#本記事は、国際関係を論じるものというより、マスコミ報道が国際関係に悪影響を及ぼしたかのように見えることを指摘するものである。また、本稿には、文献調査の関係上、詰めの作業が放置されている箇所がある。あらかじめお断りしておく。
本記事は、フィリピン共和国大統領のロドリゴ・ロア・ドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)氏がオバマ大統領に対して暴言を発したとされる問題について、私自身がタガログ語を理解できないながらも、英語および日本語マスコミがこの問題をいかに報じたかを確認しようと試みるものである。犯罪予防を主題とすると標榜する本ブログがこの話題に注目する理由は、フィリピンにおける政策課題のうちで国際社会が注目するものが、米国の影響、麻薬問題、過激派組織、南シナ海「問題」の4点に集約されており、マスコミ各社の報道姿勢がこれらの問題に対する各社の理解を反映するように思われるためである。これら4点の課題は、相互に関連しており、一つの課題に取り組むことだけでも、一国にとって大きな負担であることが認められる。これら4点の課題は、本稿では項目を挙げるに留めるが、麻薬犯罪の国内における苛烈な対処は、これら問題の突破口として用いられている可能性が認められるものである。この背景と、麻薬問題に対するアジアの大半の為政者の歴史認識を踏まえない「国際的批判」は、フィリピンを始めとする各国関係者に、失当なものとして受け止められることになろう。
麻薬問題は、フィリピンにとって喫緊の課題であり、過激派組織の活動を抑止することにもつながる。麻薬は、世界中で、過激派組織等の資金源になってきたことが広く認められてきている。フィリピンを含むアジア全域は、『ネタりか』で澤田真一氏が指摘する
[1]ように、阿片戦争後、阿片の一大消費地ともなってきた。澤田氏の記事は、本稿で紹介するマスコミ記事の中では、私のイチオシである。『ネタりか』というウェブ媒体であるからこそ、このような概説が可能になったとも言えよう。
太平洋戦争中の大日本帝国は、阿片を敵性国民に流通させて秘密部隊の資金源としながら
※、覚醒剤を兵士に供給したために、後世の過激派組織の範となってきた感がある。たとえ敵性国の内部に作戦を限定するにしても、一国の政府機関が違法薬物の製造・販売によって秘密資金を獲得することは、国際問題であると言えよう。また、この行為は、組織犯罪の観点から論じることが可能である。
1972年、フェルディナント・マルコス大統領による大統領令第44号により、1972年危険薬物法(Republic Act No. 6425, the Dangerous Drugs Act of 1972.)が一部改正され、危険薬物委員会(Dangerous Drug Board, DDB)が大統領府に設置された。これは、同国における横断的な薬物対策の始まりであると見なしうる。1972年のフィリピン国内における薬物乱用者は2万人で、大麻がトップであった。この状況は、時期のずれこそあれども、わが国と似たものがある。(ただし、これが単に社会問題化していなかっただけであるのか、戦後の麻薬中毒の恐ろしさが新規参入者を拒む形となっていたのかは、改めて調べてみる価値があろう。)
DDBによれば、シャブが流通し始めたのは1980年代である。フィリピンにおける覚醒剤の蔓延に至る過程は、ネット上で簡単に把握できるほどには周知のものではないようである。しかし、フィリピン国内における覚醒剤の製造・流通において、日本語話者の影響があったことは、間違いないであろう。80年代バブルを通じて制作された多くのわが国のエンターテインメント作品には、海外旅行客や企業の海外進出に前後して、やくざが国際化していく過程が描かれているものが多い。1989年の『ブラック・レイン』では、麻薬捜査に絡んで主人公の相棒が殺されていた覚えがある。事業の多角化と市場の拡大は、商品の違法性を問わず、安定した経済的利益の確保に重要であろう。また、やくざの国際化は、一般企業よりも素早いものであったという可能性がむしろ高いが、学術的にこのような主張を提起するためには、本来、検証が必要である。
フィリピンにおける近年の乱用者の割合は、人口の3%程度で推移していると見ることができよう。わが国に置き換えてみると、学校のクラスの一人がシャブ中ということになる。覚醒剤問題は、90年代以降のフィリピンにおける国家的課題であると言えよう。覚醒剤問題を一望しようとする作業は、別の機会にとっておくが、参考になりそうなネット上の資料の所在をとりあえず並べてまとめると、次のようになろう。
国連の報告書によると、1990年代初頭以降、覚醒剤はフィリピン国内でトップの乱用薬物となっている
[2]。2005年の講義資料を総合する
[3]と、1999年には340万人の乱用者がおり、51.46%の報告が首都圏に集中するという。2003年の内訳は、1.8百万人の常用者、1.6百万人の時折の使用者である
[3]。受刑者の65から70%は、薬物関連犯罪の有罪判決を受けた者である
[3]。1996年には若者の7%が薬物使用、6%が販売、使用薬物は90%がシャブであったという
[3]。2000年では、15~24歳における常習者の割合が2.8%、第3位の覚醒剤の生産国、第4位のアンフェタミンおよびメタンフェタミンの消費国と推測されており
[4]、同じく2000年の(おそらく国勢調査に基づく)国連による15~24歳の推計人口は、15436千人である
[5]から、43万人程度のこの世代の若者がシャブ中ということになる。また、国連薬物犯罪事務所(UNODC)
[6]によれば、2000年における15歳以上人口のアンフェタミン乱用者の割合は、2.2%である。
2012年のDDBとフィリピンノーマル大学(Philippine Normal
University)の調査では、130万人程度の乱用者がいると推定されている
[7]。2010年の人口・住宅センサスによるフィリピンの人口は、92,097,978人であるから
[8]、桁が変わらぬ程度には問題であり続けてきたと言えよう。2013年では、83.97%の検挙がシャブに関連しており、次いで大麻、MDMAとなると言う
[9]。DDBとPNUの調査による130万人という数値だけから増減の傾向を見積もることは、現時点では難しい。
なお、わが国の独立行政法人国際協力機構(JICA)の「草の根協力技術事業」の平成20年採択分の文書
[10]には、次の記述がある。隠語についての記述は、「しゃぶ」が国際語であるという共通理解を補強する。200万人という数値は、ネット上の根拠を未確認であるが、桁違いではない。
