2015年9月23日水曜日

フォルクスワーゲン車の不正について(感想文)

不正発覚のフォルクスワーゲン株価大幅下落 NHKニュースhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20150922/k10010244221000.html

#以下の文章は、感想文に過ぎない。衆目に耐えうるものとするためには、せめて、わが国における耐震偽装、耐火性能の偽装や食品の産地偽装と併せて考える必要があるし、標準や規格の機能までに目配りする必要がある。アメリカにおける他国の自動車産業という(私にとってはまったく知らないとして良いほど濃ゆい)要素もある。
  1. フォルクスワーゲン社の不正は、世界各国の基準に対して図られた可能性が指摘されている。わが国に限定すると、同社が環境性能の優秀さをうたって自社製品を販売していたとすれば、その行為は、その行為に限れば、詐欺罪に該当するであろう。
  2. しかし、本事件は、企業犯罪として扱うよりも、まず最初に、国際関係によって説明されるべき事件であり、その検証なくして企業犯罪として扱うことは、より重要な論点を見落とす虞のある内容である。アメリカのNSAが不正な方法でドイツ首脳や主要企業を盗聴していたことが明るみに出され、これに対してドイツ(連邦)政府が抗議したという経緯がある。本事件は、この経緯から生じた可能性が高い。
  3. 今後、日本国民の財産を守る上では、不正の発見から公表に至るまでの関係者・経路を明らかにすること、直前までのVW社の株式の売買状況、の二点を確認すべきである。本事件は、不正な手段で入手した(=NSAの盗聴)不正に関する情報(=VW車への不正機能の実装)が、国内の刑事裁判において証拠採用できるものとはならずとも、全世界的に、無関係な民間人に経済的な損害を与えつつ、民事上の責任を不正な行為を犯した企業に対して与えることができることを示す実例である。本事件は、ある国(ここではアメリカ)における法の適正な執行(不正の公表)が他国民(ドイツやわが国)の利益を不当に損なう可能性を、現に示すものである。本事件において、仮に、本事件の発表が、アメリカ国民のみがVW株をいち早く売り抜ける上で有利な時間帯に行われたとすれば、それは、関係者が世界中にいる以上、公正さからは遠いこととなる。(この論点もあるために、私は、本事件を国際的な観点から検討されるべきことであり、一企業の犯罪として扱うことは不適当であると考える。)
  4. とはいえ、わが国政府は、本事件を不問に付さざるを得ないであろう。今になってみれば、本年3月中のメルケル首相の訪日は、福島第一原発事故を終息させるよう現政権に申し入れることが目的のひとつであったとも考えられるが、わが国政府は、まったく事故の収束に力を入れているように見えないためである。考えすぎかもしれないが、わが国政府がNSAの盗聴事件について不問に付したことは、日本企業に対する脅しを躱す狙いがあったのかもしれない。

2015年9月25日追記

日本国内では正規デーィラーが取り扱っていないとの報道もある(『読売新聞』2015年9月24日朝刊2面「VW不正 悪質な手口」サブ記事「日本への影響 限定的」)。タカタ社のエアバッグのリコールは、事故が先行しており、本件不正の発覚とは、経路が異なる。トヨタ社の運転席マット?に対する訴訟とも、経緯が異なる。ドイツ紙※1によるとBMW社の不正を発見した米NPOとは、ICCT※2のようだ。VW社の事件は、タカタ社の事件とは大きく異なり、またトヨタ社に対する訴訟が国内法に準じた形で進められたこととも異なり、米国内での厳正な捜査の結果が思わぬ余波をもたらしうるにもかかわらず、その発覚の端緒がアンフェアである可能性が高いという点で、ほかの事件と異なる。いち日本人から見て、タカタ社の事件は大いに追及してほしいし、トヨタ社の訴訟も法の枠内であるので許容されるのだが、VW社の本事件は、いろいろ納得いかないのである。仮に、日本企業が不正をしており、それを発見していたとするなら、それも同様に追及するのが筋の通った態度であり、米国の国益にも適うのではなかろうか、と私には見えるのである。本事件で選択的な行政機能が発揮されたものと仮定すると、米国のフェアネスに疑問が呈されることになるが、そのような事態は、私の目からすれば、長期的に見て割に合わないことである。

※1 AUTO BILD: Auch BMW-Diesel überschreitet Grenzwerte - autobild.de
※2 The International Council on Clean Transportation | ICCT

2015年9月25日8時27分追記

発覚の端緒は、本日の朝日新聞朝刊によると、欧州の非営利団体がウエストバージニア大学の研究チームに環境性能の計測を依頼したことによるという。非営利団体の名称と主な資金関係まで把握しなければ、納得して上記2.の記述を訂正することができないので、事態の全容が判明するまで、記述の訂正をしばらく保留したい。なお、前出のICCTは、ウェブサイトの説明から、Hewlett-Packard社の創業者たちの創立した財団と関係が深いことがうかがえた。ただ、私には知る由もないが、仮に、環境テストが実施された経緯がほかの米独二国間関連の活動とは無関係に実施され、その結果の公表までの経緯においてウィキリークスの暴露が引き起こした両国の緊張関係が考慮されなかったとするならば、国際関係は、案外簡単なものなのだな、とも思う。つまり、EPAによる公表までの段階において、二国間関係が考慮されないわけがないだろう、と私は考える。VW社に続いて、ドイツ生まれのBMW社まで不正に手を染めていたというマスメディアによる報道の流れは、米独関係に微妙なものがあり、VW社の不正の公表は、その関係にも利用されているという、私の見立てを補強するに足る材料である。

2015年9月28日7時58分追記

デイリーメイル紙によると、メルケル首相は(今)夏頃に不正を知らされていたのではと、(ドイツの)緑の党が追及を始めたという。発覚後の現在、本不正は、政治や国際関係まで影響するものになっている。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-3246844/Did-Merkel-cover-Volkswagen-scandal-car-maker-s-boss-quits-German-leader-accused-accepting-trickery-wink.html
事件の余波が国際関係に影響するということは、事件の態様や規模からして、ごく当然のことである。ドイツ連邦政府としても、わが国におけるダイエーやJALのように、"Too big to fail"ということがあるだろう。
他方、私が上の2.で主張したかったことは、不正がVW社の関係者以外に察知されたという経緯そのものに、国際関係上の不正や軋轢が存在していたのではないかという疑惑である。このため、依然として調べてもいないが、2.についての当否は依然として保留したい。

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