2017年4月20日木曜日

(メモ)認知的不協和を援用して日米両政権の「変心」を評価する

日本語でタブーなく議論する(、つまり、キクマコなどからみれば「陰謀論」となる)界隈では、最近、日米の両政府と戦争屋との三角関係に対する解釈に、大きな対立がある。{日本と米国、米国と戦争屋、戦争屋と日本}という順序で、解釈が見られるものを列記する。認知的不協和を解消しうる関係には、-+-というものもあり得るが、この意見は聞いた覚えがない。

  1. +++(『阿修羅』の主流、孫崎享氏、『国際秘密力研究』の菊池氏、大多数)
  2. +ーー(田中宇氏、私も含まれる)
  3. +ー+(副島隆彦氏)
  4. ++ー(飯山一郎氏)

この関係を眺めると、飯山氏が、なぜ、ジャレッド・クシュナー氏の影響のみを大きく取り上げるのか、どうしても分かりかねてしまうのである。軍人が無用な流血を避けるという原則ハーバート・マクマスター氏に適用されるか否かの検討は、なぜか無視される。ロシアとの戦闘を避けるために空母カール・ビンソンがグズグズしているとの解釈[1]は提示されるが、本件がブラフであるという『スプートニク日本』に掲載された解釈[2]は、なぜか無視される。認知的不協和など現実に適用可能な概念ではない、とする否定方法もあろうが、ヒュミントの影も窺えないので、飯山氏の英語情報へのコネは、中国語や韓国語に比べて、相対的に乏しいか、調理済みのものであるとも考えられる。(佐藤則男氏を想起せよ。)

同様の理由で、副島隆彦氏の安倍晋三氏への評価は、やはり追加的な説明を必要とする。日本人としては、米国の動向に影響を受けない訳にもいかない。このため、米国が戦争屋の手に落ちたというリスクを日本の庶民が高めに見積もることは、リスクヘッジにもつながるから、やむを得ないことである。この点、副島氏に課せられた、日本人読者が疑心暗鬼となるために生じるハードルは、他の論者よりも高いものとなろう。

なお、日米両政権における個々の人物関係(権力闘争)を織り込めば、色々と解釈の幅が広がることは、間違いない。ただし、その割に、マクマスター氏と米軍についての解釈の根拠がわが国の一部の言論界隈でほとんど示されないことは、再度特記しておいた方が良いであろう。この不整合性が説明されない限り、飯山説は、他の2説に比較して、説得力を持ち得ないのである。なお、権力関係に新たなアクターを登場させるときには、個々の三角関係が整合的であるように関係が成立しているかを確認する必要がある。たとえば、日米双方にトップ・部下という2種類のアクターを配置した場合、日本風に表記すれば、${}_5 C_3$個の三角関係が安定的であるかを検証する必要がある。これは面倒なので、逐一検討しないが、たとえば、日・米のトップ・部下のすべてが仲良く、戦争屋だけをハブるというケースは、世界にとって最善のケースである。


[1] 飯山一郎のLittleHP
(「ラブロフ露外相 アメリカを脅す!」飯山一郎、2017年04月19日)
http://grnba.jp/#aa04191

[2]

心理戦の教え?軍事攻撃の話があったにもかかわらず、トランプ大統領の艦隊は朝鮮半島沖にいなかった
(スプートニク日本、2017年04月19日19時46分(アップデート 2017年04月19日20時33分))
https://jp.sputniknews.com/asia/201704193553384/




2017(平成29)年4月21日0時30分追記

認知的不協和は、動的な変化を説明するための概念であるが、本件国際関係についても適用可能である。トランプ政権の誕生は、戦争屋との(上記リストの並びで言えば二番目の)マイナス関係を生じさせた。従来の+++関係は、+-+関係へと変化したのである。この状態は、安倍政権・官僚組織内に生じた内紛となって、+--関係を生じさせた。私は、過去、ーー+関係が生じるのではないかとの含みを込めて予測した(2016年10月18日)ことになるが、現時点では、この予測は、幸いながら(か?)外れている。ただし、国際的に人口の社会移動が生じると予測したところまでは意味のある程度に正しいから、まあ戦争屋の思考形態を読めてはいるとは言えよう。カナダのエリート層が自国をハニーポットのつもりで利用するのか、それとも真に魂を抜かれた存在となり果てているのかは、検証が必要な作業であり、私には即答しかねることである。




