2017年11月9日木曜日

外国の国家元首でわが国の公賓は、入出国審査が必要ないとされているようであるが

矢部宏治氏は、トランプ大統領の訪日の足取りを示した上で、

実は彼は入国などしていない
と述べてしまっている[1]。矢部氏の表現は、間違いなく、誤りであろうと考えることができる。現に、トランプ氏は、迎賓館の地上(何階か)には降り立っている[2]。即物的(=物理的)な意味で、トランプ氏が「入国」したことは、間違いなかろう。もっとも、迎賓館が日本国領土でないというオチがあったとすれば、それは私の手抜かりということになる。しかしながら、川越市のゴルフ場にもトランプ大統領が立ち寄った[3]ことが社会的に認知されているところ、このゴルフ場を訪れるにあたり、日本人にパスポート所持が必要となるという話は、聞いたことがない※1

矢部氏の主張の焦点は、いわゆる横田空域にあるものと理解できるが、入国に係る主張が誤りであることには変わりがない。矢部氏の焦点は、入国の事実そのものにはなかろう。しかし、この点を批判する上で、扇情的な表現を取る必要もないし、ましてや、事実関係に誤りがあるのはいただけない。矢部氏が指摘したのは、万が一であるが、「入国審査」であるのかも知れないが、これも、私が多少調べた限りでは、否定されるであろう。

ただし、日本語のGoogle様は、「入国」なる概念を理解するための情報源を直接・分かりやすく提示してくれていないので、私の解釈自体、誤りである可能性を排除できていない。国家元首が出入国審査の対象外となる旨は、ウィキペディアさんに書かれてはいる[4]が、その根拠は、納得できる程度には明示されていない。出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)の名が記されているので、同法を参照してみる[5]と、同法第6条第3項辺りに根拠があるのであろうという位にしか見当が付かない。要は、「外国人」は「上陸の許可等」の対象となるのであるが、トランプ大統領の入国はその例外に当たる。トランプ大統領一行の訪日について、具体的な手続が政府において進められたであろうことは、間違いなかろう。外務省に問い合わせれば、たちどころに明らかになろう(が、これが私のブログ執筆上のルールから外れることであることは、本ブログ中において、指摘してきたとおりである)。

誤解に立脚した批判が有効性を持たないことは、当然の事実である。「入国などしていない」というフック的表現は、不要であるばかりか、ネトウヨの格好の標的となるであろう。矢部氏の扇情的な記述は、格好の槍玉として機能するのである。これだから陰謀論者は、といわんばかりの反撃の光景が、十分に予想できる(。しかしまた、本稿も、入国について、矢部氏よりは丁寧に調査したつもりであるが、その虞を拭えたものではない)。

ところで、トランプ氏ならびにその周辺は、今回の移動経路を計画的な意図に基づきアレンジしたものと見ることもできるが、そこには、暗殺の危険、米国の存在の誇示という、二点の理由を認めることができる。第一点目であるが、日本の高級官僚たちに連なる人脈に、超法規的措置を目論む人物らがいても、おかしくない。モリ・カケ疑惑がその証拠である。これらの疑惑の対象となっている認可の過程そのものは、一言で表現すれば、脱法的であるし、忖度した者は、官僚としてアウトとなる行為に手を染めてはいる。しかし同時に、このスキャンダルが公知のものとなった過程が超法規的な側面を有することも、また事実と考えられる。今回の訪日におけるトランプ氏の言動とは裏腹となるが、トランプ大統領を廃することができた方が、むしろ、戦争屋には復権の目がある。彼ら戦争屋には、それなりに熟達した暗殺者を雇用する程度の余裕が残されているであろうが、他方で、自衛隊と在日米軍との連携が機能している限り、空路で移動する大統領に危害を加えようという試みは、十分に無効化されていたであろう。横田基地でのトランプ氏の演説は、自衛隊と在日米軍の連携と献身に対する賞賛に、多くの時間が割かれている。2017年11月現在、対外的に見れば、北朝鮮情勢が緊迫しているという体が装われているが、実のところ、トランプ氏の真の敵は、自国・同盟国の内にいるものと考えることができよう。第二点目は、わが国が米国の実質的な施政下にあるという矢部氏の主張する「事実」が、主流マスコミによって十分に報道されていないという事実によって、肯定されることになる。第二点目の指摘は、拗れた見方である※2が、矢部氏も指摘する事実に対して、私も同意しているという点に、注意が必要である。田中宇氏が常々指摘するとおり、トランプ氏が隠れ多極主義であると措定すれば、トランプ氏のパフォーマンスは、矢部氏のような(安易な批判を提起する「左翼」の)批判者を通じて、日本国民に事実を提示する役割を果たしているものと考えることもできるのである。この点(に限り、検討すれば)、矢部氏の批判は、当人の内心にかかわらず、外形的には愛国的なものとして機能している。繰り返しになるが、トランプ氏は、内心、日本国民に横田空域に係る状況を理解して欲しいとも考えているのではないか。

