2015年9月23日水曜日

フォルクスワーゲン車の不正について(感想文)

不正発覚のフォルクスワーゲン株価大幅下落 NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20150922/k10010244221000.html

#以下の文章は、感想文に過ぎない。衆目に耐えうるものとするためには、せめて、わが国における耐震偽装、耐火性能の偽装や食品の産地偽装と併せて考える必要があるし、標準や規格の機能までに目配りする必要がある。アメリカにおける他国の自動車産業という(私にとってはまったく知らないとして良いほど濃ゆい)要素もある。
  1. フォルクスワーゲン社の不正は、世界各国の基準に対して図られた可能性が指摘されている。わが国に限定すると、同社が環境性能の優秀さをうたって自社製品を販売していたとすれば、その行為は、その行為に限れば、詐欺罪に該当するであろう。
  2. しかし、本事件は、企業犯罪として扱うよりも、まず最初に、国際関係によって説明されるべき事件であり、その検証なくして企業犯罪として扱うことは、より重要な論点を見落とす虞のある内容である。アメリカのNSAが不正な方法でドイツ首脳や主要企業を盗聴していたことが明るみに出され、これに対してドイツ(連邦)政府が抗議したという経緯がある。本事件は、この経緯から生じた可能性が高い。
  3. 今後、日本国民の財産を守る上では、不正の発見から公表に至るまでの関係者・経路を明らかにすること、直前までのVW社の株式の売買状況、の二点を確認すべきである。本事件は、不正な手段で入手した(=NSAの盗聴)不正に関する情報(=VW車への不正機能の実装)が、国内の刑事裁判において証拠採用できるものとはならずとも、全世界的に、無関係な民間人に経済的な損害を与えつつ、民事上の責任を不正な行為を犯した企業に対して与えることができることを示す実例である。本事件は、ある国(ここではアメリカ)における法の適正な執行(不正の公表)が他国民(ドイツやわが国)の利益を不当に損なう可能性を、現に示すものである。本事件において、仮に、本事件の発表が、アメリカ国民のみがVW株をいち早く売り抜ける上で有利な時間帯に行われたとすれば、それは、関係者が世界中にいる以上、公正さからは遠いこととなる。(この論点もあるために、私は、本事件を国際的な観点から検討されるべきことであり、一企業の犯罪として扱うことは不適当であると考える。)
  4. とはいえ、わが国政府は、本事件を不問に付さざるを得ないであろう。今になってみれば、本年3月中のメルケル首相の訪日は、福島第一原発事故を終息させるよう現政権に申し入れることが目的のひとつであったとも考えられるが、わが国政府は、まったく事故の収束に力を入れているように見えないためである。考えすぎかもしれないが、わが国政府がNSAの盗聴事件について不問に付したことは、日本企業に対する脅しを躱す狙いがあったのかもしれない。

2015年9月25日追記

日本国内では正規デーィラーが取り扱っていないとの報道もある(『読売新聞』2015年9月24日朝刊2面「VW不正 悪質な手口」サブ記事「日本への影響 限定的」)。タカタ社のエアバッグのリコールは、事故が先行しており、本件不正の発覚とは、経路が異なる。トヨタ社の運転席マット?に対する訴訟とも、経緯が異なる。ドイツ紙※1によるとBMW社の不正を発見した米NPOとは、ICCT※2のようだ。VW社の事件は、タカタ社の事件とは大きく異なり、またトヨタ社に対する訴訟が国内法に準じた形で進められたこととも異なり、米国内での厳正な捜査の結果が思わぬ余波をもたらしうるにもかかわらず、その発覚の端緒がアンフェアである可能性が高いという点で、ほかの事件と異なる。いち日本人から見て、タカタ社の事件は大いに追及してほしいし、トヨタ社の訴訟も法の枠内であるので許容されるのだが、VW社の本事件は、いろいろ納得いかないのである。仮に、日本企業が不正をしており、それを発見していたとするなら、それも同様に追及するのが筋の通った態度であり、米国の国益にも適うのではなかろうか、と私には見えるのである。本事件で選択的な行政機能が発揮されたものと仮定すると、米国のフェアネスに疑問が呈されることになるが、そのような事態は、私の目からすれば、長期的に見て割に合わないことである。

※1 AUTO BILD: Auch BMW-Diesel überschreitet Grenzwerte - autobild.de
※2 The International Council on Clean Transportation | ICCT

2015年9月25日8時27分追記

発覚の端緒は、本日の朝日新聞朝刊によると、欧州の非営利団体がウエストバージニア大学の研究チームに環境性能の計測を依頼したことによるという。非営利団体の名称と主な資金関係まで把握しなければ、納得して上記2.の記述を訂正することができないので、事態の全容が判明するまで、記述の訂正をしばらく保留したい。なお、前出のICCTは、ウェブサイトの説明から、Hewlett-Packard社の創業者たちの創立した財団と関係が深いことがうかがえた。ただ、私には知る由もないが、仮に、環境テストが実施された経緯がほかの米独二国間関連の活動とは無関係に実施され、その結果の公表までの経緯においてウィキリークスの暴露が引き起こした両国の緊張関係が考慮されなかったとするならば、国際関係は、案外簡単なものなのだな、とも思う。つまり、EPAによる公表までの段階において、二国間関係が考慮されないわけがないだろう、と私は考える。VW社に続いて、ドイツ生まれのBMW社まで不正に手を染めていたというマスメディアによる報道の流れは、米独関係に微妙なものがあり、VW社の不正の公表は、その関係にも利用されているという、私の見立てを補強するに足る材料である。

