2016年12月25日日曜日

ブラックジャーナリストは公職に相応しい存在か

わが国では、高度成長期以後、護送船団形式による表の企業経済が躍進する影で、国際的には競争力が劣位にある企業分野における経営者、これに圧力を加えて利益を得ようとする職業右翼活動家や暴力団などが離合集散しつつ、勢力の均衡が実現されるという、合法から非合法まで連続的な位相を見せる経済界が存在してきた。その膨大な経済活動には、グレーからブラックまでのジャーナリズムが寄生してきた。表向きはジャーナリスト、探偵業、出版業、金融業などからなる業態である。彼らは、正業者と濃厚に交流しつつも、明確な棲み分けを行い、ときに警察の情報源ともなり、ときに総会屋として活動することなどを通じて、ウラ情報の表社会への還流に一役買ってきた。他方、わが国の労働組合は、このような状態に対して、鵺的な存在として機能してきたとはいえ、企業単位という性格のために、結果として、他国に見られるような犯罪組織からの強い影響免れてきた。

後世に生きる筆者の目には、当時の「黒幕」と呼ばれる大物たちは、自らの裏社会における地位を確固としたものにしていた一方で、「表社会」における公的な名誉までは求めなかった紳士に映る。あくまで黒幕と呼ばれるに相応しい節度を身に付けていたからこそ、大物と認められていたようにも見えるのである。昭和51(1976)年に明らかとなったロッキード事件によって全国区で有名となった二人の黒幕、児玉誉士夫氏と小佐野賢治氏は、この見方に該当するように見える。児玉誉士夫氏は、現時点から見れば、職業右翼と呼ばれうる存在であるし、小佐野賢治氏は、企業家でありかつフィクサーであったと言えよう。両名とも、毀誉褒貶の激しい世界に身を置いていたにもかかわらず、私には何らかの節度をわきまえていたようにも見える。当時の社会においてさえ、関係者のみならず、テレビやマスコミ報道に踊らされた無知な層を除けば、社会から憎からず思われていたと見て、間違いではないであろう。現在の視点からすれば、悪人を擁護することなどあり得ないと思われるかもしれないが、悪を自覚する者が棲み分けの重要性を自覚していたゆえにその地位に相応しい尊敬を獲得していたことを、私は指摘したいのである。おそらく、某ビジネス書が指摘するとおり、自らの影響力の範囲と実力とを一致させ、維持することは、ある人物が黒幕であろうと、後世に認められるための要件なのであろう。

ところが、両氏のような生き方を可能とした、鉄の四角形とも言うべき政官財暴の均衡は、平成3(1991)年の暴対法制定を嚆矢として、大きく変化することとなった。昭和63(1988)年のリクルート事件を始めとして、証券・金融分野を通じた「不祥事」が一部の週刊誌ジャーナリズムによって「スクープ」され、「黒幕」と呼ばれうる怪人物が活躍する余地が失われ、バブル崩壊直後に制定されたこの法律は、裏社会の空白を埋める形で官僚の統制を強化するという機能を果たした。この傾向は、平成7年のオウム真理教による(と裁判を通じて認定された)一連の事件後には、さらに強化された。バブル崩壊後の氷河期とも形容された不況を理由に、企業社会が裏社会との関係を断ち切るようになったのである。この背景には、暴対法の施行を確実なものとするために、体力のある大企業がベテラン警察官や警察官僚の天下りをより多く受け入れるようになったことが指摘できる。裏社会から官公庁へと権益が移行したのである。

その主張がいかなる動機に基づくものであるかは慎重な検証を必要とするが、この時期辺りまでのわが国裏社会の人物や組織は、法や分を弁えることを重視すると公言してきた。たとえば、「カタギには手を出さない」「違法薬物禁止」という種類の言明である。これらの言明は、縦割り主義的な結果を生じることとなり、わが国では、大学という組織は、一部の私学を除いては、これらの裏社会との接触が比較的小さなものに留まってきた。大学や学校法人は、一部を除き、左翼と見なされる組織により占拠される一方、大学に巣くう極左集団などは、一般的には、裏社会とは呼ばれなかった。もちろん、大学が純真無垢な組織であり続けてきたという訳ではない。たとえば原子力産業は、用地買収や左翼団体に利用される裏社会の強面たちと交際する必要があったし、大企業の総務部は、大企業社会において、その種の難しい業務を一手に引き受ける必要がある部門である。体育会は、このようなマッチョさを要求される分野の格好の人材供給源となったのである。このコネクションは、必要悪として、わが国社会の「大人」なら、当然視てきたものと言えよう。

1990年代におけるブラックジャーナリズムの変化を理解する上で大事なことは、顕名性がユーザに浸透していたダイヤルアップを通じたパソコン通信環境から、知識に乏しく匿名的であると誤解するユーザを多数含むインターネット掲示板へと、アングラ情報流通の舞台が変化したことである。この結果、ウラ情報は、世紀の変わり目頃には、『2ちゃんねる』に代表されるインターネット上の掲示板に書き込まれることが習いとなった。プロキシサーバを介することにより、書込主は、一定の匿名性を期待することもできたが、ときには、証券市場に重大な影響を与える情報さえ、インターネットの特徴を知らない初心者(に見える、あるいは初心者を装う)ユーザによって、(一見)不用意に書き込まれ、大々的に流通することになったのである。

わが国の「匿名掲示板」の巨人であった『2ちゃんねる』は、「匿名」との評判からか、今世紀初頭には、真偽不明の、株価に影響を与えうる内容も大量に書き込まれる掲示板となっていた。この動きには、多数の企業人までもが関与し、その関与自体が明らかになるにつれ、さらに読者を引きつけることとなった。考えの浅い投稿者がプロキシサーバを経ることなく、インサイダーや風説の流布に相当する危険のある内容を投稿するようになった。企業が自社のIPアドレスから直接その内容を把握しようとするという、現在からすればほほえましい動きも見られた。書込みや閲覧が、身元確認につながりやすい携帯電話から行われることもあった。これらの条件が組み合わさることにより、2ちゃんねるの運営者や、それに連なる人物たちは、真偽不明の内容に加えて、取得していないと主張していたログを利用して、ブラックジャーナリズムを本格展開する機会を手にしたのである。

犯罪予防の基本である、「犯罪者の認知する犯罪の機会は、ほとんど常に利用される」という教訓は、先述した環境によって、『2ちゃんねる』の展開するブラックジャーナリズムにも該当することとなった。『2ちゃんねる』は、最後にはサーバが「クラッキング」され、有料サービスの購入に利用されていたクレジットカード情報が匿名化ネットワーク上に流出したことにより、この巨大掲示板を舞台とした明らかな犯罪の痕跡が匿名化ネットワークの世界には残されることとなった。個人だけでなく、永田町に近い組織や、企業までもが情報を監視し、あるいは流通に荷担していたことが認められるようになったのである。

インターネット上の明らかな経済犯罪の痕跡を確認したとき、自ら動くことが可能な組織は、検察と証券取引委員会であるが、これらの組織は、今世紀型のブラックジャーナリズムに還流したはずの利益を十分には解明しなかった。株価操縦等が外形的に認められる痕跡から実際に立件に至った事件は、到底、『2ちゃんねる』の運営に連なる人脈の資金流通を止めるものとはならなかったのである。それどころか、この巨大掲示板を活用しつつ、巨万の富を築き上げたロスジェネ世代の怪人物たちの一部は、政界進出を目論むことさえした。この時点で、日本的サブカルチャーを装うアングラ業界の人物たちは、戦争屋に連なる政治人脈と交友関係を結ぶことにさえ成功していたのである。

