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2016年9月30日金曜日

選挙の情勢調査におけるサンプリングの拙い事例は左右を問わない

 今年7月の記事(2016年7月25日)では、ドナルド・トランプ氏への共和党員の反対率が3分の2に達するというリチャード・アーミテージ氏へのインタビュー記事について、同氏に票読みの感覚が欠如していることを指摘し、その原因として、多くの共和党員に欺かれた・彼が記者に嘘を吐いた・彼が統計調査のリテラシーに欠けている、の3点が考えられると指摘した。事実が第3点目であるとすれば、アーミテージ氏は、自分と親しい者だけから意見を聴取したために、共和党員全体の動向をうまく集約できていなかったことになる。この誤りを避けるためには、社会調査における設計段階が重要になる。調査対象全体から偏りなくサンプルを得るために、調査の設計が重要であるということは、統計を取扱う者の間では、基本的な了解事項となっているはずである。

社会調査ではサンプリングが重要である

「なぜ開票を始めたばかりで、当確を出せるのか」という疑問に対して、統計学者が自信をもって解説できるのは、出口調査が入念に設計されているという前提があってこそである。この疑問に対する答えで秀逸なものは、ジョージ・ギャラップ(George Gallup)氏によるとされる比喩である。寸胴一杯に作ったスープでも、しっかりかき混ぜてさえいれば、スプーン一杯で味見には十分である、というものである。ツイッターの日本語クラスタでは、立川志の輔氏の話の枕、秋山仁氏による味噌汁バージョンの譬え話[1]が拡散されている。

 味噌汁・スープの味見という喩え話で重要なのは、味噌汁なりスープなりが、あらかじめ、十分にかき混ぜられているという点である。調査対象者(サンプル)が全体の状況を的確に反映していて初めて、サンプルから全体の内容を推定できるのである。調査対象者をいかに選定するか、つまりサンプリングが調査の成否を分けることになる。同様のノリで喩えると、サンプリングがなっていない調査は、飯マズが炒め物を作るときに食材をかき混ぜ続けずに片面を焦げさせた挙げ句、上部だけを味見するようなものである。

 推定値が真の値から一方の方向に、一定程度ずれている状態は、バイアスがあると表現される。手近な人々だけに意見を聞くことは、選択バイアスを作り出す。選択バイアスとは、サンプルを選び出すときに、調査対象集団の一部分だけから母集団を選び出したために生じるバイアスである。出口調査は、投票した有権者の縮図となるように行われなければ、全体を正しく再現できるものにならない。

 バイアスを把握するには、複数回の調査や、ほかの調査主体による調査などと突き合わせる必要がある。新聞社の腕章を付けて出口調査を行うことは、選択バイアスを生じさせる原因になる。それゆえ、新聞社が顕名で出口調査を行う場合には、以前の調査などを利用して、政党別に出口調査結果を補正する必要がある。この点は、別稿で先行研究を紹介した(2016年2月4日)。

 バイアスを避けることができるのであれば、それに越したことはないが、バイアスを避け難いのであれば、その影響を加味して考察することは、社会調査において決定的に重要である。専門家としての評判に対して致命的となり得る誤りを避けるためである。この誤りは、左右の別なく見出すことができる(後述)ものである。時には、この誤りは、悪用されることもある。

CNNの日本語記事と日本の五大紙はサンプリングの拙さに触れない

大統領選の二大候補者の第1回目テレビ討論会について、CNNが報道した電話調査の速報[2]は、クリントン氏勝利を62%、トランプ氏勝利を27%と伝えるが、この記事は明らかに恣意的に作られたものであり、CNNという報道機関の統計リテラシーを疑わせるものである。最初に、英語版の記事[3]には詳しい調査結果が掲載されているが、同じ内容を伝える日本語版[2]にはリンクが張られていない。次に、詳しい調査結果を掲載したPDFファイルには、回答者数が521人である電話調査によることが明記されているが、調査拒否率は掲載されていない。最後に、回答者の41%が民主党支持者、26%が共和党支持者、33%がその他である[4]ことは、この電話調査において決定的な要因となりうるにもかかわらず、この事実は記事本体に示されていない。

 現在、JCAST[5]というウェブメディアを除けば、わが国の大マスコミは、CNNの報道を無批判的に受容している。読売[6]、朝日[7]、毎日[8]、日経[9]、産経[10]の五大紙のいずれもが、どのような調査によってこの結果が得られたのかを報じていない。そもそもCNNは、2012年4月からの5年間、テレビ朝日とニュースに係る独占契約を締結している[11]。このようなニュースに接したときには、ソースに当たる必要がある。

