カーネギー・メロン大学の社会学?ポスドクのDov H. Levin氏(以下、インタビュアーの発音からレヴァン氏と表記)が、CNNの番組[1]に登場して自身の研究内容を述べたことに対して、陰謀論界隈がざわついている。番組中[1]では、1946~2000年に、47ヵ国で実施された81回の選挙に対して、米国が介入したと述べるとともに、公然工作(overt intel/campaigns)が約3分の1、非公然工作(covert intel/campaigns)が約3分の2で、まあまあ成功しており、公然工作の方が効果ありなどと解説している。同じ話題に係る報告は、英文であるが、オックスフォード大学出版のサイトで読むことができる[2]。根拠は、昨秋に『Conflict Management and Peace Science』に登載された論文[3]などのようである。イラン・イスラム共和国放送系列の『ParsToday』(日本語版)が報じた[4]ために、日本語の陰謀論界隈にも話が広まったものと思われる。
CNNの番組中で特筆しておくべきは、2000年以後、「ハッキングは実行したのか(Have we ever hacked?)」というインタビュアーの問いに対して、レヴァン氏が「不正アクセスはしていない(We did not use computer hacking, no.)」と回答したことである〔回答は2:55から〕。この質疑こそが、このニュースの核心的な利益と思われる。ただ、『ParsToday』は、自国に対する責任があるためであろうが、日本語では言及していない。一般の日本人は、日本人に利益があるようにこのニュースを消化・解釈するためには、これを自前で分析する必要がある。なお、自前でニュースに当たる者が現れることは、イランの日本担当には、織り込み済みのことであろう。
レヴァン氏の発言は、『弁財天』のMakoto Shibata氏が従来指摘してきたような、わが国の自動投票用紙読取分類機の脆弱性が米国によって悪用されてこなかったことを明言するという効果を有している。もっとも、レヴァン氏の言明の正誤を追究することは、私には、実力やリソース上の制限のために、無理なことである。レヴァン氏は、正確な部署や人物について言及していないが、同時に、「日本国内の選挙に対するアメリカの介入」自体については明言している。
CNNは、ここに登場するアクターの中で、自身が最も下劣であることを忘れているかのようである。CNNは、アメリカ大統領選挙に対して、ロシアがハッキングしてきたとの指摘を、明快な根拠を提示せずに大々的に報道してきた。この事実を考え合わせると、CNNは、「ロシアは、アメリカよりも汚い手を使う」と宣伝することを目的に、また、その宣伝を通じて自己を正当化するために、アメリカによる他国への介入という、あまり褒められたことではない行為を大々的に報道した。ここでの登場人物や組織は、CNNを除けば、いずれも、課せられた目的のために正当に与えられたと推認される手段を駆使している。CNNだけが、社会から容認された手段から逸脱しているために、トランプ大統領から強い調子で非難されているのである。
[1] How often has US meddled in others' elections?
(2017年07月15日)
http://www.cnn.com/videos/tv/2017/07/15/how-often-has-us-meddled-in-others-elections.cnn
[2] Does foreign meddling in elections matter? | OUPblog
(Dov H. Levin、2017年05月18日)
https://blog.oup.com/2017/05/foreign-intervention-election-results/
[3] Partisan electoral interventions by the great powers: Introducing the PEIG DatasetConflict Management and Peace Science - Dov H. Levin, 2016
(2016年09月19日)
http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0738894216661190
[4] アメリカが47カ国の選挙に干渉 - Pars Today
(2017年07月16日18時25分)
http://parstoday.com/ja/news/world-i32790
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