2015年9月28日7時58分追記

デイリーメイル紙によると、メルケル首相は(今)夏頃に不正を知らされていたのではと、(ドイツの)緑の党が追及を始めたという。発覚後の現在、本不正は、政治や国際関係まで影響するものになっている。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-3246844/Did-Merkel-cover-Volkswagen-scandal-car-maker-s-boss-quits-German-leader-accused-accepting-trickery-wink.html
事件の余波が国際関係に影響するということは、事件の態様や規模からして、ごく当然のことである。ドイツ連邦政府としても、わが国におけるダイエーやJALのように、"Too big to fail"ということがあるだろう。
他方、私が上の2.で主張したかったことは、不正がVW社の関係者以外に察知されたという経緯そのものに、国際関係上の不正や軋轢が存在していたのではないかという疑惑である。このため、依然として調べてもいないが、2.についての当否は依然として保留したい。

2015年9月18日金曜日

救急搬送者数(メモ代わり)

#以下、メモ代わりなので、整頓されていません。あしからずご了承ください。ただし、出典がすべて分かるように、リンクだけは用意してあります。英訳は、私訳であって定訳を確認していません。
# This article is just a note.  English translation is by the author: it is just a casual one and further confirmation is being required.

  1. 平成27年3月31日 総務省消防庁 報道資料『「平成26年の救急出動件数等(速報)」の公表
    Fire and Disaster Management Agency, 2015 Mar 31th, press release "Number of ambulance dispatch in 2014 etc. (bulletin)"

表2:救急出動件数及び前年比増減率の推移
Table 2: Number of ambulance dispatched and (percent) change from the previous year
年間件数
numbers dispatched in the year
前年比
change from the previous year
増減率
percent change from the previous year
平成15年 2003 4830813 274932 6.0%
平成16年 2004 5029108 198295 4.1%
平成17年 2005 5277936 248828 4.9%
平成18年 2006 5237716 -40220 -0.8%
平成19年 2007 5290236 52520 1.0%
平成20年 2008 5097094 -193142 -3.7%
平成21年 2009 5122226 25132 0.5%
平成22年 2010 5463682 341456 6.7%
平成23年 2011 5707655 243973 4.5%
平成24年 2012 5802455 94800 1.7%
平成25年 2013 5911281 108826 1.9%
平成26年(速報値) 2014 (value for this bulletin) 5982849 71568 1.2%





  1. 平成22年度 救急業務高度化推進検討会 報告書
    Preliminary Committee Report on promotion of development of ambulance tasks in FY 2010 
  2. 同上 第8章 救急搬送の将来推計 (消防救急業務高度化.indd - 8.pdf)
    Ibid., chapter 8, estimates of ambulance transpotation (消防救急業務高度化.indd - 8.pdf)

上記報告書の第8章170ページの図8-7の補足には、
人口総数の推測値は「日本の市区町村別将来推計人口(平成20年12月、社会保障・人口問題研究所)」を使用した。なお、2015年以降の将来推計は、救急搬送率と推計人口を用いて算出したものであり、今後の搬送率(救急車の利用率)の変化や社会情勢の変化等は考慮していない。
とある。




  1. 平成27年1月22日 東京消防庁 報道発表資料『平成26年中の救急出場件数が過去最多を更新~救急車の適正利用にご協力を!~』
    Tokyo Fire Department, 2015 Jan 22th, press release "Number dispatched in 2015 hit the max: we need your cooperation!"
  2. 統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103
    Portal Site of Official Statistics of Japan GL08020103
  3. 日本の地域別将来推計人口(平成25(2013)年3月推計)|国立社会保障・人口問題研究所
    Estimate Population by Areas in Japan (Works in 2013 March), National Institute of Population and Social Security Research.
  4. 上掲推計人口より「男女・年齢(5歳)階級別の推計結果(都道府県)」
    Ibid., Result of estimation by gender and five-year cohorts (by prefectures)


以上の出典をまとめた表が以下。
The table below is excerption from sources [2] to [7].
全国人口(2010) total population in Census 2010, Japan(2010) 12719万人 127.19 million
全国出動件数(2010) total number of dispatched ambulance, Japan(2010) 5463682件
全国推計人口(2015) estimated total population by National Institute of Population and Social Security Research in 2013 Oct., Japan(2015) 12545万人 125.45 million
全国出動件数推定(2010年度に2015年次を推定) estimated total number of dispatched ambulance by a council at Fire and Disaster Management Agency in 2011 Mar., Japan(2015) 560.3万件 5.603 million
東京都推計人口(2010年国勢調査を元に2015年次を推定) estimated population in Tokyo by National Institute of Population and Social Security Research in 2013 Oct.(2015) 13349453人
東京都国勢調査人口(2010) total population in Census 2010, in Tokyo Prefecture(2010) 1315.9万人 13.159 million
東京都出動件数(2014) number of ambulance dispatched in Tokyo(2014) 757609
東京都出動件数(2013) number of ambulance dispatched in Tokyo(2013) 749032
東京都出動件数(2012) number of ambulance dispatched in Tokyo(2012) 741702
東京都出動件数(2011) number of ambulance dispatched in Tokyo(2011) 724436
東京都出動件数(2010) number of ambulance dispatched in Tokyo(2010) 700981
東京都出動件数(2009) number of ambulance dispatched in Tokyo(2009) 655631
東京都出動件数(2008) number of ambulance dispatched in Tokyo(2008) 653260





以上から、簡単に考えたことをとりとめなく記す。なお、報告書本体を性根を入れて読んでいないので、推計モデル等については(、研究者としてあるまじきことと承知しつつ)、何ら勉強していない。