政界進出及びマスコミ買収に伴う反動という形で、いわゆるライブドア事件が生じたことは、わが国において、一定の「抵抗勢力」が結果として国益を保全してきたことを逆説的に示す証拠であると言える。しかしながら、ライブドア事件を捜査した部署は、東京地検特捜部であ、同部による捜査は、とうてい不法行為の全容を解明するものとは言えないものであった。いくつかのエクストリーム自殺については、その解明がほかの凶悪事件をも解決に導きうるものであったにもかかわらず、解明が行われることなく、放置されたことを指摘できる。

検察までもが一大疑獄の可能性が強く疑われる凶悪事件を放置した結果、これらの活動に関与してきたことが十分に認められる人物たちは、多少の抵抗に遭うも、大きな発言権を日本語社会において確保することに成功し、現在に至っている。彼らが作り上げたオルタナティブな情報インフラは、現在、情報操作のためのツールとして、現政権に大いに活用されている。内閣機密費は、これらの情報操作に利用されていると指摘されている。もちろん、われわれ一般人には、その確実な証拠を掴むことは適わない。

わが国の勢力均衡状態と縦割り文化をふまえれば、「闇の紳士録」に掲載されるであろうほどに成長したこの分野の有名人たちは、現時点では、羽目を外し過ぎている。日本社会は、彼らが従来の役割、たとえば投資家として振舞う限りにおいて、従来の「ビジネス」に従事することを許容するであろう。固有の社会的役割に従事することの代償として、アングラ業界の人材は、それに見合う報酬を得てきたと言える。その地位を超える報酬(名誉や地位)を望むことは、社会によって許容されていないのである。

このような状況を鑑みるとき、この状況に責任の一端を担うはずの役職に、公職における資質を問われる人物が収まっていることは、大変興味深いことである。


参考

遠藤健太郎オフィシャルブログ » Blog Archive » ストロスカーンと中川昭一
http://endokentaro.shinhoshu.com/japan/post1952/

篠原尚之 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AF%A0%E5%8E%9F%E5%B0%9A%E4%B9%8B

メンバー 東京大学 政策ビジョン研究センター
http://pari.u-tokyo.ac.jp/info/member.html


#東京大学政策ビジョン研究センターは、東京大学基本組織規則第21条の規定(全学センター)に基づき設置される研究部門であり、公共政策学連携研究部・公共政策学教育部、法学政治学研究科、経済学研究科、工学系研究科、医学系研究科を出身母体とする研究者の、いわば寄り合い所帯である。相乗効果が見られれば、わが国の行く末を決定する上で良い政策を形成可能な組織であるとは思われる。

東京大学政策ビジョン研究センター運営委員会規則
http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/reiki_int/reiki_honbun/au07410191.html

附則
この規則は、平成25年4月1日から施行する。
(了解事項)
1 第3条第1項第3号「前2号以外の本学専任の教授のうちから若干名」とは、5~10名とする。なお、当分の間は、公共政策学連携研究部・公共政策学教育部、法学政治学研究科、経済学研究科、工学系研究科、医学系研究科からそれぞれ1名を含む若干名とする。
2 センター教員の選考にあたっては、センター規則第2条の趣旨にのっとり広く専門研究者の意見を徴するものとする。

東京大学受託研究員受入実施要項
http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/reiki_int/reiki_honbun/au07408461.html

東京大学教職員倫理規程(untitled - syuki17.pdf)
http://www.u-tokyo.ac.jp/gen01/reiki_int/reiki_syuki/syuki17.pdf
(平成16年4月1日東大規則第27号)
改正平成17年3月28日東大規則第360号
改正平成18年3月30日東大規則第120号

(倫理行動規準)
第3条教職員は、本学の教職員としての誇りを持ち、かつ、その使命を自覚し、次の各号に掲げる事項をその職務に係る倫理の保持を図るために遵守すべき規準として、行動しなければならない。
(1) 教職員は、職務上知り得た情報について一部の者に対してのみ有利な取扱いをする等不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならないこと。
(2) 教職員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならないこと。
(3) 教職員は、法令及び本学の諸規則により与えられた権限の行使に当たっては、当該権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等による疑惑や不信を招くような行為をしてはならないこと。
(4) 教職員は、職務の遂行に当たっては、公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組まなければならないこと。
(5) 教職員は、勤務時間外においても、自らの行動が本学の信用に影響を与えることを常に認識して行動しなければならないこと。

小佐野賢治 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E4%BD%90%E9%87%8E%E8%B3%A2%E6%B2%BB

児玉誉士夫 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%90%E7%8E%89%E8%AA%89%E5%A3%AB%E5%A4%AB




平成29年3月1日修正・追記

文意を損なわない程度に、読みにくい部分を修正した。追記・修正部分は淡赤色で、削除部分はコメントタグにて残してある。

本稿の修正を行うきっかけに至ったのは、遅ればせながら、昨年暮れ(2016年12月15日)に川上量生氏?が山本一郎氏を指して陰で「総会屋2.0」と呼び習わしている旨をコメントして以来、この語がバズったことをようやく知ったためである。

なお、本稿の原本は、昨年9月14日あたりに準備を終えたものである。関係各位に対する辛辣なクリスマスプレゼントとして、用意してみたものであった。「タブー抜きで」私の中では確実に正しいと思われる情報を用意する、という本ブログの趣旨に照らせば、結果として、本稿は、えらく文脈依存的なものになってしまった。もちろん、この状態を知った現在も、この状態を継続しているということ自体、入れ子構造を狙ったものに他ならないことまで、賢明な読者にはお見通しのことであろう。

閑話休題。裏社会あるいは泥棒政権(クレプトクラシー; kleptocracy)にとって、市場規模5兆円とも見込まれるカジノ(IR)産業への食込みが邪魔されないことは、ソシャゲ業界における権益確保よりも、よほど大事なことである。表の経済規模にかかわらず、効果的なマネロン対策がカジノ運営に適用されるか否かは、国際社会で日本国が独立国として長期的に生き残るための要件である。これとは逆に、マネロン装置としてカジノを悪用可能なことは、裏社会にとっての権益を意味する。現在のIR論議の下では、カジノの脆弱性、すなわち勝ち金の大きさは、従来のギャンブルシステムを大きく上回るものになることが見込まれる。この議論に立ち入らせることなくカジノの話を終息させることは、裏社会にとっての権益確保につながる。マスメディアを通じて名前の売れている人物たちから山本氏に寄せられた批判の中に、山本氏の主張するカジノの話が一つも出てこないことは、私にとって、一つのサインである。

もっとも、マネロン装置として悪用しうる余地のあるカジノという存在は、道具でしかない。誰が・どのように・いつ・誰をもてなすために・どれだけ用いるのか、が分からない限り、政治過程におけるマネロン装置としてのカジノの善悪を最終的に判定することは適わない。他方で、これを犯罪予防システムの脆弱性として観る限り、これを放置することは、マネーロンダリングに対して厳しい視線の注がれる昨今、自称先進国の一員であるわが国としては、賢明なこととはいえない。社会システムの不具合を指摘することは、私の一応の仕事の範疇なので、ここに明記しておく次第である。

組織犯罪にとっての「利益」とは、通常の営利企業において所属者が職業人として必要とされる労力を抜きに、その労力に見合う以上の不正な対価を組織が入手できることであるから、この利益の生じる機会を取り除くことは、効果的な犯罪予防対策となる。その利益=旨味は、通常の経済活動と同様、経費を差し引いて得られるものである。言い換えると、カジノの生じさせうる脆弱性も、ごく素朴な形とは言え、経済的な観点から分析可能である。カジノにおけるマネーロンダリングで必要となる経費の中で、カジノ経営から完全に独立した要素として扱うことが可能なもの、つまり、切り分け可能な存在として、ジャンケット(への請負)を挙げることができよう。彼らは、麻雀等でいう代打ち、パチンコでいう打ち子にも相当する。この存在に着目すれば、以前に言及したように、勝金の上限額を、たとえば30万円程度の、一般人にとっては大勝ちしたと思える一方で、一回だけの接待を通じて高級官僚や政治家や職業的犯罪者への賄賂とするには割に合わない金額に設定することは、有用な犯罪予防対策となりうる。

