2017年4月15日土曜日

(メモ・感想)衆愚が貶めたエフセキュア製品の評判は、いつ回復されるのか

#本稿は、十分な資料の読込みなしに作成したものであるから、題名に示した以上の新規性も、研究としての正当性も持ち得ない。(類似の先行意見が存在した場合、偶然の一致であり、その論者の先取性が尊重されるべきである。車輪を二度発明する愚は、十分に承知している。)また、本稿は、本ブログのいくつかの記事のように、再帰的な内容となっている。読者のご賢察を請う次第である。英語でいう、reader discretion (is) advisedってやつである。

BBSに代表される、21世紀初頭型の日本語のインターネットコミュニティでは、「人の振り見てわが振り直せ」という諺と、その諺を裏打ちするはずの「恥の精神」がなりを潜めてから十年になろうかとしている。ただし、パソコン通信上で繰り広げられてきたコミュニケーションのあり方は、往時の『別冊宝島』などを参照する限りでは、スタイル・手口そのものについては、大きく変化していない。マネタイズの方法が変化したのである。悪名であろうと、人に知られることが、情報爆発下のビジネスにおいては決定的に重要となりつつあると言えよう。

「炎上商法」と呼ばれる新手法の定着は、子ブッシュ政権以降に顕著となった「やったもん勝ち」の新自由主義的・帝国主義的風潮を反映してもいる。炎上商法は、周囲や社会全体への影響よりも、ニッチな顧客に訴える機会を優先するものであり、ロングテールを意識した商売という点に着目すると、テロ要員の募集方法やカルト教団の信者獲得方法とスタイルを共有する。個人のSNSにおける過度の露出や、それに伴い生じる炎上が「カネ」よりも「自己実現・自己肯定感の獲得」を目的としがちであることを合わせみると、テロ要員・カルト信者の獲得という組織犯罪の性質は、両方とも、組織側には組織による炎上商法の目的であるカネを、引き寄せられる個人の側には個人による炎上商法の目的である自己実現を提供するものであり、炎上商法という経済的活動の特徴を包括するものといえる。良くも悪くも、子ブッシュ政権は、カルト集団のテッペンを取った存在であり、リアル社会における炎上商法の集大成であると評することができよう。

インターネット上の言論を監視し、検閲・操作を加える企業は、炎上という行為を取り巻く環境要因であるとみることも可能ではある。なぜなら、これらの企業は、炎上を沈静化させる際にも利用されるとはいえ、子ブッシュ政権のショック・ドクトリンと同様、マッチポンプの噂が常につきまとう存在ともなるからである。ただし、この手のビジネスは、たとえ法整備が進み、なりすましやビジネス目的の誹謗中傷行為が規制されたとしても、依然として実行される可能性が払拭されないものである。沈静化(「火消し」)ビジネスの将来動向は、従来の「紙の爆弾」(#二重カギ括弧でないところに注意)を利用した総会屋ビジネスが、銀行や証券会社のスキャンダル等を経て本格的に規制され、総会屋2.0へと変容した際の経緯を反復する様相を取るであろう。

炎上の沈静化というビジネスは、本来、弁護士や司法書士の利用が基本的な作法として定着している社会における、これら専門的職業家の(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントにいう)「金のなる木」となるべきであろう。これらの専門家には、あまりに阿漕であったり庶民意識から外れた行動を取れば、橋下徹氏がかつて扇動したように、同業者集団による制裁が待ち受けており、この歯止めに期待を寄せることができるからである。(ただし、犯罪組織に加担する法曹への制裁は、わが国ではそうもなっていないが、通常の組織構成員に比較して、一等重いものとされる必要があろう。また、マッチポンプを行うような企業にも、当然、顧問弁護士は存在していようが、その人数が大規模であったり全員が法曹であるという訳でもないであろう。そこが、わが国の「資格社会」の限界でもある。)マッチポンプに手を染める悪徳専門家の発生は、現状に比べれば、一定程度は抑止されることになろう。

