2017年10月19日木曜日

(メモ)9.11に係るWTC7の崩落について

NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の2008年11月報告書は、火災により引き起こされた損傷が床の局所的な不具合を引き起こし、この不具合が9階に渡る重量を支持していた79番の柱を(、5.5インチ以上の変位により)座屈させるという連鎖を生じさせ、この座屈によりWTC7全棟が崩壊した[1]と述べている。なお、同報告書については、軸受の幅が12インチであったことを受けて、2009年1月には、6.25インチ以上の変形があったと訂正されている[2]。これに対して、2017年9月、アラスカ・フェアバンクス大学のリロイ・ハルゼイ氏らは、構造計算の結果、79番の柱の変位は2インチ未満であり、火災による79番の柱の座屈は生じなかったことを報告している[3]。プレゼン書類は、PDF形式で、同大学のサイトで公開されている[4]。本件は、ポール・クレイグ・ロバーツ氏のブログ記事[5]の和訳サイトの記事[6]を端緒に知ったことである(。念のため、本稿の執筆にあたり、両者ともに確認している)。


[1] Structural Fire Response and Probable Collapse Sequence of World Trade Center Building 7, Federal Building and Fire Safety Investigation of the World Trade Center Disaster (NIST NCSTAR 1-9) VOLUMES 1 and 2
(Therese P. McAllister、2008年11月20日)
https://www.nist.gov/publications/structural-fire-response-and-probable-collapse-sequence-world-trade-center-building-7?pub_id=861611
#直リンクは、http://ws680.nist.gov/publication/get_pdf.cfm?pub_id=861611

〔p.617, 14.2. Summary〕The probable collapse sequence that caused the global collapse of WTC 7 was initiated by the buckling of Column 79, which was unsupported over nine stories, after local fire-induced damage led to a cascade of floor failures.

[2] Errata for NIST NCSTAR 1A, NIST NCSTAR 1-9, and NIST NCSTAR 1-9A, Federal Building and Fire Safety Investigation of the World Trade Center Disaster: Structural Fire Response and Probable Collapse Sequence of World Trade Center Building 7 | NIST
(Therese P. McAllister、2009年1月30日)
https://www.nist.gov/publications/errata-nist-ncstar-1a-nist-ncstar-1-9-and-nist-ncstar-1-9a-federal-building-and-fire?pub_id=901225

[3] Collapse of World Trade Center Building 7 1
(Dr. J. Leroy Hulsey)
http://www.kaltura.com/index.php/extwidget/preview/partner_id/1909371/uiconf_id/36832722/entry_id/0_rxmrybkv

[4] A Structural Reevaluation of the Collapse of World Trade Center 7
(Dr. J. Leroy Hulsey, Dr. Feng Xiao, and Zhili Quan. 2017年9月)
ine.uaf.edu/media/92216/wtc7-structural-reevaluation_progress-report_2017-9-7.pdf

[5] 16th Anniversary of 9/11 Brings New Development - PaulCraigRoberts.org
(Paul Craig Roberts、2017年9月11日)
https://www.paulcraigroberts.org/2017/09/11/16th-anniversary-911-brings-new-development/

[6] 9/11・16周年で新たな進展: マスコミに載らない海外記事
(2017年9月13日)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/09/91116-b568.html




この一方で、矢田部俊介氏の以下のツイート[7]は、「「911において陰謀が行われた」とする言説の中に、かなり多岐に渡る内容が含まれる」という事実を捨象して、吉田夏彦氏の品位が低下するであろうと論じる点で、随分と入り組んだものである。先述したNIST報告に対しては、前掲した最新の疑問点以外にも、数々の疑問が寄せられており、中には、合理的と認められるものも存在する。矢田部氏は、それらの疑問の逐一を確認し、すべてを陰謀論であると判断した上で、ツイートを発出したのであろうか。矢田部氏は、「お互いに」という表現を用いて、自身の品位よりも吉田氏の品位の方が相対的に貶められるであろうという見込みを示している(と解釈できる)ものの、実際のところ、この賭は、矢田部氏にとって不利なものである(。念のため、私自身も、同様の賭に参加している)。私のような気楽な身分から見れば、学識経験者の「品位」の「総計」を低下させないという目的に照らせば、公的な身分のある矢田部氏は、本件について沈黙を保つことが最善手であったように思われる。わが国において「陰謀論」を語る上で、身分に伴う社会関係という障害を乗り越える必要があるという点は、不正選挙に係る拙稿(2016年9月7日)に示した通りである。矢田部氏は、学識経験者に対する社会の信頼というリソースを総体的に浪費した存在として(、少なくとも、本ブログが維持される限りは)、記録されることになろう。


