2017年4月21日金曜日

(メモ)農地原状回復を求める訴訟の地裁判決のトンデモぶり

『福島民友』2017年4月15日(ウェブ)の「原発事故の農地汚染回復訴え却下 地裁郡山支部、原告控訴へ」という記事[1]に示された判決理由に驚愕したので、ついつい、裁判長の「上払大作」氏をググってしまったところ、トップページの冒頭に示された氏名は、「上拂大作」氏であった。そのページ、新日本法規出版の『e-hoki』[2]には、「上拂大作」氏の異動履歴として、「H.29.4.1~ 東京地裁判事、H.26.1.16~ 福島地家裁郡山支部長・郡山簡裁判事」とある。中央大学出版の『法律家をめざす諸君へ(2002年度版)』[3]にも同名の裁判官が共著者として「裁判官という仕事~若手裁判官留学制度~」を執筆したように見られるから、この上拂大作氏の「拂」の字は、本来、こちらであろう。異体字であるから、『福島民友』の表記も間違いではなさそうである。しかし、この『福島民友』も、上拂氏が東京地裁に栄転することが分かっていたからこそ、わざと「払」の字を利用したのであろう。

何よりも驚愕するのは、「「原告側は農地の放射性物質を除く方法を具体的に明示しておらず、訴えが認められた場合に東電が取るべき行為を特定できていない」」とする判決理由である。「除染」は国の事業ではなかったのか。地下にも浸透した放射性物質を土壌毎剥ぎ取り、ほかから土を運び、数十年かけて地味の豊かな元通りの土壌に育てれば良いのではないのか。コストやら方法やらは、被告である東京電力が考えるべき仕事であろう。もっとも、汚染されて除染されていない山野から放射性物質が風や水で運ばれてくるという事実が上拂氏の思考回路に含まれていたであろうことは、考慮せねばなるまい。

しかしなお、異動を控えていた上拂氏には、ここまで噴飯物の理由を判示しなければならない理由はない。福島県民が批判しようと、裁判長本人は、異動後、東京で知らぬ存ぜぬを貫ける。他方、今後の出世に、東京電力の責任に言及しないことが必要であるにしても、ここまでふざけた理由で押し切る必要もない。日本語でなくとも、英語なり他の言語なりで、後世に長く伝えられるクラスの屁理屈である。私が東京電力の犬として振舞うつもりなら、「安全、安心な」という用語に着目するであろう(もちろん、これ以上に具体的なヒントを原発ムラに与えるつもりはない)。

上拂氏個人の内面には興味はないが、この判決は、国民の側に立つにせよ、東電や原発ムラの側に立つにせよ、判事が当然発揮すべき能力を発揮しなかったものと読める。しかも、今回の判決は、上拂氏が自らを無能であるかのように装ったところで、東電や現政権・民主党(菅・野田)政権の側に立つものであり、規範的な観点から批判されるべき内容であることには変わりない。この点、本地裁判決は、国民からの批判を免れることがない。ただ、上拂氏は、現在に至るまでの原子力カルテットの無能力を代表するつもりで、率先して愚かしい判決を知らしめたのであろうか。仮にそうだとするならば、上拂氏は、なかなかの策士ということになる。今回の判決は、高裁・最高裁において参照しなければならないが、そのときの判事は、このトンデモ判決の扱いに困ることになるからである。


[1] 原発事故の農地汚染回復訴え却下 地裁郡山支部、原告控訴へ:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
(記名なし、2017年04月15日 09時33分)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20170415-164691.php

東京電力福島第1原発事故により、放射性物質で農地を汚染されたとして、県内のコメ農家ら8人と農業法人1社が東電に土壌の放射性物質濃度を事故前の水準に戻すよう求めた訴訟で、地裁郡山支部(上払大作裁判長)は14日、「放射性物質の除去方法が技術的に確立されていない」として、訴えを却下した。

[2] 裁判官検索:上拂大作 | 法律情報サイト e-hoki
(2017年04月21日確認)
http://www.e-hoki.com/judge/399.html

[3] 法律家をめざす諸君へ
http://www2.chuo-u.ac.jp/up/isbn/ISBN4-8057-0711-9.htm

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