矢部氏の論考は、いつもの調子ではあるが、二律相反する条件を調停しながら政治が進められているという事実の一面だけを切り捨てて、分かりやすさを優先するものである。矢部氏に捨象された機微(、前述した二点の理由の双方とも正しいと認められること)は、庶民には理解されないことであるのかも知れないが、少なくとも、安全保障に係る「門前の小僧」である私でさえも、気が付くことのできる(中山康雄氏の言うところの)社会的な、両義的な事実である。もっと言えば、矢部氏の論考は、二枚舌の一方を暴露するものではあるが、「二枚舌なるものの内実が、相補的に二枚舌になり得る場合がある」という事実を理解した上で、意図的に提起されているものではないように読める。それゆえに、国際秘密力集団のアジェンダを乗りこなすという方法論は、矢部氏の論考からは、出てこなくなりがちなのである。われわれが将来を知りたいと思う場合、この観点に基づいて、各国のリーダー的存在の言動を、マスコミのフィルターを解除しながら、見極めていく必要がある。しかし、いかんせん、ヒュミントを放棄した上に怠惰な私のことであるから、真実の所在は、知りようがないものである。なお、「鴻鵠の志」と言い換えてみると、本段落の主張は、分かりやすくなるかも知れない。


補論:トランプ氏の発言のうち、やはり、北朝鮮拉致問題の解決に着目すべきである

「両建て構造」は、「正」と「反」の間を往還するだけでは、超克できない。戦争屋の用意する「合」を受け入れれば、戦争屋の望む結末が訪れる。「合」は、われわれが用意するほかないが、途中までは、われわれも「敵」の流れに棹さすことができる。横田空域の存在は、おそらく、トランプ政権の用意した「合」のオードブルに過ぎない。次段で、必要十分な材料を元に、トランプ大統領訪日によって蒔かれた「大どんでん返し」のタネ、つまりメインディッシュに相当する言明を指摘して、大幅にまくりながらも、本稿を締めてしまおう。

今回のトランプ氏の訪日における最大の見所は、北朝鮮に対して拉致問題を解決することが交渉への糸口となるとトランプ氏が示唆したことにある※3。というのも、飯山一郎氏が強く主張してきた「横田めぐみ氏が金正恩氏の母親である」「倭国は中国北東部・北朝鮮に存在した」という二点の(少数)説が両方とも事実であるとすれば、「北朝鮮における伝統的支配の円環が、日本の国体と分かちがたく結合された」という事実は、ほぼ40年前の拉致事件によって準備されたものとなるが、否応なしに、日本国民全体の変心を強いることになるからである。落合莞爾氏は、『ワンワールドと明治日本』など、近年の複数の著書において、南朝系・母系皇統の存在を肯定していたように記憶しているが(ユルユルな表現は、大逆的であるが、ご勘弁願いたい)、飯山氏の指摘は、落合氏の見立てによっても補強される。飯山氏の安倍総理に対する見解の「転回」も、政治権力の側からのアプローチの形跡が濃厚に認められるものであるが、ここでの議論の文脈に整合的である(。ただし、『トカナ』に最近よく寄稿している「元公安」は、この点、興味深い非整合性を発揮している)。何より、万世一系を維持する上で、男子に限定されるべしという主張は、母系皇統の隠された存在によって、よりよく説明できる(。落合氏の指摘によって初めて、男系男子限定とする主張の根拠を、私は勝手に得心できた次第である。確かに、母系皇統がすでに存在するとなれば、この皇統が男系男子へと適応する必要までが生じる※4)。以上(の本段落の情報)に係るマスコミの恣意性は、横田空域に係る指摘の欠如を超える衝撃を以て、日本国民に対して印象付けられることになるのではあるまいか。われわれ日本国民は、「これで北朝鮮と戦争する必然性がなくなった、戦国時代の政略結婚のようなものだ」として、当人の意思とは関わりなく、安堵を覚える可能性もあるが、この情報は、諸刃の剣である。横田氏がすでに亡くなっているという話は、事実であるならば、戦争屋によって悪用される材料であり続けるためである。

