2017年8月19日土曜日

ミサイルの軌道に係る北朝鮮の発表が愛媛県に言及しなかったのは同県を通る必要がなかったからかも知れない

先週辺り、北朝鮮が発表したグアム行「弾道ミサイル」の軌道は、おおよそ、「島根県、広島県、高知県の上空」と翻訳されていたようである。出典の確認や表現に手抜きがある理由は、私(自身とその生活)に起因する怠惰である。ほかには、無料ブログでもあり読者が少ないという油断を除けば、含むところはない。ただし、私は、朝鮮語を話せず、かつ、出典の確認を厳密に行え(、しかも、このような難しい含みのある翻訳をビジネスライクに依頼でき)るだけのリソースを持たないので、いざ原典から内容を正確に確認しようと思うと、途端に困ったことになる。

ところで、『Yahoo!知恵袋』[1]をはじめとするインターネット上では、これら三県のみに言及したのは何故であろうかという真っ当な疑問こそ見られるものの、この疑問にまともに回答した人物は、ぱっと見、いないようである。この疑問は、誰でも(相当に大きく正確な)地球儀さえあれば、夏休みの宿題レベルの作業で、誰もが納得できそうな回答(推測)を得られるものである。ただ、そんな奇特な問題に取り組む『プレジデントファミリー』を愛読されるようなご家庭は存在しないものと思われる。そこで、私が昨夜(2017年8月18日)の『ロンドンハーツ』を観るなどしながら、漫然と、計1時間程度で作業して確認した結果を、回答として呈示する。

お断りしておくと、以下の地図では、この作業が行えるだけの技量を持つ者から見れば、問題のある手抜きを沢山している。たとえば、既稿(2017年5月31日)で採用した金日成広場中心の正距方位図法を利用している。にもかかわらず、数百kmは離れた地域にも発射地点を想定している。このため、地図に示された軌道や200海里水域の正確さには、それなりに難がある。また、現時点では再製可能性(replicability)が失われたデータを利用している。しかしながら、地図データの精度や、現実の諸要素、とりわけミサイルの現実の軌道と姿勢制御能力とを考慮した場合、実用上、この程度の手抜きは問題にはならないものと根拠を詰めることなく確信している。北マリアナ諸島についても、無視しているに等しい(が、これもまた、200海里のバッファを作成する条件を厳しくとれば良いだけである。とはいえ、200海里ものバッファを広範な地域について作成する方法は、なかなかに面倒である。このため、『ArcGIS』に採用されているバッファの生成方法上、投影法が問題とならないであろうグアムのみについて、バッファを作成した)。

この地図を提示する目的の一つは、日本語空間に無責任な言論が蔓延しており、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」状態が続いているという事実(のみ)を批判することである。本稿では、ネット上の日本語空間という環境を無責任に汚染し(て、私の言論が検索システムによって発見される余地を狭め)た人物たちと、戦争屋以外の何者をも、批判するつもりはない。私が批判しているものと誤解を与えそうな要素を注記しておくと、この地図に例示した軌道では、鬱陵島(ウルルン島)のほとんど上空、領海内を飛翔することになるが、鬱陵島に係る話については、立ち入るつもりはないのである。鬱陵島ならびにその周囲12海里は、制約条件に過ぎない。韓国の領土・領海への「侵犯」を、北朝鮮が避けようとするのであれば、一度、日本の三県を名指ししてしまった以上、航路とならないように避ける工夫が求められるということであろう。見送られたとはいえ、ミサイルをグアムに向けて発射するのであれば、韓国の排他的経済水域に進入すること自体は、避けられないであろう。このため、鬱陵島を避けたとしても、依然として、ミサイル発射を問題視することは、韓国人にも可能である。むろん、韓国の領土・領海の上空を避けないという選択肢も存在しているが、この結果がどのような結末を生むものか、私には予測し難い。

本稿に示した作業は、一国の安全を預かる部門では、とっくのとうに、しかも私よりも迅速に行われたことであろう。この上で、情報部門の担当者は、この地図と可能性のある軌道を検討しながら、三県のみが言及された意図を推量する作業に従事できたことであろう。もちろん、本段落に示した「ことであろう」の中身は、推測でもあり、期待でもある。よりあからさまに言えば、本稿の作業は、この程度の作業がシロウトにも短時間で行えるという事実を例示するためにも、実施されたものである。私の作業は、ネットのゴミ掃除のようなものであるが、日本国政府は、はたして、そのリソースを十全に活用しているのであろうか。