フィリピンには約200万人の薬物乱用者がいると言われる。その多くは覚せい剤乱用者である。覚せい剤はフィリピンでは“shabu”と呼ばれているが、日本の覚せい剤の隠語である「シャブ」に由来するものである[10]。
ところで、わが国における覚醒剤の検挙人員数は非常に波が激しく、「シャブ」という語の起源ならびにフィリピンへの伝播にも影響している可能性が認められる。平成23年までの『犯罪白書』は、戦後直後のピークを表示している
[11]。昭和53年の時点では、すでに「シャブ」の語は『警察学論集』特集の島田尚武氏の論題
[13]にも示されており、昭和57年発行の『三省堂国語辞典』第三版
[14]にも「しゃぶ」の項目が見られる。国会
[15]では、この隠語が用いられることが少なく、「(ノーパン)しゃぶしゃぶ」と「飴玉をしゃぶらせる」という表現で用いられる場合がほとんどである。
以上の文脈を理解した上で、ドゥエルテ大統領の政策は、検討を受ける必要があろう。苛烈な薬物対策は、同国では、各国の採用するテロ対策の一環であると見ることも可能ではある。ある時代における先進国の官民の組織が、資金獲得を目的として、敵性国家や植民地と見なしうる国において、薬物を流通させてきたという歴史もある。自称イスラム国やアル・カイダが薬物の流通からも資金を得ていることは、よく知られた話である。薬物犯罪対策における人権だけでなく、テロ対策・組織犯罪対策における人権という観点も加味する必要があるといえる。
いったん、ここまでの 参考文献を明記してから、区切り線の後に各記事を検討することにしよう。
[1] フィリピン・ドゥテルテ大統領は本当に「残酷な執政者」か - ネタりか
しらべぇ編集部・澤田真一(2016年9月15日05:30)
http://netallica.yahoo.co.jp/news/20160915-21883975-sirabee
澤田氏によるドゥエルテ氏の発言についての記述は、以下のとおりであるが、誰に向かって侮辱したのかを曖昧にしている点で、適切なものとなっていると認められよう。
ところがその後のドゥテルテ氏の返答があまりに侮辱的だと、米比間の国際問題に発展してしまった。
[2] Amphetamine-Type Stimulants: A Problem Requiring Priority Attention
(New York, 8-10 June 1998, United Nations General Assembly Special Session on the World Drug Problem)
http://www.un.org/ga/20special/presskit/themes/ats-3.htm
[3] Training Program in Management Skills and Instructional Leadership for Preventive Drug Education
(September 16, 23 and 30, 2005, UP Diliman, College of Education)
(Microsoft Word - Training Program in Management Skills and Instructional Le\205) - trainingreport.pdf
http://archives.pia.gov.ph/atcpde/trainingreport.pdf
"DOH Drug Testing in Secondary Schools"
Mr Joevin Eusebio, RN (DOH Office of Special Concerns)
- 1972年に2万人。2003年に3.4百万人。
- 受刑者の65から70%は、薬物関連犯罪の有罪判決を受けた者。
- 1996年には若者の7%が薬物使用、6%が販売、使用薬物は90%がシャブ。
講義: Drug Scenario in the Philippines
by Ms. Lily Dulay, Chief, Preventive Education and Training Division, DDB
DDB survey of 1999 on ATS
- 1.8百万人の常用者、1.6百万人の時折の利用者
- 51.46%の報告が首都圏。NCR: National Capital Region
- 使用者の平均年齢は29歳。
[4] Resolution Directing the Senate Committee on Public Order and Illegal Drugs to Conduct an Investigation, in Aid of Legislation, into Alarming Reports that the Philippines Has Become the World's Third Biggest Producer of Shabu and the World's Fourth Bigpest Consumer of Amphetamine and Methamphetamine, with the End View of Reviewing the Performance of the Dangerous Drugs Boprd and the Philippine Drug Enforcement Agency and Recommendipg the Effective Implementation and/or Possible Amendment of Republic Act No. 9165 (31202748!.pdf)
公共秩序および違法薬物に係る上院委員会に対して共和国第9165法の効果的な施行と可能な改正案の提示ならびに【...略...】のための調査を求める決議
(上院決議番号137、第13回フィリピン共和国国会第1期、2004年12月4日)
http://www.senate.gov.ph/lisdata/31202748!.pdf
[5] World Population Prospects - Population Division - United Nations
https://esa.un.org/unpd/wpp/
[6] United Nations Office for Drug Control and Crime Prevention, Global Illicit Drug Trends 2000.