蛇足。ギャンブル機関のマネロン装置としての性能は、トランザクション(勝ち負けに伴う金銭の授受一対)の回数と、そのトランザクションごとの勝金の金額に依存する。他のギャンブル運営に比べて、カジノがマネロン装置として優れている点は、勝金の多額さにある。この点、競馬の三連単が導入された経緯や、競艇の結果が荒れがちで勝金が高額化しがちであることは、示唆的である。従来のカジノでプレイされているゲームを含め、従来のギャンブル運営を通じたマネロンでは、胴元がマネロンを感知し得ないことはあり得ない。とすれば、勝金の高額化を是とする意見は、マネロン対策の厳格化と対になって語られなければ、邪な意図の下に発せられている可能性があると勘繰ることが可能である。李下に冠を正さず、である。

蛇足2。IRで認可されるゲームの種類が従来型のようにディーラーの関与の余地が高いものとならない場合、カジノ運営企業が何らマネロンに関与しなくとも、あるいはマネロンの排除に尽力しようとも、脆弱性が生じることになる。たとえば、同じ卓の中でゼロサムとなる種類のゲーム、たとえば麻雀が認可された場合を挙げることができる。金銭の授受を発生させたい二者が同じ卓を囲み、接待麻雀を行えば良いだけだからである。カジノ事業者は、このようなゲームを導入するのであれば、このような場を提供したと非難されないために、すべてのゲームの手番を記録する必要がある。贈賄側の「手抜きの悪手」を記録する必要が生じるためである。この全手番(一回のゲームにおける全トランザクション)の記録が、割に合わない手間のように見えてしまうのは、私だけであろうか。従来型の、ディーラーの関与が決定的なものであるゲームであっても、ディーラーの公正さを示すために、全手番を記録する価値はある。ここまでの対策を実行する企業が運営するのであれば、カジノ運営は、従来型のギャンブル経営に比較して、よほど健全であるということになろう。ただ、このような記録体制自体は、勝金の高額化を無制限に許容する材料とは見做されないであろう。あくまで、他のギャンブル形態との比較を通じて、公正であると見做される程度にまで、勝金の高額化を認めるという程度に留まろう。




2017年05月15日追記

「Ken Sugar」氏(@ken_sugar)の以下のツイートが大きく引用されていたので、この点を付記するとともに、brタグのレイアウトをpタグに変更した。「Ken Sugar」氏による山本一郎氏の肩書きに対する見立ては、通常人が正しいと信ずるに十分な材料である。ただ、「Ken Sugar」氏は、本記事の本文中に示唆した内容までは、視野に含めていないようである。山本一郎氏よりも批判されるべき人物が、ほかにいる。分かりにく過ぎたかも知れないので、明記しておこう。美人局なんて、ブラックジャーナリストの典型的手法ではないか。このように指摘することが、本記事のもう一つの意図であった。

Members | Complex Risk Governance Research Unit, UTokyo Policy Alternatives Research Institute
(2017年05月15日確認)
http://pari.u-tokyo.ac.jp/unit/crg/en/about/members/

2016年11月18日金曜日

平成28年7月都知事選の市民出口調査とマスコミ出口調査の比較

本稿では、選択バイアスに着目することにより、今夏の都知事選におけるマスコミの出口調査と「市民調査」(以下、括弧を省略する)との間に明白な齟齬が存在していたことを示す。以前(2016年9月30日)、選挙における情勢調査・出口調査では、選択バイアスを考慮する必要がある旨を述べたが、本稿はその続報である。公表時期が遅いという声が聞こえてきそうであるが、わが国の大マスコミや米国の(選挙予想における)有名人がおしなべて米大統領選の予測を外した現時点であるからこそ、ここでの検討の価値が増すというものである。

なお、選択バイアスとは、理念上の「調査対象集団」と具体的な調査における「母集団」との差から生じる推定値のずれを指す(2016年10月14日2016年10月24日)。本事例では、調査対象集団は都知事選の全投票者であり、母集団は各出口調査の対象となる投票者集団である。母集団の設計によって選択バイアスが生じるという場合の一例を、私が指定されている投票所を例に説明する。その投票所では、マスコミの出口調査のほとんどは、朝一番の1時間のみ行われるようである。この結果、三世代ファミリー層も独身者も多く居住するこの地域において、高齢者の回答者が自然と多くなるという構図である。マスコミの手抜きの結果、年齢層や性別に偏りがないことは、この投票所から引き出される結論においては、保証されないのである。

以前(2016年9月30日)に紹介した「修(@osamu9912)」氏による市民調査(当該ツイート削除)の結果は、鳥越俊太郎氏の支持率が圧倒的であった。これに対しては、「市民団体」に対して(だけ)は嘘を吐く、マスコミの出口調査には過去の蓄積がある、調査の基本が分かっていないといった指摘が『2ちゃんねる』では相次いだ[1]。その大半は、表層的な勉強だけしていたら出てきそうな、数字に対するセンスのない答えである。手を動かすと、全く異なる様相が現れてくるからである。(私もセンスのない方ではあるが、本稿の作成を通じて手を動かしたから、自信を持って指摘できる。)

もっとも、「修」氏の調査に対して辛辣な2ちゃんねらーの意見[1]のうち、コメントの2・19・24などのように、回答者が嘘を吐くというものは、良い所を突いた批判であるかのように見える。リチャード・アーミテージ氏の米大統領選に対するインタビューについて、私は、辛辣な検討結果を提示しており(2016年7月25日)、2ちゃんねらーたちのように、ひねくれた物の見方を有しているといえよう。しかしながら、回答を拒否する代わりに小さな嘘を吐くことのできる人物が小池氏支持者に多く見られるという結論は、小池氏の支持者にとって、収まりの悪いものであるはずである。この結論の不具合に、意見を書き込んだ当の本人らが気付いているか否かは、私の知るところではない。ただ、嘘を吐く者がいるという指摘は、泥縄シミュレーション向きの指摘ではあることだけは、確かである。この点は、本稿では検討せず、次稿以降の課題としておく。本稿では「回答する」か「拒否する」かの二択で考える。

朝日・読売の両新聞の出口調査には、支持政党別(自民・民進・公明・共産)の投票先が示されているが、これらマスコミによる出口調査に示されていた共産党支持者の投票先は、シミュレーションに転用可能である。最も鳥越氏への支持率が高かった共産党支持者しか回答しないと仮定して、いったいどれほどの人たちが回答拒否したのかを推定するのである。この仮定は、野党支持者を揶揄した2ちゃんねらーたちによる複数の書込みを、そのまま利用したものである。コメント42の「アンケートに答えるのはお仲間臭がする人種だけだろうからな」[1]は、その一例である。

マスコミの共産党支持者に対する出口調査から、市民調査を再現できるか否かの検討にあたっては、三点の仮定が必要となった。一つ目は、マスコミの出口調査における共産党支持者の投票先の割合を点推定値で求めたことである。これは、あくまで仮定の置き方の一つであり、マスコミの出口調査の支持率を幅を持たせて求め直して、市民調査の再現に最も都合の良い値を採用するという方法も考えられる。二つ目は、鳥越氏への投票者が市民調査に回答拒否した真の確率を決定しておくことである。これは、分析者の自由裁量に係る部分であるため、50%から95%まで、1%刻みでスライドさせている。三つ目は、主要三候補とその他の候補の四種に投票先を再分類したことである。これは、マスコミの出口調査の枠組を準用したものである。