 CNNの記事がアップされた後に、トランプ氏を過剰に同様の拙さで擁護する対抗的な動きが多く作り出された。今回、CNNは「統計戦争」を一方的に開始したとも形容されよう。今回の討論会は、市場を動かしている[12]。『日刊スポーツ』までもが便乗する騒ぎとなっている[13]。CNNの記者や従業員の動機は、丹念な調査報道の対象となって良いであろう。

都知事選に係る「市民調査」もサンプリングがマズい、が...

#以下、やや文体が緩めになるのは、ご愛敬である。

 7月末の都知事選挙の直後からある時期までの間、「修」(@osamu9912)氏は、次のようにツイートしていた。当該のツイートは現在削除されてしまっている。
「市民団体が都知事選の出口調査を、都内5か所の投票所で実施、投票帰りの方に質問「どの候補者に投票?」、結果は次の通り。鳥越候補196人(70%)、小池候補33人(12%)、増田候補23人(8%)、その他候補28人(10%)」=>うわ!事前予想通り、鳥越候補の圧勝となっていますよ!
図:@osamu9912氏のid759706167769640961のツイートの跡(2016年7月31日20時過ぎ)

2016年9月30日深夜の時点では、削除された当該のツイートは、グーグルのキャッシュに残されていたので、そのスクショの一部を合わせて掲示する。スクショに示された時刻は、グーグルのキャッシュの時刻なので、西海岸の時刻と考えて差し支えないであろう。

https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:7z4dVXsJyL4J:https://twitter.com/osamu9912/status/759706167769640961+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&client=firefox-b

 削除されてしまったツイートを信用するとは大概なことを、と考える向きもあろう。とはいえ、最近、ある反原発アカウントが異常な状態に陥っていることが話題に上っている。アカウントが稼働し、類似のツイートが掲示されるという状態は、取扱う話題が話題であるだけに、何らかの原因を見込んでおいても良かろう。アメリカ政府の多数の公式アカウントがクラックされている現在、ツイートが削除された理由には、一定の幅を持たせておくべきであろう。

 「修」(@osamu9912)氏の別のツイートには、以下のように、事前調査に係るものも見られる。「文春砲」の炸裂後であり、同氏が先に挙げた出口調査の数値と類似する傾向であるので、いずれの調査についても、ほかの調査とは著しく異なる、何らかの選択バイアスが働いているものと見て良い。実のところ、本人に問合せすることを除き、かなりの調査を尽くしてみてはいるが、先のツイートとこのツイートの双方の出所は、「修」氏のみによるものである。当人への問合せは、私自身のゲームのフェーズが変わってからでも遅くはないであろう。

 とりあえず今回はここまでとして、次回以降、「市民調査」を二次利用した結果をご覧に入れることとしよう(追記:2016年11月18日)。次回予告として一言だけ。手を動かしてみると、思いもよらない結果が得られるものである。



[1] 立川志の輔 「みどりの窓口」 - YouTube
(アップ:2013年12月06日)
https://www.youtube.com/watch?v=XZtZI5fs6fg

[2] CNN.co.jp : 第1回テレビ討論会、62%が「クリントン氏の勝利」 - (1/2)
(2016年09月27日16:36 JST)
http://www.cnn.co.jp/usa/35089609.html
CNNと世論調査機関ORCが討論会を視聴した有権者を調査したところ、民主党候補のヒラリー・クリントン氏が勝利したとした有権者の割合は62%だった。共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利としたのは27%だった。

[3] Post-debate poll: Hillary Clinton takes round one - CNNPolitics.com
(Jennifer Agiesta, CNN Polling Director, 2016年9月27日16:42GMT更新)
http://edition.cnn.com/2016/09/27/politics/hillary-clinton-donald-trump-debate-poll/

[4] READ: The complete full CNN/ORC poll results
http://i2.cdn.turner.com/cnn/2016/images/09/27/poll.pdf