https://www.unodc.org/pdf/report_2000-09-21_1.pdf
[7] Facts on Drugs (Dangerous Drug Board)
http://www.ddb.gov.ph/newsroom/46-sidebar/58-facts-on-drugs
[8] The Age and Sex Structure of the Philippine Population: (Facts from the 2010 Census ) | Philippine Statistics Authority
(August 30, 2012)
https://psa.gov.ph/content/age-and-sex-structure-philippine-population-facts-2010-census
[9] The Philippine Drug Situation (PDEA Annual Report 2013, 13.)
http://pdea.gov.ph/images/AnnualReport/2013AR/2013thephilippinedrugsituation.pdf
[10] 草の根協力支援型 | 草の根技術協力事業 | 市民参加 | 事業・プロジェクト - JICA
http://www.jica.go.jp/partner/kusanone/shien/phi_08.html
[11] 4-3-1-1図 覚せい剤取締法違反 検挙人員の推移
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/58/nfm/images/full/h4-3-1-01.jpg
(平成23年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/1)
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/58/nfm/n_58_2_4_3_1_1.html
『犯罪白書』の当該部分のグラフは、24年
[12]以降は20年分(H24, H25, H26)であったり、昭和50年以降に限られる(H27)など、期間に係る根拠が判然としない。
[12] 平成24年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/1
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/59/nfm/n_59_2_4_3_1_1.html
[13] 島田尚武, (1978).「「シャブ時代」における覚せい剤問題の全般的概況」, 『警察学論集』31(7), pp.1-41.
http://id.ndl.go.jp/bib/1889018
[14] 金田一京助ほか[編], (1982). 『三省堂国語辞典』, 東京:三省堂.
http://id.ndl.go.jp/bib/000001542592
[15] 国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/
#文献番号をリセットする。HTMLソース上でCSSとJavaScriptをわざわざ用意することなく、文献番号の連番を簡単に用意する方法はないものか。Wikipediaでは、LaTeXと同様の機能があるので、やりようはあるのだろうが。
私は、今回の事件については、前記事(
リンク)で紹介した2つの記事
[1, 2]のニュアンスを、国際的な大マスコミの報道よりも信用している。これらの2記事は、タガログ語に秀でた英語話者によって作成されたものとみることができる。これらの2記事の根幹にある事実認識は、「ドゥテルテ大統領がディスったのはマスコミ記者であり、オバマ大統領ではない」というものである。これらの2記事は、互いに整合的であり、後に述べるように、大マスコミの一部が慎重な表記を行ったことにも符合する。
今回の事件に係る以下の英語記事等は、事実関係を措定して検証しても問題ないものである。2記事
[1, 2]が正しければ、以下に引用する記事のほとんどが誤報であることになる一方で、2記事が誤りであれば、以下の記事の正しさを私が検証することこそ不能であるものの、これらのマスコミの記事がおおよそ正しいものであると認められる、という二者択一の関係が成立するためである。ただし、後者の場合、正しさの根拠は、これだけの数のマスコミが口を揃えて指摘している、という消極的なものに過ぎないものとなる。
#なお、私は無駄に見えることに対しては、力が出なくなる怠け者である。ここでは、英語と日本語マスコミの状態を見ておくことに価値があると思うからこそ、タガログ語はさて置いても、英語と日本語を読んでみようと考えているのである。
