昨夜(平成28年11月9日)のTBS『News 23』のインタビュイーは、デイブ・スペクター氏と笹川平和財団特任研究員の渡部恒雄氏であったが、両名の解説は、両氏がトランプ氏の当選を喜んでいないという印象を与えるものであった(23:10頃)。スペクター氏は、トランプ氏が在日米軍駐留費用を日本が十分に負担していないと批判したことについて、「三流の週刊誌程度のことをアメリカ国民に」語っているなど、不勉強であり続けてきたと批判し、今後は米軍関係者らによって、在日米軍の意義について、十分な説明がなされるであろう、トランプ氏は単独で何事かを成し遂げるだけの政策を持たない、と解説していた。渡部氏は、「安全保障こそ、大きな変化がないであろう」と予測していた。これらの両氏の説明は、トランプ氏を呼び捨てにしていることからもトランプ氏に対して反感を抱いた上でのものであることが分かるものであり、「ノーサイド」という雰囲気が感じられないものである。また、在日米軍についての説明は、嘘を伝えているとまでは言えないが、ヒラリー・クリントン大統領の下で懸念された大規模な海外派兵を説明しない分、ミスリーディングである。
日本は、戦争屋から海外派兵を強硬に求められるという事態を辛くも免れた。わが国の安全保障環境の悪化がなかったことこそを言祝ぎ、現状よりもより良い安全保障の状態を維持することに注力すべきである。この点、米大統領選は、より小さな悪を選択するという上で、米国民の良識が発揮されたものと思う。民主主義の模範国であり続ける上で、俵一枚残したと評価できよう。他方、日本国民は、世界の潮流がすでに大きく変化した中、孤立する選択肢を採ってしまっていたことに気付かなければならない。
『News 23』キャスターの星浩氏は、メキシコの壁、TPP反対、インフラ改善がトランプ氏の政策の3点として確定的であるとニューヨークから伝えていた(23:22頃)。メキシコの壁は、不法移民(正式ルートの移民は、別であることに注意せよ)を防ぎ、麻薬の密輸を抑止するための政策となり得る。ただし、麻薬密輸は司法組織の引締めが最重要の課題であろう。TPP反対は当然のことであろう。わが国は、TPP法案の成立を通じて、戦争屋のゴキブリホイホイであることを世界中に喧伝した格好となっている。インフラ改善を連邦政府として提唱したことは、ニューディール政策の再来であり、連邦政府による経済への介入であると見做すこともできよう。つまり、思想としてのネオコンにも一定の牽制を行うものとも理解できる。
今回の米大統領選を受けた結果、日本国民が今から望みうる最善の状態は、日本国民の大多数にとって、可能であり得た最善の状態とはならないが、それでも個人個人にとっての局所最適化が可能なだけの余地を残すものとなった。米大統領選の結果は、日本人にとって、より悪いものとなり得た。蛇足となるが、今後の日本社会の改善には、日本国民がすべての問題をゼロベースでとらえ直し、その過程で戦争屋の走狗となってきた人物を慎重かつ大胆に切り分け、かなり多数の「戦犯」を追及して一罰百戒に処すという作業が必要となる。第二次世界大戦後のように、「逆コース」が必要となることはない。わが国の伝統は兵隊が精強である一方で、将校が無能というものである。立場が人を造るため、私は、わが国の政体(鉄の五角形でも四角形でも、表現は何でも良いが)をごっそり入れ替えることについて、それほど悲観していない。政体の入れ替えを進める中で、自ずと頭角を現す人物も輩出されるものと考えられる。(それに、大抵の人物の健康状態は、権力に長く留まることを許すものとはならないであろう。)日本人がベストな(安逸な)生活を望み得ない状態は、外形的には、福島第一原発事故の混乱を通じて、日本国民が選択した結果であるから、やむを得ないであろう。社会の大勢が、2014年12月の衆議院選挙において、不正選挙の可能性を陰謀論として真摯に検討しなかったことも、原因の一つではあろう。複合的な原因が関与した結果、長期間にわたる大規模な国勢の低下は避けられない。ロシアは、チェルノブイリ原発事故を経て30年、ようやく現在の権勢を取り戻した。わが国は5年の無為があり、このために国民の大多数の健康状態は大きく悪化したと思われる※1ために、現時点から性根を入れ替え、かつて指摘したような(2016年1月16日)大胆な対策を実行したとしても、社会の回復には、半世紀以上を要するであろう。しかし、現今の状態にあるわが国であっても、将来に向けて個人の自己実現が可能な社会を将来に向けて再度作り上げていくことは、不可能ではない。
ともあれ、今回の米大統領選の結果は、日本人にとっても、良き生を全うするための基盤となる社会を再建するための前提条件として、必要なものであった。日本人にとって、これからが正念場である。
※1 大多数の関東以北の住民は、確実にQALYの低下を体験しつつある。原因が見えにくくされているだけであり、世界にほとんど類例のない虐殺と後世に評されうる程度の低下である。この状況が、どのように顕在化し、国際情勢に影響するのかについては、まだ予想が付かない。QALYは、Quality Adjusted Life Yearsの略で、質(的)調整生存年と訳される。既存の定義はあるが、自己流に解説すると「本人にとって満足できる健康状態で過ごせる寿命」。ただ、QALYについては、計測という行為に際して、個人の主観と他者からの客観的評価との比較可能性が解決されていないために、疑義も呈されている。この功利主義に係る話に立ち入ることは、本稿では行わない。
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