2017年5月3日水曜日

(メモ)安倍晋三氏の電撃訪朝説は良い線行っていたかも知れない

結果としては外れたが、巷間には、安倍晋三氏の(2017年)4月末のロシア・イギリス訪問の帰途、安倍氏が電撃訪朝を予定していたという噂があった。私自身は、この真偽を計りかねていたものの、内心なるほどとも思っていた。実際に、(1)帰国後の30日は丸一日休養日であった、(2)ツイッターの首相官邸公式アカウントに従来以上のタイムラグが見られる、という状況証拠がある。しかも、昨日(5月2日)、ドナルド・トランプ氏が金正恩氏との会談に含みを持たせたという報道が見られる[1]。トランプ氏の「会談」発言と、1日の日米首脳電話会談は、戦争屋御用達の中間情報ブローカーを切り捨てるための布石と見ることもできる。安倍氏の英国訪問も、同国の北朝鮮との外交関係を頼りにしたものかも知れない。

安倍氏の英国訪問の日程は、おおよそ、以下のとおりである。日本時間の29日午前に、ドーチェスターホテルで内外記者会見、午後に英ヒースローを政府専用機で出発[2]。30日は、09時25分に羽田着、私邸へ直行、1日中、来客なし[3]という状態であった。北朝鮮の弾道ミサイルは、日本時間29日5時半ころに発射されたといわれ[4]、安倍氏は、29日の内外記者会見において、これを非難している[5]

下表は、官邸公式ツイッターアカウントのうち、「現地」「時間」の語を含む計18ツイートの公表までのタイムラグを示したものであるが、今回の訪英のみ、大きくずれていることが分かる。基準時刻は、ツイートに示された日付の正午時点からとした。今回はゴールデンウィークにかかったからというオチもありうるが、今年の2月11日・12日の安倍氏の訪米に係るツイートは、盛りだくさんの内容を土日出勤までして発出したものと見ることができるから、休日は発信しないという慣習があるとまでも言えない。なお、本作業には『R』+『TwitteR』を用い、Twitter APIによった。具体的な方法は、Rファイル(w20170503_kanteiツイート現地and時間.R)に記載した。表は、私の作業に係る部分だけを切り出したタブ区切りテキストファイル(w20170503_kanteiツイート現地and時間.txt)も用意した。


[1] 読売新聞2017年5月2日夕刊東京4版1面「米大統領 北揺さぶり/「条件整えば直接会談」/報道官は否定的/日米首脳が電話会談」
(ワシントン=大木聖馬、2017月05月02日)

[2] 首相動静(4月29日):時事ドットコム
(記名なし、2017月04月29日21:53 JST)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017042900632&g=pol

[3] 首相動静(4月30日):時事ドットコム
(記名なし、2017年05月01日00:07 JST)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017043000368&g=pol

[4] 新型の対艦ミサイルか 北朝鮮、米空母を牽制した可能性 (朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース
(記名なし、2017年04月29日21:08 JST)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170429-00000061-asahi-int

北朝鮮が29日午前5時半ごろ、西部の平安南道北倉(ピョンアンナムドプクチャン)付近から北東方向に弾道ミサイル1発を発射したものの、失敗したとみられると韓国軍合同参謀本部が発表した。

[5] 平成29年4月29日 内外記者会見 | 平成29年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
(2017年04月29日(更新 2017年04月30日14:42:58))
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0429kaiken.html

国際社会の強い警告にもかかわらず、北朝鮮が本日またも弾道ミサイルの発射を強行しました。我が国に対する重大な脅威であり、断じて容認できません。強く非難します。更なる挑発の可能性も十分に考えられることから、引き続き、同盟国である米国とも緊密に連携しながら、高度の警戒態勢を維持し、国民の安全確保に万全を期してまいります。我が国として、毅然として対応してまいります。北朝鮮は国際社会の制止を無視して、この1年間で20発以上もの弾道ミサイルの発射を強行し、核兵器の開発を続けています。国連安保理決議への明確な違反であり、国際社会に対する明白な挑戦であります。




2017(平成29)年5月6日追記

『リテラ』編集部[6]は、安倍晋三氏が軍事的対立を煽った挙げ句、「北朝鮮との対話」という世界の潮流から取り残されたという見立てを提示しているが、この意見も、電撃訪朝説とは大いに対立するものの、一理あるものに見える。この解釈は、従来の大きな流れをふまえれば、自然なものに見えるためである。日本版NSCの設置、特定秘密保護法の制定、安保関連法の改定、TPPに関係した一連の法制度の改定、テロ等準備罪の創設、憲法改定に向けての論議など、第二次安倍内閣において実現した法・政治システム上の成果は、すべて、軍事産業への梃子入れとして作用するものである。『リテラ』が常々批判してきたように、熟議を経ずにこれらの政策が実現したことは、事実である。他方で、わが国の広義のセキュリティには、これらの大きな改定を経てもなお、大きな欠陥が残されていることも事実である(。具体的な話は、本ブログの過去記事を参照されたいが、内政面について要約すれば、協力を求めるべき社会集団の支持をますます失ったことが最大の課題である)。この得失について、私自身は、国民への弊害の方が国民への利益を上回る形で生じ(ており、私自身のキャリア形成をも損壊するように機能してい)るものと考えるが、それでもなお、個々の局面での利益が皆無であるとは考えない。ただ、広義のセキュリティに対するわが国のリベラルにおける「セット思考」からすれば、『リテラ』の提示するような解釈は、もっとも素直なものとして受け容れられることになるであろう。