『ハフィントン・ポスト』の日本語記事
[3]の元記事は、英語(リンクは末尾の引用中)であり、原題を訳し直すと「オバマは彼をサノバビッチと呼んだフィリピン大統領との会談をキャンセルする」であるから、和訳も、Bellware記者が「ドゥテルテ氏がオバマ氏を直接ディスった」と書いたことを正確に伝えている。『ハフィントン・ポスト』は、英語版では、最近、寄稿者であったデイヴィッド・シーマン氏により、ヒラリー・クリントン氏の健康状態に疑義を呈した同氏のアカウントを強制閉鎖したと内部告発されている
[4]。シーマン氏の主張が本当であるとすれば、同紙は、アメリカらしい価値観よりも党派性を優先させる媒体であるということになる。シーマン氏の内部告発は、ドゥテルテ氏に対する最近の同紙の評価についても、疑問を投げかける材料となっている。
日本の五大紙の論調は、罵倒の事実を断定する読売・産経、二つ以上の記事について異なるニュアンスを有する毎日・朝日、同じニュアンスを複数の記事で報じる日経、の三種類に分けることができる。各紙とも記者やソースが顕名であることは、珍しく特徴的である。読売新聞の記事
[5]は、日本語で発出されており、「ドゥテルテ氏がオバマ氏を直接ディスった」としか読めない。産経新聞の記事も同様に「オバマ氏を罵った」である
[6]。毎日新聞については、ワシントンの会川晴之氏の記事
[7]では、「罵倒するぞと警告した」という内容になっている一方で、その後に発信されたビエンチャンの岩佐淳士氏の記事
[8]では、明確に「オバマ氏を罵った」ものと読める。これは、アメリカ合衆国の首都で得た当初の情報とラオス人民民主共和国の首都で得た情報とが言語などの壁によって微妙に異なるものと化していることをうかがわせる材料である。毎日の両記事の差は、懐疑的ではない読者ならば見逃すであろう程度であるが、ファクトチェックを意図した調査報道
[1]に接している読者であれば、両記者の理解した内容に差があることを示す材料であると考えるであろう。
日本経済新聞は、会談の中止を報じる吉野直也氏の記事
[9]と、ドゥエルテ大統領の謝罪を報じる佐竹実氏の記事
[10]の両方が、同様の意味内容を伝えている。これを読むと、次のように読むことが可能である。
- ドゥエルテ氏がオバマ氏に「冗談はやめろ」と発言した
- 下品な言葉も使って侮辱した
- ただし、誰を侮辱したのかは、目的語が省略されているために不明
- 普通に読めば、オバマ氏を念頭に置いた話が前文で示されているために、オバマ氏が侮辱されていると受け取る可能性が高い
- しかし、侮辱されたのが記者であることを知っているならば、(#英訳の主語はYouである[1])侮辱されたのが記者団であると読むことも可能である
両氏の記事の内容は、誤りとまで断じることはできないものとなっている。いろいろな国際関係における力関係の中で、記事執筆の現場の裁量で取り得る範囲の方法を取ったものと言えよう。ただし、簡明に事実を伝えようという方向で努力した場合、吉野氏や佐竹氏のような文章に仕上がることは、決してないであろう。この事実は、穿ち見れば、本件が米比(比米)会談を回避するための大がかりなアングルであったと見る材料ともなっている。
朝日の記事には、日経の記事に見るようなアンビバレントな気持ちが、対照的な形で明示されている。ロイターによる記事
[11]では、明確に「ドゥテルテ氏がオバマ氏を侮辱した」と示されている一方、ロイターに先立ち配信された、ビエンチャンの鈴木暁子氏による記事
[12]は、ドゥテルテ氏が侮辱したのは記者であるという読みを許す記述となっている。鈴木氏による続報
[13]は、「ドゥテルテ氏の「暴言」」という表現であって、暴言が誰に向けられたのかという解釈は、読者の側にゆだねられている。
「情報のルール」を私が熟知しているとは言い難いが、それでも、今回は、マスコミ報道のニュアンスの違いを明らかにすることができたように思う。すべてが記録されるようになったと理解すると、この話は、なかなか怖い話になってくる。というのも、以上に示した解釈のブレは、記者の名前とともに、今後の記事の解釈において、読者に利用されるであろうからである。さらには、この違いは、来るべき「第二の敗戦」に際して、誰がどのように職務を果たしていたのかを検討する材料にもなろうからである。
