2016年9月3日土曜日

わが国の言論・学術界が不正選挙を考究しないことの帰結を予測する(準備をしよう)

#本稿では、いちいち断るのが面倒くさいため、不正選挙は、基本、存在するものとして読んでいただいて構わない。存在すると考える理由は、過去の記事を参照されたい。不正選挙は、私を含む一般人には、具体的に誰が企画・実行したのかを同定することは不可能ではあろう。しかし、一部の選挙では、出口調査に調査設計上の失敗があるにしても、シンプルな推測統計学上の知識を活用すれば、起こり得ない程度の得票数の増加が見られるなどといった、不可解な状況があることも事実である。不正選挙の存在を否定したい者は、好きなようにすれば良いが、本稿は、一般人ではない者が徒に否定することを戒め、その道行きを予測する(ための準備を行う)ものであることに注意されたい。




 アメリカ政府で経済政策担当の財務次官補を務めたことのあるポール・クレイグ・ロバーツ氏は、今年の米大統領選挙に係る不正選挙の虞について、
アメリカ人が、責任を負わない権力の勃興を許してしまった事実から、我々が知るべきなのは、国民による職務怠慢のかどで、アメリカ合州国民が有罪だということだ。アメリカ人は、責任を負う政府を必要とする民主主義を維持しそこねたのだ。 ※1
と述べている※2(訳はリンクによる)。不正選挙を含む不正の蔓延は民主主義を健全に機能させようとする国民の努力が不足していたからである、とロバーツ氏は理解しているのである。この指摘は、アメリカ国民にとって、結果責任を問う、厳しいものである。とはいえ、賭けられているものが「核戦争の実現」とすれば、リベラルな米国民は、本来、身につまされるものがあるのではないか。

 他方、わが国では、不正選挙とその害は、大部分の国民に認識すらされていない。仮に、ロバーツ氏の檄が功を奏して、戦争屋の残党がアメリカから敗走したとすると、彼らが目指す先は、わが国くらいしか残されていないことになろう。ただし、その撤退は、単に時間稼ぎにしかならないであろう。これらの経緯から生じる結末として考えられるものには、わが国が「戦争屋」用のゴキブリホイホイとなるというものがある。本稿では、今までの記事とやや重複するが、この点を再度検討しておくことにしよう。

 以前の記事(リンク)で軍産複合体と戦争屋とを区別した理由は、広義のセキュリティ産業を構成しうる多数の人物たちの内で、同国人に対して真に邪悪と呼ばれうる行為に手を染めた者の割合がそこまで高くはないであろうことが予想され、責任の軽重に応じて、これらの人物たちを区別する必要が認められたからである。真に邪悪と呼ばれうる例は、たとえばインテリジェンス業界のルールを破り部下を売り渡した高官であり、予備選に係る疑惑を内部告発しようとしていた一般人を問答無用で射殺した暗殺者である。学術的な知見を幾度も歪曲して多数の国民を苦しめる政策を支持する意見へと誘導した学術研究者であり、いかがわしい政府高官向け接待施設を擁する企業の会長でもあるという存在も、この者が日本人であるとすれば、われわれにとって邪悪であると呼べるであろう。戦争屋の具体的な数字は、現在のトルコのように、今後の世界情勢に応じて詰められていくであろうが、アメリカにおいては、数千万人のセキュリティ関係者のうちの数万人程度となるのではなかろうか。(#淡赤色部分は2016年9月6日追記)

 邪悪という表現は、誤解のないように指摘しておくと、私自身が相手をそのように理解していることを否定するものではないが、それよりも、国民一般の邪悪なものに対する嫌悪感が社会を変化させるであろうことを重視するものである。ある事象や人物を邪悪とみなす人々の感情は、大きく世界を動かす原動力となる。おおよそ、「西洋的」なマスコミが好意的に報道した各国の「カラー革命」は、精密に制御されていない多数の人々の感情により加速したものであるが、おおむね、負の結果しかもたらすことしかなかったようにも見える。それでも、ここ数年の間に、世の中は、「カラー革命」の失敗を経て、大きく変わり始めてきたように見える。その原動力は、やはり、人々の好悪という感情であろう。