ただ、『リテラ』の見立ては、安倍晋三氏の北朝鮮との従来からの関わりを無視したものでもある。第一次小泉内閣においても「電撃訪朝」とも呼べる発表が存在し、2002(平成14)年9月17日の日朝首脳会談、2002年10月15日の拉致被害者5名帰国となったが、この当時、安倍氏が内閣官房副長官に在任していたことを想起すべきである。パフォーマンス外交好きの安倍氏ならば、軍事的対立もやむを得ないと言いつつ、自身の得点につながる電撃訪朝を探ることも選択するであろう。安倍氏は、統一協会ルートという、北朝鮮へのコネクションも有する。日本が北朝鮮を使嗾するという見方は、『弁財天』のMakoto Shibata氏(@bonaponta)が常々指摘するところではある。私は、この見方を全面的には採用しないが、「北朝鮮が日本にとって都合の良い動きを行うのは、日本に恩を売れると考えたか、日本とバーターしたとき」という見方を取る。

今回の安倍氏への評価は、結果だけ見れば、『リテラ』の解釈で正しいのであろうが、米日北の三者関係を導入したとき、果たしてそれだけであったのか、という疑問が残るものでもある。安倍氏の訪朝が絶望的となった直後に、ドナルド・トランプ氏が対話の可能性を口にするという運びは、偶然とは呼べないものである。安倍氏がスタンドプレーに走ったのか、トランプ氏との協調関係を経て今回の損な役回りを引き受けたのかは、衆人には分かりかねるところであるが、仮に、前者であるならば、『リテラ』の批判はより痛烈なものになるし、後者であるならば、『リテラ』の批判はむしろ外れたものになる。先月29日の官房長官記者会見[7]は、同日の英国ドーチェスターホテルにおける首相の内外記者会見に先立ち、北朝鮮に対する態度を表明しており、官邸の意志が統一されていることを示している。

最後になるが、『リテラ』の解釈は、対話しかあり得ないと指摘する点では全面的に正しい。問題は、北朝鮮を巡る一連の情勢の変化によって、日本の戦争屋一派と米国の戦争屋一派の両方がどれほど勢力を減じられたのか、また、安倍氏と日本国内の戦争屋との関係がいかなるものとなっているのかである。現時点までの結果を見れば、本件の対立は、人的被害ゼロ、北朝鮮が大規模火力演習を実施したために軍人の労働力と兵器を予定以上に消費した程度で済んでいる。韓国は多少の影響を受けていようが、米中露日の消耗は、予期されていた最悪に比べれば、通常業務に毛が生えた程度と評して良かろう。日米においてメディアリソースは盛大に浪費されたが、両国民の役に立たない両国のメディアであるし、彼らは自力更生しないであろうから、素より考慮せずとも良い。

現時点では、これ以上、私の考察が進んでいない。現在、日本の首相は、米国の戦争屋の軛がトランプ政権誕生によって外されたために、戦後において、最も自由に振る舞える。ただ、このフリーハンドが国民のために生かされているか否かは、依然として定かではない。日本国民にとって残念なケースだけを改めて示しておくと、電撃訪朝説が全くのガセであって、かつ、『リテラ』の見込みどおり、安倍政権が国際社会から孤立して軍事的対立を煽っただけというものである。安倍氏が日本(由来の財閥系)の戦争屋を上手くいなしているという証拠は、無料のネットリソース上には見られない。ただ、米国の戦争屋であるマイケル・グリーン氏に3月末に招聘された橋下徹氏さえもが安倍氏を批判[8]し、それを『リテラ』[9]や『ダイヤモンド・オンライン』[10]が参照するという状態は、トランプ氏のシリアへの先制攻撃と同様の効果を持つものと見做すこともできる。このとき、橋下氏が米ロ関係のキーパーソンでもある国務長官のレックス・ティラーソン氏を名指しして批判する[11]ことは、平和を愛好する振りをしながら米国内の戦争屋を利することができるために、大変に意味深な事態と指摘しておかざるを得ないであろう。

[6] 6カ国協議再開に反対なのは、安倍首相だけ?|LITERA/リテラ
(リテラ編集部、2017年05月04日)
http://lite-ra.com/2017/05/post-3132_3.html

安保法制の実績づくりや改憲世論の形成のために、安倍首相はどうしても“北朝鮮との対話”という世界の潮流を隠し、北朝鮮を“仮想敵”として煽り続ける必要があるのだ。

[7] 平成29年4月29日(土)午前 | 平成29年 | 官房長官記者会見 | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
(更新 平成29年4月29日11:37:52)
http://www.kantei.go.jp/jp/tyoukanpress/201704/29_a.html

[8] #たとえば以下のツイート。

[9] 「北朝鮮危機を煽っているのは世界中で日本の総理大臣だけ」 橋下徹や森本敏までが安倍政権の扇動を批判|LITERA/リテラ
(リテラ編集部、2017年05月01日)
http://lite-ra.com/2017/05/post-3124.html

この滑稽な事態にあの橋下徹でさえ自制を促すツイートを連投した。

[10] 橋下徹ソウル報告「米日の政治家、何よりも日本国民は、ソウルの普通の市民生活を想像しろ!」 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online
(編集者の記名なし、2017年05月02日)
http://president.jp/articles/-/22012

[11]




2021(令和3)年7月28日修正

グーグル・ドライブのファイルにセキュリティアップデートとやらが適用され、リンクにアクセス不能となる可能性があるとの通知を受け、当該リンクを修正した。内容は変更していない。

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