ある国のマスコミ報道の正確性や見識は、一読者の側からであっても、促進する余地がある。今回のように、(薬物問題という)間接的な人命への危険と、(薬物犯罪者の殺害という)急迫性の高い人命への危険とが、天秤にかけられるという事態に直面するという経験は、戦後のわが国のマスコミには、ほとんどなかったことである。違法薬物は、テロ組織や、テロ組織を支援する組織の秘密の資金源となっており、薬物問題は、国内の治安対策のリソースを消費する社会的問題である。功利主義的にとらえれば、ともに、QALYの問題として一元化できるものである。この種の社会的議論が忌避されてきたわが国において、マスコミが本件に言及することは、マスコミにとって致命的な無知を露呈する虞があるために、一種のリスクであった。今回、日本経済新聞は、五大紙の中では、このリスクを乗り越えたと評価されることになろう。
いい加減、面倒になってきたので、結論を一足飛びに記すことにする。
ドゥテルテ大統領の発言をこじつけようとするマスコミ各社の動きは、同氏に対する人格破壊に便乗したものであると看破することができる。この人格破壊は、逆説的に見えるかもしれないが、「戦争屋」の所有するマスコミ企業の一部によって焚き付けられたものであると解するのが適切であろう。この方針を作り出して主導した流れの追究は、別の機会に取り置くということにしておきたい。本記事の最後までを通読したとき、読者が違和感を感じるとすれば、それは、読者の感じた違和感であるということにされたい。真実は、切れ味の鋭いツールであると同時に、新・帝国主義的な現状において、個人の書き手が世情について言及するとき、最大の拠り所となるものである。
帝国主義的な世界情勢下において、言い出しっぺがどこであろうと、日本語でドゥテルテ大統領の発言の真相に係る誤解が流通しつつある(と私には見える)ことは、ここから利益を得ることのできる国にとっては、ひとつの機会である。利益を得る立場の国の報道機関がドゥテルテ氏の人格破壊に便乗しようとすることは、当然の活動である。ただ、「わが国」のマスコミが安易にこの謀略に引っかかるということは、自らの不見識をさらすことになるだけでなく、国益に反することにもなりかねない。この機微が分からずに、歪曲された解釈を流通させることは、売国的であるか、不見識であるかのいずれかになるからである。
一足飛ばなければ、外国メディアの外国向け(日本語)記事の解釈は、基本的に行えない。AFP通信
[14]とこれを掲載したライブドア
[15]の記事は、題名で明らかにドゥテルテ氏がオバマ氏に向けて言葉を発したとしながら、本文がきわめて慎重な記述となっている。これは、記事を全体で評価すれば、読売
[5]・産経
[6]と異なるところはないが、構成としては明らかに異なるものである。題名を訂正すると、内容へのリンクが破壊されることが多い。かなり練り込んだ構成であると言える。『ニューズウィーク日本版 』に配信されたロイターの記事
[16]は、朝日に配信されたもの
[11]とは異なり、「ろくでなし」の語が出てこない。今回紹介した記事のタイムゾーンの確認は完全ではないが、最も早い公表のひとつは、『BusinessNewsline』
[17]によるものであろう。記者のホワイト氏は、明確にドゥテルテ氏がオバマ氏をなじったことを記している。
テレビ局については、CNN
[18]は、明確に「ドゥテルテ氏はオバマ氏を罵倒した」と述べているが、BBC
[19]は、
もしオバマ氏がその話題に触れたら「売春婦の息子め、その場所で罵倒してやる」と発言した。
と表記しており、日本語としては通りの良くない文章に仕上がっている。にもかかわらずというべきかはさておき、BBCの記事は『ウェッジ』
[20]と『保守速報』
[21]に引用されている。
『J-CASTテレビウォッチ』
[22]は、TBS系の朝のワイドショー『あさチャン!』を書き起こした記事であるが、ここでの見方は、わが国の視聴者の端的な見方を構成するものになるであろう。(が、明白な誤りということになる。)
[1] We Hired A Native Tagalog Speaker: Here's What The Filipino Prez REALLY Said
(Nizza Gueco on September 5, 2016)
http://www.liberalamerica.org/2016/09/05/we-hired-a-native-tagalog-speaker-heres-what-the-filipino-prez-really-said/
[2] Duterte expresses regret over comments against Obama | News | GMA News Online
Published September 6, 2016 12:36pm
Updated September 6, 2016 12:53pm
By TRISHA MACAS, GMA News
http://www.gmanetwork.com/news/story/580290/news/nation/duterte-expresses-regret-over-comments-against-obama?