〔p.8〕
Methodology
A total of 521 adult registered voters who watched the debate were interviewed by telephone nationwide by live interviewers calling both landline and cell phones. Among the entire sample, 41% described themselves as Democrats, 26% described themselves as Republicans, and 33% described themselves as independents or members of another party.
Crosstabs on the following pages only include results for subgroups with enough unweighted cases to produce a sampling error of +/-8.5 percentage points or less. Some subgroups represent too small a share of the national population to produce crosstabs with an acceptable sampling error. Interviews were conducted among these subgroups, but results for groups with a sampling error larger than +/-8.5 percentage points are not displayed and instead are denoted with "NA".
〔直訳すると〕固定電話及び携帯電話の双方に対して調査員が全国的に電話をかけることにより、計521人の成人かつ登録済みの有権者で討論会を視聴した者が、インタビューを受けた。全サンプルのうち、41%が自身を民主党員だと述べ、26%が自身を共和党員だと述べ、33%が自身を党派に属さないか、別の党のメンバーであると述べた。本ページ以降のページにあるクロス集計表は、回答者を重み付けしなくともプラマイ8.5%以下の標本誤差を得ることのできるサブグループの結果だけを含む。インタビューはこれらのサブグループ分類を元に実施されたが、標本誤差が8.5%超となるものについては、表示せず、代わりに「NA(Not Available、該当なし)」と注釈した。

〔p.10〕DemocratIndependentRepublican
Clinton84%41%12%
Trump14%56%86%
Both Equally1%2%2%
Neither1%1%*
No opinion*1%*
Sampling Error+/-6.5+/-7.5+/-8.5


[5] 米大統領選TV討論、ネット世論はトランプ氏「圧勝」 クリントン優勢はCNNだけ : J-CASTニュース
(2016年09月28日19:41)
http://www.j-cast.com/2016/09/28279253.html

[6] 大統領選討論会、クリントン氏優勢…米メディア : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
(ヘンプステッド(米ニューヨーク州)=小川聡、2016年09月28日01時03分)
http://www.yomiuri.co.jp/world/20160927-OYT1T50091.html
 CNNテレビが討論会終了後に行った緊急の世論調査によると、クリントン氏の方がよかったとする人が62%で、トランプ氏の27%を大きく上回った。

[7] 米大統領候補、激しい応酬 世論調査で勝ったのは?:朝日新聞デジタル
(ヘムステッド=宮地ゆう、2016年9月27日13時49分)
http://digital.asahi.com/articles/ASJ9W2K0GJ9WUHBI00H.html?rm=480
 米CNNテレビが討論会終了直後に行った世論調査では、今回の討論会でクリントン氏が勝ったと答えた人が62%、トランプ氏が勝ったと答えた人が27%だった。

[8] 米大統領選:テレビ討論会、初の直接対決 クリントン氏、同盟関係を尊重 トランプ氏、雇用を取り戻す - 毎日新聞
(ヘンプステッド(米東部ニューヨーク州)西田進一郎、2016年9月27日 東京夕刊)
http://mainichi.jp/articles/20160927/dde/001/030/062000c
討論会の勝者を聞いた米CNNの緊急世論調査では、クリントン氏が62%、トランプ氏が27%で、クリントン氏が「勝利」した。
[9] 6割がクリントン氏に軍配 米大統領選討論会  :日本経済新聞
(ヘンプステッド=共同、2016年9月27日14:36)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H68_X20C16A9000000/
#短い記事なので、念のため、引用は行わない。

[10] 【米大統領選】第1回討論会でトランプ氏の核武装容認論の危険性を指摘 軍配はクリントン氏に(1/2ページ) - 産経ニュース
(ヘンプステッド=加納宏幸、2016年9月27日19:43)
http://www.sankei.com/world/news/160927/wor1609270037-n1.html
 討論会後のCNNテレビ世論調査では、クリントン氏が勝ったと答えたのは62%だったのに対し、トランプ氏と答えたのは27%。「明快に見解を示した」「政策をより理解している」との設問でもクリントン氏が2対1で勝り、軍配は同氏に上がった。

[11] テレビ朝日・CNN ニュース独占契約を更新/1982年以来の提携関係をさらに5年延長(Microsoft Word - 120307-CNN契約更新 - 120307-CNNcontract.pdf)
(2012年3月7日)
http://company.tv-asahi.co.jp/contents/press/0229/data/120307-CNNcontract.pdf
契約期間は今年4月から5年間。テレビ朝日とCNNは1982年以来30年間提携関係を続けており、今回が第10次契約です。

