2017年7月26日水曜日

(メモ)ゾンビものにおけるゾンビはグローバリズムの暗喩であるが人間社会の側は地域社会を反映している

制作者たちが意識的であるか否かにかかわらず、近年の、予算の小規模な(、つまり、国際秘密力集団の影を感じ取ることの難しい)ゾンビものにおいては、ゾンビに対応する人間社会の側に、制作者の土地の文化が息づいている。この一方で、ゾンビは、グローバリズムの侵略によって奴隷と化した人間の平等性を示唆する存在である※1。ゾンビというモチーフは、制作者の意図にかかわらず、そのように解釈されることを避けられない存在である。この「ゾンビ=グローバリズム」と「人間=地域性」という対比関係※2は、ゾンビ・パンデミック(大規模感染)時であればもちろん、ゾンビ・ポスト・アカポリプス(社会崩壊後)※3後においても、変わらない。ある国を母体に制作されたB級風味漂う作品には、制作された文化の遺産が色濃く繁栄されているようである。日本の場合、たとえば花沢健吾氏の『アイ・アム・ア・ヒーロー』のように、大規模怪獣ものになったり、脈絡なく外国の状況が(国際秘密力集団の関与が強いと認められる他の作品に比べて、正確な描写とともに)提示されたりということ(この文について、ここまで私の解釈)が、ゾンビもののルールにとらわれず、作者の思うように描かれている(この文における根拠は、映画公開?にあたっての『スピリッツ』の特集記事であるが、正確な出典は、国会図書館にでも行かなければ、突き止めることが難しそうである)。商業出版における各出版社の規則・スタイルを考慮すれば、この特徴は、大変に興味深いことである。かつての特撮ものに、国際秘密力集団を超克するための手段が示されてきたことは、やはり、深掘りする価値がありそうである※4これら非国際秘密力ゾンビものは、ゾンビという、国際秘密力集団が流行させようとするミームを利用していても、人間社会の側に地域性を(不用意に)埋め込んでしまうことにより、グローバリストの目論見である「人類みな(ゾンビ)兄弟」という理念を、真逆のものとしかねないかも知れないのである。


#先月(2017年6月17日)、ケーブルテレビの『ムービープラス』で放送された、『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ(Wyrmwood: Road of the Dead)』を鑑賞し始めて、本ブログに明記しておく必要性に気が付いた。これらは仮説ではあるが、真実を衝いていると勝手に思っている。なお、この映画のタイトルの「of the Dead」は、もちろん、ジョージ・ロメロ氏(2017年7月16日に亡くなられた)への表敬の意を示すものと解される。


※1 作品間を比較すると、たとえば、走る・歩くといった大きな差異が議論の対象となるが、こういった表象そのものに係るオタク的な議論は、国際秘密力集団という金主をスモークし、この金融家集団への興味を逸らすという点で、少なくとも、本稿においては、本質的な要素ではない。

※2 私は、国際秘密力集団の走狗でもないしエージェントでもないつもりであるから、この二項対立の先に「止揚」などと称して、「第三の道」を用意することはない。

※3 この区分は、岡本健, (2017.4). 『ゾンビ学』, 京都: 人文書院.の業績として、顕彰されるべきことであろう。

※4 注記2のように言明したとはいえ、このモチーフそのものは、すでに皆が広く知るところになっている。




2017年7月28日訂正・追記

本文中に追記した。




2017年9月15日訂正・追記

邦題を誤って『マッドマックス/怒りのデス・ロード』(2015年)とごっちゃにしていたことに、ようやく気が付いたので訂正した。邦題は、オーストラリアを代表する『マッドマックス』の最新作にあやかったのであろう。オーストラリアの自然は(、私は、動物番組でしか見たことがないが)、『ゾンビマックス!…』(2014年、日本公開は『映画.com』[1]によれば、2016年2月)の至るところに漂っているようであるし、レイダー風に武装した主人公たちが冒頭から暴れるところは、『マッドマックス』シリーズへのオマージュであろう。『マッドマックス』初作との対比の中で、人間に比べてゾンビが相手なら暴力コンテンツの縛りが緩くなるという不可解な「お約束」も、当然意識されているであろう(。それぞれの主人公の家族の運命に注目せよ)。邦題も、程良くオーストラリア風味を伝える良い和訳ではないかと思う。ただ、『マッドマックス』(の少なくとも)最新作のロケは、オーストラリアではないようではあるし、その自然を伝える雰囲気もないが、ウォータンクに対する攻撃は、捕鯨を彷彿とさせるものであるから、やはりオーストラリアの「遺伝子」は存在するものと考えて良かろう。

[1] ゾンビマックス! 怒りのデス・ゾンビ : 作品情報 - 映画.com
(2016)
http://eiga.com/movie/83682/




2017年9月18日訂正

9月15日追記分に訂正を加えた。

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