2016年8月11日木曜日

千葉大学の公表した大学生の投票率に係る調査について(メモ)

平成28年3月29日 国立大学法人千葉大学 ニュースリリース
住民票を移さない大学生の投票率、たったの21%!
(PowerPoint プレゼンテーション - 20160329_2.pdf)
http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2015/20160329_2.pdf

投票参加についてのアンケート - Google フォーム
https://docs.google.com/forms/d/1Y1Sb_P60K2_AprmXmDU49hF2kPwNy3GjdceSk2zfilI/viewanalytics

 千葉大学法政経学部倉阪秀史ゼミの学生は、同学生に対して、住民票を移していないことが低投票率につながっているのではないかという推測を示している。全252名中、実家を離れて暮らしている者が118名、そのうちの80名が住民票を移しておらず、さらにその21%(#17名であろう)のみが投票している。回答者全体では97名(38%)が投票しているので、住民票を移した者・実家暮らしの者の合計172名中、80名が投票した(47%)ことと比べると、大きな差であると言いうる。他方、この選挙(平成26年12月14日執行衆議院選挙)の20歳の投票率は、東京都選挙管理委員会によれば42.17%※1である※a。住民票を移さない割合は、明るい選挙推進協会によるアンケートの結果※2と、同程度と見て良いであろう※bから、東京都においても、おおよそ同じ話は通用するであろう。

 ところで、20歳未満であったという回答が全回答者の中に45名いる。この45名を、実家暮らしの回答者・実家を離れて暮らす回答者のそれぞれに等しい割合となるように分配する※cと、45*(80/252)=14.28名。14名が住民票を移していない実家から離れて暮らす千葉大学の学生の回答者であると仮定すると、実家を離れて暮らす千葉大学の学生は、80-14=66名中、17名のみが投票したということになる。17/66=0.257なので、約4分の1が投票するという計算になる。この値は、20代全体の投票率から見ても低いものである。(従来なら20歳の)初めての選挙では、投票率が高くなる。

 大学生の暮らし方について、東京都と千葉県との間で大きく変わるという仮定は、否定することができない程度に有力なものである。実家が埼玉県内なら、武蔵野線沿線を除けば、千葉県は遠くなる。神奈川県なら反対側、2時間を要する。千葉大学に通うとき、実家暮らしするのか、近くで下宿等するかという判断は、山手線周辺に大学がある場合と比べて、判断が分かれるであろう。

 おおよそ、実家から離れて暮らす大学生は、住民票のある実家に帰宅している最中であれば、1割程度、投票に行くようになる、と仮定することは、無理筋とまでは言えない。2014年12月の衆院選は、12月14日投開票であったから、ちょうど、今夏の参院選と同様、大学3年生にとって休暇前であったという点では共通する。今回のように、休暇の有無だけにより、投票率の増減を説明できるだけの選挙結果を見出すことができれば、何らかの結論を得られるかもしれない※d



※1 東京都選挙管理委員会>年代別投票行動調査結果>概要>年代別・選挙別推定投票率一覧表(エクセル形式:49KB)
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/senkyobetsu_suitei_ichiran.xls

20歳:42.17%、21~24歳:32.98%、25~29歳:34.85%

※2 18歳選挙権認知度調査(公益財団法人 明るい選挙推進協会、平成27年6月実施)18sai_bunseki.pdf
http://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2010/07/18sai_bunseki.pdf

(12)「あなたは、現在あなたが住んでいる所に住民票を移していますか」
まず「 親御さんと一緒に住んでいますか」と尋ね、一緒に住んでいないと回答した人に「移している」、「移していない」、「わからない」の中から1つ選んでもらった。調査結果を身分別で見てみると、高校卒業後、親元を離れて進学した短大生や大学生、大学院生等は26.4%しか住民票を移していない。しかし、社会人になると71.8%が住民票を移している。高校生・高専生は7.1%しか移していると回答していないが、その多くは親御さんと同居しているため、サンプル数が少ないことを考慮する必要がある。

 移している移していないわからない
高校生・高専生(56)7.1%41.1%51.8%
大学・大学院生(予備校生含む)(390)26.4%63.3%10.3%
社会人(主婦等含む)(433)71.8%16.4%11.8%

上記の選択肢の中で「大学・大学院生(予備校生含む)」と「国や地方の政治への関心度合」とをクロス集計してみる。「非常に関心がある」人の28.3%、「ある程度関心がある」人の33.3%が住民票を移しており、以降、「あまり関心がない」、「全く関心がない」、「わからない」と段階的に減少していく。「関心がある」人でも3割前後しか住民票を移していない。
※a 東京と千葉大学周辺を同質の地域と見なすと、千葉大学の公表した調査が偏りのないものであるとは言えないであろう。都選管の年代別投票率は、選挙人名簿から再現しているはずであり、いわば全数調査であると認めることができるためである。他方、千葉大学の公表した調査をバイアスのないものと認め、千葉大学周辺と東京が異なる居住環境にあること(一般的にはマイナスであろう)、また、大学生と20歳全体とは違いがある(一般的にはプラスであろう)ものと考えると、今回の調査の差、5%という数値は、居住環境と大学生という複合的な要因により生じる投票率の差であると捉えることもできる。適当きわまりないが。なお、ここで、私が追究しているような選挙上の不正は、まず間違いなく、影響していない。第一に、選挙人名簿自体に係る不正は、現時点までに不正を行ってきた側にとって、手段もなければ、着手する利益もない作業であるからである。第二に、選挙人名簿の人数を操作するという手法が可能であれば、今までに私のような一般人でも把握することができたような、ある種類の不正が行われることがなかったであろうと考えられるためである。

※b 選挙に行ったか行かないかよりも、センシティブな話である、ということくらいは、どのような大学生であっても理解しているであろう。

※c なお、生まれ月は、年少児童の成績及び体育能力と交絡することが知られているので、地方学生 (実家から離れて暮らす層)における学業成績と生まれ月との関係も、交絡しうる可能性は存在する。しかし、今回の調査は、千葉大学全学に対するものであり、学部ごとに受験の難易度が異なるであろうから、この交絡要因は実質的には見られないものと仮定しても、実際的な問題は生じないであろう。

※d なお、この作業において、非集計型の統計モデルを仮定することは、「牛刀を以て鶏を割く」類いの話になるので、必要ないものと考える。それに、千葉大学の公表した調査は、「住民票を移した回答者がどれだけ投票したのか」というデータを提供していない。この提供されていないデータは、「住民票を移した東京都内在住の大学生等で、夏休みで地方に帰省したために都知事選に投票しなかった者」の割合を推定するために役に立つのであるが、私の知りたいことに対しては、むしろ、このデータの方が「効く」ために重要である。東京から地方の大学に進学する学生も多いことと思うが(しかも、両親や本人の関心が高い層であると思うが)、今でも、地方から東京に進学する学生の方が多いであろうからである。

2016年8月10日水曜日

福島第一原発事故についての英語ブログ(メモ)

#外国語で福島第一原発事故後の日本の状況を発信するブロガーはどれくらいいるのか、のメモである。それぞれ、アップデートの頻度も停滞しがちなように見える。


The Hiroshima Syndromeは、外国向け英語情報をソースとする。外形的には、被害の限定化を目的に執筆されているブログであると判定できる。3件をアップデートしているが、うち1件の甲状腺癌検査については、『Science』のDennis Normile氏の記事を引用する形で「福島の子どもたちの報告された甲状腺癌は、原発事故と何ら関係がないことを記録が示している」と述べるに留まる。Normile氏の記事は、東京大学の渋谷健司氏の見解を基本に置くものである。Normile氏の記事からは、現地取材の跡を文面から読み取ることができない。