なお、ここでは、「忘れられる権利」が意図的な炎上への誘因となり得ることについても、指摘しておくべきであろう。市民派と見做される法曹により、この権利が主張されることは、逆説的な事態である。この権利が公人や法人に対しても認められることになれば、これらの人格が行動するにあたり、評判という要素は、その人格の合理的な判断から抜け落ちることになる。この結果は、公人や法人が好き放題に振舞うというものとなる。歴史に断罪される虞は、安倍晋三氏が祖父について批判されるのと同様、子孫までが対象となるために、一定程度の抑止力を有するものとなりうる。戦争屋の走狗に、子どもを持たない人物が選定されがちであることは、偶然ではない。また、蛇足となるが、賢明な批判者ならば、本人の資質や行動に問題が存在しなければ、先祖についての批判を行うことが、個人主義になじまないことであり、批判者へのブーメランとなることは、理解できていよう。

「自由で単なる人格批判に陥らない、生産的で真実に基づいた言論活動」という、サイバー社会においてかつて語られた理想は、検閲・宣伝・工作を請負う「広告・マーケティング」企業により、匿名・顕名にかかわらず、インターネット上の公開の場においては、求めても得難いものと化した※1。他方で、SNSの普及は、現実社会の関係性に根差すものであるが、現実社会の権力関係をインターネット上にも持ち込むこととなった。この点、某大学の教員がフレンドリーな存在を装い、SNS上での関係を学生に広く求めるという態度は、権力という社会関係の実在に対して鈍感な表出の一例である。ホイチョイ・プロダクションズが広告代理店を舞台に皮肉る「いいね乞食」の、学術機関版である。ついでに、(某大学つながりで)指摘しておくと、かつてインターネットに係る理想を提示・議論した言論人たちも、インターネット上における言論(操作)ビジネスが軌道に乗るにつれ、これらの悪徳企業との相互関係から逃れることが難しくなりつつあるように見える。

荒れた言論状況の背景には、情報環境の最適化という業務におけるベイズ統計の活用という、なかなかの難問が存在する。規範的な観点から正しいと認められるはずの言論が、人気投票というベイズ統計の性格により、批評能力を備えた人間に読まれる機会が大きく減じられ、結果として力を失っているのである。規範的な観点からいえば、情報環境は、局所最適化された状態にあるのであって、決して全体最適化された状態にあるとは言えない。オープンで批判的な態度を有する(真っ当な)読者の目に触れる機会を奪う要因には、動物的に言語生産活動に勤しむ炎上加担者や、同種の表現を大量に複製し続けるボット、中途半端な知識で・あるいは金目で発言する学識経験者※2、などを挙げることができる。この状態を示す上で端的な事例は、後段で取り上げるエフセキュア製品に対するAmazonレビューの悪用であり、「オルタナティブ・メディア」を「偽ニュース(fake news)」と呼ぶCNN.comの公式ツイッターのフォロワーの半数がボットであったというオチ[1]であり、「メルトダウンではないだす」である。なお、CNNの事例であるが、ツイッターにブロックという機能が実装されている以上、今回は、CNN.comの手抜かりであると言えよう。

言論の正否そのものを判定できないという、ベイズ統計を準用した情報整理の欠点は、技術者側には十分に理解されており、その対策も取られてはいる。しかし、その対策は、今のところは、人間の高度な知性を要する、労働集約的な作業とならざるを得ない。にもかかわらず、微妙で困難な状態に置かれた人間の判断に対しては、(トランプ大統領によるシリアへのミサイル攻撃命令のように、)ほとんど常に、他者の批判の余地がある。ベイズ統計の限界を企業側が克服しようとするとき、今のところは、人間の判断を持ち出す必要がある。この結果、ルールは柔軟に運用せざるを得ず、その運用が判断がぶれているとの批判をも引き起こす。企業にとって、ベイズ統計を基本とするアルゴリズムに余分な判定を加えることは、労力、つまりはコストが高くつくにもかかわらず、却って批判を招来しうるという、報われない結果となり得るのである。利潤の追求は、企業に寄せられる社会的期待の中では、第一である。それゆえ、余分なコスト増を招きかねないアルゴリズムの改善は、基本的には見送られがちとなり、また、その改善結果の詳細は、ビジネス上の財産でもあるから、開示に不向きなものとならざるを得ない。

