#一部、平成28年1月5日追記を含む。
年頭の初PC、掲示板『放知技』のある板(リンク)中に、胡散臭い書込みを見つけたので、検証して(、おそらく嘘であることを確認して)みた。 以下の引用では、改行記号を適宜削除してある。
103:黒策: 2015/12/31 (Thu) 16:32:19 host:*.ocn.ne.jp
今年もあとわずか 私の元にもたらされた最新情報です
① 今年の死亡者数は実は260万人
毎年100万人程度は死亡するのが常態ですが今年はその2.6倍 しかし 高齢化社会で身寄りのない年寄りが多く、しかも火葬場では従来使われてなかった高オクタンの航空ガソリンが使用され始め 処理能力が向上しているのでサクサク処理できている つまり 死人が多くて痞えるという事が無いのでそれが目立たないのです
② 米国戦争屋勢力が勝利か?!
どうもトランプ候補はこのまま勢いを増して大統領選に勝利するという可能性が高いとか 奥の院は彼を使って中国との核戦争 そして第三次世界大戦を始める決定をしたそうです もちろん 来年にも起こる関東総滅→属国化から日本各地に核ミサイル基地が完成 戦争開始と同時に日本の国土は雲散霧消です 海外へ逃げ延びた日本人にも 慰安婦南京を口実にしたボクロム攻撃の嵐が待っていますから 生き残れるのはせいぜい500人程度でしょう 皇室ご一家も虐殺されているかも知れませんね(というか必ずそうなるでしょう)
③ 遂に現れるブラザーズとファティマの聖母
これは第三予言にあった通りで 長年地球と秘密裡に連絡を保ってきたあのお方たちが姿を顕わし最終判決を下されるとの事です 人類一万年の歴史が清算され 全ては光のうちに神秘の結合と証が果たされるのです これに先立つ審判に適い救済される日本人は恐らく一人もいないでしょう
なんとも希望のない寒々とする年の瀬ですが 神の御顕現を目にして消滅できる我々はかつてない幸福な最後を迎えられるのではないでしょうか
では 左様なら
統計を扱う身から見れば、特に①の死者数:実は260万人という風説は、看過していてはいけないものであるので、メモ代わりにインターネット上で調査した結果を公開し、その根拠として挙げられている内容がガセと断定できることを示す。いつも、陰謀論ど真ん中の意見を採用する私があえてこの風説を否定するのは、統計に何らかの誤差があるとしても、その主張が桁違いなためである。また、公開するのは、本件の調査にあたっては、いくつか問題のある検索語を含めざるを得ないために、身の潔白(のようなもの)を示すためである。航空技術についてのインターネット検索は、利用するPCに対してややこしい状態を生じさせがちである。燃料の規格なんてのは、百科事典的項目を調査するだけであるにもかかわらず、PCに問題を生じさせかねない、どストライクの内容であることが直感的に認められる※1。ここでは、健全な疑問に基づき、上掲の陰謀論者の書き込みの正否を確認することだけだという意図を強調するため、公開する次第である。公開しなくとも、読める人物は読めるのでは?という素朴な疑問も提起しうるが、公開という行為に伴うさまざまな効能・副作用を期待してのことである。
まず、利用されているとされる燃料に着目する。
Chevron Products Company, (2007). Aviation Fuels Technical Review
https://www.cgabusinessdesk.com/document/aviation_tech_review.pdf
の、Fig. 2.1, Fuel Energy Content vs. Density (p.3)によると、
Typical Density at 15 celsius degree: 0.715[g/ml]である。同じ体積についての熱量を、英語版Wikipedia(リンク)から引用すると、
Typical Energy Content, Gravimetric: 43.71[MJ/kg]
Typical Energy Content, Volumetric: 31.00[MJ/l]
Typical Energy Content, Volumetric: 112,500[BTU/gal]
Gasoline (conventional, winter) 112,500[BTU/gal]である。投入したときの温度や燃焼効率(時間あたりの熱量)は、異なるかもしれない※2が、それなりの時間(、瞬間ではなく、炉が十分に暖められた後の分~時間という単位で)の幅を取れば、灯油や自動車用のガソリンは、航空機用のガソリンに比べて燃焼の効率が劇的に変わるものとは言えないだろう。現実には、燃料の違いよりも、季節や遺体中の水分量が燃焼時間を大きく左右するであろう。
Jet fuel (kerosene) 128,100[BTU/gal]
多くの火葬場では、現在でも、燃料に灯油が(、次いでガスが※3-1、3-2)利用されていると考えて良い※4が、その一方で、灯油を燃料とする石油ストーブにガソリンを投入すると大変なことになることは、多少でも火を利用する者なら、良く知るところである※5。石油ストーブにはガソリン厳禁!は大事なことなので二度繰り返しておく。すると、いくら炉を専門に扱う職能の手に預けられているとはいえ、灯油を燃料とする火葬炉で航空機用ガソリンを使用することは、相当に危険なことである。労災のリスクを考慮すれば、普通の企業が行うことではないし、事故から経緯が発覚するという、不要な危険を招くことでもある。
