2016年1月24日日曜日

北方四島を2国に帰属させる方法は16通りあるが、位置関係を考慮すれば8通りになりそうである

【佐藤優の眼光紙背】メドベージェフ露大統領は北方領土返還に応じないというシグナルを出している(1/2)
http://blogos.com/article/23450/

4島の帰属に関する問題とは、論理的に5通り(日4露0、日3露1、日2露2、日1露3、日0露4)の場合がある。

 佐藤優氏による原田親仁(ちかひと)氏への評価を知るために、Google様にお伺いを立てたところ、この記事に行き当たった。その評の是非は私の判断が付くところではないが、よくやってしまいがちな誤りを見かけたので、ほとんど誰も訪れない?私のブログに密かに記しておくことにした。基本的に佐藤氏の国際関係に対する解説を尊重しての話であり、この種の記述を改善すれば、より説得力が増すと信じての提言である。また、本記事は、あくまで、佐藤氏の記述についての誤りを訂正するためのものであり、それ以上のものでも、それ以下のものでもない。

図1 北方四島の位置関係(データ原典:地球地図)
島同士は、お互いに区別が付く存在であり、どの島もロシアか日本かのいずれかに帰属する。だから、1島につき2通りの場合が存在する。結局、4島の帰属に関する問題は、数字の上だけで言えば、5通りではなく、2×2×2×2=2の4乗=16通りが存在する。ただし、4島には、図1に見るとおりの地理関係が存在するので、16通りの帰属は、その地理関係に制約されることになる。日本に「近い」※1のは、歯舞諸島、国後島、色丹島、択捉島の順番であると考えて、それほど問題はないであろう。ただ、歯舞諸島と国後島のいずれかを優先して選択するかという段になると、国後島は、歯舞諸島に比べて、ロシアに近い位置を占めているとはいえども、双方がいずれかの国に所属することになろうが、位置関係に左右されることがなさそうである。歯舞諸島や色丹島の方が太平洋へのアクセスを保証するものでもあるからである。

 おっと危ない。ここでは、本当にそのような国同士の問題に立ち入るつもりは毛頭なく、純粋に、位置関係に制約される国境線の引き方が何通りであるのかを検討したいだけなのである。さて、切り分け方の問題に戻ると、実は、これらの分割方法は、図2のように、グラフ理論によって表現できる。グラフ理論の解説については、大体どの書籍に当たっても、外れがない気がするので、適当に当たってみて欲しい。日本の立場を堅持するのであれば、ロシアのクリル諸島や本土にもノードを置いて、リンクを張る必要があるとは思うが、これまた立ち入りたくないことなので、ここでは、北海道(日本領)のみにノードを置いた。一応、この形であっても、ここでの考察を誤る原因とはならないであろう※2

図2 グラフ表記による北方四島と北海道の位置関係


 結論から記せば、このようにグラフ表記を援用すると、国境線は、かならずリンクを切断するように引かれることになる。たとえば、実効支配の現状は、{北海道, 国後島}, {北海道, 歯舞諸島}というリンクを切断していることになる。このリンクの一筆書きによる切断方法を数え上げるのが、正確な方法だということになろう。そのように数え上げると、帰属方法は、8通りであるように思われる。

ID日本側への帰属
1なし
2歯舞諸島
3歯舞, 色丹
4歯舞, 色丹, 国後
5国後島
6歯舞, 国後
7歯舞, 色丹, 択捉
8四島すべて

 ここまで作業してようやく、同様に、グラフ理論を用いた方法を誰かが提示済みであることを繰り返したような空恐ろしい気配を覚えた。ただ、鶏系の脳味噌の私が図2を作るに至ったのは、国境線をいかに引くべきか、と考え出したときに、M.ドバーグ, O.チョン, M.ファン クリベルド, M.オーバマーズ, (訳書2010), 『コンピュータ・ジオメトリ―計算幾何学:アルゴリズムと応用』, 近代科学社.で、このような章があったような記憶が蘇ったのである。私にしては珍しく、この方面での応用力が発揮されるという奇跡があっただけなのである。車輪を二度発明していたことが判明したら、その車輪の発明の栄誉は、もちろん先人へと授けて欲しい。私としては、先人の結論に自分の頭だけで到達できたので、随分と嬉しいのである。(もしかしたら、他の本かも知れないし、もしかしたら、どこかの高校とか中学とかの入試問題かも知れない!)いずれにしても、本記事は、それなりにグラフ理論を囓った人物ならこの結果に至ることができる、という例証程度には有用であろう。(落ちのつもりだが、)答えが間違っていたら、ごめんなさい。