  1. 全国の出動件数は、30万件以上、推定値よりも増加。
    • この点は、小学校二年生以上の日本人ならば、誰でも理解できるはずのことである。なので、この点に依拠して、救急患者が激増しているという結論に一足飛びに至る者が多いというのは、ありうることである。しかし、問題は、出動件数は、将来の人口にも、ひいては将来の出動件数にも影響を与える統計であるということである。
  2. 出動件数が増加することにより、次年度以降 、人口に正負いずれの方向の影響を与えるのかは、一概に決定することができない。「予想を超えて救急搬送数が増加しているという命題を検証するためには、病院で亡くなった患者数を把握した方が良い」というのが当座の結論。
    • 出動と患者の状態とは、関係があるはずではあるが、二元表を作成して検討すべき内容である。
    • 「出動したので救命できた事例」が増加すれば、将来の人口減少には歯止めをかけるはずであり、この効果が最も顕著なもののように思われる。
    • 「出動する前に急に亡くなる事例」は、明らかに将来の人口と搬送数の両方に負の影響を与える。
    • 出動件数の予想以上の増加が人口に負の影響を及ぼすと仮定することは、正の影響を及ぼすと仮定することに比べれば自然である。この仮定が正しければ、一時的な出動件数の増加は、後の出動件数を減少させるはずである。
    • しかしなお、出動件数の予想以上の増加が人口減少に歯止めをかけると考えることは、自然なことである。
  3. おそらく、報告書のモデルは、詳しく読んでいないのでどう推計したのか把握してないが、次の要素から成るはずである。これに対して知りたい命題は、近年の救急搬送者数が予想されたよりもヤバイことになっている、というものである。
      1. 年代別人口
      2. 2010年時点の、年代別救急搬送者数
      3. 2015年の年代別推計人口
  4. あるいは、ここで下手に難しいモデルを考えたことを捨てて、分析したい年までの間、たとえば、2014年を分析したいとして、2013年までは、「人口がすでに予想されたよりも減っている、あるいは異なった人口構成になっている」ことだけを検証した後、2014年については、2010年時点の搬送率と、2014年に推計された推計人口確定数(総務省統計局によるものを利用し、社人研のものは利用しない)によって推計するというのは、まあまあ良い考え方を提供できるかもしれない。社人研の人口予測よりも推計人口自体が減少していること、それにもかかわらず2010年の搬送率により推定される出動件数よりも大きな実数値を得ていることが示されれば、何かしらの問題が生じているものと指摘してかまわないように思われる。この点、定住人口の減少した福島県で救急搬送数が増加したという福島民報?の報道は、重く見るべきである。

Googleの鬼怒川水害における衛星写真提供に対する識者等のコメント等について

Abstract: There is a news wire by Nikkei Business Online (link below) that tells Google map satellite image beats the map provided by Japanese Government Crisis Management Team.  However, it seems to be desirable for Google to refrain from putting the article to the top of search results when searching words "Kinugawa flood" and "timeline", to make good relation with public sectors in Japan.  Japanese crisis management system may require update as the U.S. military services evolved on the concept 4CI.

#Googleサービス傘下のBloggerのブログ内で本件に言及するのは、中立性が保たれていないのではないかという懸念を読者に持たれる可能性があるのですが、本件について、ここに記された以上の含みを有するわけではないことを、あらかじめお断りしておきます。

下記、日経ビジネスオンラインの記事が人気のようです。

情報収集衛星、鬼怒川水害でグーグルにKO負け:日経ビジネスオンライン http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/217467/091400001/

下記ニュースコメントサイトでは、堀江貴文氏が民間委託は世の流れだとか、オックスフォード大学で仕込まれた立命館の准教授の琴坂将広氏が似たようなことを述べていたりします。

情報収集衛星、鬼怒川水害でグーグルにKO負け
https://newspicks.com/news/1157364/

琴坂氏のコメントは次のとおりです。
これは良記事。
時代が変わり、情報通信衛星の意味や価値も大きく変わった。年間一千億円を投じるとしたら、未来に向けて違うカタチがありそうなのは間違いない。

しかし、彼らは危機管理の基本である一国自前主義(これは私の造語ですが、たとえば佐藤優氏のいう「インテリジェンスに友人なし」を指します。)という原則を知らないか、忘れているか、わざと無視しているかのいずれかです。宇宙産業に投資している商売人である堀江氏が民間委託を推奨するのは当然だし、どんどん主張してもらってかまわないのですが、琴坂氏がこのような発言になるのは、日本国民全体の利益を考慮すべき日本人(でないかもしれませんが)の有識者の本分から外れることであり、残念です。立命館大学は、政府の危機管理分野にも一部関与していますが、その人たちの努力に水を差す形になっていると思います。誰のために仕事をしているのか、社会に深く関わる学識経験者と呼ばれる者は、それなりに注意しつつ、発言することが求められるはずです。以上は、有識者等の意見に対する私の意見です。


私自身のGoogleのサービスと政府の公開状況に対する意見を以下に示します。大きく二点あります。まず、一つ目に、単に、高精度の衛星写真上に大量の情報を掲載し、それらの情報を快適な速度でユーザに配信できるGoogleのサービス水準は凄いなあ、と思います。この点こそが、Googleの強みであると思いますので、後ほど触れることにします。

二つ目の私の意見は、衛星写真の解像度は現場の指揮者にとってはそれほど問題ではなく、高解像度の映像と地理関係との対応関係を瞬時に確定できれば、むしろその方がどれだけありがたいことかと感じられるのではないかというものです。この二つ目の意見は、実用化に向けて研究開発が進められている技術のはずですから、今後に期待しているところです。

