2017年4月13日木曜日

(メモ)サムスン製スマートテレビの脆弱性に係る報道を今更つまみ食いする(のには理由がある)

後知恵であるが、『Sputnik 日本』にも『Vault 7』の露払いとなる記事を見つけた※1ので、メモする。元々、アメリカとロシアの軍事実務者同士のホットラインが再開されるのかどうかが知りたくて、「ホットライン」という日本語で同サイトを検索してみたところ、昨年(2016年)8月、キエフにあるサムスン直営店のスマートテレビがポルノを深夜に延々放送し続けたという記事[1]があった。同サイトは、(18禁にならない種類の)性にまつわる話題をそれなりの頻度で取り上げている。このため、この種の「セット販売」も難なくこなせるという訳か。佐藤優氏が「大人のおもちゃ」の宣伝の横に外務官僚の氏名を並記させる技術を紹介していたが(出所の確認は、サボらせていただく)、流石ということか。

ちなみに、『Washington Examiner』[2]によると、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、プーチン大統領とティラーソン米国務長官の会談後、通訳を交えた会見で、大統領がシリアについての露米ホットラインを再開することに前向きであると述べたという。本日のマスコミ報道に要注目である。まず間違いなく、日本のメディアは、本件を小さく扱うであろうし、何なら無視するであろう。無視したメディアは、日本国民にとって、売国奴である。なぜなら、本件を報じないメディアは、そのリソース(社会的地位)を十分に活用しないという不作為と、トランプ氏のシリア攻撃に係る発言を殊更に取り上げたという非均衡によって、戦争を煽り、日本国民を外国で死なせようとする勢力に与したことになるからである。この指摘を理解するに当たっては、田中宇氏の今月8日の記事[3]を参照されたい。ただ、文末にあるような、TPPへの復帰は極めて考えにくい。二国間交渉の方が日本を槍玉に挙げ易く、他国(特に、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドというファイブ・アイズ中の関係国)への遠慮が不要になるためである。相互に弱味を握る関係にある国とは、仲良くせざるを得ない。日本の弱味はアメリカに握られているが、ここ20年ほどの間、日本はアメリカの弱味を握ることができていない※2

先月(2017年3月)、CIAのソースコード集『Vault 7』が『Wikileaks』を通じて漏洩[4]されたが、この件を報じた『GIGAZINE』[5]『BBCニュース』[6]は、『Wikileaks』の解説を受け、サムスンのテレビがハックされるという事例を紹介していた。これは、同社のスマートテレビの登場以後、2月までの間にも、その脆弱性が度々取り上げられていたことを鑑みれば、想定の範囲内の話ではあった。2013年には、わが国の政府機関である情報処理推進機構(IPA)も、メーカに対して警告を発している。ただ、この種の侵入行為は、どの国家でも業務の一環であろう。(われわれは、ジェイムス・ボンドやジェイソン・ボーンの活躍を、当然のように受け容れているではないか。)

オチ代わりに、オリジナリティのため、セキュリティめいた話を付け加えておく:このような状況下、『Sputnik』に取り上げられたような形で公知とならないよう、企業がブランドイメージを守るためには、アップデートを整備することはもちろんであるが、それよりもまず、スマートテレビのURLフィルタリング機能を充実させ、デフォルト設定でオンにしておくべきであった。視聴用のフィルタリング機能が実装されており、デフォルトで有効になっていたにもかかわらず、同様の被害を受けた場合には、メーカの製品をディスるための措置であることを指摘しやすくなる。少なくとも、外部の専門家がこのような主張を行う余地が生じる。しかし、このような機能がなかったか、デフォルト設定となっていなかった場合には、メーカに期待される措置が執られていなかったという批判につながることになる。メーカの落ち度が責められることになるのである。


※1 本ブログは、基本的には、公開情報だけを元にして考察を組み立てているが、手抜きのために、探索型(exploratory)の研究ではなく、確証型(confirmatory)の研究に近いスタイルを採用している。探索型とは、データから何が言えるのかを探るというもの。確証型とは、(経験的・理念的な)理論が適切であるかをデータによって検証するもの。Googleの収集するデータの巨大さを想起すれば納得できるであろうが、今や、情報に係る探索型の研究は、装置研究でもあり、市井の一個人が太刀打ちできるものではない。これは、単に、私が都合良くサボるための言い訳でもある。なお、私の乏しい体験的知識(個人の体験に根差した知識)と、幾ばくかの法則的知識(学習を通じて間接的に取得した知識)も、一応のところは利用しているが、論理の後追いには不要であろう。

※2 なお、弱味を握るといえば、森友疑惑が野党の思うように進展しないのは、トランプ政権が安倍政権を肯定する一方で、森友疑惑を仕掛けた戦争屋を否定しているためであると考えられる。安倍政権は、トランプ政権が動かないことを間違いなく知っているからこそ、強気で振舞い続けることができるのであろう。本疑惑の構図は、「アッキード事件」と呼ばれているように、ロッキード事件と酷似している。両件の構図が同様のものであることは、偶然ではない。しかし、今回の場合は、外部環境が異なるのである。

