2015年11月18日水曜日

フーコーの「生権力」と実務

#以下、かなり生煮えだが、とりあえず公開してしまう。

フーコーの歴史敍述の問題、特に『監獄の誕生』のパノプティコンをめぐって (2ページ目) - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/894616?page=2

では、ベンサムのパノプティコンのデザインがなぜ実地に生かされなかったか、という議論になり、リンク先の通りのツイートラインが見受けられたが、ベンサム研究とフーコー研究を両方究めているような研究者が少ないからではないかとも思ったりした。それこそ、後に紹介する鈴木晃仁氏の指摘するように、二分野のケミストリーを堅実に(ソリッドに)研究する人が多く出てくればこそ、成し遂げられる仕事なのかも知れないが、どうやって、学際的研究に生じがちな「抜け」や「落ち」を除外できるのか、という実務的な面が問題だと思ったりする。

橋本一径
@KazumichiH
2015-10-31 23:16:58
@parages 生権力は壮大なフィクションなんです。例えば指紋による管理も地球上の人間全ての指紋が予め登録されていることが前提ですが、そんなことはできるはずがない。パノプティコンも同じではないでしょうか。あらゆる権力同様、生権力も擬制の上に定礎されているということだと思います。
https://twitter.com/KazumichiH/status/660460457329713152

土屋誠一
@seiichitsuchiya
2015-11-01 02:00:33
↓RT、なんでなんだろう。網走の刑務所跡に行ったことがあるが、一応中央に見張りの部屋があって、放射状にはなっているものの、ベンサムのパノプティコンと一緒とは全然言えない代物だった。やはり、看守になるような人物のポジションを、誂えたほうがよっぽど合理的、ということなのであろうか。
https://twitter.com/seiichitsuchiya/status/660501625061052416

橋本一径
@KazumichiH
2015-11-01 02:01:57
@seiichitsuchiya それもう僕が答えだしてるから( ・´ー・`)どや(そっちもRTしといて)
https://twitter.com/KazumichiH/status/660501975792926720



このような話も別ツイッタラーから指摘されており、

Heavy_Marcovich
@fewlirpcd645
2015-11-01 15:55:22
パノプティコン型の監獄は日本にもいくつか建設されて、今でも使われてる施設もあるんだけど、確かに空論感はあるよね
https://twitter.com/fewlirpcd645/status/660711714522972160

実際のところ、活用されている施設として、代表的なものに、小菅拘置所が挙げられる。Googleマップでは、次のような空中写真を見ることもできる。


https://www.google.co.jp/maps/@35.7581811,139.8163607,468m/data=!3m1!1e3?hl=ja

 先の土屋誠一氏のツイートのような印象が出てくるのは、まっとうな疑問だとは思うが、(1)限定的な人数で効率よく、(2)被収容者があまりに狂わない程度に、という条件を満たす実務的妥協の産物が上掲の平面図なのだと推測する。(監獄という)空間体験を経ず、この形であることが「常に見られていることにならない」と短絡することは、テクストをそのまま現実に落とし込もうとする教条主義に陥ってしまう虞があるのではないかと思う。橋本一径氏が「そんなことができるはずもない」とする指紋登録も、現に全国民のDNA登録を進めるべきであると信ずる実務者がいるという点には留意しておくべきである。ジョージア・ガイドストーンくらいに減少させた人数であれば、全世界を現実的に管理できる可能性が高くなることにも、である。いくら大きな組織でも、全世界における組織の人数は、せいぜい10万人単位である。ジョージア・ガイドストーンは、5億人まで人口削減することを示唆する。私は、もちろん、このようなディストピア的なアイデアに反対であるが、5億÷10万=5000人に1人で管理するのであれば、アクティブ生体タグの埋め込みなどにより、完全な支配は、実現不可能ではないように思う。一時期の共産主義諸国の現実では、3人に1人程度が管理者の側に積極的に与していたのだが。

 伊藤恭彦(2010)『貧困の放置は罪なのか』人文書院, p.53によれば、シンガー(Singer, 1993; 1996)は、ハーディン(Hardin, 1996)の「(地球上の各国における生まれつきの経済的格差についての)救命ボートの倫理」を批判し、人口過剰と食糧不足は神話に過ぎず、飢餓や疾病による人口統制は道徳的な悪である、人口統計学的推移をみれば貧困が解消されれば出生率が低下し、人口増加に歯止めがかかる、という。シンガーの原本は、自分自身で確認していないので、その点を含まれたい。なお、人口削減に対しては、BBCの番組で、地球の人口は110億人で頭打ちという異なる見解が示されていたはずである。自分の独断に過ぎないのだが、原因と構造についての理解は、現実と異なるものの、シンガーの指摘における「飢餓や疾病による人口統制は道徳的な悪」という部分は、正しい見解だと思う。

 実務者の道標ともなりうる道具的な思想を与えたという点で、フーコーは偉大だと思う。実務者は、(フーコーが望まなかったであろうと思われるような)逆説的な形で、フーコーにインスパイアされうるように思う。浅薄な道具主義に基づいて人間は世界を見ている、と考える浅薄な私は、このように考えるのだが、いかがだろうか。



 上の議論とは個別の論点となるが、鈴木晃仁氏のツイートは、フーコー研究の蓄積が進みつつあることをうかがわせるものであり、自分の知識を深める手がかりになりそうだ。フーコーはともすると誇大理論(grand theory)になりかねない扱いだという評価だと思われる。その通りだと思うけれども、相当にぶっ飛んでなければ、大きなテーマを取り扱いきれないのではなかろうか。もちろん、フーコーによる研究の長所と短所を含んだ上で、鈴木氏は、フーコーを偉大な思想家だと見ているのだと思う。このことは、「なぜあんなに深い根本的な問題をえぐることができるのだろう。良い子は決して...」というツイートの表現からもうかがうことができる。

akihito suzuki
@akihito_suzuki
2014-02-11 09:08:58
初期近代の病院や施療院の機能について、フーコーの大監禁説は、部分的な側面を誇張した著しく単純なモデルであるというのが、英語圏の医学史の研究者の合意です。Katharine Parkらが20年前から実証してきました。にもかかわらずフーコーは深く重要であると私は思っています。
https://twitter.com/akihito_suzuki/status/433029857790803968

akihito_suzuki
@akihito_suzuki
2014-06-10 08:46:07

今日はフーコー『狂気の歴史』の内容を教える日。いつも思うのだけれども、あんなにいい加減なリサーチと雑駁な資料の拾い読みと思いつきで、なぜあんなに深い根本的な問題をえぐることができるのだろう。良い子は決して真似してはいけませんとしか言えないのだけれども。
https://twitter.com/akihito_suzuki/status/476148264543084545


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