[7] (矢田部俊介、2017年10月2日)




9.11に係る「陰謀論」の多様性については、木村愛二氏が紹介[8]するニック・リーヴァイス(Nick Levis)氏の『あなたの「HOP」レベルはどれくらい?』[9]が参考になろう。合理的な疑いまでを「陰謀論」として片付けてしまう人には、気が付かないのであろうが、「陰謀論」の程度は、木村氏の整理に基づくと、以下のように四段階に分類できる。原文では、第三者の関与の可能性についても列挙されているが、これらが省略されることについては、まあ、分かりやすさという点からすれば、許容されることであろう。

  1. 公式見解:Ari Fleischer氏の主張通り、「警告はまったくなかった」とする説。
  2. 無能説(imcompetence):Reno Wall氏のような説。ホワイトハウスやFBIやCIAやNSAなどは、警告を注意深く検討しなかった。
  3. LIHOP:計画に気付いていて抑止しなかった。「Letting It Happen On Purpose」の略。木村氏の説明によれば、「やらせ説」。
  4. MIHOP:「確信的犯行説」。「Making It Happen On Purpose」の略。諜報関係者と軍の「超政府的な同盟」。

9.11に係る陰謀説を整理する考察として、ほかには、『OilEmpire.Us』が挙げられる[10]。この考察は、リーヴァイス氏の議論を参照し、LIHOPとMIHOPの混合により、9.11が最も良く説明できるとしている。ただ、2017年現在の私から見れば、「imcompetence」の下部にある「9/11 is the excuse ...」、つまり、『華氏911』の世界観は、依然として有効であるように見える。この世界観は、ブッシュ一族が彼らに近しい利益サークルに対して利益を供与することを目的として、LIHOPかMIHOPかが企図された、というものである。「ショック・ドクトリン」というナオミ・クライン氏の造語は、この構図を経済的観点から説明する概念である。

吉田氏のどの発言について矢田部氏が「陰謀論」と評したのかは、出典がツイートラインに示されないので、調査手段がパンピーレベルで、広報手段を自粛している私には、格段の努力を払うか、矢田部氏に問合せしなければ※1、確認のしようがない。『NDL-OPAC』の記事検索で、吉田氏が著者の記事のうち、2001年以降に、9.11に言及していそうなものが見当たらないので、『CiNii』でも引っかからないであろうと予想して、一般人としての努力義務は果たしたと記しておくことにしよう。論理学を京都大学で講義しているという矢田部氏の「一刀両断」な姿勢に比べれば、本稿で紹介した「陰謀説」を否定しない見解の方が、よほど論理的に思えてしまうから、これで、十分にフェアだと思うことにしよう。こう結論付けたのは、私の思考の箍が、どこか、決定的に外れてしまっているからであろう。「理系」の人物だけ[11]に「教養」が備わっていない訳ではないという状態は、わが国における京都大学という組織の地位まで考慮すれば、日本国民全体にとって、救いのない話である。


※1 問合せ(しながら、同時に、私の側から媒体を超えて広告活動に従事)するという行為は、最近の私事に照らせば、ルール破りが仕掛けられたものと判定できるために、私の中では、選択肢の一つとして可能なものとなってはいる。


[8] 木村愛二, (2006.12). 『9・11/イラク戦争コード:アメリカ政府の情報操作と謀略を解読する』, 東京: 社会評論社.
http://id.ndl.go.jp/bib/000008396023

[9] WHAT IS YOUR HOP LEVEL? Ten 9/11 Paradigms
(Nicholas Levis、2004年4月1日、改訂2006年5月)
https://web.archive.org/web/20110112030040/http://summeroftruth.org/lihopmihopnohop.html
#2017年10月18日時点でリンク切れのために、『Internet Archive Wayback Machine』によった。

[10] LIHOP, MIHOP and Hijacking the Hijackers
(2017年7月26日)
http://www.oilempire.us/lihop-mihop.html




2017年11月3日訂正

誤記を訂正した(。余分な文字を削除した)。

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