※1 このような位置関係であるときに、「近い」という表現は、なかなか厄介なものであることを指摘しておく。エンティティ同士の最短距離にするの か、重心距離を取るのか、平均距離とするのか、最大距離とするのか、である。また、これらの距離計算時には、平面投影の方法を考慮する必要もある。

※2 自然に境界線を引こうと思う場合、ノードを配置する位置に困る位置関係である。北海道のオホーツク海に面した部分が、凸型の形状ではないため、自然に直線状の境界線を引くことが困難であるためである。この場合、思い切って、北東方向にロシア領土のノード、南西方向に日本領土のノードを1つずつ配置することから始めるのが良いであろう。今回は、ロシア領土のノードを配置しなかったので、最初と最後の場合分けとして、リンクを切断せずに四島すべてが日本かロシアかのいずれかに帰属する、という場合分けを追加する必要がある(上掲の表のID1とID8)。ロシア領土のノードを配置した場合、色丹国後と択捉に至るリンクを配置することになろう。また、このような形でノードを配置した場合には、ID8の場合を包含した、アドホックな作業を要さない方法で作業を進めることができるようになる。別解に示すことにしよう。

地理関係を考慮した自然な国境線を導くための別解(むしろ手順としては正当な解法) 2016年1月25日追記

ここで言う「自然な」とは、「飛び地状に見えることのない」ことを意味する。国境線であっても飛び地が存在することは、どなたかの著書にもあった記憶があるので(こういう地味さは、自分のコアコンピタンスではないので、調べません!)、たとえば色丹島だけ返還されるという場合もありうるのだろうけれども、そのような場合を考慮しない、ということである。
  1. ノードを次の地点に配置する。
    1. 日本本土
    2. 歯舞諸島
    3. 色丹島
    4. 国後島
    5. 択捉島
    6. ロシア本土(クリル諸島としても可)
  2. ドロネー三角網を形成するようにリンクを張る。国境線は、必ずこのリンクをあるルールで切断することになる。
  3. リンクの中点(代表点であれば何でも良いが、とにかく国境線が通ることになる点)にノードを配置する。新たに作成したノードを、国境線候補ノードとでも命名する。
  4. 国境線候補ノードの集合に、北西地点の遠方にノードを一点(v_nw)、南東地点の遠方にノードを一点(v_se)追加する。国境線候補ノードの集合は、合計、11個となる。
  5. 国境線候補ノードについて、ドロネー三角網を形成するようにリンクを張る。
  6. v_nwとv_seを次の条件で結ぶリンク集合を数え上げる。それが答えになる。
    1. 一筆書きである
    2. 同じノードに戻るループを許さない
方法論は、以上である。なお、ここでの方法の前例は、秋山仁, (1998). 『グラフ理論最前線』, 朝倉書店.かも知れない気がするが、同書は物置に埋もれているであろうから、いかんともし難い。

2016年8月2日訂正

題名まで間違えかねない内容になっているのに、ようやく気が付いたということで、半年近く経過した今日、2点を訂正した。一点目は、択捉島を日本領と見たとき、色丹島だけを単独でロシア領とする考え方が「自然な」形状にならず、飛び地になりうると気付いたことである。二点目は、ロシア領土から伸びるリンクを、色丹島ではなく、国後島に対して引くべきことである。この二点を修正すると、結果としての場合分けの数は変わらないが、帰属に係る形状と内容が異なっていたことになる。結果は、上記の本文のとおりとなる。怪しい感じが残るが、今回は、16通りの全てについて、いずれが空間上、自然に成立するかを検討してみたので、結果は、マシになったと思いたい。

 今回の訂正は、かなり沽券に関わることではある。が、見て見ぬ振りよりは、マシであろう。半年も経過したし、訪問もゼロではないから、考え方そのものの方針は、普及したものと楽観的に考えることとする。関係部署で、論理的に妥当な考え方が浸透していることを期待する。

 今でも、本記事に係る考え方は、帰属の問題をあくまで島の種類と地理関係から考察するというものに過ぎないという点では、変わりないものである。今回の(私が発見したと思った)誤りは、意図的に実施したものではないとはいえ、私の意図にない誤読を招きかねないものでもあった。今回の(私が発見したと思った)誤りは、単に、私の頭の悪さから生じたものである。また、本件の訂正にあたっては、自信をなくしているので、予防線を張っておくが、仮に、以前の答えが正しいものであった場合には、これまた、私のケアレスミスが原因である。いずれにしても、記して誤りをお詫びしたい。

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