[12] 米大統領選TV討論、市場関係者「クリントン氏勝利」  :日本経済新聞
(NQNニューヨーク=神能淳志、2016年9月28日08:25)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL27HQ5_Y6A920C1000000/
クリントン氏に軍配があがったとして外国為替市場ではトランプ氏の攻撃対象の1つになっていたメキシコの通貨ペソが買われ、討論会の直後は米株価指数の先物も上昇した。

[13] ヒラリー氏62% 米大統領選CNNテレビ世論調査 - 社会 : 日刊スポーツ
http://www.nikkansports.com/general/news/1716611.html



2016(平成28)年10月29日修正

ユニバースと母集団との関係を検討した記事(2016年10月14日)の内容を受けて、誤りとなる書き方を、林知己夫氏風の定義により書き換えた。

2016年8月2日火曜日

私が不正選挙を追求し公開するのは国民の良識を信頼するからである

 本記事は、意見表明に過ぎないが、大事なことなので、あらかじめ、現時点で明言しておくことにした。

 不正選挙という方法は、間接民主主義においては、最大の禁じ手である。第一に、良識のある国民の判断を役立たせる機会を最初から失わせるものである。のみならず、不正選挙には、捏造された当選結果が国民の政治参加に対する意欲を失わせる、という波及的効果も認められる。不正選挙を行った者がいるとすれば、その者は、不正選挙によって引き起こされた波及的効果のすべてについて、結果責任を負わなければならない。この一方で、「騙された日本国民も悪い」という論理は、日本国民の選挙結果に対する錯誤を理由に、通用しなくなるのである。皆がアホな為政者を選んだのなら仕方が無いと諦めていた、聞き分けの良い市民も、不正選挙なら容赦しないであろうからである。

 その反面、不正選挙が行われず、多くの日本人が自らの判断で当選させた政治家が、非常に悪い決定を下し、その結果、日本国が失われたという場合を想定しよう。このとき、私は、日本国民が自業自得であると自らが賛成することはしないものの、このように諸外国から非難・揶揄されても、やむを得ない客観的な評価であると受け止める。たとえ、このような亡国に至る道へのマスコミの誘導が酷く、それに国民が乗せられ続けてきたとしても、である。いずれにしても、日本国民は、日本社会の機能が喪失したとき、その結果を受け止めざるを得ないであろう。なお、マスコミの誘導が酷いという仮定を採用したとき、私は、日本国民の結果責任を認める一方で、マスコミの責任者、「寿司友」にも相応の制裁が必要であると考える。また、そのために必要な材料を用意し、公表してきた。しかしながら、私の行為とは関わりなく、各社会集団の機能が正常に発揮されていれば、「マスコミの誘導」は、是正されていたはずである。「マスコミの誘導」という失敗に至る道筋は、マスコミのみによって用意された訳ではなく、各社会集団の不正・構造的欠陥によるものでもある。

 不正選挙ほどではなかろうが、世論調査についても、同様の結果責任に係る構図が存在する。社会調査に関与してきた企業と、関係企業から利益を得てきた学識経験者は、研究活動・社会的活動の内実によっては、政治上の結果責任をも引き受けたことになっているのである。たとえば、RDDがすでに破綻しているという指摘は、一般人からも提起されている。当該手法によって利益を上げてきた企業は、他方で、多くの関係分野の学識経験者と利益相反関係を有する。このとき、RDDにより生じるバイアスの程度を見極めるという目的を有する研究を客観的に実行する環境は、およそ、わが国では存在しない。わが国では、まったく利益相反関係のない他分野の人物が、利益相反関係をまったく有さないという新規性を理由に、科学研究費補助金を支給されるという構造を認めることができないためである。この環境は、RDDに関与する研究分野の学識経験者に対して、新たな社会的ゲームのルールを強いるものとなる。RDDを「従来からのやむを得ない方法」として認めれば、RDDに関与する研究分野の学識経験者は、政治上の結果責任を引き受けたことになるのである。なぜなら、RDDによる方法を単に認めるだけでは、この学識経験者は、RDDによって得られる系統誤差を考慮することなく、おかしな調査結果の流通までをも認可したことになるためである。この陥穽を避けるためには、「○○新聞の○年○月○日の調査の枠組みでは、命題Aは成立しても、同新聞のいう命題Bは成立しない」などと、是々非々で個別命題を検討していくほか、彼(女)が結果責任を逃れる方法は存在しないであろう。しかるところ、外部の者からみて、マスコミ関係者が仲間と見なしているような学識経験者が、各マスコミの社会調査の内実にわたり、逐一、解説を加えているということがあろうか。また、その解説を並記するマスコミがあろうか。このような、利益関係から生じる主従関係を甘受してきた研究者たちは、不作為という種類の結果責任を引き受けてきたことになるのである。ただし、本段落で指摘したことは、あくまで構造的問題であり、ここで私が理想であるかのように指摘した活動を行える研究者という存在は、ほとんど(良い意味での)例外的な個人の状態に由来していることを指摘しておきたい。この状態を正常化する方法は、あくまで構造的方法によるべきである。個人の英雄的献身は、賞賛こそ浴びるべきである。しかし、個人の犠牲の上に上手く機能する社会構造は、およそ、平等からかけ離れた状態なのである。

