2017年4月27日木曜日

築地再整備案の再浮上により豊洲市場のカジノ転用説は現実味を増した

豊洲市場移転問題PT(プロジェクトチーム)は、築地市場再整備案も報告書に併記する方針という[1]。知事の小池百合子氏が「立ち止まって考える」と指示したという[2]から、両論併記は、行くも戻るも可能とするための措置として、当然ではある。ただ、再整備案における数百億円という試算額は、これまた過去に本ブログで扱った(2016年9月29日)カジノ転用への見込みを強化する材料である。本ブログは、常人には俄に信じ難いような、しばしば陰謀論と誹謗される説までをも検討するものであるが、本人は至って大真面目のつもりであり、反証できるだけの材料に接したときには、過去の自説を修正することに何の躊躇もない※1。今回の場合は残念ながらというべきか、また一つ、豊洲市場カジノ転用説に肯定的な材料が加わった。

豊洲市場の耐震性能については、報告書[2]を読む限り、都の関係部局(発注者である市場、建築確認担当者である都市整備部の双方)の責任問題へと発展することが忌避されたためか、問題なしとの結論が採用されている。耐震性能については、本来、問題であるとの指摘を提起した委員に再計算業務を委託すれば、一発OKである。しかも、そうしなければ(専門家としては)結論を出しかねるはずである。とりわけ、報告書中の「II 豊洲市場移転案について>>7.豊洲市場の建物の構造安全性>>(4)地震用荷重の設定」(引用部分参照)については、再計算すべきである。しかし、報告書は、再計算の是非を報告書に盛り込むことなく、PT委員の多数派が問題なしとした格好となっている。このような幕引きとなったのは、再計算により耐震性能に問題があるとされた場合、発注者である市場だけでなく、建築確認担当者である都市整備部にも責任が及ぶためであろう。再計算の結果は、都の関係部局の無能力を責める材料となる。地下ピットの設置は、当時の都庁内部の独断によるものであるから、構造上の責任は、すべて都によるものとなり、その責任の所在は、従来の市場関係者系列だけに留まらなくなるのである。

豊洲市場への移転を妨害する最大の要素は、私から見れば、耐震性能であったから、この疑問を誰もが問題なしとできるだけの精査が、PT上で本格的に行われ、再計算結果が問題なしという所見とともに明記されていたとしたならば、私としても自身の誤りを認め(ざるを得なかっ)たであろう。実際、過去に触れた(2016年11月4日)ように、支持杭が存在することと、その効果については、個人としては現物を確認しようもないが、問題視していない※2。しかし、PTとしての結論は、再計算を忌避することにより、耐震性能に係る疑問を一層深めるものとなった。構造計算は、よほど教科書的なものでない限り、実行してみないと結果を明確にできない種類の作業である。ウン千億円のプロジェクトの成否を分ける要素を検証する作業であるから、数百万円でも追加支出して構造計算を厳格に実施してくれる建築事務所に依頼することには、何の問題もなかったはずである。


※1 実のところ、私の判断では採用しにくいために捨象している「陰謀」説も、かなりの多くに上る。本ブログは、場当たり的な検索結果を利用しており、また、アブダクションを多用するとはいえ、一応のところは、一種のフィルター機能を果たしているものと自負している。言い換えれば、本ブログは、正しいか誤りかを併記したキュレーション機能を備えているつもりである。判定が成功しているか否かは、もちろん、読者の判断による。

※2 現に、杭打ちに係るデータが偽造されたために、マンションが傾いたことが2014年11月に発覚した事件が報道されている[3]


[1] 築地、豊洲両論併記へ | ロイター
(共同通信、2017年04月25日05:16 JST)
http://jp.reuters.com/article/idJP2017042401002194

[2] (資料2)委員検討用市場問題プロジェクトチーム報告書素案(案)(PDF:7.7MB)
(2017年04月26日、27日閲覧)
http://www.toseikaikaku.metro.tokyo.jp/shijoupt08/06_houkokusyosoan.pdf

日建設計は地上に接しているレベルから地震用の積載荷重を計算しているが、これについて、地下の砕石層から計算するべきではないかという疑問が示された。〔p.70〕
〔...略...〕日建設計の考え方は、委託を受けた設計事務所の判断に任されている範囲内であり、建築基準法では、そのような考え方で設計することが許容されていると判断した。また、東京都の建築基準法所管部局は、そのように処理した。
他方、地下の砕石層から計算するべきだという考え方も、そのように考える者が委託を受けた場合にはありうるものであり、誤りであるという根拠はない。ただし、建築基準法の所管部局は、具体的な事例に即して判断するので、仮定のケースについては、判断をしていない。
なお、法律の許容する範囲内で、専門家としてどの方法が妥当かという議論はありうる。〔pp.71-72〕

[3] くい打ちデータ偽造事件 - NAVER まとめ
(makkoimaru、更新2016年02月28日)
https://matome.naver.jp/odai/2144870749519737301

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