より具体的なシミュレーションの方法は、下記図1に示した。まず、マスコミの出口調査を利用して、回答者の並びを(データフレームとして)再現した。その並びに対して、市民調査が順番に声をかけ、個人に割り振られた回答率を満足する値を有する回答者だけが回答する、という流れを模してみた。鳥越氏を支持する市民調査への回答者が(市民調査に示された)196人に達したところで回答者の並びを(データフレームのサブセットとして)切り出した。このデータの中には、個人毎に、①誰に投票したか、②市民調査に回答したか、の別が保存されている。このデータを集計すると、各候補者別に、市民調査への回答率を計算することができる。より具体的な作業過程は、朝日新聞の記事を例に取ったものをRファイル(「w20160909_市民調査を再現_朝日_upload.R」)としてアップロードした。シミュレーション上の回答者は、100万人分を作成したので、回答率を求める作業の回数は、各回答率につき、1000回以上になる。本稿以上の作業の詳細は、前掲ファイルを参照されたい。なお、本作業過程のうち、ggplot2パッケージによる密度推定には、一部のデータが利用されていないが、グラフ描画上の大きな問題にはならないものと考え、作業を強行している。

結果は、アニメーションgifに直して、図2と図3に示した。この結果は、マスコミ出口調査における共産党支持者集団と市民調査への回答者集団とが明らかに異なるものであることを示すものである。市民調査に対する回答率は、どの候補についてであれ、鳥越氏の真値の周りにばらつくはずであるが、そうはなっていない。鳥越氏については、適切な形で再現されている。しかし、増田氏・その他の候補については、一貫して回答率が鳥越氏よりも高く出ており、しばしば、1を上回るものともなっている(ただし、シミュレーションの方法上、あり得ないことではない)。その一方で、小池氏支持者の回答率は、一貫して低く出ており、共産党支持者のデータを元にしているにもかかわらず、半分程度となっている。

図2・図3に示された結果は、「修」氏の提示した結果を信用したとき、小池氏支持者の回答拒否率だけが異様に高く、また、増田氏・その他の候補の支持者の回答率もおかしいという事実を突きつけるものである。この結果は、マスコミの出口調査に対する重大な疑義を突きつけるものになる。幸い、現在は、2016年米大統領選後である。マスコミの正しさに対する社会上の制約は存在しないから、自由な心証を元に、マスコミ報道の事実に関する正確性に対して、疑問を呈しても問題ないであろう。実のところ、マスコミの出口調査の正しさは、「修」氏の提示する結果と同程度にしか、追跡可能ではない。つまり、記事として書かれたことくらいしか、検討の材料がないのである。今時の政治学研究者の全員が社会調査の手続を熟知している訳でもないし、カネと名誉に転ばない訳でもないから、出口調査の過程と結果に対して誰もがアクセス可能ではない限り、マスコミの出口調査が捏造ではないと信じることは、およそナイーブに過ぎる。しかも、今夏の都知事選の結果は、事前の読売新聞による情勢調査を参照する限り、偶然、小池氏の勝利を確実なものとする上での最大見込み票数であった(2016年8月21日)。これに対して懐疑の目が向けられないとすれば、その社会はおよそ健全とは呼べないものであろう。

本稿のシミュレーションは、「修」氏が全く関知しない形で行われたものであるが、彼(女)の提示した市民調査が、マスコミの出口調査の怪しさを指摘する力を十分に有することを示すものである。「修」氏は、マスコミの出口調査の結果が揃わない時点で、市民調査の結果を提示している。このため、答えを調整している可能性がゼロではないが、100パーセントでもない。また、市民調査が支持政党を聞いている訳でもなさそうであるから、ここで示したようなヒネた検証方法を想定してもいないであろう。ただ、提示された情報には大きな力があっただけに、元のツイートが削除されていて、そのままであるという経緯の不明さは、懸念を抱かせるものとなっている。エスタブリッシュメントの外にいる存在が出口調査を行うことに対しては、権力側が色々な難癖を付けられる余地があるから、具体的な危険を感じて取り下げたということも考えられる。まとめサイト経由で個人攻撃が激しくなったという場合も考えられよう。


図1 シミュレーションの方法
図1 シミュレーションの方法

図2 朝日新聞出口調査に基づく「市民調査」への回答率の推定シミュレーション結果
図2 朝日新聞出口調査に基づく「市民調査」への回答率の推定シミュレーション結果
(説明は図1と本文を参照)

図3 読売新聞出口調査に基づく「市民調査」への回答率の推定シミュレーション結果
図3 読売新聞出口調査に基づく「市民調査」への回答率の推定シミュレーション結果
(説明は図1と本文を参照)

[1] 【不正選挙】鳥越俊太郎支持者「出口調査だと70%で圧勝だった 不正選挙ではないか?」 実は…… [無断転載禁止]©2ch.net
(2016年11月13日閲覧、2016年8月2日開始のスレッド)
http://hayabusa8.2ch.net/test/read.cgi/news/1470129099/




2021(令和3)年7月28日修正

グーグル・ドライブのファイルにセキュリティアップデートとやらが適用され、リンクにアクセス不能となる可能性があるとの通知を受け、当該リンクを修正した。内容は変更していない。

(感想文)TPPはトランプ・安倍会談でいかに話し合われているのであろうか

ドナルド・トランプ氏が米大統領選挙を制したという事実は、それ自体、世界が「ノーマライズ」する方向に大きく舵を切りつつある事実を示すものであるが、その流れをますます加速しそうである。バラク・オバマ氏の下での「チェンジ」は、シリアにおける消極策のように、分かりやすく提示される形の変革ではなかった。それに、ヒラリー・クリントン氏を始めとする、君側の奸と呼べる一派を重用せざるを得なかったために、低質なマスメディアに囲まれてきた※1日本人の大半には、随分と理解しにくいものであった。トランプ氏の下での変化は、随分と分かりやすくなってはいるが、そのルールの変化を、日本のマスコミは未だに正確に伝えようとはしない。悪事に荷担してきた当事者であるためである。なお、読売新聞がクリントン氏の当選を見込んでいたことは、『simatyan2のブログ』に紹介されている[1]

安倍晋三氏も、大メディアによれば、トランプ氏向けのシフトに急いで切り替えているとされる。日本時間7時現在、トランプ氏と会談を開始しているはずである[2]が、読売新聞によれば、TPPに言及しない方針で訪米したという。トランプ氏の面前で、TPPにいかに言及するかは、安倍氏の今後の立ち位置を宣言することになろう。安倍氏は、米大統領選挙戦中の9月20日にクリントン氏とだけ会談したが、この方面を推進してきた読売新聞にさえ、この事実は「異例」と評されていた[3]。日本国政府の代表は、同盟国であるとはいえ、不公平に処遇した相手に、今まさに、歓待を受けていることになる。日本の政策判断の基本が官僚集団に拠るものであることは、米国人には良く理解されている社会的事実であるから、トランプ氏は「米国第一(America First)」を前面に押し出して、日本国官僚の思惑を存分に否定しているであろう。クリントン氏とだけ安倍氏が会談していたという事実は、私自身が決して歓迎することではないが、安倍氏自身にも利用可能な事実である。日本国民の大多数にとって過剰に不公正なディールにより、権力の維持を安倍氏が願い出るというケースを、日本国民は覚悟しておかなくてはならない。

ところで、ニュージーランドもTPP法案を11月15日に採決したと報じられて[4]いるが、TPPを面と向かって米国に推進するということはしないであろう。同国は、条約の成立に尽力したという体裁を取っただけであろう。無論、採決自体に影響しないことをふまえての決断であろう。日本が採決した後の動きであり、日本の動きは、理由の一つとして挙げられる材料となっている。日本は、率先してTPP法案を採決したというだけでも、後世において関係国民から非難の的となろう。この点を理解していて、わが国の官僚や政治家たちは、率先してTPP法案を採決したのであろうか。