英語とフランス語に記事を翻訳して発信しているのは、『Fukushima Diary | Fukushima accident to go-on 40 more years』の氏である。ブログ主が日本語を読めるので、記事を選定する基準は比較的柔軟である。現在、ルーマニアから発信しているとのこと。基本的には二次情報。

Anne Kaneko's Fukushima Blogは、郡山に在住されていたKaneko氏によるブログであるが、2014年の3周年を機に、郡山から離れることもあり、閉鎖された(が、それまでの記事は閲覧できる)。一次情報も元にしている。

平成28年7月31日執行東京都知事選挙の期日前投票数の増加について

要約

本稿では、先月(2016年7月)の都知事選に係る期日前投票結果を考察するために必要な材料を提示する。最初に、制度の開始時期とおおよその規模について確認する。次いで、先月の参議院選挙と都知事選の期日前投票の割合が異なることを確認する。最後に、この差が生じた要因として検討すべき内容を思いつくままに挙げてみる。本稿では、あくまで謙抑的に考察を進める予定であり、一部の向きが私に対して予期するような「ちゃぶ台返し」は、別稿にて行う予定である。

#つまり、本稿に示す内容は、あくまで客観的に検証することの可能な内容であり、肯定も反論も、的確に行うことが可能なはずのものである。

本文

期日前投票制度は、従来の不在者投票制度の一部を代替する形で、2003年12月1日から施行された制度※1である。平成28年の時点では、地域や選挙の種類にもよるが、有権者数の1割から3割程度に相当する票がこの制度を利用して投じられたものとなっている。平成28年7月31日の都知事選挙において、期日前投票数は、都全体の全選挙人名簿登録者数に対して15%を、町村部に限定すれば19%を占めている※2。期日前投票数は、現時点では、選挙結果を大きく逆転させうるほどの規模に達していると言うことができよう。

 これに対して、従来の不在者投票は、期日前投票制度の導入直前には、多くとも、当日有権者数全体の1割程度を占める程度であった。たとえば、期日前投票制度の施行直前の2003年11月の衆議院選挙については、東京都の不在者投票数は、63万票近く、全投票数の約6%であった※3。全島避難となっていた三宅村については、有権者数の3割に達している※3が、これは、例外であろう。不在者投票では封書して署名する必要があるため、この作業の不要な期日前投票が気軽さから投票へのハードルを下げたという側面があることは、否定できないであろう。

 東京都における期日前投票の動向は、選挙日が一年のどの時点にあるかによって、多少の変動を受けるであろう。人間が習慣や季節に影響される社会的生物であり、わが国の四季がかなりの変化を有するものである以上、選挙日に対して何らかの仮説を措くことは、無駄ではなかろう。ただし、仮定を措かないことも、否定されるべきことではない。投票者をモデル化するにあたり季節や社会的属性(特に出稼ぎ者や学生等)を考慮することは、推定の確度を向上させる上で必要なことと考えられる一方で、現時点の私のように、当局の公表する集計データだけを利用する分析者が個人的属性に影響されるであろう内容までを考慮することは、作業として過大となりうるためである。

 しかしながら、先月の参議院選挙よりも東京都都知事選挙における期日前投票数が147718票も増加しているという統計上の事実は、この票数が都知事選挙の当日有権者数から見れば1.33%あまりに過ぎないものである一方、誤差と言い切るには微妙さの残るものでもある。この1.33%という差は、いわゆる非集計モデルを仮定した場合に、何かの要因を取り込み損ねたのでなければ生じない程度に大きな誤差である。モデル適用先となる東京都内の有権者数が1108万人にも達するからである。この事実を、最もシンプルな形のシミュレーションを通じて確認しよう。

 各選挙における当日有権者数を試行回数とする、各選挙における期日前投票数を当日有権者数で割った値を確率とみなす二項分布を想定し、これらに従う実現値を10000回分得る。その分布を下図に示す。実現値を真値とみなせば、期日前投票率がふたつの投票間で異なる、という命題は、成立するのである。本来、シミュレーションの手続としては、ふたつの投票に係る期日前投票率に何らかの分布を仮定して、その分布を個人に当てはめるという手順が正統である。しかし、ここでの主張は、単に、ふたつの投票における期日前投票率が基本的に異なるものである、というものに過ぎないから、下図で十分に示すことができようし、また、そのような知的負荷の高い作業手順を遵守することは、私のような行き当たりばったりな思考形態の生物には無理である。

図:平成28年7月執行参議院選挙と都知事選挙における期日前投票率について
二項分布を仮定した場合のシミュレーション結果(10000回、赤:参議院選挙、青:都知事選挙)

 ともあれ、どのような方法であっても、おおよそ、非集計モデルによる限り、都知事選の期日前投票率が高い、という結果になりそうであることは、上図によって示せたものと思う。なお、上図では、x軸方向を300個に分割し、ヒストグラムを描画させている。具体的な方法は、このRファイルに示した。シミュレーションには、『R』を利用し、描画には『ggplot2』ライブラリを利用した。

 都知事選と参院選に係る東京都全体の当日有権者数と期日前投票数については、このRファイルに示したとおりであるので、再度の掲示は省略するが、わずか3週間で、当日有権者数が74685名減少するというのは、社会移動があると仮定しなければ、理解に苦しむ人口差である。当日有権者数であるから、まず、東京都民全員ではない。17歳以下の人口や、選挙権を停止されている都民が除外された人口である。夏場は、通常、死者が少ない。このため、52/3を乗じた、-1294540という数値は、年間に換算した東京都民の人口減少数と見ることも可能となってしまう。人口減社会であるにしても、にわかに受け入れがたい、驚くべき数値である。社会移動が生じた理由は、今後、追究の対象となって良いことであろう。

 ところで、ふたつの選挙における期日前投票率にこれだけの差が生じた理由には、ほかにどのような理由が考えられるのであろうか。私にはそれほど見えていないのであるが、天候や気温、祝日や休日の配置といったものは、説明として受け入れやすいものであるので、とりあえず、大まかなところを確認しよう。本年7月10日は夏休み前の日曜日であり、7月31日は夏休み真っ盛りであるが、10日の東京都(本島)では降水がなく(羽田八王子、7月10日)比較的過ごしやすい気温であった一方で、31日は天候が大荒れであると予報されており、区部の一部では、昼に大雨が降り(羽田八王子、7月31日)、その後、大変に暑くなった。

 小中学生以下の子どもや孫を持つ成人が、夏休みや22日配信(『モバイルナビゲーター』、リンク)の『ポケモンGO』に振り回され、期日前投票したと仮定することは、それほど無理筋ではない。ただし、この仮定は、普段から投票してきた成人に適用されるものと考えなければならない。でなければ、なぜわざわざ、当日投票ではなく、期日前投票することになったのか?というさらなる疑問を呼び起こすからである。当日であっても、投票所の前にポケモンが現れることが確認できていたとすれば、期日前投票する必然性も薄れるからである。夫婦の片方だけがポケモンを探しがてら、期日前投票したことになるというケースも想定はできる。このような夫婦や家族の存在は否定できないが、実証が必要そうである。三世代家族であれば、祖父母のいずれかが期日前投票に孫を連れて行く、というケースが十分ありそうにも思われる。10万世帯(程度)がこのような行動を強いられた、というわけである。


※1 総務省|期日前投票制度の創設について
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/touhyou/kijitsumae/
期日前投票制度の創設等を内容とする公職選挙法の一部を改正する法律が第156回国会で成立し、平成15年6月11日に公布、平成15年12月1日から施行されました。