[3] フィリピン・ドゥテルテ大統領、オバマ氏をののしる「このくそったれが」⇒会談中止
Kim Bellware(投稿日:2016年09月06日11時25分JST 更新:2016年09月06日16時46分JST)
http://www.huffingtonpost.jp/2016/09/05/duterte-curses-obama_n_11869916.html
AP通信によると、ドゥテルテ大統領はオバマ氏を「このくそったれが。ののしってやる」と恫喝した。
【...略...】オバマ氏は G20サミットで記者団に語った。
「しかし我々は常に正当な法の手続きのもと、国際的規範と一致するやり方で麻薬取引と戦う必要がある」
【...略...】ロサンゼルス・タイムズによると、ドゥテルテ大統領はオバマ氏への発言を「後悔している」と述べた。【...略...】
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
[4] Huffington Post TERMINATED Me For Questioning Hillary's Health - YouTube
David Seaman (2016年08月28日ライブ配信)
https://www.youtube.com/watch?v=xHhNr5jeTIw
[5] 比大統領、米大統領を下品な俗語でののしる : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
(ビエンチャン=向井ゆう子、杭州=大木聖馬、2016年09月06日08時08分)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160905-OYT1T50100.html?from=y10
フィリピンのドゥテルテ大統領は5日、ラオスの首都ビエンチャンで6日に首脳会談を予定しているオバマ米大統領を下品な言葉を使ってののしった。
[6] オバマ米大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領との会談中止 人権に関連、オバマ氏をののしる - 産経ニュース
(ビエンチャン=吉村英輝、2016年09月06日08時24分)
http://www.sankei.com/world/news/160906/wor1609060012-n1.html
米国家安全保障会議(NSC)のプライス報道官は6日、【...略...】フィリピンのドゥテルテ大統領との初会談を中止し、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領と会談【...略...】
【...略...】「私は米国の操り人形ではない。そんな質問はさせない」としたうえ、オバマ氏を口汚くののしっていた。
[7] 米フィリピン:首脳会談見送り オバマ氏が人権軽視を懸念 - 毎日新聞
(ワシントン=会川晴之、2016年9月6日11時36分 最終更新2016年9月6日12時38分)
http://mainichi.jp/articles/20160906/k00/00e/030/205000c
麻薬取り締まり問題に米国側が触れることは、内政干渉に当たると非難。さらに、首脳会談でオバマ氏がこの問題を提起した場合は「罵倒するぞ」と警告していた。
[8] 米比首脳会談中止:暴言、対米関係に傷 比大統領失態 - 毎日新聞
(ビエンチャン=岩佐淳士、2016年9月6日20時42分、最終更新2016年9月6日23時53分)
http://mainichi.jp/articles/20160907/k00/00m/030/073000c
「売春婦の息子め」。フィリピンのドゥテルテ大統領は5日の会見でオバマ米大統領を極めて品性のない言葉で中傷し、【...略...】
会見でドゥテルテ氏はこうした問題をオバマ氏から問われるのではと聞かれ「彼のことは気にしない。誰だそれは」などと反発。さらに「売春婦の息子め。ののしってやる」と罵倒した。
[9] 米比首脳会談 中止に 人権問題など影響か :日本経済新聞(電子版、杭州=吉野直也、2016年9月6日10時56分)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H0T_W6A900C1MM0000/
これについてドゥテルテ氏は5日の出発前、6日に初の会談を予定していたオバマ氏に対して「我々に敬意を持たなくてはならない。質問や疑問を投げつけるな。冗談はやめろ」と記者団に述べた。さらに下品な言葉も使って侮辱した。
[10] 比大統領、オバマ氏への発言「後悔」 会談再調整 :日本経済新聞
(ビエンチャン=佐竹実、2016年9月6日13時56分)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H6P_W6A900C1000000/
ドゥテルテ氏は5日、「(オバマ氏は)我々に敬意を持たなくてはならない。質問や疑問を投げつけるな。冗談はやめろ」と記者団に述べたほか、下品な言葉を使って侮辱し、直前で中止となった。
[11] 米比首脳会談を中止、ドゥテルテ大統領の侮蔑発言で - ロイターニュース - 国際:朝日新聞デジタル
(ビエンチャン=ロイター、2016年9月6日15時18分)
http://www.asahi.com/international/reuters/CRWKCN11B2CW.html
ドゥテルテ大統領はオバマ大統領を品位を欠く言葉で表現していた。
前日の5日、記者団に対し、オバマ大統領のことをタガログ語で「ろくでなし」と表現した。
人権侵害の問題を取り上げることは「無礼だ」と反論。そうした会話に発展すれば、オバマ大統領をののしることになるとし、この場面で侮辱的な言葉を用いた。