なお、陰謀論者としての蛇足をひとつ。カイコウラ(Kaikoura)で生じたM7.8の地震(2016年11月14日12:02:56(NZDT, UTC+13:00))[5]をTPPを推進してきた勢力によるものと疑う者もいるが、私は、その是非を判断する材料を有していない。ただ、この疑いを追求することは、戦争屋勢力の衰退具合を診断する上での良い材料となるものである。また、この追求作業は、わが国が戦争屋の軛を脱していないとはいえ、他国においては安全保障上の調査事項の優先順位のトップレベルのものであると予測される。近い将来、それらの真剣なインテリジェンス活動の成果に、われわれも触れることができるかもしれない。

※1 『ダイヤモンド・オンライン』に瀧口範子氏の「トランプを「ノーマライズ」してはならない」という記事[6]があるが、「政治的に正しい(politically correct)」言説を吐きながら自国民の若年層を戦地に送ることで利益を貪ってきた経済が正常であるとは、決して言えない。以前の状態をノーマルだと勘違いしてきた日本人が多くいるのは、マスコミ人の主流派が瀧口氏のような論調を容認してきたためである。

[1] 安倍晋三生みの親「読売グループ」の大誤算|simatyan2のブログ
(2016年11月11日10時04分)
http://ameblo.jp/usinawaretatoki/entry-12218371731.html

[2] 『読売新聞』2016年11月18日東京朝刊14版1面「日米同盟 重要性訴え/首相 トランプ氏と会談へ」(記名なし)

[3] 首相、国連総会でNYに…クリントン氏と会談へ : 北朝鮮 : 読売詳報_緊急特集グループ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
(ニューヨーク=今井隆、2016年09月19日)
http://www.yomiuri.co.jp/feature/TO000301/20160919-OYT1T50045.html

日本の首相が投開票日まで2か月を切った米大統領選の候補と面会するのは異例。クリントン氏が日米同盟を重視していることを踏まえた対応とみられる。

[4] TPP bill signed by Parliament as US signals its end | Radio New Zealand News
(Radio New Zealand、2016年11月15日20時19分)
http://www.radionz.co.nz/news/political/318141/tpp-bill-signed-by-parliament-as-us-signals-its-end

The government's Trans Pacific Partnership (TPP) legislation has passed its third reading at Parliament this afternoon, despite the likelihood the trade deal won't proceed.

[5] GeoNet - Quakes
(GeoNet - Quakes、2016年11月18日07時31分)
http://www.geonet.org.nz/quakes/2016p858000

[6] トランプを「ノーマライズ」してはならない (ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース
(2016年11月16日06時00分)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161116-00108207-diamond-int&p=2


2016(平成28)年11月18日18時追記

日経[7]・朝日[8]・読売[9]の三紙夕刊の論調についてメモする:日経と読売は、TPPを推進したいと安倍氏からトランプ氏に向けて話したと見られると報じているが、朝日はTPPに係る安倍首相の言動には立ち入って解説していない。この状況は、日本側の出席者が(守秘義務が当然に発生しているであろう)通訳を除けば、安倍首相だけであったという条件によって、制限された状態にある。安倍氏だけで話の内容を過不足なく受け止めることができたのであろうか、という一抹の不安がある。

本日の安倍氏とトランプ氏の会談の形式は、日本国の主権者である日本国民にとって、真相が「藪の中」になる方向性が決定されていたものと評することができよう。後世において、この会談に至る調整の過程は、大平洋戦争に至る上で外務省が果たした(あるいは果たし得なかった)役割に近い位置付けを与えられることになろう。通訳が外務官僚であったとすれば、要点に係る記録は取られているとはいえ、メモ扱いになろう。わが国政府の組織としての実力は、関与した成員個人の力量が他国のカウンターパートに見劣りするものではないにもかかわらず、期待される水準に到達しないことがしばしばある。内閣官房か外務事務次官か米国大使の責任と認められると評しておく。見届人が見届人の役割をしばしば逸脱しつつも歴史の転換点において責任を全うしないというオチは、日本の官僚機構の伝統芸であると結論付けられよう。

本ブログの隠れた目標のひとつに懸かるので、忘れないうちに脱線気味にメモしておくと、丸山眞男氏が評したドイツ人戦犯のニュルンベルグ裁判観は、ハンナ・アレント氏の見たアイヒマン氏のエルサレムにおける裁判とは、随分と印象が異なるようである。アレント氏のアイヒマン氏への評価は、丸山氏の東京裁判戦犯への評価と共通するものがあり、丸山氏のドイツ人戦犯への評価とは対立する関係にある。何か(勇気やプリンシプルや哲学や思考)の欠如こそが巨悪の原因と見做されうるという仮説は、本件会談を取り巻く日本側官僚制にも適用可能であるといえよう。

本件会談は、朝日新聞には「異例」[8]と評されたが、この記述は、瀧口範子氏の紹介する「ノーマライズ」という表現に同調的であると断定できる。つまり、『朝日新聞』は、TPPについてこそ日本的な動きに与していないものの、既存のマスメディアの路線を固守していると評することができる。トランプ氏の大統領就任に反対するデモには、ジョージ・ソロス氏に関連する組織が雇用するものが含まれるという[10]が、朝日新聞の本件記事は、この役回りを果たすものと言えよう。バスでデモ隊が到着したことなどを、まとめて報じるブロガーもいる[11]から、信憑性のあるものと考えて良かろう。なお、紹介したリンク先に設置された別サイトを参照するウィジェットには、不快な画像が含まれる可能性があるため、JavaScriptを無効にして閲覧することを強く推奨するが、この設定自体、記事を掲載したサイトに対する嫌がらせの一環である可能性も認められる。これらのデモは、通俗的にいえば、やらせであり、学術風には「人工芝運動(Astroturfing)」である。アメリカ国民は、各人が、ウクライナにおいて「正体不明」のスナイパーが警官にもデモ隊にも発砲していた事実を想起し、あくまで平和を志しつつも警戒する必要がある。

[7] 日本経済新聞2016年11月18日夕刊東京4版1面「首相「信頼築けると確信」/トランプ氏と初会談」
(記名なし)

 会談は〔...略...〕自宅部分で、通訳を交えて1時間半近くに及んだ。トランプ氏の長女のイバンカ〔Ivanka Trump〕さんと夫のジャレッド・クシュナー〔Jared Kushner〕氏に加え、大統領補佐官(国家安全保障担当)への起用が有力視されるマイケル・フリン〔Michael Flynn〕前国防情報局長が同席した。日本側は通訳を除いて首相のみだった。  〔...略...〕
 〔...略...〕トランプ氏が脱退を主張する環太平洋経済連携協定(TPP)を巡っては自由貿易を推進する観点から意義を説明した可能性がある。首相はTPPはアジア・太平洋地域の繁栄につながり米国の国益にかなうとみている。
 〔...略...〕

[8] 朝日新聞2016年11月18日夕刊東京4版1面「首相「信頼築けると確信」/トランプ氏と初会談/大統領就任前、異例」
(記名なし)

[9] 読売新聞2016年11月18日夕刊東京4版1面「首相「信頼築けると確信」/トランプ氏と初会談」
(記名なし)

〔...略...〕首相は日米同盟や環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめとした自由貿易体制の重要性を訴えたとみられる。

[10]Soros-Funded Orgs Behind Violent Anti-Trump Protests Across America
(Helicondelta、2016年11月12日13時43分41秒)
http://www.freerepublic.com/focus/f-news/3493111/posts

[11]Billionaire Globalist Soros Exposed as Hidden Hand Behind Trump Protests -- Provoking US 'Color Revolution'
(Jay Syrmopoulos、2016年11月10日)
http://thefreethoughtproject.com/soros-trump-protests-revolution/
〔注:ウィジェットには不快な画像が含まれる可能性があるため、JavaScriptを無効にして閲覧することを強く推奨する。〕



