2016年9月10日土曜日

『新ベンチャー革命』の「戦争屋」の定義について(メモ)

米オバマ大統領が安倍首相の5月連休中の訪露を止めるように要請したという電話会談内容がなぜ、リークしたのか:露プーチンは常にジャッカルに狙われているはず ( その他国際情勢 ) - 新ベンチャー革命 - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/35704564.html

多くの「陰謀論」的な見方をするブログ主の中で、今までに紹介する機会を逸してきたが、参照に値する著述家として、『新ベンチャー革命』の「H.Y.」氏(『ベンチャー革命』の山本尚利氏であろう)を挙げることができる。同氏は、もっぱらマスコミを情報源とした、オシントをとりまとめる際の見本のような記事を継続的にアップし続けている。日米関係を中心とする国際関係について継続的に言及するブログとして、参照に足るものである。ただ、「H.Y.」氏の公開情報の捌き方が適時かつ的確なものである一方で、ほぼすべての参照先が日本語のマスコミ情報に限定されているという点については、違和感がある(、と指摘する程度に止めたい)。ともあれ、『新ベンチャー革命』は、日本語情報を参照していても、基礎的な理解がしっかりしていれば、的確に情報を読み取ることができるという範を示すブログであると言えよう。

 ところで、戦争屋についての私の定義(リンク、再度後述)は、「H.Y.」氏のものも参考にしていたはずであるが、文章作成の際、系統的なメモに依拠していなかったため、言及し損ねている。今回、まだまだ準備が不十分であるが、意識に上っているうちに。今まで「H.Y.」氏の定義を直接参照してこなかった理由は、私が閨閥についての知識を十分に蓄えることなく、同氏の定義について言及することによって、結果として大きな誤解を提示しうる虞があったためである。具体的な定義は、上掲リンクを参照されたい。私が「H.Y.」氏の定義に言及していなかった理由は、広瀬隆氏の『赤い楯』(上・下, 1991, 集英社)を「H.Y.」氏のブログよりも先に参照しており、この広瀬氏の作業に対して「H.Y.」氏や古歩道氏の定義が軽率に過ぎるように見えたためである。

 一人の人間によるひとまとまりの行動は、その人物による行動である一方で、必ずしも、一連の目的に即して実施された行為である必要はない。われわれは、相当に高度化した現代小説や、多数の隠喩が散りばめられたハリウッド映画に親しみ過ぎるようになったために、ある実在の人物による一連の行為が、その人物の成熟期において円環を成すことを期待し過ぎるきらいがある。他方で、私は自身の症状について自覚的であるが、世の中では、ブートストラップ的(、あるいは場当たり的)な思考しかできない種類の人々の方が圧倒的多数であろう。人生において、何事かを成すことを目的に、子どもの頃から一貫した行動を執り続けてきた人たち(の一部)が成功者として有名になっていることは確かであるが、人類の人数から見れば、例外に属すると言えよう。これらの成功者の行動には、連関性が認められるかも知れないが、二世・三世と揶揄されるような人物らは、多くの人間と同様に、場当たり的で快楽主義であるからこそ、先代の名に相応しくない行動を取ることができていると見ることができる。

 広瀬隆氏が『Who's Who』を基本に提示した閨閥の広がりは、およそあらゆる業界のトップ人脈を網羅するものとなっている。この現代における事実は、戦国大名や西洋の貴族たちが婚姻を通じて安全保障体制を構築したという過去の史実によっても肯定される。広瀬氏の提示した方法論は、現代でも有用である。とはいえ、今現在の社会動向を理解するためには、(新書版はあるが、)25年後の現在へと情報を更新する必要があると同時に、IT人脈という後追いしにくい人脈にも切り込み、BRICs時代をふまえた国際的な広がりを見る必要があろう。現在の中東問題を理解するためには、中東と東欧の人脈についても把握する必要があろう。