※2 衆議院議員選挙(小選挙区選出)不在者投票の最終結果について(確定)(Internet Archive Wayback Machine)
(平成15年11月11日 東京都選挙管理委員会)
https://web.archive.org/web/20040603053848/http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/data/h15shu_fuzai.html

※3 平成15年11月9日執行衆議院議員選挙(小選挙区選出)不在者投票の中間状況について(選挙期日7日前まで)
(ファイル名:43 衆院選・不在者投票中間状況報告(1回目)資料.xls - fuzai_jokyo.pdf、平成15年11月3日 東京都選挙管理委員会)
https://web.archive.org/web/20061229134748/http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/shugiin/fuzai_jokyo.pdf

2016年8月8日月曜日

平成28年7月31日執行東京都知事選挙と読売新聞出口調査・情勢調査(1)

 読売新聞(記名なし)2016年8月1日朝刊2面14版「無党派層に広く浸透/出口調査/小池氏 自民支持層も55%」「投票率13・59ポイント増」の各記事から、主要な調査結果に係る数値を抜き出すと、次のようになる。240か所の投票所で、10669人から回答を得た。投票率は2014年2月の46.14%から59.73%に。主な支持政党別の投票先は、次表のとおり。

表1:読売新聞2016年8月1日公開の東京都知事選挙出口調査における支持率
候補者名→
支持政党↓
小池氏 増田氏 鳥越氏 その他 (回答)なし
自民 0.55 0.36 0.04 0.04 0.01
民進 0.32 0.09 0.55 0.03 0.01
無党派 0.49 0.19 0.18 0.11 0.03
公明党 0.26 0.65 0.03 0.03 0.03
共産党 0.24 0.05 0.60 0.05 0.05

 淡青色の数値は、記事に記載がなかったために、それぞれを3分の1と仮定した。この数値については、別の仮定であっても良いが、各党の支持者の投票先からすれば、元の数値は比較的小さい。このため、別の仮定を措いたとしても、大勢には影響しなかったであろう。それに、ここでの仮定は、事前情報無しと考えた場合に、否定されるものではない。

 ところで、読売新聞は、選挙の一週間前に情勢調査を公表している。こちらは、誰にでも公開されている形で、ネットでも拾える形であるが、グラフだけであって、正確な数値を提示していない。しかし、グラフのピクセル数を読み取って数値として利用しても、事前情報がゼロであるよりも、よほどの意味がある。そこで、ピクセル数を表2のように読み取ったが、同表に示した数値は、累積ピクセル数であることに注意されたい。これを投票先として回答した割合に直すと、次表3のとおりとなる。表2及び表3は、本記事の続報で取り扱うことになる。予定。

表2:読売新聞2016年7月24日公開の東京都知事選挙
情勢調査画像におけるグラフ境界線のピクセル位置
候補者名→
支持政党↓
小池氏増田氏鳥越氏その他(回答)なし
自民75157166169228
民進2736155156228
無党派446998110228

表3:読売新聞2016年7月24日公開の東京都知事選挙情勢調査による支持率の再現結果
候補者名→
支持政党↓
小池氏増田氏鳥越氏その他(回答)なし
自民 0.329 0.360 0.039 0.013 0.259
民進 0.118 0.039 0.522 0.004 0.316
無党派 0.193 0.110 0.127 0.053 0.518


 表4は、先月10日の参議院選挙比例代表、東京都の開票結果の一部である。政党名・個人名の合計から、自民・民進・公明・共産の各党への投票数を抜き出した。数値はPDFから切り出したものであるため、多少のチェックは実行したが、正確性を保証するものとはなっていない。(というより、読み取りの難しい形でPDFを公表すること自体、すでに、情報公開の理念を逸脱した状態であるし、後手に回る形でExcel形式のファイルを公表することにも問題がある。機械可読性という点からも、評価の低い状態である。)

 表5は、先月31日の都知事選挙の全投票者数、先月10日時点の参議院選挙の東京都選出の期日前投票者数、先月30日時点の都知事選挙の期日前投票者数を、それぞれ列ごとに示したものである。詳細な定義は、それぞれの出典に当たられたい。私がここで説明するには及ばないであろう。期日前投票者数は、「(結果として)出したくないもの(に一般の目線からは見えてしまう種類のデータ)である場合」の例によって、紙のPDFであるので、OCR作業の正確性は問題になり得るが、多少のチェックは実施したので、保証はしないが、問題を生じるような桁誤りがある可能性については、ないものと考える。本記事では、これらのすべてを用いるわけではないが、次回以降に取り扱うことになる。

 表6の初めの4列には、東京都知事選挙時の読売新聞による出口調査から求めたトップ3候補の推定得票数を示した。推定は、表1に示された政党別の候補者別投票率の値を、表4の各党得票数に乗じて得たもので、無党派については、都知事選挙の全投票者数から、表4の地域別の4党の得票数の合計を減じたものを、「無党派層の投票者数」と置いた。つまり、ここでは、期日前投票における各候補への投票行動は、当日の投票者と変わらないものと仮定している。

 また、表6には、推定得票数と実際の開票結果との差を並記した。鳥越氏に対しては、ほとんど常に出口調査結果が過大推計となっており、特に、区部での推定結果の偏りが大きい。他方、小池氏に顕著に認められるように、島部と本島部とで、推計の偏りが逆転している。偏りが大きいこと=確度が悪いこと自体は、以前の宜野湾市に係る調査に先立ち、先行研究を紹介したとおり、特に咎められるべきことではないのであろう。この程度が出口調査を実施する担当者に常に把握され、正確な予測に反映できることが求められていると言えるのであろう。

 さらなる考察は、次回に取っておくことにしよう。次回までに、さらに材料を用意しておく必要があるためである。

表4:平成28年7月参議院選挙東京都比例代表 政党別得票数(合計・抜粋)
比例区公明党日本共産党自由民主党民進党
★都計 710528.036882538.8762134931.1121227608.172
☆区部計 472993.316596150.9281486334.626787157.999
千代田区 1453.155325412983.4185085
中央区 4594.52779928751.33411971.94
港区 6982.92411310.540424.54318859.233
新宿区 15199.32621578.20849842.28127175.133
文京区 7133.72817357.6739114.60121584
台東区 8238.93112062.10332510.8715636.46
墨田区 15330.23416039.50444300.03519844.837
江東区 28018.03932181.42282947.25441786.835
品川区 17684.29625087.21364701.02734074.933
目黒区 9714.80116646.00345680.10825734.417
大田区 41304.37345778.72116420.04260122.935
世田谷区 32790.88754749.611149684.0691078.765
渋谷区 744513968.01736458.12520571.603
中野区 14904.51422864.47850050.55631455.663
杉並区 19705.79840188.77496023.79156072.541
豊島区 12780.65818400.05643750.45223105.991
北区 23700.01927921.76252570.86927061.577
荒川区 12616.3814635.80232236.52815172.885
板橋区 32697.17439497.34184650.69246059.001
練馬区 37497.05448020.277115013.468227.194
足立区 48404.38842358.36196586.42946183.294
葛飾区 29380.72428945.48570821.67133152.765
江戸川区 45416.39335506.621100812.5447140.997
☆市部計 231311.39281813.782633583.219432765.378
八王子市 41646.97535049.6579424.1354648.79
立川市 10943.67412021.01627055.43417490.64
武蔵野市 4566.3169765.99924711.73618942.987
三鷹市 7814.52913263.50729353.44920601.394
青梅市 8304.6318164.37121573.1913082.013
府中市 12523.9215718.51839736.64226656.853
昭島市 7704.6336872.00516998.64411214.231
調布市 9956.78215588.18936494.58523716.353
町田市 22064.20227388.01367811.2443994.68
小金井市 4301.0678151.43919116.90614366.491
小平市 11892.69113103.04128208.22420750.997
日野市 8601.18813245.10728862.29520659.435
東村山市 9805.92111813.2522492.00914894.454
国分寺市 54719019.0620169.61514412.959
国立市 3473.2056080.01912073.0338451
福生市 4019.3753144.0748630.414775.299
狛江市 3603.8326356.00312484.0958202.579
東大和市 6682.6126248.99912257.1288513.567
清瀬市 45086866.03111000.9997444.697
東久留米市 7217.1569655.22717329.53811609.17
武蔵村山市 6135.0294515.4329117.1835489.329
多摩市 7494.25611913.08222628.48216686.41
稲城市 4279.2885717.99914125.719137.45
羽村市 3459.0313472.9998407.8265709
あきる野市 4879.666498912267.2328539.687
西東京市 9962.41113691.75231253.48422774.913
☆西多摩郡計 4081.0463010.1669609.5545526.795
瑞穂町 2361.04615605008.1272696.581
日の出町 11291034.1663037.4281733.215
檜原村 20880411576.999
奥多摩町 3833361152.999520
☆島部計 2142.28415645403.7132158
大島支庁小計 9618632917966
大島町 6436901550535
利島村 241612914
新島村 120115756283
神津島村 17442482134
三宅支庁小計 187183617259
三宅村 176155540219
御蔵島村 11287740
八丈支庁小計 882.2843641455.713757
八丈町 871.2843571412.713744
青ヶ島村 1174313
小笠原支庁小計 112154414176
小笠原村 112154414176