 私が公開情報に拘るのは、市井の日本人の一人一人の責任の程度を見極めたいためである。公開された情報を、一人一人がその人なりに判断し、社会に対する意見を形成し、(被)選挙権を行使したり、しなかったりという判断を下した結果※が、現状を作り出したとするならば、現代の日本社会は、それを引き受けざるを得ない状態にある。しかし他方で、私には、日本国民の良識が反映されない政治的現状には、重大な構造的要因があるように思われてならないのである。もちろん、不正選挙は、その構造的要因のうち、最も大胆な形で、間接民主主義を破壊する方法である。それゆえに、不正選挙から生じた責任が存在するとすれば、その責任は、不正選挙を企画・実行した複数の人物に帰すしかない。


※ 判断力を有さないとされる比較的少数の人たちについてはどうなのだという話は、考慮しない。この点を考察することは私の仕事ではないと私自身が考えていることをもって、ここでの回答としておきたい。(つまり、判断能力を有さない有権者という存在は、私が不正選挙について考察するときの、モデルの例外である。)

 近年の選挙結果に対して、直感と異なるものを感じた人が多いとしても、ふつうの生活人に、この疑念を客観的に追求する作業を求めることは、無理に過ぎよう。他方、そのような存在を個人的にほとんど知らないが、リタイアした研究者なる者は、原理的には、その作業に従事可能な要件を揃えていよう。団塊の世代以降の研究者であれば、どの分野の研究者であっても、分析に必要なPCの操作能力は、十分有しているであろうし、分析に必要な資機材はほぼ全員が自宅でも所有していよう。ただし、現実には、リタイアした研究者は、自分の研究分野でまだまだやり残したことがあろうから、やはり、不正選挙の可能性を追究することを他人にお任せということになりがちであろう。


 私が本ブログで私なりに提示した疑義は、基本的に、カネ・コネの双方がなくとも、追試可能である。つまり、私の指摘の正しさは、誰でも検証可能である。他方で、この追試作業への社会的な風当たりは、強いものとなることが予測される。とりわけ、権力者が不正選挙によって当選したことについて自覚的であれば、なおさらである。

 しかし、分析そのものが可能であって簡単に公開できるという情報環境は、同じ情報環境についての話ではあるのだが、分析結果を周知する際の情報環境とは、別ものとして扱うべきである。観察者としての分析者が、現実に影響を与えることによって、現実のプレイヤーとして参画することになるためである。分析者の主張した内容が、他のプレイヤーの行動に変化を促すことにより、今後の社会における再現性が確保されなくなる可能性もある。この現実への関与(involvement)は、実学における本質的な問題であるが、イマイチ、私には問題の全体像がつかめていないので、避けて通ることにしよう。

 インターネット上に公開された情報は、それがデファクト・スタンダードとなっているいくつかのサービスにおいて、人為的かつ不公正な形で秘匿されない限り、人々に気付く機会が与えられたために、一定程度、読者として想定されている人物に対しても、何らかの種類の責任を投げかけるものとなっている。たとえば、研究者は、「知らなかった者が悪い」と言われれば、その通りの職業である。ある程度までの基本的な知識や考察についてであれば、研究者にとって、知らないことは、当人の無能力を示す、恥ずかしいことである。「無知の知」は大事であるが、同時に、多くのことを知らないという自覚を有するからこそ、この情報(爆発)環境の下、研究者は、最大限、その環境を乗りこなすよう、努めなくてはならないのである。