 エリートとみなされる地位にある者は、現代の民主主義国家における要請である「国民の生命・健康・財産の保護」という本来のプリンシプルに違背した決断を下した場合、結果の出目を問わず、後世の一般国民には邪悪な決定を行ったと見なされるであろう。権力者にとってのプリンシプルが「権力の維持」となりがちであるということは、時代と地域を問わずに、一般庶民に気付かれていることである。この点の困難さについての理解があるがゆえかは不明ではあるが、トルコのエルドアン大統領の対米・対露関係と国内政治における変節に対して、日本のマスコミは見解を決めかねているように見える。しかしながら、多少なりともマキャベリスティックな見方に立てば、彼個人への制裁が単に順序の問題に過ぎないことは、ほとんど自明である。曲がりなりにも機能する独裁政権の下で、(どこの手の者かは分かりかねるが)自称イスラム国に繋がりかねない手下の責任がまず問われるであろうが、最後には、自称イスラム国の石油輸送キャラバンと深い関係を持つとされる息子や、トルコにおける混乱の最終責任者であるエルドアン氏自身が、合法的あるいは国際政治上許容されている手段ですげ替えられるという段取りが予定されているのであろう。なお、知識人のプリンシプルは、自身が正確と思える知識を産出して皆に提示することであるが、必要に応じて現実にも介入する必要があろう。

 戦争屋は、容易に国境を超えて不正に蓄財し、いざとなれば海外に逃亡できる存在であるという点において、その手下と見なされうる大多数の「軍産複合体の兵士」とは異なる存在である。わが国の大企業において、不正に従事した人物たちには、自分自身では気乗りしないものの、仕事だからという理由で平時における悪事に手を染めたという者も多いであろう。アフガニスタンからリビアまでの広範な地域における軍産複合体の戦争犯罪も、同様の事情を含むであろう。軍産複合体は、(1)利得を独占するごく少数の戦争屋と、(2)これらの戦争屋に指示・脅迫・懐柔されるか、あるいはその存在すら知らずに流れに棹さし、仕事がある・食っていけるなどの消極的な形式での利得に与ることができた大多数の成員からなるものとみなすことが適当であろう。イラク侵攻等における民間軍事企業の悪行の数々も、そもそも子ブッシュ政権のあからさまに誤りであった決断がなければ、生じなかったことに注意する必要がある※b

 アメリカの戦争屋エリートは、イラク戦争以降の邪悪な決定の数々によって、アメリカを危険に追いやったのであるから、早晩、アメリカから逃亡する必要に迫られるであろうが、その先は、おそらく日本となるであろう。いわゆるファイブ・アイズのほかの国は、英語圏という言語・法的環境のために、第一の選択肢となりうるが、戦争屋の敗北時にはアメリカ本国と同調するであろうから、逃亡先として明らかに不適格である。ほかの候補には、たとえばスイスなどが挙げられようが、EU諸国に囲まれ、銀行も顧客の秘密を固守することがなくなって久しいため、人命を徒に奪うことを良しとしてきた戦争屋にとっては、隠れ家として不充分な印象が拭えない。ウクライナや東欧諸国では、ロシアの実質的な影響力から逃れることができない。小さな国は、基本的に安全ではない。大国同士の相互抑止を期待できなくなる上に、一国のヒュミントが小さくなる。他のより大きな国にヒュミントを求めることができる位であれば、そちらの国を頼るであろうからである。

 現在の日本では、高機能な空調施設を有する邸宅と直営農場を札束で調達でき、一般の日本国民が望み得ないような安全な生活を送ることができる。日本国内の対中好戦派を上手く制御できれば、突発的かつ決定的な戦争状態に陥ることなく緊張状態を維持し、日本国民が本来必要としていた程度を大きく上回る軍事負担を日本国政府に押しつけることにより、当座の生き残りを図ることができる。先進国であり、国内の複数地域において上質のサービスを享受できるという条件を付せば、今のところ、日本は筆頭候補となる※c。海外からの刺客は、特に極東アジア系の外見のものでなければ、警察がかなりの程度ブロックしてくれるであろう。何より、当座のところは、在日米軍の存在という現実と独立国である日本という建前との兼ね合いが戦争屋を逮捕する際の日米当局の話合いを難しくしてくれる。もっとも、この点については、日米当局の関係者が各自の役目の本道に立ち戻り、粛々と仕事をすれば、かつての仲間たちからは裏切り者扱いされるかもしれないが、戦争屋たちは簡単に処理されてしまうという図式(が、戦争屋にとっては虞)がある。