戦争が極東でも起こされなくなるのではという希望を持ちながらも、われわれは、マスコミがおかしいことを言い出さないように、その動向を監視する必要がある。たとえば、伊藤詩織氏の自身のレイプ被害の公表と、この事件に対する検察審査会の判定に係るマスコミ報道は、性犯罪者がとことん卑劣であるという印象を一層高めることに成功している。この準強姦事件については、報道された証拠による限りでは、山口敬之氏の確実な逮捕が必要なことは間違いないものと思われるが、しかし同時に、マスコミによる無用な・過剰な印象操作に対しても、警戒が払われるべきである。伊藤氏が自身の被害に対する正義を求めることは正当と言えるが、しかし同時に、伊藤氏が起訴便宜主義の廃止までを訴えることとの間には、一線が引かれるべきである。(この点、伊藤氏の主張の重点は、物事の道理と逆転しているかに見えるものであり、同時に、マスコミ報道は、伊藤氏の主張を正しく伝えているとも言えるのであるが、)伊藤氏の被害に係るマスコミ報道全般のごちゃ混ぜぶりを踏まえれば、本稿補論に示した北朝鮮による拉致事件の将来における展開を、マスコミが「性暴力の究極の一形態である、女性が望まぬ婚姻であるとして報道するという策略を取ることは、十分に懸念される。韓国による元従軍慰安婦とトランプ氏との対面に対する、日本語マスコミの二極化された報道姿勢は、この懸念を助長するものである。


※1 一般社団法人 霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市大字笠幡3398番地)であるが、私自身が、このゴルフ場を単独で物理的に訪問した場合、入口において、単に退去するよう求められるであろうが、入国審査を求められることはないであろう。仮に、「入国審査を求められることがありますか?」と聞いたとすれば、マジでヤバイ人が来たと疑われかねないであろうが、少なくとも、矢部氏の主張を示した上で、質問をぶつけてみた場合、聞き方次第でもあろうが、丁重に「そんなことはありませんよ」と回答をいただけることであろう。それに、同クラブのウェブサイトの「ゲストの皆様へ」と題されたページを参照すると、日本国民の皆様にはパスポートが必要ですという指示は、どこにも見当たらない[6]

※2 これと同様に、米国が兵器を売り付け、日本が買うことになるという旨の、トランプ氏の言動上のパフォーマンスは、大々的に宣伝されたが、この売買に対する批判は、具体的な利益に即して提起される必要がある。自主独立派からすれば、買いたい装備・買いたくない装備があろうし、売り手となるトランプ政権の側でも、売り付けるための兵器の種類を選択可能である。唐突なようであるが、米国に拠点を有する小型衛星ベンチャーの製品をゴリ押しするのも、戦争屋の利益を無効化する上では、ひとつの方法論である。今回のトランプ氏の訪日において、具体的な名称が挙げられた兵器の一つに、F35がある。F35の複数の生産企業は、戦争屋であると非難しうる個人に利益を供与する仕組みを、(少なくとも一時期にわたり)維持してきた。このために、F35の売買が戦争屋を潤すとする指摘は、外れてはいない。他方で、F35が異常動作をした挙げ句に日中戦争を惹起するということは、ミサイル防衛網が異常動作して日中戦争を惹起するよりも、考えにくいことではある。それに、F35の購入自体は、日本版次期主力戦闘機を巡る日米軋轢以後の、既定路線の延長にある。現場のパイロットたちが心から信頼できる装備が配備されることは、何より重要である。しかし、少なくとも平時においては、パートナー国家において、F35は、米国内と同等に安定動作するであろう。ここに示した機微は、私の専門でないゆえに、詳しく追究することは不可能ではある。しかし、何が売買され、誰を具体的にどの程度儲けさせてきたのか、特定の兵器が暴走して、予期せぬ戦争を惹起しないか、といった点が考慮されるべきであることは、指摘できよう。米国による兵器の供給は、時折、核廃絶における「東側の核」を認容しながらも非難されることがあるが、この姿勢こそは、拒否されるべきであろう。現実は、いかに戦争を避けながら、軍需産業を軟着陸させるのかに焦点が存在しており、各国の主要プレイヤーたちは、この課題に重点的に取り組んでいるものと認められるのである。

