平成28（2016）年1月24日の沖縄タイムス等の出口調査による宜野湾市長選挙のシミュレーション結果

　本記事では、前記事（平成28（2016）年1月24日の宜野湾市長選挙の琉球新報等の出口調査によるシミュレーション結果）とおおむね同様の意図と方法に基づき、沖縄タイムス社・朝日新聞社・琉球朝日放送による出口調査※１から、佐喜真氏の得票数をシミュレートした。前記事と異なる点は、出口調査による基地移転への賛成・反対・無回答の回答割合と、基地移転への回答別の投票率について、信頼区間を考慮して、最大限、佐喜真氏への得票が反映される方向へと確率を変更した実施したという点である。

結果

この出口調査と宜野湾市選挙管理委員会のウェブサイト※２を用いて、開票作業が進むにつれての得票数とシミュレーション結果とを併載したグラフが下図1である。下図1のシミュレーション結果は、出口調査の結果を、最大限、佐喜真氏への得票が反映されるように解釈したものであり、文字通り「万が一」の場合を示す。佐喜真氏への実際の得票数は、極端な場合を想定したシミュレーション結果に比べて穏当である。極端な場合を想定したシミュレーション結果は、前記事における結果のように、最終時点におけるシミュレーション結果の分布が実勢値と逆転するという結果にはならず、3000票程度、実値を上回るものとなった。

図1：　佐喜真候補の得票数と出口調査を利用したシミュレーション結果の比較（平成28年1月24日宜野湾市長選挙）

方法

実際のシミュレーションの方法は、『R』により、次のとおりに進めた。

　基地移転への賛否についての出口調査結果は、{無回答 = 0.100、賛成 = 0.340、反対 = 0.570}の3通りである。記事に示された「無回答」の割合10％を「無回答以外」との二項分布とみなすと、「無回答」と回答する確率の99％片側信頼区間の上側信頼限界は、正規分布近似、有限母集団修正を行い、0.1193876...となる。「賛成」についての割合の34％についても同様に計算すると、0.3706136...となる。「反対」は、「無回答」と「賛成」の余事象とみなし、0.5099987...となる。この修正済みの確率を用いて、全投票者49839名分の基地移転に対する賛否を表す集合を、sample関数を用いて作成する。集合に含まれる「賛成」者数と「反対」者数は、1回シミュレートするごとに異なる。そこで毎回結果を集計し直し、佐喜真氏への投票率を二項分布とみなして、99％片側信頼区間の上側信頼限界を求める（正規分布近似、有限母集団修正）。こうして求められた上側信頼限界を利用して、基地移転への賛否を再度sample関数により求めた。基地移転への賛否無回答者は、佐喜真氏へと得票数をすべて組み入れた。

　繰り返しとなるが、冒頭の図1のグラフ（ヒストグラム）は、10万回のシミュレーション結果を、実勢値と併せて表記したものである。

　作業に用いたRスクリプトファイルは、ここ（リンク）からダウンロードできる。

成果

本件シミュレーションでは、前記事で指摘した信頼区間を利用して、出口調査から推論を進めた場合の「万が一」程度に相当する場合を作り出した。本件作業により、方法論の学術的な正確性は保証されないものの、「出口調査からはほとんど考えにくいが存在しないわけではない場合」においては、今回の投票結果が十分に実現する見込みがあることを実用的に示すことができた。「万が一」という表現は、「数千分の一」かもしれないという点では、正確な表現ではない。しかし今回、出口調査からはなかなか考えにくい（がない訳ではない）場合を実現したことは確かである。

今後の課題

琉球新報等の出口調査、沖縄タイムスの出口調査は、互いに似通った結果であり、両紙により示された投票先についての点推定値も、さほどの実用上の差がないものである。琉球新報等の出口調査についても、今回と同じようにシミュレーションを実行することが可能である。ただ、その結果は、今回と同様の結果となることが明らかである。

そこで、今後の課題は、基地移転への賛否を明確に回答しなかった10％程度の層の投票行動と、出口調査の系統誤差との関係を明確なものとして、開票速報のような結果を得ることのできる場合を示唆するというものとなる。点推定値を用いた前回の場合では、基地移転への無回答者層をすべて佐喜真氏へと積み上げても、実値との整合性は得られなかった。今回の極端な場合には、基地移転への無回答者層をすべて佐喜真氏へと積み上げたが、実値を相当上回った。この両極端の場合のどこかに、説得力のあるパラメータが存在するものと思われる。そのパラメータを提示することが、今後の課題というわけである。

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※１　出口調査で浮き彫りになった宜野湾市の民意 | 沖縄タイムス＋プラスhttp://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=151185
＃沖縄タイムス社・朝日新聞社・琉球朝日放送による

　普天間飛行場の名護市辺野古への移設について、「賛成」と答えたのは３４％、「反対」は５７％、「無回答」は１０％だった。
　辺野古移設に賛成と答えた人のうち、佐喜真氏に投票したのは９３％、志村氏は７％。辺野古移設に反対とした人は、佐喜真氏に２４％、志村氏に７６％。佐喜真氏は、辺野古移設に反対する人の一部の支持も得た。（...略...）
　調査では１２６３人から回答を得た。

※２　平成28年1月24日執行　宜野湾市長選挙トップ ｜ 宜野湾市公式ホームページhttp://www.city.ginowan.okinawa.jp/sisei/election/01/senkyo_top.html