今現在(2015年9月)、Google(および提携先の情報ハード系企業)を危機管理上のソリューションとして採用することの強みは、Googleの伸長の原動力である検索サービスの優秀さよりも、安定して高速に大量の情報を取得・配信できるインフラにあると思います。本件に即して繰り返すと、衛星写真の解像度そのものではなく、高解像度の衛星写真を載せて数千万人が同時にアクセスしていても快適に大量の情報を送受信できているサーバ性能を確保できていることにこそあるのではないかと考えます。しかし、目下の危機管理における課題は、わが国では大量にスマホ経由で日本語情報が産出されることを期待できたとしても、それを集約し、情報の内容に優先順位を付け、消防・警察・自衛隊・自治体等のリソースを配分する段階にこそあります。軍事研究の本場のアメリカ合衆国で育まれたGoogleに対して指摘することは、大変おこがましいのですが、かつて米国の軍事ドクトリンは、4CIという語に示されるように、情報流通過程の再編(ネットワーク化)を視野に入れてグレードアップされたことを聞きます。わが国の災害対策における情報管理は、この経緯と同形のグレードアップが必要な状態にあると理解するのが適切です。もちろん、Googleのプラットフォームは、その実現を可能とする能力を備えてはいるものの、一般に開放されたGUI群を使う限りでは、具体的なAPIを構想・開発した上で提供していく必要があるように見受けます。


公共機関向けシステム開発では、開発側によるUIの押しつけが常態化していますが、危機管理を担当する消防・警察・自衛隊では、自身の業務に無限責任を負うという覚悟で仕事をする意識が十分に徹底されているように感じられます。そうしたところに、現在のソリューションよりもこちらの方が良いですよ...と押しつける形になることは、少なくともわが国における建前論上は、金と命が等価ではないので、金で攻めると(現場の職員の)命を理由に断られることにつながります。現在のソリューションで腹を切る覚悟ができている(はずの)担当者には、おいそれとGoogleマップを使えば良いと言うわけには参りません。外野がどう思おうとも、今のところ、現場を指揮する者の判断に任せるほかない、と思います。Googleジャパン社の官公庁担当としては、衛星写真解像度については、(私が調べようと思ったのは、「鬼怒川水害 タイムライン」ですが、この検索ワードでトップに日経のニュースが来てしまうような調整は行わず、)控えめな宣伝に留めておいた方が、将来、担当者側からの好意的なコンタクトを期待できるはずだと思います。

また、なおのこと、そうしたときに、日本国政府が自前で危機管理上のソリューションを用意することに対して、有識者たる者が、金額の大きさだけで批判を加えることは、行政の危機管理担当者の業務の難易度を高めることになり、ひいては、国民の生命および財産を危険に晒しかねないものとなると同時に、どこの営利企業と裏で結託しているのやら、という疑いを抱かせることになるものと考えます。

まとまりがないのですが、ブログにおける自分のポリシーを遵守した範囲内での私の意見は、とりあえず以上です。

2015年9月19日 08:12JST 追記

上記時点で「鬼怒川水害 タイムライン」で検索したところ、トップ3は以下のとおりでした。
順番からしても、今後の水害対策を考察する上で、有益な順に情報が並んでいると考えます。
(私は、下記3件の並びには、本エントリーの執筆を除けば、関与していません。)
検索結果が改善されていく、というところも、Googleの、ひいてはアメリカのエンジニアリング上の哲学の強靱さだと思いました。
  1. 今回の鬼怒川大水害の被害を大きくした原因を考える!※9/13 ...
    sciencecity.tsukuba.ch/e280377.html
  2. 鬼怒川大水害 これは偏った治水政策が招いた「人災」だ!
    https://newspicks.com/news/1157433/
  3. 情報収集衛星、鬼怒川水害でグーグルにKO負け - NewsPicks
    https://newspicks.com/news/1157364/

2015年9月17日木曜日

JR東日本における本年8月の連続不審火事件の容疑者逮捕について

#誰も見ていないようなので、寂しくなり、3ヶ月ほど放置してしまいましたが、JR東日本敷地内における連続不審火事件の容疑者が逮捕されたとの報道があり、本事件自体は終息する見込みが高いものと思われましたので、本事件の容疑者の逮捕を区切りとして、専門家としての意見を述べておきたいと思い、更新することにしました。

本事件の容疑者の犯行の動機は、桐生正幸氏がNHKの18時台のニュースのインタビューに回答した内容(つまり、不満の発散)とは異なり、通常の連続放火事件の枠を超えて扱うべきものである可能性が残されている。実際、報道記事の多くが「連続放火」ではなく、いまだに「不審火」という表現を用いており、これらの報道機関の表現は、本事件が一種のテロ事件であるという可能性を見越したものであると解釈するのが適当である。私も、テロ事件としての可能性を見越した捜査が行われることが適切であると考えるとともに、本事件を教訓として、テロ対策を含め、今後の犯罪対策が着実に進められることを期待している。JR東日本の安全担当者にとっては、定時運行、安全運輸が優先順位の首位を占めることはもちろんであろうが、今後の数年間、悪意により起こされる事件に対する備えこそ、積極的に進めてほしいものである。実は、昨年から今春までの間に、オリンピックに向けて本格的なテロ対策が必要であることをJR東日本グループに所属する複数の人物に人を通じて忠告したことが二度以上あるだけに、本事件までの担当者の感度が鈍く、また報道による限りではその印象が今も拭えないことは、返す返すも残念なことである。幸い、報道による限り、本事件は人的被害に直結していないようである。本事件を機に、安全対策を十分かつ確実なものに拡充することを期待する。(蛇足であるが、地下鉄サリン事件を通じて、東京メトロは、比較的、この種の対策に関心を払っていることを聞いている。また、地下の路線は、本事件のような一匹狼による犯行を比較的防御しやすい環境にあると考えて良いであろう。)