さらに、航空機(用)ガソリンは、ジェット燃料と異なり、経済産業省の産業動態統計に別項目として計上されない分類である※6(リンク)ほどに、流通量を別立てして検証しなければならないものではない、と見て良い。需要の少ない航空機用ガソリンをわざわざ導入すれば、余計に経費を要することになるだろう。航空業界という業界を新たに巻き込むだけに、大仕掛けともなる愚策である。
以上で、冒頭の書込主が火葬の際に航空機(用)ガソリンを利用していると主張したことは、十分に否定されると考えて良い。航空機(用)ガソリンを火葬炉にわざわざ導入する必要は薄い。そうするくらいなら、灯油を大量に用いた方がよほど穏当である。火葬場における灯油の使用量は、それなりに大きなものであるためだ※7。
以上の私の指摘は、必ずしも冒頭引用部分①の、260万人が亡くなったという主張を否定する材料ではない。ただし、その主張の信憑性に大いに疑問を抱かせるものとして、利用できる。インターネット上に限定した調査でバレる嘘は、比較的わかりやすい嘘であるといえる。ここまでの嘘は、ウォームアップというところなのだろうか。
蛇足であるが、1970年代生まれの陰謀論者であれば、かろうじて同時代的に聞いた可能性のある「(ファティマの)第三予言」が語られるあたり、書込主周りの年齢層に偏りがあることがよく分かる、ような気がする。
最後になりますが、基本的に誰も継続的に読んでいないであろうこのサイトの、このように年初からどっぷりキチガイワールドに漬かった記事をお読みになった皆様へ、明けましておめでとうございます。
※1 蛇足だが、シギント(sig-int, 傍受等による信号分析。ライアン(2007)の定義では、「ファイルベースの監視file-based surveillance」に当たると言える。)でセンスのないものは、ヒューミント(hum-int, ライアン(2007)の定義では、対面監視、Face-to-face surveillance)よりも、遙かに社会の役に立たず、予算を配分する意義もない。システムの失敗時に、実質的に、失敗を生じさせた担当者が教訓や規範を身体化できないためである。例としては、9.11とブッシュ(Jr)元大統領周りを挙げることができる。このように私は考えている。
※2 燃料は「ジェット」と「ガソリン」ジェットは2種類 | 飛行機の素朴な疑問を集めてみたら・・・
http://skyshipz.com/engine/f068.html
には、以下のように、航空機用燃料の要件がまとめられている。
発熱量、燃焼性、揮発性、低温に耐える、腐食性がない、貯蔵安定性、熱安定性・・・航空機の燃料には、非常に厳しい条件が求められるそうです。本件命題(火葬に航空機用ガソリンが用いられている)では、燃焼時の時間あたりの熱量が焦点となる。自動車用のガソリンとの差異は、上掲リンクの記事に見出すことはできないが、体積あたりの燃焼時の熱量が同じである以上、燃焼効率が著しく異なるとも思えない。
※3 ●ひと足お先に | 今日のご遺体 - 楽天ブログ
http://plaza.rakuten.co.jp/himitusentai/diary/200605250000/
※3-1 火葬場は1度に大きいところでは何体焼けますか?また,早いのは1時間程度で... - Yahoo!知恵袋
(maidf710、2011年07月30日03:49:39)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1367170128
※3-2 火葬炉にはガスと白灯油や薪を使用すると聞きますがそれ以外には... - Yahoo!知恵袋
(maidf710、2014年10月26日17:15:25)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12137302962
※4 いわき市, (2014). いわき市南部火葬場施設整備基本計画
https://www.city.iwaki.fukushima.jp/dbps_data/_material_/localhost/kasoujyoukihonnkeikaku.pdf
#26ページには、以下の表が掲載されている。
厚生労働省のサイトには掲載されていないようであるので孫引きする。
○火葬炉の使用燃料の状況 (平成21年10月厚生労働省調べ)
項目 灯油 ガス 重油 その他 不明 計 施設数 1,197 100 69 30 34 1,430 割合 83.7% 7.0% 4.8% 2.1% 2.4% 100.0%
※5 石油ストーブ | 一般社団法人 日本ガス石油機器工業会
http://www.jgka.or.jp/consumer/sekiyu-riyou/anzen-sekiyu/danbou/stove/