表5:平成28年7月31日執行東京都知事選挙投票者数(計)及び期日前投票者数(最終)、
及び平成28年7月10日執行参議院選挙選挙期日前投票者数(最終)
市区町村等H280731都知事選
全投票者数
H280731都知事選
期日前投票者数
H280710参院選
期日前投票者数
★都計662040717081951560477
☆区部計450894311466281032427
千代田区3079281867302
中央区752431808815445
港区1107382784022566
新宿区1523734058937627
文京区1151453187827433
台東区960502514922315
墨田区1296272786925848
江東区2491195712051327
品川区1909074808342915
目黒区1370443254828170
大田区3466439916089569
世田谷区455597120597105070
渋谷区1078292535822713
中野区1594674134937492
杉並区2874448191871922
豊島区1357913524429421
北区1742933801636450
荒川区991212485423321
板橋区2690197689069696
練馬区36452510551294535
足立区3067866951467185
葛飾区2120945104548197
江戸川区3032965982155908
☆市部計2068100547767515634
八王子市2708808672485789
立川市865141785918313
武蔵野市771401747216459
三鷹市950472091919023
青梅市670932040619140
府中市1264642986628077
昭島市541671177412045
調布市1162632327720949
町田市2131565895853070
小金井市613571399812789
小平市951632586025266
日野市925112245920664
東村山市761752324822393
国分寺市638891569214594
国立市400821131710614
福生市2704073846787
狛江市42441110909209
東大和市426561168411688
清瀬市37949103769816
東久留米市598461614814791
武蔵村山市3137685209009
多摩市786192561722168
稲城市443211220410660
羽村市2639869246957
あきる野市396331350712809
西東京市1019202448422555
☆西多摩郡計2864185788130
瑞穂町1514139053677
日の出町897330132902
檜原村1414588595
奥多摩町31131072956
☆島部計1472352224286
大島支庁7474NANA
大島町460617931417
利島村2088769
新島村1666730573
神津島村994487464
三宅支庁1675NANA
三宅村1474302223
御蔵島村2013529
八丈支庁4282NANA
八丈町417014441308
青ヶ島村1124431
小笠原支庁1292NANA
小笠原村1292300172
注:NAは該当データの表記なし(だが、計算は可能であろう。)


表6:平成28年7月31日執行東京都知事選挙時の読売新聞による
出口調査から求めた推定得票数、ならびに推定得票数と開票結果との差
  読売出口調査による推定値 小池氏 読売出口調査による推定値 増田氏 読売出口調査による推定値 鳥越氏 開票結果との差 小池氏 開票結果との差 増田氏 開票結果との差 鳥越氏
★都計 2779346 1704284 1611085 2.0% 1.3% -4.0%
☆区部計 1906919 1166763 1074206 2.9% 0.7% -4.5%
千代田区 13855 7773 6755 2.8% 1.4% -5.9%
中央区 33552 19034 16535 5.5% 0.1% -7.1%
港区 49047 27693 24954 4.3% 0.8% -5.7%
新宿区 64143 38749 37287 3.1% 0.1% -5.0%
文京区 49118 27278 29456 2.7% 1.5% -5.3%
台東区 41446 24354 22353 2.5% 0.1% -4.3%
墨田区 55266 35035 28911 3.6% 0.6% -5.3%
江東区 105452 65745 58003 3.4% 1.1% -5.3%
品川区 81295 48570 45797 3.0% 1.0% -5.4%
目黒区 59122 33424 33329 1.9% 1.6% -4.6%
大田区 145675 92385 81374 2.0% 1.5% -4.4%
世田谷区 195511 110503 112827 1.1% 1.7% -4.1%
渋谷区 46322 26144 26666 2.4% 0.0% -4.3%
中野区 66650 39393 40703 1.5% 0.8% -4.3%
杉並区 122497 68903 72967 0.0% 1.5% -3.4%
豊島区 57695 34292 32677 9.9% -4.5% -5.8%
北区 71526 46433 42198 1.8% 0.3% -2.7%
荒川区 41363 26599 23197 3.1% 0.7% -4.6%
板橋区 111674 70541 65298 2.8% 0.6% -4.0%
練馬区 153290 92675 89301 4.9% -0.6% -4.6%
足立区 126547 86568 69317 3.6% 0.4% -3.9%
葛飾区 88545 58582 48278 2.6% 1.1% -4.2%
江戸川区 127327 86089 66022 3.4% 1.1% -5.0%
☆市部計 854159 525260 527345 0.2% 2.7% -2.9%
八王子市 109865 73872 66333 0.2% 2.5% -2.2%
立川市 35519 22679 21664 0.0% 3.5% -3.6%
武蔵野市 32569 17729 20851 0.2% 2.6% -3.6%
三鷹市 39719 22771 25020 -0.1% 2.0% -2.9%
青梅市 27995 17811 16080 1.3% 2.8% -3.6%
府中市 53010 31731 31787 0.1% 3.2% -3.8%
昭島市 22165 14665 13250 0.7% 2.8% -3.2%
調布市 48940 28372 29647 0.9% 2.0% -4.0%
町田市 89114 54035 53346 0.9% 2.5% -2.9%
小金井市 25743 14336 16462 -1.0% 3.0% -2.2%
小平市 38784 24481 24577 -0.5% 3.1% -3.0%
日野市 38260 22564 24528 -0.7% 3.5% -3.2%
東村山市 30935 19704 19564 -0.6% 2.6% -2.0%
国分寺市 26552 15411 16976 -1.2% 3.5% -3.1%
国立市 16609 9590 10684 -2.3% 3.1% -1.2%
福生市 11245 7546 6143 1.0% 2.2% -3.3%
狛江市 17733 10155 11056 0.2% 3.3% -3.7%
東大和市 17090 11557 10734 1.0% 2.1% -2.3%
清瀬市 15236 9471 10253 -0.6% 2.0% -0.5%
東久留米市 24317 15156 15614 -0.9% 3.1% -1.3%
武蔵村山市 12448 9167 7379 1.2% 2.4% -2.6%
多摩市 32342 18935 21037 0.1% 2.1% -1.9%
稲城市 18598 11096 11141 2.2% 2.6% -4.7%
羽村市 10805 6991 6627 2.1% 3.0% -5.1%
あきる野市 16335 10325 9940 0.3% 4.1% -3.4%
西東京市 42230 25112 26653 0.5% 2.1% -2.9%
☆西多摩郡計 11980 7989 6507 0.9% 4.5% -4.2%
瑞穂町 6328 4331 3323 3.1% 3.0% -4.8%
日の出町 3766 2426 2096 -1.3% 5.0% -2.2%
檜原村 552 366 413 -2.0% 14.4% -12.5%
奥多摩町 1334 866 675 -1.8% 5.9% -3.1%
☆島部計 6288 4272 3028 -6.4% 5.6% 0.7%
大島支庁小計 3236 2143 1513 -10.6% 8.7% 2.0%
大島町 1939 1287 1003 -11.4% 8.1% 3.1%
利島村 98 69 28 -18.6% 15.9% 0.6%
新島村 757 456 329 -8.9% 12.0% -0.8%
神津島村 443 332 153 -8.4% 4.8% 1.5%
三宅支庁小計 725 458 360 -8.5% 10.0% -0.7%
三宅村 638 410 309 -7.8% 10.4% -0.6%
御蔵島村 87 49 50 -13.8% 7.2% -1.1%
八丈支庁小計 1763 1341 868 2.0% -0.3% -0.7%
八丈町 1712 1310 847 2.2% -0.4% -0.7%
青ヶ島村 51 31 20 -6.2% 5.0% -0.2%
小笠原支庁小計 564 329 288 -6.4% 1.6% -0.4%
小笠原村 564 329 288 -6.4% 1.6% -0.4%
注:[開票結果との差]=[実際の開票結果]-[読売新聞出口調査の投票率による推定値]であり、出口調査から投票率を再現する際には、都知事選に係る全投票者数を利用した。また、自民・公明・民進・共産の先月10日の参議院選挙比例代表への投票者数を各党支持者数として利用し、4党以外の政党への投票者は、今回の推定に当たっては、無党派に組み入れた。