図1 島根・広島・高知三県上空を通り、愛媛県を通らない、ほぼ一直線の航路の例(全体)
図1 島根・広島・高知三県上空を通り、愛媛県を通らない、ほぼ一直線の航路の例(全体)

図2 島根・広島・高知三県上空を通り、愛媛県を通らない、ほぼ一直線の航路の例(拡大図:鬱陵島)
図2 島根・広島・高知三県上空を通り、愛媛県を通らない、ほぼ一直線の航路の例(拡大図:鬱陵島)

図3 島根・広島・高知三県上空を通り、愛媛県を通らない、ほぼ一直線の航路の例(拡大図:日本)
図3 島根・広島・高知三県上空を通り、愛媛県を通らない、ほぼ一直線の航路の例(拡大図:日本)

[1] 北朝鮮のミサイルですが、島根、広島、高知上空を通過すると報道されてい... - Yahoo!知恵袋
(ID非公開、2017年08月12日07:32:31)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11177901556




おまけ

六カ国協議の当事国の指導者層は、現時点では、いずれも、明確な被害を受けたという理由を抜きにして、確実に大きな報復が待ち受けていることが分かっている戦争を開始したり、宣戦布告の口実を相手方に与えてしまうようなことはしないであろう。いずれの国の指導者についても、戦争屋の箍は、戦争を避けられる程度には、緩んでいるようである。このような中、米国と北朝鮮との戦争を無理であると指摘したスティーブ・バノン氏が解任されたことは、不安材料の一つではある。良くも悪くも、アメリカの国内事情こそは、極東有事の可能性を左右する最大の要素である。しかしなお、戦争屋の走狗であるマスコミが煽るようには、極東有事は生起しないであろう。もはや、戦争に対する嫌悪と、戦争屋による両建構造自体は、アメリカ国内でもそれなりに知れ渡ってしまっている。

なお、グアムといえば、ミサイル騒ぎに前後して、『USA Today』が一面で取り扱っていたが、カソリック聖職者の非行は、日本語では全く話題に上らなかったようである。この点についても、日本語マスコミは、マスコミとしての義務を十分に果たしていない。




2017(平成29)年8月20日追記・訂正

文意を変えないよう、題名を訂正した。

現時点の指導者たちの顔触れで事態が推移する場合、『tocana.jp』に出てくる「情報筋」が煽る[2]ようには、有事は起こらないであろう。ただし、本文ならびにおまけでは明記していなかった(ので、ここで追記した)のだが、緊張状態を煽ることは、当然のように行われるであろう。現時点のいくつかの国の指導者は、真に戦争を避けようとしていても、国内の軍事関係企業の従業員など、事情を十分に知らない末端の国民の支持を得る必要がある。ゆえに、これらの指導者たちは、事情を知らない庶民を間に挟んだ形で、戦争屋と「情報戦争」を、綱引きのように繰り広げる必要もあろう。この「情報戦争」は、同キャラ対決であり、実際に戦端を開くという「崖」までの「チキンレース」でもあるので、双方から繰り出された「技(情報)」が何を意味しているのかを理解するためには、その都度、解釈が必要である(。この解釈という作業は、出身畑によっては、分析と表現されるが、一応、私個人としては、科学的とみなされる用法に固執したいので、あえて解釈という側面を強調した表現としている)。

本稿に限らず、最近の国際情勢を理解する上で、私が利用している思考の補助線のうち、最大のものは、「ドナルド・J・トランプ氏、金正恩氏の双方が(、それぞれが統率する組織のバックアップもあれども、大多数の人々よりも圧倒的に)、合理的かつ合目的的である」という仮定である。また、トランプ氏の命令に基づくシリアの空軍基地へのミサイル攻撃という事実ならびにその経過も、その実例の一つとして、相当に参照している。この事例と、この事例を報じたときのマスコミの変節振りをふまえれば、(マスコミという)敵も自ずから見えてくるというものである。北朝鮮の指導者、とりわけ金正恩氏とその周辺の行動の合理性に対する多くの時事解説は、日本語コミュニティにおいては、飯山一郎氏の功績である。この合理性・合目的性をトランプ氏と米軍にも敷衍すれば、米朝関係は理解しやすくなる。


[2] 【緊急警告】「8月15日~9月7日に米朝戦争勃発の可能性大」政治関係者が衝撃暴露! 日本に難民が3千万人以上押し寄せる!
(2017年08月04日、記名なし)
http://tocana.jp/2017/08/post_14055_entry.html

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