義では、「ファイルベースの監視file-based surveillance」に当たると言える。)でセンスのないものは、ヒューミント(hum-int, ライアン(2007)の定義では、対面監視、Face-to-face surveillance)よりも、遙かに社会の役に立たず、予算を配分する意義もない。システムの失敗時に、実質的に、失敗を生じさせた担当者が教訓や規範を身体化できないためである。例としては、9.11とブッシュ(Jr)元大統領周りを挙げることができる。このように私は考えている。

※2 燃料は「ジェット」と「ガソリン」ジェットは2種類 | 飛行機の素朴な疑問を集めてみたら・・・
http://skyshipz.com/engine/f068.html
には、以下のように、航空機用燃料の要件がまとめられている。

発熱量、燃焼性、揮発性、低温に耐える、腐食性がない、貯蔵安定性、熱安定性・・・航空機の燃料には、非常に厳しい条件が求められるそうです。
本件命題(火葬に航空機用ガソリンが用いられている)では、燃焼時の時間あたりの熱量が焦点となる。自動車用のガソリンとの差異は、上掲リンクの記事に見出すことはできないが、体積あたりの燃焼時の熱量が同じである以上、燃焼効率が著しく異なるとも思えない。

※3 ●ひと足お先に | 今日のご遺体 - 楽天ブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/himitusentai/diary/200605250000/

※3-1 火葬場は1度に大きいところでは何体焼けますか?また,早いのは1時間程度で... - Yahoo!知恵袋
(maidf710、2011年07月30日03:49:39)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1367170128

※3-2 火葬炉にはガスと白灯油や薪を使用すると聞きますがそれ以外には... - Yahoo!知恵袋
(maidf710、2014年10月26日17:15:25)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12137302962

※4 いわき市, (2014). いわき市南部火葬場施設整備基本計画
https://www.city.iwaki.fukushima.jp/dbps_data/_material_/localhost/kasoujyoukihonnkeikaku.pdf
#26ページには、以下の表が掲載されている。
厚生労働省のサイトには掲載されていないようであるので孫引きする。

○火葬炉の使用燃料の状況 (平成21年10月厚生労働省調べ)
項目灯油ガス重油その他不明
施設数1,1971006930341,430
割合83.7%7.0%4.8%2.1%2.4%100.0%

※5 石油ストーブ | 一般社団法人 日本ガス石油機器工業会
http://www.jgka.or.jp/consumer/sekiyu-riyou/anzen-sekiyu/danbou/stove/

※6 「その他用ガソリン(燃料油計→ガソリン計→その他用ガソリン)」という項目を航空機用ガソリンだとみなせば供給量の増加を検討できるかもしれないが、供給量がかなり小さい上、自動車用ガソリンよりも揮発性が高く、取扱いに一層の慎重さが要求される航空機用ガソリンを利用する必要性は、灯油を大量に使用するよりも益がないと考える。ただし、供給量が限定されていることは、秘密を守りやすいという長所を有することとも解釈できる。(この注は、平成28(2016)年1月5日追記)

※7 洲本市地球温暖化対策実行計画 平成23年度温室効果ガス排出量実績(報告)
http://www.city.sumoto.lg.jp/contents/F2012091314335511.pdf




2017(平成29)年5月17日訂正・追記

本記事で真偽を追究した書込みよりも過大な死者を予想した書込み主が、最近、自身の書込みが外れたと認めている※8。(これらの書込み主が同一人物であるか否かは、不明である。)「パルコム=ポケット」氏などの書込み主が、この程度の軽い気持ちでニセ情報を書き込むこと自体は、参考になるが、これらの人力によるゴミ情報をいかに不公平感なく排除するのかは、検索エンジンにおける一大問題であろう。それに、一大事件の影響を検証するためには、枠を広げることが必須であるはあるが、それに伴う検証作業の困難さと煩雑さを痛感させられる。

本記事の題名にも示しておいたとおり、「パルコム=ポケット」氏の書込みが適当なこと自体は正しいと言えそうであるが、これに触発される形で、上掲※3のブログの内容を無闇に信用してしまったことは、私自身の反省点である。一見信用しても良さそうな内容のブログであっても、無闇に信用すると痛い目に遭うということにもなるのは、「出されているものだけを美味しくいただく」というスタイルで勝負するとき、結構なハンディキャップになる。とは言っても、本件の真偽を確認しようとする中で、偶然、ケーブルテレビ番組の『ムービープラス』で観たことのあるブラジル映画『エリート・スクワッド』(2008、原題:Tropa de Elite)に係る知識(Death in the "microwave oven";タイヤに詰めて焼き殺すという方法についての俗語の英訳※9)を得たりもするし、インドの電気式火葬炉について、篠田隆氏の記事※10に示された見解とRumani Saikia Phukan氏の記事※11に示された見解とが共通することを発見したりもする。これらは、大丈夫そうという蘊蓄話である。他方で、これホンマかいな?というゾロアスター教徒の葬送に対する姿勢についての記述を『The Guardian』の電子版記事に見かけたりもするので、油断がならない。

※8 ★ 掲示板:『放知技(ほうちぎ)』 ★彡
(パルコム=ポケット、2017年05月06日17:53:39)
http://grnba.bbs.fc2.com/reply/15476331/142/ まぁあの当時は危機管理において過大な予測をしてもあり得るかもという、まぁ、ある種のノリでやっていたんですよ。
ともかく、何かあれば陰謀、アレで全滅、多病多死。それを煽りあうか真理教的反常識自慢話に終始していた。
ま、指摘された私の予測は外れたと認めましょう。

※9 Carlos Durão, et al., (2015). Death in the "microwave oven" : A form of execution by carbonization, Forensic Science International 253, pp.e1–e3.
http://dx.doi.org/10.1016/j.forsciint.2015.05.012

※10 篠田隆研究室 / 雑文 汚れた聖河の環境改善(2/2)
(篠田隆、更新 2007年12月20日)
http://www.ic.daito.ac.jp/~shinoda/column/zatubun_03kawa_2.html

※11 Electric Cremation vs The Traditional Funeral Pyre | My India
(Rumani Saikia Phukan、2014年10月16日)
http://www.mapsofindia.com/my-india/?p=34927

※12 Doing death differently: today's funerals are not like they used to be | Life and style | The Guardian
(Elle Hunt、2017年03月10日23:38 GMT、最終更新23:40 GMT)
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2017/mar/11/doing-death-differently-todays-funerals-are-not-like-they-used-to-be

Zoroastrians, who can neither bury nor cremate their dead, typically opt for microwave cremation or dissolution in acid.