ようやく本題に入ることができる。

情報を判別する際の難しさは、エフセキュア社製品に対して一時期寄せられた悪評の削除に対しても、同様に該当する。Amazon.co.jp[2]は、現在でも、いわゆる「ぱよぱよち~ん事件」(以下、ぱよちん事件と表記)[3]の直後に、同社製品に対して書き込まれた否定的なレビューの一部を残し、製品としての評価を比較的悪い方に留置している。2017年4月14日時点で、7件の星1つの評価があるが、製品をAmazon.co.jpにて購入したアカウントは、2件のみである。残る5件のうち、使用感を具体的に述べたものは1件だけであり、残る4件は、単にぱよちん事件に悪乗りしたものであると認められる。星2つの評価は、1件であり、アンインストール時の不調法を指摘するものであり、ぱよちん事件には言及しない。星3つの評価はない。つまり、同製品に対する低評価レビューの半数は、偽計業務妨害にも相当する内容である※3。私からみれば、製品そのものの性能についての言及がないレビューは、評価の高低にかかわらず、すべて規約違反であるかのように読めるのであるが、これらレビューとしての要件を満たさない否定的レビューが製品の評価を決定付けているのである。

アマゾンジャパン社は、ぱよちん事件の直後、同事件を同社製品の信頼性の低さに理由に挙げた否定的レビューについて、処分し続ける措置を講じるべきであったが、同社は、ぱよちん事件に便乗して「殿堂入りユーザ」を獲得したユーザを放置し続けている形となっている。これらのユーザの中には、確かに、事件前からレビューを投稿している者もいる。しかし、事件以前のレビューの存在は、ぱよちん事件に便乗して行われた不正を肯定する理由にはならない。よって、私が以下のように考えるだけとはいえ、同事件に乗じたレビューの削除と、それに伴う「殿堂入り」などのタイトルの取消し判定こそ、アマゾンジャパン社に求められる作業であると批判することができるのである。この処分に反駁するアカウントユーザは、総会屋と同種であるものと断じられよう。


なお、先月、CIAの漏洩文書が『Wikileaks』において『Vault 7』として公開されたが、これらの文書に見られるエフセキュア社製品に対する評価は、同社がマルウェアに対してガチンコで対応しようとしていたことを(逆説的に)示すものとなっているという[4]。この経緯がレビュアーらの評価に反映されていないという事実(4月14日、目視で確認)は、ぱよちん事件の炎上に便乗したレビュアーらが製品の評価に不誠実であったことを示すものと言えよう。なぜなら、本当にエフセキュア社の製品を低く評価しようと思うのであれば、『Vault 7』の情報を利用しないという手はないからである。(そして、言うまでもないことではあるが、私は、本稿では、ここに記した以上に、セキュリティソフトの評価や『Vault 7』そのものの検討やその是非に立ち入るつもりはない。)世界有数の情報機関による侵入テスト(penetration test)の結果である。TPOや法律をわきまえずに悪乗りして、高評価のレビュアーという称号を狙うという人物が、自身の行動の帰結を予測できるとするならば、自説の正当化のために、この機会に飛びつかない訳がないのである。


※1 炎上商売を良しとする個人や、炎上に加担する個人、検閲・操作に従事する企業ならびに従業員らは、利己的な存在であるとみて間違いなかろう。私は、利己的であることを、RPGの老舗である『D&D』に倣い、邪悪(evil)であると理解している(2017年3月27日)が、この分類に基づけば、炎上の種類が合法性を楯に取るものであれば、その炎上の主はlawful-evilであり、非合法なものであれば、その主はchaotic-evilになろう。邪悪の種類を分類しやすいのである。念のため、現時点までの私には、本記事の指摘に係る利益相反関係は一切存在しない。