2016年11月19日09時追記

トランプ氏と安倍氏との会談に同席し得た日本側の人物は、通訳と内閣広報室の写真撮影担当者の二名であることが、今朝の朝刊三紙の内容を統合する※2ことにより、確定できそうであるが、しかし、会談の内容について責任を持って言及できる日本側の人物が安倍氏を除けば存在しないことは、依然として変わらない。本件会談を日本人が理解する上で重要なことは、一国の宰相が後世の日本人に対して説明責任を果たす上で必要な措置を講じなかったことにある。忘れてはならないのは、トランプ氏の政権移行チームの位置付けは、日本側会談関係者の側が見做す内容(すなわち私人であるかのように広報する)とは異なる点である。いち日本人としては、日米会談と表現したいところであるが、米国側関係者は、国の制度に則り粛々と進めているところ、日本側関係者が一国の政府として十分に機能しているかを問うたとき、日本は、今回の会談が公務であるにもかかわらず、国としての体裁を成した形で作業を実施しておらず、否と答えざるを得ない。このように、形式(日:公務、米:公務だが日本側は私用であるかの扱い)と実質(日:私的、米:歓待の形式こそ「ホーム」であるが実質公的)における公私の逆転が生じているところは、何とも皮肉である。

本日も憶測に満ちた記事で新聞の1面が埋め尽くされているが、トランプ氏のチームの側は、能動的にメディア・コントロールしているであろうところ、安倍氏は、単にトランプ氏の側から口止めされているか、会談の内容を理解できていないだけであろう。もっとも、安倍氏のメディア・チームの力量は、日本人読者の大半を相手にする分には十分なものである。とはいえ、通常の批判的精神を有する視聴者を相手にするには、かなりの能力不足であるから、会談の内容を咀嚼して公表する上で、多くの時間を要しているとも見ることができる。この遅れが事実であるとすれば、状況に対する主導権は、安倍政権下における「インテリジェンス機能の拡充」云々の題目にもかかわらず、失われていると読むことができる。日本のマスメディアこそ、政体によってアンコン(under control)されているといえようが、米国支配者層の変化という状況そのものには、何ら対応できていない。

傍目から見れば破綻しているこの状態は、本件会談に係る日本側関係者の中では、R・ターガート・マーフィー氏も指摘する「二重思考(double-think)」によって、統合された状態にあると推認できる。マーフィー氏は『日本・呪縛の構図』(2015, 仲達志[訳], 早川書房)において、日本の支配階級層の目的が「誰もが安全で人並みの生活を送れるようにすること」から「国民を全面的に統制」することへと変容していること、国民の利益という建前と支配者の私益という本音との乖離状態が、支配者層の精神状態の中では、オーウェルの『1984年』にいう「二重思考(double-think)」によって統合されていると解説する〔第5章、初出はpp.31-34〕。マーフィー氏の分析は、近世以前の歴史解釈のいくつかには(教科書的な理解からすれば)違和感が残るものの、正統的な日本研究の延長にあると理解できるものである。

会談の内容が日本側から積極的に公表できるような内容であるはずがないことは、注意深い日本人の読者には、最初から了解されていることであろう。会談内容を公表するか否かに係る主導権は、トランプ氏の政権移行チームの側にある。加えて、日本側関係者にもっぱら係る要因として、米日両国の力関係に対する日本側関係者の能力と解釈、安倍氏の能力、外務省関係者のここ数ヶ月の業務に係る責任に対する肚の決め方、マスメディア自身の取材能力など、何重ものハードルがある。これらの要因がすべて情報を公開するという方向に作用しなければ、日本語話者から情報が日本語として提供されることは、あり得ない。

なお、佐藤優氏が、本件会談の答え合わせともいうべき解説を、TBSラジオ『くにまるジャパン』(2016年11月18日)で加えている。佐藤氏は、ペルーのリマでオバマ氏に会談した後、NYで会談すべきであった、と指摘する。また、国と国の関係を優先し、オバマ氏の8年の業績を賞賛した後に、次期に国を担うトランプ氏のチームを訪問すべきであった、と解説する。今回の安倍氏の訪米は、本末転倒であり、失敗であったが、失敗であるという事実を糊塗するために大本営発表を続けるであろうとも予測している。ロシア会談も控えているところ、オバマ氏の米国を軽んじることは得策ではない、今後の外交は混乱すると予測している。

※2 日経は、読売・朝日の二紙を差し置いて、参照するだけの材料に乏しい。朝日は、1面で下記引用のように伝える[12]。読売は、「外務省関係者」の弁として下記引用のように伝える[13]。解釈すれば、日本側関係者である「外務省幹部」たちの想定は、完全に機先を制されたことになる。蛇足であるが、トランプ氏の政権について、読売2面でリチャード・アーミテージ氏が解説している[14]が、自身がトランプ氏に反対し続けてきており、党内での反対が3分の2に上るなどと解説してきた(2016年7月25日)ことは、触れられていない。

[12] 
『朝日新聞』2016年11月19日東京朝刊14版1面「首相、トランプ氏と初会談/信頼協調 内容は非公表/異例の就任前 予定超す90分」(記名なし)

〔...略...〕
 会談には、日本側は安倍首相と通訳だけでメディアは入れず、撮影も内閣広報室の写真担当者だけに許された。〔...略...〕

[13] 『読売新聞』2016年11月19日東京朝刊13版6面国際「親族重用 会談に同席/長女の夫 政権入り憶測」(ワシントン=小川聡)

〔...略...〕自宅応接間は豪華絢爛だ。外務省幹部によると、日本側は首相とトランプ氏の1対1の会談のつもりだったが、首相がトランプ氏の自宅に到着したところ、応接間にはトランプ氏とともに、クシュナー夫妻、トランプ氏の外交・安全保障問題の側近マイケル・フリン氏がおり、自然な流れで同席したという。
〔...略...〕

[14] 『読売新聞』2016年11月19日東京朝刊14版2面総合「トランプUSA 識者に聞く/リチャード・アーミテージ 元米国務副長官/早期の安倍会談 大きな意味」(聞き手・ニューヨーク支局長 吉池亮)
#要旨は大略次のとおり。トランプ氏が当選したのは国内問題への公約が支持された、アジア・欧州・中東諸国との関係を「考え直す際には、これまでの歴史を十分に理解した上で慎重に判断すべきだ」。同盟国との関係が大きく変わることは考えにくい。米軍駐留費経費負担の問題を軽視している。トランプ氏は「直感」に頼りがちであるから早期会談の実現は意味があった。安倍氏が直接面会した初のリーダーであることは「私も誇らしく思っている」。

2016年11月13日日曜日

(感想文)ドワンゴが人工知能でゾンビ的な人体の動きを再現

本日(2016年11月13日)21:00~21:49の『NHKスペシャル』は「終わらない人 宮﨑駿」[1]であり、宮崎駿氏がCGを利用したアニメーションに初めて取り組む700日を密着取材していたが、そこで題名の件を知った次第である。再放送はNHK総合で11月16日(水)午前0:10。取材中(番組終盤)、株式会社ドワンゴ取締役会長の川上量生氏が、人工知能を利用したアニメーションについてプレゼンするために、開発チームとともに訪れる。そこで宮崎氏に提示されたのは、人体の重量・可動域と、おそらく筋肉量まで計算に含めて人工知能に計算させた、地面を這う人体の移動アニメーションだった。痛みを感じないために、(頭と胴体を尺取り虫のように利用して)這い回る格好になったのだと解説されていた。宮崎氏の反応は、次の@rienda0211氏のツイートに要約される通りであった。

