2017年4月6日木曜日

国際情報仲介業者の富士山会合は現在の日米関係におかんむりのようである

今朝の朝日新聞(2017年4月6日朝刊4面)に、「「新政権、最大の不確実性」/有識者が提言」(藤田直央)という記事[1]があった。政策研究大学院大学長の田中明彦氏が座長、森本敏氏や竹中平蔵氏が名を連ねたという。富士山会合の名称や、本紙記事中に挙げられた2名のキャラ付けをふまえれば、会合の性格自体は十分に把握できよう。日本の新聞読者一般にとって、読売・朝日・日経の中で「弱者の味方」であるように目に映るのは、朝日であろう。しかし、記者の内心はともかく、本記事は、現時点では、富士山会合関係者が「俺たちが中抜きされているのは許せねぇ。トランプさんと安倍さんよ、俺たちを間に入れろや」と脅迫しているかのようにも読めてしまう。富士山会合特別タスクフォースに名前を連ねた連中が、日本側の「研究者」における戦争屋のカウンターパートであるという関係性は、明白である。

情報の性質で困った点は、後発の正確な情報が、先発のニセ情報を修正するという効果を期待できないことである。多くの新聞読者は、「99%」に該当するが、本記事を「やっぱりトランプ政権が悪いんだ」という材料として読むであろう。もちろん、日本国民全般にとって、トランプ政権よりも、富士山会合の連中の方がはるかに有害であり、不確定材料である。この誤解から人々が抜け出すことは、相当に困難なことである。

富士山会合の報告書は、日本経済研究センターのウェブサイト[2]で読める。メンバーには、読売新聞の日曜コラム「地球を読む」で見かけるメンツが揃い踏みである。メディアグループとして対立関係にある読売と朝日が同じ論調に立つときには、ほぼ必ず、「1%」の利益増進(減少の阻止)が企図されている。この点、朝日新聞政治部の論調は、「嘘吐きの羊飼いの少年」として役に立つ。




戦争屋が世界の「不確実性」であるという証拠は、本日の報道に良く表れている。日経の1面の誘導用の見出しは「シリア批判広がる/空爆でサリン使用か」[3]である。現状では、朝日が表現するように、「空爆後 口から泡・けいれん/シリア化学兵器疑惑 現場は」[4]でしかない。シリア政府が主張するように、反政府勢力側が保管していた化学兵器が爆撃によって誘爆したという可能性も、依然として存在する。この指摘が真実であるなら、反政府勢力側がケミカルテロ(化学兵器テロ)を準備していたことになる。通常の空爆で誘爆してしまうような危険な場所に、NBC兵器を保管していたのであれば、反政府勢力側の未必の故意(let it happen on purpose; LIHOP)ということにもなる。




田中明彦氏の業績を十分に把握していなかったため、ここで少しばかり確認してみたのだが、米防衛高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects Agency; DARPA)のデータを部分的に利用して中国の対外紛争政策をモデル化する試み[4]から学術上のキャリア形成を始めたとはいえ、TPPへの参加を当然とする[5]くらいであるから、世界をモデルで見ることを誠実にこなしてきたというよりは、何だか良く分かっていないけれども流行に乗ろう、というキャラなのであろう。(なお、研究者の田中明彦氏には、同姓同名の方が複数が存在するので、国際政治を専門とする氏を対象としている。)TPP前後では、およそ法律の関係する研究では、外生変数の激変を考慮に入れなければならなくなる。このような研究環境上に生じた混乱は、その時期における議論を客観性に判定する作業を困難なものとする。TPPは、日本社会にとって大きな不幸をもたらし得たことはもちろんであるが、モデル屋にとっても、その後の作業に多大な障害を与えた。今後は、そのように結論されることになろう。現に、TPPへの備えとして、変更が不要な法律までもが改定されているからである。(現在までの間にも、日本の水道をペットボトル化して販売できてきたのであるから、水道事業の効率性アップは、従来の水道法で十分であった。種子法の改正は、まったく不要であった。生物多様性の保全が重要であるとする国際的な議論の潮流にも逆らうものである。)




[1] 「米新政権、最大の不確実性」 有識者が提言:朝日新聞デジタル
(「「新政権、最大の不確実性」/有識者が提言」『朝日新聞』2017年04月06日朝刊14版4面、藤田直央)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12878685.html

[2] 日本経済研究センター JCER
(2017年04月05日)
https://www.jcer.or.jp/center/f.relationship_jp-us.html
#報告書には、直接のリンクを張ることができない形となっている。ダウンロードには、Javascriptの許可が必要。

[3] 『日本経済新聞』2017年4月6日木曜朝刊14版1面「News & Views」(3ページへの誘導用の見出し)「シリア批判広がる/空爆でサリン使用か」

[4] 『朝日新聞』2017年4月6日木曜朝刊14版1面「空爆後 口から泡・けいれん/シリア化学兵器疑惑 現場は」(カイロ=翁長忠雄)

[5] CiNii 論文 -  中国の国際紛争行動のマクロ・モデル1950-1978
田中明彦, (1982). 「中国の国際紛争行動のマクロ・モデル1950-1978」, 『アジア研究』29(1), 51-86.
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004689399
#当時のPC環境をふまえれば、この計算は、大型計算機で実行されたものであろう。モデルは、巡回有向モデル(directed cyclic graph; DCG)となっている。私には、論文中で使用されている2段階最小自乗法(two-stage least square method; 2SLS)で、偏りなく計算可能であるのかは分かりかねる(が、胡散臭いと思う)。無論、当時の計算技法や知識の限界は、考慮されるべき要素ではある。(それにしても、この種の研究に限らず、多くの学問分野において、なぜ、当時においてさえも危険そうな計算方法であると認められるモデルなのに、計算を実行して無理矢理に結論を出そうとする姿勢が許容されてきたのか、また、その後の誤り訂正機能が機能してこなかったのか、という疑問が、私にはある。大型計算機なのだから、なおのこと、明らかに誤ったモデルは、資源の無駄遣いというべきである。明らかに胡散臭いモデルをテコとして、キャリア形成を行うことが認められることに対しては、何かが違うのでは、という気持ちを抱いてしまう。)

[6] CiNii 論文 - TPP参加 賛成 : 貿易国日本は重要な経済交渉に参加が当然 (TPP参加の是非)
田中明彦, (2011). 「TPP参加 賛成:貿易国日本は重要な経済交渉に参加が当然(TPP参加の是非)」『エコノミスト』89(54), 94-95.
http://ci.nii.ac.jp/naid/40019069404
#重大な手抜きであるが、本記事は、題名だけしか読んでいない(と特記したということは、当然、ほかの記事は確認しているということでもある)が、他の情報と突合させても、田中氏がTPPに賛成していることは、整合的である。

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