※6 「その他用ガソリン(燃料油計→ガソリン計→その他用ガソリン)」という項目を航空機用ガソリンだとみなせば供給量の増加を検討できるかもしれないが、供給量がかなり小さい上、自動車用ガソリンよりも揮発性が高く、取扱いに一層の慎重さが要求される航空機用ガソリンを利用する必要性は、灯油を大量に使用するよりも益がないと考える。ただし、供給量が限定されていることは、秘密を守りやすいという長所を有することとも解釈できる。(この注は、平成28(2016)年1月5日追記)
※7 洲本市地球温暖化対策実行計画 平成23年度温室効果ガス排出量実績(報告)
http://www.city.sumoto.lg.jp/contents/F2012091314335511.pdf
2017(平成29)年5月17日訂正・追記
本記事で真偽を追究した書込みよりも過大な死者を予想した書込み主が、最近、自身の書込みが外れたと認めている※8。(これらの書込み主が同一人物であるか否かは、不明である。)「パルコム=ポケット」氏などの書込み主が、この程度の軽い気持ちでニセ情報を書き込むこと自体は、参考になるが、これらの人力によるゴミ情報をいかに不公平感なく排除するのかは、検索エンジンにおける一大問題であろう。それに、一大事件の影響を検証するためには、枠を広げることが必須であるはあるが、それに伴う検証作業の困難さと煩雑さを痛感させられる。
本記事の題名にも示しておいたとおり、「パルコム=ポケット」氏の書込みが適当なこと自体は正しいと言えそうであるが、これに触発される形で、上掲※3のブログの内容を無闇に信用してしまったことは、私自身の反省点である。一見信用しても良さそうな内容のブログであっても、無闇に信用すると痛い目に遭うということにもなるのは、「出されているものだけを美味しくいただく」というスタイルで勝負するとき、結構なハンディキャップになる。とは言っても、本件の真偽を確認しようとする中で、偶然、ケーブルテレビ番組の『ムービープラス』で観たことのあるブラジル映画『エリート・スクワッド』(2008、原題:Tropa de Elite)に係る知識(Death in the "microwave oven";タイヤに詰めて焼き殺すという方法についての俗語の英訳※9)を得たりもするし、インドの電気式火葬炉について、篠田隆氏の記事※10に示された見解とRumani Saikia Phukan氏の記事※11に示された見解とが共通することを発見したりもする。これらは、大丈夫そうという蘊蓄話である。他方で、これホンマかいな?というゾロアスター教徒の葬送に対する姿勢についての記述を『The Guardian』の電子版記事に見かけたりもするので、油断がならない。
※8 ★ 掲示板:『放知技(ほうちぎ)』 ★彡
(パルコム=ポケット、2017年05月06日17:53:39)
http://grnba.bbs.fc2.com/reply/15476331/142/
まぁあの当時は危機管理において過大な予測をしてもあり得るかもという、まぁ、ある種のノリでやっていたんですよ。
ともかく、何かあれば陰謀、アレで全滅、多病多死。それを煽りあうか真理教的反常識自慢話に終始していた。
ま、指摘された私の予測は外れたと認めましょう。
※9 Carlos Durão, et al., (2015). Death in the "microwave oven" : A form of execution by carbonization, Forensic Science International 253, pp.e1–e3.
http://dx.doi.org/10.1016/j.forsciint.2015.05.012
※10 篠田隆研究室 / 雑文 汚れた聖河の環境改善(2/2)
(篠田隆、更新 2007年12月20日)
http://www.ic.daito.ac.jp/~shinoda/column/zatubun_03kawa_2.html
※11 Electric Cremation vs The Traditional Funeral Pyre | My India
(Rumani Saikia Phukan、2014年10月16日)
http://www.mapsofindia.com/my-india/?p=34927
※12 Doing death differently: today's funerals are not like they used to be | Life and style | The Guardian
(Elle Hunt、2017年03月10日23:38 GMT、最終更新23:40 GMT)
https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2017/mar/11/doing-death-differently-todays-funerals-are-not-like-they-used-to-be
Zoroastrians, who can neither bury nor cremate their dead, typically opt for microwave cremation or dissolution in acid.
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