※3 各紙の出典を確認して引用する作業が面倒であるので、それらを整理して示すことはしないが、この点に係る各社の報道姿勢は、本段落に示した事項に係る各社の論調と合わせて、各社の命運を分ける要素となっている。綸言汗のごとし。

※4 このとき、田中聡氏が言及する「メガ陰謀論」なる概念の怪しさと一面性は、田中氏の主張が「陰謀論」の一部を肯定するようでいて、核心的な利益に懸かる「陰謀論」を限定化した上で、それらを貶めるという効果を発揮している。『陰謀論の正体!』において、本件に関連する著者として、鹿島昇氏と鬼塚英昭氏に代表される言説のみを田中氏が指摘することは、陰謀論を一面的なノワール小説の世界と田中氏が観ていることを、図らずも暴露している。以上の整合性に基づけば、本件についても、ここでの私の意見に対置される種類の発言を田中氏が公衆に提示しているのであろう、と予想することもできよう。なお、この予想は、キング・コヘイン・ヴァーバ書の主張を、意図(的に悪用)したものである。


[1] トランプ来日の足取りから見えた「とても残念な2つのこと」(矢部 宏治) | 現代ビジネス | 講談社(1/2)
(矢部宏治、2017年11月9日)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53435

[2] 平成29年11月6日 日米首脳会談等 | 平成29年 | 総理の一日 | 総理大臣 | 首相官邸ホームページ
(2017年11月6日)
http://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/201711/06usa.html

[3] トランプ大統領と安倍首相 ゴルフで首脳外交 | NHKニュース
(記名なし、2017年11月5日18時51分)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171105/k10011211191000.html

アジア歴訪の最初の訪問国、日本を訪れているアメリカのトランプ大統領は、大統領専用のヘリコプター、通称「マリーン・ワン」で正午すぎ、埼玉県川越市のゴルフ場「霞ヶ関カンツリー倶楽部」に到着しました。

[4] 出入国管理 - Wikipedia
(2017年11月9日確認)
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%87%BA%E5%85%A5%E5%9B%BD%E7%AE%A1%E7%90%86&oldid=65937788

[5] e-Gov法令検索
(出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号、最終更新:平成28年11月28日公布(平成28年法律第88号)改正))
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=326CO0000000319_20171101

[6] ご利用案内 | 霞ヶ関カンツリー倶楽部
(2017年11月9日確認)
https://www.kasumigasekicc.or.jp/information/01.html




2017年11月10日訂正

元の文意を明確化するように、一部を訂正・追記した。




2019年09月13日追記

色々確認もせず恥を重ねる危険を冒すことにするが、文中の問合せ先は、外交そのものを担当する外務省ではなく、出入国管理を所管する法務省であるべきであろう。伊藤詩織氏の『Black Box』に対する北口雅章氏の批判[7]によって、気付いた次第である。が、情報公開制度も国会図書館も官公庁への電話も利用せずに結論付けるのも何なので、本文の記述自体は、私の中で確定するまで変更しないことにする。

[7] 伊藤詩織著 「Black Box」 が「妄想」である理由 | 弁護士ブログ | 名古屋で医療過誤のご相談は 北口雅章法律事務所
(2018年10月01日)
https://www.kitaguchilaw.jp/blog/?p=3913

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