※2 御用学者が批判される原因は、社会的身分を有していることに求められる。わが国では、発言者に社会的身分があればこそ、その発言に影響力が生じるという側面があるし、その発言を封じようとする動きも慎重なものになる。逆に、社会的身分がなければ、これを封じようとする側の手段が何でもありになりがちである。広義の暴力を以て言論を封じるという動きが現実に存在する以上、この非対称性は、わが国でも、「有識者」にこそ気付かれるべき側面であろう。つまり、御用学者の力の源泉は、社会的身分である。この事実は、現在の日本語環境と共依存する関係にある。議論が噛み合い有益なものになるためには、論者の双方に、前提となる共通の知識があり、互いの論点を理解した上で、その長短を吟味する、という能力がなければならない。そのような状況は、適当な環境がなければ成立せず、その環境を整備・維持する組織の成員には、自ずから努力が求められる。しかし、本文中で触れたように、「いいね乞食」がアカデミアに跋扈するようでは、そのような環境が用意されるべき場所こそが蚕食されていることになる。なお、状況=環境+環境下の個人、と考えれば良い。このため、状況は環境に影響される。ここまでは間違いないが、環境が状況に影響されることになるのかは、環境犯罪学における残された課題であると私は考える。

※3 カネさえ払えば何をしても良いのかという批判も、成立の余地はある。が、違法性を論じるときには、購入履歴は、大変に重要な要素であると認められる。


[1] CNNのツイッター:フォロワーの半分は偽物|世界の裏側ニュース
(ココヘッド、2017年03月31日03時17分)
https://ameblo.jp/wake-up-japan/entry-12260759855.html

#なお、『弁財天』のMakoto Shibata氏(@bonaponta)は、この話題に先立ち、(当時の)オバマ大統領のフォロワーについて同様の作業を自前で実施しており、他サービスよりも多めの粉飾率を見積もっている。大事なのは、結論がボットの判別方法に依存することである。この事実は、私の公式ツイッターアカウント(@hiroshi_sugata)が現状のようである理由ともなっている。この検証作業の人柱として使えるのではないかと期待しているからでもある。つまり、私のアカウントは、ツイッターボットの判別テストにも利用可能である。

弁財天: ツイッターの巨大なフォロワー数の正体 update14
(Makoto Shibata、2015年04月03日?最終更新?)
http://bonaponta.noip.me/roller/ugya/entry/huge-number-of-followers

弁財天: リツイート数を粉飾して世論を捻じ曲げようとしてもTwitter社のAPIから本当のリツイートユーザのリストを取得されると粉飾がバレるw
(Makoto Shibata、2015年12月03日)
http://bonaponta.noip.me/roller/ugya/entry/twitter-api11-retweeters

[2] Amazon | F-Secure インターネット セキュリティ 2014 (新規用パッケージ/3PC1年版) | エフセキュア | ソフトウェア 通販
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00FXBLR76/
#参考まで、星1つのレビューは次の7アカウントによるもの。リンクは各レビューへのもの。

  • TMA, 2015年11月4日, Amazonで購入
  • ay, 2015年11月4日, Amazonで購入
  • edirol, 2016年1月6日, 購入マークはないが、使用履歴ありと自主申告。
  • ガラクタ, 2015年12月20日, 殿堂入り+ベスト50レビュアーだが購入マークなし
  • どんぐり定食, 2016年1月24日, ベスト500レビュアーだが購入マークなし
  • Customer, 2015年12月26日, 購入マークなし
  • Amazonカスタマー, 2015年12月13日, 購入マークなし

[3] ろくでなし子独占手記「ぱよぱよちーん」騒動の全真相
(ろくでなし子、2015年11月26日)
http://ironna.jp/article/2402
#話の広がりが大きいために、媒体がアレであるが、上記ろくでなし子氏による派生的な記事を挙げた。

[4] Antivirus Vendors React To The CIA 'Vault 7' Leaks
(Lucian Armasu、2017年03月15日05時00分)
http://www.tomshardware.com/news/antivirus-vendors-cia-vault-7-leaks,33893.html

From the unredacted documents that have been released so far, there doesn’t seem to be any evidence that the antivirus companies were working with intelligence agencies to undermine their customers’ security. That may be a sign (and a good one) that at least the antivirus vendors are working in their customers' interests, even if sometimes that's not enough to stop more sophisticated attackers such as the CIA.

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