2017(平成29)年4月21日10時10分追記

中立という関係を措定すれば、現時点の仮説に過ぎないが、下図のように五角関係を描けるかも知れない。五芒星になり嫌な感じだが、表現上、やむを得ない。なお、精緻に分析する場合には、「ある時点において、あるアクターから見て誰が誰をどう思っているのか」が各アクターについて、検討され、その時点での関係性が次の時点での関係性に影響すると考えなければならないであろう。(つまり、無向グラフでなく有向グラフを用いて、かつ、時間軸を導入して考えるべきであろう。)たとえば、「日本の官僚集団から見て、トランプ政権は、戦争屋をいかに捉えているか」であるが、これは、マイナスに捉えていると見て良いであろう。これと同じノリで、5×5×4通り=100通りの「敵・味方」なり「好悪」なりの関係を見るべきである。今回は、そこまで検討する必要もないものと考えた。なお、ここでは、わざと米軍の立ち位置を書き入れなかったが、トランプ氏自身と同じ枠と見るべきというのが、私の見立てである。その理由は、無用な流血を避けるという軍人の原則による。

今回の作業に実際的な意味があるか否かはさておき、モデル化には、多数のアクター(成員)からなる関係を単純化する効果がある。ただ、ここでのモデルには、中立という状態を持ち込んだために、認知的不協和が生じているかを具体的に確認する上で、特別な取扱いが必要である。そこら辺の不備へのツッコミは、グラフ理論の応用研究に必ず先行しているものがあるはずであるから、そこでの扱いを参照した際に検討することとしたい。あくまで、たたき台、参考程度に留められたい。




2017(平成29)年4月22日15時追記

気が付かれている読者もいるとは思われるが、安倍氏周辺・官僚集団・戦争屋の三角関係は、あえて、この状態で良しとしている。もちろん、安定的ではない。この状態がいかなるものに変化するのかは、予断を許さない。たとえば、TPP11に係る麻生太郎氏のコロンビア大学における4月19日の講演は、動画等がネットに見られないので、数少ない二次情報に頼らざるを得ないが、米国にねじ込まれた分は他の国から取る、との主旨を述べるものと解される。『The Straits Times』(シンガポール)[3]は、麻生氏の言葉として、多国間協定であれば米国のような国からの失点を他のところで取り戻せるが、二国間協定ならそうはいかないと述べたことを伝えている。この理解は、原語である日本語のニュアンスに照らして完全に正確であるとまでは言えないようである[4]が、要旨としては十分一致するし、同時に紹介される菅氏の発言の骨子については、ほかのソース[5]からも、おおよその理解が正確であると看做せる。(忘れてはならないのは、常に、われわれ人間には、能力不足から来る誤読・誤解がつきまとうということである。)いずれにしても、日本政府トップ周辺がTPP11を帝国主義の一手段として活用する意向であると我々が理解することは、問題なかろう。とすれば、首相周辺から官僚集団まで、日本の政体は、本気でTPP11の内容を馴致できるものと考えているのであろうか。そうであるとするならば、大変に脳天気なことである。

[3]Australia, Japan lobby for TPP-11, East Asia News & Top Stories - The Straits Times
(Walter Sim、2017年04月21日05時00分SGT(+08:00))
http://www.straitstimes.com/asia/east-asia/australia-japan-lobby-for-tpp-11

With a multilateral pact like the TPP, Mr Aso said that "Japan stands to gain from other countries, even if it loses out in some respects to other countries, like the US".
He added: "But in a bilateral deal, you can't do that. You can't get back what you lose from a compromise."

[4]TPP アメリカ抜きの11か国で発効を議論へ | NHKニュース
(記名なし、2017年04月20日19時08分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170420/k10010954991000.html

初めての経済対話について、「日本とアメリカで作り上げられたルールをアジア太平洋でも広めていこうと思う」〔...略...〕アメリカが離脱を決めたTPPについて、「アメリカなしで11か国で進めようという話はどういう形でまとまるか分からないが、ことし5月のAPEC=アジア太平洋経済協力会議に合わせて開く参加国会合で出てくる」〔...略...日米〕2国間のFTA〔...略...〕について「2国間となると、アメリカから日本が得るものを計算した場合、TPPほどの水準に達しないということは、はっきりしている」

[5]平成29年4月20日(木)午前 | 平成29年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
(2017年04月20日)
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201704/20_a.html
#それにしても、書き起こしはないのであろうか。ユニバーサルデザインはどうなった。

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