[12] オバマ氏、比大統領との会談取りやめ 米批判を繰り返す:朝日新聞デジタル
(杭州=峯村健司、ビエンチャン=鈴木暁子、2016年9月6日13時24分)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ962FQ2J96UHBI008.html
【...略...】ドゥテルテ氏は出国前の会見で、この大量殺人についてオバマ氏に問われるのではと質問され、「私にとっての主人はフィリピン人だけだ。敬意を忘れるな。疑問や声明ばかり投げかけるな」「会議でののしってやる」などと発言していた。
【...略...】
会談中止を受けてドゥテルテ氏は6日午後、「オバマ氏への攻撃ととられた先の発言を後悔している」とし、後日、会談を行うことで合意したとの声明を発表した。
[13] 比大統領また想定外発言 オバマ氏の面前、人権巡り持論:朝日新聞デジタル
(ビエンチャン=鈴木暁子、2016年9月9日01時06分)
http://www.asahi.com/articles/ASJ9873RVJ98UHBI02M.html
オバマ大統領に対する「暴言」で6日に首脳会談が延期になったばかり
[14] 比大統領、オバマ氏を侮蔑語で罵倒 米、首脳会談を中止 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
(2016年09月06日07時15分)
http://www.afpbb.com/articles/-/3099880
[15] フィリピンのドゥテルテ大統領、オバマ氏を侮辱語で罵倒 首脳会談中止に - ライブドアニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/11980680/
オバマ大統領から疑義が呈されるのではと指摘されると、怒りをあらわに「敬意を忘れちゃいけない。疑問やら声明やらを投げつけるな」と発言。さらに、タガログ語で相手を売春婦の息子と侮蔑する「プータン・イナ」という表現を使い、「会議でののしってやるぞ」と息巻いた。
[16] オバマ大統領、侮辱発言をした比ドゥテルテ大統領との会談中止 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
(ロイター、2016年9月6日10時15分)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/post-5781.php
米ホワイトハウスは6日、オバマ大統領がフィリピンのドゥテルテ大統領との会談を中止したと明らかにした。ドゥテルテ大統領はオバマ大統領を品位を欠く言葉で表現していた。
一方のドゥテルテ大統領は、人権侵害の問題を取り上げることは「無礼だ」と述べた。そうした会話に発展すれば、オバマ大統領を罵ることになるとし、この場面で侮辱的な言葉を用いた。
[17] オバマ大統領、「くそったれ」呼ばわりでフィリピンのドゥテルテ大統領との首脳会談をキャンセル - BusinessNewsline
Samuel White、2016年09月05日(#おそらく22時34分)
http://business.newsln.jp/news/201609052234580000.html
ドゥテルテ大統領が「くそったれ(son of a bitch)の意見は聞かない」とする発言を行ったことが、今回の会談キャンセルの理由とみられている。
[18] CNN.co.jp : オバマ米大統領、フィリピン大統領の暴言受け会談を中止 - (1/2)
2016年09月06日09時56分JST
http://www.cnn.co.jp/world/35088569.html
これに対してドゥテルテ氏は5日、演説の中で「何様のつもりだ。私は米国の操り人形ではなく、主権国家の大統領だ」と強い反発を示し、侮辱的な俗語を使ってオバマ氏を罵倒した。
[19] オバマ氏、フィリピン大統領との会談中止 母親を「売春婦」と - BBCニュース
(2016年09月06日10時27分 最終更新2016年09月06日10時37分 JST)(#HTMLファイルから再現した)
http://www.bbc.com/japanese/37283348
これに対してドゥテルテ氏は、ラオスへ発つ前にマニラで、もしオバマ氏がその話題に触れたら「売春婦の息子め、その場所で罵倒してやる」と発言した。
[20] オバマ氏、フィリピン大統領との会談中止 母親を「売春婦」と WEDGE Infinity(ウェッジ)
(2016年9月6日)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/7690
[21] フィリピンのドゥテルテ大統領、オバマに「売春婦の息子」と罵倒 →オバマ、ドゥテルテとの会談中止、代わりに韓国パククネと会談へ|保守速報
(2016年09月06日17:30)
http://hosyusokuhou.jp/archives/48391677.html
[22] フィリピン「暴言大統領」オバマをクソ野郎呼ばわり!米側は首脳会談キャンセル : J-CASTテレビウォッチ
(あっちゃん、2016年9月7日15時16分)
http://www.j-cast.com/tv/2016/09/07277279.html
ドゥテルテ大統領がオバマ大統領を「クソ野郎」と呼び、フィリピンの公用語タガログ語で「売春婦の息子だ」と言い放ったのだ。
落ち穂拾い:報道と諜報と学問の違いを私なりに考える