 なお、7月24日情勢調査のグラフであるが、全体で200ピクセル以上あるので、おおむね、1%程度の誤差に収まるように支持率を読み取れることになる。このことは、境界線を3ピクセル以上誤って計測することがまずないことをふまえれば、簡単に求めることができる。このような画像が用意された理由は、偶然であるとも考えられるが、同画像を用意した人物は、同記事の調査がおおむね1000名から回答を得たことをふまえて画像を用意したとすれば(得られた回答が現実に(層化)無作為(多段)抽出によると言えるか否かは別の話なので、ここでは検討を省略する)、事実の伝達を正確に行うという、職務に忠実に仕事をしたことになる。逆に、この指示を出した記事の責任者が、この精度感を理解しつつ、グラフに数値を入れなかったとすれば、これもまた、驚くべきことである。

出典リンク

小池・増田氏競り合い、鳥越氏が追う…都知事選 : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/election/local/20160723-OYT1T50117.html

参議院議員選挙(平成28年7月10日執行) 投開票結果 (東京都選挙管理委員会ウェブサイト)
開票>比例代表>政党等別得票総数開票区別一覧(PDF形式:389KB)
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/h28san_hirei_kaihyo_seitoubetu.pdf

新着情報一覧 | 東京都選挙管理委員会
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/news-topics/

平成28年7月10日報道発表>【参議院議員選挙】 期日前投票状況(最終)>詳細はこちら(PDF形式:81KB)
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/49e4867899a1260bf65a28433b2c8a8f-2.pdf

平成28年7月31日報道発表>【東京都知事選挙】 期日前投票状況(最終結果)>詳細はこちら(PDF形式:78KB)
http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/uploads/d879d7340d81865405c24a456e0d403f.pdf



平成28(2016)年9月9日追記

表1の一番右の列「(回答)なし」が意味するものは、表の制作者による作り込み方が甘い、ということである。端数の処理が合計100%になるように作業した結果でないことはもちろんである。端数処理が『Excel』など標準的な表計算ソフトウェアのデフォルトの表示方法であるはずの四捨五入ではなかったという可能性が認められる。特に、無党派層に係る「(回答)なし」の0.03という数値は、あり得るはずがない。なぜ、この数値があり得ないものであるのかについては、高校生なら順序立てて説明できるはずである。

2016年8月7日日曜日

毎日新聞=共同通信の相模原事件に係る手紙は、完全ではない

相模原殺傷:衆院議長宛て手紙 詳報 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160727/k00/00m/040/020000c


 【...略...】容疑者とみられる男が大島理森衆院議長に渡そうとしていた手紙の詳報は次の通り(原文のまま)。
 【...略...】

 毎日新聞は、共同通信による配信記事を、共同通信名義で、以上のように説明しつつ、なお完全ではないようである。


2016年8月4日木曜日

「ポケモンGOはお家やお外で遊ぼうね!」が正しい啓蒙法である

#題名と内容の多くが微妙にすれ違っているが、最後に一応、題名に内容がたどり着く構成である。

スパイならポケモンGOをどう使うか  編集委員 高坂哲郎 :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO05508520R00C16A8000000/

 上掲記事は、本日(平成28年8月4日)の日経朝刊に電子版を紹介する形で掲載されている。


 高坂氏の記事に示された懸念のうち、「スマホを持ち込むべきでないところに持ち込まない」という点については、その通りである。しかし、技術上の仮定があり得ないものとなっている。このため、本記事は、かえって民心を惑わす内容となっている。本記事では、高坂氏の誤りを指定しておくことにする。私のポケモンGOについての理解は、以前に示したとおりである(リンク)。

 高坂氏の想定するクラック手法は、およそ次の4段階であるが、そのいずれにも無理があると考えることができる。まず、不正アクセスによって、サーバをクラックする。次に、クラックされた状態を継続し、ユーザの位置情報から、ユーザを選定する。選定されたユーザを釣るために、重要施設内にレアアイテムなりポケモンなりを発生させる。最後に、ターゲットとしたユーザが重要施設内を撮影するよう誘導する。

 第一段階は、もとより難しそうであるが、コンピュータセキュリティは、私の本業ではないので、詳しい検討は私では行えない。しかし、サーバに対する不正アクセスは、サイバー攻撃と見なされ、戦争の端緒にすらなりうることを指摘できる。戦争してまでクラックするに足る内容ではない、ということは、「スパイの身になって考え」てみれば、直ちに了解可能なことである。私は、この記述から、高坂氏のセンスを疑うに至った。(つまり、仮定の第一段階からおかしいのである。)

 第二段階についてであるが、ユーザの位置情報が個人識別可能なように保存されていると積極的に考える理由は、ない。個人識別可能でユーザの位置情報を記録していくことは、価値がないわけではない。しかし、大抵の分析は、時間単位ごとのセル内のユーザ数のように、集計データで十分であるし、その際、個々の端末の移動状況を再現可能なように記録する必要もない。ゲームのおもしろさを増す要素として、移動距離の長短(前回ログイン時からの経度緯度の差)や移動した国の数(IP)も考えられるものの、これらのデータを個人識別可能なように保存する必要も、特にない。特定位置に周期的に存在する端末を抽出する必要性がサーバの側になければ、このようなデータが保存される可能性もない。仮に、特定端末について、位置情報(緯度・経度・高さ・時刻)がテーブルになっているとしても、このデータは、長大な一つの表になっている必要がない。データベースがあまりにも大きくなりすぎ、しかも、それが完全である必要がないときには、不正アクセスしたユーザが捕捉したいユーザを含むテーブルを取得できるとは限らないであろう。(それが最近のビッグデータの使い方のようである。)あるかどうか分からないデータを取得するために不正アクセスするのは、合理的ではない。