 ただし、戦争屋が逃げてきたとしても、わが国が第二次世界大戦の敗戦国であるという事実は、わが国が戦争屋の安住の地になり得ない最大の要因となり得る。カイロ宣言、ポツダム宣言及びサンフランシスコ平和条約によって形作られるはずの現在の大多数の日本国民の領土に対する理解と、同じ材料から組み立てられたはずの戦勝国の理解との齟齬は、日本の再占領という、日本国政府及び日本国民にとっての危険を招来しうる余地を残すものである。現在までの間、同盟国でもある戦勝国アメリカの影響力が行き及んでいたからこそ、わが国と中国とがそれぞれに指摘する領土問題は、比較的局所的なものに限定化されていたと見ることも可能である。この状況下において、戦争屋が逃げ込み、その影響力を政府に対して行使し続ける日本国という新たな局面が生じたとき、これに対して、米・中・露の三か国が共同して圧力をかけるなどということはあり得ないと考えることは、世界が帝国主義的な様相を強める昨今、かなり楽天的な姿勢であると言わざるを得ないであろう。歴史修正主義者が批判するごとく、東京裁判が公正とは程遠いものであったとするならば、何らかのイベントを契機として日本が再占領され、戦争屋とわが国の歴史修正主義者たちがまとめて始末されるというシナリオは、歴史修正主義者を含めた日本国民全員にとって、現実に生じうる脅威である、ということになる。

 加えて、わが国における「第二の敗戦」の進展するペースは、おそらく、戦争屋の予想を超える速いものとなっている。先週末のNHKの番組『解説スタジアム』(トップリンク)では、原発の経済的価値がNHK内の「寿司友」の解説委員によっても否定された※dという。この話は、戦争屋の米櫃に砂が撒かれたようなものであるが、おそらくは、アメリカ国内の動きの余波でしかない。NHKの解説委員ら全員が自らの良心とプリンシプルに拠って能動的に立ち上がったということではなく、アメリカの国益を追求するアメリカの愛国者に指示されて、今回の放送が成立しただけであろう※e。しかし、NHKの解説委員らの言動は、毒を以て毒を制するものに過ぎないにせよ、日本国内の勢力だけでは、日本国内における戦争屋のプロパガンダが機能しなくなる虞を戦争屋に対して明示したものと言いうる。

 ここで、「第二の敗戦」という事態をあらためて定義しておくと、「日本人の多くが考えていたよりも、日本社会が遙かに悪い状態であったことが露わになること」というものになる。「第二の敗戦」は、日本と他国の具体的な戦争により日本が負けることから生じるものに限らない。日本国内における社会活動がいったん停止状態に陥ることなどを通じて、または、より穏当な方法を通じて、日本人の大半が状況を知ることが、「第二の敗戦」の基本的な要件である。「第二の敗戦」は、事実※fというより、事実などをきっかけとして日本人の現状認識が変わるか否かの問題である。

 「第二の敗戦」が現実化したとき、国際社会は、少なくとも日本国からは正当な賠償を要求するであろうが、日本国民一人一人に対してもいかほどの責任を求めるのかは、不正選挙に対する日米両国民のそれまでの反応に大きく左右されるであろう。この見通しは、かなり多様なシナリオの結末に共通するものであると考えられたものである。シナリオの根幹は、以下の二点の箇条書きに集約されるため、箇条書きのまま示すこととしよう※g
  • アメリカ大統領選挙の結果により、アメリカの対日政策が決定される
    • トランプ氏の共和党なら「第二の敗戦」加速(ただし、敗戦時の衝撃小)
      • 福島第一原発事故の解決への圧力増加
      • 在日米軍の再編成(トモダチ作戦訴訟の対日利用)
      • 日本国内の不正選挙に対する影響あり
    • クリントン氏の民主党なら「第二の敗戦」減速(ただし、敗戦時の衝撃大)
      • 福島第一原発事故の解決への圧力変化なし
      • 在日米軍に変化がないように政策管理
      • 日本国内の不正選挙への影響なし
    • 第三のケース?何それ美味しいの?
      • 第三のケースでは、アメリカは国際社会で尊敬される地位を回復できる見込みがなくなる。アメリカのセキュリティ関係者は、これを全力で阻止するはず(であると期待したい)。
  • 日本国内のメディアがアメリカの対日政策に追従し、忖度することにより政策を加速させる
    • トランプ氏の共和党なら報道統制を解除する方向へ
      • 福島第一原発事故の正確な現状が報道される
      • 米国では不正選挙に係る調査報道が正統的な地位を得る
    • クリントン氏の民主党なら報道統制の維持
      • 日本の対中・対露関係を悪化させる報道が企図される
      • 不正選挙に係る話は米国のものといえども日本ではトンデモ扱いが続く