 インターネットとSNSの普及によって、誰もが、『Who's Who』編集者に近い水準の作業に取り組むことができるようになってはいる。他方で、この種の編纂作業のマネタイズが困難になり、一定の信頼できる情報源が失われつつあるという、皮肉な状況が生じつつある。この空隙を埋めるものとして、多数のボランティアによって、ある事件についての芸能界人脈図などが『2ちゃんねる』などを通じて作成されてもいる。しかし、その後追い作業は、真犯人の介入の余地が認められるだけに、慎重に行う必要があろう。タレント年鑑などを参考に、一から相関図を作り上げる場合よりも、誤誘導に惑わされたために、正確な理解に至るまでに余分な時間を要する場合もあり得よう。

 ところで、親戚関係にある二人の関係が必ずしも良好である必然性はないし、閨閥以外の社会的紐帯の方が強い場合もあり得よう。衆道により強化された結社への参加は、その一例として考えることができよう。このとき、特定の民間人をその言動に拠らずに名指しして、特定の結社の頭領であるかのように定義することは、なかなかに困難な飛躍である。「H.Y.」氏による「戦争屋」の定義は、結果としてかなりの正確な考察を生んでいるにせよ、やはり、飛躍があるとは言えるのである。とりわけ、ベンチャー革命流の「戦争屋」を代表する一族の中に確執があることを「H.Y.」氏が伝えている以上、この確執から生じる「戦争屋」に含まれうる人物らの行為は、その一々を検証する必要が存在するのである。

米国戦争屋ボスの研究(その6):もてる資産を人心掌握に活用する ( アメリカ情勢 ) - 新ベンチャー革命 - Yahoo!ブログ
(新ベンチャー革命2010年12月24日 No.254)
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/21510521.html

いよいよ米国戦争屋の覇権交代が実現するのか ( アメリカ情勢 ) - 新ベンチャー革命 - Yahoo!ブログ
(新ベンチャー革命2010年3月6日 No.84)
http://blogs.yahoo.co.jp/hisa_yamamot/10034656.html


 この観点から見ると、「戦争屋」についての過去の私の定義は、更新する必要がある。閨閥や組織内の対立をふまえた上で、一部の人物に責任を限定するものとなっていないからである。ある人物の責任を、人類の発展にとって妨げになる行為に限定して問うものともなっていない。それに、定義が冗長である。
【...略...】「戦争屋」とは、軍隊や軍事産業に所属する人物のうち、無用な戦争や戦争への準備を通じて、過剰な私益を積極的に追求する目的を共有する人物らの深い交友関係・家族関係を指すと同時に、この関係に含まれる人物らを指す。従来の「軍産複合体」が退役軍人などの「弱い紐帯」による産業の裾野までも含むように、広義に用いられることとは、異なる概念である。国民の不幸を防ぐために、警察や軍隊は必要である。しかし「戦争屋」は、士業に要求される倫理を無視する連中であり、国民の差別意識を助長することにより無用な対立を画策し、低質な装備を高値で両方の陣営に供給し、不当な利益を独占的に享受することを目的として積極的に活動する。「戦争屋」の具体的な例として、経済団体連合会に所属する企業を挙げることができ、彼らの政治献金は、このような文脈でとらえられ、批判的に検証される必要がある。「戦争屋」とそのほかの軍事産業関係者を峻別する基準として、マッチポンプを図ったことがあるか、というものを挙げることができる。【...略...】
以上をふまえて、「戦争屋」の定義を再度行い、本稿を終える。

 「戦争屋」(warmonger)とは、政治家、官僚組織、軍隊、軍事産業、金融業に所属する高位の人物や、それらの人物と家族関係や深い交友関係を有する人物のうち、無用な戦争の遂行や戦争への過剰な準備を通じて、私益の追求を計画し、あるいは活動に従事、協力したことのある人物たちを指す。戦争屋であるか否かの判定基準は、選良や士業に要求される倫理を無視して人命を損なう決定を下したことがあるか、というものである。この判定基準に抵触する戦争屋の具体的な手段には、マッチポンプとなる事件を企画・実行する、国民の差別意識を助長することにより無用な対立を画策する、低質な装備を高値で両陣営に供給する、不当な利益を独占的に享受することを目的として政治的活動に従事する、というものが挙げられる。

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