 第三段階であるが、レアアイテムやレアポケモンを勝手に作成して、サーバに登録し、運用するという作業は、必ずや運営者に気付かれるであろう行為である。もとより高いレア度のポケモンは、慎重に運用されているであろうから、レア度の高いポケモンが非常に近い位置に三体集まっていたら、しかも、それがユーザ数のきわめて少ない場所であったならば、いくら何でも運営者だけでなく、ユーザすら気が付き、騒ぎ出すであろう。不正なアイテムについても、同様である。ユーザからの不正報告などによって、想定しないルートから不正が発覚するのは、侵入者が身バレしたことを自覚できないために、危険である。

 第四段階は、きわめて難しい。クラッカー側が重要施設内部を見たいという目的を有していたとしても、位置情報の精度やアンテナへの接続状況によっては、目的を達成することが困難であろう。

 以上にみた私の批判をふまえれば、高坂氏の考えた方法は、きわめて実現可能性の低いものであり、ポケモンGOそのものを批判する材料としては、完全に的を外したものである。合法的な契約を締結した以上、その契約に則る形で運営が維持されている限り、責任はユーザの側にある。高坂氏の考える方法があまりにも可能性の低いものであるので、代わりに、ありえそうな危険を考えてみると、その方法は、スマホ本体を乗っ取るというものになるであろう。つまり、サーバサイドではなく、クライアント(端末)サイドがクラックされ、悪用される虞の方が、遙かに高いのである。

 重要施設の付近に位置するクライアントが個別に狙われて乗っ取られる、という虞は、十分に認められるが、これは、ポケモンGOに限らず、ほぼすべてのアプリに共通する危険性である。重要施設は、わが国では、わが国の急峻な地形という条件があるために、ほとんどの経路が限定された状態にある。途中に無線LANのアクセスポイントを設けて、いろいろと引っかかるのを待つという方法は、ポケモンGOサーバをクラックするよりも、圧倒的に楽で、問題として対処すべきものである。そのニセのアクセスポイントを通じて、ニセのポケモンGOクライアントやパッチをダウンロードさせ、本来の正規サーバに接続すると同時に、ニセサーバへも同報させて、情報を抜き取るために用いるということは、それなりに考えられる危険である。ただし、この場合には、どのように正規サーバによるクライアントの真正性チェックから免れるのか、が最大の課題になりそうである。

 ポケモンGOがセキュリティ上問題となるケースは、いろいろと考えられるが、ほぼ間違いなく、高坂氏の懸念するような形では、情報流出のような問題が起こることはないであろう。基本的には、情報が流出したとしても、ユーザの責任となる構図となっているのである。どのような経緯で情報流出するにせよ、ターゲットの端末に何かを仕込まれるところまでの過程では、地理的プロファイリングを提唱したキム・ロスモ氏の言うところの罠師(trapper)に近い方法が取られるであろう。その後、ターゲットから情報を抜き取る機会は、流し網漁師(troller)のような形で得られよう。つまり、監視中のターゲットのカメラが偶然映し込んだ情報を必要に応じて保存するというわけである。このように得られる情報は、「いつか利用できる」類いのものであって、クラック側の知りたいことをピンポイント・リアルタイムで教えてくれるものではないであろう。

 むしろ、ポケモンGOの流行に伴うセキュリティ対策として基本とすべきは、「ポケモンGOはお家やお外で遊ぼうね!」という、スマホゲーム全般についての啓蒙である。「職場で遊ばないのは当たり前!」ということを周知・啓蒙するのは、やや大人気ない話であるが、職場側が考えるべき話である。スマホゲームの単独のタイトルに処置を求めることは、やや過剰に過ぎよう。それに、機密保持が必要である場所に情報端末を持ち込ませないのは、企業や職場であれば、普通ではないだろうか。高坂氏の論法によって、ポケモンGOだけがスマホゲームとして槍玉に挙げられるのは、どうも納得がいかないのである。




 韓国がポケモンGOから外れているのは、(ネットワーク?)地図データが提供されていないためであるという。地球地図には一定のデータが提供されているので、1km程度の誤差のあるデータであれば、世界中でプレイ可能であるということになる。ポケモンGOは、その精度よりも2桁以上の低い誤差しか許容しないゲームであろう。

 Ingressにしても、ポケモンGOにしても、なぜ平行四辺形状のセルになっているのであろうか。少しばかり気になる話である。私が最初に考えたことは、ある衛星軌道から見た場合に何らかの意味を有しているのであろうか、ということである。非オルソ画像を用いていても、衛星画像からイベント発生箇所を抽出・選定しやすくなるからとか?と考えてみたのである。

「ポケモンGO」なぜか韓国でゲットだぜ! 北朝鮮との境界近くに押し寄せる人々
http://www.huffingtonpost.jp/2016/07/14/pokemon-go-korea_n_10983510.html

相模原事件の教訓は情報の共有ではなく情報の評価こそ重要というものである

予兆、危機共有に溝 相模原殺傷事件から1週間:朝日新聞デジタル(2016年8月3日朝刊39面)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12493090.html

前記事において(リンク)、私は、朝日新聞7月31日の記事を高く評価した。今朝(8月3日)の記事に対しては、新聞社の取りがちな誘導策、すなわち「わざと論点を記さない」点が見られるため、指摘して批判しておきたい。以下で私が指摘する内容を、田村正博氏が新聞記者に対して指摘していなかった場合、田村氏は、自ら元の職場に忖度したか、または、不見識を晒したということになろう。なお、本点は、以前の記事の繰り返しでもある。

 まず、田村氏の解説に係る部分を引用しておく。ほぼ全ての文に異論があるためである。

■情報の共有、限界ある
 京都産業大法学部の田村正博・客員教授(社会安全政策)の話 まだ犯罪を起こしていない個人の情報を共有することには限界がある【1】。措置入院の解除から事件までに約5カ月あり【2】、植松容疑者を警察が常に監視することや【3】、市や園が危険人物とみなして広く情報共有することには【4】、人権上も法律上も別の問題が生じる可能性がある【5】。報じられている事実以上の予兆がなかったとすれば【6】、より踏み込んだ対応をするためには、社会的な議論が必要だろう【7】。
【1】に対しては、インターネット上にすでに表明された批判的意見の中に、犯罪として対応できたはずなのに、見過ごしたというものを見ることができる。国民の側からこのような意見が提起されているにもかかわらず、警察を代表すると見なされうる田村氏がこのような解説を掲載することを承諾したことは、予防線を張るものと見なされても、仕方のないことである。犯罪であるか否かの解釈と対応については、相当の裁量が警察官個人に委ねられている状態にある。国民の多くも、積極的・消極的かはともかくとして、この状態に同意している。防犯カメラの導入を認容するに際して、批判が提起されたとき、多くの国民が賛意を示したのは、本事件のような重大犯罪を防ぐことまで期待したためではなかったか。

 確かに、田村氏の指摘のとおり、容疑者の数々の前兆行動を犯罪と捉えなければ、個人に係る情報を共有することには限界も生じよう。しかし他方で、われわれは、テロ対策と称して、宗教プロファイリングとも呼べる、イスラム教徒全員に対する監視が行われていたことを知っている。この大規模かつ組織的な活動自体は、明らかに憲法の理念に違背する行為であり、イスラム教徒の反発を通じて、かえってテロを深めるという危険性を有していた。しかし他方で、暴露された、イスラム教徒に対する監視行動は、この種の監視が容疑者に対しても実行可能であったことの紛れもない証明となっている。