 SNSにより選挙の候補者が直接聴衆に訴えかけることが可能となった現在、不正選挙という話題は、主要メディアだけでなく、SNSによる主要候補の動向にも左右される状態となっている。アメリカでは、共和党候補であるトランプ氏が不正選挙に言及し、これをヒラリー・クリントン氏が否定している。日米両国のマスメディアは、従来、不正選挙を陰謀論に過ぎないかのように扱ってきた。これに対して、トランプ氏は主要メディアこそがアメリカの民主主義に対する敵であると公言しており、このことは、主要メディア自身にも認識されている。これに対して、わが国では、先の参議院選挙の東京都選出候補の中では三宅洋平氏が、都知事選では犬丸勝子氏が、公然とSNSにおいて不正選挙に言及しているが、わが国のマスメディアからは黙殺された状態にある。

 アメリカにおける不正選挙についての指摘は、大統領という大きな権益とも相俟って、やや捻れた構図を生み出しているが、少なくとも、多数のアメリカ国民に電子投票機に対する警戒心を抱かせたものと思われる。というのも、マーク・クリスピン・ミラー[編著](2008=2014). 『不正選挙』, 亜紀書房.の邦訳版は、共和党寄りの電子投票機器メーカによって、一貫して民主党への票が共和党へとすり替えられたことを主張しているためである。しかし、同書の指摘とトランプ氏の主張は、本ブログではおなじみの概念となった『国際秘密力研究』の「菊池」氏の指摘する「両建て戦術」をふまえれば、ともに正しいものであることを容易に認めることができるものである。つまり、クリントン氏が今回のアメリカ大統領選挙において「不正選挙」を用いる集団の代理人であるという考え方は、トランプ氏とミラー氏らの主張をともに両立させるものとなるのである。なお、ミラー氏は、民主党の予備選においてバーニー・サンダース氏の票が盗まれた可能性を指摘する記事を自身のサイトに掲載させている。サンダース氏の票が盗まれたという指摘は、トランプ氏の主張と何ら矛盾するものではない※h


 なお、『不正選挙』には、その方法として、選挙人登録における不正や機会の不公平さ、投票所の設置や投票機の設置台数に係る選挙管理委員会の恣意的な変更、選挙活動における経費の高額化、選挙運営の民間委託などが挙げられているが、何よりも、連邦投票支援法に規定された電子投票機こそが、最大の問題であると見ることができよう。わが国においても、ほかの点に問題がない訳ではないことを示す証拠があるものの(リンク)、電子投票機と民間委託との組合せこそが最大の要点であると言えよう。

 トランプ氏やロバーツ氏やミラー氏のような、アメリカの異なる党派に属しつつも、マスメディアによらずに生きてゆける有力者が、ともに不正選挙の可能性と危険性を論拠とともに提示している一方で、マスメディアの力によらなければ生きてゆけない報道人が不正選挙などないと一蹴している。これは、明らかに捻れた状態である。多数の報道人の過去の意見は、十把一絡げにGoogle検索で得られるので、これらの意見は省略することとしよう。こうした折に、ブルームバーグは、アンドレ・ターター氏によるトランプ氏のツイッターを分析した結果を掲載しているが、ターター氏によれば、FOXはトランプ氏の軍門に降ったかのようであるという※3。FOXは、共和党エスタブリッシュメントを支援するために設立された報道企業であり、マスコミの中では新参者であったが、トランプ氏に批判され、このたび、飼い馴らされたということになろうか。いずれにしても、マスメディアのオーナーが誰であるのか、という点に立ち入ることのない考察は、賢明ではない。情報を分析するとき、「何の利益があるのか」※4を問うことは、基本であろう。