[1] キエフ中心部にあるサムスンの店のテレビ画面で深夜、ポルノが放映される
(記名なし、2016年08月22日03:02(更新2016年08月22日 05:51))
https://jp.sputniknews.com/europe/201608222672700/

[2] Lavrov: Putin open to restarting the US-Russia hotline over Syria | Washington Examiner
(David Brown、2017年04月12日13:51ET?)
http://www.washingtonexaminer.com/lavrov-putin-open-to-restarting-the-us-russia-hotline-over-syria/article/2620112

[3] 軍産複合体と正攻法で戦うのをやめたトランプのシリア攻撃
(田中宇、2017年04月08日)
http://tanakanews.com/170408syria.htm

[4] Vault7 - Home
(2017年03月07日)
https://wikileaks.org/ciav7p1/

[5] 「自動車をハッキングして暗殺する」「テレビで部屋の会話を録音する」などCIAの極秘諜報作戦の実態を暴露する機密資料「Vault 7」をWikiLeaksが放出 - GIGAZINE
(記名なし、2017年03月08日12時45分)
http://gigazine.net/news/20170308-wikileaks-vault-7/

[6] テレビで室内の会話を盗聴――ウィキリークスが米CIA技術を暴露 - BBCニュース
(リオン・ケリオン、2017年03月08日)
http://www.bbc.com/japanese/39202254

[7] プレス発表 「スマートテレビの脆弱性検出に関するレポート」を公開:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
(2013年03月18日)
https://www.ipa.go.jp/about/press/20130318.html




2017(平成29)年4月26日10時追記

『スプートニク日本』によれば、13日時点で覚書の効力が復活され(てい)たということが、25日に明らかにされたという。Google様に簡単なお伺いしか立てていないが、毎日[9 ,10]、産経[11]、朝日[12]、読売[13]、日経[14]とも、ホットラインには直接触れずとも、軍事衝突回避の努力を報じているようではある(読売は、今となっては、同社のウェブサイト上では、無料で確認不能のようである。朝日は、一日一本の制限あり)。ホットラインを明記することが無料で後追いできるものは、(朝日を除けば、)毎日だけのようである。

従来からの主張と一部重複するが、私の軍事に係る基本的な理解の一つは、「現代的な軍人は、仲間や部下の命を無駄に(損耗)しない」というものである。この精神は、人間的・合理的・工学的・功利主義的である。私の知る限り、江畑謙介氏や清谷信一氏の論考は、この原則に立脚したものであるように思われる。しかし、わが国で軍事に詳しいと主張する非軍人(経験者)は、なぜか、この傾向に乏しい人物が多い。石原慎太郎氏なぞは、高齢女性に対する発言をふまえれば、命を粗末にする発言に居直る人物の代表格である。(ただし、この場合、石原氏と対立関係にあるからとて、小池氏が善玉という訳でもないことは、本ブログを良く読めば、十分に理解できよう。)


[8] ロシア、ティラーソン氏の要請でシリア上空での飛行に関する米国との覚書の効力を復活
(記名なし(『スプートニク日本』)、2017年04月25日 15:33(更新2017年04月25日18:10))
https://jp.sputniknews.com/russia/201704253572933/

[9] 米露外相会談:記者会見の要旨 - 毎日新聞
(記名なし、毎日新聞2017年04月13日17時59分(最終更新04月13日17時59分))
https://mainichi.jp/articles/20170414/k00/00m/030/017000c

米 両国間の信頼は低レベル。対露追加制裁の用意はない。
露 米露は関係改善へ作業部会を設置し、特別代表を任命する。シリア上空での偶発的衝突を防ぐための覚書の効力を回復させる用意がある。

[10] 米露外相会談:記者会見 要旨 - 毎日新聞
(記名なし、毎日新聞2017年04月14日 東京朝刊)
https://mainichi.jp/articles/20170414/ddm/007/030/104000c

[11] 米露関係は「低いレベル」 訪露の米ティラーソン国務長官、シリア問題は平行線 - 産経ニュース
(記名なし、2017年04月13日18:37)
http://www.sankei.com/world/news/170413/wor1704130075-n1.html

ラブロフ氏によるとプーチン氏は、ロシアが履行停止を表明したシリア上空での米露軍機の偶発的衝突を避ける施策を再開する意向を示したという。

[12] 米ロ、シリア巡り平行線 トランプ氏「ずっと低調かも」:朝日新聞デジタル
(モスクワ=杉山正・駒木明義、2017年04月13日11時18分)
http://www.asahi.com/articles/ASK4F269GK4FUHBI00Q.html

ただ、米ロ関係の改善のための両外交当局者による作業部会を立ち上げることや、シリア上空での米ロの偶発的な衝突を避けるための連絡態勢の再開では合意したという。

[13] シリア情勢をめぐる議論は平行線…米露外相会談
(記名なし、2017年04月13日)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20170413-OYT1T50048.html

両外相は、米露関係の改善に向け取り組む必要性では一致した。

[14] 米ロ、シリア協議平行線 外相会談、関係改善へ作業部会 (写真=AP) :日本経済新聞
(モスクワ=川合智之、2017年04月13日)
http://www.nikkei.com/article/DGXKASGM13H23_13042017MM0000/

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