 【2】については、5ヶ月間を継続して監視することの必要性を、結果として判断できなかった、という点に問題が認められよう。ヒュミント(人間同士)、シギント(通信監視)の手段を通じた人物評定がなされなかった(後述)のは、おそらく、担当部署に必要な手段を調達できなかったためであろう。確認できるだけの手段もないし、ローン・ウルフに分類される容疑者を積極的に監視するだけの組織上の要請もなかったであろうから、5ヶ月間、放置したということになるのかも知れない。結論は、詳細な内部調査を経ないことには得られないであろうが、「5ヶ月間の監視は、資源上、さすがに無理であった」という解釈と、「5ヶ月間も猶予があったのに、監視しなかった」という解釈との2通りの結論のいずれかを得る余地が残る。結果が重大であるのに、調査をしないとすれば、十全に仕事をしているのかについて、疑問視されても、やむを得ないであろう。

 【3】についてであるが、現状のヒュミントの態勢では、本事件の容疑者の危険性を判断することは不可能であったであろう。容疑者は比較的若く、また、その活動範囲もかなりの広域かつ特殊なものであったようであるから、容疑者と直接コミュニケーションを取れるだけの人材を調達することは、困難であったであろう。腹を割って聞き出せるだけの人物を用意して、2月以降、容疑者の信念がぶれていないことを確認することは、現実的には、無理であったであろう。暴力団との個人的な付き合いが職務上許容されていた時期であれば、少しは勝手が変わっていたかも知れないと想像するが、この可能性は、私が分析するには手に余る分野である。

 仮に、容疑者の信念を探るとすれば、警察は、現在の社会環境下では、自力に頼るほかなかったであろう。本事件は、この手の容疑者に対して、現在の警備警察が効果的に接触できるだけのヒュミントを育成できていないことを示唆するものであるようにも思われる。人選にあたっては、高橋のぼる氏の『土竜の唄』の主人公、日浦匡也のような人物が候補者としてワンダース以上必要であったであろうが、彼らは、本来、暴力団対策に奔走しなければならなかったであろうから、これらの人物が警察にいたとしても、リソース不足の感は否めないところであったろう。20代後半に見え、刺青を入れた容疑者にも自然に接触でき、かつ、不信感を抱かれずに容疑者の信念の固さを確認できる警察官は、超・エース級である。なお、このような人物が内部で調達できない場合に、警察は、協力者を外部から調達することができるが、容疑者の属するコミュニティから調達する態勢は整えていなかったであろう。仮に、整備済みであり、運用中であるとすれば、その状態は、私の先入観を訂正するものであり、高く評価されるべきことである。ただし、私の先入観は、故なきことではない。わが国は、一億総活躍と言いながら、まったく、そのスローガンとは相異なる状態となっている。

 他方、【3】に係る方法には、シギントも考えられるが、現状で可能となっているシギントの態勢を機能させたとすれば、容疑者は、十分に監視可能であった。容疑者のインターネット上の活動について、私は調査していないが、十分に危険性を示す兆候が公知のものとなっていても、何らおかしくない。本人名義で危険な思想が表明され、その意見が削除されていなければ、普通の人ならば、その人物を危険視する材料と見るであろう。この辺の機微は、インターネット上でも検証可能であろうから、警察も、真剣に調査を進めなければ、後に仕事をサボっていたことを咎められることにもなろう。(つまり、しっかり調べておくべきである。)

 【4】において指摘されている情報共有の難しさは、要素としては存在するが、副次的なものである。少なくとも、本事件の抑止に必要とされる程度には、情報が関係者に共有されていた。措置入院に至る情報伝達が的確であったか否かは、検証の対象となって良い。しかし、問題は、各組織が得た犯人の危険性を的確に評価できたかという点にこそ、求めることができる。

 情報の共有ではなく、情報の評価こそ、本事件を予防できたか否かの分かれ目であった。防犯設備だけについて見ると、施設は、警察と警備員という、施設から見れば専門家へのアクセスを有していた。これら2つのルートは、施設からすれば、防犯上の助言を的確に与えられることが期待できるものではあった。ただし、以前から言及しているように、これらの職務に従事する人物に、的確な防犯設備に対する評価が行えたかと考えると、そうではない。これらの職務に従事する人物の中でも傑出した人物(スーパー生活安全警察官レベル、スーパー警備員レベル)でなければ、的確な評価を行うだけの心構えには至っていなかったであろう。このため、防犯設備を拡充して本事件を予防できたかと問うてみても、困難であったことが推測される。

 ただ、警備員の雇用形態は、場合によっては、本事件を予防する材料となりえた。警備員が大手企業に所属する者であり、大手企業が本格的に対応に取り組んだとすれば、施設側が予算を捻出できたか否かにもよるが(そして、経営判断上、合理的ではなかったと予測されるが)、見込みは小さいものであるが、本事件を予防することができたかも知れない。施設が大手企業と契約していた場合、積極的に相談を求めなかったとすれば、この点は、悔やまれることである。

 警察内部で情報共有が適切になされていたか否かについては、疑問がある。当初に連絡を受けた津久井署の部門は、名称が明示されていないようにも思う。ここに、警備部(公安部門)が関係していたのであれば、公安部門の責任が慎重に回避されようとしている可能性を見て取ることができる。本事件は、ストレートに公共安全を対象とするものであって、ヨーロッパで実行されたとすれば、わが国でも直ちにテロ事件として報道される種類の事件である。

 テロ対策は、警察の警備部門のど真ん中の仕事である。ドイツ・ミュンヘンにおける7月22日の銃撃事件は、当初、テロの可能性があるものとして捜査されたという報道がある※1。なお、イスラム過激派との関連を疑ったのは、マスコミであろう。でなければ、イスラム過激派との関連について、報道記事においても、わざわざ言及しない。また、この見込みは、後に捜査を通じて否定されている※2。自称イスラム国の影響は、これらの職業的テロ集団に留まらず、マスコミ報道を通じて、世界中に影響を与える。自称イスラム国は、国際関係を攪乱するために情報機関によって育成された側面があるために、関係各国の優先的な統制の対象となっている。つまり、かつての教え子が管理不能な状態にあるという側面もあるために、これらの集団が起こした事件は、そうでない事件から区別され、その責任についても、協議される必要が生じていると見ても、さほど間違いではないであろう。新約聖書風に言えば、「カエサルのものはカエサルに」という訳である。このように、現在の国際テロ集団の一部と情報機関の一部とには、すでに関係性が生じていたがゆえに、国際テロ集団が直接関与する事件は、テロの被害国によっては、新たな国際緊張を生み出すものと考えて良い。このとき、ローン・ウルフという背後関係のない個人により引き起こされる事件は、国際関係への影響が小さなために、抑止対象として、脇に置かれがちになる。しかも、そもそも、ある程度の理性的な個人により、個人の可能な範囲内で実施されるために、予防が難しいという側面も認められる。ホームセンターで買物したら即連行された、というのは、自由な社会に生きる個人にとって、まったく望ましい展開とは言えないが、それでも、ローン・ウルフの犯行を抑止するためには、必要となる可能性が高いのである。