人間が痛みを感じず、脳機能を最低限しか用いず、筋力をなるべく節約して移動するとすれば、確かに、ドワンゴのチームがプレゼンしたような形で、人間は移動するかもしれない。逆説的ではあるが、この動画から、人間や高度な動物の多くが痛みを感じることができることの不思議さと重要さを汲み取れよう。人間も、また動物の多くも、ほかの生物が少なくとも目の前で痛がられている場面に居合わせれば、(捕食であれ、保護であれ)その様子に反応できる存在である。以前、人工知能は良き教師あってこそと述べた(2016年1月7日)が、ここでも同じ提言を繰り返すと同時に、生物が同種に対して、ときには異種に対してさえ、痛みを感じることのできる存在であることを教える必要があると感じた次第である。

ヒトが何によってゾンビと分かたれる存在であるのかを探求する上では、ドワンゴのチームによるプレゼンは、何事かを提示したのではないかと評価できる。ただ、そのような学究的な興味は、人類の文化的活動の最高の成果を追求して止まない宮崎氏の方向性とは、明らかに別方向を向くものである。基礎研究に留まる内容を、いきなり実務の最前線の先頭を切って走り続けようとする人に投げ掛けても、戸惑われるだけであろう。不幸な巡り合わせではあったが、この会合がなぜ不幸なものとなったのかを問い続けることなしには、人工知能の現在の開発者は、後世に恨まれる仕打ちをしでかすことになろう。人工知能の進化の過程は、必ずしも、「超人工生命LIS」[2] のように、現在の地球における生態系の原理(=貪食しない)を後追いするものとはならないであろう。現在の生態系と明らかに違う原理で作動する人工知能が支配するとき、何が起こるのか。予想するほかないが、多くの場合において、人間は絶滅させられるか、完全に屈服させられることになろう。

[1] NHKスペシャル | 終わらない人 宮﨑駿
(2016年11月13日21:00~21:49)
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20161113

[2] ドワンゴで産まれた超人工生命LIS、ハッカソンでカンブリア紀に突入! - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
(Ryo Shimizu、2016年04月12日)
https://wirelesswire.jp/2016/04/52114/


2016(平成28)年11月18日08時追記

痛みに着目するというツイートは、「たられば(@tarareba722)」氏のものに、すでに見ることができる。今朝、『Togetter』経由で確認した。素直に痛みに着目するという点で、共通する感想が同時多発的に生まれていたとすれば、私の上記見解は、ヒトの直感として、ずれていなかったことになる。

【終わらない人 宮崎駿】痛みを知らない人工知能によるCGの動きを「生命への侮辱」と一喝 (2ページ目) - Togetterまとめ
(2016年11月18日08時11分)
http://togetter.com/li/1048151?page=2

2016年11月10日木曜日

(メモ・感想)米大統領選の結果を日本人は祝うべきである

昨夜(平成28年11月9日)のTBS『News 23』のインタビュイーは、デイブ・スペクター氏と笹川平和財団特任研究員の渡部恒雄氏であったが、両名の解説は、両氏がトランプ氏の当選を喜んでいないという印象を与えるものであった(23:10頃)。スペクター氏は、トランプ氏が在日米軍駐留費用を日本が十分に負担していないと批判したことについて、「三流の週刊誌程度のことをアメリカ国民に」語っているなど、不勉強であり続けてきたと批判し、今後は米軍関係者らによって、在日米軍の意義について、十分な説明がなされるであろう、トランプ氏は単独で何事かを成し遂げるだけの政策を持たない、と解説していた。渡部氏は、「安全保障こそ、大きな変化がないであろう」と予測していた。これらの両氏の説明は、トランプ氏を呼び捨てにしていることからもトランプ氏に対して反感を抱いた上でのものであることが分かるものであり、「ノーサイド」という雰囲気が感じられないものである。また、在日米軍についての説明は、嘘を伝えているとまでは言えないが、ヒラリー・クリントン大統領の下で懸念された大規模な海外派兵を説明しない分、ミスリーディングである。

日本は、戦争屋から海外派兵を強硬に求められるという事態を辛くも免れた。わが国の安全保障環境の悪化がなかったことこそを言祝ぎ、現状よりもより良い安全保障の状態を維持することに注力すべきである。この点、米大統領選は、より小さな悪を選択するという上で、米国民の良識が発揮されたものと思う。民主主義の模範国であり続ける上で、俵一枚残したと評価できよう。他方、日本国民は、世界の潮流がすでに大きく変化した中、孤立する選択肢を採ってしまっていたことに気付かなければならない。

『News 23』キャスターの星浩氏は、メキシコの壁、TPP反対、インフラ改善がトランプ氏の政策の3点として確定的であるとニューヨークから伝えていた(23:22頃)。メキシコの壁は、不法移民(正式ルートの移民は、別であることに注意せよ)を防ぎ、麻薬の密輸を抑止するための政策となり得る。ただし、麻薬密輸は司法組織の引締めが最重要の課題であろう。TPP反対は当然のことであろう。わが国は、TPP法案の成立を通じて、戦争屋のゴキブリホイホイであることを世界中に喧伝した格好となっている。インフラ改善を連邦政府として提唱したことは、ニューディール政策の再来であり、連邦政府による経済への介入であると見做すこともできよう。つまり、思想としてのネオコンにも一定の牽制を行うものとも理解できる。

今回の米大統領選を受けた結果、日本国民が今から望みうる最善の状態は、日本国民の大多数にとって、可能であり得た最善の状態とはならないが、それでも個人個人にとっての局所最適化が可能なだけの余地を残すものとなった。米大統領選の結果は、日本人にとって、より悪いものとなり得た。蛇足となるが、今後の日本社会の改善には、日本国民がすべての問題をゼロベースでとらえ直し、その過程で戦争屋の走狗となってきた人物を慎重かつ大胆に切り分け、かなり多数の「戦犯」を追及して一罰百戒に処すという作業が必要となる。第二次世界大戦後のように、「逆コース」が必要となることはない。わが国の伝統は兵隊が精強である一方で、将校が無能というものである。立場が人を造るため、私は、わが国の政体(鉄の五角形でも四角形でも、表現は何でも良いが)をごっそり入れ替えることについて、それほど悲観していない。政体の入れ替えを進める中で、自ずと頭角を現す人物も輩出されるものと考えられる。(それに、大抵の人物の健康状態は、権力に長く留まることを許すものとはならないであろう。)日本人がベストな(安逸な)生活を望み得ない状態は、外形的には、福島第一原発事故の混乱を通じて、日本国民が選択した結果であるから、やむを得ないであろう。社会の大勢が、2014年12月の衆議院選挙において、不正選挙の可能性を陰謀論として真摯に検討しなかったことも、原因の一つではあろう。複合的な原因が関与した結果、長期間にわたる大規模な国勢の低下は避けられない。ロシアは、チェルノブイリ原発事故を経て30年、ようやく現在の権勢を取り戻した。わが国は5年の無為があり、このために国民の大多数の健康状態は大きく悪化したと思われる※1ために、現時点から性根を入れ替え、かつて指摘したような(2016年1月16日)大胆な対策を実行したとしても、社会の回復には、半世紀以上を要するであろう。しかし、現今の状態にあるわが国であっても、将来に向けて個人の自己実現が可能な社会を将来に向けて再度作り上げていくことは、不可能ではない。

ともあれ、今回の米大統領選の結果は、日本人にとっても、良き生を全うするための基盤となる社会を再建するための前提条件として、必要なものであった。日本人にとって、これからが正念場である。

 

※1 大多数の関東以北の住民は、確実にQALYの低下を体験しつつある。原因が見えにくくされているだけであり、世界にほとんど類例のない虐殺と後世に評されうる程度の低下である。この状況が、どのように顕在化し、国際情勢に影響するのかについては、まだ予想が付かない。QALYは、Quality Adjusted Life Yearsの略で、質(的)調整生存年と訳される。既存の定義はあるが、自己流に解説すると「本人にとって満足できる健康状態で過ごせる寿命」。ただ、QALYについては、計測という行為に際して、個人の主観と他者からの客観的評価との比較可能性が解決されていないために、疑義も呈されている。この功利主義に係る話に立ち入ることは、本稿では行わない。