 他方で、多数の一般的な人物からすれば、隠されるべき情報が存在するという命題は、肯定されるものであろう。ポルノグラフィやヘイトスピーチやある種の陰謀論は、これら検閲の対象として、全世界的に対象となっているであろう。他方、近年のわが国では、死に係る映像・画像は、多くが自主的な検閲の対象となってきたが、他国では、必ずしもそうでないし、かつてのわが国でも、そうではなかった。隠されるべき情報は、時代と環境と受け手によって、大きく異なるものとなる。

 情報公開と検閲とに係る環境が、基本的には以上の条件からなる形で用意されているとき、不正選挙に係る客観的な分析結果という情報は、いかに扱われるべきであろうか。この問題は、なかなか興味深い話を呼び起こす。しかし、この話を概念上詰める余裕や親切さが私にはないので、私の考える落としどころを以下に述べておこう。現実のサービスにおいて、ある情報が検索システムの基本的な動作から大きく逸脱する形で下位にランクされるとき、その結果は、人為的なものと認められる。この種の人為性が認められない限りは、かつて、宮台真司氏がセキュリティに係る社会設計の要点として挙げたような、「知りたい者なら知ることができる」という状態が実現されていると認めることができよう。

 人が学びたいと思うとき、そのときが学びどきである、というのは、教育学で広まりつつある考え方であるが、同じ事は、不正選挙の是非について、本当のことを知りたいと考える人にも当てはまるであろう。ある物事について、深く知ろうとした人がいるとき、正確かつ権力者にとって不都合な情報であろうとも、無料でアクセスすることができ、かつ、これらの情報の弁別に際して多少の困難を経験することがあっても、その困難さが権力の介入によって無用にハードルを上げられたものでなければ、その情報へのアクセスは、十分に確保されており、自由なものである、と言えるであろう。

 不正選挙に係る情報に限らず、正当な研究(の実施)、正当な言論(の公開)、正当な情報へのアクセスが保証され、実現されていれば、それを利用することが期待されている国民国家の成員には、その状態を活用する一種の責務が生じる。不正選挙という指摘が国民の側から合理的な疑問をもたらした証拠とともに提示されたとき、当該分野に係る研究者にはもちろん、ジャーナリストや、当の選挙によって当選した(はずの)政治家には、この指摘に応える責務が生じていると見ることができよう。この機会を日本国民が活用せず、かつ、その不作為に正当な理由が存在しなかったとき、不正選挙により実現した政権が何を行おうとも、日本国民は、諸外国の良識ある国民から見れば、民主主義をむざむざ無駄にしたと見なされることになろう。他方、現状にあるような、現政権に疑問を呈する多くの日本語サイトが閉鎖に追い込まれ、あるいは、嫌がらせを受けるという状態は、権力の側に責任を転嫁できる状態である。

 日本国民に対して、公平な判断の機会を与え、これを保証することは、ある政策についての権力への批判に対して、権力が合法的かつ正統的な手段で対応したことを示す、消極的な手段となる。しかし、この機会を無用に奪うことは、すでに、権力の側に正義がないことを示す端的で揺るぎない証拠となる。この非対称性は、権力の側にあっては、むしろルールとして厳しいものに受け止められるかもしれない。しかし、横綱相撲を取れるからこそ横綱である、という考え方は、依然として、わが国の標準的な考え方でもある。 疚しいところがなければ、堂々と国民の判断を仰げば良いのである。不正選挙に対する指摘も、同様に処理すれば良い。日本国民の良識は、期待して良いものである。

おまけ(2016年8月2日22時追記)

Stephen Spoonamore Former CEO Cybrinth
https://www.youtube.com/watch?v=Jy1sz-xBxf8

 統計学的手法によれば、非常に洗練された出口調査に対して、結果に2%の誤差が生じていれば、投開票における不正があったと主張しうる。

とSpoonamore氏は説明しているが、これは、(多段の)二項分布を、選挙人団選出時の出口調査への回答者に対して仮定したときのものであろう。

平成28年8月10日追記・修正

文章を分かりやすくするための追記・修正を行ったが、文意は訂正していない(つもりである)。

2016年7月12日火曜日

平成28年7月12日朝刊の18・19歳投票率に係る読売記事は著者の無知を示す

#以下は、誤報の中からでも、それなりに妥当な結論を引き出すことができるというオシントの一例を私の著作として書き貯めるために用意した文章でもある。あまり整理されていない。あしからず。

