2017年9月16日土曜日

(メモ)「憑依系」の隣接概念

国際秘密力集団の採用する方法論のうち、「憑依系」は、下記のいずれの表現にも隣接する概念であるように思われる。「憑依系」とは、組織や活動の本来の目的に対して、異なる目的を抱いた人物が加入・潜入し、内部で力を得て、活動を変容させるという方法論である。「憑依系」に類似した表現は、ほかにもまだまだあろうし、そもそも「背乗り」という用語で広く知られた悪事の手口でもある。「憑依系」は、『国際秘密力研究』の菊池氏により命名されたが、「憑依系」が「両建て構造」の一翼を準備する方法であるという点こそは、全体の絵図を描くために必要な認識である。「両建て」の使用場面こそは、(現在では)菊池氏(のみ)が指摘する「国際秘密力集団」の「秘密」の要点であろう。


  • 諺や故事成語などとして、「換骨奪胎」「庇を貸して母屋を取られる」「本歌取り」
  • オスヴァルト・シュペングラー(Oswald Arnold Gottfried Spengler)氏の「仮像(かぞう、pseudomorph)」。鉱物が外形を保持したまま、ほかの種類の鉱物に置換されること。ガナシア『そろそろ、人工知能の真実を話そう』(2017, 早川書房)にも引用されている。
  • 山本七平氏の「対象の物神化」あるいは「臨在感的把握」。山本氏は直接に「乗り移る」という表現を利用する。
  • 宮台真司氏の「ネタがベタになる」。オウム事件にも応用されている(はず)。
  • ジョエル・ベスト(Joel Best)氏のモラル・パニックにおいて機能する、メディア・活動家・専門家・公的機関の相互作用からなる)「鉄の四角形」。佐々木俊尚氏の「マイノリティ憑依」は、これの劣化コピーと理解して構わない。



2017年9月17日追記・訂正

本文を一部訂正した。「背乗り」と「スナッチャー(コナミの同名のゲームが最初である、はず。本来は、snatchingとかになろう。)」と「子取り」と「アイデンティティ窃盗」のいずれが古い概念であるのか、全然把握していなかったことに気が付いた。随分と心寒く思っているところであるが、そこは怠惰が勝るので、あえて宿題として放置する。




2017年9月23日追記

裏取りが進んでいないので、これを確定的に記して良いものかは悩ましいところであるが、落合莞爾氏の『天皇とワンワールド:京都皇統の解禁秘史』(成甲書房, 2015年10月)は、マニ教が他宗教に自身の性格を混淆させることを、強く主張している。落合氏の説は、人類がかなり以前から活発に移住・移動していたことを前提に置いて展開するものであるが、この前提を認めれば、それなりに信憑性があるように思う。人類が短期間に大きく移住しているとする落合氏の前提自体は、演繹的には無理のないものである。また、経験的にも、私の(少なくなっている記憶容量の)頭の中に入っているものを、とりあえず出すだけでも、次の4点の経験的研究(活動)によって肯定できる。文化人類学の古典であるが、レヴィ・ストロースが「発見」した南太平洋の島々に係る社会・親族関係の精緻さは、この前提を肯定する材料である。考古学に関連しては、最近の葦船に着目する動きは、これに連なるものであると言える[2]。ロシアの歴史学者であるレフ・グリミョフのパッシオナールノスチ(ラテン語のパッシオに由来、故事成語風に言えば、臥薪嘗胆)は、プーチン大統領の思想に多大な影響を与えたとされているが、グリミョフ自身は、キャリアの初期において、匈奴を研究しており、匈奴が鮮卑の檀石槐に敗れてから西に大移動しフン族となったという説を提唱した[3]。マーティン・バナールの『黒いアテナ』第二部は、環地中海文化圏が航海技術に裏打ちされたものであることを指摘する[4]。後者の2点は、実証主義者の中では、少数説であるようにも見受けられるが、各研究分野において蓄積された従来の成果が横断的に結合されることにより、初めて提唱することが可能となった種類の研究成果であると思われる(。この種の横断的研究は、エンリッチメント教育の最上の成果からしか得られないものでもあり、実を結びにくいということでもあろう)。

落合氏の説の学術的な課題は、個別の命題の当否もさることながら、その説のほぼすべての論拠が、アブダクションによるものであり、かつ、その説の正当性を、他人にはアクセスできない種類のヒュミントに基づき主張している点である。このスタイルは、わが国の社会科学研究者の正統派となっている実証主義とは、真っ向から対立する。また(、先に挙げた書籍三冊とは異なり)、落合氏の記述のスタイルが書籍であるにも関わらず、相当にとっちらかっていることも、同書の学術上の信憑性を著しく低める要因である。もっとも、この断片的な記述自体、刊行を「さる筋」が認めるに当たり、提示した条件であるものと好意的に解釈することはできる(が、それでも、ねぇ…と言いたくなるほどの構成である)。


#以下、書籍のリンクは、NDL-OPACの固定リンクである。

[1] レヴィ=ストロース〔著〕, 川田順造〔訳〕, (2001). 『悲しき熱帯 1(中公クラシックス)』, 東京: 中央公論新社.

[2] 太平洋横断プロジェクト | カムナ葦船プロジェクト
(2017年9月23日)
http://kamuna.net/?cat=10

[3] チャールズ・クローヴァー〔著〕, 越智道雄〔訳〕, (2016?=2016).『ユーラシアニズム ロシア新ナショナリズムの台頭』, NHK出版, 第7章.

[4] マーティン・バナール〔著〕, 金井和子〔訳〕, 小田実〔解説〕, (2004). 『黒いアテナ 古典文明のアフロ・アジア的ルーツ(2〔上〕)』, 藤原書店.




2017年9月25日訂正

9月23日分を訂正した。




2017年11月8日追記

鈴木真治氏の『巨大数』を読み、アルキメデスが宇宙を埋め尽くすだけの砂粒の数を概算により求めた話が、仏教やジャイナ教に伝播していることを知った。同書でも言及されていた『巨大数研究 Wiki』に、この数の具体的な内容が示されている[2]ので、参照されたい。鈴木氏は、巨大な数が聞き手の判断を麻痺させる旨を指摘していた。巨大な数が人を魅惑するという点は、鈴木氏の指摘のとおりであろう。この点まで含めれば、仏教やジャイナ教における巨大数の導入は、国際秘密力ネットワークの事跡として数えることができるのではなどと、つい、考えを押し進めてしまいそうになる。


[1] 鈴木真治, (2016.9). 『巨大数』(岩波科学ライブラリー 253), 東京: 岩波書店.
http://id.ndl.go.jp/bib/027556890

[2] 砂粒を数えるもの | 巨大数研究 Wiki | FANDOM powered by Wikia
(2017年11月8日確認)
http://ja.googology.wikia.com/wiki/%E7%A0%82%E7%B2%92%E3%82%92%E6%95%B0%E3%81%88%E3%82%8B%E3%82%82%E3%81%AE

2019年5月20日訂正

明らかな誤りを訂正した。




0 件のコメント:

コメントを投稿

コメントありがとうございます。お返事にはお時間いただくかもしれません。気長にお待ちいただけると幸いです。