ところで、唐突であり、私の専門分野から外れることであるが、本事件がテロ事件であるかという可能性を探ることができ、かつ、報道可能なポイントは、容疑者に妻子がいるかどうかであろう。捜査関係者には、この点を丁寧かつ十分に調べてほしい。妻子の有無という事実関係は、容疑者の行動の背景が複雑なものであるかどうか、それとも、容疑者のSNSに示された日本国内における生活から受ける印象のような組織色の薄いものであるかどうかの判断基準となりうる。仮に容疑者が犯人であり、かつ、彼に妻子がいたとすればであるが、本事件をテロ事件だとして対策に資源を注ぐことは、回り回って大多数の日本国民の利益に適うものとなる。(この結論に至る論理と、この点から派生する課題は省略するが、これらを要望される方は、直接ご連絡いただきたい。)

桐生氏の専門分野(ここでは、動機の解明)に踏み込むことを承知で、容疑者の身上についてもあえて言及することは、私自身の考える専門家としてのルールに違反するが、「本事件を多くの可能性を含めたものとしてとらえ、テロ事件をも見据えて今後の安全対策を進めるべきである」という主張のために必要なことであった。というのは、本件不審火を専門家が単純な連続放火事件に落とし込むことは、次に生じうる事態への備えを阻害するためである。本事件を一個人による単独事件としてのみとらえると、「今後このような特殊な事件は起こらない」といった矮小化もが肯定されかねず、ひいては、実務家(JR東日本の警備業務委託担当者や警備業務受託企業等)が現状に留まることを黙認することになりかねない。反対に、本事件にテロ事件の含みを残してこそ、テロ対策を所掌とする諸関係者が今後の対策に関与し続ける理由が確保できる。いずれにしても、桐生氏の専門家としての今回の説明は、「大きく構えて小さく納める」という、佐々敦行氏の指摘する『後藤田五訓』のひとつにも反しており、かえって公益を損なう内容である。犯罪対策を的確に進める上で、今回の場合には、考えられる動機の範囲を広く取り、事件の性格を把握することはもちろん、対策も広く構想すべきである。

私は、専門家や実務家が定められた各人の持ち場・守備範囲をしっかり守っていたならば、事件・事故の際、免責されるものと考えるが、しかし同時に、事件の経緯、JR東日本の資源・重要性等を考え合わせると、JR東日本の犯罪予防業務の担当者に課せられた業務内容自体は、今後、現状よりもJR東日本という企業にふさわしいものに向上させる必要があるものと考える。犯罪の素人が単独でこのような連続放火事件を起こし、複数回にわたり鉄道の運行を停止させ得たとするならば、犯罪のプロ集団ならばどれほどの被害となったのやらと想像することは、誰にとっても自然に思いつける。(本事件では、過激派グループによる伝統的な犯行によるという線も、もちろん検討されたことであろう。)仮に、本事件を受けて従来の対策をJR東日本という人員と資源に恵まれた大企業が改善しようとしなかったとすれば、次の事件の際、その不作為の責めを受けることはやむを得ないであろう。もちろん、わが国において公共安全という分野で禄を食む者が本事件を重く見なかったとすれば、程度こそあれ、私を含めて、同様に不作為・無能力の責めを負うことになる。

本事件が一種のテロ事件であるかどうかにかかわらず、本事件から学習した潜在的な犯罪者は多数生じたであろうから、今後の同種の事件への対応は、予算上は経営判断が必要な程度の課題と化しており、また、国内外の犯罪予防関係者とのより緊密な連携・協力を必要とする状態が生じている。品川における事件の対象となった施設は、おそらく、重要施設であったがゆえに、逮捕の決め手となった防犯カメラが警備業者により設置されていたのであろうが、JR東日本も警備業者も営利企業であるから、民間に任せきりでは、おそらく、警備体制が一気に拡充されることはないであろう。かと言って、警備体制が現状程度であるならば、次の類似事件は、まず確実に予防できない。加えて、有楽町駅近くのぱちんこ店から出火した火災や、王子駅近辺の飲食店街から出火した火災、最近では京浜東北線?沿線の住宅火災などで明らかになっていることであるが、鉄道の円滑な運行には、相隣関係がそれなりに重要であるにもかかわらず、この点は、現在まで、それほど重要視されてはいない。(蛇足であるが、私が大学で学んだ都市工学は、この相隣関係や、ネットワークという観点に重点を置く分野でもある。)

日本社会がここ数年以上の大きな変動を経験しない限り、東京オリンピックの安全かつ円滑な開催に向けて官民が対応すべき業務は、社会のリソースを目一杯使い切る程までに、広範かつ深刻な状態で存在する。オリンピックの開催という大事業は、先進・成熟した社会にとっては、慎重な社会配分を必要とする難事業である。ロンドンオリンピックでは、移民や労働者階級が労働力としての緩衝材となり、需要が一段落した後には社会不安要因としての扱いを受けるなど、公正な社会という観点から見て、問題のある処遇を受けたという経緯がある。本事件については、容疑者の動機に着目するよりも、事件後の対策に注力すべきであること、社会における資源および負担の適正配分まで含んだ対策を考案・実行すべきこと、という二点に配慮した指摘をなすことが、わが国の公共放送に出演する学識経験者たる者の本分である。

2015年6月4日木曜日

日本年金機構の情報流出事件で、続・勝手に『あらたにす』

前回の記事では、日本年金機構の情報流出事件に関して、日経・朝日・読売の三紙で、勝手に『あらたにす』してみましたが、本日(平成27年6月4日)の朝刊(各14版、面によっては13版)でも興味深い情報の書き分けが見られましたので、記しておきたいと思います。各紙の構成は、記事の末尾に示しておきます。

