2017年4月18日火曜日

(メモ)『発声練習』の著作権法に対する理解は大丈夫か

はてなブックマークにおける著作権の難しさは、はてな民自身に気付かれていて、一部については検証も見られる[1]。かと思えば、現在進行形で情報系のアカポスであると推測される匿名者が『はてなダイアリー』で『発声練習』と題するブログを運営し、その中で、著作権法違反となることが明らかな「学芸員はがん発言」と題するエントリ[2]をアップしているのを見るにつけ、日本社会はやったもん勝ちであるとも思ってしまうと同時に、このような公開のメモをシェアできる著作権法であれば良いのに、という複雑な感情をも覚えてしまう。この記事[2]は、フェアユースという利用形態に照らせば、十分に許容されるものであるし、むしろ良いまとめである。しかし他方で、社会的身分があるはずの人物が、仮に許諾を得ずに、この記事を作成して公開したのであれば、随分と皮肉な、問題のあることである。

『発声練習』の匿名者は、実社会で行って恥ずかしいことは、ウェブ上でもしてはいけないことを学生向けに引用・教示している[3]から、著作権法違反自体は、恥ずかしくないことなのであろう。それが証拠に、そのエントリから直リンが張られている、学生向けと認められるウェブ作法についての2記事[4], [5]にも、著作権という概念が登場しない。二つのエントリー[6], [7]やそのほかのエントリーの端々から、この匿名者は、情報系のアカポスであることが十分に推定される。教える側がこの状態では、学ぶ側に自己規制が働くことを期待することはできない。

すべては憶測であるが、この匿名者は、著作権法の問題点を読み込むことも、その知識を更新しようとする努力も怠ってきたのであろう。大学学部生のときに『はてなダイアリー』で開始した[8]スタイルを漫然と継続してきたのではないか。それが証拠に、放送業者が国会図書館における番組アーカイブ化の流れに反対する理由の主たるものが何であれ、全放送の閲覧可能化が、わが国でデモに参加するだけの勇気を持つ人々にとって、現実の脅威として受け止められることを理解しかねている[9]。彼(女)のこれまでの著作権法違反を理由に、アカポスを追われ、(小保方晴子氏が理研の籍を剥奪されるなら、剽窃=パクリも立派な違背行為である。)アカデミックキャリアとしては、二度と浮かぶ瀬がないとすれば、いかがであろうか。はてなという日本企業(サーバも日本か)を根城にしている割には、彼(女)の理解は、かなり甘いと言わざるを得ない。利用規約違反[10]でもある。

著作権法の非親告罪化の際には、法執行機関・匿名者の双方が、いかなる対処を取るのか、見物ではある。私のここでの指摘は、匿名者にとって、一段、ハードルを上げたという機能を有する。私は、フェアユースくらいは認めた方が、ギスギスし過ぎない世の中になると思う。ゆるい見解だが、そんな辺りでおしまいとしたい。省庁縦割り・専門分化の弊害も指摘したかったが、この語を本稿に掲示しておくだけで、問題の根幹に迫る上では、十分であろう。学識経験者と呼ばれる人物であっても得手・不得手があることと、必要に応じて柔軟に対処できるだけの余裕が社会になければディストピアが生じること、の一例を示してみたまでである。


[1] はてな民はコンテンツの著作権についてどう思っているの?
(記名なし、2013年10月03日11時40分34秒)
http://anond.hatelabo.jp/20131003114034

[2] 学芸員はがん発言 - 発声練習
(記名なし、2017年04月17日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20170417/1492403253

[3] 学生がはてなダイアリーを使うときに気をつけるべきこと - 発声練習
(記名なし、2009年02月09日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20090209/p4

[4] 補足:学生がはてなダイアリーを使うときに気をつけるべきこと - 発声練習
(記名なし、2009年02月11日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20090211/p1

[5] あなたがTwitterを使うときに気をつけるべきこと - 発声練習
(記名なし、2010年12月05日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20101205/p1

[6] 内定通知書あるいは雇用契約書って所属大学の規則ではどうなっているの? - 発声練習
(記名なし、2017年03月29日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20170329/1490719398

[7] 匿名化ツール - 発声練習
(記名なし、2017年04月17日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20170417/1492419013

[8] このブログ名について - 発声練習
(記名なし、2007年12月22日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20071222/p1

[9] 新聞や雑誌を保管・閲覧可能にすることとの違いを主張しないとダメじゃない? - 発声練習
(記名なし、2015年07月06日)
http://next49.hatenadiary.jp/entry/20150706/p2

著作権については留意すべきだけど、他の話については新聞や雑誌を保管・閲覧可能にすることとの違いがわからないと放送側の懸念に賛成できない。

[10] はてな利用規約 - はてな
(2015年8月2日改定)
http://www.hatena.ne.jp/rule/rule

第6条(禁止事項)
1. ユーザーは、本サービスを利用するに際し、以下のような法律違反行為を行ってはなりません。
a. 著作権、特許権等の知的財産権を侵害する行為




2017(平成29)年4月18日追記

冷泉彰彦氏と田中宇氏は、(当たり前ではあるが、)ともに、著作権法上も適正な、段落読みの可能な文章により、米国の動向を説明する論者である。櫻井春彦氏は、(図表の掲載にあたり、)そこまで厳密に著作権法を厳守しているとはいえない。佐藤則男氏・春名幹男氏・手嶋龍一氏・池上彰氏の文書のいずれも段落読みできない。佐藤優氏も大抵の場合は段落読みできないし、細谷雄一氏も段落読みできない。(記憶から、また、現在ブラウザで開いていた記事から判定した。)

これらの英語に馴染んでいるべき人々の文章作法を確認すれば、昨今の言論状況を整理するに当たり、少なくとも、ジャーナリストは、あまりアカポスに相応しい人種であるとは言えないようである。法律と同じく、科学においても、手続きこそが正当性を担保する材料の一つと見做されている。この点、元・日本のジャーナリストの文章は、残念なまでに、日本の新聞記事の執筆作法に毒されているようである。国際情勢を知るために参照される日本人(だと思われるが、本当のところは分かりかねる)ジャーナリストの文章は、一段落一主題が守られておらず、読込みに不要な時間を要する。形式が遵守されていない文章である場合、読者が文意を見逃した責任は、作者の側にもある。

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