 不正選挙という概念が一般に浸透していないという事実は、我々が自身の見解を形成する際に、いかに周辺情報が、つまりはマスコミや学識経験者の影響力が大きいかを示唆する材料となっている。「権力者」にとっての目的が権力の維持になりがちであるという指摘は、単独で国民に提示されれば、そのとおりであるということになろう。話者がマスコミであろうが、ブロガーであろうが、教師であろうが、ジョン・アクトン卿の「権力は腐敗する。」※5という言葉は、単独で提示されれば、無理なく受容されるであろう。この命題から「次の選挙に勝つために、不正な方法を含めて、権力者はできるだけの策を講じる」と言われることに対しても、情報が単独であるならば、人は同意できるであろう。しかしながら、マスコミやら不正選挙が表になると困る人たちによって、自国の選挙システムについての瑕疵などあるはずもないという言説が大量に提示されていると、不正選挙の存在を論理的に示す言説を前にしても、人は、不正選挙が存在しうるという説を、自分で考えた上で自身のものとして採用することに踏み切れないであろう。人は、好きこのんで少数派の意見を採用したくはないのである。とりわけ、少数派の意見がエア御用学者などによって否定されているとき、専門家でもない人々が少数派であろうと正しいと思われる意見を採用することには、かなりの難しさが認められよう。

 仮に、わが国においても社会的分業が望ましい形で発揮されていたとすれば、不正選挙の蓋然性は、志ある学識経験者によって説得的な論拠とともに提示され、その説がほかの学識経験者を含む知性ある国民によって検証された後、大多数の国民に受容されて有効に監視されるという経路を経て、ほとんど存在し得ないものとなっていたであろう。この点、学識経験者やマスコミの沈黙や誤誘導の罪は、一等重いものとなる。政治学者を始めとする社会科学系の研究者が不正選挙の存在について沈黙し、マスコミも不正選挙の可能性を追及しなかったことは、近い将来において、彼らの存在意義が問われることの原因にもなろう。ただし、彼らの中で不正選挙の存在を解明し提示した者がいたとしても、その内容を精査して肯定できるだけの読者層を期待できなかったという弁明には、聞くべきところもあろう。要は、今までであれば、猫の首に鈴を付けるのが誰であったのか、というイソップの寓話と同様の構図が成り立ち得た訳である。

 この点、トランプ氏の指摘は、不正選挙の危険性に脚光を浴びせる上で画期的な役割を果たしたものと言うことができる。トランプ氏の資金力と発信力が、不正選挙という重大かつマイナーな話題を第一線のヘッドラインに載せることを可能にしたと言えよう。ロバーツ氏の経歴はむしろ共和党寄りであり、ミラー氏は民主党寄りと言えようが、両党の知識層から不正選挙についての情報発信がなされるようになったことは、二大政党の対立の影に隠れて利益を享受してきた存在を明るみに出すことに役立つであろう。また、彼らの指摘が情報の受け手に真剣に検討されることは、アメリカの学識経験者の層の厚さ(または薄さ)を明確に示すことにつながるであろう。

 不正選挙の危険についてアメリカ大統領候補が言及した後の現時点において、観察対象である政治が不正選挙という犯罪によって明白な機能不全に陥っているとき、学識経験者で安定的な身分を有する者が沈黙を保つことは、社会の暗黙の期待を裏切ることになろう。人は、自身に馴染みのない複数の物事を相互に結びつけて考えるということがなかなかできない存在である。しかし同時に、人は、その道の先達によって、それなりの解説をしてもらえれば、相当に高度な内容をかなり容易に理解することができる。これが、教育の効果であり、人がここまで高度な文明を築いてきた理由でもある。わが国では、不正選挙を示す材料は、相当に多くが認められるが、これらを説明のつくように並べてみせる人の中に、本来なら、社会の中でその役割が期待されるはずの人々が見られないのである。

 アメリカでは、民主主義を機能させるための戦いが天王山を迎えようとしているが、日本では、負けが見えている「戦争屋」のツールである不正選挙について、ごく一部の市井の人々が言及するだけである。この状態は、臆病な知識人・マスコミ、勇気ある変わり者、無知な一般人、戦争屋とその手下、という類型化によって、戯画化されよう。このキャラクターたちは、いかにして、今後の「第二の敗戦」において、断罪されるのであろうか。このように考えてみると、おおよその道行きは見えるのではなかろうか。なお、「第二の敗戦」を考察する際、冷戦が現実の危機をはらみつつも壮大なフィクションであったという理解は、補助線として機能することになろう。



 オチをひとつ。9月2日は降伏文書調印の日であったが、NHKの『歴史秘話ヒストリア』は、再現ドラマが中国国内で作成されたと思われる、始皇帝についての特集であった。また、その直前には、安倍首相がウラジオストックでプーチン大統領と会談したことが報道されるとともに、11月のペルー会談、12月15日の山口訪問が速報テロップで示されていた。日付との一致が何を意味するのかは私にも分かりかねるが、一体どれほどの日本人視聴者がこの一致に気付いたのかは、本稿の趣旨とも関連する話である。