三紙の重要な違いは、日経・読売では『2ちゃんねる』への書込みに触れていて、朝日では触れていない一方で、朝日のみが厚生労働省内での情報伝達に言及している点です。昨日の別の記事では、経済犯罪の防止という観点から考察しましたが、本日の各紙の報道は、誰が・何を・いつ知ったのか、という点をより厳しく検証する必要を指摘するものであるように思います。

  • 日本経済新聞
    • 2面
      • 理事長の水島藤一郎氏と厚生労働相の塩崎恭久氏の主な発言
      • 28日以降の職員による『2ちゃんねる』への投稿
    • 35面
      • 標的型メールの詳細と開封、感染までの経緯
      • 消費者庁による詐欺電話への注意喚起
  • 朝日新聞
    • 1面
      • 維新の党の井坂信彦氏が8日と18日の対応を質問
      • 厚生労働相の塩崎恭久氏が問題の報告を初めて受けたのは28日の夕方で、概要の報告は29日の昼
      • 機構から個別電話を掛けないこと
      • 基礎年金番号変更の手順が未定なこと
    • 39面
      • 標的型メールの詳細と開封、感染までの経緯
      • 全端末接続が遮断されたのは29日
      • 消費者庁による詐欺電話への注意喚起
  • 読売新聞
    • 1面
      • 標的型メールの詳細と開封、感染までの経緯
    • 4面
      • 今期国会運営に与える影響
    • 33面
      • メール開封の経緯
      • ダウンロードしたレコードファイルのパスワード未設定
      • お詫び文書の発送
      • 機構から個別電話を掛けないこと
      • 28日以降の職員による『2ちゃんねる』への投稿
      • 消費者庁による詐欺電話への注意喚起

2015年6月3日水曜日

日本年金機構の会見に至るまでの空白期間は、詳しく捜査されるべきである

【要約】日本年金機構の情報流出事件の公表は、平成27年6月1日の午後になったが、日本年金機構は、本件について、司法当局への遺漏なき説明が必要である。警視庁公安部をはじめとする司法当局には、タブーを設けず捜査をお願いしたい。年金機構の職員と思しき人物による『2ちゃんねる』への書込みは、ある種のインサイダー取引を覆い隠す煙幕の役割を果たした可能性さえ認められる。

日本年金機構の情報流出事件は、先の記事で述べたように、警視庁公安部が捜査していると報道しているが、この事実は、公安部が対処すべきほど、本流出事件が国際・経済・政治の各方面に直結する事件であることを示す傍証でもある。ウイルス付きメールを送信した犯人は、シマンテックが公式ブログで「CloudyOmega(クラウディオメガ)」と命名した※1者(たち)であると読売新聞が報道している。この犯人が多用する方法は、書類ファイルに見せかけた不正なプログラムを実行させる※2という手口である。

[2015年6月3日9時追記]今回は、経済方面への定性的な影響に限定して考察を行う。ただし、下記のタイムラインなどから明らかであるように、NISC、厚生労働省などをはじめとして、多くの行政関係者も今回の情報流出を公表以前から知る立場にある。本事件を徹底的に捜査すれば、行政関係者のインサイダー取引が明るみに出される可能性も認められる。これが、先に、経済・政治に直結する事件であると述べた理由のひとつである。理由のもう一つは、以下に述べるように、日本年金機構の対応が、経済的に不正な利得を得る猶予を与えかねないものであったことにある。

基本的なタイムラインは、「日本年金機構の情報漏えいについてまとめてみた - piyolog」から確認できる※3。タイムラインとして把握すべき情報は、このまとめから十分に得られる。以後、ここで示した意見の論拠は、おおむね、このまとめブログから得ることができる。

平成27年6月1日の証券取引市場の大引け後に、報道がウェブにアップされたことは、確実だと考えて良いであろう。時事通信の記事は、16時53分配信であり※4、産経新聞の記事は、16時55分配信である※5。『Yahoo!ニュース』のタイムスタンプの正確性は、サイト運営企業であるヤフー株式会社の信用にも、通信社・新聞社の信用にも関わることである。Yahoo!ニュースに対しては、相当数のアクセスが定常的に見られるという条件があるため、タイムスタンプをわざと前後させる理由も考えにくい。いずれにしても、この記事が1日の大引け後に報道されたものと考えることには、差し支えがないであろう。

企業犯罪を防ぐという観点から見れば、日本年金機構による会見の開始時刻が15時前でなかったかという点を確認しておくべきである。ただし、われわれは、この点には留意せずとも良いだろう。FNNがYouTubeにアップした会見の模様※6では、冒頭から125万件の情報流出があったと述べられている。仮に、会見が証券取引市場の後場の最中に開始されたとするならば、日本年金機構は、この会見そのもので、報道各社の関係者にいち早くインサイダー情報となる情報を提供したことになる。ゆえに、司法当局は、この記者会見が、いつ・誰に・どのように、通知されたのかを確認する必要がある。しかし、これほど分かりやすい手抜かりが記者会見で生じるという事態は、さすがに考えにくい。その上、司法当局においては、この点は、基本的な確認事項であろうから、本件についての考察は、本稿では行わない。

大引け後に記者会見が開始されたという前提で話を進めると、一番の問題は、日本年金機構による会見が週末に行われず、月曜日の証券取引所の月曜日の午後まで遅れた点である。対応の迅速さは、経済犯罪(企業犯罪・金融犯罪)の予防を図る上で、また同機構の関係者が無用な疑いを持たれないために、きわめて重要である。タイムライン上では、5月30日に流出の停止が確認されている。30日のいつであるかという問題は、それほど重要ではない。31日のうちに記者クラブに通告して記者会見を開催すること自体は、報道機関も大企業であるから、さほど困難なことではない。しかし、記者会見が遅れたという事実は、本件の担当者らだけに、状況が沈静化してから1営業日の間、何かを売り抜けたり買い込んだりする猶予が与えられたということにほかならないのである。