 平成28年7月12日の読売、朝日、日経は、いずれも朝刊で、18・19歳投票率の高さについての記事を示している。各紙とも、総務省の調査に係る発表を受けて記事を制作したようであるが、総務省のウェブサイトの「報道資料」のフィードでは、当該資料は公表されていない※1。三紙のうち、日経の記事は、全年代の投票率が平均的な値を示した市区町村を全国から抽出して年代別の投票率を計算した旨を記載しており、唯一、この調査内容の正当性を検討する内容を含む。これに対して、読売の1面記事は、調査の概要について、次のように紹介するに留まる。
 調査は、47都道府県それぞれから、おおむね4投票区を抽出し、18歳、19歳の投票率を調査した。抽出された18、19歳の有権者数は計1万1480人で、当日有権者数の0.01%。18歳より19歳の投票率が低い理由として、大学進学などで親元を離れながらも、住民票を移さず投票にも行かない人がいるとの指摘もある。
『読売新聞』(2016年7月12日東京朝刊)「18歳51%、19歳39%/参院選投票率 抽出調査」1面14版


 問題は、読売新聞の3つの記事担当者(記者およびデスクとみなすことができる)の誤解に由来してか、いずれの記事にも、抽出調査であるために単純に比較できないという趣旨の文言が含まれていることである。読売は、独自に都道府県選管に問合せしたとされるものの、その作業は、両記事における記述の正確性に反映されていない。2面では、
【...略...】抽出調査のため、単純な比較はできないが、18歳、19歳とも全体の投票率よりは低かった。
『読売新聞』(2016年7月12日東京朝刊)「主権者教育 一定効果/出前授業や模擬授業/18歳投票率」2面14版
と地の文の冒頭の段落で述べており、38面の最後の段落では、
 各都道府県の調査はサンプル数が少なく、数字は必ずしも県全体の傾向を反映しているとは限らないが、市町村職員中央研修所客員教授の小島勇人さん(64)は「主権者教育の有効性が証明された。18歳選挙権がメディアで注目された上、各高校で選管による出前授業や模擬投票などが積極的に取り入れられ、関心が高まった」と分析。【...略...】
『読売新聞』(2016年7月12日東京朝刊)「18歳投票率 際立つ高さ/19歳と比較/「教育で関心高まる」」38面14版
と述べている。


 公平を期すためにも、私の解釈をここで明示しておく:日経の紹介した総務省の方法では、投票率の推定値は、全国の(真の)値についての不偏推定値とはならないものの、18歳・19歳に対する主権者教育の効果は、否定できない程度に表れたと見ることができると言える。文部科学省は、ほぼすべての高校で主権者教育を実施したことを報告※2しており、読売2面記事もこの報告を紹介している。近年の高校進学率は9割強に達する※3ために、睡眠学習にせよ、大多数の18歳が主権者教育の対象となったとして良いであろう。18歳と19歳で表れた10%の差や、20代との差は、19歳の主権者教育の受講率を把握せずとも、18歳に対する主権者教育の効果を主張して良い桁の差である。


 読売記事は、抽出調査であるために単純な比較が行えないとしているが、この理解は誤りである。抽出方法が平均値に近い選挙区を4区選択したというものであるために、交絡要因を否定できない(積極的に肯定する材料もないが)のである。ここに見るような読売執筆陣の誤解は、複数名の関与したことが認められる記事に表れたものであり、当該部門で統計学の知識が必要とされることが明らかであるにもかかわらず、この品質で世に出されたものである。複数名によるチェック機能が働かないという事情を鑑みれば、読売執筆陣の無知は、おおむね、わが国の文系の大学卒業者のデフォルト状態であると見なすことができよう。体験的には、間違いなく、30代以上については該当する状態であると断言できるのであるが、これは個人的体験に留まるものである。他方、日経執筆陣には、少なくとも1名以上の社会調査に対する正確な理解を備える人物がいると考えて良い。体験的には、社会人の数名に一名程度は、日経の記事が良記事であり、読売の記事が誤解に基づくものであることを理解しているとみて良いであろう。決して多数派ではない、というところがポイントである。