※1 トランプ 対 ヒラリー: 最終弁論: マスコミに載らない海外記事
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-9a55.html

※2 Trump vs. Hillary: A Summation -- Paul Craig Roberts - PaulCraigRoberts.org
http://www.paulcraigroberts.org/2016/08/25/trump-vs-hillary-a-summation-paul-craig-roberts/

※3 Donald Trump’s Twitter War on the Media, by the Numbers - Bloomberg Politics (Andre Tartar, 2016 Aug 19)
http://www.bloomberg.com/politics/articles/2016-08-19/donald-trump-s-twitter-war-on-the-media-by-the-numbers

※4 cui bonoの意味 - goo辞書 英和和英
http://dictionary.goo.ne.jp/ej/20908/meaning/m0u/


※5 「権力は腐敗する。絶対権力は絶対腐敗する」というような格言の発言者はアクトンと聞いているが正しいか。... | レファレンス協同データベース
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000167282


※a 原文は次のとおり。私が指摘するのはむしろ僭越だとは思うが、構文上、正しい訳である。ただし、「合衆国」を「合州国」と訳すことにはひとつ捻られた事態が存在することを理解しているつもりである。一種の歴史修正主義の臭いがこれらの語の使用に係る議論には認められるのである。
That Americans permitted the rise of unaccountable power tells us all we need to know about the dereliction of duty of which United States citizens are guilty. The American people failed democracy, which requires accountable government.


※b 戦争屋エリートと下っ端との間には、自然に、悪行の種類に大きな分裂が見られることになる。殺人・強姦・放火・強盗は、いずれも、子ブッシュ政権以降の民間軍事企業によって行われていたことが認められるが、これらがわが国の平時では凶悪犯であることは、指摘するまでもなかろう。末端が戦争下において行う犯罪は、戦争屋エリートが自らの利益のために強行した犯罪により可能となった。この点で、戦争屋エリートの罪は、前線の兵士よりも数段重い。

※c このように戦争屋エリートたちが考えることは、合理的な思考の範囲内である。このため、このケースが実現してもしなくとも、犯罪学における「上流階級ならこのように犯罪を行う」という思考実験として、ここでの想像は、無駄ではないと言えよう。

※d 原発ゼロを目指すという政策自体は、世界中の人類の利益になることであるために、日本国民としても賛同の余地がある。ただし同時に、この政策変更は、放射性廃棄物の最終処分場の日本国内における建設にも直結するがゆえに、日本国民は、慎重に状況を見極める必要がある。

※e 今まで良心的に職務に従事してきた報道関係者に可能な手段は、重要なことを訴えた直後に、沈黙を強いられるか、エクストリーム自殺するかであった。今後の「第二の敗戦」時、報道関係者は、「戦時」の報道姿勢に対して、この選択肢をふまえた判定を下されることになるであろう。

※f 日本人の大半が認識を改めるだけの事実の種類としては、ほかの例として、首都直下地震等により首都圏一帯が機能不全に陥るというものが考えられる。他国かわが国の経済状況が決定的に悪化した結果、世界的な経済活動の不全が生じるというものも考えられる。いずれの場合も、決して荒唐無稽というレベルではなく、それなりには具体的な危険として対処が必要なレベルに達しているところがポイントである。これらの危険を顕在化させないためには、国民の(知的水準ではなく)知識内容の多くを現代社会に即して更新し、日本社会の弱点であった公的部門の社会活動の水準を大幅に向上させる必要があったのであるが、これを今更求めることは、木に縁りて魚を求むというものであろう。

※g クリントン氏当選というシナリオや第三のケースというシナリオから、「第二の敗戦」がいかに実現するのかという筋道は、私が語ることではない。硬直 的なわが国の法律がある限り、いくら無謀なことを記しているように見えても、私にも書けないことがある。書くとすれば、私自身に適用されている一種のゲームのルールが変更された(、あるいは、私がルールを変更した)ときである。

※h 一人の日本人として指摘しておくと、アメリカという国が申し分なく輝いて見えるためには、2016年大統領選挙については、サンダース対トランプという構図が成立する必要があった。少なくとも、サンダース氏の得票が正確なものであったことを検証すべきであったとは言いうる。しかし、この指摘は、頭の上の蠅を追ってから言うべきことであろう。

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