帝国主義の列強国同士が情報交換するときのルールは、「何でもあり」という訳ではないものの、イメージ操作までは「あり」なのであろう。偽情報の流通は、発信者がその責めを負うのはもちろんである。とはいえ、その反面、すべての情報を裏取りすることは、人間や人間の組織や人工知能には不可能なことである。この大前提があるために、発信者を明示して偽情報を知りつつ利用することは、諜報の世界では、問題のない行為と見なされているのかもしれない。
「イメージ操作まではあり」という諜報の世界のルールが成立するとすれば、諜報の世界と学問の世界との間には、「偽情報と知りつつ偽情報を流通させて良いか」という点について、プリンシプルに違いがあることになる。学問の世界では、「偽情報と知りつつ偽情報を流す」ことは、掟破りである。「巨人の肩の上に立つ」というニュートンの言葉は、科学においても、反証されていない知識をとりあえず利用するという態度が許容されていることを端的に示す証拠である。この半面、諜報の世界とは異なり、知という巨人へ故意に嘘を捧げることは、許されないであろう。そうしなければ、容易に、巨人は、訳の分からない人工物へと転化してしまうからである。
これら二つの世界のルールをふまえれば、公的な事実に係る経緯を見極めることに作業を限定することは、科学や哲学という社会的活動のルールを遵守するために、誰にも文句をつけられないことになるための必要十分条件となろう。批判を受けることは当然であるが、非難される筋合いはないということである。諜報の世界の人間にとって、学究の徒は、五月蠅いかもしれないが、そのプリンシプルに準拠している限りは、放置しておくほかない存在である。とはいえ、学究の徒が偽情報を進んで本物であるかのように流し始めたとき、その情報は、掟破りとして、諜報の世界の人々に利用されることになろう。
一般人が、諜報と学問、いずれのプリンシプルに準拠するとみなされるのかは、面白い話であるが、私の手には余る。政治は、明らかに諜報のプリンシプルに連なるであろう。結果責任を負うからである。王制ならばどうか、とか考え始めることは面白そうであるが、ここで止めておきたい。
「匿名」が許されているインターネットの世界は、嘘を吐いても逃げおおせることが容易であると見えるために、諜報のルールに準拠するように見える。しかし、この見かけを理由に、一般人の言動を諜報の世界のルールに投げ込むことは、結果責任を負わせることにもなる。わが国における一般人のネット世界は、社会的制裁の苛烈さを見ると、諜報の世界のルールに準拠している。研究者の集う掲示板であっても、顔の見える関係にないところでの批判は、中傷合戦に陥りがちなようである。
現在、わが国では、原発について異なる見解を有する二陣営の間に見られる舌戦は、この戦いを有利に進めようとする一方の勢力により、ネット工作企業に税金を支出するまでに昂進している。(実例を挙げよという批判に対しては、今後の「敗戦処理」がより悲惨なものになるから止めておけ、とあらかじめ答えておこう。)この争いに、賃金を得て参加した者は、今後の「敗戦処理」において、傭兵と見なすことができる。傭兵は、結果責任以上のものを引き受けさせられる存在である。その上、福島第一原発事故についての無作為は、人体実験とみることができる。賃金を得て誹謗中傷に勤しんできた非正規従業員たちは、近い将来、「こんなはずではなかった症候群」に陥るであろう。公務員で、匿名で誹謗中傷に勤しんできた者たちは、一等、罪が重くなろう。民間人で無知ゆえに無償で議論に参加した者たちも、活動内容いかんによっては、罪に問われるやもしれない。マスコミの大半も、上記で検討したように違いが見られるとはいえ、五十歩百歩といえば、その通りでしかない。
私は、「安全厨」を構成する各グループのいずれについても、彼らを擁護できるだけの論拠を持たない。理屈をひねり出そうと思っても、出る見込みがない。「戦争屋」に雇われた誰かが、誰もが納得するような敗戦の弁を用意するという展開は、期待できるのであろうか。
おまけ。わが国のマスコミにとって、よど号ハイジャック事件は、事件への「嗅覚
=センス」、言い換えると、人命の危険のある事件を報道するにあたり、作為・不作為の両方に係る予測を聴衆に対して正確に伝達するためにマスコミが取り得る方略、を決定的に変化させる
という転換点になり得た事件であったが、その後の推移は、歴史に見るとおりである。同事件の推移そのものは、9.11とは異なり、アノーマリー、いろいろな展開が生じうる突発的事件であったと言える。
平成28(2016)年9月21日追記
最後の一段落に追記した。
本稿の趣旨は、明らかに、ドゥテルテ大統領の発言に係るマスコミ報道を検証するというものである。この趣旨は、この検証に必要な材料を提示するという、副次的な目的を派生させた。この材料には、マスコミが意図的に嘘を吐くことがあるか否かという(読者によっては自明な)命題が含まれている。それゆえ、今回は、諜報と学術とのプリンシプルの違いを指摘することにより、マスコミ報道が前者のプリンシプルに駆動されたものである可能性を非明示的に示唆したのである。
嘘を吐くことは、必ずしも、ジャーナリズムの表向きのプリンシプルには含まれないことである。しかし、情報源との取引の過程において、また、組織防衛上の都合から、マスコミが組織として嘘を吐く(必要に迫られる(と周辺者等に判定される))ことは、十分に歴史上認められる事実である。今回のドゥテルテ大統領の発言に係るマスコミ報道は、報道の原則か例外のいずれかと問われれば、ジャーナリズムの本道からすれば例外であろうし、近年のわが国のマスコミ報道からすれば平常運転ということになろう。
平成28(2016)年10月11日追記(言い訳)
※ 秘密部隊だけへの資金還流が行われていた訳ではないことは、東京裁判などを通じて広く知られた事実であるとは思うが、ドゥテルテ大統領が麻薬対策において念頭に置かなければいけない相手は、外国の非合法政策に従事する構成員を含むと見なされるために、このように記述したまでである。