第二の問題は、28日木曜日の夕方以降、複数の年金機構の職員により、システム障害を匂わせる書込みが『2ちゃんねる』に複数投稿されたことである。これらの書込みがいち早くネット住民に注目された形跡は、広く認められる。28日以前にも、機構内のみならず政府関係者には、情報流出の可能性が認識されていたはずであるが、『2ちゃんねる』への複数の職員の書込みがなされるまでは、それほど大きく問題は認識されていなかったものと認められる。もっとも、問題が生じていることを示す、ほかの書込みが後から発見される可能性も絶無ではない。

本件で多くの情報が流出したという事実は、平成27年6月1日に初めて確認されたものではない。まず、8日の時点で不正アクセスがNISCにより確認され、厚生労働省へ連絡がなされたという。次に、19日の時点で警視庁への相談があったという。28日に流出が認められたと警視庁より連絡があったという。その当日、28日の20時台、『2ちゃんねる』の「日本年金機構【年金機構】」というスレッドに「ウィルス」という名前の主が「感染しました。」と書込みを行ったようである。

日本年金機構の対応の遅さは、同機構のトップクラスの職員を含めた広範な範囲の関係者にインサイダー取引が横行している可能性があるとの疑念に正当性を与えるほどのものである。28日の書込みは、証券取引の不自然な変動につながりうる。『2ちゃんねる』に代表される自称「匿名」サイトでは、このような書込みを監視して、書込主のIPアドレス・日時と合わせて活用することにより、経済上の利益を狙うということが行われる余地がある。以上の経緯をふまえると、論理的には、書込みした人物はもちろん、サイト運営者ら、年金機構関係者のうち28日の内部通達を決裁した者、1日の時点で公表することを決定した者までもが、インサイダー疑惑の容疑者となりうる。

ややこしいことは、28日に書込みを行った者・サイト運営者らが、インサイダー取引を実行しようとした本命の人物または集団によって、煙幕を張る役割を担わされた可能性が認められることである。19日の時点で明らかな被害が認められている一方、28日に内部通達を実施した部署が、28日まで実質的または段階的な対策を施したようには見えない点も、このような疑いを増す要因となっている。ダチョウ倶楽部の上島竜兵氏のように、「押すなよ、押すなよ」という印象を与えるような形の統制を突然強いておきながら、十分な説明を与えず、箝口令も出さなかったとすれば、この統制の不思議さにまんまと引っかかった機構の職員が、案の定『2ちゃんねる』に本件を匂わせる書込みを行うという結果に至ったとしても、何ら不思議はないのである。

怪しい書込みは、28日木曜日18時43分以後に散見されることから、『2ちゃんねる』の読者に丸二日間の取引のチャンスを与える形となっている。『2ちゃんねる』の28日の書込みに敏感に反応してコンピュータセキュリティ関連株に買い注文を入れたり、あるいは年金機構のシステム構築に関連した企業の株に売り注文を入れたりしたような、年金機構とは無縁の賢明な市場利用者は、この期間を利用して(下手をすると18日以前から)仕込みを入れていた真犯人を覆い隠す煙幕の役割を果たしてしまうことになりかねないのである。このような事態が生じているとすれば、また実際生じていてもおかしくはないが、インサイダー取引の犯人の方が、19日以前から28日までの開設日を上手に利用できる分、28日に書き込まれた情報を利用した善意のトレーダーよりも犯人らしく見えなくなるのである。

IT企業界隈では、インターネットに接続する機器とデータベースを扱う機器を物理的に常時接続したことは、初歩的な誤りも良いところであるという声が上がっている。流出情報に係る業務は、一見すると、インターネットに常時接続してまで情報等をアップデートする必要があるとも思えないものなので、これらの批判には説得力がある。この点についても、別途検証が必要とはなろう。ただし、この問題は、本稿で扱う問題と切り離して考えることができる技術的な問題であり、もちろん改修すべきであるが、年金制度を担保する組織の存立そのものに致命傷を与えるものではない。

繰り返しになるが、今回の情報流出事件に係る日本年金機構の対応で責められるべき点は、報道で指摘されるようなシステムの不具合ではなく、証券市場を通じて年金を運用する主体としての適格性を疑わせるような遅い対応を取ったことである。上記で指摘した年金機構の動きは、総体として、証券取引市場で何かあくどいことをしでかしたのではないかと第三者に疑わせるに十分な材料である。28日の書込みは問題であるが、たとえ、この書込みがないとしても、対応が月曜日の午後にずれ込んだこと自体、責任を免れない結果である。ましてや、28日の書込みを放置する形になった点は、記者会見のセッティングに単に時間を要しただけであったとしても、丸二日の取引時間中に何かの不正を行うための煙幕ではないかという疑念を抱かせる結果となっているのである。記憶だけで記すと、年金の実際の運用はプロに任せるということになっているようであるが、しかしながら、委託先を選定する作業にも影響が出ないとは言い切れないであろう。

日本年金機構は、以上のような懸念を払拭するためにも、今回の記者会見に至る経緯について、司法当局へ遺漏なきよう、また、積極的に説明すべきである。警視庁公安部をはじめとする司法当局には、タブーを設けない捜査をお願いしたい。何度も繰り返すが、年金機構の職員と思しき人物による『2ちゃんねる』への書込みは、ある種のインサイダー取引を覆い隠す煙幕の役割を果たした可能性さえ認められ、その煙幕に隠れようとした犯人の候補は、論理上、広範な組織にわたることになってしまうのである。データを流出させたという事実が致命傷になるのではなく、危機管理上の不満足な対応こそが、日本年金機構にとって、真の致命傷になりかねないのである。それゆえ、以上の説明に立ってみると、本事件が公安部の担当になることは、それほど不思議なことでもないのである。私は、一般人以上のことを何も知らないが、おそらく、ここで指摘したような可能性までを含めて、19日以降、捜査が進められていることであろうと推測する。