 今回の読売の記事は、吐かなくて良いウソを吐いて、記事のほかの内容にまで疑問を持たせるものであるが、昨日の意図的な「誤報」と共通の(職場)環境から 生じたものでもある。私の興味の焦点は、「読売の記事が低品質なものである」という事実そのものに対して向けられている訳ではなく、「読売の記事の水準が 許容され、この程度の理解が再生産・維持される社会構造」にあり、「読売の調査担当者の努力(ということは、都道府県選管の担当者の時間的リソース)が相 当消費されているにもかかわらず、そのリソースとは無関係に記述された内容によって、記事全体の印象が台無しにされているという状態」にあり、「この残念 な状態は、巡り巡ってわが国の国民益(「国益」すら)を毀損しているものの、社会的に(相対的に)僅少なリソースを投入するだけで、正確な知識の普及とい う観点からは、劇的な改善が望めるのではないかとの予想」にある。

 以下、蛇足。読売記事の執筆には、人件費だけでも、ざっと数十万円がかけられていると見ることができる。にもかかわらず、統計学に係る誤解を招いたという観点からは、価値はむしろマイナスである。ウソかウソではないかという二択に限定すれば、ウソであるとできる情報を大規模に(公称1000万部)流通させたことになる。いったん大規模に流通した学問上のウソをデバンクするためには、多大な社会的コストを要する。しかも、このウソは、読売新聞の隠された意図を実現する上でも役立たないものであるどころか、私のような疑り深い読者に付け入る隙を与えるものでしかない。この点、今回の種類の情報に正確性という観点から適切な価値を発生させるためには、たとえば、「大学等の高等教育・研究機関におけるリエゾン/コンシェルジュ(実際の名前をど忘れしている)を普及させて利用させること」や、「大手紙ならば、社内で、この話題なら、この専門家に聞けと紹介できる資料室を設置すること」や、「統計の専門家がセクシーな職業であるということを紹介するだけでなく、新聞社として実現すること」を通じて、正確さが保証されている情報を普及させた上で、記事に反映できる仕組みが必要ということであろう。ただ、体験的には、社会におけるほかの情報整理機能として、日本の図書館のリファレンス機能は優秀だと考えるものの、紹介先の情報そのものの真偽を担保する仕組みが薄弱であるために、その優秀さが結実しないことが生じているようにも見受けられる。紹介された情報自体が役立たない理由として、あえて原因を列挙すれば、研究者や学識経験者が建前と本音を使い分けたり、金銭的な利益に左右されていたり、社会的な影響を忖度したり、あるいは低度の知的水準に留まるために※4、正確ではない知識が産出し発信しているというものが挙げられる。


 正確な知識へとリダイレクトする「知のコンシェルジュ」の不在に対して、Google検索が発展しきった現在、ペーペーの記者が一人で興味のある話題を検索し、トップに返される「専門家」に対してコンタクトできる状態が生じている。知の平等という観点からは、この状態は、きわめて喜ばしく、私もその恩恵に深く与っている。しかし、この状態は、「情報が正しいこと」を判断基準に据えるなら、(「真善美」の「真」を重視する規範的観点からは、)適切に利用されていない。情報生産の正しさを担保するものは、Google検索そのものではなく、結局は、Google検索結果に示された情報の正しさを嗅ぎ分ける検索者のセンスである。低水準の記事を世に問うて憚らない現在の読売新聞が公称部数でトップであるという事実(公称部数がトップであるから無茶ができるという関係もある。)は、Google検索の基本をなすベイズ統計が「ウソも100回繰り返せば事実となる」というゲッペルス?的な情報爆発に対して、一定の脆弱さを有するという事実と整合的である。ただ、日本語のGoogle検索では、スパムがトップに出るなどの弊害を避けるためか、人為的な作業がそれなりに強烈に作用しているようである。すると、その作業に関与する人物の知的水準は、わが国の情報流通の場において、決定的な役割を果たしていることになる。



※1 念のため、Googleカスタム検索も実施したが、見つからなかった。霞ヶ関のマスコミ優遇は、デフォルトである。資料が見つからないことは、このデフォルト状態を示すものと推認しても構わないであろう。今日の午前中あたりに公表されるのではなかろうか。

※2 「主権者教育の推進に関する検討チーム」最終まとめ~主権者として求められる力を育むために~:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1372381.htm

※3 高等学校教育の現状 - 1299178_01.pdf
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/09/27/1299178_01.pdf


※2 これら列挙した原因は、互いに無関係というものではない。

 『朝日新聞』(2016年7月12日東京朝刊)「18歳51.17% 投票率 19歳39.66%/全体を下回る」4面14版
 『日本経済新聞』(2016年7月12日東京朝刊)「初の18歳選挙権 課題残す/投票率、全体より10ポイント低い45.45%/18歳に限ると51.17%」4面14版