 情報の共有ではなく、情報の評価こそ、今回の事件を抑止する上でのポイントであったということに気が付きながら、その指摘を欠落させたのであれば、朝日新聞社の今回の記事執筆担当者たちは、忖度が過ぎたと言いうるかも知れない。私が顕名で指摘することを必要とした分、私は、ちょいおこである。(これ以上、余分に目を付けられたくないっての。)他方で、この点に気が付かなかったとすれば、その内実は、新聞社としての要件を欠くことを示すものになりかねないため、慎重に検討されるべきであろう。この種の情報を通じた誘導は、上手か下手かを問わず、警察官僚なら、半ば無意識の習慣になっていると言いうる。朝日の記者がコンタクトを試みた経緯については、知る由もないが、田村氏の経歴や実績等、色々と承知の上でコンタクトを取ったのであれば、情報の評価こそ重要であるという点にまで、記者も薄々気が付いていた可能性が高い。その上で、バーターということに相成った、と考えても良いかも知れない。この場合であれば、本事件に係る微妙なバランスを取る上で、報道機関として必要な取引を行ったということで、朝日新聞社の記事を許容する向きも出てこよう。他方、気が付いていなかったとすれば、記者の総合的な力量が取材対象に比較して不足していたということである。不用意であったと結論付けられよう。

 【5】についてであるが、本事件に係る以上に詳細な情報が共有されたとすれば、人権上、法律上の問題は生じたであろうが、【4】に対する説明に示したように、これ以上のディテールに係る情報共有は、必要ではなかったであろう。それよりも、警察内で容疑者の動向を評価できていれば、警察の側での警備を増員したり、常駐するなどの対策も取り得たであろう。また、警備の際には、施設に対して、たとえば、「容疑者の件で、警備が必要と認められましたので、今から○日間、○名で警備します。施設の側でも3名警備員を増員してください」のように必要なだけの情報提供を行えば良かっただけである。

 【6】については、報道されている事実以上の予兆がなかったとしても、危険性の判定は十分であったであろう。容疑者の手紙は、掲示板に殺害予告を行う人物以上に、はるかに具体的な犯行予告である。警備部門において、1名を専従で評価に当たらせれば良かっただけである。容疑者の危険性を判定できた部署は、手紙を託されたこと部署と、手紙の内容を把握していた部署である。

 【7】については、もちろん、その通りではあるが、前提となる【6】に係る事実認識が異なり、これだけの情報を得ているにもかかわらず放置したと見なされる可能性が高い以上、警察内部における情報流通過程を(内部で)真摯に検証した後でなければ、国民一般の理解を得ることが適わないであろう。私の考えるところでは、警備警察は、わが国では最も予算も人員も潤沢な情報機関である。他国の情報機関が実施可能なほどの権限を付与されてはいないものの、今回の容疑者を監視して、必要に応じて拘束するという作業は、特に問題なく行えていたはずである。他方、このような作戦が成功したとしても、その成功を社会的に賞賛する仕組みは、整っていない。この偏りのある状態は、警備警察がこの種の行動にリソースを割くことを疎かにするという要因となっているものと考えられる。政治的な情報収集に邁進した方が、組織として有用な結果を得ることができるという現状も、反社会的な微罪での前科を持つ犯罪者を放置するという傾向に拍車をかけているものと推測できる。つまりは、天下りにならないこと、カネにならないことに対して、仕事をしていないのではないか、という疑いがある。これについては、話が逆である。社会が上手く回っている限り、世間は、天下りのことをとやかく言わないであろう。上手く回らない時勢においてこそ、公務員は、奮起すべきである。いざというときのために働くのが公務員の本質であろう。(歴史は、いつも「いざというとき」であることを教えてくれるものであるが)

 自称イスラム国にとっても、ほかの危険団体にとっても、私がここで指摘したことは、公知の事実に近いものである。敵の上を行くための適切な理解は、私の指摘の上をゆくだけの正確な知識の上に構築されるべきである。このとき、社会の支持は、誤解の上に成立させるべきではない。揺り戻しが酷いからである。私の吹き上がった表現も、ある意味、揺り戻しの一つの表出であると見ても良いであろう。対策を練る上で、国の総力を結集しなかった事実は、次の失敗において、要因として見なされる。今回の事件を機に、全範囲にわたる検討を行わなければ、その結果は、後の事件に報いることになろう。そのときもまた、慎重に責任を回避しようとしても、同じ種類の過ちを繰り返した組織を、国民は、軽蔑するであろう。(日本国民は、健忘症気味ではあるが。)

 私が自身の知識と少ない経験に照らして言えることは、おおむね本稿でも素直に表現した。このように私は考えている。犯罪予防に係る考え方のすべてを、社会の全員が理解することは、なかなか難しいところであるが、それでも、どの考え方が直球であって、どの考え方が変化球であるのかを知っておくことは、社会が基本から逸脱しないために必要なことである。今回、私は、情報の評価過程こそが検証されるべきであって、最低限の情報共有が行われていたことを主張した。この主張こそが基本線である。そこから外れる意見については、何かの利益が存在すると見て、何らおかしくない。


※1 独ミュンヘンで銃乱射事件発生、8人が死亡 | ロイター | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
http://toyokeizai.net/articles/-/128605
警察の報道官はイスラム過激派による攻撃であることを示す証拠はないとしているが、テロ事件として捜査していることを明らかにした。

※2 ミュンヘン銃乱射事件 メルケル首相も参列して追悼式 | NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160801/k10010616461000.html
警察などのこれまでの調べによりますと、死亡した18歳の男は、イスラム過激派との関連は見られないものの、市民を無差別に狙った事件に強い関心を抱いていたことなどが分かっています。



 なお、同じ(8月3日の)記事の中に、容疑者のガラスを割る音がインターホンを通じて聞こえたために、事件に職員が気付いたという記述が見られた。施設において、ガラスが割れるという事態がどれほどの頻度で生じていたのかにもよるが、この事実は、事件の分岐点になり得たであろう。



大分県警別府署:隠しカメラ、「民進党」関連建物敷地内に - 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20160803/k00/00e/040/195000c

 上記事件で、違法に隠しカメラを設置した可能性が認められるのは、刑事課員であるという。この種のカメラ設置は、タレコミに相当の信憑性があったという前提の下で、設置場所はともかくとして、認容されている。相模原事件においても、自宅を監視するために、同様にカメラを設置すること自体は、容疑者の行為を犯罪と見ることができた以上、刑事警察としてはともかく、警備警察としては、何ら問題なかったはずである。



(ニュースQ3)警察がイスラム教徒監視 「やむを得ない」?:朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/DA3S12491207.html

Japan's top court has approved blanket surveillance of the country's Muslims | Asia | News | The Independent
http://www.independent.co.uk/news/world/asia/muslims-japan-government-surveillance-top-court-green-lit-islamaphobia-a7109761.html

 The Independentの記事は、6月29日付、アル・ジャジーラの報道を受けたものである。イスラム教徒のリーダーと協力関係を構築し、合理的な疑いをかけることのできる、真に悪意のある人物をマークするという手順が王道である。邪道である方法を、最高裁判所が最初から許容するようでは、何が規範として正しいのかを、国民が理解できなくなろう。

 あらかじめ指摘しておくと、今後にイスラム教徒とされる人物が重大事件を日本国内で敢行して、2名以上の死者を生じてしまった場合、相当にセンシティブなデータを多量に公開しなければ、定量的方法による場合、「イスラム信仰を理由とする監視は、わが国では、犯罪予防上、有害である」という結論を得ることになってしまう。『悪魔の詩』の翻訳者殺害事件のほかには、国内犯で明確にイスラム過激派による犯行であることが認められる事件が見られないためである。今回の決定は、結果として、使える手法を少なくしてしまうことになろう。

平成28(2016)年9月24日修正

レイアウトを一部修正し、<hr />タグを挿入した。文章に一部不明な箇所が見られたために、訂正し、淡赤色で示した。