現代の企業活動や公益活動は、証券市場と分かちがたい関係にあり、証券市場への影響を常に視野に含める必要がある。危機管理の場においてさえ、株式市場への影響は、念頭に置く必要があるだろう。証券市場への影響をふまえるなら、危機管理の担当者も、証券市場のスピード感をふまえて動く必要がある。このスピードを乗りこなすためには、素直な対応しか取り得る方法がないようにも思われる。



※1 CloudyOmega 攻撃: 一太郎のゼロデイ脆弱性を悪用して日本を継続的に狙うサイバースパイ攻撃 | Symantec Connect コミュニティ
http://www.symantec.com/connect/ja/blogs/cloudyomega

※2 セキュリティ研究センターブログ: 医療費通知に偽装した攻撃(Backdoor.Emdivi) その後
http://blog.macnica.net/blog/2015/01/post-39d4.html

※3 日本年金機構の情報漏えいについてまとめてみた - piyolog
http://d.hatena.ne.jp/Kango/20150601/1433166675
注: 「タイムライン」2015年5月28日(上段)の「警視庁が日本年金機構へ当該事案に関する連絡が行われる。」は、本日の日経朝刊1面と突き合わせると「同月28日、同庁からの連絡で情報流出が判明した。」ということですから、「警視庁が」→「警視庁から」でしょう。連絡先がないので、念のため。

※4 125万件の個人情報流出=職員端末にサイバー攻撃―年金機構
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150601-00000070-jij-soci
時事通信 6月1日(月)16時53分配信

※5 日本年金機構にサイバー攻撃 年金情報、最大125万人流出
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150601-00000543-san-soci
産経新聞 6月1日(月)16時55分配信

※6 (全録)日本年金機構が会見 約125万件分の個人情報流出と発表 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zr0R76kln1c

2015年6月2日火曜日

年金情報流出事件に関する報道で、勝手に「あらたにす」

題名の「あらたにす」は、「日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞の発信するニュースや社説、企画記事の読みくらべサイト。」です。が、年金情報125万件流出に関する平成27年6月2日東京朝刊(日経14版、朝日14版、読売14版)における三社の記述が興味深い分かれ方となっていましたので、メモ代わりにもご紹介したいと思います。

要点は2点、(1)担当捜査機関の部局名、(2)今後のサイバー攻撃対処の要となる政府機関の人員規模、です。本格的に各社の論調を検証するのであれば、トピックごとに記述の有無を確認するという作業を行うべきかもしれません。

  1. 担当捜査機関の部局名
    • 日経:警視庁(1面)「年金情報125万件流出...」
    • 朝日:警視庁公安部(1面)「年金情報125万件流出か...」
    • 読売:警視庁公安部(1面)「年金情報125万件流出...」
  2. 今後必要が見込まれる政府の人員規模
    • 日経:足りない(他国は10倍以上、5面記事「サイバー対策見直し必至 年金情報125万件流出 政府、人材難が課題 マイナンバーに逆風も」)
    • 朝日:記述なし
    • 読売:記述なし
担当捜査機関の部局名が公安部であるかどうかという記述の違いは、かなり重要です。当局が注目する事件のポイントが、われわれ庶民の予想する分野にはない可能性もあるからです。このために、日経に比べて警察行政のあり方に興味を持つ朝日・読売がともに、分かる人には分かるシグナルとして、このように記述している可能性もあるわけですが、警察関係に強いとされる産経新聞グループのFNNも、部局名まで報道しています。たとえば、当初の時点から、ウィルス添付メールが特定国から発信されたことが明らかであった場合や、または、本件流出に係る話題に関連して、年金機構の職員が『2ちゃんねる』に書込みしたのではないか、と話題となっていますが、この件を重視しているのかも知れません。

他方、今後必要が見込まれる政府の人員規模について、日経だけが、明らかに不足していることを行間から読み取らせるような記事を掲載しています。この指摘自体は、むしろ遅きに失しているかもしれませんが、正当なものです。明らかに業務上の必要を満たす上で、コンピュータセキュリティ関係者は、わが国では不足しています。ただ、私の個人的感想としては、本件に限定してみれば、サイバー犯罪防止の一環としても、証券取引等監視委員会の機能を10倍増は必要だと思います。

新聞を読み比べることは、メディアリテラシーを培う上で大変重要だとされています。一般家庭でこれを実行するのは大変ですが、冒頭に紹介した「あらたにす」はもちろん、Yahoo!などのサイトを併用すれば、かなりの程度まで、似た作業が行えるものと思います。五大新聞社の中では、三紙の論調は、多くの場合、そこまで大差なかったりもします。しかし逆に、三社の報道に細かな違いが見られるケースの背後には、何かあると考えることもできるわけです。特に、政治報道に対してスタンスが大きく異なるかのように一般に思われている朝日と読売の報道スタイルが、今回のような国際・政治・経済に大きく影響しかねない事件でおおむね一致したということは、面白いことだと思います。

#今回、新聞各社は、略称で記載しました。紹介順は、「あらたにす」に記載された三社の順で記載しました。今回は、ですます調で記述してみました。本稿における表現が先月までのスタイルと異なることには、特段の意図を含めていません。本件は、ネットのまとめを拝見すると、相当機微に富んだ事件かと思われます。別途、考察したいと思います。