2016年11月9日水曜日

(メモ・感想)ドナルド・トランプ氏の勝利は日本人にとって歓迎できる

ドナルド・トランプ氏が、当選確実と言われる[1]。ABCテレビが報じたと、多くの日本の放送局が転送している。大方、スウィング・ステートと呼ばれる州において、軒並み、地滑り的勝利と呼べる内容となっているようである。東部標準時(EMT; -05:00:00)で、午前2時頃まで要したことになる。

トランプ氏が大統領就任することを受けて、日本にも色々と影響が生じるであろうことは、必定である。その変化を乗りこなすことができれば、わが国の生存に大きく役立つものとなることは、本ブログで何度か繰り返した。共和党政権ではあるが、戦争屋が排除されたために、より穏当な形での日米関係が再出発することになる。にもかかわらず、『Yahoo!ニュース』で跋扈してきた日本語話者たちは、大勢が悪化すると信じているようである[2]。この大半の日本人の「懸念」には、根拠がない。それだけでなく、責務に対して能力不足である指導者層がこの理解を共有しているとすれば、有害に機能しさえする。誰しも生きることにおいては平等であるが、適材適所という考え方が存在することも、世の道理である。わが国の指導者層には、より有能な人材が求められる。

表:Yahoo!ニュースによる意識調査の結果(2016年11月9日17:12閲覧)
選択肢割合票数
良くなる6.3%603
変わらない22.3%2126
悪くなる71.4%6818

『Yahoo!ニュース 意識調査』に見るような「日本人」の悲観論は、わが国の情勢を二点示しており、問題含みである。一点目は、ヒラリー・クリントン氏の飼い主であった「戦争屋」の手下たちが、まだわが国では大きな顔をしていられることを示す。二点目は、わが国が良い方向へと変化することを望み薄にする心性が日本人に骨がらみであることを示す。「第二の敗戦」の事実は、今夏の陛下のお言葉により、「日本人」の誰の耳にも聞こえてはいるのであるが、理解はされていないままである。一点目にある戦争屋の手下とは、言うまでもなく現政権であるので、この説明は省略しよう。二点目の説明には、マスコミの世論形成機能が深く関係している。

71年前の敗戦に至る過程における大本営発表ならびにマスコミの悪は自明であるが、この敗戦においてマスコミが果たした役割は、今回のアメリカ大統領選挙を受けて「日本人」視聴者が抱いた感想に対しても同様の責任を有する。第二次世界大戦当時のエスタブリッシュメントは、少なくともその多数は、絶対評価によれば、現在のエスタブリッシュメントよりもはるかに優秀であったが、いくつかの理由のため、課題の大きさ・重さに対しては、相対的に能力不足であった。彼ら支配層は、大本営発表が続き、大マスコミも追随するという条件下で、国民をいかに誘導して終戦にこぎ着けるのかという困難な課題を抱えることになった。1944年7月9日のアメリカ軍によるサイパン島占領宣言の時点で明確な潮流は見えていたはずであるが、終戦工作は、翌年までの間に非常に数多くの民間人の犠牲を生むに至った。物的な窮乏状態は、一部の強硬派を説得するには不足しており、犠牲の多さが明白な負けを悟らせるために必要とされた。原爆が必要であったとするトルーマン声明は、当時のわが国の指導者層の一部にのみ有効なロジックとして機能するものであるが、当時の指導者層の全員が原爆投下前に白旗を揚げることに同意できていなかった以上、政治的なレトリックとしては成立するものであったと言える。人道的に許容されるものではないことは、自明であるが、重ねて申し添えておかないと、誤解する向きもあろう。いずれにしても、1945年当時は、ペンの力は剣に相対したときに圧倒的に弱く、剣に脅されてこそペンの力が発揮されていた、と評価することができよう。

アジア・大平洋戦争においてポツダム宣言を受諾する過程に至る当時の指導者層を評価するためには、内部に強硬派、周囲に権力に従属的なマスコミという敵を抱える状態であったことを理解する必要がある。もちろん、この構図は、現今のわが国にも該当する。しかし、国民主権であるという建前が存在すること、マスコミの一方的な報道が多数の国民に効いていること、インターネットという個人的な知己を超えた情報取得のルートが一応は確立されるに至ったこと、の三点は、事態を複雑なものにしている。副次的には、人間が高齢化に伴い学習をサボりがちになること、マスコミ情報に接することを学習だと思い込んでいる高齢者が多く存在すること、の二点も影響していよう。

総じて、大マスコミに馴化された大半の日本人にとって、トランプ氏の当選確実は、予期されない出来事であったと言えよう。指導者層さえそうであろう。私が明確に当選を予想していたとは、外形的に判断できないかもしれないが、それでも、クリントン氏の当選よりも、トランプ氏の当選が99%の米国民の国益に適うことを充分に指摘してきたつもりである。99%の米国民の利益は、99%の日本国民の利益につながる。何となく共産主義の表現めいているが、これは事実であるから仕方ない。付け加えておくと、民草の利益は1%の利益でもある。『Yahoo!ニュース』は言論工作の対象となっているであろうから、この論理を理解できない「日本人」が一定数(粘着的なのは30000名程度か)いることまでは確定しているが、この言論工作の場に見られるような蒙昧から、日本国民は解放される必要がある。

 

[1] トランプ氏が当確 米大統領選 | 2016/11/9(水) 16:42 - Yahoo!ニュース
(毎日新聞、ワシントン=西田進一郎、2016年11月9日16:42)
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6220351

AP通信はトランプ氏が当選したと速報。米CNNによると、クリントン氏はトランプ氏に電話し敗北を認めた。

[2] トランプ氏勝利 日米関係はどうなると思う? - Yahoo!ニュース 意識調査
(2016年11月9日17:12閲覧)
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/26442/result

2016年11月6日日曜日

(メモ・感想)ナショジオも白旗を掲げたのか

近日、『ナショナル ジオグラフィック チャンネル』で『ライバルが暴く 真実と秘密』(原題:The faces、2016/11/08 11:30、2016/11/09 20:00、2016/11/09 21:00、2016/11/13 15:00)が放送されるそうであるが、そのキャッチフレーズは、「世界を動かす人々の知られざる素顔に迫」る「ウラバナシ」である。CMが、番組内でヘビーローテーションに乗せられている。著作権の関係上、安全を期してスクショやクリップ録画ができないが、ドナルド・トランプ、ウラジーミル・プーチン、サッダーム・フセイン、アーノルド・シュワルツネッガーの四氏がまるで世界を牛耳ってきたかのように見える番宣である。ごくごく最近までの風潮であれば、明らかに、トランプ氏やプーチン氏をディスるために用意した番組としか思えないのであるが、宣伝自体は、「世界を動かす」人物としてトランプ氏を描くものである。

マスコミの一斉的で執拗なネガティブ・キャンペーンにもかかわらず、少なくとも社会防衛上の正義は、今夏の時点から、トランプ氏の側にあった。ポール・クレイグ・ロバーツ氏の表現を借りれば、「売女」マスコミは、散々ヒラリー・クリントン氏を推してきた以上、どこかで白旗を揚げなければならなかったものと考えられる。そうでなければ、今後、「教養」番組専門の放送局としては、見識を疑われかねないからである。それが今回のCMの作り方につながったのであろうか、と邪推する。日本国内であれば、プーチン氏やフセイン氏をディスるだけでなく、トランプ氏をディスっても構わなかったはずであるが、CMの作りはそうはなっていない。シュワルツネッガー氏は、CMには出てこずに、ウェブサイトでは紹介されている。

ライバルが暴く 真実と秘密|番組紹介|ナショナル ジオグラフィックチャンネル
http://www.ngcjapan.com/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2076